(ダイカストマシンの全体構成)
図1は、本開示の実施形態に係るダイカストマシン1(成形機の一例)の要部の構成を示す、一部に断面図を含む側面図である。
ダイカストマシン1は、溶解されて液状となった金属材料(溶湯。成形材料の一例)を金型101内(キャビティCa等の空間)へ射出し、溶湯を金型101内で凝固させることにより、ダイカスト品(成形品、製品)を製造するものである。金属は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金である。
金型101は、例えば、固定金型103及び移動金型105を含んでいる。本実施形態の説明では、便宜上、固定金型103又は移動金型105の断面を1種類のハッチングで示すが、これらの金型は、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。また、固定金型103及び移動金型105には、中子などが組み合わされてもよい。
ダイカストマシン1は、例えば、成形のための機械的動作を行うマシン本体3と、マシン本体3の動作を制御する制御ユニット5とを有している。
マシン本体3は、例えば、金型101の開閉及び型締めを行う型締装置7と、金型101内に溶湯を射出する射出装置9と、ダイカスト品を固定金型103又は移動金型105(図1では移動金型105)から押し出す押出装置11とを有している。マシン本体3の構成は、射出装置9を除いて、公知の種々の構成と同様とされてよい。
成形サイクルにおいて、型締装置7は、移動金型105を固定金型103へ向かって移動させ、型閉じを行う。さらに、型締装置7は、タイバー(符号省略)の伸長量に応じた型締力を金型101に付与して型締めを行う。型締めされた金型101内には成形品と同一形状のキャビティCaが構成される。射出装置9は、そのキャビティCaへ溶湯を射出・充填する。キャビティCaに充填された溶湯は、金型101に熱を奪われて冷却され、凝固する。これにより、成形品が形成される。その後、型締装置7は、移動金型105を固定金型103から離れる方向へ移動させて型開きを行う。この際又はその後、押出装置11は、移動金型105から成形品を押し出す。
制御ユニット5は、例えば、各種の演算を行って制御指令を出力する制御装置13(図2参照)と、画像を表示する表示装置15と、オペレータの入力操作を受け付ける入力装置17とを有している。また、別の観点では、制御ユニット5は、例えば、電源回路及び制御回路等を有する不図示の制御盤と、ユーザインターフェースとしての操作部19とを有している。
制御装置13は、例えば、不図示の制御盤及び操作部19に設けられている。制御装置13は、適宜に分割乃至は分散して構成されてよい。例えば、制御装置13は、型締装置7、射出装置9及び押出装置11毎の下位の制御装置と、この下位の制御装置間の同期を図るなどの制御を行う上位の制御装置とを含んで構成されてよい。
表示装置15及び入力装置17は、例えば、操作部19に設けられている。操作部19は、例えば、型締装置7の固定的部分に設けられている。表示装置15は、例えば、液晶表示ディスプレイ乃至は有機ELディスプレイを含んだタッチパネルによって構成されている。入力装置17は、例えば、機械式のスイッチ及び前記のタッチパネルによって構成されている。
なお、ダイカストマシン1のうち射出装置9に着目する場合において、制御ユニット5は、射出装置9の一部として捉えられてよい。制御ユニット5の構成要素(制御装置13、表示装置15又は入力装置17)についても同様である。以下では、制御装置13等について、射出装置9の一部として説明することがある。
(射出装置の全体構成)
図2は、射出装置9の要部の構成を示す模式図である。
射出装置9は、例えば、キャビティCaに連通するスリーブ21と、スリーブ21内の溶湯をキャビティCaへ押し出すプランジャ23と、プランジャ23を駆動する駆動部25と、駆動部25を制御する制御装置13とを有している。
スリーブ21は、例えば、固定金型103に挿通された筒状部材である。プランジャ23は、スリーブ21内を前後方向に摺動可能なプランジャチップ23aと、プランジャチップ23aに固定されたプランジャロッド23bとを有している。スリーブ21の上面に形成された給湯口21aから溶湯がスリーブ21内に供給され、プランジャチップ23aがスリーブ21内をキャビティCaに向かって摺動する(前進する)ことにより、溶湯はキャビティCaに射出される。
駆動部25は、例えば、プランジャ23に連結された射出シリンダ27と、射出シリンダ27に対する作動液(例えば油)の供給等を行う液圧装置29とを有している。
(射出シリンダ)
射出シリンダ27は、例えば、いわゆる直結形の増圧式シリンダによって構成されている。具体的には、例えば、射出シリンダ27は、シリンダ部31と、シリンダ部31の内部を摺動可能な射出ピストン33及び増圧ピストン35と、射出ピストン33に固定され、シリンダ部31から延び出るピストンロッド37とを有している。
シリンダ部31は、例えば、射出シリンダ部31aと、射出シリンダ部31aの後端に接続された増圧シリンダ部31bとを有している。射出シリンダ部31a及び増圧シリンダ部31bは、例えば、内部の断面形状が円形の筒状体である。射出シリンダ部31aは、例えば、内径が長手方向において一定である。増圧シリンダ部31bは、例えば、射出シリンダ部31a側の小径シリンダ部31baと、その反対側に位置し、小径シリンダ部31baよりも内径が大きい大径シリンダ部31bbとを有している。
射出ピストン33は、射出シリンダ部31a内に配置されている。射出シリンダ部31aの内部は、射出ピストン33により、ピストンロッド37が延び出る側のロッド側室31rと、その反対側のヘッド側室31hとに区画されている。ロッド側室31r及びヘッド側室31hに選択的に作動液が供給されることにより、射出ピストン33は射出シリンダ部31a内を前後方向に摺動する。
増圧ピストン35は、小径シリンダ部31baを摺動可能な小径ピストン部35aと、大径シリンダ部31bbを摺動可能な大径ピストン部35bとを有している。大径シリンダ部31bbの内部は、大径ピストン部35bにより、小径シリンダ部31ba側の前側室31fと、その反対側の後側室31gとに区画されている。
従って、前側室31fの圧抜きを行うと、小径ピストン部35aのヘッド側室31hにおける受圧面積と、大径ピストン部35bの後側室31gにおける受圧面積との差に起因して、増圧ピストン35は、後側室31gの作動液から受ける圧力よりも高い圧力をヘッド側室31hの作動液に加えることが可能である。これにより、射出シリンダ27は、増圧機能を発揮する。
射出シリンダ27は、プランジャ23に対して同軸的に配置されている。そして、ピストンロッド37は、プランジャ23にカップリング(符号省略)を介して連結されている。シリンダ部31は、スリーブ21等に対して固定的に設けられている。従って、射出ピストン33のシリンダ部31に対する移動により、プランジャ23はスリーブ21内を前進又は後退する。
(液圧装置)
液圧装置29は、例えば、作動液を貯留するタンク39と、タンク39の作動液を送出可能なポンプ41と、蓄圧された作動液を放出可能な速度アキュムレータ43A及び増圧アキュムレータ43B(以下、両者を区別せずに、単にアキュムレータ43ということがある。)と、これら及び射出シリンダ27を互いに接続する複数の流路(第1流路45A〜第6流路45F)と、当該複数の流路における作動液の流れを制御する複数のバルブ(第1バルブ47A、第2バルブ47B、第4バルブ47D及び第5バルブ47E)及び切換回路48と、を有している。
図2では、図示の都合上、複数個所にタンク39及びポンプ41を示している。実際には、これらの複数のタンク39及びポンプ41は、一のタンク39及び一のポンプ41に統合されていてよい。図2では、液圧装置29の有する代表的な流路及びバルブを例示しており、実際には、液圧装置29は不図示の他の流路及びバルブを有している。
タンク39は、例えば、開放タンクであり、大気圧下で作動液を保持している。タンク39は、ポンプ41及びアキュムレータ43を介して射出シリンダ27に作動液を供給し、また、射出シリンダ27から排出された作動液を収容する。
ポンプ41は、不図示の電動機によって駆動され、作動液を送出する。ポンプは、ロータリポンプ、プランジャポンプ、定容量ポンプ、可変容量ポンプ、1方向ポンプ、双方向(2方向)ポンプ等の適宜な方式のものとされてよい。ポンプ41を駆動する電動機も、直流モータ、交流モータ、誘導モータ、同期モータ、サーボモータ等の適宜な方式のものとされてよい。ポンプ41(電動機)は、ダイカストマシン1の稼働中において常時駆動されてもよいし、必要に応じて駆動されてもよい。ポンプ41は、例えば、アキュムレータ43に対する作動液の供給(アキュムレータ43の蓄圧)、及び、射出シリンダ27に対する作動液の供給に寄与する。
アキュムレータ43は、適宜な方式のものとされてよく、例えば、重量式、ばね式、気体圧式(空気圧式含む)、シリンダ式又はプラダ式のものである。図示の例では、アキュムレータ43は、シリンダ式のものであり、特に符号を付さないが、シリンダ部と、シリンダ部を液体室と気体室とに区画するピストンとを有している。アキュムレータ43は、液体室に作動液が供給されることによって蓄圧され、その蓄圧された比較的高圧の作動液を射出シリンダ27に放出可能である。
速度アキュムレータ43A及び増圧アキュムレータ43Bは、互いに同一の構成であってもよいし、互いに異なる構成であってもよい。例えば、増圧アキュムレータ43Bは、速度アキュムレータ43Aよりも高圧に蓄圧可能に構成されており、速度アキュムレータ43Aよりも高圧に蓄圧された状態で利用される。
第1流路45Aは、ポンプ41と速度アキュムレータ43Aとを接続している。これにより、例えば、ポンプ41から速度アキュムレータ43Aへ作動液を供給して速度アキュムレータ43Aを蓄圧することができる。
第2流路45Bは、ポンプ41と増圧アキュムレータ43Bとを接続している。これにより、例えば、ポンプ41から増圧アキュムレータ43Bへ作動液を供給して増圧アキュムレータ43Bを蓄圧することができる。
第3流路45Cは、速度アキュムレータ43Aとヘッド側室31hとを接続している。これにより、例えば、速度アキュムレータ43Aからヘッド側室31hへ作動液を供給して、射出ピストン33を前進させることができる。
第4流路45Dは、増圧アキュムレータ43Bと後側室31gとを接続している。これにより、例えば、増圧アキュムレータ43Bから後側室31gへ作動液を供給し、増圧ピストン35によってヘッド側室31hの作動液を加圧することができる。
第5流路45Eは、ロッド側室31rとタンク39とを接続している。これにより、例えば、射出ピストン33の前進に伴ってロッド側室31rから排出される作動液をタンク39に収容することができる。
第6流路45Fは、前側室31fとタンク39とを接続している。これにより、例えば、前側室31fを圧抜きし、増圧ピストン35による増圧作用を得ることができる。
複数の流路は、適宜に一部が共通化されてよい。例えば、図2の例では、第1流路45A及び第3流路45Cは、速度アキュムレータ43A側の一部が共通化されている。第2流路45B及び第4流路45Dは、増圧アキュムレータ43B側の一部が共通化されている。第5流路45E及び第6流路45Fは、タンク39側の一部が共通化されている。
第1バルブ47Aは、第1流路45Aに設けられており、例えば、ポンプ41から速度アキュムレータ43Aへの作動液の供給の許容及び禁止、並びに速度アキュムレータ43Aからタンク39への作動液の排出の許容及び禁止に寄与する。
第2バルブ47Bは、第2流路45Bに設けられており、例えば、ポンプ41から増圧アキュムレータ43Bへの作動液の供給の許容及び禁止、並びに増圧アキュムレータ43Bからタンク39への作動液の排出の許容及び禁止に寄与する。
第4バルブ47Dは、第4流路45Dに設けられており、例えば、増圧アキュムレータ43Bから後側室31gへの作動液の供給の許容及び禁止に寄与する。
第5バルブ47E(流量制御弁、サーボバルブ)は、第5流路45Eに設けられており、例えば、ロッド側室31rからタンク39への作動液の流量の制御に寄与する。この流量の制御により、射出ピストン33の前進速度が制御される。すなわち、第5バルブ47Eは、いわゆるメータアウト回路を構成している。
(切換回路)
切換回路48は、第3流路45Cに設けられおり、例えば、速度アキュムレータ43Aからヘッド側室31hへの作動液の供給の許容及び禁止、並びにヘッド側室31hから速度アキュムレータ43Aへの作動液の逆流防止に寄与する。
図3〜図5は、切換回路48の構成を示す模式図である。これらの図では、切換回路48の互いに異なる動作状態が示されている。なお、これらの図では、射出シリンダ27については、射出シリンダ部31a、射出ピストン33及びピストンロッド37のみを示している。
切換回路48は、速度アキュムレータ43Aとヘッド側室31hとの間(第3流路45C)に位置している切換バルブ53と、切換バルブ53へのパイロット圧の導入を制御するパイロット回路55とを有している。
(切換バルブ)
切換バルブ53は、速度アキュムレータ43Aとヘッド側室31hとの間の作動液の流れの許容及び禁止に直接的に寄与する。切換バルブ53は、速度アキュムレータ43Aからの液圧、ヘッド側室31hからの液圧及びパイロット圧の3種の圧力によって動作するように構成されている。
図6〜図8は、切換バルブ53の構成を示す断面図である。これらの図は、切換バルブ53の互いに異なる動作状態を示しており、それぞれ図3〜図5に対応している。
切換バルブ53は、統合ボディ57と、統合ボディ57内に収容されている閉止部品59及びバルブピストン61とを有している。統合ボディ57は、速度アキュムレータ43Aに接続される入口63と、ヘッド側室31hに接続される出口65と、パイロット回路55に接続される開用パイロットポート67及び閉用パイロットポート69とを有している。
閉止部品59が統合ボディ57内を軸方向(紙面左右方向)に摺動することによって、入口63と出口65との連通が許容(図7)及び禁止(図6又は図8)される。ひいては、速度アキュムレータ43Aとヘッド側室31hとの連通が許容及び禁止される。開用パイロットポート67及び閉用パイロットポート69にパイロット圧が導入されることによって、閉止部品59及び/又はバルブピストン61は、統合ボディ57内を軸方向に摺動する。この際、バルブピストン61は、閉止部品59の動作を補助する。
統合ボディ57、閉止部品59及びバルブピストン61それぞれは、1種のハッチングが付されて図示されている。ただし、これらの各部材は、適宜な数の部材が組み合わされて構成されてよい。統合ボディ57、閉止部品59及びバルブピストン61の互いに当接する部分(摺動する部分を含む)には、Oリング等の適宜な封止部材が配されてよい。ただし、本開示の説明では、封止部材の図示及び説明は省略する。
統合ボディ57の内部空間、閉止部品59及びバルブピストン61の軸方向に直交する断面(横断面)の形状は、適宜な形状とされてよい。ただし、以下では、横断面の基本的な形状が円形である場合を例にとるものとする。従って、以下において、径についての大小関係の説明は、横断面(その面積)の大小関係についての説明に相当する。
(統合ボディ及びポート)
統合ボディ57は、閉止部品59を収容するバルブ本体71と、バルブピストン61を収容するバルブシリンダ73とを有している。これらの2つの中空部材は、直列に配列されて互いに固定されている。なお、これら2つの中空部材は、軸回りの部分が2つの中空部材に亘って一体的に構成されることによって互いに固定されていてもよい。
統合ボディ57の外形は、適宜な形状とされてよく、例えば、直方体状でも円柱状でもよい。また、統合ボディ57は、バルブ本体71及びバルブシリンダ73の他に、例えば、これらのポート(63、65、67又は69)と、外部の流路との間に介在する流路を有する他の部材を含んでいてもよい。ただし、本実施形態の説明では、特に断りがない限りは、他の部材の存在は考慮しない。
バルブ本体71及びバルブシリンダ73の内部空間(より詳細には後述する出側室71oと開用室73oとの間)を隔てる隔壁(符号省略)は、バルブ本体71及びバルブシリンダ73それぞれの軸方向端部として共用されている。ただし、当該隔壁内の適宜な位置に、バルブ本体71及びバルブシリンダ73の境界が概念されても構わない。
入口63及び出口65は、例えば、バルブ本体71に設けられている。開用パイロットポート67及び閉用パイロットポート69は、例えば、バルブシリンダ73に設けられている。なお、例えば、統合ボディ57の内外を連通する流路を適宜に延ばせば、閉用パイロットポート69をバルブ本体71側に形成することなども可能である。ただし、これは、統合ボディ57内における、バルブ本体71、バルブシリンダ73及び/又はこれら以外の部材の境界の定義の問題であるともいえる。
各種のポートの開口位置、開口方向及び開口面積、並びに切換バルブ53の配置位置及び配置向きは適宜に設定されてよい。
図示の例では、入口63及び出口65は、バルブ本体71の外周面(軸回りの面)において、軸方向の位置を互いに異ならせて、互いに反対方向(直径方向の両側)に開口している。入口63及び出口65の開口面積は、比較的大きく、例えば、開用パイロットポート67及び閉用パイロットポート69の開口面積よりも大きい。
また、開用パイロットポート67及び閉用パイロットポート69は、例えば、バルブシリンダ73の外周面において、軸方向の位置を互いに異ならせて、互いに同一方向に開口している。これらのパイロットポートの開口方向は、上下方向であってもよいし、水平方向であってもよい。
また、切換バルブ53は、例えば、射出シリンダ27とその上方に位置する速度アキュムレータ43Aとの間に配置される。また、例えば、切換バルブ53は、軸方向を水平方向にし、入口63を上方へ向け、出口65を下方に向けて配置される。
上記とは異なり、複数のポート(63、65、67又は69)のいずれかを統合ボディ57の軸方向の端面に開口させてもよいし、軸方向が鉛直方向になるように切換バルブ53を配置してもよいし、入口63及び/又は出口65を水平方向に開口させてもよい。
(バルブ本体及び閉止部品)
バルブ本体71の内部は、閉止部品59によって、その軸方向において、入口63に通じている入側室71iと、出口65に通じている出側室71oとに区画されている。より具体的には、入側室71iは、図6及び図8に示すように、閉止部品59が弁座71sに当接しているときに出口65から隔離される空間である。出側室71oは、閉止部品59(及び後述するバルブピストン61のロッド75)によって密閉されている。
従って、例えば、パイロット圧及びバルブピストン61の影響を無視すると、入側室71iの作動液が閉止部品59に付与する力が、出側室71oの作動液が閉止部品59に付与する力よりも大きい場合、閉止部品59は、出側室71o側へ移動する。その結果、閉止部品59は弁座71sから離れ、入側室71i(ひいては入口63)と出口65とが連通される。ひいては、速度アキュムレータ43Aとヘッド側室31hとが連通される。
逆に、入側室71iの作動液が閉止部品59に付与する力が、出側室71oの作動液が閉止部品59に付与する力よりも小さい場合、閉止部品59は、入側室71iへ移動する。その結果、閉止部品59は弁座71sに当接し、入側室71i(ひいては入口63)と出口65とが遮断される。すなわち、切換バルブ53は、自閉する。ひいては、速度アキュムレータ43Aとヘッド側室31hとが遮断される。
入側室71iの形状及び大きさは、適宜なものとされてよい。例えば、閉止部品59は、入側室71iを摺動するわけではないから、閉止部品59の軸方向(紙面左右方向)に見たときに、入側室71iの形状及び大きさは、閉止部品59のものと同一である必要は無い。入側室71iは、弁座71sの位置において、弁座71sの開口以上の広さとされている。
閉止部品59において、少なくとも出側室71o側の部分は、概略、一定の横断面で軸方向に延びており、バルブ本体71の内周面に対して摺動可能となっている。これにより、出側室71oは、入側室71i及びバルブ本体71内の他の空間から区画されている。
閉止部品59は、出側室71o側に凹部59rを有している。凹部59rには、バルブピストン61の後述するロッド75が摺動可能に挿入(嵌合)されている。従って、出側室71oは、ロッド75の外周面と、バルブ本体71の内周面との間に環状に形成されている。また、閉止部品59の出側室71oにおける受圧面は、凹部59rの周囲の環状部分となっている。
出口65と出側室71oとは適宜に連通されてよい。図示の例では、出側室71oと弁座71sとの間、かつ閉止部品59の外周面とバルブ本体71の内周面との間に、出口65が開口している空間(符号省略)が形成されている。そして、当該空間と出側室71oとが閉止部品59内に形成された流路(符号省略)によって連通されることによって、出口65と出側室71oとが連通されている。
上記の出口65(出口65が開口する空間)と出側室71oとを連通する閉止部品59内の流路は、例えば、特に符号を付さないが、閉止部品59をその外周面から凹部59rへ貫通する貫通孔と、凹部59rとロッド75との隙間とによって構成されている。なお、上記とは異なり、例えば、閉止部品59の外周面から閉止部品59の出側室71o側の端面に通じる(凹部59rの外側に位置する)流路が形成されたり、バルブ本体71内を貫通する(閉止部品59を通過しない)流路が設けられたりしてもよい。
閉止部品59は、例えば、入側室71i側ほど径が小さくなるテーパ部(符号省略)を入側室71i側に有している。そして、閉止部品59が入側室71i側へ移動すると、テーパ部は弁座71sの開口縁部に対して全周に亘って当接する。これにより、入側室71iと出口65とは遮断される。なお、上記とは異なり、例えば、閉止部品59は、軸方向に直交する先端面を弁座71sの軸方向に直交する面に当接させるように構成されていてもよい。
閉止部品59が弁座71sに当接しているとき(図6及び図8)、閉止部品59の入側室71iにおける受圧面は、閉止部品59のうち弁座71sの開口から露出する部分となる。また、閉止部品59が弁座71sから離れたとき(図7)、閉止部品59の入側室71i側の受圧面は、閉止部品59のうち入側室71i側に面する全体となる。通常、前者は、後者よりも小さい。両者の差は適宜に設定されてよい。
閉止部品59は、弁座71sに対して当接する本体部分(符号省略)から入側室71i側へ延び出るシャフト59sを有している。シャフト59sは、バルブ本体71の入側室71i側の端面部に形成された貫通孔(符号省略)に摺動可能に挿通されている。シャフト59sは、例えば、閉止部品59をバルブ本体71に対して軸方向に案内するガイドとして機能する。閉止部品59の入側室71i側の受圧面積は、シャフト59sの横断面の面積分で減じられる。従って、シャフト59sは、閉止部品59の受圧面積の調整にも寄与する。シャフト59sは、例えば、閉止部品59の本体部分の軸心に位置するとともに細長の円柱状である。ただし、シャフト59sは、偏心して設けられたり、横断面の形状が円形以外とされたりしてもよい。また、シャフト59sは、設けられなくてもよい。
(バルブシリンダ及びバルブピストン)
バルブピストン61は、例えば、バルブシリンダ73に対して摺動するピストン本体61aと、ピストン本体61aからバルブ本体71側へ延び出る既述のロッド75と、ピストン本体61aからバルブ本体71とは反対側へ突出する突部61bとを有している。
(ピストン本体及びロッドの組み合わせ)
バルブシリンダ73の内部は、ピストン本体61aによって、その軸方向において、バルブ本体71側の開用室73oと、その反対側の閉用室73cとに区画されている。開用室73oは、開用パイロットポート67に接続されている。閉用室73cは、閉用パイロットポート69に接続されている。従って、例えば、バルブ本体71との相互作用等を無視すると、開用パイロットポート67及び閉用パイロットポート69に選択的にパイロット圧を導入することによって、バルブピストン61は、バルブシリンダ73に対してバルブ本体71側又はその反対側に移動する。
ロッド75は、バルブシリンダ73から延び出てバルブ本体71に挿入され、その先端が閉止部品59の出側室71o側の面(より詳細には凹部59rの底面)に当接可能となっている。従って、例えば、バルブピストン61は、図6に示すように、バルブ本体71側へ移動して閉止部品59を押すことによって、閉止部品59を強制的に弁座71sに当接させる(切換バルブ53を強制的に閉じる)ことが可能である。また、逆に、例えば、バルブピストン61は、図7に示すように、バルブ本体71とは反対側へ移動して、閉止部品59の出側室71o側への移動(切換バルブ53の開動作)を許容可能である。バルブピストン61がバルブ本体71とは反対側へ位置しているときは、図8に示すように、閉止部品59の入側室71i側への移動(切換バルブ53の自閉)も許容されている。
(ロッド及び連通流路の組み合わせ)
ロッド75と閉止部品59との間には、図8に特に示されているように、パイロット室77が構成されている。より具体的には、既述のように、ロッド75は、凹部59r内を摺動可能に凹部59r内に挿入されており、ロッド75の先端面と、凹部59rの内面(底面及び内周面)とによってパイロット室77が構成されている。また、バルブピストン61には、閉用室73cとパイロット室77とを連通する連通流路79が設けられている。
従って、閉用パイロットポート69に導入されたパイロット圧は、閉用室73c及び連通流路79を介してパイロット室77に供給される。その結果、例えば、図8に示すように、閉用パイロットポート69及び開用パイロットポート67の双方にパイロット圧を導入することによって、バルブピストン61を閉用室73c側に位置させつつ、パイロット圧をパイロット室77に供給することができる。
この状態では、パイロット室77の圧力及び出側室71oの圧力によって閉止部品59に加えられる力が、入側室71i側の圧力によって閉止部品59へ加えられる力よりも大きいと、閉止部品59は入側室71i側へ移動する。すなわち、パイロット室77に導入されるパイロット圧は、出側室71oの圧力による切換バルブ53の自閉を補助することに利用される。別の観点では、単にバルブピストン61が閉用室73c側に位置して切換バルブ53の自閉が可能になっているだけの場合(図7参照)に比較して、切換バルブ53の自閉が容易に生じることになる。
ロッド75は、根本側から先端側へ順に、根本部75a、中間部75b及び先端部75cを有している。図示の例では、これらは互いに径が異なっている。
根本部75aは、出側室71oと開用室73oとを隔てる隔壁部分(別の観点ではバルブ本体71のバルブシリンダ73側の端部及びバルブシリンダ73のバルブ本体71側の端部)を摺動可能に貫通している。バルブピストン61の開用室73oにおける受圧面積は、バルブピストン61の横断面の面積から根本部75aの横断面の面積を除した面積となっている。根本部75aの径は、例えば、中間部75bの径及び先端部75cの径よりも大きくされている。この場合、出側室71oの作動液の圧力は、バルブピストン61をバルブシリンダ73側へ移動させる力を生じる。なお、根本部75aの径は、例えば、中間部75b及び/又は先端部75cの径に対して同等以下とされてもよい。
中間部75bは、閉止部品59の凹部59rに挿入されている。中間部75bの径は、凹部59rの径よりも小さくされており、中間部75bと凹部59rとの間には隙間が構成されている。当該隙間は、例えば、既述のように、出側室71oと出口65とを連通する流路の一部を構成することに寄与している。また、このように隙間が構成されることによって、例えば、ロッド75の閉止部品59に対する摺動抵抗が減じられている。ただし、中間部75b(別の観点では凹部59rよりも径が小さい部分)を設けないようにすることも可能である。
先端部75cは、閉止部品59の凹部59rに摺動可能に挿入されており、その先端面によってパイロット室77を構成している。なお、特に図示しないが、先端部75cの先端面及び/又は凹部59rの底面に、凹部及び/又は突部が設けられたりしてもよい。このような突部及び/又は凹部は、例えば、先端部75cの先端面と凹部59rの底面とが当接した状態で、パイロット室77における閉止部品59の受圧面積を確保することに寄与する。
連通流路79は、閉用室73c(本実施形態では後述する本体室73ca)とパイロット室77とを連通する限り、適宜な形状及び大きさとされてよい。図示の例では、連通流路79は、突部61bの外周面のうちの互いに逆側に位置する2箇所から突部61bの軸心側に延びて合流し、その後、突部61b、ピストン本体61a及びロッド75をその軸心において延びている。なお、連通流路79は、ピストン本体61aの閉用室73c側の端面に開口するなどしていてもよい。
(突部)
突部61bは、図7及び図8に示すように、バルブピストン61が閉用室73c側に移動したときに、閉用室73cの端面に環状に当接する。これにより、閉用室73cの一部は、閉用パイロットポート69から隔離される。より具体的には、例えば、閉用室73cは、ピストン本体61aと同等の径を有する本体室73caと、本体室73caよりも径が小さく、本体室73caからピストン本体61aとは反対側へ突出する付加室73cbとを有している。突部61bは、特に符号を付さないが、先端側ほど径が小さくなるテーパ面を有している。そして、テーパ面が本体室73caと付加室73cbとの境界の角部に当接し、付加室73cbは閉用パイロットポート69から隔離される。突部61bがバルブシリンダ73の閉用室73c側の端部に当接することによって、閉用室73cがその径方向において、閉用パイロットポートに通じている本体室73caと、付加室73cbとに区画されると捉えられてもよい。
従って、例えば、図6に示すように、突部61bが閉用室73cの端面から離れると、バルブピストン61の閉用室73cにおける受圧面積(パイロット圧を受ける面積)は、ピストン本体61aの横断面の面積と同等となる。一方で、図7及び図8に示すように、突部61bが閉用室73cの端面に当接している状態では、バルブピストン61の閉用室73cにおける受圧面積は、ピストン本体61aの横断面の面積から突部61b(付加室73cb)の横断面の面積を引いた面積となる。
その結果、例えば、図8に示すように、閉用パイロットポート69及び開用パイロットポート67の双方にパイロット圧を導入しているときに、バルブピストン61を閉止部品59側へ移動させる力を小さくすることができる。すなわち、パイロット圧をパイロット室77に導入しつつ、出口65の圧力によって切換バルブ53の自閉を待つべきときに、バルブピストン61が閉止部品59側へ移動して切換バルブ53が強制的に閉じられてしまうおそれを低減できる。その一方で、図6に示すように、切換バルブ53を強制的に閉じる必要があるときは、その強制力を大きくすることができる。
(パイロット回路)
図3〜図5に戻って、パイロット回路55は、例えば、パイロット圧として、速度アキュムレータ43Aの圧力を利用する。また、パイロット回路55は、パイロット圧を開用パイロットポート67及び閉用パイロットポート69に供給する。
図6〜図8を参照した切換バルブ53の説明から理解されるように、パイロット回路55は、切換バルブ53に対するパイロット圧の供給に関して、少なくとも3つの状態を実現する。
一つは、図3及び図6に示されるように、閉用室73cにパイロット圧を供給するとともに、開用室73oからの作動液の排出を許容する状態である。具体的には、例えば、閉用パイロットポート69と速度アキュムレータ43Aとを接続しつつ、開用パイロットポート67とタンク39とを接続する状態である。
他の一つは、図4及び図7に示されるように、開用室73oにパイロット圧を供給するとともに、閉用室73cからの作動液の排出を許容する状態である。具体的には、例えば、開用パイロットポート67と速度アキュムレータ43Aとを接続しつつ、閉用パイロットポート69とタンク39とを接続する状態である。
残りの一つは、図5及び図8に示されるように、開用室73o及び閉用室73cの双方にパイロット圧を供給する状態である。具体的には、例えば、開用パイロットポート67及び閉用パイロットポート69の双方と速度アキュムレータ43Aとを接続する状態である。
この他、特に図示しないが、例えば、パイロット回路55は、開用室73o及び閉用室73cの双方からの作動液の排出を許容可能な状態を実現可能であってよい。
上記の3つの状態を実現する液圧回路は、種々可能であり、図3〜図5に示すパイロット回路55の構成は一例に過ぎない。図示の例では、パイロット回路55は、第1パイロット用バルブ81、第2パイロット用バルブ83及び第3パイロット用バルブ85を有している。
第1パイロット用バルブ81は、例えば、4ポート2位置の切換弁によって構成されている。第1パイロット用バルブ81は、2位置のうち一方(A位置とする。)においては、図3及び図5に示すように、速度アキュムレータ43Aに接続されているポートと、閉用パイロットポート69に接続されているポートとを接続するとともに、タンク39に接続されているポートと開用パイロットポート67に接続されているポートとを接続する。また、第1パイロット用バルブ81は、2位置のうち他方(B位置とする。)においては、図4に示すように、速度アキュムレータ43Aに接続されているポートと、開用パイロットポート67に接続されているポートとを接続するとともに、タンク39に接続されているポートと閉用パイロットポート69に接続されているポートとを接続する。
第2パイロット用バルブ83は、逆止弁によって構成されている。第2パイロット用バルブ83は、第1パイロット用バルブ81から開用パイロットポート67(第3パイロット用バルブ85)への作動液の流れを許容するとともに、その反対方向の流れを禁止する。
第3パイロット用バルブ85は、例えば、3ポート2位置の切換弁によって構成されている。第3パイロット用バルブ85は、2位置のうち一方(A位置とする。)においては、図3に示すように、タンク39に接続されているポートと開用パイロットポート67に接続されているポートとを接続する。また、第3パイロット用バルブ85は、2位置のうち他方(B位置とする。)においては、図4及び図5に示すように、速度アキュムレータ43Aに接続されているポートと開用パイロットポート67に接続されているポートとを接続する。
図3では、第1パイロット用バルブ81がA位置とされているとともに、第3パイロット用バルブ85がA位置とされている。これにより、速度アキュムレータ43Aから第1パイロット用バルブ81を介して閉用パイロットポート69へ作動液が供給されるとともに、開用パイロットポート67から第3パイロット用バルブ85を介してタンク39へ作動液が排出される。なお、開用パイロットポート67から第1パイロット用バルブ81への流れは、第2パイロット用バルブ83によって阻止される。
図4では、第1パイロット用バルブ81がB位置とされているとともに、第3パイロット用バルブ85がB位置とされている。これにより、速度アキュムレータ43Aから、第1パイロット用バルブ81及び第2パイロット用バルブ83を介して、並びに第3パイロット用バルブ85を介して、開用パイロットポート67へ作動液が供給される。また、閉用パイロットポート69から第1パイロット用バルブ81を介してタンク39へ作動液が排出される。
図5では、第1パイロット用バルブ81がA位置とされているとともに、第3パイロット用バルブ85がB位置とされている。これにより、速度アキュムレータ43Aから第1パイロット用バルブ81を介して閉用パイロットポート69へ作動液が供給されるとともに、速度アキュムレータ43Aから第3パイロット用バルブ85を介して開用パイロットポート67へ作動液が供給される。なお、第3パイロット用バルブ85(開用パイロットポート67)から第1パイロット用バルブ81への流れは、第2パイロット用バルブ83によって阻止される。
(各部の径の相対関係)
切換バルブ53の各部の径は、例えば、以下のような大小関係を満たすように設定されている。これにより、上記の各種の動作が実現される、又は各種の動作の実現が容易化される。
なお、以下に説明する大小関係は、基本的な考え方を示すものであり、細部の寸法の影響及び比較的小さい圧力変動の影響等については無視している。実際には、例えば、下記の大小関係で意図した作用が確実に奏されるように、相対的に大きくなるべき径に対して、1を超える係数を乗じたり、適宜な大きさの定数を加算したりしてよい。
図6〜図8に示すように、各部の直径を以下の記号で表すこととする。
d1:付加室73cbの直径
d2:本体室73ca(ピストン本体61a)の直径
d3:根本部75aの直径
d4:出側室71o(閉止部品59の本体部分)の直径
d5:パイロット室77(先端部75c)の直径
d6:弁座71sの開口の直径
d7:シャフト59sの直径
また、速度アキュムレータ43Aから入口63に付与される圧力をPaとする。速度アキュムレータ43Aからの作動液の放出に伴う速度アキュムレータ43Aの圧力低下(経時変化)はここでは無視する。ヘッド側室31hの圧力をPhとする。圧力Phは、0〜Paの範囲で値が変化する変数と考えることがある。パイロット圧をPpとする。ただし、本実施形態では、Pp=Paである。
(強制閉じに係る径の大小関係)
図6に示すように、バルブピストン61の閉止部品59側への移動によって切換バルブ53を閉じている状態を維持するために、例えば、以下の関係が成り立つように径が設定されてよい。
π2/4×d22×Pp > π2/4×(d62−d72)×Pa (1)
上式において、左辺は、バルブピストン61及び閉止部品59に対して紙面左側から加えられる力を示している。右辺は、閉止部品59に対して紙面右側から加えられる力を示している。出口65及び開用パイロットポート67に付与される圧力は0としている。
Pp=Paを代入して更に簡略化すれば、以下の関係が成り立てばよいことになる。
(d22−(d62−d72))>0 (1)′
なお、上式において、例えば、d6に代えてd4を用いれば、切換バルブ53が開いている状態から閉じられている状態へ移行するための関係を導くことができる。
また、出口65(ヘッド側室31h)の圧力が無視できない場合は、さらに、バルブピストン61の紙面左側に加えられる力((1)式の左辺)が、バルブピストン61の紙面右側に加えられる力(π2/4×(d32−d52)×Ph+π2/4×d52×Pp)よりも大きくなるようにしてもよい。これにより、バルブピストン61は閉止部品59側へ移動する。例えば、Ph=Pa(=Pp)と仮定して整理すると、d2>d3が成立すればよいことになる。これは、当然に成り立つ。
(開動作に係る径の大小関係)
図7に示すように、バルブピストン61の閉止部品59とは反対側への移動によって切換バルブ53を開いている状態を維持するために、例えば、以下の関係が成り立つように径が設定されてよい。
π2/4×(d42−d52)×Ph < π2/4×(d42−d72)×Pa
(2)
上式において、左辺は、閉止部品59に対して紙面左側(出側室71o)から加えられる力を示している。右辺は、閉止部品59に対して紙面右側から加えられる力を示している。閉用パイロットポート69に付与される圧力は0としている。
更に簡略化すれば、以下の関係が成り立てばよいことになる。
(d42−d72)×Pa−(d42−d52)×Ph>0 (2)′
ここで、例えば、Ph=Paであると仮定して上式を整理すると、d5>d7となる。従って、例えば、d5>d7の場合は、パイロット室77にパイロット圧が導入されていない状態では、PhがPaまで上昇しても、図7の開状態が維持され、自閉はなされないことになる。
なお、(2)式の右辺において、d4に代えてd6を用いれば、切換バルブ53が閉じられている状態から開かれている状態へ移行するための関係を導くことができる。
(2)式からも理解されるように、開動作に関しては、バルブピストン61は、閉止部品59とは反対側へ移動できさえすればよい。従って、開動作に介しては、バルブピストン61について、径の大小関係について特に制約はない。図4及び図7では、開用室73oにパイロット圧を導入しているが、バルブピストン61は、ヘッド側室31hの圧力によって閉止部品59とは反対側へ移動してもよい。
(自閉に係る径の大小関係)
図8に示すように、パイロット室77のパイロット圧で自閉を補助しつつ切換バルブ53が自閉するために、例えば、以下の関係が成り立つように径が設定されてよい。
π2/4×(d42−d52)×Ph+π2/4×d52×Pp
> π2/4×(d42−d72)×Pa
(3)
上式において、左辺は、閉止部品59に対して紙面左側(出側室71o及びパイロット室77)から加えられる力を示している。右辺は、閉止部品59に対して紙面右側から加えられる力を示している。
Pp=Paとして、更に簡略化すれば、以下の関係が成り立てばよいことになる。
(d42−d52)×Ph+(d52−d42+d72)×Pa>0 (3)′
ここで、例えば、Ph=Paであると仮定すると、d7>0であればよいことになる。換言すれば、シャフト59sを設けることによって、PhがPa以下の状態でも自閉が可能になっている。
なお、(3)式の右辺において、d4に代えてd6を用いれば、切換バルブ53の自閉後、その自閉を維持するための関係を導くことができる。
バルブピストン61は、バルブシリンダ73の閉用室73c側の駆動限に位置している状態が維持されていればよい。従って、例えば、以下の関係が成り立つように径が設定されてよい。
π2/4×(d22−d12)×Pp < π2/4×(d22−d32)×Pp
+π2/4×d52×Pp+π2/4×(d32−d52)×Ph (4)
上式において、左辺は、バルブピストン61に対して紙面左側(本体室73ca)から加えられる力を示している。右辺は、バルブピストン61に対して紙面右側(開用室73o、パイロット室77及び出側室71o)から加えられる力を示している。
更に整理すると、以下の関係が成り立てばよいことになる。
(d52+d12−d32)×Pp+(d32−d52)×Ph>0 (4)′
ここで、例えば、Ph=0と仮定すれば、d52+d12−d32>0となる。従って、この大小関係が満たされる場合は、例えば、閉用室73c及び開用室73oの双方にパイロット圧を導入している状態で、ヘッド側室31hの圧力が極端に低くても、バルブピストン61を閉用室73c側の駆動限に留めることができる。
(制御装置の機能部)
図2に戻って、制御装置13は、特に図示しないが、例えば、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置を含んで構成されている。そして、CPUがROM及び/又は外部記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによって各種の機能部(13a〜13d)が構築される。
例えば、閉動作制御部13aは、図3及び図6に示した強制閉じ動作を行うようにパイロット回路55を制御する。開動作制御部13bは、図4及び図7に示した開動作を行うようにパイロット回路55を制御する。自閉制御部13dは、図5及び図8に示したパイロット圧が自閉を補助する状態になるようにパイロット回路55を制御する。移行判定部13cは、図4及び図7に示した開状態から図5及び図8に示した自閉が補助される状態へ移行すべき時期が到来したか否かを判定する。
(射出装置のセンサ)
射出装置9は、例えば、ヘッド側室31hの圧力を検出するヘッド側圧力センサ49H、ロッド側室31rの圧力を検出するロッド側圧力センサ49R、金型101内(例えばキャビティCa内)の圧力を検出する金型内圧力センサ49D(以下、これらを区別せずに、単に「圧力センサ49」ということがある。)、プランジャ23(ピストンロッド37)の位置を検出する位置センサ51を有している。
制御装置13は、ヘッド側圧力センサ49Hの検出圧力、ロッド側圧力センサ49Rの検出圧力、射出ピストン33の径(断面積)、ピストンロッド37の径(断面積)及びプランジャチップ23aの径(断面積)に基づいて、成形材料の圧力を算出することができる。換言すれば、ヘッド側圧力センサ49H及びロッド側圧力センサ49Rは、成形材料の圧力を検出可能である。
ロッド側室31rがタンク圧とされている状態においては、制御装置13は、ヘッド側圧力センサ49Hの検出圧力(及び上記の各種の断面積)のみに基づいて成形材料の圧力を近似的に算出することができる。従って、ロッド側圧力センサ49Rは、設けられなくてもよい。
金型内圧力センサ49Dは、金型内の成形材料の圧力を直接的に検出する。なお、上記のように、ヘッド側圧力センサ49H等の検出圧力に基づいて成形材料の圧力を算出(検出)することができるから、金型内圧力センサ49Dは、設けられなくてもよい。
以下において、溶湯(成形材料)の圧力(射出圧力)という場合、特に断りがない限りは、ヘッド側圧力センサ49H(及び必要に応じてロッド側圧力センサ49R)によって検出されるもの、及び金型内圧力センサ49Dによって検出されるもののいずれでもよいものとする。換言すれば、マシン側のセンサ(49H)によって検出される溶湯の圧力と、金型側のセンサ(49D)によって検出される溶湯の圧力とを区別しないことがある。
位置センサ51は、例えば、シリンダ部31に対するピストンロッド37の位置を検出し、プランジャ23の位置を間接的に検出する。位置センサ51の構成は適宜なものとされてよい。例えば、位置センサ51は、不図示のスケール部とともに磁気式又は光学式のリニアエンコーダを構成するものであってもよいし、ピストンロッド37に固定された部材との距離を計測するレーザー測長器によって構成されてもよい。位置センサ51、又は制御装置13は、検出位置の微分値であるプランジャ23の速度(射出速度)を取得(検出)することも可能である。
(射出装置の動作)
図9は、射出装置9の動作を説明するための図である。この図において、横軸は、時間tを示しており、紙面右側ほど経過時間が長いことを示している。紙面左側の縦軸は、射出速度を示しており、紙面上方ほど速度が速いことを示している。紙面右側の縦軸は、射出圧力を示しており、紙面上方ほど圧力が大きいことを示している。線Ln1は、射出速度の経時変化を示している。線Ln2は、射出圧力の経時変化を示している。
射出装置9は、概観すると、低速射出(概ね時点t0〜t1)、高速射出(概ね時点t1〜t2)、増圧(概ね時点t3〜t4)及び保圧(概ね時点t4以降)を順に行う。
射出の初期段階において、比較的低速でプランジャ23を前進させる低速射出(t0〜t1)が行われることによって、例えば、溶湯による空気の巻き込みが抑制される。続いて、比較的高速でプランジャ23を前進させる高速射出(t1〜t2)が行われることによって、例えば、溶湯の凝固に遅れずに速やかに溶湯が金型101内に充填される。溶湯が金型101内の概ね充填された後、溶湯の圧力を上昇させる増圧(t3〜t4)及び増圧した圧力を維持する保圧(t4〜)が行われることにより、例えば、成形品のヒケが低減される。
各工程における射出装置9の動作は、具体的には、以下のとおりである。
(低速射出:t0〜t1)
低速射出の開始直前において、射出装置9は、図1及び図2に示す状態となっている。すなわち、射出シリンダ27の射出ピストン33及び増圧ピストン35は、後退限等の初期位置に位置している。アキュムレータ43は、作動液の充填が完了している。各種バルブは、例えば、閉じられており、作動液の流れは基本的に禁止されている。
低速射出の開始直前において、切換回路48は、速度アキュムレータ43Aからヘッド側室31hへの作動液の流れを禁止している。より具体的には、制御装置13(閉動作制御部13a)は、図3及び図6に示した状態となるようにパイロット回路55を制御している。すなわち、切換バルブ53においては、閉用室73cにパイロット圧が導入されているとともに開用室73oからの作動液の排出が許容されている。これにより、閉止部品59はバルブピストン61によって弁座71sに押し付けられ、切換バルブ53は閉じられている。
制御装置13は、所定の射出開始条件が満たされたか否か判定し、満たされたと判定すると、低速射出を開始する。具体的には、制御装置13(開動作制御部13b)は、図4及び図7に示した状態となるようにパイロット回路55を制御する。すなわち、切換バルブ53においては、開用室73oにパイロット圧が導入されるとともに閉用室73cからの作動液の排出が許容される。これにより、バルブピストン61は閉止部品59とは反対側へ移動し、閉止部品59は入側室71iの圧力によって開かれる。ひいては、速度アキュムレータ43Aからヘッド側室31hへ作動液が供給される。また、制御装置13は、第5バルブ47Eを開き、ロッド側室31rからの作動液の排出を許容する。その結果、射出ピストン33が前進し、ひいては、プランジャ23が前進し、射出が行われる。
射出開始条件は、例えば、固定金型103及び移動金型105の型締が終了し、不図示の給湯装置によるスリーブ21への溶湯の供給が完了したことなどである。切換バルブ53を開く時期と、第5バルブ47Eを開く時期とは、同時であってもよいし、一方が他方よりも早くてもよい。低速射出中のプランジャ23の速度は、例えば、第5バルブ47Eの開度によって制御される。具体的には、例えば、制御装置13は、位置センサ51により検出されるプランジャ23の速度に基づいて、第5バルブ47Eの開度をフィードバック制御する。時々刻々と更新される目標位置に対する位置制御によって実質的に速度フィードバックが行われてもよい。低速射出速度VLは、適宜に設定されてよいが、例えば、1m/s未満である。多段制御が行われてもよい。
(高速射出:t1〜t2)
制御装置13は、所定の高速切換条件が満たされると、プランジャ23の速度を上記の低速射出速度VLよりも高速の高速射出速度VHに切り換え、高速射出を行う。具体的には、例えば、制御装置13は、低速射出に引き続いて速度アキュムレータ43Aからヘッド側室31hへ作動液を供給しつつ、第5バルブ47Eの開度を大きくするように液圧装置29を制御する。高速射出においても、低速射出に引き続いて速度のフィードバックが行われる。高速切換条件は、例えば、プランジャ23が所定の高速切換位置に到達したことである。制御装置13は、位置センサ51の検出値又は射出開始からの経過時間に基づいて高速切換条件が満たされたか否かを判定してよい。または、そのような判定が行われず、所定の時間刻みで設定された目標速度の時系列又は目標位置の時系列に従ってフィードバック制御が行われた結果として高速切換が行われてもよい。高速射出速度VHは、適宜に設定されてよいが、例えば、1m/s以上である。
(減速射出:t2〜t3)
溶湯がキャビティCaにある程度充填されると、プランジャ23は、その充填された溶湯から反力を受けて減速され、その一方で、射出圧力は、急激に上昇していく。なお、図9では、減速前の射出圧力を便宜上0として図示している。また、充填時の衝撃を緩和するために、プランジャ23が所定の減速位置に到達するなど所定の減速開始条件が満たされたときに第5バルブ47Eの開度を小さくするなど、適宜な減速制御がなされてもよい。
(増圧:t3〜t4)
制御装置13(移行判定部13c)は、所定の第1条件が満たされたか否か判定し、満たされたと判定すると、第4バルブ47Dを開くための指令を液圧装置29に出力する。これにより、第4バルブ47Dが開かれ、増圧アキュムレータ43Bから後側室31gへ作動液が供給される。ひいては、増圧ピストン35が前進を開始する。
また、制御装置13(移行判定部13c)は、所定の第2条件が満たされたか否か判定する。満たされたと判定されると、制御装置13(自閉制御部13d)は、切換バルブ53が、図5及び図8を参照して説明したパイロット圧によって自閉が補助される状態になるようにパイロット回路55を制御するための指令を出力する。これにより、切換バルブ53は、閉用室73c及び開用室73oの双方にパイロット圧が導入され、バルブピストン61を閉用室73c側の駆動限に位置させた状態で、パイロット室77にパイロット圧が導入される。
そして、プランジャ23が金型101内の溶湯から受ける力等によって減速してヘッド側室31hの圧力が上昇すると、切換バルブ53は、そのヘッド側室31hの圧力(出側室71oの圧力)によって自閉する。また、ヘッド側室31hには、増圧アキュムレータ43Bからの圧力が増圧ピストン35によって増圧されて伝えられ、ヘッド側室31hの圧力は上昇が継続される。これにより、射出圧力は高くなっていく。
上記の第1条件及び第2条件は、互いに同一の条件であってもよいし、互いに異なる条件であってもよい。第1条件及び第2条件は、互いに異なる条件である場合、いずれが先に満たされるように設定されてもよい。また、第1条件及び第2条件は、プランジャ23の減速開始(時点t2)よりも前に満たされるようなものであってもよいし、減速開始よりも後に満たされるようなものであってもよい。なお、このことから理解されるように、便宜上、概ね時点t3を増圧開始の時点として説明することがあるが、増圧開始の定義は種々可能である。
第1条件は、例えば、プランジャ23の位置が所定の増圧発進位置に到達したこととされてよい。第2条件は、例えば、プランジャ23の位置が所定の自閉準備位置に到達したこととされてよい。増圧発進位置及び自閉準備位置は、例えば、プランジャ23が停止する予定の位置よりも手前に設定されてよい(時点t3よりも先に到来するように設定されてよい。)。さらに、増圧発進位置及び自閉準備位置は、減速開始位置よりも手前に設定されてよい(時点t2よりも先に到来するように設定されてよい。)。増圧発進位置及び/又は自閉準備位置は、例えば、射出速度の設定、ビスケット厚の設定値(予定値)、及び/又は増圧ピストン35の制御遅れの時間等に応じて、制御装置13によって自動的に設定されてもよいし、オペレータによって入力装置17を介して設定されてもよい。
なお、第1条件及び/又は第2条件は、上記の他、例えば、射出速度が一定の速度まで低下したこと、又は射出圧力が一定の圧力まで上昇したことなどとされてもよい。以上に述べた2以上の条件が満たされたときに、第1条件及び/又は第2条件が満たされたと判定されてもよい。
制御装置13は、所定の第3条件が満たされると、第5バルブ47Eの開度が増圧用(圧力制御用)の開度になるように液圧装置29に指令を出力する。すなわち、制御装置13は、第5バルブ47E(流量制御弁)の制御を速度制御から圧力制御に切り替える。第3条件は、例えば、第1条件及び/又は第2条件よりも後に満たされるように設定されている。例えば、第3条件は、射出速度が一定の速度まで低下したこと、又は射出圧力が一定の圧力まで上昇したことなどである。
増圧中の第5バルブ47Eの制御は適宜なものとされてよい。例えば、第5バルブ47Eの開口度は、予め定められた一定の開口度とされる。あるいは、第5バルブ47Eの開口度は、所望の昇圧曲線が得られるように、圧力センサ49の検出値に基づいてフィードバック制御されてもよい。
その後、射出圧力は、終圧PEに到達する。なお、終圧PEは、ロッド側室31rの圧力がタンク圧と同等になるまでロッド側室31rの作動液が排出されることによって、増圧アキュムレータ43Bの圧力によって決定されてもよいし、ロッド側室31rの圧力がタンク圧と同等となる前に、第5バルブ47E等によってロッド側室31rからの作動液の排出が禁止されることによって、そのときのロッド側室31rの圧力と増圧アキュムレータ43Bの圧力とによって決定されてもよい。
(保圧:t4〜)
制御装置13は、増圧後、射出圧力が終圧PEとなっている状態を維持する。この間に、溶湯は冷却されて凝固する。溶湯が凝固すると、制御装置13は、増圧アキュムレータ43Bから後側室31gへの液圧の供給を停止し、保圧を終了する。
(切換バルブの動作の例)
図10は、切換バルブ53の動作の例を示す模式図である。
この図では、最上段に射出シリンダ27を模式的に示している。上述したように、切換バルブ53は、例えば、プランジャ23(ピストンロッド37)が所定の自閉準備位置に到達したときに、図5及び図8を参照して説明したパイロット圧によって自閉が補助される状態とされてよい。そして、点線Lp1は、自閉準備位置にプランジャ23が到達したときのピストンロッド37の先端位置を示している。
点線Lp2〜Lp4は、プランジャ23が概ね停止したとき(図9の時点t3に相当)のピストンロッド37の先端位置を示している。スリーブ21に供給される1ショット分の溶湯の量(湯量)は、サイクル間でばらつくことがある。点線Lp2は、湯量が目標値に一致した場合の位置を示している。点線Lp3は、湯量が目標値よりも多く、その結果、点線Lp2よりも手前側(金型101とは反対側)でプランジャ23が停止した場合の位置を示している。点線Lp4は、湯量が目標値よりも少なく、その結果、点線Lp2よりも先(金型101側)でプランジャ23が停止した場合の位置を示している。
射出シリンダ27の下に描かれている3つのグラフは、射出速度、射出圧力及び切換バルブ53の状態の経時変化を示している。横軸は、図9の横軸と同様に、時間tを示している。ただし、この図では、図9とは逆に、紙面左側ほど時間tが経過していることを示している。
3つのグラフそれぞれにおいて、縦軸の上部は、図9の縦軸と同様に、射出速度及び射出圧力を示している。線Ln11、Ln21及びLn31は、図9の線Ln1と同様に、射出速度の経時変化を示している。線Ln12、Ln22及びLn32は、図9の線Ln2と同様に、射出圧力の経時変化を示している。
3つのグラフそれぞれにおいて、縦軸の下部は、切換バルブ53の開度を示しており、上方側ほど開度が高いことを示している。「開」の位置は全開を示し、「閉」の位置は全閉を示している。そして、線Ln13、Ln23及びLn33は、切換バルブ53の開度の経時変化を示している。
ピストンロッド37の先端位置を示す点線Lp1〜Lp4と、3つのグラフの横軸tとの交点は、ピストンロッド37の先端が点線Lp1〜Lp4で示す位置に到達したときの時点に対応している。
3つのグラフにおいて、射出速度(線Ln11、Ln21及びLn31)が0になるときの時点(図9の時点t3に相当)と、点線Lp2〜Lp4との位置関係から理解されるように、3つのグラフは、上から順に、湯量が目標値に一致する場合(点線Lp2)の波形、湯量が目標値よりも多い場合(点線Lp3)の波形、及び湯量が目標値よりも少ない場合(点線Lp4)の波形を示している。
3つのグラフにおいて、射出速度の波形(線Ln11等)と射出圧力の波形(線Ln12等)とを結ぶ点線Lp11、Lp21及びLp31は、図9の時点t2に相当する時点を示している。すなわち、これらの点線は、プランジャ23の減速が開始されるとともに、射出圧力が比較的急激に上昇する時点を示している。別の観点では、減速開始時のピストンロッド37の先端位置(プランジャ23の位置)を示している。
点線Lp11、Lp21及びLp31の位置の比較から理解されるように、湯量が目標値よりも多い場合(Lp21)においては、湯量が目標値に一致する場合(Lp11)よりも、減速開始時のプランジャ23の位置は手前側(金型101とは反対側)である(別の観点では減速開始時は早い。)。逆に、湯量が目標値よりも少ない場合(Lp31)においては、湯量が目標値に一致する場合(Lp11)よりも、減速開始時のプランジャ23の位置は金型101側である(別の観点では減速開始時は遅い)。
自閉準備位置を示す点線Lp1と、上記の点線Lp11、Lp21及びLp31との位置関係から理解されるように、この例では、自閉準備位置は、湯量にばらつき(想定範囲内のもの)が生じても、減速開始位置よりも手前(金型101とは反対側)になるように設定されている。
点線Lp1で示されている時点よりも前においては、切換バルブ53は、図4及び図7を参照して説明した状態とされている。従って、線Ln13、Ln23およびLn33で示される切換バルブ53の開度は、全開となっている。
点線Lp1で示されている時点で、図5及び図8を参照して説明したように、パイロット圧がパイロット室77に導入されると、閉止部品59は、パイロット室77におけるパイロット圧Pp及び出側室71oにおける圧力Phが閉止部品59を入側室71i側へ押す力と、入側室71i側の圧力Paが閉止部品59を出側室71o側へ押す力とが釣り合う位置まで、入側室71i側へ移動していく。すなわち、切換バルブ53の開度は所定の開度D1まで小さくなっていく。そして、その開度D1が維持される。
その後、溶湯の金型101内への充填が更に進み、プランジャ23が金型101内の溶湯から受ける力によってプランジャ23の速度がある程度まで低下すると、ヘッド側室31hの圧力が上昇する。その結果、切換バルブ53は、その開度を開度D1よりも更に小さくさせ、さらには、全閉状態となる。全閉の時期は、図示の例では、プランジャ23が概ね停止する時期となっている。
3つのグラフの比較から理解されるように、湯量のばらつきによらず、切換バルブ53は、上記のように、開度D1までの閉動作、開度D1の維持及び開度D1からの自閉を行う。また、開度D1の大きさ及び開度D1へ至るまでの時間長さは、湯量のばらつきによらずに、概ね同等である。
ただし、湯量が目標値よりも多く、相対的に早くプランジャ23が停止する場合においては、開度D1が維持される時間長さは相対的に短くなる。逆に、湯量が目標値よりも少なく、相対的に遅くプランジャ23が停止する場合においては、開度D1が維持される時間長さは相対的に長くなる。これにより、切換バルブ53が全閉される時期がプランジャ23の停止時期に合わせて自動的に調整されている。
図11は、切換バルブ53の動作の他の例を示す模式図であり、図10と同様のものである。
図10と図11とでは、例えば、金型101が互いに異なるなど、成形条件が互いに異なる。ひいては、射出速度及び/又は射出圧力の波形も厳密には互いに異なる。ただし、ここでは、図10と図11との対応関係の把握を容易にする便宜上、切換バルブ53の動作を示す波形以外は、図10と同一の波形及び符号を用いている。線Ln14、Ln24及びLn34は、切換バルブ53の動作を示しており、図10の線Ln13、Ln23及びLn33に対応している。
この例においても、図10と同様に、点線Lp1で示されている時点で図5及び図8を参照して説明したようにパイロット圧がパイロット室77に導入されると、点線Lp1の手前までは全開とされていた切換バルブ53は、その開度を小さくしていく。ただし、切換バルブ53の開度は、図10とは異なり、所定の開度D1を維持しない。具体的には、例えば、射出速度の減速が開始されると(点線Lp11、Lp21及びLp31)、ヘッド側室31hの圧力が上昇し、これに伴い、切換バルブ53の開度を小さくする速度が速くなる。そして、切換バルブ53は全閉に至る。全閉の時期は、図示の例では、プランジャ23が概ね停止する時期となっている。
3つのグラフの比較から理解されるように、湯量のばらつきによらず、切換バルブ53は、上記のように、射出速度の減速開始までの比較的緩やかな閉動作、及び射出速度の減速開始からの比較的急激な閉動作を行う。また、各閉動作の速度は、湯量のばらつきによらずに概ね同等である。
ただし、湯量が目標値よりも多く、相対的に早くプランジャ23が停止する場合においては、緩やかな閉動作から急激な閉動作への移行が早期に行われる。逆に、湯量が目標値よりも少なく、相対的に遅くプランジャ23が停止する場合においては、緩やかな閉動作から急激な閉動作への移行が遅くに行われる。これにより、切換バルブ53が全閉される時期がプランジャ23の停止時期に合わせて自動的に調整されている。
図10及び図11に示すように、成形条件によって、切換バルブ53における開度の経時変化(波形)は異なることがある。ただし、いずれにせよ、切換バルブ53が自閉によって全閉される時期は、プランジャ23の停止時期に合わせて自動的に調整される。
図12は、比較例に係る切換バルブの動作の他の例を示す模式図であり、図10及び図11と同様のものである。
比較例に係る切換バルブは、例えば、自閉する機能を有しておらず、例えば、パイロット圧によって開閉が行われる。比較例は、実施形態の切換バルブ53において、第2条件が満たされたときに(プランジャ23が自閉準備位置に到達したときに)、図5及び図8を参照して説明した自閉がパイロット圧によって補助される状態ではなく、図3及び図6を参照して説明した強制閉じの状態とされた例と捉えられてもよい。
図12の各種の線は、以下のように、図10の各種の線に対応している。Ln15:Ln11、Ln16:Ln12、Ln25:Ln21、Ln26:Ln22、Ln35:Ln31、Ln36:Ln32、Ln17:Ln13、Ln27:Ln23、Ln37:Ln33。
図12の3つのグラフの比較から理解されるように、比較例においては、湯量のばらつきによらず(別の観点ではプランジャ23の停止時期によらず)、一定の時期に切換バルブが全閉される。その結果、3つのグラフ間で射出圧力の波形が大きく異なるものとなる。
具体的には、例えば、まず、上段のグラフに示されているように、湯量が目標値に一致しているときは、切換バルブ(線Ln17)の全閉の時期は、プランジャ23の停止時期(線Lp2)に一致する。また、射出圧力(線Ln16)は、意図した昇圧曲線を実現する。
一方、例えば、中段のグラフに示されているように、湯量が多く、プランジャ23が早期に停止する場合においては、切換バルブ(線Ln27)の全閉がプランジャ23の停止(線Lp3)に遅れる。その結果、ヘッド側室31hの圧力が速度アキュムレータ43Aに逃げることを許容していまい、射出圧力(線Ln26)が上昇しない(又は上昇が抑えられてしまう)期間が生じる。
また、例えば、下段のグラフに示されているように、湯量が少なく、プランジャ23が遅くに停止する場合においては、切換バルブ(線Ln37)の全閉がプランジャ23の停止(線Lp4)よりも早くに行われる。その結果、速度アキュムレータ43Aからヘッド側室31hへの作動液の供給が停止され、射出速度が急激に低下する。ひいては、プランジャ23が停止するまでに大きなタイムラグが生じてしまう。
一方、図10及び図11から理解されるように、本実施形態においては、切換バルブ53が全閉となる時期は、プランジャ23の停止時期に応じて自動的に調整されることから、変形例のような不都合は生じない。その結果、例えば、湯量のばらつきによらずに、所望の昇圧曲線を得ることが容易化される。
以上のとおり、本実施形態では、射出装置9は、成形材料を金型101内へ押し出すプランジャ23を駆動する射出シリンダ27と、液圧源としての速度アキュムレータ43Aと、速度アキュムレータ43Aと射出シリンダ27との間の作動液の流れを許容及び禁止する切換バルブ53と、切換バルブ53へのパイロット圧の供給を許容及び禁止するパイロット回路55と、を有している。切換バルブ53は、バルブ本体71、閉止部品59、及びパイロット部材(バルブピストン61)を有している。バルブ本体71は、速度アキュムレータ43Aに通じている入口63、及び射出シリンダ27(より詳細にはヘッド側室31h)に通じている出口65を有している。閉止部品59は、バルブ本体71内をその軸方向に、入口63に通じている入側室71iと、出口65に通じている出側室71oとに区画しており、バルブ本体71に対する入側室71i側への移動によって入側室71iと出口65とを遮断し、バルブ本体71に対する出側室71o側への移動によって入側室71iと出口65とを連通する。バルブピストン61は、閉止部品59の出側室71o側の面(より詳細には凹部59rの内面)とで、パイロット回路55に通じているパイロット室77を構成している。
従って、例えば、切換バルブ53は、速度アキュムレータ43Aからの圧力によって開かれて速度アキュムレータ43Aから射出シリンダ27への作動液の流れを許容している状態において、射出シリンダ27(ヘッド側室31h)の作動液の圧力上昇によって自閉可能である(図8)。その結果、図12を参照して説明したような不都合の発生が抑制される。
さらに、切換バルブ53では、その自閉をパイロット圧によって補助することができる。その結果、例えば、ヘッド側室31hの圧力上昇に対する自閉の応答性が向上する。
ここで、ばねによって閉止部品59を入側室71i側へ付勢して、自閉を補助することが考えられる。しかし、ばねの付勢力は閉止部品59に常に作用する。従って、速度アキュムレータ43Aから射出シリンダ27へ大量の作動液を供給すべきときにも(例えば高速射出においても)、ばねの付勢力によって閉止部品59が入側室71i側へ移動してしまい、切換バルブが全開とならないおそれがある。例えば、図10の開度D1が維持される状態が高速射出の全体に亘って生じるおそれがある。
一方、パイロット圧によって自閉を補助する時期は任意に設定できる。従って、例えば、高速射出開始後の少なくとも一部において、パイロット室77にパイロット圧を供給しないことによって、切換バルブ53を全開にして、速度アキュムレータ43Aから射出シリンダ27へ供給される作動液の流量を確保することができる。
なお、本実施形態では、切換バルブ53にばねは設けられていないが、上記のような不都合が生じない程度の付勢力を発揮するばねが切換バルブ53に組み込まれていてもよい。
また、閉止部品59の出側室71o側の面と、バルブピストン61とでパイロット室77が構成されていることから、閉止部品59は、パイロット圧によって駆動される部材によって付勢されるのではなく、パイロット圧によって直接的に付勢される。従って、例えば、他の部材の摺動抵抗によってパイロット圧が減じられて閉止部品59に伝わるのではなく、パイロット圧が直接に閉止部品59に伝わる。その結果、例えば、自閉に係る圧力の釣り合いの条件の予測及び設定等が容易である。
また、本実施形態では、切換バルブ53は、バルブシリンダ73及びバルブピストン61を有している。バルブシリンダ73は、パイロット回路55に通じている閉用パイロットポート69を有しており、バルブ本体71に対して出側室71o側に直列に固定されている。バルブピストン61は、バルブシリンダ73内をその軸方向に、バルブ本体71側の開用室73oと、その反対側に位置しており、閉用パイロットポート69と通じている閉用室73cとに区画している。閉止部品59及びバルブピストン61の一方(本実施形態ではバルブピストン61)は、ロッド75を有している。ロッド75は、出側室71o及び開用室73oを通過しており、出側室71o及び開用室73oよりも小径で、閉止部品59及びバルブピストン61の他方(本実施形態では閉止部品59)との間にパイロット室77を構成している。バルブピストン61は、閉用室73cとパイロット室77とを連通している連通流路79を有している。
従って、例えば、切換バルブ53は、パイロット圧によって自閉を補助する動作だけでなく、パイロット圧によってバルブピストン61を閉止部品59側へ移動させ、入側室71iと出口65とを遮断する強制閉じ動作(図6)が可能である。別の観点では、後述する第2変形例(図14)との比較から理解されるように、強制閉じを行いたい場合において、パイロット室77に高い圧力のパイロット圧を導入する必要性が低減される。また、例えば、強制閉じに利用されるバルブピストン61及びバルブシリンダ73を利用して、パイロット室77の形成及びパイロット室77へのパイロット圧の導入が行われることから、構成が簡素である。
また、本実施形態では、バルブピストン61は、ロッド75を有している。閉止部品59は、出側室71o側に凹部59rを有している。ロッド75は、先端側部分(先端部75c)が凹部59rに嵌合している。凹部59rの内面とロッド75の先端面とによってパイロット室77が構成されている。
従って、例えば、閉止部品59にバルブピストン61のロッド75を挿入する簡単な構成で、出側室71oから隔離されたパイロット室77を構成することができる。また、例えば、後述する第1変形例(図13)との比較から理解されるように、パイロット室77の径(先端部75cの径)の設定と、開用室73oの断面積(根本部75aの径)の設定とを別個に行うことができる。
また、本実施形態では、バルブピストン61の閉用室73cにおける受圧面積(径d2参照)は、閉止部品59の入側室71i側における受圧面積(径d4及びd7参照)よりも大きい。
従って、例えば、強制閉じ動作(図6)は、閉用室73cの圧力と、入側室71iの圧力とが同等の状態で実現できる。その結果、例えば、後述する第2変形例(図14)との比較から理解されるように、入側室71iに作動液を供給する速度アキュムレータ43Aの圧力を、そのまま(増圧することなく)、パイロット圧として利用することができる。
また、本実施形態では、バルブピストン61は、閉用室73c側へ移動したときに、バルブシリンダ73の閉用室73c側の端部に当接して、閉用室73cをその軸方向に交差する方向において、閉用パイロットポート69に通じている本体室73caと、閉用パイロットポート69から隔離されている付加室73cbとに区画する当接部(突部61b)を有している。
従って、既に説明したように、図6に示す強制閉じ状態においては、バルブピストン61の閉用室73cにおける受圧面積を相対的に大きくして、切換バルブ53を閉状態に維持する力を確保できる。その一方で、図8を参照して説明したパイロット圧によって自閉を補助している状態においては、バルブピストン61の閉用室73cにおける受圧面積を相対的に小さくして、バルブピストン61が閉止部品59側へ移動してしまうおそれを低減できる。
また、本実施形態では、切換バルブ53は、軸方向を水平方向として、速度アキュムレータ43Aと射出シリンダ27との間に配置されている。従って、例えば、閉止部品59を出側室71o側(又は入側室71i)に移動させる力を小さくすることができる。ひいては、逆側へ閉止部品59を移動させる力も小さくできる。その結果、バルブピストン61等の構成を小さくすることができる。また、切換バルブ53を分解してメンテナンスすることが容易である。
また、別の観点では、本実施形態では、射出装置9は、射出シリンダ27と、液圧源としての速度アキュムレータ43Aと、切換バルブ53と、パイロット回路55と、パイロット回路55を制御する制御装置13と、を有している。切換バルブ53は、バルブ本体71、閉止部品59、及びパイロット機構(バルブシリンダ73及びバルブピストン61)を有している。パイロット機構(バルブシリンダ73及びバルブピストン61)は、パイロット回路55からのパイロット圧による力を、出側室71oの圧力とは並列に、閉止部品59に対して出側室71o側から付与する。制御装置13は、速度アキュムレータ43Aから切換バルブ53を経由して射出シリンダ27へ作動液が供給されて射出が行われている状態で所定の条件(第2条件)が満たされたときにパイロット機構へのパイロット圧の導入をパイロット回路55に開始させる。上記の導入が開始されるパイロット圧によって閉止部品59に付与される力は、入側室71iの作動液が閉止部品59に付与する力よりも小さい。
従って、例えば、パイロット圧によって自閉を補助することができる。なお、この観点においては、必ずしもパイロット圧が閉止部品59の出側室71o側の面に直接的に作用しなくてもよい。例えば、バルブピストン61のような部材が、強制閉じが行われない程度の力で、閉止部品59を押圧して、自閉が補助されてもよい。
(変形例)
以下、変形例に係る切換バルブについて説明する。以下の説明では、実施形態の構成と共通または類似する構成について、実施形態の構成に付した符号を用い、また、図示や説明を省略することがある。なお、実施形態の構成と対応(類似)する構成については、実施形態の構成と異なる符号を付した場合においても、特に断りがない点は、実施形態の構成と同様とされてよい。
(第1変形例)
図13は、第1変形例に係る切換バルブ253の構成を示す断面図である。図13は、自閉した状態を示しており、実施形態の図8に対応している。
実施形態では、閉止部品59に凹部59rが形成され、バルブピストン61にロッド75が形成され、凹部59rにロッド75が嵌合することによってパイロット室77が構成された。これに対して、第1変形例では、バルブピストン261に凹部261rが形成され、閉止部品259にロッド275が形成され、凹部261rにロッド275が嵌合されることによってパイロット室77が構成されている。パイロット室77は、実施形態と同様に、バルブピストン261に形成された連通流路279によって閉用室73cと連通されている。このような構成によっても、第1実施形態と同様の種々の効果を奏することができる。
(第2変形例)
図14は、第2変形例に係る切換バルブ353の構成を示す断面図である。図14は、自閉した状態を示しており、実施形態の図8に対応している。
実施形態では、バルブ本体71に直列にバルブシリンダ73及びバルブピストン61が設けられ、バルブピストン61のロッド75が閉止部品59の凹部59rに挿通されることによってパイロット室77が構成された。これに対して、第2変形例では、バルブ本体371にロッド375が設けられ、ロッド375が凹部59rに挿通されることによってパイロット室77が構成されている。パイロット室77は、ロッド375に設けられた連通流路379によってパイロット回路355と接続されている。このような構成においても、例えば、実施形態と同様に、パイロット室77にパイロット圧を導入することによって、切換バルブ353の自閉を補助することができる。
ただし、切換バルブ353では、実施形態とは異なり、バルブシリンダ73及びバルブピストン61が設けられていないから、例えば、バルブピストン61によって閉止部品59を押圧して強制閉じ(図6)を行うことができない。そこで、例えば、第2変形例では、パイロット回路355は、自閉を補助するための相対的に低いパイロット圧と、強制閉じを行うための相対的に高いパイロット圧とを選択的に切換バルブ353に供給可能に構成されている。
図示の例では、パイロット回路355は、速度アキュムレータ43Aと連通流路379とを連通する流路を2つ有している。一方の流路は、速度アキュムレータ43Aの圧力をそのまま連通流路379に付与するように構成されている。他方の流路には、速度アキュムレータ43Aの圧力を増圧して連通流路379に付与するブースタ387が設けられている。ブースタ387は、例えば、射出シリンダ27の増圧シリンダ部31b及び増圧ピストン35と同様の構成である。そして、速度アキュムレータ43Aは、切換弁389によって2つの流路に対して選択的に接続される。
なお、以上の実施形態及び変形例において、ダイカストマシン1は成形機の一例である。溶湯は成形材料の一例である。速度アキュムレータ43Aは液圧源の一例である。ロッド75(バルブピストン61)、ロッド275(閉止部品259)及びロッド375は、それぞれパイロット部材及びパイロット機構の一例である。閉用パイロットポート69はパイロットポートの一例である。突部61bは当接部の一例である。
本開示に係る技術は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、樹脂を成形する射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。成形材料は、液状のものに限定されず、ある程度の粘度を有するものであってもよい。例えば、金属材料は、固液共存金属(半凝固金属又は半溶融金属)であってもよい。
また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出、縦型締横射出であってもよい。成形機がダイカストマシンである場合において、ダイカストマシンは、コールドチャンバマシンに限定されず、ホットチャンバマシンであってもよい。
射出装置は、全液圧式のものに限定されない。例えば、射出装置は、低速射出において電動機によってプランジャを駆動し、その後、射出シリンダによって高速射出及び増圧を行うハイブリッド式のものであってもよい。また、全液圧式の射出装置において、低速射出は、アキュムレータからの作動液ではなく、ポンプからの作動液によって行われてもよい。
射出シリンダは、増圧式のものに限定されず、実施形態の増圧シリンダ部31b及び増圧ピストン35を有さない、いわゆる単胴式の射出シリンダであってもよい。この場合であっても、例えば、速度アキュムレータからヘッド側室へ作動液を供給する状態から増圧アキュムレータからヘッド側室(31h)へ作動液を供給する状態に移行する構成において、切換バルブが利用可能である。また、増圧式の射出シリンダは、射出シリンダ部と増圧シリンダ部とが分離しているものであってもよい。
射出シリンダが増圧式のものである場合において、速度アキュムレータ及び増圧アキュムレータが設けられずに、1つのみアキュムレータが設けられてもよい。そして、射出においては、前記1つのアキュムレータからヘッド側室(31h)へ作動液が供給され、増圧においては、前記1つのアキュムレータから後側室(31g)へ作動液が供給されてよい。この構成においても、切換バルブが利用可能である。
パイロット圧は、射出時に射出シリンダのヘッド側室に作動液を送る液圧源(実施形態では速度アキュムレータ43A)以外の液圧源から付与される圧力であってもよい。例えば、パイロット圧は、ポンプからの圧力であってもよいし、パイロット圧に専用のアキュムレータからの圧力であってもよい。
バルブシリンダ及びバルブピストンが設けられる場合において、バルブ本体とバルブシリンダとは分離されていてもよい。別の観点では、ロッド(75)は、バルブ本体とバルブシリンダとの間において外部に露出していてもよい。
実施形態及び第1変形例に例示した閉止部品及びバルブピストンの形状は一例に過ぎず、また、実施形態で例示した寸法の大小関係は必ずしも成り立つ必要は無い。例えば、バルブピストンの閉用室における受圧面積(d22)は、閉止部品の入側室における受圧面積(d62−d72)よりも大きくなくてもよい。この場合であっても、第2変形例から理解されるように、自閉を補助するときのパイロット圧よりも大きいパイロット圧を閉用室に供給することによって、強制閉じを行うことができる。
実施形態では、突部61bのテーパ面(当接部)が付加室73cbの本体室73ca側の開口周囲の角部に当接した。ただし、当接部の形状は、種々可能である。例えば、バルブピストンの端面に環状の突部を設け、その先端面を閉用室(73c)の平坦な端面に当接させて、バルブピストンの閉用室における受圧面の一部を閉用パイロットポート69から隔離してもよい。また、例えば、閉用室の端面に環状の突部を設けて、この突部の先端をバルブピストンの閉用室における平坦な受圧面に当接させ、突部の内側の付加室と、突部の外側の本体室とに区画してもよい。また、例えば、閉用パイロットポート69をバルブシリンダの端面に開口させ、半径方向の中央側の本体室と、半径方向の外側の付加室とに閉用室を区画してもよいし、所定の直径の一方側と他方側とに閉用室を区画してもよい。
本開示に係るバルブは、射出装置及び成形機だけでなく、種々の液圧装置または空圧装置に利用されてよい。