(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るダイカストマシン1の要部を示す図である。なお、以下に説明する各種の実施形態において、同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。また、図1では、図示の都合上、タンク43が2箇所に記載されている。
ダイカストマシン1は、固定金型103及び移動金型105を含む金型101を保持し、金型101の型開閉及び型締めを行う型締装置3と、金型101に形成されたキャビティCa(製品となる部分に対応する空間)に成形材料としての溶湯(溶融状態の金属材料)を射出、充填する射出装置5とを有している。なお、ダイカストマシン1は、この他、溶湯が凝固して形成された成形品Dtを移動金型105から押し出す押出装置等を有するが図示は省略する。
型締装置3は、例えば、固定金型103を保持する固定ダイプレート7と、移動金型105を保持する移動ダイプレート9と、移動ダイプレート9を型開閉方向(図1の紙面左右方向、固定ダイプレート7及び移動ダイプレート9の対向方向)に駆動する型締シリンダ装置11とを有している。
型締シリンダ装置11は、例えば、シリンダチューブ13と、シリンダチューブ13に摺動可能に収容されたピストン15と、ピストン15に固定されたピストンロッド17とを有している。シリンダチューブ13の内部に形成されたシリンダ室は、ピストン15により、ピストンロッド17側のロッド側室Cy1と、その反対側のヘッド側室Cy2とに区画されており、ロッド側室Cy1及びヘッド側室Cy2に選択的に作動液(例えば油)が供給されることにより、型締シリンダ装置11は駆動される。
型締シリンダ装置11は、例えば、シリンダチューブ13が不図示のベースを介して固定ダイプレート7に対して固定的に設けられ、ピストンロッド17が移動ダイプレート9に対して固定されており、移動ダイプレート9を型開閉方向に駆動可能である。
射出装置5は、キャビティCaに連通するスリーブ19と、スリーブ19内を摺動可能な射出プランジャ21と、射出プランジャ21を駆動する射出シリンダ装置23とを有している。
スリーブ19は、例えば、円筒状に形成されており、固定ダイプレート7を貫通して配置され、キャビティCaに通じている。不図示のラドル等によりスリーブ19内に溶湯が供給され、射出プランジャ21がスリーブ19内をキャビティ側へ前進することにより、溶湯がキャビティCaに射出、充填される。
射出シリンダ装置23は、例えば、直結形の増圧シリンダにより構成されており、射出プランジャ21に固定されたピストンロッド25と、ピストンロッド25に固定された射出用ピストン27と、射出用ピストン27の背後に配置された増圧用ピストン29と、射出用ピストン27及び増圧用ピストン29を摺動可能に収容するシリンダチューブ31とを有している。
ピストンロッド25は、例えば、カップリングを介して射出プランジャ21と同軸状に連結されている。なお、ピストンロッド25は射出プランジャ21と一体的に形成されることにより射出プランジャ21に固定されていてもよい。射出用ピストン27は、ピストンロッド25の後端に固定されている。なお、ピストンロッド25及び射出用ピストン27は、別個に形成されて固定されていてもよいし、一体的に形成されることにより固定されていてもよい。
シリンダチューブ31は、射出用ピストン27が摺動するチューブ小径部31aと、チューブ小径部31aの後端に連続し、チューブ小径部31aよりも大径のチューブ大径部31bとを有している。増圧用ピストン29は、チューブ小径部31aを摺動可能なピストン小径部29aと、チューブ大径部31bを摺動可能なピストン大径部29bとを有している。
チューブ小径部31aの内部に形成されたシリンダ室は、射出用ピストン27により、ピストンロッド25側のロッド側室C1と、その反対側のヘッド側室C2に区画されている。チューブ大径部31bの内部に形成されたシリンダ室は、増圧用ピストン29のピストン大径部29bにより、ヘッド側室C2側の前側室C3と、その反対側の後側室C4とに区画されている。
ヘッド側室C2に作動液が供給されることにより、射出用ピストン27は前進し、ひいては、射出プランジャ21はキャビティCa側へ前進する。また、後側室C4に作動液が供給されると、後側室C4の作動液の圧力が、増圧用ピストン29により、ピストン小径部29aの受圧面積に対するピストン大径部29bの受圧面積の比に応じて増圧されてヘッド側室C2に伝達され、ひいては、射出プランジャ21によりキャビティCaの溶湯が増圧される。
ダイカストマシン1は、型締シリンダ装置11及び射出シリンダ装置23を駆動するために、作動液を送出可能なポンプ33と、ポンプ33を駆動するモータ(電動機)35と、圧力が付与された作動液を保持するアキュムレータ37と、これらを接続する液圧回路39と、モータ35や液圧回路39を制御する制御装置41とを有している。
ポンプ33は、歯車ポンプやベーンポンプ等のロータの回転により作動液を吐出するロータリポンプであってもよいし、アキシャル型のプランジャポンプやラジアル式のプランジャポンプ等のピストンの往復により作動液を吐出するプランジャポンプであってもよい。また、ポンプ33は、ロータやピストンの1周期の運動における吐出量が固定された定容量ポンプであってもよいし、可変とされた可変容量ポンプであってもよい。ポンプ33は、1方向に作動液を吐出できればよいが、双方向(2方向)ポンプと構造が同一であってもよい。ポンプ33は、例えば、タンク43に貯蓄された作動液をフィルタ45を介して吸引して吐出する。
モータ35は、特に図示しないが、界磁及び電機子の一方を構成するステータと、界磁及び電機子の他方を構成し、ステータに対して回転するロータとを有している。モータ35は、直流モータであってもよいし、交流モータであってもよい。モータ35は、例えば、サーボモータにより構成されている。すなわち、モータ35には、モータ35の回転を検出するエンコーダ等のモータ用センサ47が設けられ、モータ用センサ47の検出値に基づいて、サーボドライバ(サーボアンプ)49によりモータ35のフィードバック制御がなされる。
アキュムレータ37は、例えば、気体圧式のピストン形アキュムレータにより構成されており、作動液を蓄積しているとともに、圧縮された気体の圧力をピストンを介して作動液に付与している。なお、アキュムレータ37は、重りの荷重を作動液に付与する重力式のものであってもよいし、バネの復元力を作動液に付与するバネ式のものであってもよいし、気体と作動液とを可撓性の隔膜により隔離する隔膜式のものであってもよい。
液圧回路39は、ポンプ33とアキュムレータ37とを接続する第1流路51を有しており、ポンプ33によるアキュムレータ37の蓄圧を可能としている。第1流路51には、例えば、ポンプ33側からアキュムレータ37側への流れを許容する一方で、アキュムレータ37側からポンプ33側への流れを禁止する第1逆止弁53及び第2逆止弁55が設けられている。第2逆止弁55は、第1逆止弁53よりも上流側に設けられている。
液圧回路39は、ポンプ33と射出シリンダ装置23とを接続しており、ポンプ33による射出シリンダ装置23の駆動を可能としている。具体的には、液圧回路39は、ポンプ33に接続された第2流路57と、射出シリンダ装置23のロッド側室C1に接続された第3流路59と、射出シリンダ装置23のヘッド側室C2に接続された第4流路61と、第2流路57(ポンプ33)からの作動液の供給先を第3流路59(ロッド側室C1)と第4流路61(ヘッド側室C2)との間で切換可能な射出側方向制御弁63とを有している。なお、第2流路57は、例えば、第1逆止弁53と第2逆止弁55との間において、第1流路51から分岐している。
射出側方向制御弁63は、例えば、4ポート3位置の切換弁により構成されており、ポンプ33及びタンク43と、ロッド側室C1及びヘッド側室C2との接続状態を切り換える。具体的には以下のとおりである。
射出側方向制御弁63は、3つの矩形の記号により示される3位置のうち、中央の位置(中立位置)においては、ポンプ33及びタンク43と、ヘッド側室C2及びロッド側室C1との接続を遮断する。これにより、ポンプ33からヘッド側室C2及びロッド側室C1への作動液の供給は禁止される。
射出側方向制御弁63は、3つの矩形の記号により示される3位置のうち、紙面右側の位置においては、ポンプ33とヘッド側室C2とを接続し、タンク43とロッド側室C1とを接続する。ポンプ33によりヘッド側室C2に作動液が供給されると、射出用ピストン27及びピストンロッド25は紙面左側へ前進する。ロッド側室C1の作動液は、射出用ピストン27に押し出されてタンク43に流れる。
射出側方向制御弁63は、3つの矩形の記号により示される3位置のうち、紙面左側の位置においては、ポンプ33とロッド側室C1とを接続し、タンク43とヘッド側室C2とを接続する。ポンプ33によりロッド側室C1に作動液が供給されると、射出用ピストン27及びピストンロッド25は紙面右側へ後退する。ヘッド側室C2の作動液は、射出用ピストン27に押し出されてタンク43に流れる。
射出側方向制御弁63は、例えば、電磁式の制御機構及び液圧式の制御機構が順次作動することにより位置が切り換えられるように構成されており、入力された電気信号に応じて切り換えられる。
液圧回路39は、アキュムレータ37と射出シリンダ装置23とを接続しており、アキュムレータ37による射出シリンダ装置23の駆動を可能としている。具体的には、以下のとおりである。
液圧回路39は、アキュムレータ37と射出シリンダ装置23のヘッド側室C2とを接続する第5流路65と、第5流路65に設けられ、アキュムレータ37からヘッド側室C2への流れを許容又は禁止可能な供給制御弁67とを有している。
第5流路65は、例えば、第1流路51に対して、第2逆止弁55よりもアキュムレータ37側において接続されることにより、アキュムレータ37に対して接続されている。なお、第5流路65は、第1流路51とは別個にアキュムレータ37に対して接続されていてもよい(第1流路51と一部が共通化されていなくてもよい。)。
供給制御弁67は、例えば、パイロット圧が導入されているときは閉じられ、パイロット圧が導入されていないときは、アキュムレータ37側からヘッド側室C2側への流れを許容する一方で、ヘッド側室C2側からアキュムレータ37側への流れを禁止するパイロット式の逆止弁により構成されている。従って、供給制御弁67へのパイロット圧の導入が停止されると、アキュムレータ37からヘッド側室C2へ作動液が供給され、射出用ピストン27及びピストンロッド25は紙面左側へ前進する。
液圧回路39は、アキュムレータ37からヘッド側室C2へ作動液を供給しているときに射出シリンダ装置23を制御するためのメータアウト回路を有している。具体的には、例えば、液圧回路39は、ロッド側室C1とタンク43とを接続する第6流路69と、第6流路69の流量を制御する射出側流量制御弁71とを有している。
射出側流量制御弁71は、例えば、サーボ機構に組み込まれ、入力信号に応じて流量を無段階に変調可能なサーボバルブにより構成されている。射出側流量制御弁71は、例えば、電磁式の制御機構及び液圧式の制御機構が順次作動することにより流量の設定値を変更するように構成されている。
射出側流量制御弁71によって、射出シリンダ装置23のロッド側室C1から排出される作動液の流量が制御されることにより、射出シリンダ装置23の射出用ピストン27及びピストンロッド25の速度が制御される。なお、第6流路69には、作動液を冷却するためのクーラ72が設けられている。
液圧回路39は、アキュムレータ37と射出シリンダ装置23の後側室C4とを接続する第7流路75と、第7流路75に設けられた増圧側流量制御弁77とを有している。
第7流路75は、例えば、第1流路51に対して、第2逆止弁55よりもアキュムレータ37側において接続されることにより、アキュムレータ37に対して接続されている。なお、第7流路75は、第1流路51とは別個にアキュムレータ37に接続されていてもよい(第1流路51と一部が共通化されていなくてもよい。)。
増圧側流量制御弁77は、例えば、サーボ機構に組み込まれ、入力信号に応じて流量を無段階に変調可能なサーボバルブにより構成されている。増圧側流量制御弁77は、例えば、電磁式の制御機構及び液圧式の制御機構が順次作動することにより流量の設定値を変更するように構成されている。
アキュムレータ37から第7流路75を介して後側室C4に作動液が供給されることにより、増圧用ピストン29を介したヘッド側室C2の増圧が行われる。この際、増圧の速さは、増圧側流量制御弁77によって制御される。
液圧回路39は、前側室C3と、タンク43及びポンプ33とを接続する第8流路79を有している。第8流路79は、例えば、第3流路59に対して射出側方向制御弁63よりもロッド側室C1側において接続されるとともに、第6流路69に対して射出側方向制御弁63よりもロッド側室C1側において接続されている。
従って、アキュムレータ37の作動液が後側室C4に供給されて増圧用ピストン29が前進するときには、射出側流量制御弁71を開くことにより、前側室C3の作動液は、タンク43に排出される。また、射出側方向制御弁63が図1の紙面左側の位置に切り換えられ、ポンプ33からロッド側室C1へ作動液が供給されて射出用ピストン27が後退するときには、ポンプ33から前側室C3へも作動液が供給され、増圧用ピストン29も後退する。
液圧回路39は、後側室C4とタンク43とを接続する第9流路81と、第9流路81に設けられた第3逆止弁82とを有している。第9流路81は、例えば、第4流路61に対して射出側方向制御弁63よりもヘッド側室C2側において接続されている。第3逆止弁82は、後側室C4側から射出側方向制御弁63側への流れを許容する一方で、射出側方向制御弁63側から後側室C4側への流れを禁止するように設けられている。
従って、射出側方向制御弁63が図2の紙面左側の位置に切り換えられ、ポンプ33から前側室C3へ作動液が供給され、増圧用ピストン29が後退するときには、後側室C4の作動液は第9流路81を介してタンク43に排出される。一方、射出側方向制御弁63が図2の紙面右側の位置に切り換えられ、ポンプ33からヘッド側室C2に作動液が供給されて射出用ピストン27が前進しているときは、第3逆止弁82により、ポンプ33から後側室C4への流れが阻止され、増圧用ピストン29は前進しない。
液圧回路39は、ポンプ33と、型締シリンダ装置11とを接続しており、ポンプ33による型締シリンダ装置11の駆動を可能としている。具体的には、液圧回路39は、ポンプ33と接続された第10流路83と、タンク43に接続された第11流路84と、これらの流路と型締シリンダ装置11のロッド側室Cy1及びヘッド側室Cy2との接続状態を切り換える型締側方向制御弁85とを有している。なお、第10流路83は、第1流路51から分岐し、第11流路84は、第6流路69から分岐している。
型締側方向制御弁85は、射出側方向制御弁63と同様に、4ポート3位置の方向制御弁により構成されており、3つの矩形により示された位置のうち、中央の位置(中立位置)では、ポンプ33及びタンク43と、ロッド側室Cy1及びヘッド側室Cy2との接続を遮断し、紙面右側の位置では、ポンプ33とロッド側室Cy1とを接続するとともにタンク43とヘッド側室Cy2とを接続し、紙面左側の位置では、ポンプ33とヘッド側室Cy2とを接続するとともにタンク43とロッド側室Cy1とを接続する。また、型締側方向制御弁85も、射出側方向制御弁63と同様に、入力された電気信号に応じて切り換えられる。
制御装置41は、例えば、CPU86、及び、ROMやRAM等のメモリ87を有している。CPU86は、入力回路88を介して入力される各種の電気信号に基づいて制御信号を生成し、生成した制御信号を出力回路89を介して各種の機器に出力する。
制御装置41に入力される電気信号は、例えば、射出シリンダ装置23のピストンロッド25の位置を検出する第1位置センサ90の検出信号S1、移動ダイプレート9の位置を検出する第2位置センサ91の検出信号S2、作動液の圧力を検出する第1圧力センサ92、第2圧力センサ93及び第3圧力センサ94からの電気信号P1〜P3、ユーザの操作を受け付ける入力装置95からのユーザの操作に応じた操作信号である。制御装置41から出力される電気信号は、例えば、モータ35、射出側方向制御弁63等の各種の弁、ユーザに各種の情報を提示する表示装置96を制御する制御信号である。
位置センサ(第1位置センサ90及び第2位置センサ91)は、例えば、測定対象物(ピストンロッド17及び移動ダイプレート9)の進退方向に沿って測定対象物に固定的に設けられた不図示のスケール部とともに、磁気式又は光学式のリニアエンコーダを構成しており、スケール部の位置センサに対する移動量に応じた数のパルスを出力する。制御装置41は、位置センサからのパルスを計数することにより、測定対象物の位置及び速度(射出速度)を特定可能である。なお、ピストンロッド25の位置及び速度は、射出プランジャ21の位置及び速度と等価である。
第1圧力センサ92は、ポンプ33の吐出圧を検出する。具体的には、第1逆止弁53と、第2逆止弁55及び射出側方向制御弁63との間の作動液の圧力を検出する。第2圧力センサ93は、アキュムレータ37の作動液の圧力を検出する。第3圧力センサ94は、ヘッド側室C2の作動液の圧力を検出する。なお、ヘッド側室C2の圧力は、概ね、射出プランジャ21が溶湯に加える圧力(射出圧力)に等しい。
ダイカストマシン1の動作について説明する。まず、ダイカストマシン1の動作の概要を説明する。
ダイカストマシン1においては、まず、型締シリンダ装置11により、移動ダイプレート9が固定ダイプレート7側へ駆動され、移動金型105を固定金型103に接触させる型閉じが行われ、更には、移動金型105及び固定金型103の接触圧を高める型締めが行われる。その後、射出シリンダ装置23により射出プランジャ21が移動金型105側へ駆動され、溶湯がキャビティCaに射出、充填される。
溶湯の充填後、キャビティCaに射出された溶湯は、射出プランジャ21により所定の圧力が付与され続ける。そして、時間が経過するにつれて、射出された溶湯が凝固して成形品Dtが形成される。成形品Dtは、キャビティCaにおける溶湯が凝固して形成された製品部分Dt1と、スリーブ19内の、射出プランジャ21の前面における溶湯が凝固して形成されたビスケットDt2とを含む。
成形品Dtが形成されると、型締シリンダ装置11により、移動ダイプレート9は固定ダイプレート7とは反対側へ駆動され、型開きが行われる。この際、成形品Dtは、移動金型105とともに移動し、固定金型103から離型する。また、型開きに同期して、射出シリンダ装置23により射出プランジャ21が移動金型105側へ駆動され、射出プランジャ21はビスケットDt2をスリーブ19から押し出す。
その後、射出プランジャ21は、停止又は後退することにより、移動金型105から離れる。また、不図示の押出装置により、成形品Dtは移動金型105から押し出される。そして、次のサイクルが開始される。
次に、ダイカストマシン1の射出動作の詳細を説明する。
図2(a)は、ダイカストマシン1における射出圧力の経時変化を示す図であり、図2(b)は、ダイカストマシン1における射出速度(射出プランジャの速度)の経時変化を示す図である。
ダイカストマシン1において、金型101の型閉じ及び型締めが完了し、スリーブ19内に溶湯が供給されると、射出プランジャ21が前進を開始し、低速射出が行われる。低速射出では、溶湯による空気の巻き込みを防止するために、射出プランジャ21は、比較的低速の速度VLで前進する。なお、射出プランジャ21が速度VLで前進するときの射出圧力は、比較的低圧の圧力PLである。
射出プランジャ21が所定の高速切換位置に到達すると(図2(b)のD点)、射出プランジャ21の速度が、サイクルタイムの短縮等の目的から、比較的低速の速度VLから比較的高速の速度VHに切り換えられ、高速射出が開始される。なお、射出プランジャ21が速度VHで前進するときの射出圧力は、圧力PLよりも高圧の圧力PHである。
溶湯がキャビティCaに概ね充填されると(図2(b)のL点)、射出プランジャ21により押圧されている溶湯は逃げ場を失うから、射出圧力は圧力PHから急激に上昇する(圧力Pd)。これと同時に、射出速度は、速度VHから急激に減速される(速度Vd)。
高速射出が終了すると、増圧が開始され(図2(b)のM点以降)、射出速度は更に遅くなりつつ(速度Vt)、射出圧力は上昇する(圧力Pt)。そして、射出プランジャ21は停止し、射出圧力は鋳造圧力(終圧)Pmaxになり、溶湯の充填は完了する。その後、射出圧力は鋳造圧力Pmaxに維持される。なお、この鋳造圧力Pmaxは、ビスケットDt2となる溶湯を介して、射出プランジャ21から製品部分Dt1となる溶湯に付与される。
上記のような動作を実現するために、制御装置41は、モータ35や各種の弁を以下のように制御する。
(型開き状態)
モータ35は停止している。アキュムレータ37は蓄圧された状態となっている。型締側方向制御弁85及び射出側方向制御弁63は中立位置となっている。供給制御弁67、射出側流量制御弁71及び増圧側流量制御弁77は閉じられている。
(型閉じ及び型締)
制御装置41は、型締側方向制御弁85を中立位置から図2の紙面左側の位置に切り換えるとともに、所定の回転数でモータ35を駆動する。これにより、ポンプ33から型締シリンダ装置11のヘッド側室Cy2に作動液が供給され、移動ダイプレート9が固定ダイプレート7側へ移動し、型閉じ及び型締めが行われる。
型閉じ時の移動ダイプレート9の速度制御や型締時の圧力制御は、モータ35の回転数の制御により行われる。また、ポンプ33が可変容量ポンプにより構成されている場合には、ポンプ33の一周期における吐出量の制御により、若しくは、当該吐出量の制御とモータ35の回転速度の制御との組み合わせにより、移動ダイプレート9の速度制御等が行われてもよい。
また、移動ダイプレート9の速度制御は、第2位置センサ91の検出結果に基づいて、フィードバック制御される。移動ダイプレート9の速度は、例えば、型閉じの初期においては、サイクルタイム短縮の観点から比較的高速に設定され、型閉じの終期においては、型接触時の衝撃を緩和するために比較的低速に設定される。
目標とする型締力が得られると、制御装置41は、その型締力が維持されるように、型締側方向制御弁85及びモータ35の制御を行う。例えば、制御装置41は、型締側方向制御弁85の位置を図2の紙面左側の位置とする制御、及び、モータ35を駆動する制御を継続し、すなわち、ポンプ33による型締シリンダ装置11への作動液の供給を継続し、型締力を維持する。また、例えば、制御装置41は、一旦、型締側方向制御弁85を中立位置に戻し、型締力が低下したときなど、必要に応じて、型締側方向制御弁85の位置を図2の紙面左側の位置とする制御を行い、換言すれば、間欠的に、ポンプ33による型締シリンダ装置11への作動液の供給を継続し、型締力を目標値に維持する。型締力の維持は、後にキャビティCaに射出される溶湯が凝固するまで行われる。
なお、型締力は、例えば、型締シリンダ装置11のピストンロッド17の移動量、型締シリンダ装置11のヘッド側室Cy2の圧力、タイバーを有する型締装置の場合にはタイバーの伸び量等の適宜な物理量を検出することにより検出される。制御装置41は、検出された型締力に基づいて、型締側方向制御弁85及びモータ35の制御を行う。
(低速射出)
制御装置41は、モータ35を回転させるとともに、射出側方向制御弁63を図2の紙面右側の位置へ切り換える。これにより、ポンプ33からヘッド側室C2へ作動液が供給され、射出用ピストン27及びピストンロッド25が前進し、ひいては、射出プランジャ21が前進する。
制御装置41は、例えば、第1位置センサ90の検出結果に基づいて、射出プランジャ21の速度を所定の低速速度(VL)に制御する(フィードバック制御を行う)。射出プランジャ21の速度は、例えば、モータ35の回転速度を制御することにより制御される。ポンプ33が可変容量ポンプにより構成されている場合には、ポンプ33の一周期における吐出量の制御により、若しくは、当該吐出量の制御とモータ35の回転速度の制御との組み合わせにより、射出プランジャ21の速度が制御されてもよい。
モータ35の回転速度の制御においては、例えば、モータ35が直流モータである場合には、モータ35に供給する電力の電圧を制御することにより、モータ35のトルク及び回転速度を制御し、モータ35が交流モータである場合には、モータ35に供給する電力の周波数を制御することにより、モータ35の回転速度を制御する。
モータ35が交流モータである場合、モータ35の回転速度は、負荷トルクが発生トルクを下回るときは、モータ35に供給される電力の周波数に比例する。そこで、発生トルクが負荷トルクを常に上回るようにモータ35を制御すれば、モータ35の回転速度を電力の周波数に追従させて射出プランジャ21の動作をスムーズにすることができる。
しかし、発生トルクを大きくし過ぎれば、モータ35に供給する電力が大きくなり、また、モータ35の寿命も短くなる。一方、射出プランジャ21の受ける負荷は、スリーブ19やキャビティCa等の大きさや形状により、ダイカストマシン1や金型101毎に、若しくは、成形サイクル毎に変動する。
そこで、制御装置41は、モータ35の発生トルクが、検出されるモータ35の負荷トルクよりも、所定量だけ、大きくなるようにモータ35を制御する。例えば、制御装置41は、第3圧力センサ94の検出する圧力に基づいて、射出シリンダ装置23が射出プランジャ21から受ける負荷を算出し、さらには、モータ35の負荷トルクを算出する。負荷トルクを算出するための算出式若しくはチャートは、理論に基づいて求められてもよいし、実験により求められてもよい。そして、制御装置41は、モータ35の発生トルクが、算出した負荷トルクを上回るように、サーボドライバ49(インバータ)からモータ35に供給される電力の電流を制御する。
なお、電圧を制御することにより、結果として電流を制御してもよい。また、発生トルクが負荷トルクを上回るようにする制御は、以前の成形サイクルにおける負荷トルクに基づいて、現在の成形サイクルにおいて目標とする発生トルクを算出して制御するものであってもよいし、一の成形サイクル中において、現時点の負荷トルクに基づいて、新たに目標とする発生トルクを算出して制御するものであってもよい。発生トルクは、使用され得る回転速度範囲におけるトルク全体が、検出された負荷トルクよりも大きくなるように設定されてもよいし、一の成形サイクル中において、現時点の負荷トルクに基づいて、新たに目標とする発生トルクを設定する場合には、現時点の目標回転速度における発生トルクが負荷トルクを上回るように設定されてもよい。
(高速射出)
第1位置センサ90の検出する位置が、所定の高速切換位置に到達すると(図2のD点)、制御装置41は、射出側方向制御弁63を中立位置へ切り換える制御、供給制御弁67を開く制御、射出側流量制御弁71を開く制御を行う。これにより、アキュムレータ37からヘッド側室C2へ作動液が供給され、高速射出が行われる。これらの弁の制御タイミングは、低速射出から高速射出への移行が円滑に行われるように、試験等に基づいて適宜に設定される。射出プランジャ21の速度は、射出側流量制御弁71による流量制御により、所定の昇速カーブで所定の高速速度(VH)に追従するようにフィードバック制御される。
なお、制御装置41は、高速射出から増圧までの間、型締力の維持に必要な回転数でモータ35を回転させる。ただし、射出側方向制御弁63が中立位置に切り換えられることにより、ポンプ33と射出シリンダ装置23とは、直接的には非連動とされているから、ポンプ33による射出速度等への影響は少ない。
(減速)
制御装置41は、射出プランジャ21が所定の減速開始位置(図2のL点)に到達すると、射出プランジャ21が、所定のタイミングで、所定の減速カーブで減速するように、射出側流量制御弁71を制御する。
(増圧)
制御装置41は、射出プランジャ21が所定の増圧開始位置(図2のM点)に到達すると、射出側流量制御弁71を全開にする制御、及び、増圧側流量制御弁77を開く制御を行う。これにより、アキュムレータ37から後側室C4に作動液が供給され、増圧用ピストン29の増圧作用により、ヘッド側室C2の作動液が加圧され、ひいては、射出プランジャ21によりキャビティCaの溶湯が増圧される。射出側流量制御弁71及び増圧側流量制御弁77の制御タイミングは、増圧工程への移行が円滑に行われるように、試験等に基づいて適宜に設定される。制御装置41は、射出圧力が所定の昇圧カーブで所定の鋳造圧力Pmaxまで上昇するように、第3圧力センサ94の検出値に基づいて増圧側流量制御弁77を制御する。
供給制御弁67は、ヘッド側室C2の圧力が増圧用ピストン29により加圧されて、アキュムレータ37の圧力よりも高くなることにより自閉する。ただし、パイロット圧が導入されて閉じられてもよい。
(保圧の終了)
射出圧力が鋳造圧力Pmaxに到達した時点等から所定時間経過後、換言すれば、キャビティCaに充填された溶湯が凝固した後、制御装置41は、射出側流量制御弁71及び増圧側流量制御弁77を閉じる制御を行い、保圧を終了する。なお、射出側流量制御弁71は、後述するように、次の射出プランジャの追従において開かれるから、小さい開度にするだけでもよい。
(型開き、及び、射出プランジャの追従)
射出圧力が鋳造圧力Pmaxに到達してから所定時間経過後、換言すれば、キャビティCaに充填された溶湯が凝固した後、制御装置41は、型締側方向制御弁85を図2の紙面左側の位置から紙面右側の位置へ切り換える。これにより、ヘッド側室Cy2の圧抜きが行われ、更には、ポンプ33からの作動液がロッド側室Cy1に供給され、型開きが行われる。
なお、型締側方向制御弁85を切り換える前には、モータ35の回転数及び/又はポンプ33の1周期における吐出量の制御により、ヘッド側室Cy2に供給される作動液の量を所定の値(0を含む)まで徐々に減じることが好ましい。圧抜き時の衝撃を緩和するためである。特に、型締装置がタイバーを有するものである場合や、型締シリンダの力を直接的に移動ダイプレートに付与するものである場合に有効である。
上記の型締側方向制御弁85の切り換え、又は、切り換え前にポンプ33を停止若しくは減速した場合にはポンプ33の回転開始若しくは増速と同期して、制御装置41は、射出側流量制御弁71を開く制御を行う。なお、増圧において供給制御弁67にパイロット圧を導入していた場合には、パイロット圧の導入も停止する。これにより、アキュムレータ37から射出シリンダ装置23のヘッド側室C2に作動液が供給され、移動ダイプレート9の移動に追従して射出プランジャ21が移動する。制御装置41は、射出プランジャ21の速度が移動ダイプレート9の速度と同等若しくそれより速くなるように、所定の開度で射出側流量制御弁71を開く。
(射出プランジャの後退、及び、型開きの終了)
型開きの途中において、制御装置41は、第1位置センサ90又は第2位置センサ91の検出値に基づく射出プランジャ21の位置が、所定の停止位置に到達したことを検知すると、射出側流量制御弁71及び供給制御弁67を閉じる。これにより、アキュムレータ37から射出シリンダ装置23への作動液の供給等が停止される。なお、停止位置は、射出用ピストン27の物理的な前進限であってもよい。
そして、制御装置41は、射出側方向制御弁63を図2の紙面左側の位置に切り換える制御を行う。これにより、ポンプ33により送出された作動液がロッド側室C1及び前側室C3に供給され、射出用ピストン27(射出プランジャ21)及び増圧用ピストン29が後退する。射出用ピストン27及び増圧用ピストン29の後退が終了すると、制御装置41は、射出側方向制御弁63を中立位置に戻す。なお、射出プランジャ21の後退は、型開きが終了する前に開始されても、終了した後に開始されてもよい。
制御装置41は、第2位置センサ91の検出する移動ダイプレート9の位置が所定の型開位置に到達すると、型締側方向制御弁85を中立位置へ戻す。これにより、ポンプ33から型締シリンダ装置11への作動液の供給等が停止される。なお、型開位置は、型締シリンダ装置11の物理的な後退限であってもよい。
(アキュムレータの蓄圧)
型開き及び射出プランジャ21の後退が終了すると、制御装置41は、所定の回転数でモータ35を駆動する。これにより、ポンプ33からアキュムレータ37へ作動液が供給されてアキュムレータ37の蓄圧がなされる。なお、制御装置41は、第2圧力センサ93の検出値が所定の設定圧力になるまで、所定の圧力及び速度で作動液がアキュムレータ37に送出されるように、モータ35等の制御を行う。
第1の実施形態によれば、ダイカストマシン1は、固定金型103を保持する固定ダイプレート7と、移動金型105を保持し、固定ダイプレート7に対して型開閉方向に移動可能な移動ダイプレート9と、移動ダイプレート9を駆動する型締シリンダ装置11と、固定ダイプレート7を貫通して固定金型103及び移動金型105に形成されたキャビティCaに通じるスリーブ19と、スリーブ19内を摺動して成形材料を押し出す射出プランジャ21と、射出プランジャ21を駆動する射出シリンダ装置23と、作動液を送出可能なポンプ33と、ポンプ33を駆動するモータ35と、作動液を蓄圧された状態で保持するアキュムレータ37と、ポンプ33とアキュムレータ37とを接続し、ポンプ33と型締シリンダ装置11とを接続するとともに、アキュムレータ37と射出シリンダ装置23とを接続し、型締シリンダ装置11及び射出シリンダ装置23への作動液の供給を制御する液圧回路39と、液圧回路39及びモータ35を制御する制御装置41と、を有し、液圧回路39及び制御装置41は、ポンプ33によりアキュムレータ37を蓄圧し、キャビティCaの成形材料の凝固後、ポンプ33から型締シリンダ装置11へ作動液を供給して型開きを行い、その型開きに同期して、アキュムレータ37から射出シリンダ装置23へ作動液を供給して、成形材料の凝固により形成されたビスケットDt2を射出プランジャ21により押し出すように構成されていることから、ポンプ33の動力をアキュムレータ37に蓄えて、型締シリンダ装置11及び射出シリンダ装置23をポンプ33及びアキュムレータ37により独立に駆動することができ、液圧装置全体の小型化が図られつつ、射出プランジャ21の移動ダイプレート9への追従が適切になされる。
液圧回路39及び制御装置41は、高速射出をアキュムレータ37から射出シリンダ装置23への作動液の供給により行い、低速射出及び増圧の少なくともいずれか一方(本実施形態では低速射出)をポンプ33から射出シリンダ装置23への作動液の供給により行うように構成されていることから、アキュムレータ37は、射出プランジャ21の前進工程の全部ではなく、一部においてのみ利用されることになる。その結果、高速射出に必要な、短時間での大量の作動液の供給がアキュムレータ37により実現されるとともに、アキュムレータ37が小型化される。
液圧回路39は、ポンプ33とアキュムレータ37とを接続する第1流路51と、第1流路51に設けられ、ポンプ33からアキュムレータ37への作動液の流れを許容する一方で、アキュムレータ37からポンプ33への作動液の流れを禁止する第2逆止弁55と、第1流路51の、第2逆止弁55よりもポンプ33側の位置から型締シリンダ装置11への作動液の流れを許容又は禁止する型締側方向制御弁85と、アキュムレータ37から射出シリンダ装置23への作動液の流れを許容又は禁止する供給制御弁67と、を有し、制御装置41は、ポンプ33から型締シリンダ装置11への作動液の流れを禁止するように型締側方向制御弁85を制御し、アキュムレータ37から射出シリンダ装置23への作動液の流れを禁止するように供給制御弁67を制御し、ポンプ33を駆動するようにモータ35を制御して、ポンプ33によりアキュムレータ37の蓄圧を行い、ポンプ33から型締シリンダ装置11への作動液の流れを許容するように型締側方向制御弁85を制御し、ポンプ33を駆動するようにモータ35を制御して、型開きを行い、その型開きに同期して、アキュムレータ37から射出シリンダ装置23への作動液の流れを許容するように供給制御弁67を制御して、ビスケットDt2を射出プランジャ21により押し出すことから、簡素な構成で、アキュムレータ37の蓄圧、型開き、及び、射出プランジャ21によるビスケットDt2の押し出しが実現される。
液圧回路39は、第1流路51の、第2逆止弁55よりもポンプ33側の位置から射出シリンダ装置23への作動液の流れを許容又は禁止可能な射出側方向制御弁63を有し、制御装置41は、アキュムレータ37から射出シリンダ装置23への作動液の流れを禁止するように供給制御弁67を制御し、ポンプ33から射出シリンダ装置23への作動液の流れを許容するように射出側方向制御弁63を制御して、低速射出を行い、アキュムレータ37から射出シリンダ装置23への作動液の流れを許容するように供給制御弁67を制御し、ポンプ33から射出シリンダ装置23への作動液の流れを禁止するように射出側方向制御弁63を制御して、高速射出を行うことから、ポンプ33による低速射出、及び、アキュムレータ37による高速射出が、構成が簡素な構成で実現される。
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係るダイカストマシン201を示す図である。
第2の実施形態は、アキュムレータ37から射出シリンダ装置23へ作動液を送出して高速射出を行うときに、メータイン回路により射出シリンダ装置23を制御する点が第1の実施形態と相違する。具体的には以下のとおりである。
ダイカストマシン201の液圧回路239は、第1の実施形態の供給制御弁67及び射出側流量制御弁71に代えて、第5流路65に設けられた供給制御弁267と、第6流路69に設けられた第4逆止弁271とを有している。
供給制御弁267は、例えば、流量制御弁により構成されており、より具体的には、例えば、サーボ機構に組み込まれ、入力信号に応じて流量を無段階に変調可能なサーボバルブにより構成されている。供給制御弁267は、例えば、電磁式の制御機構及び液圧式の制御機構が順次作動することにより流量の設定値を変更するように構成されている。
第4逆止弁271は、例えば、パイロット圧が導入されているときは閉じられ、パイロット圧が導入されていないときは、射出シリンダ装置23側からタンク43側への流れを許容する一方で、タンク43側から射出シリンダ装置23側への流れを禁止するパイロット式の逆止弁により構成されている。
従って、第4逆止弁271にパイロット圧が導入されていない状態で、アキュムレータ37からヘッド側室C2への作動液の流量を供給制御弁267により制御することにより、射出シリンダ装置23の射出用ピストン27の前進速度を制御することができる。
ダイカストマシン201の動作は、概ね、第1の実施形態と同様である。ただし、第1の実施形態における、供給制御弁67及び射出側流量制御弁71の開閉制御に代えて、供給制御弁267及び第4逆止弁271の開閉制御が行われ、また、高速射出時における射出シリンダ装置23の速度制御は、第1の実施形態における、射出側流量制御弁71の開度の制御に代えて、供給制御弁267の開度の制御により行われる。
以上の第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果、すなわち、液圧装置全体の小型化が図られつつ、射出プランジャ21の移動ダイプレート9への追従が適切になされる等の効果が奏される。
(第3の実施形態)
図4は、本発明の第3の実施形態に係るダイカストマシン301を示す図である。
第3の実施形態は、ポンプ333が双方向(2方向)ポンプにより構成されており、また、液圧回路339が双方向ポンプにより射出シリンダ装置23を駆動するのに適した構成とされている点が第1の実施形態と相違する。具体的には以下のとおりである。
ポンプ333は、2つの第1ポート333a及び第2ポート333bを有しており、回転方向の切り換えにより、第1ポート333a及び第2ポート333bの間で、吸入口と吐出口とが切り換えられる。ポンプ333は、ポンプ33と同様に、ロータリポンプであってもよいし、プランジャポンプであってもよいし、定容量ポンプであってもよいし、可変容量ポンプであってもよい。なお、第1流路51は、例えば、第1ポート333aに接続されている。
液圧回路339は、ポンプ333と射出シリンダ装置23とを接続するための流路として、第1の実施形態の第2流路57に代えて、第12流路357及び第13流路358を有している。液圧回路339は、ポンプ333と型締シリンダ装置11とを接続するための流路として、第1の実施形態の第10流路83に代えて、第14流路383及び第15流路384を有している。液圧回路339は、第1の実施形態の射出側方向制御弁63及び型締側方向制御弁85に代えて、射出側方向制御弁363及び型締側方向制御弁385を有している。なお、射出側方向制御弁363及び型締側方向制御弁385は、直接的にはタンク43に接続されておらず、第1の実施形態の第11流路84は省略されている。
第12流路357は、第1ポート333aに接続されている。なお、第12流路357は、第2逆止弁55よりもポンプ333側において第1流路51と分岐している(第1流路51と一部が共通化されている。)。また、第13流路358は、第2ポート333bに接続されている。
第14流路383は、第1ポート333aに接続されている。なお、第14流路383は、第2逆止弁55よりもポンプ333側において第12流路357と分岐している(第12流路357と一部が共通化されている。)。また、第15流路384は、第2ポート333bに接続されている。なお、第15流路384は、第13流路358と分岐している(第13流路358と一部が共通化されている。)。
射出側方向制御弁363は、例えば、4ポート2位置の切換弁により構成されており、第1ポート333a及び第2ポート333bと、ロッド側室C1及びヘッド側室C2との接続状態を切り換える。具体的には以下のとおりである。
射出側方向制御弁363は、2つの矩形の記号により示される2位置のうち、紙面右側の位置(中立位置)においては、ポンプ333と、ヘッド側室C2及びロッド側室C1との接続を遮断する。これにより、ポンプ333からヘッド側室C2及びロッド側室C1への作動液の供給は禁止される。
射出側方向制御弁363は、2つの矩形の記号により示される2位置のうち、紙面左側の位置においては、第1ポート333aとヘッド側室C2とを接続し、第2ポート333bとロッド側室C1とを接続する。このとき、ポンプ333は、一方向へ回転することにより、ロッド側室C1の作動液を吸引してヘッド側室C2へ送出し、他方向へ回転することにより、ヘッド側室C2の作動液を吸引してロッド側室C1へ送出することができる。
型締側方向制御弁385は、例えば、4ポート2位置の切換弁により構成されており、第1ポート333a及び第2ポート333bと、ロッド側室Cy1及びヘッド側室Cy2との接続状態を切り換える。具体的には以下のとおりである。
型締側方向制御弁385は、2つの矩形の記号により示される2位置のうち、紙面左側の位置(中立位置)においては、ポンプ333と、ヘッド側室Cy2及びロッド側室Cy1との接続を遮断する。これにより、ポンプ333からヘッド側室Cy2及びロッド側室Cy1への作動液の供給は禁止される。
型締側方向制御弁385は、2つの矩形の記号により示される2位置のうち、紙面右側の位置においては、第1ポート333aとヘッド側室Cy2とを接続し、第2ポート333bとロッド側室Cy1とを接続する。このとき、ポンプ333は、一方向へ回転することにより、ロッド側室Cy1の作動液を吸引してヘッド側室Cy2へ送出し、他方向へ回転することにより、ヘッド側室Cy2の作動液を吸引してロッド側室Cy1へ送出することができる。
なお、ロッド側室(C1、Cy1)及びヘッド側室(C2、Cy2)bのいずれが、第1ポート333a及び第2ポート333bのいずれに接続されるかは、適宜に設定されてよく、また、型締シリンダ装置11と射出シリンダ装置23とで異なっていても同一でもよい。ただし、型締シリンダ装置11及び射出シリンダ装置23が同時に駆動される場合には、同時に作動液が供給される、ロッド側室C1又はヘッド側室C2と、ロッド側室Cy1又はヘッド側室Cy2とが、同時に同一のポートに接続可能であるように構成される必要がある。例えば、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、型締シリンダ装置11のヘッド側室Cy2に作動液を供給して型締を継続しつつ、射出シリンダ装置23のヘッド側室C2に作動液を供給して低速射出を行うから、ヘッド側室Cy2及びヘッド側室C2は、いずれも第1ポート333aに接続可能に、流路及び方向制御弁が設けられている。
型締側方向制御弁385及び射出側方向制御弁363は、例えば、電磁式の制御機構及び液圧式の制御機構が順次作動することにより位置が切り換えられるように構成されており、入力された電気信号に応じて切り換えられる。
液圧回路321は、ポンプ333に過不足なく作動液が補給されるように構成されることが好ましい。例えば、ロッド側室C1の、作動液を受け入れ可能な断面積は、ピストンロッド25の断面積の分だけ、ヘッド側室C2の、作動液を受け入れ可能な断面積よりも小さい。従って、ポンプ333は、ロッド側室C1から作動液を吸引してヘッド側室C2へ作動液を吐出するときには作動液が不足し、ヘッド側室C2から作動液を吸引してロッド側室C1へ作動液を吐出するときには作動液が過剰となる。
そこで、液圧回路339は、ポンプ333における作動液の過不足を補償するための自給弁回路340を有している。自給弁回路340は、第12流路357及び第13流路358を接続する自給用接続流路397と、自給用接続流路397から分岐してタンク43に接続される自給用タンク流路398と、自給用接続流路397に設けられた第1自給用逆止弁399A及び第2自給用逆止弁399Bとを有している。
第1自給用逆止弁399Aは、自給用接続流路397の、自給用タンク流路398が分岐する位置よりも第12流路357側に設けられている。第1自給用逆止弁399Aは、パイロット圧が導入されているときは開かれ、パイロット圧が導入されていないときは、第12流路357側から自給用タンク流路398側への流れを禁止する一方で、自給用タンク流路398側から第12流路357側への流れを許容するパイロット式の逆止弁により構成されている。第1自給用逆止弁399Aは、パイロット圧として、第13流路358の作動液の圧力が導入されるように設けられている。
第2自給用逆止弁399Bは、自給用接続流路397の、自給用タンク流路398が分岐する位置よりも第13流路358側に設けられている。第2自給用逆止弁399Bは、パイロット圧が導入されているときは開かれ、パイロット圧が導入されていないときは、第13流路358側から自給用タンク流路398側への流れを禁止する一方で、自給用タンク流路398側から第13流路358側への流れを許容するパイロット式の逆止弁により構成されている。第1自給用逆止弁399Aは、パイロット圧として、第12流路357の作動液の圧力が導入されるように設けられている。
自給弁回路340の動作は以下のとおりである。
例えば、ポンプ333が、ロッド側室C1及び/又はCy1から作動液を吸引し、ヘッド側室C2及び/又はCy2へ作動液を吐出しているときは、換言すれば、作動液が不足するときは、タンク43の作動液が、自給用タンク流路398、第2自給用逆止弁397B及び第13流路358を経由してポンプ333に補給される。なお、このとき、第12流路357からタンク43への作動液の流れは、第1自給用逆止弁399Aにより禁止される。
また、例えば、ポンプ333が、ヘッド側室C2及び/又はCy2から作動液を吸引し、ロッド側室C1及び/又はCy1へ作動液を吐出しているときは、換言すれば、作動液が過剰となるときは、第13流路358の作動液の圧力がパイロット圧として第1自給用逆止弁399Aに導入されて第1自給用逆止弁399Aが開かれ、第12流路357における過剰な作動液が、第1自給用逆止弁399A及び自給用タンク流路398を経由してタンク43に排出される。なお、第13流路358からタンク43への作動液の流れは、第2自給用逆止弁399Bにより禁止される。
また、例えば、型締側方向制御弁385及び射出側方向制御弁363が中立位置とされ、ポンプ333からアキュムレータ37等へ作動液を供給しているときは、タンク43の作動液が、自給用タンク流路398、第2自給用逆止弁397B及び第13流路358を経由してポンプ333に補給される。なお、このとき、第12流路357からタンク43への作動液の流れは、第1自給用逆止弁399Aにより禁止される。
なお、以上の説明から理解されるように、第2自給用逆止弁399B、すなわち、ロッド側室C1及びCy1に接続される流路とタンク43との間に設けられる逆止弁は、パイロット式でない逆止弁であってもよい。
液圧回路339は、第1の実施形態と同様に、第1流路51の作動液の圧力、換言すれば、第1ポート333aの作動液の圧力を検出する第1圧力センサ92を有している。また、液圧回路339は、第13流路358の作動液の圧力、換言すれば、第2ポート333bの作動液の圧力を検出する第4圧力センサ492を有している。
液圧回路339は、第1の実施形態のクーラ72を有していない。第3の実施形態では、射出用ピストン27等に押し出された作動液がポンプ333に吸引されることから、第1の実施形態に比較して、弁を流れるときに発熱してタンク43へ排出される作動液が少ないことなどからである。
ダイカストマシン301の動作は、概ね、第1の実施形態のダイカストマシン301の動作と同様である。ただし、第1の実施形態においは、ポンプ33からの作動液の供給先が、射出側方向制御弁63の切り換えによりロッド側室C1とヘッド側室C2との間で切り換えられ、型締側方向制御弁85の切り換えによりロッド側室Cy1とヘッド側室Cy2との間で切り換えていたところ、第3の実施形態では、ポンプ33からの作動液の供給先が、モータ35の回転方向の切り換えにより、ロッド側室C1とヘッド側室C2との間で切り換えられ、また、ロッド側室C1とヘッド側室C2との間で切り換える。
以上の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果、すなわち、液圧装置全体の小型化が図られつつ、射出プランジャ21の移動ダイプレート9への追従が適切になされる等の効果が奏される。
(第4の実施形態)
図5は、本発明の第4の実施形態に係るダイカストマシン401を示す図である。
第4の実施形態は、第3の実施形態と同様に、ポンプ333が双方向(2方向)ポンプにより構成されている。しかし、アキュムレータ37から射出シリンダ装置23へ作動液を送出して高速射出を行うときに、第2の実施形態と同様に、メータイン回路により射出シリンダ装置23を制御する点が第3の実施形態と相違する。
すなわち、第4の実施形態は、第3の実施形態と第2の実施形態との組み合わせであり、ダイカストマシン401の液圧回路439は、第3の実施形態の液圧回路339において、供給制御弁67及び射出側流量制御弁71に代えて、第2の実施形態の供給制御弁267及び第4逆止弁271が設けられた構成となっている。
ダイカストマシン401の動作は、概ね、第3の実施形態と同様である。ただし、第2の実施形態が第1の実施形態に対してそうであったように、第3の実施形態における、供給制御弁67及び射出側流量制御弁71の開閉制御に代えて、供給制御弁267及び第4逆止弁271の開閉制御が行われ、また、高速射出時における射出シリンダ装置23の速度制御は、第3の実施形態における、射出側流量制御弁71の開度の制御に代えて、供給制御弁267の開度の制御により行われる。
なお、以上の実施形態において、固定金型103は本発明の固定型の一例であり、移動金型105は本発明の移動型の一例であり、型締シリンダ装置11は本発明の移動シリンダ装置の一例であり、第1流路51は本発明のポンプ−アキュムレータ流路の一例であり、型締側方向制御弁85は本発明の移動側方向制御弁の一例である。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。換言すれば、成形材料は、金属材料に限定されない。例えば、成形機は、成形材料としての樹脂を射出する射出成形機であってもよい。型締装置は、直圧式のものに限定されず、トグル式のものであってもよいし、型開閉を行う駆動機構と型締を行う駆動機構とが別個に設けられた複合式のものであってもよい。作動液は、油に限定されず、例えば、水であってもよい。
液圧回路は、ポンプから射出シリンダ装置へ作動液を直接的に供給可能に構成されていなくてもよい。例えば、アキュムレータのみにより、射出シリンダ装置が駆動されてもよい。ただし、実施形態のように、射出プランジャの前進工程の一部においてポンプにより射出シリンダ装置へ作動液を供給すると、ポンプの有効活用によりアキュムレータの小型化を図ることができる。
液圧回路及び制御装置は、増圧をポンプにより行うように構成されていてもよい。例えば、図1において、第1流路51の、第7流路75が分岐する位置よりもアキュムレータ37側に、流れを許容又は禁止可能な弁(例えば、パイロット圧が導入されると閉じられ、パイロット圧が導入されていないときは、ポンプ33からアキュムレータ37への流れを許容する一方で、アキュムレータ37からポンプ33への流れを禁止するパイロット式の逆止弁)を設け、増圧以外のときには、増圧側流量制御弁77を閉じるとともに、逆止弁にはパイロット圧を導入せず、増圧のときには、増圧側流量制御弁77を開くとともに、逆止弁にパイロット圧を導入して閉じ、ポンプ33を駆動するように、液圧回路及び制御装置が構成されてもよい。なお、この場合、ポンプ33の回転数及び/又はポンプの1周期当たりの吐出量の制御により、増圧時の圧力を制御できるから、増圧側流量制御弁77は、流量制御機能を有さない弁であってもよい。
液圧回路及び制御装置は、低速射出及び高速射出をアキュムレータにより行い、増圧をポンプにより行うように構成されていてもよい。この場合であっても、射出プランジャの前進工程において、ポンプの活用によるアキュムレータの負担低減が図られる。ただし、低速射出においてシリンダ装置が必要とする作動液は比較的多いから、低速射出をポンプにより行ったほうが、アキュムレータの負担低減が実効的に図られ、また、高速射出前にアキュムレータの圧力低下が生じることも抑制される。
液圧回路の具体的構成、及び、制御装置による具体的な制御は、第1〜第4の実施形態以外にも種々可能である。例えば、ポンプからの作動液の供給先をアキュムレータとシリンダ装置との間で切り換える方向制御弁を設けることにより、ポンプにより、アキュムレータの蓄圧と、シリンダ装置の駆動とを行うようにすることが可能である。
射出シリンダ装置は、増圧式のものに限定されず、単動式のものであってもよい。また、増圧式のシリンダ装置は、小径のシリンダチューブに大径のシリンダチューブが同軸的に直結された直結形のものに限定されず、例えば、小径のシリンダチューブと、増圧のためのシリンダチューブとがホース等により形成された流路により接続された分離形のものであってもよい。
ポンプは、型締力が得られたあと、型締シリンダ装置への作動液の供給を継続しなくてもよい。例えば、型締後に、移動ダイプレート、タイバー、若しくは、型締シリンダ装置のピストンの位置を一定位置に保持するストッパを設けることなどにより、型締力を維持することができる。
低速射出時におけるモータの制御は、負荷の検出値に基づかず、射出プランジャの速度の検出値のみに基づいて、速度及び/又はトルクを補正するフィードバック制御がなされてもよい。
1…ダイカストマシン(成形機)、7…固定ダイプレート、9…移動ダイプレート、11…型締シリンダ装置(移動シリンダ装置)、19…スリーブ、21…射出プランジャ、23…射出シリンダ装置、33…ポンプ、35…モータ、37…アキュムレータ、39…液圧回路、41…制御装置、103…固定金型(固定型)、105…移動金型(移動型)、Ca…キャビティ。