JP2010126607A - 内燃機関用潤滑剤組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
一般的に、現行の潤滑油は、穏和な摩擦条件(流体潤滑条件)下ではその摺動間隙に流体膜を形成し、低摩擦係数を発現する低粘性の油(すなわち基油)と、厳しい摩擦条件下においてその低粘性基油が破断した後に界面同士が直接的に接することを防止するために、その界面(例えば鉄界面)と反応して強靭で且つ柔軟な低摩擦係数を与える境界潤滑膜を形成可能な薬剤とを含んでいる。薬剤は、基油に溶解しているが、界面素材(通常は鋼鉄)との反応により、経時で、その界面に集積してくる。しかし、同時に、摺動には直接的に関わっていない面の大部分にもその薬剤が反応し、集積が起こり、その貴重な薬剤が消費されることになる。さらに、薬剤が消費されても、基油から消失するのではなく、実際には様々な分解物となって残存し、多くの場合には、それが潤滑油自体の劣化を促進する。また、薬剤からなる境界潤滑膜自体も、厳しい条件下での摩擦摺動により剥離し、また界面基材自体も剥離し、上記の反応分解物とともに浮遊したり、沈積したりして、潤滑油の潤滑能を損ない、その所期性能を劣化させる一因になる。これを防止するため、潤滑剤には、通常、酸化防止剤、分散剤、清浄剤などが添加されている(特許文献1)。
この様に、現行の潤滑油の多くには、極めて厳しい条件(境界潤滑条件)下での摩擦低減という目的のため、並びに添加した薬剤の副作用の低減及び抑止という目的のために、さらに新たな薬剤が添加されている。また、磨耗によって界面自体から生じた微小摩耗粉、及び薬剤の分解浮遊物によって潤滑機能が低下するのを軽減するために、さらに新たな薬剤が添加さている。そして、潤滑油中で、種々の薬剤の機能が関連しあっているために、それぞれの薬剤の消耗及び劣化によって、潤滑油全体として機能し及び最良の潤滑効果を発揮できる期間が、短くなることは必然であって、避けられない。これは、ある種の悪循環であるといえる。従って、現行の潤滑油の性能を改善することは容易ではない。
この弾性流体潤滑機構が働く領域は、例えば数トン/cm2、即ち数百MPa程度、の高圧力での摩擦の領域である。一見すると過酷な条件であるが、実は、その程度の圧力範囲であると鉄が弾性変形し始めるので、油膜を介して接する鉄界面の真実接触面の面積が増加し、実質的な圧力は低くなる。即ち、この領域に入ると、鉄の弾性限界か油膜切れが起こらない限り、摩擦係数が増加しなくなり、摺動界面にとっては「恵みの領域」といえるのである。また、同時にこの領域では、鉱物油など一般的な潤滑油の油膜なら常圧時の1000倍程度の高粘性になるが、素材の化学構造によっては500倍程度の低粘性にしかならない場合がある。Barusは、この現象を液体の粘度の圧力依存性を下式(VII)で表し、圧力に対する物質固有の粘性の増加率αが関係していることを示した(非特許文献1)。
η=η0exp(αP) (VII)
但し、αは粘度圧力係数、及びη0は常圧粘度である。
また、Doolittleは、液体の粘性が、液体の体積中に占める分子の占有体積と液体の熱膨張によって生じる自由体積の比によって決定されるという自由体積モデルの考え方を提唱した(非特許文献2)。
η= Aexp( BV0 / Vf ) (VIII)
但し、ηは粘度,V0 は分子の占有体積,Vf は自由体積を表す。
しかし、これらの素材に共通していることは、その粘性が、通常潤滑油に用いられる鉱物油及び化学合成油の粘性と比較して一桁近く大きいことであり、そのような素材を大量に、安価に、しかも低粘性の基油の代わりに用いることは到底できない。
即ち、高圧下の粘性は、上記式(VII)に示す通り、粘度η0と粘度圧力係数αで規定されるが、現実的に低粘性の基油を用いると弾性流体潤滑領域では既に破断し始め、高圧下では粘性が無い状態すなわち弾塑性体になる。この潤滑油膜の破断のし易さは、流体分子の集合状態、すなわち潤滑油分子のパッキング状態と相関しており、粘度圧力係数αと圧力Pとの積αPで評価できることが明らかにされている(非特許文献4)。
lnη=lnη1+α1・P=lnη2+α2・P
が成立する。
18=α1・P<α2・P=24 すなわちα1:α2=18:24の場合、粘度圧力係数α2の膜は、あと少し圧力Pが増加すると弾塑性体となり、同じ圧力下、同じ粘性であってもより破断し易いことがわかる。
従って、流体潤滑領域でも使用可能な程度の比較的大きなη0の基油を利用しても、基油を構成する鉱物油などの鎖状炭化水素の粘度圧力係数αが大きいので、結局、高圧下での粘度ηが大きくなる傾向があり、流体潤滑下で低摩擦係数を与える低η0と弾性流体潤滑下で低摩擦係数を与える低αとを同時に持った、粘弾性液体領域の広い基油及び有機化合物はこれまで存在しない。
仮に、その制約をクリアする素材が開発できたとしても、大量供給性及び低コストという基油の必要条件を考慮すると、全てを同時に満足する素材の提供は困難であるといえる。それ故に、低燃費の達成のためには低粘性であることが必須のエンジンオイルには、弾性流体潤滑を有効に利用するという発想自体が無かったという歴史的背景があると思われ、現在の低粘性基油と境界潤滑膜を形成する微量薬剤との組合せに素材開発が収束したことは、必然的な結果であったと言える。
しかし、内燃機関や自動変速機等に使用される潤滑油に対しては、省燃費のための低粘性化の要求があると同時に、近年の資源有効利用、廃油の低減、潤滑油ユーザーのコスト削減等の観点から、潤滑油のロングドレイン化に対する要求が一層高まっている。特に内燃機関用潤滑油(エンジン油)には、内燃機関の高性能化、高出力化、運転条件の苛酷化等に伴い、より高度な性能が要求されている。
特に内燃機関用潤滑油は、主として、ピストンリングとシリンダライナ;クランク軸、コネクティングロッドの軸受;カムとバルブリフタを含む動弁機構;等各種摺動部分の潤滑に用いられている。また、エンジン内の冷却や燃焼生成物の清浄分散、さらには錆や腐食を防止するなどの作用を果している。このように、内燃機関用潤滑油には多様な性能が要求され、しかも近年、内燃機関の高性能化、高出力化、運転条件の過酷化などに伴い、高度な性能が要求されてきている。したがって、内燃機関用潤滑油には、このような要求性能を満たすために、例えば摩耗防止剤、金属清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤などの種々の添加剤が配合されている。内燃機関用潤滑油の基本的機能として、特にあらゆる条件下で機関を円滑に作用させ、摩耗、焼付き防止を行うことが重要である。エンジン潤滑部は、大部分が流体潤滑状態にあるが、動弁系やピストンの上下死点などでは境界潤滑状態となりやすく、このような境界潤滑下における摩耗防止性は、一般に、ジチオりん酸亜鉛やジチオカルバミン酸亜鉛等の添加によって付与されている。
従来、摩擦係数を低くするために、エンジン油に摩擦緩和剤(FM)を添加する方法が用いられてきた。摩擦緩和剤の中ではモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)や硫化オキシモリブデンオルガノホスホロジチオエート(MoDTP)等の有機モリブデン化合物が効果が高いことが知られている。
しかし、これらの有機モリブデン化合物を添加した潤滑油は、中低油温かつ低速回転の運転条件下では、十分な低摩擦係数が得られないという問題があった。さらに、これらの有機モリブデン化合物は、エンジン油を使用するのに伴い、酸化されて減少してゆく。そのため、新油の時点において省燃費性が優れていたとしても、良好な摩擦緩和効果を長時間維持できず、使用時間の経過と共にエンジン油の省燃費性が失われていくという問題があった。これを改善するために、新油時において、有機モリブデン化合物の添加量を増量することが考えられるが、有機モリブデン化合物の添加量を単に増量すると、製品コストが高くなるので、経済的に好ましくない。
摩擦緩和剤として一般的に使用される有機モリブデン化合物、脂肪酸エステル、アルキルアミンなどは、使用開始初期には添加効果が認められるが、空気中の酸素による酸化劣化を受けるとその効果を喪失し、特に窒素酸化物ガスの存在下ではその効果の低減が著しい。また、モリブデンジチオカーバメートなどの摩擦緩和剤は、潤滑油基油への溶解度が低く、低温での長期保存により沈殿を生じるためにその添加量が制限される。さらに、有機モリブデン系化合物のような摩擦調整剤を用いた内燃機関用潤滑油は、高温酸化安定性、特に、ILSAC(International Lubrican t Standardization and Approval Committee)で制定されたガソリンエンジンオイル規格(GF−2)で規定されている窒素酸化物の存在下における高温デポジット防止性能、すなわち、TEOSTデポジット防止性能が低下するという問題が生じることが知られている。 高温デポジット防止性能は、内燃機関のターボ軸受のコーキング性の評価基準として利用されるものであり、低燃費潤滑油にとって重要な要求品質である。よってこれを充足することが低燃費性能を有する高性能潤滑油の今後の開発にとって重要な課題である。従来、潤滑油の酸化安定性は、基油に含有される硫黄化合物等のナチュラルインヒビターの作用に加え、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤の添加により対応している。例えば、アミン系酸化防止剤としてアルキル化フェニル−α−ナフチルアミン、P,P’−ジアルキルジフェニルアミン、フェノチアジン等が使用され、また、フェノール系酸化防止剤として、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルパラクレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)等が用いられている。しかしながら、これらの酸化防止剤のみでは、上記の苛酷な条件下での高温デポジット防止性能の改善は極めて小さいものであり、低燃費性能を損なうことなく、高温デポジット防止性能を有する低燃費潤滑油は現在未だ開発されるに至っていない。
金属系清浄剤はピストンやピストンリング等のエンジン部品を清浄に保つためにエンジン油に最も一般的に使用されているが、これはリンによる触媒被毒をある程度緩和することが知られている。しかしながら、金属系清浄剤は灰分の原因となり、上述のような問題を生じる可能性があるほか、燃焼室デポジット(CCD;Combustion Chamber Deposit)等の原因となる。また、金属系清浄剤の中で最も一般的に使用されているアルカリ土類金属スルホネートや、硫黄による分子架橋されたアルカリ土類金属フェネートあるいはアルカリ土類金属サリシレートには硫黄も含まれるため、おのずとその使用量は限定せざるを得ない。しかしながら、低灰化は動弁系の摩耗量の増大につながり、低灰化にもおのずと限界があった。
特に、最近は排出ガス規制の観点から、燃料組成物の低硫黄濃度化が必須となりつつあるが、それによって潤滑性が低下し、カム、バルブを含む動弁機構の耐久性の低下が懸念されており、ここにも従来の摩擦、磨耗低減に寄与する元素を見直す必要に迫られている。
すなわち、境界潤滑膜形成に必須の元素でありながら、同時に存在自体が問題となっている硫黄、リン、重金属の低減化が求められている。潤滑油は、現在の産業機械自体を支える材料であり、容易には換えられないとしても、真剣に、潤滑油の組成、及びその背景にある潤滑機構自体を、150年以上経った最新の科学技術と機能性素材技術によって見直さなければならない時期に来ている。
また、本発明は、環境負荷元素であるリン、硫黄、重金属を利用せずに、潤滑性能を発現し得る新規な内燃機関用潤滑剤組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、低荷重下では低粘性の油性媒体が流体潤滑領域で優先的に機能し、高荷重下では弾性流体潤滑領域で低粘性を発現する微量薬剤が油脂得媒体中から摺動界面に効率的に蓄積するという、新規な潤滑機構を経由して機能する内燃機関用潤滑剤組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、内燃機関、ギヤ、自動変速機、緩衝器、パワーステアリングなどに好適に用いることができる内燃機関用潤滑組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、高温デポジット防止性能、耐NOx酸化安定性、材料適合性、剪断安定性に優れる内燃機関用潤滑剤組成物を提供することを課題とする。
[1] 油性媒体と、該油性媒体中に分散及び/又は溶解している少なくとも1種の下記式(I)で表される化合物とを含む内燃機関用潤滑組成物:
[9] R1〜R4、R11、R12及びR21〜R23が、末端にC12以上のアルキル基を有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれかの内燃機関用潤滑剤組成物。
[10] 式(I)で表される化合物の40℃における粘度圧力係数が、20GPa-1以下であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれかの内燃機関用潤滑剤組成物。
[11] 油性媒体が、鉱物油、ポリ−α−オレフィン、ポリオ−ルエステル、(ポリ)フェニルエ−テル、イオン液体、シリコ−ン油、フッ素油のいずれか又はその混合物であることを特徴とする[1]〜[10]のいずれかの内燃機関用潤滑剤組成物。
[12] 油性媒体が、燃焼機関用燃料であることを特徴とする[1]〜[11]のいずれかの内燃機関用潤滑剤組成物。
[13] 構成元素が、炭素、水素、酸素及び窒素だけからなることを特徴とする[1]〜[12]のいずれかの内燃機関用潤滑剤組成物。
[14] 液晶性であることを特徴とする[1]〜[13]のいずれかの内燃機関用潤滑剤組成物。
[15] 40℃での粘性が30mPa・s以下であることを特徴とする[1]〜[14]のいずれかの内燃機関用潤滑剤組成物。
[16] 不透明状態から透明状態に転移する透明点が常圧で70℃以下であることを特徴とする[1]〜[15]のいずれかの内燃機関用潤滑剤組成物。
[17] 金属系清浄剤、無灰系分散剤、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、粘度指数向上剤、防錆剤及び消泡剤からなる添加剤群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする[1]〜[16]のいずれかの内燃機関用潤滑剤組成物。
さらに、本発明によれば、
・ 弾性流体潤滑素材が粘度指数向上剤としての機能を発現し、低温でも低粘性な油性媒体との組合せで省燃費が図れ、
・ 基本的には界面との反応を利用していないので、鋼鉄以外の合金、樹脂、セラミックの界面でも、モリブデン含有オイルを凌駕する低摩擦性を発現し、原理的に消耗しないので、耐久性の向上が図れ、
・ 現行の潤滑油では必須の硫黄、リン、重金属などの環境負荷元素を含まないので、排気ガスや廃油
のリサイクルの観点でも好ましく、
・ 内燃機関、ギヤ、自動変速機、緩衝器、パワーステアリングなどの潤滑油、特に内燃機関用潤滑油
として好適に用いることができ、
・ 従来の内燃機関用潤滑油の課題であった、高温デポジット防止性能、耐NOx酸化安定性、材料適合性、及び剪断安定性を改善できる。
本発明は、油性媒体と、該油性媒体中に分散及び/又は溶解している少なくとも1種の下記式(I)で表される化合物とを含む内燃機関用潤滑剤組成物に関する。
1. 式(I)で表される化合物
式(I)中、n1〜n3はそれぞれ0〜5の整数である。−(CX1〜3)n1〜3の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、クロロエチレン基、及びテトラフルオロエチレン基などが挙げられる。
式(III)中、mは0〜8の整数であり、好ましくは0〜2の整数である。
R1〜R4、R11、R12及びR21〜R23の末端に存在するC8以上のアルキル基は、C12以上のアルキル基であるのが好ましい。また、C30以下のアルキル基であるのが好ましく、C24以下のアルキル基であるのがさらに好ましい。該アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。具体的には、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル、トリコシル、オクタコシル、トリアコンチル、ペンタトリアコンチル、テトラコンチル、ペンタコンチル、ヘキサコンチル、オクタコンチル、デカコンチルが挙げられる。これらのアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子及び塩素原子)、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アルコキシ基、シアノ基等が含まれる。
また、R1〜R4、R11、R12及びR21〜R23の末端に存在するパーフルオロエーテル基は、−(CnF2n−O)nc−CmF2m+1で表され、n、n1、及びmはそれぞれ1以上の整数であり、nは1〜4の整数、ncは1〜20の整数、mは1〜10の整数であるのが好ましい。mは1〜6であるのがより好ましく、1〜4であるのがさらに好ましく、1〜2であるのが特に好ましい。ncは、1〜8であるのがより好ましく、3〜8であるのがさらに好ましい。
Laはそれぞれ、単結合、又はカルボニル基、スルホニル基、ホスホリル基、オキシ基、置換もしくは無置換のイミノ基、スルフィド基、C1〜C6のアルキレン基、C6〜C16のシクロアルキレン基、C2〜C8のアルケニレン基、C2〜C5のアルキニレン基、及びC6〜C10のアリ−レン基、C3〜C10の複素環基から選択される一つ以上の組合せからなる二価の連結基であるのが好ましい。
また、式(Ic)の好ましい一例は、以下の式(Ic’)で表される基である。
以下に、式(I)〜(III)でそれぞれ表される化合物の具体例を示すが、これら限定されるものではない。
A−{(D)−(E)q−(B)m−Z2−R}p (IV)
Aはp本以上の側鎖を有するp価のアルコ−ル残基を表す。pは2以上の整数を表す。Aの例には、ペンタエリスリト−ル、グリセロ−ル、オリゴペンタエリスリト−ル、キシリト−ル、ソルビト−ル、トリメチロ−ルプロパン、ジトリメチロ−ルプロパン、ネオペンチルグリコ−ル、ポリグリセリンなどが含まれる。
qは0以上の整数を表し、qが2以上のとき、互いに異なっていてもよい。
鋼鉄球がダイアモンド板に点接触している部分には光学的な干渉模様であるニュートンリングが形成されるが、ダイアモンド板を介して鋼鉄球と逆側から赤外光を照射すると鋼鉄球に反射することで、ニュートンリング近傍の試料の薄膜のIRスペクトルが測定できる。この方法は、石川潤一、七尾英孝、南一郎、森誠之、トライボロジー会議予稿集(鳥取、2004−11)、243頁に記載されているトライボロジー分野での微小部分の解析方法であり、特別なものではないが、鋼鉄球の回転速度、回転軸への負荷、試料の温度を変えることで、様々な弾性流体潤滑条件での挙動を、その場観察することができ、有効な方法である。
上記の点接触EHL評価装置は、高圧力、高剪断条件下のヘルツ接触域すなわち真実接触部位のモデルであり、実際の摩擦接触域は、そのような真実接触域が密集しているような領域であるから、油性媒体中に前記化合物を含む本発明の組成物は、そのような摩擦接触域の多数の真実接触域近傍で、前記化合物を蓄積させることになると考えられる。
また、本発明の組成物の皮膜形成性は、界面との反応を基本的に利用していないので、界面の材質には制限されない。さらに、前記化合物は、基本的に、熱に強く、化学的にも安定であるために、相対的に顕著に高耐久性である。また、その摩擦部分が高荷重条件でなくなり、高温になれば、再び油性媒体中に分散することになり、総量は常に維持されることになる。必要なところに、必要なだけ蓄積し、低摩擦を発現し、要らなくなればまた油性媒体に分散されるという、極めてインテリジェントな潤滑剤組成物である。
本発明において、「油性媒体」とは、一般的に「油」とよばれている媒体の全てを意味するものである。但し、室温又は使用される温度において、液状であることは必要とせず、液体以外にも固体及びゲル等のいずれの形態の材料も利用することができる。本発明において利用する油性媒体については特に制限はなく、用途に応じて種々の油から選択することができる。より具体的には、潤滑油のベースオイルに用いられる鉱物油や食用油まで含めた動物性・植物性の油脂化合物;並びに、ポリオレフィン油、アルキルベンゼン油、アルキルナフタレン油、ビフェニル油、ジフェニルアルカン油、ジ(アルキルフェニル)アルカン油、エステル油、ポリグリコール油、ポリフェニルエーテル油、フッ素化合物(パーフルオロポリエーテル、フッ素化ポリオレフィン等)、シリコーン油、及びイオン流体等の各種化学合成油;等の種々の油から選択することができる。本発明の組成物を潤滑油の代替として利用する態様では、摩擦特性の点から、鉱物油、ポリオレフィン油、及びシリコーン油が好ましく用いられる。
鉱物油としては、石油精製業の潤滑油製造プロセスで通常行われている方法により得られる鉱物油を利用することができる。より具体的には、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、及び白土処理等から選択される1種又は2種以上の精製手段を適宜組み合わせて精製することによって得られる、パラフィン系又はナフテン系等の鉱物油を用いることができる。
また、油脂としては、例えば、牛脂、豚脂、ひまわり油、大豆油、菜種油、米ぬか油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、あるいはこれらの水素添加物等を用いることができる。
これらの中でも、エチレンとプロピレンとの共重合体;エチレンと炭素原子数5〜12のα−オレフィンとの共重合体;ポリブテン、ポリイソブテン、又は炭素原子数5〜12のα−オレフィンの重合体が好ましく、エチレンと炭素原子数5〜12のα−オレフィンの共重合体、炭素原子数5〜12のα−オレフィンの重合体がより好ましい。本明細書において、「エチレンと炭素原子数5〜12のα−オレフィンとの共重合体」とは、エチレンと炭素原子数5〜12のα−オレフィン1種、もしくは2種以上が重合した共重合体をいい、炭素原子数5〜12のα−オレフィンの重合体とは、炭素原子数5〜12のα−オレフィン1種が重合した単独重合体、もしくは2種以上が重合した共重合体をいう。
上記のエチレンと炭素原子数5〜12のα−オレフィンとの共重合体及び炭素原子数5〜12のα−オレフィンの重合体の平均分子量は500〜4000であることが好ましい。
このようなトリメリット酸エステルとして、花王(株)製「トリメックスT−08」、「N−08」、旭電化工業(株)製「アデカプルーバーT−45」、「T−90、PT−50」「UNIQEMA E MKARATE8130」、「EMKARATE9130」、「EMKARATE1320」等を市場から入手できる。また、ピロメリット酸エステルとして、旭電化工業(株)製「アデカプルーバーLX−1891」、「アデカプルーバーLX−1892」、Cognis社製「BISOLUBETOPM」等を市場から入手できる。これらは、流動点が低く、本発明に好適に使用できる。
更に、R&1及びR62中のフッ素原子数/炭素原子数の比は、0.6〜3、好ましくは1〜3、より好ましくは1.5〜3である。
油性媒体中に、上記式で表されるジフェニルエーテル油を、50〜100質量%利用してもよく、60〜80質量%利用してもよい。上記範囲であると耐熱性がより改善される。ジフェニルエーテル油と併用する油としては、エステル系合成油及びポリα−オレフィン油が好ましい。
例えば、シクロヘキサン環を有する飽和炭化水素化合物の例には、特公平3−80191号、特公平2−52958号、特公平6−39419、特公平6−92323号等の各公報に記載の化合物が含まれ;デカリン環を有する飽和炭化水素化合物の例には、特公昭60−43392号、特公平6−51874公報の各公報に記載の化合物が含まれ;ビシクロヘプタン環を有する飽和炭化水素化合物の例には、特公平5−31914号、特公平7−103387号等の各公報に記載の化合物が含まれ、より具体的には、1−(1−デカリル)−2−シクロヘキシルプロパン;1−シクロヘキシル−1−デカリルエタン;1,3−ジシクロヘキシル−3−メチルブタン;2,4−ジシクロヘキシルペンタン;1,2−ビス(メチルシクロヘキシル)−2−メチルプロパン;1,1−ビス(メチルシクロヘキシル)−2−メチルプロパン;2,4−ジシクロヘキシル−2−メチルペンタンが含まれる。また、ビシクロオクタン環を有する飽和炭化水素化合物の例には、特開平5−9134号等公報に記載の化合物が含まれる。
このような組成物はいろいろな等級、例えば無鉛及び鉛含有ガソリンなどとして供給され、典型的には、通常の精製方法及びブレンド方法、例えば直留分溜、熱分解、水素化分解、接触分解及びいろいろな改質方法を利用して、石油の原油から誘導される。ガソリンは、ASTM D86蒸留方法で測定した時の初期沸点が、約20〜60℃の範囲で、最終沸点が約150〜230℃の範囲の液状炭化水素もしくは炭化水素−酸素化物の混合物として定義されるであろう。この酸素化物としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、及びC1〜C5混合アルコール等のアルコール;例えば、メチル−t−ブチルエーテル、t−アミルエチルエーテル、エチル−t−ブチルエーテル、及び混合エーテル等のエーテル;ならびに例えばアセトン等のケトン;が含まれる。
また、エステル油は、樹脂製部材やゴム製部材に悪影響を与える場合があり、樹脂製部材やゴム製部材に対する悪影響を防止するという観点では、エステル油以外の油を油性媒体に用いることが好ましく、具体的には、鉱油、ポリオレフィン油、シリコーン油、ポリグリコール油、ポリフェニルエーテル油が好ましい。
双方の観点では、ポリオレフィンが好ましく、中でも、エチレンとプロピレンとの共重合体;エチレンと炭素原子数5〜12のα−オレフィンとの共重合体;ポリブテン、ポリイソブテン、又は炭素原子数5〜12のα−オレフィンの重合体がより好ましく、エチレンと炭素原子数5〜12のα−オレフィンの共重合体、炭素原子数5〜12のα−オレフィンの重合体が更に好ましい。
本発明の組成物は、前記式(I)〜(III)で表される化合物を、油性媒体中に添加し、溶解及び/又は分散させることで調製することができる。溶解及び/又は分散は、加温下で行ってもよい。前記式(I)〜(III)で表される化合物の添加量は、油性媒体の質量に対して、0.1〜10質量%程度で添加されるのが好ましい。但し、この範囲に限定されるものではなく、上記化合物が、摩擦低減作用を示すのに充分な量であれば、上記範囲外であっても勿論よい。
磨耗防止剤:
内燃機関の潤滑油は、内燃機関のために適切な摩耗防止保護を提供するために摩耗防止剤及び/又は極圧(EP)添加剤の存在を必要とする。エンジン油のための仕様書は、油の摩耗防止特性の改善に関する傾向をますます示してきた。摩耗防止剤及びEP添加剤は、金属部品の摩擦及び摩耗を減少させることにより、この役割を果たす。異なる多くのタイプの摩耗防止剤が存在する一方で、数十年にわたって内燃機関のクランクケース油のための主たる摩耗防止剤は、一次金属成分が亜鉛又はジアルキルジチオ燐酸亜鉛(ZDDP)である金属アルキルチオホスフェート、特に金属ジアルキルジチオホスフェートである。ZDDP化合物は、一般に、式:Zn[Sn(S)(OR71)(OR72)]2(式中、R71及びR72は、C1〜C18アルキル基、好ましくはC2〜C12アルキル基である)の化合物である。これらのアルキル基は直鎖又は分岐であってもよい。ZDDPは、組成物中に、一般的には約0.4〜1.4質量%の量で用いられる。但し、この範囲に限定されるものではない。
R73R74C=CR75R76によって定義される。
式中、R73〜R76の各々は独立して水素又は炭化水素基である。好ましい炭化水素基はアルキル基又はアルケニル基である。環式環を形成させるためにR73〜R76のいずれか二個が連結していてもよい。硫化オレフィン及び硫化オレフィンの調製に関する追加情報は米国特許第4,941,984号明細書中に記載があり、参照することができる。
粘度指数向上剤(VI向上剤、粘度調整剤及び粘度向上剤としても知られている)は、高温運転適性及び低温運転適性を組成物に与える。これらの添加剤は、高温での剪断安定性及び低温での許容可能な粘度を付与する。
適する粘度指数改善剤の例として、高分子量炭化水素、ポリエステル及び粘度指数向上剤と分散剤の両方として機能する粘度指数向上剤分散剤が挙げられる。これらのポリマーの典型的な分子量は、約10,000〜1,000,000の間、より典型的には約20,000〜500,000、なおより典型的には約50,000〜200,000の間である。
酸化防止剤は、併用される油の酸化劣化を遅らせる作用がある。こうした劣化は、金属表面上の堆積物、スラッジの存在又は潤滑油の粘度増加を招きうる。潤滑油組成物中で有用な様々な酸化防止剤については、例えば、「クラマン潤滑剤及び関連製品(Klamann in Lubricants and Related Products)」、フロリダ州ディアフィールドビーチのフェアラークヘミー(Verlag Chemie(Deerfield Beach,FL)、ISBN0−89573−177−0)、並びに米国特許第4.798,684号明細書及び米国特許第5,084,197号明細書に記載があり、参照することができる。
清浄剤は潤滑油組成物中に一般的に用いられる。典型的な清浄剤は、分子の長鎖親油性部分及び分子のより小さいアニオン部分又は疎油性部分を含むアニオン材料である。清浄剤のアニオン部分は、典型的には、サルファ酸、カルボン酸、燐酸、フェノール又はそれらの混合物などの有機酸から誘導される。対イオンは、典型的には、アルカリ土類金属又はアルカリ金属である。
エンジン運転中、油不溶性酸化副生物が生じる場合がある。分散剤は、これらの副生物を溶液中に保つのを助け、こうして金属表面上の副生物の堆積物を減らす。分散剤は、事実上、無灰又は灰生成性であってもよい。好ましくは、分散剤は無灰である。いわゆる無灰分散剤は、燃焼しても灰を実質的に全く生じない有機材料である。例えば、非−金属含有分散剤又は硼素化無金属分散剤は無灰と考えられる。それに反して、上で論じた金属含有清浄剤は燃焼すると灰を生成する。
流動点降下剤は、流体が流れるか、又は流体を流動させることができる最低温度を下げる作用がある。適する流動点降下剤の例には、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物の縮合製品、ビニルカルボキシレートポリマーならびにジアルキルフマレート、脂肪酸のビニルエステル及びアリルビニルエーテルのターポリマーが挙げられる。米国特許第1,815,022号明細書、米国特許第2,015,748号明細書、米国特許第2,191,498号明細書、米国特許第2,387,501号明細書、米国特許第2,655,479号明細書、米国特許第2,666,746号明細書、米国特許第2,721,877号明細書、米国特許第2,721,878号明細書及び米国特許第3,250,715号明細書には、有用な流動点降下剤及び/又は流動点降下剤の調製が記載されている。こうした添加剤は、約0.01〜5質量%、好ましくは約0.01〜1.5質量%の量で用いてもよい。
腐食防止剤は、組成物に接触している金属部品の劣化を減少させるために用いられる。適する腐食防止剤にはチアジアゾールが挙げられる。例えば、米国特許第2,719,125号明細書、米国特許第2,719,126号明細書及び米国特許第3,087,932号明細書の記載を参照することができる。こうした添加剤は、約0.01〜5質量%、好ましくは約0.01〜1.5質量%の量で用いてもよい。
シール適合剤は、流体中で化学反応又はエラストマー中で物理的変化を引き起こすことによりゴム弾性シールを膨潤させるのを助ける。適するシール適合剤には、有機ホスフェート、芳香族エステル、芳香族炭化水素、エステル(例えば、ブチルベンジルフタレート)及びポリブテニル無水コハク酸が挙げられる。こうした添加剤は、約0.01〜3質量%、好ましくは約0.01〜2質量%の量で用いてもよい。
消泡剤は、安定した泡の生成を遅らせる作用がある。シリコーン及び有機ポリマーは典型的な消泡剤である。例えば、シリコン油などのポリシロキサン又はポリジメチルシロキサンは消泡特性を提供する。消泡剤は市販されており、抗乳化剤などの他の添加剤に加えて従来通り少量で用いてもよい。組み合わされたこれらの添加剤の量は、通常は1%未満、多くの場合に0.1%未満である。
錆防止添加剤(又は腐食防止剤)は、水又は他の異物による化学的浸食に対して潤滑された金属表面を保護する添加剤である。多様なこれらの錆防止添加剤は市販されている。こうした錆防止剤は、「クラマン潤滑剤及び関連製品(Klamann in Lubricants and Related Products)」、フロリダ州ディアフィールドビーチのフェアラークヘミー(Verlag Chemie(Deerfield Beach,FL)、ISBN0−89573−177−0に述べられている。
摩擦調整剤は、添加される組成物の摩擦係数を変えることができるあらゆる材料である。摩擦低減剤、摩擦係数を下げる摩擦調整剤は、本発明の組成物と組み合わせると特に有利である。摩擦調整剤は、金属含有化合物又は材料、及び無灰化合物又は材料、あるいはそれらの混合物を含んでもよい。金属含有摩擦調整剤は金属塩又は金属−配位子錯体を含んでもよい。ここで、金属はアルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移群金属を含んでもよい。こうした金属含有摩擦調整剤は低灰特性も有してよい。遷移金属には、Mo、Sb、Sn、Fe、Cu、Zn及びその他を挙げることができる。配位子には、アルコール、ポリオール、グリセロール、部分エステルグリセロール、チオール、カルボキシレート、カルバメート、チオカルバメート、ジチオカルバメート、ホスフェート、チオホスフェート、ジチオホスフェート、アミド、イミド、アミン、チアゾール、チアジアゾール、ジチアゾール、ジアゾール、トリアゾールのヒドロカルビル誘導体、及び有効量のO、N、S又はPを個々に又は組み合わせて含む他の極性分子官能基を挙げることができる。特に、例えば、Mo含有ジチオカルバメート[Mo(DTC)]、Mo−ジチオホスフェート[Mo(DTP)]、Mo−アミン[Mo(Am)]、Mo−アルコレート、Mo−アルコール−アミドなどのMo含有化合物は特に有効でありうる。
本発明の組成物は、グリース組成物として調製してもよい。当該態様では、グリースの用途に適応した場合の実用性能を確保するため、さらに必要に応じて、増ちょう剤等を本発明の目的を損なわない範囲で適宜添加することができる。以下、グリース組成物として調製する際に添加可能な添加剤について説明する。
ポリ(メタ)アクリレートは、寒冷地での冷時異音防止の効果も知られている。
その中でも、各種の食中毒に効果が大きいカテキン類が好適である。その中でも茶葉に含まれる水溶性成分である、エピガロカテキン、エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、カテキン等が好ましい。一般的にはこれらカテキン類は水溶性であるので、界面活性剤を少量添加して使用するのが好ましいが、グリース組成物の場合、増ちょう剤が界面活性剤としての役割も果たすため、さらに界面活性剤を添加する必要はない。
また、導電性物質は、極圧剤の項で述べた耐剥離剤としても効果があることが知られている。この導電性物質は、特開2002−195277号公報等に記載されているように、水素イオンが原因の白色剥離を抑える効果がある。
難燃性が改善されたグリースとしては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩等の粉体をリチウム石けんグリースに添加したもの、シリコーングリースに炭酸カルシウムと白金化合物を添加したもの、グリースに吸水性ポリマーと水を含ませたものが知られている。
4.−1 透明点
本発明の組成物は、不透明状態から透明状態に転移する透明点を有するのが好ましい。上記式(I)、式(II)、式(III)で表される化合物の多くのものが、常圧・室温下では、油性媒体中に分散するので、本発明の組成物は、懸濁して見えることが多い。懸濁の程度は、化合物により、また油性媒体によって大きく変動するが、この状態の組成物を加熱すると、ある温度範囲で急峻に透明になる。この透明になる温度を、「透明点」というものとする。より具体的には、「透明点」とは、化合物の微粒子が、ミー散乱以下の粒子径になり、組成物が透明に見える状態に変化する温度をいう。ミー散乱する粒子の大きさは、可視光下で0.1ミクロン径前後であるので、言い換えれば、「透明点」とは、油性媒体中に分散している上記式(I)、式(II)、式(III)で表される化合物の粒子が、ほぼ0.1ミクロン径未満の粒径の粒子に変化する温度ともいえる。この粒子径の変化は、加熱顕微鏡下で観察することができる。従って、「透明点」とは、必ずしも溶媒和された単分子分散の溶解状態を意味するものではない。本発明の組成物では、上記化合物が、油性媒体中に分散及び/又は溶解しているが、この状態は、物理化学的定義に従った表現ではない。
本発明の組成物は、40℃での粘性が100mPa・s以下であるのが好ましく、50mPa・s以下であることがより好ましい。粘性は小さいほど低燃費に寄与し、好ましいが、使用する基油の粘度、本発明の化合物の構造、添加量、共存添加剤により大きく変化し、使用環境により適正な粘性が求められるため、それに合わせることが必要である。しかし、本発明は、現行技術における粘度指数向上剤による高温での基油の低粘性化の抑制を必要としないため、粘度指数向上剤の添加ゆえの低温での高粘性化は起こらないため、低粘性基油の効果が直接的に燃費に寄与することになることが特徴の一つでもある。
本発明の組成物は、構成元素が、炭素、水素、酸素及び窒素だけからなることが好ましい。前記一般式(I)〜(III)の化合物は、炭素、水素及び酸素のみからで構成することができる。また、油性媒体として用いる油も、炭素、水素及び酸素のみから構成される材料は種々ある。これらを組み合わせることにより、構成元素が、炭素、水素、酸素及び窒素だけからなる組成物を調製することができる。現行の潤滑油は、通常、リン、硫黄、重金属を含んでいる。燃料と共に潤滑油も燃焼する2ストロークエンジンに用いられる潤滑油は、環境負荷を配慮して、リンと重金属は含まれないが、硫黄は4ストロークエンジンに用いられる潤滑油の半分量程度含まれている。即ち、現行の潤滑技術では、最低でも硫黄分による境界潤滑膜の形成は必須であると推察されるが、硫黄元素を含んでいることによって、排気ガス浄化のための触媒への負荷は非常に大きい。この排気ガス浄化触媒には、プラチナやニッケルが使用されているが、リンや硫黄の被毒作用は大きな問題になっている。その点からも潤滑油の組成物を構成する元素が、炭素、水素、酸素及び窒素だけからなることのメリットは非常に大きい。さらに炭素、水素、酸素だけからなることはエンジンオイル以外の産業機械、特に食品製造関連機器の潤滑油には最適である。現行技術では、摩擦係数を犠牲にして環境に配慮した元素組成をとっている。これは、冷却のために大量の水を必要とする金属の切削・加工用潤滑油にも非常に好ましい技術である。それはどうしても潤滑油がミストとなって外気中に浮遊・揮散したり、処理廃液が自然系に排出される場合が多いため、潤滑性と環境保護の両立のためには、現行の潤滑油を、炭素、水素、及び酸素だけから構成される本発明の組成物に代替することは、非常に好ましい。
本発明の組成物は、液晶性を示すことが、潤滑性能の観点から好ましい。その理由は、組成物が液晶性を発現することで、摺動部分において分子が配向し、その異方性低粘性の効果で、さらに低摩擦係数を発現するからである(例えば、河田 憲、大野 信義 富士フイルム研究報告 No.51 2006年 PP80−85.参照のこと)。
液晶性については、式(I)、(II)、(III)で表される化合物が単独でサーモトロピックな液晶性を発現するものであってもよく、また油性媒体とともにリオトロピックな液晶性を発現してもよい。
本発明の組成物は、潤滑油として有用である。例えば、2つの摺動面間に供給され、摩擦を低減するために用いることができる。本発明の組成物は、摺動面に皮膜を形成し得る。摺動面の材質としては、鋼鉄では、具体的には、機械構造用炭素鋼、ニッケルクロム鋼材・ニッケルクロムモリブデン鋼材・クロム鋼材・クロムモリブデン鋼材・アルミニウムクロムモリブデン鋼材などの構造機械用合金鋼、ステンレス鋼、マルチエージング鋼などが挙げられる。
金属以外の無機もしくは有機材料としては、各種プラスチック、セラミック、カーボン等、及びその混合体などが挙げられる。より具体的には、鋼鉄以外の金属材料としては、鋳鉄、銅・銅−鉛・アルミニウム合金、その鋳物及びホワイトメタルが挙げられる。
有機材料としては、すべての汎用プラスチック、エンジニアリングプラスチック、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリアミド、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、フッ素樹脂、四フッ化エチレン樹脂(PFPE)、ポリアリレート、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド、ポリピロメリットイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリイミド(PI)、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、ABS/ポリカーボネートアロイ等に適用される。
より形成される多孔質層が挙げられる。銅系金属焼結層は、鋳鉄基板の上に銅粉末(例えば、88質量%)、スズ(例えば、10質量%)及び黒鉛(例えば、2質量%)の混合物を設置し、250MPaで圧縮形成したものを還元気流中で、高温、例えば770℃程度で、約一時間焼結することによって形成することができる。また、鉄系金属焼結層は、鋳鉄基板上に、鉄粉末に銅粉末(例えば、3質量%)及び化学炭素(0.6質量%)を添加した混合物を設置して、250MPaで圧縮成形したものを還元気流中で高温、例えば770℃程度で、約一時間焼結することによって形成することができる。また、TiO2焼結層は、Ti(OC8H17−n)(例えば、33質量%)、TiO2の微粉末(例えば、57質量%)及びPEO(分子量MW=3000)の混合物を、鋳鉄上に設置して、UV光を照射しつつ560℃に3時間加熱焼結することによって形成される。
なお、これらの多孔質層によって被覆される材料については特に限定されず、上述したセラミックス、樹脂、有機−無機複合材料や、勿論鋼鉄であってもよい。
1) 真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、イオン注入による物理蒸着(PhisicalVaporDeposition)法による、アルミニウム、銅、銀、金、クロム、モリブデン、タンタルまたその合金膜、窒化チタン、窒化クロム、炭化チタン、炭化クロム等のセラミックス、酸化アルミニウム、二酸化珪素、ケイ化モリブデン、酸化タンタル、チタン酸バリウム等の酸化膜の形成;
2) 熱、プラズマ、光などによる化学蒸着(ChemicalVaporDeposition)法を用いた各種金属、WC、TiC、B4Cなどの炭化物、TiN、Si3N4などの窒化物、TiB2、W2B3などのホウ化物、Al2O3、ZrO2などの酸化物膜、CrW、Ti金属を含有したアモルフォスカーボン膜、フッ素含有カーボン膜、プラズマ重合膜の形成;
3) 浸炭、窒化、浸硫、ホウ化処理などの拡散被覆法(化学反応法)による表層部分の耐摩耗性、耐焼きつき性などの特性を付与する方法;及び
4) 電気めっき、無電解めっきなどのめっき法による金属、複合金属膜などがあげられる。
また、本発明の組成物を水系に乳化して分散したり、極性溶媒中に分散することで、切削油や圧延油として用いることができる。
すべり軸受としては、回転機械用動圧すべり軸受、エンジン用動圧すべり軸受、静圧軸受、容積型コンプレッサ用動圧すべり軸受、変速機やサスペンション、アクスル、ステアリング等の自動車駆動系等各種すべり軸受、またその他、含油軸受、プラスチック軸受、固体潤滑剤軸受、セラミック軸受、ほぞ軸受、ピボット軸受、宝石軸受、ナイフエッジ軸受および磁気軸受である。
転がり軸受としては、自動車ホイール用軸受、鉄道車両車軸軸受、HDDスピンドルモータ用玉軸受、圧延機用軸受、工作機械スピンドル用軸受、真空用軸受などである。
伝動要素としては、歯車、すべり・転がり等の運動ねじ、ウォーム-ラック、カム、クラッチ、ブレーキ、トラクションドライブCVTやベルトドライブCVTなどの機械式無段変速機、ベルト、チェーン、ワイヤロープ、軸継手、スプライン、セレーション、タイヤ、車輪とレール、超音波モータ、紙送りなどである。
密封要素としては、ガスケット、フランジシールの静止用シール、オイルシール、メカニカルシール、往復動シール、ワイパーブレード、ピストンリング、各種油圧ポンプ、モータ用シール等である。
特殊環境としては、HDD、半導体製造装置、冷媒圧縮機、人工関節などである。
1.−1 例示化合物II−2の合成例
1−ドコサニル メタンスルホナートの合成:
ベヘニルアルコール(1−ドコサノール)247.4gをテトラヒドロフラン640mLに溶解させ、メタンスルホニルクロリド116.1mLを徐々に添加し、水冷下、トリエチルアミン64.7mLを30分間で滴下した。1時間攪拌後、40℃に加熱し、さらに30分間攪拌した。これを氷水3.5L中に注ぎ、15分間超音波で分散し、さらに室温下で4時間攪拌した。減圧濾過し、2Lの水で結晶を洗った。その白色結晶をアセトニトリル1.5L中で1時間攪拌し、減圧濾過し、0.5Lのアセトニトリルで洗った。
それを減圧乾燥し、その白色結晶303.4gを得た。
テトラエチレングリコール207mLに、1−ドコサニル メタンスルホナート 80.4gを添加し、110℃に加熱した。t−ブトキシカリウム40.0gを2時間かけて徐々に添加した。さらに3時間攪拌し、冷却後、氷水3L中に注ぎ、酢酸エチル2Lを添加し、1時間攪拌し、不溶物22.2gを濾過した。濾液から酢酸エチル相を抽出分離し、減圧濃縮後、アセトニトリル0.5Lを添加し、氷冷下、1時間攪拌した。減圧濾過し、0.2Lの冷アセトニトリルで洗い、白色結晶81.6gを得た。
テトラエチレングリコール モノ1−ドコサニルエーテル25.0gをトルエン160mLに溶解し、無水コハク酸7.5gと濃硫酸2滴を加え、125℃で8時間加熱した。冷却後、アセトニトリル0.3Lを添加し、氷冷下、1時間攪拌し、減圧濾過した。冷アセトニトリル100mLで洗浄し、減圧乾燥後、白色結晶23.3gを得た。
3−(1−ドコサニルテトラエチレンオキシカルボニル)プロピオン酸5.0gをトルエン20mLに溶解し、ジメチルホルムアミド2滴と塩化チオニル2mLを添加した。5分後、80℃に加熱し、さらに2時間攪拌し、冷却後、減圧下、トルエンと過剰の塩化チオニルを溜去した。これにトルエン15mLとペンタエリスリトール283mgを添加し、これに徐々にピリジン5mLを添加した。80℃で8時間加熱後、冷却し、メタノール200mLを注ぎ、2時間攪拌した。これを減圧濾過し、白色結晶4.8gを得た。
例示化合物II−5については、例示化合物II−2の出発原料である1−ドコサノールを1−ステアリルアルコールに代える以外は同様にして合成した。
例示化合物II−8については、例示化合物II−2の出発原料である1−ドコサノールを1−テトラデカノールに代える以外は同様にして合成した。
3−(1−ドコサニルポリエチレンオキシカルボニル)プロピオン酸の合成:
ポリエチレングリコール モノ1−ドコサニルエーテル(竹本油脂(株)製:エチレンオキシ基の平均重合度6.65)25.6gをトルエン160mLに溶解し、無水コハク酸8.0gと濃硫酸2滴を加え、125℃で8時間加熱した。冷却後、アセトニトリル0.3Lを添加し、氷冷下、1時間攪拌し、減圧濾過した。冷アセトニトリル100mLで洗浄し、減圧乾燥後、白色結晶22.3gを得た。
3−(1−ドコサニルポリエチレンオキシカルボニル)プロピオン酸5.18gをトルエン10mLに溶解し、ジメチルホルムアミド2滴と塩化チオニル2mLを添加した。5分後、80℃に加熱し、さらに2時間攪拌し、冷却後、減圧下、トルエンと過剰の塩化チオニルを溜去した。これにトルエン14mLとペンタエリスリトール245mgを添加し、これに徐々にピリジン6mLを添加した。80℃で8時間加熱後、冷却し、メタノール200mLを注ぎ、2時間攪拌した。これを減圧濾過し、白色結晶4.69gを得た。
例示化合物II−17については、例示化合物II−1の出発原料であるポリエチレングリコール モノ1−ドコサニルエーテルの平均重合度6.65を平均重合度10.30に代える以外は同様にして合成した。
例示化合物II−18については、例示化合物II−1の出発原料であるポリエチレングリコール モノ1−ドコサニルエーテルの平均重合度6.65を平均重合度19.0に代える以外は同様にして合成した。
例示化合物II−33については、例示化合物II−1で使用する無水コハク酸をメルドラム酸に代える以外は同様にして合成した。
例示化合物II−34については、例示化合物II−1で使用する無水コハク酸を無水グルタル酸に代える以外は同様にして合成した。
例示化合物II−36については、例示化合物II−1で使用する無水コハク酸を無水マレイン酸に代える以外は同様にして合成した。
例示化合物II−37については、例示化合物II−1で使用する無水コハク酸を無水ジグリコール酸に代える以外は同様にして合成した。
例示化合物II−38については、例示化合物II−1で使用する無水コハク酸を無水フタル酸に代える以外は同様にして合成した。
例示化合物II−40については、例示化合物II−1で使用する無水コハク酸を無水3,3−ジメチルグルタル酸に代える以外は同様にして合成した。
例示化合物II−1:
1H NMR(400MHz, CDCl3): δ4.24(8H,t), 4.13(8H,s), 3.65(64H,m), 3.44(8H,t), 2.64(16H,dd), 1.58(16H,t), 1.25(160H,br), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2924(s), 2853(s), 1739(s), 1465(s), 1350(s), 1146(s), 720(m)
融点:63.5−64.0℃
1H NMR(300MHz,CDCl3): δ4.24(8H,t), 4.13(8H,s), 3.65(64H,m), 3.44(8H,t), 2.65(12H,br), 1.57(8H,t), 1.25(160H,br), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2927(s), 2854(s), 1741(s), 1464(s), 1350(m), 1146(s), 720(w)
融点:64.7−65.2℃
1H NMR(400MHz,CDCl3): δ4.24(8H,t), 4.13(8H,s), 3.65(72H,m), 3.44(8H,t), 2.64(16H,m), 1.57(16H,t), 1.26(144H,br), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: (neat): 2924(s), 2852(s), 1738(s), 1465(s), 1350(s), 1140(b), 858(m), 720(m)
融点: 55.1-55.6℃
1H NMR(400MHz,CDCl3): δ4.24(8H,t), 4.13(8H,s), 3.65(64H,m), 3.44(8H,t), 2.63(16H,m), 1.57(8H,t), 1.25(128H,br), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2932(s), 2859 (s), 1746(s), 1465(s), 1350(s),1156(b), 856(m), 720(w)
融点: 46.0-47.0℃
1H NMR(400MHz,CDCl3): δ4.24(8H,t), 4.13(8H,s), 3.65(64H,m), 3.44(8H,t), 2.64(16H,s), 1.57(16H,t), 1.25(120H,br), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2924(s), 2853(s), 1740(s), 1464(s), 1350(s), 1144(s), 718(m)
融点: 47.0-47.8℃
1H NMR(300MHz,CDCl3): δ4.24(8H,t), 4.13(8H,s), 3.65(80H,m), 3.44(8H,t), 2.64(16H,d), 1.57(16H,br), 1.25(120H,br), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2920(s), 2852(s), 1737(s), 1458(s), 1350(s), 1105(b), 862(m), 719(m)
融点 35.3-35.8℃
1H NMR(300MHz,CDCl3): δ4.24(8H,br), 4.13(8H,s), 3.65(80H,m), 3.44(8H,t), 2.64(16H,s), 1.57(8H,br), 1.26(96H,br), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2925(s), 2854(s), 1740(s), 1465(m), 1350(m), 1253(s), 1147(s)
融点 室温でオイル
1H NMR(300MHz,CDCl3): δ4.24(8H,t), 4.13(8H,s), 3.65(60H,m), 3.44(8H,t), 2.64(16H,s), 1.59(40H,br), 1.26(96H,m), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2927(s), 2855(s), 1740(s), 1465(m), 1350(m), 1252(s), 1152(s), 1038(m), 859(w)
融点: 39.5-40.5℃
1H NMR(300MHz,CDCl3): δ4.24(8H,t), 4.13(8H,s), 3.65(64H,m), 3.44(8H,t), 2.64(16H,m), 1.57(8H,t), 1.25(160H,br), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2928(s), 2854(s), 1742(s), 1465(m), 1351(s), 1250(s), 1150(s), 720(w)
融点: 63.6-64.4℃
1H NMR(400MHz, CDCl3): δ4.24(8H,t), 4.13(8H,s), 3.65(104H,m), 3.44(8H,t), 2.64(16H,m), 1.57(8H,t), 1.25(168H,br), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2925(s), 2853(s), 1740(s), 1465(s), 1350(s), 1147(b), 865(m), 720(m)
融点: 61.9-62.9℃
1H NMR(300MHz,CDCl3): δ4.24(8H,t), 4.13(8H,s), 3.65(120H,m), 3.44(8H,t), 2.64(16H,s), 1.57(8H,br), 1.25(160H,br), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2925(s), 2854(s), 2361(w), 1740(s), 1558(w), 1457(w), 1250(s), 1146(b)
融点: 59.3-60.3℃
1H NMR(400MHz, CDCl3): δ4.23(8H,t), 4.13(8H,s), 3.64(144H,m), 3.57(8H,m), 3.44(8H,t), 2.64(16H,m), 1.57(8H,t), 1.25(160H,br), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2925(s), 2854(s), 1741(s), 1465(m), 1351(w), 1144(s)
融点: 55.6-56.3℃
1H NMR(300MHz,CDCl3): δ4.24(8H,t), 4.13(8H,s), 3.64(288H,m), 3.44(8H,t), 2.64(16H,m), 1.59(32H,br), 1.25(160H,br), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2924(s), 2854(s), 1738(s), 1459(s), 1349(s), 1250(s), 1109(b), 857(m)
融点: 43.8-47.1℃
1H NMR(300MHz,CDCl3): δ4.24(8H,t), 4.13(8H,s), 3.64(424H,m), 3.44(16H,t), 2.64(16H,m), 1.59(40H,br), 1.25(160H,br), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2925(s), 2856(s), 1739(s), 1460(m), 1350(s), 1296(s), 1251(s), 1119(b), 946(m), 857(m)
融点: 46.4-47.4℃
1H NMR(400MHz,CDCl3): δ4.30(8H,t), 4.21(8H,s), 3.65(72H,m), 3.45(16H,m), 3.24(8H,t), 1.57(8H,t), 1.25(160H,br), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 3481(b), 2924(s), 2853(s), 1739(s), 1648(m), 1559(w), 1465(s), 1266(b), 1129(b), 1041(s), 720(m)
融点: 65.5-66.5℃
1H NMR(400MHz,CDCl3): δ4.23(8H,m), 4.11(8H,s), 3.65(80H,m), 3.44(8H,t), 2.41(16H,t), 1.96(8H,tt), 1.59(8H,br), 1.25(160H,br), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 3495 (b), 2930(s), 2855(s), 1740(s), 1464(s), 1351(m), 1136(s), 720(w)
融点: 59.9-61.6℃
1H NMR(300MHz,CDCl3): δ6.88(4H,d), 6.84(4H,d), 4.33(16H,m), 3.64(64H,m), 3.44(16H,t), 1.57(8H,br), 1.25(160H,m), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2923(s), 2853(s), 1728(s), 1465(s), 1351(m), 1292(s), 1254(s), 1146(s), 769(s), 720(m)
融点: 60.2-61.5℃
1H NMR(300MHz,CDCl3): δ4.32(8H,t), 4.27(16H,s), 4.23(8H,s), 3.72(8H,m), 3.65(80H,m), 3.44(8H,t), 1.57(8H,br), 1.25(160H,br), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2926(s), 2854(s), 1758(s), 1465(s), 1351(m), 1204(s), 1138(s), 720(m)
融点: 60.6-63.8℃
1H NMR(300MHz,CDCl3): δ7.74(8H,m), 7.54(8H,m), 4.46(8H,t), 3.91(8H,s), 3.80(8H,t), 3.64(80H,m), 3.44(8H,t), 1.64(16H,br), 1.25(152H,m), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2925(s), 2854(s), 1733(s), 1465(w), 1287(s), 1122(s), 743(w)
融点 64.7-65.7℃
1H NMR(400MHz,CDCl3): δ4.22(8H,m), 4.09(8H,s), 3.64(72H,m), 3.44(8H,t), 2.43(8H,t), 1.56(8H,br), 1.25(160H,m), 1.09(24H,s), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2924(s), 2853(s), 1737(m), 1465(m), 1287(m), 1123(s)
融点: 53.1-53.7℃
1H NMR(300MHz,CDCl3): δ4.50(8H,s), 4.35(8H,t), 3.67(96H,m), 3.48(8H,m), 1.58(8H,br), 1.25(160H,m), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2927(s), 2855(s), 1780(s), 1465(m), 1246(m), 1178(s), 942(m)
融点: 56.2-57.0℃
1H NMR(300MHz,CDCl3): δ8.09(4H,t), 8.00(4H,s), 4.32(8H,m), 4.16(4H,t), 4.06(4H,t), 3.67(64H,m), 2.87(24H,t), 1.61(8H,br), 1.26(160H,br), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2925(s), 2854(s), 1780(s), 1734(s), 1465(s), 1258(s), 1153(b), 1028(s), 720(w)
融点: 58.2-59.2℃
1H NMR(300MHz,CDCl3): δ4.52(8H,s), 4.46(8H,t), 3.77(8H,t), 3.64(64H,m), 3.44(8H,t), 1.74(16H,br), 1.56(8H,t), 1.25(160H,m), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2925(s), 2853(s), 1747(m), 1631(m), 1519(s),1479(s), 1396(s), 1323(s), 1214(b), 1119(s), 721(m)
融点: 55.4-56.4℃
1H NMR(300MHz,CDCl3): δ4.52(8H,s), 4.46(8H,t), 3.77(8H,t), 3.64(64H,m), 3.44(8H,t), 1.74(16H,br), 1.56(8H,t), 1.25(160H,m), 0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2925(s), 2853(s), 1747(m), 1631(m), 1519(s),1479(s), 1396(s), 1323(s), 1214(b), 1119(s), 721(m)
融点: 60.5-61.5℃
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ8.00(8H,m),4.33(8H,t),4.24(4H,s),4.16
(8H,t), 3.65(64H,m),3.45(8H,t),2.58(16H,br),1.61(8H,m),1.26(80H,br),0.88(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: (neat): 2917(s), 2849(s), 1726(s), 1468(s), 1183(s), 1115(s), 720(w)cm-1
融点 60.5-61.1℃
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ4.24(8H,t),4.14(8H,s),3.64(88H,m),3.56(8H,t), 3.32(8H,d),2.64(16H,d),1.59(40H,br),1.26(84H,br),0.85(76H,m),0.75(12H,t)
IRテ゛ータ(neat) cm-1: 2955(s), 2926(s), 2858(s), 1737(s), 1460(s), 1378(s), 1349(s), 1248(s), 1105(s), 1038(s), 861(m)
融点 室温でオイル
例示化合物及び比較例用化合物について、オプチモール社の往復動型摩擦摩耗試験機(SRV)を用いて、下記の条件で、潤滑特性を評価した。
往復動型(SRV)摩擦摩耗試験による評価及び測定法:
摩擦係数は、往復動型(SRV)摩擦摩耗試験機を用いて以下に示す試験条件で評価した。
・試験片(摩擦材) :SUJ−2
・プレート :24mm径×7mm厚、表面粗さ0.45〜0.65μm
・シリンダー :15mm径×22mm幅、表面粗さ〜0.05μm
・温度 :30〜150℃
・荷重 :50N、75N、100N、200N及び400N
・振幅 :1.5mm
・振動数 :50Hz
・温度および荷重の時間変化パターン
温度は、初期設定は90℃とし、一定時間保持したら、10分毎に10℃ずつ各素材の融点近傍まで降温した。その後、同様に150℃まで昇温し、さらに50℃まで降温した。
圧力(荷重)は、90℃で二回、120℃及び150℃で各一回、一分毎に50N→75N→100N→200N→400N→50Nと変化させた。
測定結果を、図1〜図4に示す。
式(I)〜(III)の例示化合物II−1、II−2、II−17、II−18、II−45、及びII−65はいずれも、最初の降温時の融点近傍で急激に摩擦係数が上昇していることがわかる。これは、融点に近づき粘度が急に上昇することに起因する摩擦係数の上昇と推察され、また、その後の昇温及び降温過程では、摩擦係数があまり粘性の変化に依存していないことから、融点近傍の低温域では流体潤滑にあり、それ以上の温度では弾性流体潤滑領域にあると考えられる。
一方、比較例用化合物C−1及びC−2はいずれも、60℃以下に融点があり、その近傍で摩擦係数の上昇が見られ、それより高温での温度変化に摩擦係数が影響を受けておらず、これらの化合物も、上記例示化合物と同様に、流体潤滑から弾性流体潤滑領域で摩擦摺動が行われていると考えられる。
これらの中で、最も低粘性の例示化合物II−65には、摩擦係数が明瞭な正の温度依存性を示すことが理解でき、ストライベック曲線からは、II−65は、相対的に混合潤滑の寄与があることを示唆していると考えられる。
例示化合物II−65以外は、いずれも同様の融点を示すので、これらの粘性も類似していると考えて相違ない。とすれば、例示化合物II−1、II−2、II−17、II−18、II−45及びII−65の摩擦係数と、比較例用化合物C−1及びC−2の摩擦係数が顕著に相違することは、粘性の圧力依存性を表すBarusの式:η=η0exp(αP)から、弾性流体潤滑領域の高圧力下Pでの両者の粘性η、即ち、粘度圧力係数α、に大きな差異があると考えられる。これが本発明の化合物群の一つの特徴である。
式(I)〜(III)の例示化合物を利用すると、摩耗深さは極めて浅く、摺動痕自体がほとんど見られなかった。一方、比較例用化合物を利用すると、いずれも明瞭な摺動痕が見られた。即ち、摩耗深さに関しても、例示化合物と比較例用化合物とでは、明瞭な差異を生じた。
本発明の組成物、及び比較例用組成物について、オプチモール社の往復動型摩擦摩耗試験機(SRV)を用いて、以下の条件で、その潤滑特性を評価した。
往復動型(SRV)摩擦摩耗試験による評価及び測定法:
摩擦係数及び耐摩耗性は、往復動型(SRV)摩擦摩耗試験機を用いて評価し、以下に示す試験条件で摩擦摩耗試験を行った。
・潤滑剤組成物
油性媒体として鉱物油であるスーパーオイルN−32(新日本石油(株)製)を用い、これに例示化合物II−1を1.0質量%濃度になるように添加し、70℃に加熱して透明溶液とした後、10分間空冷後、この組成物について、以下の条件で試験を行った。この組成物は空冷時徐々に白濁した。
・試験片(摩擦材) :SUJ−2
・プレート :24mm径×7mm厚、表面粗さ0.45〜0.65μm
・シリンダー :15mm径×22mm幅、表面粗さ〜0.05μm
・温度 :25〜110℃
・荷重 :50N、75N、100N、200N及び400N
・振幅 :1.5mm
・振動数 :50Hz
・試験方法
プレート上のシリンダーが摺動する部分に、60mg程度の試料組成物をのせ、下記の工程に従い、摩擦摺動し各温度、各荷重での摩擦係数を評価し、ほぼ一定パターンになるまで、下記工程を繰り返した。終了後にプレートの摩耗深さをレーザ顕微鏡で評価した。
また、比較例用化合物として、ペンタエリスリトール誘導体であるが、ポリアルキレンオキシ基を有さない化合物、具体的には、比較例用化合物C−3(C(CH2OCOC2H4CO2C22H45−n)4)及び比較例用化合物C−6(C(CH2OCOC17H35−n)4をそれぞれ用い、同様に組成物を調製し、該組成物をそれぞれ試験した。試験結果をグラフとして図17に示す。
また、参考例として、油性媒体として用いた鉱物油であるスーパーオイルN−32のみを、同様にして試験した結果を、グラフとして図18に示す。
一般的には、界面近傍に低粘性流体と高粘性流体が存在し、それが高剪断場であれば、高粘性流体がより固い界面近傍に剪断によって平滑な被膜を形成し、その両界面の間隙に低粘性流体が挟まれることで、より低い摩擦係数を発現することは潤滑の理に適っており、そのような現象が起こっている可能性が示唆される。
例示化合物II−1を含む試料は、温度の上昇とともに摩擦係数が0.09まで急激に上昇し、60〜110℃までは温度に全く依存せずにその摩擦係数を維持している。このことは、この潤滑状態が境界潤滑ではなく、弾性流体潤滑にあるものと推測できる。その理由は、より低粘性流体であるスーパーオイルN−32の摩擦係数が、図18に示す通り、明瞭な正の温度依存性を示していて、混合潤滑領域で摺動していることを強く示唆していることから、それより高粘性流体が共存する場で、急激に境界潤滑に入るとは考え難いからである。
一方、比較例用化合物C−3及びC−6を利用して調製した組成物は、いずれも摩擦係数が、例示化合物を利用して調製した組成物と比較して高いことが理解できる。
なお、試験例1の摩耗痕深さと比較して、試験例2の結果は、総じて大きな値を示しているが、それは、試験例2では、試料として化合物を単独で用いているので、概ね厚い膜厚での弾性流体潤滑であったのに対して、本試験例では低粘性油スーパーオイルN−32中に、1質量%しか含まれていない状態であるので、至極当然の結果のように思われる。さらに、上記結果の中には、試験例1の非希釈条件と同様の結果を与える例もあるので、本発明の実施例の組成物は、耐摩耗性についても優れた性質をもっていることが理解できる。
油性媒体として、鉱物油 スーパーオイルN−32の代わりに、市販(新日本石油(株)製)ポリ−α−オレフィン、ポリオールエステル(POE)、市販イオン流体、及びN−メチルピロリドンをそれぞれ用い、これに例示化合物II−4を1.0質量%濃度になるように添加し、同様に組成物を調製し、試験例2と同様にして、摩擦係数の温度、圧力、経時時間の依存性を評価した。結果を図19〜図20に示す。
図19〜図20に示す結果から、油性媒体としていずれの材料を用いて調製した組成物であっても、低摩擦係数を示すことが理解できる。
往復動型(SRV)摩擦摩耗試験を下記条件で行った。但し、鋼鉄以外の素材として、樹脂であるポリエーテルエーテルケトン、及びセラミックスである酸化アルミニウム上で評価を行った。摩擦係数及び耐摩耗性を、往復動型(SRV)摩擦摩耗試験機を用いて評価し、以下に示す試験条件で摩擦摩耗試験を行った。
試料の調製:
基油として鉱物油であるスーパーオイルN−32(新日本石油(株)製)を用い、これに例示化合物II−1を1.0質量%濃度になるように添加し、温度70℃に加熱して、透明溶液とした後、10分間空冷して、試料用の分散組成物を得た。この試料は空冷時徐々に白濁した。
試験条件:
上記で調製した試料について、以下の条件で試験を行った。
・試験片(摩擦材) :SUJ−2
・シリンダー :15mm径×22mm幅、表面粗さ〜0.05μm
・プレート :24mm径×7mm厚、表面粗さ0.45〜0.65μm
・温度 :30〜180℃
・荷重 :50N、75N、100N、200N及び400N
・振幅 :1.5mm
・振動数 :50Hz
試験方法:
プレート上のシリンダーが摺動する部分に、上記試料を60mg程度のせ、下記の工程に従い、摩擦摺動し、各温度及び各荷重での摩擦係数を評価した。
(1) 30℃、50Nで、10分間の摩擦係数値の変動が0.01以下になるまで経時の摩擦係数を測定
(2) 50Nで、30℃から10℃毎昇温し、110℃まで加熱し、各温度での摩擦係数を測定
(3) 30℃まで冷却
(4) (冷却開始から30分後)30℃で、50N、75N、100N、200N及び400Nの摩擦係数を測定
(5) 30℃から10℃毎昇温し、110℃まで加熱し、各温度での摩擦係数を測定
但し、60℃及び90℃では、50N、75N、100N、200N及び400Nの摩擦係数を測定
(6) 70℃以上の摩擦係数が前回の値とほとんど差がなくなるまで、(3)〜(6)を繰り返す。
(7) 30℃まで冷却
(8) (冷却開始から30分後)、30℃から10℃毎昇温し、180℃まで加熱し、各温度での摩擦係数を測定
但し、60℃、90℃、120℃、150℃、及び180℃では、50N、75N、100N、200N及び400Nの摩擦係数を測定
(9) (5)及び(6)を行い、終了する。
その一定になった摩擦係数の温度、圧力依存性について、以下のプレートの材質を鋼鉄(SUJ−2)、鋼鉄の上にDLC薄膜をCVD法によって形成したプレート、ポリエーテルエーテルケトンのプレート、及び酸化アルミニウムのプレートについてそれぞれ評価した。
・プレート1:24mm径×7mm厚、材質はダイアモンドライクカーボンで、膜厚は35nm、表面粗さ 0.01μm以下
・プレート2:24mm径×7mm厚、材質はポリエーテルエーテルケトン、表面粗さ〜0.05μm
・プレート3:24mm径×7mm厚、材質は酸化アルミニウム、表面粗さ〜0.15μm
本発明者は、本発明の例示化合物II−1が摺動部に偏析する現象を、トライボロジーの技術分野において、弾性流体潤滑領域の評価を行なうための点接触EHL評価装置を用い、機器の点接触している部分近傍をスペクトル的に観察することによって、その高荷重、高剪断場での物質濃度の変化を定量的に捉えることに成功した。具体的には、以下の通りの方法で観察した。
試料の調製:
まず、例示化合物II−1を油性媒体中に分散して試料を調製した。油性媒体として鉱物油であるスーパーオイルN−32(新日本石油(株)製)を用い、これに例示化合物II−1を1.0質量%濃度になるように添加し、70℃に加熱して透明溶液とした後、10分間空冷して、試料用の分散組成物を得た。その後、この試料について、以下の条件で試験を行った。なお、この試料は空冷時徐々に白濁した。
測定方法の概略:
図22は、この測定に用いた装置の概略図である。顕微FT−IRは、日本分光(株)製 FT−IR400に接続されたMICRO20を用い、そのカセグレン鏡のワーキングディスタンスに、点接触EHL評価装置の点接触部分がくるように装置の位置を決めた。回転している鋼鉄球を、その回転軸を平行にして、ダイアモンド(硬質平面)板に設置し、軸に荷重をかけて、圧力下接触させた。調製した試料を供給して、回転している鋼鉄球とダイヤモンド板との間隙及びその近傍に流すようにした。
試料の調製時に油性媒体として、鉱物油やポリ−α−オレフィンを用いると、これらは炭化水素であるから、C−C及びC−H以外の特性吸収がない。よって、試料中の例示化合物II−1は、明瞭で高強度の特性吸収帯を示すエステル結合のカルボニル基を有するので、その特性吸収帯の強度から、濃度の変化を定量的に検出できる。
上記の装置を用いて観察したところ、ニュートンリングが形成されるいわゆる高圧力、高剪断場であるヘルツ接触域において、試料の流れが隔てられてできたろうそくの炎の形の、例えば、後方20〜400μmの間の領域に、例示化合物II−1が徐々に偏析してくることが分かった。
図25に、そのIRスペクトルを示す。図25に示す結果から、経時で、1750cm-1のカルボニル基の伸縮振動帯、及び1120cm-1のエステルC−O伸縮振動帯が増加していることが理解できる。
上記の点接触EHL評価装置は、高圧力、高剪断条件下のヘルツ接触域、即ち真実接触部位のモデルである。実際の摩擦接触域は、そのような真実接触域が密集しているような領域であるので、油性媒体中に例示化合物II−1を含む試料は、そのような摩擦接触域の多数の真実接触域近傍で、相対的に低粘性の基油(油性媒体)が少なくなり、前例示化合物II−1が蓄積されるものと考えられる。
従って、試料中に含まれる例示化合物II−1が1質量%程度の少量であっても、また、本来なら高温度で蓄積しないと懸念される条件でも、SRV評価装置での高温での摩擦係数が示すように、摺動部分で例示化合物II−1の濃度が増加すれば、高温度でも、当該化合物本来の弾性流体潤滑下での低粘性の効果を発現することが期待できる。
・ グリース組成物の性能評価
例示化合物II−18、I−64、II−37、I−71及びIII−1をそれぞれ用い、下記表に示す組成のグリース試料1〜5をそれぞれ調製した。また、下記表に示す組成の比較例用グリース試料C1〜C4をそれぞれ調製した。
摩擦試験を実施し、摩擦係数及び摩耗痕深さを測定した。なお、実施例における摩擦係数は、往復動型摩擦試験機(SRV摩擦摩耗試験機)を用いて測定し、下記の試験条件で摩擦試験を行った。実施例のグリース試料1〜5の結果を下記表3に、比較例用グリース試料1〜の結果を下記表4に示した。
試験条件:
試験条件はボール−オンプレートの条件で行った。
試験片(摩擦材):SUJ−2
プレート:φ24×6.9mm
ボール:φ10mm
温度:70℃
荷重:100N
振幅:1.0mm
振動数:50Hz
試験時間:試験開始30分後を測定。
基油(100ニュートラル油;100℃における粘度4.4mm/s2)に、下記表に示す4種類の例示化合物(I−8、II−1、II−18及びIII−1)のそれぞれを下記表に示す割合で、金属系清浄剤としてカルシウムスルホネート 2.0質量%、及び下記表に示す添加剤を下記表に示す割合で;混合し、潤滑油組成物を調製した。
調製した各潤滑油組成物について、摩擦係数を測定した。結果を下記表に示す。なお、潤滑油組成物の摩擦係数は、往復動すべり摩擦試験機[SRV摩擦試験機]を用い、振動数50Hz、振幅1.5mm、荷重50N、温度65℃、試験時間30分において測定した。
このことから、以下のことがいえる。
一般的に、モリブデン化合物は、摩擦面に強力に吸着して、摩擦を軽減する作用があるといわれている。一方、本発明の潤滑油組成物は摩擦鉄面に吸着する作用はないものの、中低油温で且つ低速回転の運転条件下でも、モリブデン化合物を含有する比較例用試料と同様に、又はそれ以上に摩擦係数を低減させる作用を有している。従って、本発明の潤滑油組成物は、自動車のエンジンなどの内燃機関用、ギヤ油、自動変速機液、ショックアブソーバ油などの自動車用潤滑油として好適に用いることができる。
4種の例示化合物I−4、I−16、II−32及びII−45をそれぞれ含有する試料を以下の通り調製し、それぞれについて以下の耐久性試験を行った。
まず、基油として下記表示す特性の鉱油1及び鉱油2のいずれかを用いた。
MoDTC:下記式(1)の化合物であって、Rが2−エチルヘキシル基である。
硫黄系添加剤3:ジベンジルジサルファイドを含有する添加剤であり、添加剤中の硫黄分は25.5質量%である。
ZnDTP1:前記一般式(2)の化合物であって、R’が2−エチルヘキシル基であり、プライマリィタイプのアルキル基の化合物である。
ZnDTP2:前記一般式(2)の化合物であって、R’がイソプロピル基の化合物、イソヘキシル基の化合物及び前記の両アルキル基を有する化合物の混合物であり、アルキル基が、セカンダリィタイプの化合物である。
このようにして調製した実施例及び比較例の各エンジン油組成物試料について、摩擦特性及び動弁系の摩耗性能を、以下の方法で評価した。
(1)摩擦特性
新油及び劣化油について、SRV試験機を用いて、次の条件で、摩擦係数を測定した。
テストピース:直径10mmφ、材質SUJ−2のボール、及び材質SUJ−2のディスク
(2)動弁系摩耗性試験
各エンジン油試料について、日本自動車技術会規定(JASO M328−91)に従って動弁系摩耗性試験を行い、ロッカアームのスカッフィングの評価及びカムノーズの摩耗量を測定した。
評価結果を下記表に示す。但し、下記表において、ロッカアームのスカッフィングの評価については、0〜10.0の間の評点を示し、10.0が良好であり、0が悪いことを示す。
例示化合物II−2、II−18、II−37、及びII−58をそれぞれ含有する試料について、窒素酸化試験として、以下の条件の通り試験を実施した。
試料の調製に用いたモリブデン酸アミン塩は、下記一般式[1]で表される化合物であり、モリブデンジチオカーバメートは下記一般式[4]で表される化合物であり、モリブデンジチオフォスフェートは下記一般式[5]で表される化合物である。
潤滑油組成物の摩擦係数は、往復動すべり摩擦試験機[SRV摩擦試験機]を用い、振動数50Hz、振幅1.5mm、荷重50N、温度75℃、試験時間30分において測定した。窒素酸化物ガス含有空気による酸化試験は、試験油150mLについて、温度130℃、窒素酸化物(NOx)濃度1容量%、流速2リットル/時、試験時間8時間で行った。沈殿の生成は、潤滑油組成物500mLをガラス容器に入れて密栓し、−10℃の低温恒温器中に24時間放置した後、目視により観察して判定した。
温度100℃における粘度が4.0mm2/sのパラフィン系鉱油に、金属系清浄剤としてカルシウムスルホネートを2.0質量%、無灰分散剤としてコハク酸イミドを5.0質量%、酸化防止剤としてヒンダードフェノールを1.0質量%、及び例示化合物II−2を1.0質量%配合して、潤滑油組成物試料を調製した。
この潤滑油組成物試料の調製直後の摩擦係数は0.055、酸化試験後の摩擦係数は0.083であり、沈殿の生成は認められなかった。
温度100℃における粘度が4.0mm2/sのパラフィン系鉱油に、金属系清浄剤としてカルシウムスルホネートを2.0質量%、無灰分散剤としてコハク酸イミドを5.0質量%、酸化防止剤としてヒンダードフェノールを1.0質量%、耐摩耗剤としてジチオリン酸亜鉛を1.0質量%、粘度指数向上剤としてポリアルキルメタクリレートを5.0質量%、モリブデン酸のジトリデシルアミン塩をモリブデン量が1,000ppm(質量比)となるように、硫化オキシモリブデン−N,N−ジオクチルジチオカーバメートをモリブデン量が500ppm(質量比)とになるよう配合して、潤滑油組成物を調製した。
この潤滑油組成物試料の調製直後の摩擦係数は0.09、酸化試験後の摩擦係数は0.10であり、沈殿の生成は認められなかった。
例示化合物をそれぞれ含む試料ついて、高温デポジット防止性能評価を、以下の条件で行った。
1) 高温デポジット防止性能(TEOST(Thermo-Oxidation Engine Oil Simulation Test))(SAE Paper 932837 参照):
酸化工程を反応室での酸化プリカーサーの生成とデポジットの折出の二つのセクションに区分し、次の試験条件を採用し、生成したデポジット生成量を測定する。デポジット生成量を高温デポジット防止性能の評価基準とする。
・ポンプ速度 : 0.45mL/分
・空気流量 : 3.6mL/分(水分含有)
・N2 O流量 : 3.6mL/分(水分含有)
・反応温度 : 100℃
・反応室油量 : 100mL
・鉄ナフテネート : 100ppm
・折出室温度 : 200℃〜480℃
・全試験時間 : 114分
往復動すべり摩擦試験機[SRV摩擦試験機]を用い、振動数50Hz、振幅1.5mm、荷重400N、温度100℃、試験時間30分の条件で摩擦係数を測定し、摩擦低減効果の評価基準とした。
下記表に示す溶剤精製油A 70.0質量%、及びワックス異性化油30.0質量%を含有し、100℃における動粘度が4.1cStであり、GCD 480℃残留重質成分が7.5質量%である鉱油系基油を調製した。なお、基油中、GCD 430℃残留重質成分の含有量は35.5質量%であり、このうち、GCD 450℃残留重質成分は、17.7質量%であった。上記基油に潤滑油組成物全重量基準で、例示化合物II−42を1.1質量%添加し、さらに下記表に記載の他の添加剤を同表に示す割合で添加することにより、内燃機関用潤滑油組成物試料10−1を調製した。なお、「GCD」とは、「ガスクロマトグラフによる蒸留により測定した沸点範囲において」ということを意味する。
この試料について、上記高温デポジット防止性能試験(TEOST)及び上記摩擦試験(SRV)を行った。結果を下記表に示す。高温デポジット量が39.6mgであり、良好であった。
下記表に示す溶剤精製油A 70.0質量%及びワックス異性化油30.0質量%を含有し、100℃における動粘度が4.1cStであり、GCD 480℃残留重質成分が7.5質量%である鉱油系基油を調製した。なお、基油中、GCD 430℃残留重質成分の含有量は35.5質量%であり、このうち、GCD 450℃残留重質成分は、17.7質量%であった。上記基油に潤滑油組成物全重量基準で硫化オキシモリブデンジチオカルバメートをモリブデン量として500ppm、カルシウムサリシレート 3質量%、アルケニルコハク酸イミド 3質量%、ジベンジルジサルファイドを硫黄量として 500ppm、及びジチオリン酸亜鉛をリン量として 0.1質量%添加し、さらに下記表に記載の他の添加剤を同表に示す割合で添加することにより、内燃機関用潤滑油組成物試料10−C1を調製し、た。
この試料について、上記高温デポジット防止性能試験(TEOST)及び上記摩擦試験(SRV)を行った。結果を下記表に示す。高温デポジット量が59.1mgであった。
なお、下記表中の基油の組成は以下の通りである。また、下記表中の各成分の「質量%」は、基油に関しては、基油全体中の質量%を意味し、添加剤に関しては、全組成物中の質量%を意味する。
例示化合物I−43、I−71、II−18及びII−27をそれぞれ含有する組成物について、耐摩耗性、酸化安定性及び貯蔵安定性評価として、以下の条件の通り評価を行った。
下記表に示す組成の内燃機関用潤滑油組成物をそれぞれ調製した。これらの組成物について、以下に示す動弁系摩耗試験、NOx吹込み試験及び貯蔵安定性試験を行った、その結果を下記表に示す。比較のため、下記表に示す比較例用試料組成物について実施例と同様に試験を行った。その結果を下記表に示す。
1)動弁系摩耗試験:
JASO(日本自動車工業会)M328−95で規定されている「自動車用ガソリン機関用潤滑油の動弁系摩擦試験方法」従い、日産KA24Eエンジンを使用し、試料油を規定量充填し、100時間運転後のカムシャフトのカムノーズ摩耗量を測定した。本試験はエンジン油の摩耗防止性を評価するものであり、一般にカムノーズ摩耗量が10μm以下であれば、実用上問題ないとされている。
2)NOx吹き込み試験:
オイルバス中にて160℃に保持した試料油100gに、NOガス8000ppm(ベースガスは窒素)を100mL/分及び酸素を233mL/分の割合で吹き込み、48時間後の100℃における動粘度を測定し、新油時の動粘度に対する48時間後の試料の動粘度を動粘度比として算出した。動粘度比が1に近いほどエンジン内におけるスラッジ防止性、酸化安定性が良いとされている。
3)貯蔵安定性試験:
試料油を60℃で1週間、−5℃で1週間貯蔵するサイクルを1サイクルとし、6サイクル(3ヵ月)後の試料の濁り、沈殿の発生を目視評価した。
なお、下記表中の各成分の「質量%」は、基油に関しては、基油全体中の質量%を意味し、添加剤に関しては、全組成物中の質量%を意味する。なお、下記表中、新油性状動粘度とは、調製後の全組成物の動粘度を意味する。
上記評価結果から、本発明の実施例の組成物はZDTPや金属系清浄剤を含有しないにもかかわらず、耐摩耗性、スラッジ防止性、酸化安定性、ピストン清浄性に極めて優れた性能を有する内燃機関用潤滑油組成物であることが理解できる。
例示化合物I−15、II−8、III−10及びIII−26について、燃料消費率評価として、以下の条件の通り評価を行った。
潤滑油基油および添加剤として、次に掲げるものを使用した。
オレフィンコポリマー 1 (エチレン−フ゜ロヒ゜レン共重合体) 4×104
オレフィンコポリマー 2 (エチレン−フ゜ロヒ゜レン共重合体) 5×104
オレフィンコポリマー 3 (エチレン−フ゜ロヒ゜レン共重合体) 1×105
オレフィンコポリマー 4 (エチレン−フ゜ロヒ゜レン共重合体) 2.2×105
オレフィンコポリマー 5 (エチレン−フ゜ロヒ゜レン共重合体) 3×105
オレフィンコポリマー 6 (エチレン−フ゜ロヒ゜レン共重合体) 3.5×105
ポリメタクリレート 2×105
Caサリシレート 1 50
Caサリシレート 2 70
Caサリシレート 3 400
Caスルホネート 4 300
硫化オキシモリフ゛テ゛ンシ゛n-オクチルシ゛チオカーハ゛メート(C8MoDTC) 4.1%
硫化オキシモリフ゛テ゛ンシ゛n-オクチルシ゛チオカーハ゛メート(C18MoDTC)/硫化オキシモリフ゛テ゛ンシ゛n-トリテ゛シルシ゛チオカーハメート(C13MoDTC)
4.5%
シ゛(フ゜ライマリーn-2-エチルヘキシル)シ゛チオリン 酸亜鉛(フ゜ライマリーC8ZnDTP) 6.5%
シ゛(セカンタ゛リーC3/C6アルキル)シ゛チオリン 酸亜鉛(セカンタ゛リーC3/C6ZnDTP) 8.0%
硫化エステル
チアジアゾール
ジサルファイド
ジチオカルバミン酸亜鉛
無灰ジチオカルバミン酸塩
ホウ素系アルケニルコハク酸イミド 1(ビス型) 4,000
ホウ素系アルケニルコハク酸イミド 2(ビス型) 1,000
酸化防止剤
4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)
1)NOx酸化試験
組成物試料150mLに、油温130℃で12時間、1容量%NO2ガスを5リットル/時、酸素ガスを5リットル/時の流通速度で吹き込みNOx酸化処理を行なった。試作油の新油およびNOx酸化試験後の劣化油の摩擦係数は、オプチモル社製SRV往復動摩擦試験機により荷重400N、振動数50Hz,振幅1.5mmおよび油温120℃の条件で測定した。
2)燃料消費率測定試験
2,200cc容量のDOHCエンジンを用い、1000rpm×50N・m、油温90℃で45分間慣らし運転後、25ccの燃料を消費するのに必要な時間を計測した。この計測を約45回繰り返し、その平均値を燃料消費率(s/25cc)とした。
3)全塩基価測定法
サリチル酸のアルカリ土類金属塩および油中の全塩基価は、JIS K2501に定める電位差滴定法(HClO4 法)により測定した。
実施例及び比較例用の試料のいずれについても、基油Aを使用し、及び全塩基価70mgKOH/gのカルシウムサリシレートを6質量%添加した。
比較例用の試料として、硫化オキシモリブデンジn−オクチルジチオカーバメート(C8 MoDTC)をモリブデン(Mo)量として500ppm、及びジ(セカンダリーC3/C6アルキル)ジチオリン酸亜鉛(セカンダリーC3/C6ZnDTP)1.2質量%を各々同量配合した2種を調製した。一方の比較例用試料(12−C1)では、重量平均分子量1×105のオレフィンコポリマー3を3質量%、他方の比較例用試料(12−C2)では、2.2×105のオレフィンコポリマー4を2質量%各々添加した。また、別途、比較例用試料(12−C3)として、硫化オキシモリブデンジn−オクチルジチオカーバメート(C9 MoDTC)をモリブデン(Mo)量として700ppm、及びジ(セカンダリーC3/C6アルキル)ジチオリン酸亜鉛(セカンダリーC3/C6ZnDTP)1.2質量%を各々添加した1種を調製し、オレフィンコポリマー1及び2を下記表に示す割合で添加した試料を調製した。
従って、本発明によれば、潤滑油基油と本発明化合物の組み合わせにより、燃費性能に優れた潤滑油組成物を提供することができる。
例示化合物I−1、II−7、II−14及びII−18をそれぞれ含有する組成物について、清浄性評価を、以下の条件で行った。
ホットチューブ試験機を用いて、エンジン用潤滑油組成物試料(実施例用試料13−1〜13−4、比較例用試料13−C1〜13−C4)の清浄性を評価した。具体的には、一定温度に加温したガラス管内に予め劣化処理した各エンジンオイル試料及び空気を挿入し、エンジンオイルの劣化による汚れ成分の付着状態を観察し、ラッカー評点として評価した。
設定条件:
エンジンオイルの挿入量:6mL/16時間
空気の挿入量 :10mL/分
加熱部温度 :290〜320℃
実際の運転時に混入する酸性物質(硫酸)、燃焼生成物(スス)、磨耗粉(鉄粉)を想定し、以下の条件で各エンジンオイルを予め処理した。即ち、カーボンブラック、鉄粉、硫酸を以下の割合でエンジンオイルに添加し、温度100℃で10分間攪拌混合したものを試験油として用いた。
カーボンブラック:エンジンオイルに対し0.2質量%
5μm以下の鉄粉:エンジンオイルに対し0.05質量%
硫酸 :エンジンオイルに対し0.8質量%
16時間試験後のガラス管を所定の標準色と照らし合わせて1〜10の評価点を付けた。
評価点1:ガラス管の汚れが最も多く、黒色に変色したもの(黒く炭化)。
評価点5:ガラス管の汚れ状態が中程度で淡黄色に変色したもの。
評価点10:ガラス管の汚れ状態が最も少なく、殆ど元のガラス管と同じ状態のもの。
(A)成分及びその他の成分を下記表に記載した組成で配合したものをエンジンオイルの試験油とした。尚、調製に使用した各種添加剤は以下の通りである。
極圧潤滑剤:金属系清浄剤:
市販カルシウムサリシレート (表中Ca−サリシレートと記載)=300 TBN
市販カルシウムスルホネート (表中Ca−スルホネートと記載)=320 TBN
市販カルシウムフェネート (表中Ca−フェネートと記載)=170 TBN
(*TBN: アルカリ価を示し、KOHmg/gで表示)
のいずれかを使用
極圧潤滑剤:
市販硫化オキシモリブデンジn−オクチルジチオカーバメート(C8MoDTCと記載)
市販ジ(セカンダリーC3/C6アルキル)ジンクジチオホスフェート(セカンダリーC3/C6ZnDTPと記載)を使用
無灰性分散剤:
市販ポリブテニルコハク酸イミドを使用
基油:
市販天然鉱物油(パラフィン系鉱物油;粘度=120mm2/s:40℃)を使用
Claims (17)
- 油性媒体と、該油性媒体中に分散及び/又は溶解している少なくとも1種の下記式(I)で表される化合物とを含む内燃機関用潤滑組成物:
- Laが、単結合、又はカルボニル基、スルホニル基、ホスホリル基、オキシ基、置換もしくは無置換のアミノ基、スルフィド基、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリ−レン基及び複素環基から選択される一つ以上の組合せからなる二価の連結基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関用潤滑剤組成物。
- 式(I)で表される化合物が、下記式(II)で表されるペンタエリスリト−ル誘導体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑剤組成物:
- 式(I)で表される化合物が、下記式(III)で表されるオリゴペンタエリスリト−ル誘導体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑剤組成物:
- Y1〜Y4、Y11、Y12及びY21〜Y23がそれぞれ、単結合、カルボニル基(−C(=O)−)、スルホニル基(−S(=O)2−)、又は式中のO(酸素原子)と結合するカルボニル基(−C(=O)−)もしくはスルホニル基(−S(=O)2−)を含む二価の基であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑剤組成物。
- R1〜R4、R11、R12及びR21〜R23が、末端にC12以上のアルキル基を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑剤組成物。
- 式(I)で表される化合物の40℃における粘度圧力係数が、20GPa-1以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑剤組成物。
- 油性媒体が、鉱物油、ポリ−α−オレフィン、ポリオ−ルエステル、(ポリ)フェニルエ−テル、イオン液体、シリコ−ン油、フッ素油のいずれか又はその混合物であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑剤組成物。
- 油性媒体が、燃焼機関用燃料であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑剤組成物。
- 構成元素が、炭素、水素、酸素及び窒素だけからなることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑剤組成物。
- 液晶性であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑剤組成物。
- 40℃での粘性が30mPa・s以下であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑剤組成物。
- 不透明状態から透明状態に転移する透明点が常圧で70℃以下であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑剤組成物。
- 金属系清浄剤、無灰系分散剤、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、粘度指数向上剤、防錆剤及び消泡剤からなる添加剤群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑剤組成物。
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