(ダイカストマシンの全体構成)
図1は、本開示の実施形態に係るダイカストマシン1の要部の構成を示す、一部に断面図を含む側面図である。
ダイカストマシン1は、溶解されて液状となった金属材料(溶湯)を金型101内(キャビティCa等の空間。以下同様。)へ射出し、溶湯を金型101内で凝固させることにより、ダイカスト品(成形品)を製造するものである。金属は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金である。
金型101は、例えば、固定金型103及び移動金型105を含んでいる。本実施形態の説明では、便宜上、固定金型103又は移動金型105の断面を1種類のハッチングで示すが、これらの金型は、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。また、固定金型103及び移動金型105には、中子などが組み合わされてもよい。なお、金型101の一部又は全部は、ダイカストマシン1(並びに後述する射出装置9及びガス抜き装置27)の一部と捉えられてもよい。
ダイカストマシン1は、例えば、成形のための機械的動作を行うマシン本体部3と、マシン本体部3の動作を制御する制御ユニット5とを有している。
マシン本体部3は、例えば、金型101の開閉及び型締めを行う型締装置7と、金型101内に溶湯を射出する射出装置9と、ダイカスト品を固定金型103又は移動金型105(図1では移動金型105)から押し出す押出装置11とを有している。マシン本体部3において、射出装置9以外の構成(例えば型締装置7及び押出装置11の構成)は、基本的には、公知の種々の構成と同様とされてよい。
成形サイクルにおいて、型締装置7は、移動金型105を固定金型103へ向かって移動させ、型閉じを行う。さらに、型締装置7は、タイバー(符号省略)の伸長量に応じた型締力を金型101に付与して型締めを行う。型締めされた金型101内には成形品と同一形状のキャビティCaが構成される。射出装置9は、そのキャビティCaへ溶湯を射出・充填する。キャビティCaに充填された溶湯は、金型101に熱を奪われて冷却され、凝固する。これにより、成形品が形成される。その後、型締装置7は、移動金型105を固定金型103から離れる方向へ移動させて型開きを行う。この際又はその後、押出装置11は、移動金型105から成形品を押し出す。
制御ユニット5は、例えば、各種の演算を行って制御指令を出力する制御装置13(図4参照)と、画像を表示する表示装置15と、オペレータの入力操作を受け付ける入力装置17とを有している。また、別の観点では、制御ユニット5は、例えば、電源回路及び制御回路等を有する不図示の制御盤と、ユーザインターフェースとしての操作部19とを有している。
制御装置13は、例えば、不図示の制御盤及び操作部19に設けられている。制御装置13は、適宜に分割乃至は分散して構成されてよい。例えば、制御装置13は、型締装置7、射出装置9及び押出装置11毎の下位の制御装置と、この下位の制御装置間の同期を図るなどの制御を行う上位の制御装置とを含んで構成されてよい。
表示装置15及び入力装置17は、例えば、操作部19に設けられている。操作部19は、例えば、型締装置7の固定的部分に設けられている。表示装置15は、例えば、液晶表示ディスプレイ乃至は有機ELディスプレイを含んだタッチパネルによって構成されている。入力装置17は、例えば、機械式のスイッチ及び前記のタッチパネルによって構成されている。
なお、ダイカストマシン1のうち射出装置9又は後述するガス抜き装置27に着目する場合において、制御ユニット5は、射出装置9又はガス抜き装置27の制御ユニットとして捉えられてよい。制御ユニット5の構成要素(例えば制御装置13)についても同様である。
(射出装置の構成)
図2は、射出装置9の要部の構成を模式的に示す断面図である。
射出装置9は、例えば、金型101内に通じるスリーブ21と、スリーブ21内を摺動可能なプランジャ23と、プランジャ23を駆動する射出シリンダ25と、金型101内のガス抜きを行うガス抜き装置27とを有している。なお、射出装置9の説明においては、金型101側(図1の紙面左側)を前方、その反対側を後方ということがあり、また、この定義に従って、前進または後退の語を用いることがある。
スリーブ21は、例えば、固定金型103に連結された筒状部材であり、上面には溶湯をスリーブ21内に受け入れるための供給口21aが開口している。プランジャ23は、スリーブ21内を前後方向に摺動可能なプランジャチップ23aと、先端がプランジャチップ23aに固定されたプランジャロッド23bとを有している。
型締装置7による金型101の型締めが完了すると、不図示の給湯装置によって1ショット分の溶湯が供給口21aからスリーブ21内へ注がれる。そして、プランジャ23が図示の位置からスリーブ21内を前方へ摺動することにより、スリーブ21内の溶湯が金型101内に押し出される(射出される)。
射出シリンダ25は、例えば、直結型増圧式シリンダにより構成されている。すなわち、射出シリンダ25は、シリンダ部29と、シリンダ部29の内部を摺動可能な射出ピストン31及び増圧ピストン33と、射出ピストン31から前方(プランジャ23側)へ延びるピストンロッド35とを有している。
射出ピストン31の後方(増圧ピストン33よりも前方)に作動液が供給されることによって射出ピストン31は前進する。射出ピストン31の前方に作動液が供給されることによって射出ピストン31は後退する。増圧ピストン33の後方に作動液が供給されることによって増圧ピストン33と射出ピストン31との間の作動液が増圧される。
射出シリンダ25は、プランジャ23に対してその後方に同軸(直列)に配置されている。ピストンロッド35の先端は、プランジャロッド23bの後端に連結されている。従って、射出ピストン31及びピストンロッド35の前後進に伴ってプランジャ23も前後進する。
プランジャ23とピストンロッド35との連結は、例えば、カップリング37によってなされている。カップリング37は、例えば、特に符号を付さないが、プランジャロッド23bの後端に設けられたフランジとピストンロッド35の前端に設けられたフランジとの間に介在するスペーサを有しているとともに、これらフランジ及びスペーサを収容するケース状部分を有している。
(ガス抜き装置の構成)
ガス抜き装置27は、例えば、金型101に取り付けられた外付ブロック107と、外付ブロック107に気体(例えば空気)を供給可能な気体供給部39とを有している。
外付ブロック107は、キャビティCaのガス抜きを行うための排気流路121の一部を構成する部材である。外付ブロック107内は、後に詳述するように、気体供給部39から気体が供給されることによって、ベルヌーイの定理に従って減圧される。これによりキャビティCaからのガス抜きが容易化される。
なお、外付ブロック107は、金型101の一部として捉えられてよい。以下では、金型101のうちキャビティCaを構成する部分を、外付ブロック107と区別するために、金型本体102ということがある。
金型本体102は、既に述べたように、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。確認的に記載すると、直彫り式の金型本体102は、キャビティCaに対応する形状が直接的に形成されたダイブロックによって概ね全体が構成される。入れ子式の金型本体102は、キャビティCaに対応する形状が形成された入れ子、及び入れ子が嵌め込まれるおも型を有している。
(気体供給部)
気体供給部39は、例えば、コンプレッサー41と、コンプレッサー41によって圧縮された気体を保持可能なタンク43と、気体の流れを制御するための気圧回路45と、射出シリンダ25の駆動力をコンプレッサー41に伝えるための接続機構47とを有している。
(コンプレッサー及びタンク)
コンプレッサー41は、例えば、いわゆる容積圧縮機のうちの往復圧縮機(レシプロ圧縮機)によって構成されている。具体的には、コンプレッサー41は、シリンダ部49と、シリンダ部49の内部を摺動可能なピストン51と、ピストン51からシリンダ部49の外部へ延び出るピストンロッド53とを有している。シリンダ部49の内部は、ピストン51によって、ピストンロッド53が延び出る側のロッド側室49rと、その反対側のヘッド側室49hとに区画されている(2つのシリンダ室に区画されている。)。
ピストンロッド53に駆動力を伝達して、ピストン51をロッド側室49rへ移動させることによって、ロッド側室49rから気体を送出できる(別の観点ではロッド側室49rの気体を圧縮できる。)。同様に、ピストンロッド53に駆動力を伝達して、ピストン51をヘッド側室49hへ移動させることによって、ヘッド側室49hから気体を送出できる(別の観点ではヘッド側室49hの気体を圧縮できる。)。
タンク43は、密閉容器であり、ロッド側室49r及びヘッド側室49hに通じているとともに外付ブロック107に通じている。従って、例えば、コンプレッサー41によって圧縮された気体をタンク43に保持し、その保持している気体を適宜な時期に外付ブロック107へ送出することができる。
(気圧回路)
気圧回路45は、例えば、コンプレッサー41の密閉及びその解除(密閉の解除は、別の観点では、コンプレッサー41への気体(空気)の補給)、コンプレッサー41からタンク43への気体の流れの許容及び禁止、並びにタンク43から外付ブロック107への流れの許容及び禁止を行うことが可能に構成されている。その具体的な構成は適宜なものとされてよい。
例えば、図示の例では、気圧回路45は、ヘッド側室49hとタンク43とを連通する流路に設けられたヘッド側弁55と、ロッド側室49rとタンク43とを連通する流路に設けられたロッド側弁57と、タンク43と外付ブロック107とを連通する流路に設けられた金型側弁59とを有している。
ヘッド側弁55は、例えば、4ポート3位置(3ポートでもよい)の切換弁によって構成されている。なお、以下では、aの記号が付されている位置をa位置といい、bの記号が付されている位置をb位置といい、その間の位置を中立位置ということがある。ヘッド側弁55は、中立位置においては、ヘッド側室49hとタンク43とを遮断し、また、ヘッド側室49h及びタンク43(これらからの流路)を密閉する。ヘッド側弁55は、a位置においては、ヘッド側室49hとタンク43とを接続する。ヘッド側弁55は、b位置においては、ヘッド側室49hを大気開放するとともにタンク43を密閉する。ヘッド側弁55の駆動方式は適宜なものとされてよいが、図示の例では、中立位置に復帰するためのばねと、a位置に切り換えるためのソレノイドと、b位置に切り換えるためのソレノイドとが設けられている場合を例示している。
ロッド側弁57は、例えば、ヘッド側弁55と同様の構成である。上記のヘッド側弁55についての説明は、ヘッド側弁55及びヘッド側室49hをロッド側弁57及びロッド側室49rに置き代えて、ロッド側弁57の説明としてよい。
ヘッド側弁55をb位置とし、ロッド側弁57をa位置とし、ピストン51をロッド側室49r側へ移動させることによって、ロッド側室49rの気体をタンク43へ送出してタンク43の気体を蓄圧するとともに、容積が拡大するヘッド側室49hに気体を補給することができる。同様に、ロッド側弁57をb位置とし、ヘッド側弁55をa位置とし、ピストン51をヘッド側室49h側へ移動させることによって、ヘッド側室49hの気体をタンク43へ送出してタンク43の気体を蓄圧するとともに、容積が拡大するロッド側室49rに気体を補給することができる。
金型側弁59は、例えば、流量制御機能を有する2ポート2位置の切換弁によって構成されている。金型側弁59は、一の位置では、例えば、逆止弁として機能し、タンク43から外付ブロック107への流れを禁止するとともにその逆方向の流れを許容する。また、金型側弁59は、他の位置では、例えば、流量制御弁として機能し、タンク43から外付ブロック107への流れを許容可能であるとともに、開度の調整によって流量を調整可能である。なお、流量制御弁は、圧力補償機能を有していてもよいし、有していなくてもよい。
(接続機構)
コンプレッサー41は、その駆動方向がプランジャ23の駆動方向と平行になるように配置されている。そして、接続機構47は、コンプレッサー41のピストンロッド53とプランジャ23とを連結する。これにより、射出シリンダ25の駆動力がピストンロッド53に伝達されて、ピストン51がシリンダ部49内を摺動する。すなわち、射出シリンダ25の駆動力によってコンプレッサー41が駆動される。
また、接続機構47は、ピストンロッド53とプランジャ23との連結を解除可能である。これにより、例えば、射出シリンダ25によってプランジャ23を駆動しているとき、所定の期間に亘って射出シリンダ25の駆動力をコンプレッサー41に分配せずにおくことができる。
なお、プランジャ23と射出シリンダ25のピストンロッド35とは連結されているから、プランジャ23に対する連結及びその解除は、ピストンロッド35(プランジャ23を駆動する駆動部の可動部位)に対する連結及びその解除と同義である。プランジャ23に固定的な、ピストンロッド35以外の部材についても同様である。
コンプレッサー41の向きは、ロッド側室49r及びヘッド側室49hのいずれが前方(金型101側)であってもよい。図示の例では、ロッド側室49r側が金型101側となっている。
接続機構47の構成は適宜なものとされてよい。図示の例では、接続機構47は、ピストンロッド53に固定されている基体61と、基体61に揺動可能に支持されているフック63と、基体61に支持されるとともにフック63を駆動可能なアクチュエータ65とを有している。
基体61は、例えば、板状等の適宜な形状を有する部材であり、カップリング37に設けられた被係合部37aに対して後方から当接可能である。フック63は、被係合部37aに対して前方から当接可能な位置(図中の「ON」の位置)と、当該位置から退避して被係合部37aに対して当接不可能な位置(図中の「OFF」の位置)との間で移動可能である。
従って、フック63をON位置にした状態で射出シリンダ25によりプランジャ23を前進させると、射出シリンダ25の駆動力をコンプレッサー41にも伝達することができる。そして、その途中でフック63をOFF位置にすれば、その駆動力の伝達を停止することができる。
また、被係合部37aが基体61に対して前方から当接した状態で射出シリンダ25によりプランジャ23を後退させると、射出シリンダ25の駆動力をコンプレッサー41にも伝達することができる。このときフック63はOFF位置でもON位置でもよい。
アクチュエータ65は、例えば、気体圧式シリンダ(例えばエアシリンダ)、液圧シリンダ又はリニアモータによって構成されている。そして、アクチュエータ65は、フック63のうちの回転軸から偏心した部分に直線運動を伝達してフック63を揺動させ、ON位置とOFF位置との間で移動させる。
(金型における流路の構成)
図3(a)は、外付ブロック107及びその周辺の断面図である。図3(b)は、外付ブロック107の平面図である。なお、図3(a)は図3(b)のIIIa−IIIa線に対応している。
射出装置9は、キャビティCaに成形材料を射出するときにキャビティCa内の気体を排出するための排気流路121と、排気流路121を減圧して気体の排出を促進するための減圧用流路119A及び119B(以下、A及びBを省略することがある。)とを有している。
上記のような排気流路121及び減圧用流路119は、例えば、金型101(金型本体102及び外付ブロック107)に設けられている。金型本体102及び外付ブロック107それぞれにおける流路の構成は、例えば、以下のとおりである。
(金型本体における流路)
金型本体102は、例えば、排気流路121の一部を構成する本体流路111(エアベント)を有している。本体流路111は、例えば、固定金型103と移動金型105との間に構成され、キャビティCaと金型本体102の外部とを連通している。なお、特に図示しないが、キャビティCaと本体流路111との間には、いわゆるオーバーフローが設けられてよい。
本体流路111は、例えば、成形材料が侵入し得る大径部111aと、成形材料が侵入するおそれを低減するために大径部111aよりも断面積が小さくされた小径部111bとを有している。なお、流路について断面積という場合、特に断りがない限りは、横断面(流れに直交する断面)の面積である。
大径部111a及び小径部111bの断面積乃至は最小径は適宜に設定されてよい。例えば、大径部111aの断面積は、キャビティCaを不図示のゲートから大径部111aまでの流路とみなしたときのキャビティCaの断面積よりも小さい。また、例えば、大径部111a及び小径部111bは、固定金型103及び移動金型105の対向方向における径を最小径とする(対向方向を厚さ方向とする)薄型形状である。そして、大径部111aの厚さは、例えば、0.2mm以上(例えば約0.3mm)である。小径部111bの厚さは、例えば、0.2mm未満(例えば約0.1mm)である。
(外付ブロックの構成及びその流路)
外付ブロック107は、例えば、固定金型103に固定される固定側部材113と、移動金型105に固定される移動側部材115とを有している。ただし、外付ブロック107は、その全体が一体的に形成されて、固定金型103及び移動金型105の一方に固定されていても構わない。また、逆に、固定側部材113及び移動側部材115それぞれが、複数の部材から構成されていても構わない。外付ブロック107の固定は、例えば、不図示のねじなどによりなされている。
外付ブロック107は、排気流路121の一部を構成する外付流路117と、既述の減圧用流路119とを有している。
外付流路117は、例えば、固定側部材113と移動側部材115との間に構成されている。なお、外付流路117は一体的に形成された部材に設けられた貫通孔であってもよい。外付流路117は、本体流路111から金型101の外部へ至り、例えば、全体として、本体流路111の出口の開口方向(図示の例では上方)を流路方向としている。
なお、開口方向は、例えば、開口から気体が排出される方向(ただし、その排出以外に開口の外部における流れはないものと仮定する。)であり、その開口が設けられている面(別の観点では開口面)の向きとは必ずしも一致しない。例えば、減圧用流路119Aの左側の開口における開口方向は、斜め上方ではなく、左(水平)である。また、流路方向は、流体が流れていく方向である。
外付流路117は、例えば、本体流路111に接続される接続部117aと、接続部117aから金型101の外部にまで至る末広部117bとを有している。
接続部117aは、例えば、本体流路111の出口(小径部111b)と同等の断面積(及び断面形状)を有しており、その断面積で所定の長さで延びている。なお、外付流路117は、接続部117aを有さず、末広部117bのみを有していてもよい。
末広部117bは、金型101の外部側(出口側、図示の例では上端側)ほど断面積が大きくなるように形成されている。末広部117bの内面は、断面視において直線状であってもよいし、曲線状であってもよいし、双方を含んでいてもよい。また、曲線は、内側に凸となるものであってもよいし、内側に凹となるものであってもよいし、その双方を含むものであってもよい。末広部117bの傾斜角は適宜に設定されてよい。末広部117bは、出口(上端)側等の一部において断面積が一定となっていてもよい。このような一定の断面積の部分が一部に存在する形状も、金型101の外部側ほど断面積が大きくなる形状(末広の形状)に含まれるものとする。
接続部117a及び末広部117bの横断面の形状は適宜なものとされてよい。図3(b)の例では、接続部117a及び末広部117bの横断面の形状は円形とされている。ただし、これらの断面形状は、矩形などの他の形状とされてもよい。接続部117aは、本体流路111の出口がスリット状である場合に、当該形状と同様のスリット状とされていてもよい。
減圧用流路119は、一端が排気流路121(詳細には外付流路117、さらに詳細には末広部117b)に開口している。その開口方向は、例えば、排気流路121(減圧用流路119が開口する位置における排気流路121の流路方向)に直交している。一方、排気流路121の他端は、タンク43に接続されており、気体が供給される。
従って、減圧用流路119から排気流路121内へ排気流路121の流路方向に直交する方向に気体が流れる。その結果、ベルヌーイの定理に従って、排気流路121は減圧される。ひいては、キャビティCaの気体は、金型101の外部側へ流れやすくなる。
なお、ここでいう直交は、厳密に90°である必要はない。例えば、減圧用流路119の開口方向が排気流路121の上流側に若干傾斜していたとしても、減圧効果に起因してキャビティCaから金型101の外部への流量増加が生じるのであれば、公差乃至は許容差の範囲内である。
減圧用流路119の数並びに出口(排気流路121側の開口)の位置及び開口方向は適宜に設定されてよい。図示の例では、2つの減圧用流路119が設けられている。また、2つの減圧用流路119は、出口からその開口方向に延長されたと仮定したときに、互いに交わらない。すなわち、両者は隣接するか、離間する。より具体的には、図示の例では、2つの減圧用流路119は、出口等の位置が上下方向(排気流路121の流路方向)において互いに異なっており(オフセットされており)、これにより、出口から延長されたと仮定しても互いに交わらない。減圧用流路119は、例えば、排気流路121に直交する方向に直線状に延びている。ただし、減圧用流路119は、適宜に屈曲乃至は湾曲していてもよい。
(排気流路全体の形状)
上記のように、排気流路121は、キャビティCa側から順に、大径部111aと、大径部111aよりも断面積が小さい小径部111bと、小径部111bと同等の断面積の接続部117aと、接続部117aと同等の断面積から面積を大きくしつつ金型101の外部へ至る末広部117bとが接続されて構成されている。従って、排気流路121全体としては、いわゆる先細末広ノズル(ラバルノズル)のような形状となっている。なお、以下では、小径部111b及び接続部117aを排気流路121における最小断面の部位としてスロート部123ということがある。
(信号処理系の構成)
図4は、射出装置9の信号処理系の構成の概要を示すブロック図である。
制御装置13は、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM及び補助記憶装置を含んで構成されている。そして、CPUがROM及び/又は補助記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによって、各種の機能部が構築される。
具体的には、液圧回路71を介して射出シリンダ25を制御する駆動制御部13a、接続機構47(アクチュエータ65)を制御する接続制御部13b、及び気圧回路45を制御する減圧制御部13cが構築される。
液圧回路71は、特に図示しないが、例えば、タンク、ポンプ、アキュムレータ及び弁等を含んで構成されており、射出シリンダ25へ作動液を供給して射出シリンダ25を駆動する。その構成は、公知の種々の構成と同様とされてよい。
制御装置13には、各種の信号が入力される。信号を入力するのは、例えば、入力装置17、プランジャ23の位置を検出するための位置センサ73(図2も参照)、タンク43内の圧力を検出するタンク圧力センサ75(図2も参照)、スロート部123よりもキャビティCa側の圧力を検出する内部圧力センサ77(図3も参照)、及びスロート部123から金型101の外部までのいずれかの位置の圧力を検出する外部圧力センサ79(図3も参照)である。
位置センサ73は、例えば、不図示のスケール部とともにリニアエンコーダを構成している。例えば、位置センサ73は、射出シリンダ25のシリンダ部29の前方に固定的に設けられ、スケール部は、射出シリンダ25のピストンロッド35に設けられ、その軸方向に延びている。そして、位置センサ73は、ピストンロッド35の移動に伴って移動するスケール部の位置を検出することによってプランジャ23の位置を間接的に検出する。なお、位置センサ73又は制御装置13は、検出した位置を微分することにより、速度を検出することが可能である。
内部圧力センサ77は、例えば、大径部111aに設けられている。大径部111aからスロート部123(小径部111b)へ徐々に断面積が小さくなっている場合においては、例えば、その断面積が小さくなり始める部分よりもキャビティCa側に位置している。ただし、断面積が徐々に小さくなっている部分に設けられていてもよい。
外部圧力センサ79は、減圧用流路119による減圧によって金型101の外部の圧力(ただし、排気の影響を受けていない圧力。例えば大気圧。)よりも圧力が低くなる位置に設けられる。外部圧力センサ79は、スロート部123及び末広部117bのいずれに設けられてもよい。外部圧力センサ79は、末広部117bに設けられる場合において、減圧用流路119の出口(排気流路121に対する開口)よりもスロート部123側に位置していてもよいし、外部側に位置していてもよい。
(射出装置の動作)
図5は、射出装置9の動作を説明するための図である。図5において、横軸は時間を示している。最上段のグラフは、射出速度を示し、縦軸は射出速度の大きさを示している。また、当該グラフの下方においては、ヘッド側弁55、ロッド側弁57、金型側弁59及びフック63のタイミングチャートが示されている。
射出装置9は、概観すると、プランジャ23の前進工程(時点t0〜t2の期間)と、プランジャ23の後退工程(時点t3〜t5の期間)とを行う。
プランジャ23の前進工程は、例えば、低速射出(時点t0〜t1の期間)及び高速射出(時点t1〜t2の少し手前までの期間)を含む。すなわち、射出装置9は、射出の初期段階においては、溶湯の空気の巻き込みを防止するために比較的低速でプランジャ23を前進させ、次に、溶湯の凝固に遅れずに溶湯を充填するため等の観点から比較的高速でプランジャ23を前進させる。
続いて、特に図示しないが、射出装置9は、成形品のヒケをなくすために、プランジャ23の前進する方向の力によりキャビティ内の溶湯を増圧し、さらに、その増圧した圧力を維持して成形品の凝固を待つ。その後、プランジャ23の後退工程が行われる。
各工程における具体的な動作は、例えば、以下のとおりである。
(射出開始直前:t0直前)
射出開始直前において、射出装置9は、図2に示す状態となっている。すなわち、プランジャ23(射出ピストン31)及び増圧ピストン33は、後退限等の初期位置において停止している。ヘッド側弁55及びロッド側弁57は、例えば、中立位置とされている(閉じられている。)。金型側弁59は、例えば、閉じられている。フック63は、例えば、ONとされている。タンク43には、圧縮された気体が保持されている。
(低速射出:t0〜t1)
固定金型103及び移動金型105の型締が終了し、溶湯がスリーブ21に供給されるなど、所定の低速射出開始条件が満たされると、制御装置13は、プランジャ23を前進させる。具体的には、例えば、制御装置13は、液圧回路71の不図示のポンプにより射出ピストン31の後方に作動液を供給し、また、メータイン回路及び/又はメータアウト回路によって射出ピストン31の速度をフィードバック制御する。なお、低速射出におけるプランジャ23の速度(低速射出速度VL)は、例えば、1m/s未満である。
この間、制御装置13は、例えば、ヘッド側弁55をb位置にし、ロッド側弁57をa位置にし、金型側弁59を開き、かつフック63をONとする。従って、プランジャ23の前進に伴って、コンプレッサー41のピストン51はロッド側室49rへ移動する。ロッド側室49rの気体はタンク43へ送出され、ヘッド側室49hには外部から気体が補給される。また、タンク43から減圧用流路119へ気体が送出される。
プランジャ23が供給口21aを超えて前進し、また、溶湯が不図示のゲートへ向かって流れ込んでいくことにより、スリーブ21内及び金型本体102内のゲートよりも手前側(スリーブ21側)に存在した気体はキャビティCaへ流れ込んでいく。これにより、キャビティCaの圧力は金型101の外部よりも高くなり、キャビティCa内の気体は排気流路121を介して金型101の外部へ排出される。
この際、減圧用流路119から排気流路121内へ送出される気体によってスロート部123よりも外側が減圧される。これにより、キャビティCaの圧力と、スロート部123よりも外側の圧力との差が大きくなり、キャビティCa内の排気が促進される。
気体供給部39から減圧用流路119へ気体を供給している間、制御装置13は、内部圧力センサ77及び/又は外部圧力センサ79が検出する圧力に基づいて、金型側弁59による流量制御を行ってよい。このときの制御は、例えば、後述するように、スロート部123における流速が音速となるように行われてよい。
(高速射出:t1〜t2の少し手前)
制御装置13は、低速射出において、プランジャ23の位置が所定の高速切換位置に到達したか否か判定する。当該判定は、適宜に行われてよい。例えば、制御装置13は、位置センサ73の検出位置が所定の高速切換位置に到達したか否かを判定し、又は射出開始から所定の時間が経過したか否かを判定する。
そして、制御装置13は、高速切換位置に到達したと判定すると、射出ピストン31の速度が低速射出速度VLよりも高速の高速射出速度VHになるように液圧回路71を制御する。具体的には、例えば、制御装置13は、液圧回路71の不図示のアキュムレータから射出ピストン31の後方に作動液を供給し、また、メータイン回路及び/又はメータアウト回路によって射出ピストン31の速度をフィードバック制御する。
この間、制御装置13は、例えば、ヘッド側弁55及びロッド側弁57を中立位置にし(閉じ)、かつフック63をOFFとする。従って、プランジャ23は、コンプレッサー41のピストン51を置き去りにして前進を継続する。また、タンク43からコンプレッサー41への圧縮気体の逆流は禁止される。ピストン51は、基本的にはその場に留まる。ただし、ロッド側室49rの圧力による力とヘッド側室49hの圧力による力とが均衡するまで(その差がピストン51の摺動抵抗等を下回るまで)は移動し得る。
また、高速射出において、制御装置13は、例えば、金型側弁59を閉じる。従って、タンク43内の圧縮気体は保持される。ただし、点線で示すように、制御装置13は、高速射出においても金型側弁59を開いて、タンク43から減圧用流路119へ気体を供給してもよい。
(増圧及び保圧等:t2の少し手前〜t3)
溶湯がキャビティCaにある程度充填されると、プランジャ23は、その充填された溶湯から反力を受けて減速され、その一方で、射出圧力は、急激に上昇していく。そして、所定の増圧開始条件が満たされると、制御装置13は、増圧工程を開始する。具体的には、例えば、制御装置13は、液圧回路71の不図示のアキュムレータから増圧ピストン33の後方に液圧を付与する。これにより、溶湯の圧力は所定の鋳造圧力(終圧)に至る。そして、制御装置13は、その終圧を維持し、溶湯が冷却されて凝固するまで待機する。
溶湯が凝固すると、特に図示しないが、制御装置13は、型締装置7に型開きを行わせるとともに、押出装置11により固定金型103から成形品を押し出す。このとき、制御装置13は、プランジャ23によりビスケットを押し出すための駆動力を射出シリンダ25が生じるように液圧回路71を制御してもよい。すなわち、押出追従が行われてもよい。
増圧及び保圧等が行われている間、ヘッド側弁55、ロッド側弁57、金型側弁59及びフック63は、例えば、高速射出における状態と同様の状態が維持される。
(プランジャ後退:t3〜t5)
保圧完了後、又は押出追従を行う場合は押出追従完了後、制御装置13は、プランジャ23を初期位置まで後退させる。具体的には、例えば、制御装置13は、液圧回路71の不図示のポンプから射出ピストン31の前方に作動液を供給して射出ピストン31を後退させる。
プランジャ23を後退させていくと、プランジャ23は、射出のときに低速射出から高速射出へ切り換えた高速切換位置へ到達する。一方、射出のときに高速切換位置においてフック63がOFFされたことから、基体61は高速切換位置に留まっている。従って、プランジャ23と共に後退している被係合部37aは、基体61に前方から当接する。その結果、プランジャ23の後退によって、コンプレッサー41のピストン51はヘッド側室49h側へ移動可能となる。
この間、制御装置13は、例えば、ヘッド側弁55をa位置とし、ロッド側弁57をb位置とし、金型側弁59は引き続き閉じ、かつフック63をONとする。従って、ピストン51のヘッド側室49h側への移動に伴い、ヘッド側室49hの気体はタンク43へ送出され、ロッド側室49rには外部から気体が補給される。タンク43から減圧用流路119への気体の送出は禁止されており、タンク43は蓄圧される。なお、フック63はOFFとされていてもよい。
なお、制御装置13は、最初の成形サイクルを開始する前、又は繰り返し行われている成形サイクルの合間において、タンク圧力センサ75が検出する圧力が所要の圧力に到達していない場合においては、タンク43を蓄圧するためにのみ射出シリンダ25を駆動しても構わない。また、タンク43は、安全弁が設けられることなどにより、一定の圧力を超えないようにされてよい。
(スロート部における流れ)
図6(a)〜図6(c)を参照して、スロート部123及びその周辺における流れを説明する。
図6(a)は、流路のモデルを示す模式図であり、具体的には、先細形状部153を有する流路151が示されている。
このようなモデルにおいて、先細形状部153よりも上流(紙面左側)の圧力をP1とする。最小断面積を有するスロート部155(先細形状の先端(出口))の圧力をPeとする。スロート部155よりも下流(紙面右側)の圧力をP2とする。
図6(b)は、図6(a)の流路151における、圧力比P2/P1(横軸)と質量流量Q(縦軸)との関係を示す図である。
この図に示すように、P2/P1=1であれば、流路151に気体は流れない。そして、P2/P1が1よりも小さくなると、図6(a)において矢印で示すように、気体が先細形状部153において上流側から下流側へ流れる。
P2/P1が臨界圧力比(約0.53)よりも小さい範囲においては、流速は、音速よりも遅い速度(亜音速)であり、先細形状部153によって加速される。また、質量流量Qは、P2/P1が小さくなるほど増加していく。圧力Peは、圧力P2と同等である。
P2/P1が臨界圧力比に到達すると、スロート部155(最も加速された位置)における流速が音速に到達する。すなわち、流れがチョークする。なお、圧力Peは、圧力P2と同等である。
そして、P2/P1を臨界圧力比よりも小さくしても、スロート部155における流速は音速のままである。質量流量Qも増加せず、圧力Pe/P1は、臨界圧力比のままである。
一方、実施形態に係るダイカストマシン1の排気流路121(本体流路111)は、上記のようなモデルと同様に、キャビティCa又は大径部111aから断面積が絞られているスロート部123を有している。従って、排気流路121においては、スロート部123における流速が音速に到達するまで、質量流量を増加させることができることになる。
その結果、例えば、プランジャ23の速度が比較的低速で、スロート部123における流速が音速に到達していない場合に、減圧用流路119から気体を排気流路121へ送り、スロート部123よりも下流側の圧力P2を減圧することによって、キャビティCaからの排気量を増加させることができる。
図6(c)は、図6(a)とは別の流路のモデルを示す模式図であり、具体的には、図6(a)の流路151に末広形状部157が追加された流路159が示されている。
このようなモデルにおいて、末広形状部157よりも下流側の圧力をP3とする。圧力比P3/P1を小さくしていくと、図6(a)の流路151と同様に、質量流量Qは、スロート部155における流れが音速に達するまでは増加し、その後は、増加しない。スロート部155において流れが音速に達するのは、スロート部155における圧力Peが臨界圧力比(約0.53)に到達するときである。
ここで、図6(a)の流路151では、スロート部155における流れが音速に達するまでは、Pe=P2である。一方、図6(b)の流路159では、スロート部155における流れが音速に達するまでは、Pe<P3である。すなわち、流路151では、P2/P1が臨界圧力比まで低下したときにスロート部155の流速が音速に達するのに対して、流路159では、P3/P1が臨界圧力比に到達しなくてもスロート部155の流速が音速に達する。
一方、実施形態に係るダイカストマシン1の排気流路121は、末広部117bを有している。従って、末広部117bを有していない態様(この態様も本開示に係る技術に含まれる)に比較して、スロート部155において音速が得られやすくなる。
なお、流路159において、スロート部155の流速が音速に達してから更にP3/P1を小さくしていくと、末広形状部157における流速は、亜音速の速度域で速くなっていき、さらには、音速よりも速い超音速になる。ただし、スロート部155における速度(音速)及び質量流量Qは変わらない。
(減圧時における制御)
本実施形態では、既に述べたように、射出において気体供給部39から減圧用流路119へ気体を供給するとき、制御装置13は、内部圧力センサ77及び/又は外部圧力センサ79が検出する圧力に基づいて、金型側弁59による流量制御を行ってよく、また、この制御は、スロート部123における流速が音速となるように行われてよい。
例えば、制御装置13は、内部圧力センサ77が検出する圧力をPINとし、外部圧力センサが検出する圧力POUTとしたときに、圧力比POUT/PINを算出する。そして、制御装置13は、POUT/PINが、スロート部123における流速が音速に到達するときの値以下になるように金型側弁59を制御する。より具体的には、例えば、制御装置13は、スロート部123における流速が音速に到達するときのPOUT/PINの値よりも若干小さい値を目標値として、検出されたPOUT/PINが目標値よりも大きいときは流量が増加するように、小さいときは流量が減少するように、金型側弁59をフィードバック制御する。
スロート部123における流速が音速に到達するときの圧力比POUT/PINの値は、理論上は、スロート部123における圧力Peと、先細形状に至る前の圧力P1との圧力比Pe/P1が約0.53になるときに対応する値である。そのような圧力比POUT/PINの値は、例えば、実際に稼働するダイカストマシン1(金型101を含む)の試運転を兼ねた実験において、スロート部123における流速を計測しつつ圧力比POUT/PINを計測することにより求められてもよいし、そのような計測をモデル的なダイカストマシンを用いた実験、又はより一般化された実験において行って求められてもよいし、理論計算によって求められてもよい。
以上のとおり、本実施形態では、射出装置9は、射出シリンダ25と、排気流路121と、減圧用流路119と、気体供給部39とを有している。射出シリンダ25は、金型101のキャビティCaに通じているスリーブ21内のプランジャ23を駆動する。排気流路121は、キャビティCaと金型101の外部とを連通している流路である。排気流路121は、キャビティCaから金型101の外部までにおいて断面積が最小となるスロート部123を含んでいる。減圧用流路119は、一端が、スロート部123よりも外側において、排気流路121に直交する方向へ開口する。気体供給部39は、減圧用流路119の他端に気体を供給して、射出シリンダ25がプランジャ23を金型101側へ移動させているときにスロート部123に音速流れを生じさせる。
従って、例えば、これまでに述べてきたように、スロート部123の外側に気体を供給して減圧することによって、スロート部123における質量流量を確実に理論上の上限値にすることができる。その結果、例えば、溶湯による気体の巻き込みが低減され、成形品の品質が向上する。
本実施形態では、排気流路121は、スロート部123から金型101の外部へ至り、金型101の外部側ほど断面積が大きくなっている末広部117bを有している。
従って、例えば、図6(c)を参照して説明したように、チョークするときの圧力比Pe/P1の値(約0.53)まで圧力比P3/P1を減圧しなくても、スロート部123において音速を得ることができる。その結果、例えば、気体供給部39の小型化を図ることができる。
本実施形態では、金型101は、金型本体102と、金型本体102に対してその外側に取り付けられている外付ブロック107と、を有している。末広部117bは、外付ブロック107内に位置している。
従って、例えば、既存の金型本体102へ本実施形態を適用することが容易化される。また、例えば、金型が交換されたときに外付ブロック107を流用すれば、コスト削減が図られる。
本実施形態では、減圧用流路119は、少なくとも2つである。
従って、例えば、減圧用流路119が1つの場合に比較して、スロート部123の外側の広い範囲に亘って減圧を行うことができる。また、例えば、2以上の減圧用流路119の位置及び向きを適宜に設定することによって任意の流れを形成して排気流路121のスロート部123よりも下流側における排気を好適化することも可能である。
また、本実施形態では、2つの減圧用流路119は、排気流路121側の一端をその開口方向へ延長したと仮定したときに互いに交わらない。
従って、例えば、2つの減圧用流路119から送出される気体の有するエネルギーが相殺されてしまうおそれが低減される。その結果、例えば、気体供給部39を小型化することができる。
また、本実施形態では、射出装置9は、低速射出及び高速射出が行われるように射出シリンダ25を制御する駆動制御部13aと、低速射出及び高速射出のうち低速射出においてのみ気体供給部39から減圧用流路119へ気体を供給するように気体供給部39を制御する減圧制御部13cと、を更に有している。
ここで、図6(b)を参照して説明したように、スロート部155(123)において流速が音速になると、それ以上、P2/P1を小さくしても質量流量Qは増加しない。一方、高速射出においては、プランジャ23が比較的高速で前進するから、スロート部123の外部において減圧をしなくても、スロート部123における流速は音速に到達する蓋然性が高い。従って、低速射出及び高速射出のうち低速射出においてのみ気体供給部39から気体を供給することによって、例えば、無駄に気体供給部39から気体を供給するおそれが低減される。別の観点では、気体供給部39が効率的に運用される。その結果、例えば、気体供給部39を小型化したり、蓄圧する時間を短くしたりすることができる。
本実施形態では、射出装置9は、スロート部123よりも金型101の内部側の圧力を検出する内部圧力センサ77と、スロート部123から金型101の外部までのいずれかの位置の圧力を検出する外部圧力センサ79と、内部圧力センサ77が検出する圧力PINに対する外部圧力センサ79が検出する圧力POUTの比POUT/PINがスロート部123において音速流れが生じるときの値以下になるように気体供給部39を制御する減圧制御部13cと、を更に有している。
従って、例えば、より確実にスロート部123において音速流れを得ることができる。また、例えば、金型本体102が交換された場合、及びオペレータが射出速度等の成形条件を変更した場合等にも音速流れが得られるように制御によって対応することができる。
本実施形態では、気体供給部39は、射出シリンダ25のプランジャ23を駆動する駆動力が伝達されて気体を圧縮するコンプレッサー41を有している。
すなわち、射出シリンダ25は、コンプレッサー41の駆動源に兼用される。従って、例えば、コンプレッサー41を駆動するための別個の駆動源は不要であり、射出装置9の小型化等が期待される。
本実施形態では、コンプレッサー41は、シリンダ部49と、シリンダ部49内に収容されており、シリンダ部49内を2つのシリンダ室(ロッド側室49r及びヘッド側室49h)に区画しているピストン51と、ピストン51からシリンダ部49の外部へ延び出ており、プランジャ23に連結されるピストンロッド53と、を有している。気体供給部39は、タンク43及び気圧回路45を有している。タンク43は、減圧用流路119に通じている。気圧回路45は、タンク43と2つのシリンダ室(49r及び49h)との接続及び遮断を制御可能である。
従って、例えば、プランジャ23の前進及び後退のいずれにおいてもコンプレッサー41からタンク43へ気体を送出することができる。換言すれば、タンク43の蓄圧のために利用できる工程の選択の自由度が高くなり、ひいては、蓄圧に利用されるプランジャ23の移動距離が増加する。その結果、例えば、コンプレッサー41の断面積を小さくして蓄圧に対する射出シリンダ25の駆動力(瞬時値)を小さくすることができる。
本実施形態では、気体供給部39は、射出シリンダ25からコンプレッサー41への駆動力の伝達を許容及び禁止可能な接続機構47を有している。
従って、例えば、蓄圧の必要がないときに射出シリンダ25の駆動力をコンプレッサー41に分配しないようにすることができる。その結果、例えば、射出シリンダ25を効率的に運用してランニングコストを低減することができる。
本実施形態では、射出装置9は、低速射出及び高速射出が行われるように射出シリンダ25を制御する駆動制御部13aと、低速射出及び高速射出のうち低速射出においてのみ射出シリンダ25からコンプレッサー41へ駆動力が伝達されるように接続機構47を制御する接続制御部13bと、を更に有している。
従って、例えば、プランジャ23を最も高速で移動させる必要があるときに、射出シリンダ25の駆動力をコンプレッサー41に分配しないようにすることができる。その結果、例えば、射出シリンダ25又は液圧回路71の小型化を図ることができる。また、例えば、コンプレッサー41のピストン51が比較的高速で駆動される場合、ベントではタンク43を過剰な圧力から保護できないおそれがあるが、そのようなおそれも低減される。
なお、以上の実施形態において、ダイカストマシン1は成形機の一例であり、射出シリンダ25は駆動部の一例である。
(変形例)
以下、図7及び図8を参照して種々の変形例について説明する。なお、以下では、実施形態との相違部分を中心に説明する。特に言及がない点は、実施形態と同様でよい。また、具体的な構成が実施形態と相違する場合においても、便宜上、実施形態で用いた符号を用いることがある。
図7(a)は、変形例に係る金型201を示す断面図であり、図3(a)に対応している。この図に示すように、排気流路121は、チルベント203を含んでいてもよい。そして、チルベント203が最も断面積が小さいスロート部123を構成していてもよい。なお、図7(a)では、外付ブロック107は、排気流路121を構成する流路として末広部117bのみを有している。もちろん、外付ブロック107は、接続部117aを有していてもよい。
図7(b)は、変形例に係る金型211を示す断面図であり、図3(a)に対応している。この図に示すように、金型211は、外付ブロック107を含まずに構成されてよい。そして、金型本体102内に末広部117b及び減圧用流路119が設けられてもよい。なお、末広部117b及び減圧用流路119は、おも型又はキャビティCaが直彫りされたダイブロック等に直接的に形成されてもよいし、これらの流路が形成された部材がおも型又はダイブロック等に埋め込まれて設けられてもよい。
図8(a)は、変形例に係る外付ブロック221を示す平面図であり、図3(b)に対応している。この図に示すように、2つの減圧用流路119は、平面視において、流路に直交する方向の位置が互いに異なっていてもよい(オフセットされていてもよい。)。そして、このような位置関係によって、2つの減圧用流路119の一端をその開口方向へ延長したと仮定したときに両者が交わらない構成が実現されてよい。
図8(b)は、変形例に係る外付ブロック231を示す断面図であり、図3(a)に対応している。この図に示すように、減圧用流路119の一端の開口方向は、排気流路121に直交する方向ではなく、直交する方向に対して排気流路121の下流方向(流路方向のうち下流側)に傾斜する方向であってもよい。また、特に図示しないが、減圧用流路119の一端の開口方向は、排気流路121の下流方向に平行な方向であってもよい。いずれにせよ、減圧用流路119の一端からスロート部123の外側へ気体が送出されることによって減圧の効果が得られる。
なお、特に図示しないが、実施形態における2つの減圧用流路119の上下方向における位置が互いに異なる態様と、図8(a)の2つの減圧用流路119の平面方向かつ流路に直交する方向における位置が互いに異なる態様とは組み合わされてよいし、また、これらの各態様又は組み合わせは、図8(b)を参照して説明した減圧用流路119の向きに対して適用されてもよい。
図8(c)は、変形例に係る排気流路241及び減圧用流路243を示す断面図であり、図3(a)に対応している。この図に示すように、排気流路241は、末広部117bを有していなくてもよい。また、減圧用流路243は、排気流路241内に開口するのではなく、排気流路241の外側に隣接して開口していてもよい。ここでいう隣接は、減圧用流路243による減圧によってスロート部123の速度に影響を及ぼすことが可能であればよい。また、減圧用流路243は、金型等のブロック状の部材に設けられるのではなく、管状部材によって構成されていてもよい。図8(c)のような構成であっても、減圧によるガス抜きの好適化の効果が得られる。
図8(d)は、変形例に係る射出装置251の要部構成を模式的に示す図であり、図2に対応している。この図に示すように、コンプレッサー41は、射出シリンダ25によって駆動されるのではなく、別の駆動源(例えば電動機253)によって駆動されてよい。電動機253は、リニアモータであってもよいし、回転式のものであってもよい。なお、電動機253が回転式のものである場合、特に図示しないが、例えば、ねじ機構、ラック・ピニオン機構又はリンク機構等の適宜な変換機構によって電動機253の回転が直線運動に変換されてピストンロッド53に伝達される。
本発明は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
成形機(成形機)は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、樹脂を成形する射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出、縦型締横射出であってもよい。金型内から抜かれる気体及び/又は排気流路に供給される気体は空気に限定されず、例えば、不活性ガス(例えば窒素)であってもよい。
射出装置は、液圧式のものに限定されない。すなわち、プランジャを駆動する駆動部は、射出シリンダに限定されない。例えば、射出装置(駆動部)は、射出シリンダと電動機とを含むハイブリッド式のものであってもよいし、液圧機器を含まず、電動機を含む電動式のものであってもよい。駆動部が電動機を含む場合において、電動機は、リニアモータであってもよいし、回転式のものであってもよい。回転式の電動機の回転は、例えば、ねじ機構、ラック・ピニオン機構又はリンク機構等の変換機構によって直線運動に変換されてプランジャに伝達される。射出シリンダに利用される液体は、油に限定されず、例えば水でもよい。プランジャは、スクリュー状のものであってもよい。
射出は、低速射出及び高速射出を有するものに限定されず、例えば、射出開始から増圧開始まで、射出速度が一定であったり、連続的に上昇したりするものであってもよい。また、低速射出は、概ね全体が一定速度のものに限定されず、徐々に速度を上昇させるものであってもよい。多段変速が行われてもよい。
スロート部における流速が音速になる時期は、種々の態様の射出の適宜な時期に対して設定されてよい。スロート部における流速が音速になる期間の長さも、適宜に設定されてよく、例えば、低速射出のごく一部であってもよい。
コンプレッサーは、容積を変化させる方式のものに限定されず、例えば、ターボ圧縮機であってもよい。また、容積を変化させるコンプレッサーは、往復式に限定されず、例えば、回転が伝達されて駆動される方式のものであってよい。
プランジャを駆動する駆動部の駆動力によってコンプレッサーが駆動される態様においても、駆動部の種類(例えば、液圧式、ハイブリッド式又は電動式)と、コンプレッサーの種類(例えば、往復式の容積圧縮機、回転式の容積圧縮機又はターボ圧縮機)との組み合わせも種々のものとされてよい。
また、駆動部からコンプレッサーへの駆動力の伝達は、駆動部からプランジャへの駆動力の伝達経路とは別の伝達経路とされてよい。駆動部からコンプレッサーへ、プランジャを駆動する直線運動が伝達されるのではなく、回転運動が伝達されてもよい。
具体的には、例えば、駆動部が回転式の電動機を含み、電動機の回転が直線運動に変換されてプランジャへ伝達される態様において、電動機の回転が、プランジャへの伝達経路とは別に設けられた、歯車機構又はプーリ・ベルト機構等の回転を伝達する伝達機構を介して、回転式のコンプレッサーへ伝達されてもよい。
また、例えば、電動機の回転が、プランジャへの伝達経路とは別に設けられた、電動機の回転を直線運動に変換する変換機構を介して、往復式のコンプレッサーへ伝達されてもよい。プランジャと同様に直線運動をコンプレッサーに伝達するにしても、経路を別にすることによって、例えば、プランジャとコンプレッサーとで速度を異ならせることが可能になる。
プランジャを駆動する駆動部からコンプレッサーへの駆動力の伝達を許容及び禁止可能な接続機構の構成は、直線運動の伝達に係るものに限定されないし、係合によるものに限定されないし、プランジャの前進のみに関して伝達を禁止可能なものに限定されない。例えば、接続機構は、駆動部からコンプレッサーへ回転が伝達される態様において、噛み合いクラッチ、摩擦クラッチ又は流体クラッチとされてもよい。また、例えば、駆動部からコンプレッサーへ直線運動が伝達される態様において、接続機構は、直線運動の方向に配列された複数の歯と、当該歯に対して係合する位置と離反する位置との間で移動する爪とを有するなど、双方向かつ任意の位置において駆動力の伝達の許容及び禁止が可能であってもよい。
なお、本開示からは、減圧用流路からの気体の送出による減圧を要件としない、以下の技術を抽出可能である。
金型のキャビティに通じるスリーブ内のプランジャを駆動可能な駆動部と、
前記キャビティと前記金型の外部とを連通している排気流路であって、前記キャビティから前記金型の外部までにおいて断面積が最小となるスロート部を含んでいる排気流路と、
を有しており、
前記排気流路は、前記スロート部から前記金型の外部へ至り、前記金型の外部側ほど断面積が大きくなっている末広部を有している
射出装置。