JP4079509B2 - 潤滑油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は潤滑油組成物に関し、更に詳しくは、湿式クラッチを有する自動および無段変速機用潤滑油、有機材料と無機材料の摺動部を有するショックアブソーバー油、パワーステアリング油、油圧油などに好適な潤滑油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動変速機に用いられてきた、トルクコンバーターに内包されるロックアップ機構部や多段階変速機構部には湿式クラッチが用いられ、その湿式クラッチは一部自動変速のみならず無段変速機にも応用されるようになってきた。
しかしながら、湿式クラッチにおいては締結時に振動またはショックが発生することがあり、ドライバーに不快感をもたらすことがある。この振動・ショックが連続的に発生する現象は「シャダー」と呼ばれ、ドライバーに強い不快感をもたらすだけでなく、安全な車両運転が困難となる場合がある。このシャダーに関してクラッチ間に介在する潤滑油の摩擦特性が重要な因子となっていることが知られている(PETROTEC 19,(3),233(1966) 等参照)。すなわち、すべり速度の増加にともない摩擦係数が増加する特性が望ましいとされている。更には、その良好な摩擦特性が短時間しか持続しない場合は、頻繁に更油を余儀なくされ、ミッション等の持つ本来の性能を十分に発揮することができなかった。
以上の理由により、良好な摩擦特性を長時間に渡って維持できる潤滑油組成物、つまりシャダー防止寿命の長い潤滑油組成物が強く求められていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記観点からなされたもので、シャダー防止性能に優れ、かつシャダー防止寿命の長い潤滑油組成物を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ジチオカーバメート化合物及び特定の脂肪酸とアミンの縮合物を添加剤として使用することにより本発明の目的を効果的に達成しうることを見出し本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は、基油に、(A)ジチオカーバメート化合物、及び(B)炭素数8〜30を有する分岐鎖状脂肪酸とアミンの縮合物を配合してなる潤滑油組成物、更に、(C)アミン系酸化防止剤を配合してなる潤滑油組成物を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
先ず、本発明の潤滑油組成物においては、基油として鉱油及び/又は合成油が用いられる。この鉱油や合成油については、一般に潤滑油の基油として用いられているものであればよく、特に制限はないが、100℃における動粘度が1〜50mm2 /s、特に2〜15mm2 /sの範囲にあるものが好適である。基油の動粘度が高すぎると、低温粘度が悪化する場合があり、逆に低すぎると、自動変速機のギヤ軸受、クラッチ等の摺動部において摩耗が増加する場合があり好ましくない。また、この基油の%CA は酸化安定性の点で、20以下であるものが好ましく、10以下であるものが更に好ましい。更に、低温流動性の指標である流動点については特に制限はないが、−10℃以下であるのが好ましく、特に−15℃以下であるものが好ましい。
【0006】
このような鉱油,合成油は各種のものがあり、用途などに応じて適宜選定すればよい。鉱油としては、例えばパラフィン系鉱油,ナフテン系鉱油,中間基系鉱油などが挙げられ、具体例としては、溶剤精製または水添精製による軽質ニュートラル油,中質ニュートラル油,重質ニュートラル油,ブライトストックなどを挙げることができる。なかでも、パラフィン系鉱油の軽質または中質ニュートラル油が好ましい。
【0007】
一方合成油としては、例えば、ポリα−オレフィン,α−オレフィンコポリマー,ポリブテン,アルキルベンゼン,ポリオールエステル,二塩基酸エステル,ポリオキシアルキレングリコール,ポリオキシアルキレングリコールエステル,ポリオキシアルキレングリコールエーテル,ヒンダードエステル,シリコーンオイルなどを挙げることができる。中でも、特にポリα−オレフィン,ポリオールエステルが好ましい。
これらの基油は、それぞれ単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができ、鉱油と合成油を組み合わせて使用してもよい。
【0008】
本発明においては、上記基油が粘度指数向上剤を、組成物全量基準で、0〜30重量%含有することが好ましい。より好ましくは0.1〜25重量%であり、特に好ましくは0.5〜20重量%である。ここで使用できる粘度指数向上剤としては、エチレン−プロピレン共重合体などのオレフィン(共)重合体,ポリメタクリレート,ポリイソブチレン等が好ましく使用され、低温特性の点から、ポリメタクリレートが特に好ましく使用される。その分子量としては、剪断安定性などの点から数平均分子量で10,000〜1,000,000、更に10,000〜100,000、特に10,000〜70,000の範囲にあることが好ましい。また、上記粘度指数向上剤を配合した基油としては、特に、低温始動性能の点から、粘度指数(VI)が130以上、特に160以上であるものが好ましく使用される。
【0009】
次に、基油に配合される(A)〜(C)成分について説明する。
(A)成分
本発明の潤滑油組成物を構成する(A)成分のジチオカーバメート化合物としては、公知のジチオカルバミン酸の金属塩(モリブデン,タングステン,亜鉛,銅,ニッケル,鉄,カドミウム,銀,鉛,アンチモン,錫,ビスマス等)や二分子のジチオカルバミン酸がメチレン等のアルキレン基で結合されたものなどを挙げることができる。ジチオカーバメート化合物は摩耗防止剤や酸化防止剤としては公知であるが、本発明においては摩擦特性の維持剤として用いられる。
【0010】
これらの(A)成分は、単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
(A)成分の配合量については、基油に、組成物全量基準で、好ましくは0.05〜1重量%、より好ましくは0.1〜0.8重量%の割合で配合される。0.05重量%未満では摩擦特性の維持が困難である場合があり、1重量%を超えると酸化安定性が悪化する場合がある。
【0011】
(B)成分
本発明の潤滑油組成物を構成する(B)成分は炭素数8〜30を有する分岐鎖状脂肪酸とアミンの縮合物である。
炭素数8〜30を有する分岐鎖状脂肪酸としては、飽和、不飽和どちらでもよく、イソラウリン酸,イソミリスチン酸,イソステアリン酸,イソアラキン酸,イソベヘン酸,イソリンデル酸,イソミリストレイン酸,イソゾーマリン酸,イソオレイン酸,イソエルカ酸などを挙げることができる。
【0012】
一方、脂肪酸と反応させるアミンとしては、ジエチレントリアミン,トリエチレンテトラミン,テトラエチレンペンタミン,ペンタエチレンヘキサミン,ヘキサエチレンヘプタミン,ヘプタエチレンオクタミン,ジプロピレントリアミン,テトラプロピレンペンタミン,ヘキサブチレンヘプタミンなどのポリアルキレンポリアミン、モノエタノールアミン,ジエタノールアミンなどのアルカノールアミンを挙げることができる。
【0013】
なかでも、イソステアリン酸とテトラエチレンペンタミン,イソオレイン酸とジエタノールアミンなどの組み合わせが好適である。
これらの(B)成分は、単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
(B)成分の配合量については、基油に、組成物全量基準で、好ましくは0.05〜2重量%、より好ましくは0.2〜1重量%の割合で配合される。0.05重量%未満では摩擦特性向上効果が不足する場合があり、2重量%を超えると摩擦係数を極端に下げ変速機が不具合を起こす要因となる恐れがある。
本発明においては、基油に(A)成分と(B)成分を配合することにより目的を達成することができるが、更に(C)成分のアミン系酸化防止剤を配合することにより、シャダー防止寿命が更に改良され好ましい態様となる。
【0014】
(C)成分
アミン系酸化防止剤としては、例えばモノオクチルジフェニルアミン;モノノニルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン系、4,4’−ジブチルジフェニルアミン;4,4’−ジペンチルジフェニルアミン;4,4’−ジヘキシルジフェニルアミン;4,4’−ジヘプチルジフェニルアミン;4,4’−ジオクチルジフェニルアミン;4,4’−ジノニルジフェニルアミン;4,4’−オクチルtert−ブチルジフェニルアミンなどのジアルキルジフェニルアミン系、テトラブチルジフェニルアミン;テトラヘキシルジフェニルアミン;テトラオクチルジフェニルアミン;テトラノニルジフェニルアミンなどのポリアルキルジフェニルアミン系、α−ナフチルアミン;フェニル−α−ナフチルアミン;ブチルフェニル−α−ナフチルアミン;ペンチルフェニル−α−ナフチルアミン;ヘキシルフェニル−α−ナフチルアミン;ヘプチルフェニル−α−ナフチルアミン;オクチルフェニル−α−ナフチルアミン;ノニルフェニル−α−ナフチルアミンなどのナフチルアミン系を挙げることができ、なかでもジアルキルジフェニルアミン系,ナフチルアミン系のものが好適である。
【0015】
これらの(C)成分は、単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
(C)成分の配合量については、基油に、組成物全量基準で、好ましくは0〜2重量%、より好ましくは0.05〜2重量%、特に好ましくは0.2〜1重量%の割合で配合される。2重量%を超えると配合量に見合った効果がでない場合がある。
【0016】
本発明の潤滑油組成物は、基油に(A)成分と(B)成分あるいは(A)〜(C)成分を配合することにより得られるが、通常潤滑油の特性向上のため、公知の酸化防止剤(アミン系以外),清浄分散剤,金属不活性剤、消泡剤などを適宜配合することができる。これらその他の添加剤の全配合量は、組成物全量基準で、0.05〜15重量%の範囲が好ましい。
【0017】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例,比較例における各種性能試験法を下記の要領で行った。
(1)シャダー防止性能
自動変速機油の性能試験方法(JASO M349−95)に準拠し、μ比(μ1 /μ50)で評価した。
試験条件
・油温: 40℃
・面圧: 1.00±0.05MPa
μ1 ・・・0.006m/sにおける摩擦係数
μH ・・・0.030m/sにおける摩擦係数
【0018】
(2)シャダー防止寿命
JIS K2514(内燃機関用潤滑油酸化安定度試験)に準拠して供試油を劣化させ、劣化油の摩擦特性を継続的に任意の時間でJASO M349−95に基づき測定し、μ比が1.0を超えるまでの時間で評価した。
【0019】
実施例1〜5及び比較例1〜7
第1表に示す割合で、基油に各成分を配合し、実施例及び比較例の潤滑油組成物を調製した。これら実施例と比較例につき前記の各種性能試験を行った。その結果を第1表に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
*1 パラフィン系鉱油:動粘度4.3mm2 /s(100℃),%CA ;0 流動点;−20℃
*2 数平均分子量50,000
*3 イソステアリン酸とテトラエチレンペンタミンの縮合物
*4 オレイン酸モノグリセライド
*5 4,4’−オクチルtert−ブチルジフェニルアミン
*6 酸化防止剤(アミン系以外),清浄分散剤,消泡剤
【0023】
第1表の実施例,比較例より次のことがわかる。
▲1▼実施例において、μ1 /μ50は0.84〜0.87を示し、1以下で十分なシャダー防止性を有している。
▲2▼実施例のシャダー防止寿命は所定の試験において192時間以上となっており、比較例の2倍以上となっているので、実車両においても十分なシャダー防止寿命を有する。
▲3▼比較例1は(B)成分がないため実施例1と比較して新油時のμ比は1を超え、シャダー防止性能が劣る。
▲4▼比較例2は(A)成分がないため新油時のμ比は0.82と良好であるが、寿命は短く実施例1の1/4以下である。
▲5▼比較例3は(A),(B)成分がないため実施例4と比較して新油時のμ比は1を超え、シャダー防止性能が劣る。
【0024】
▲6▼比較例4は(B)成分がないため実施例4と比較して新油時のμ比は1を超え、シャダー防止性能が劣る。
▲7▼比較例5は(A)成分がないため新油時のμ比は0.84と良好であるが、寿命は短く実施例4の1/3以下である。
▲8▼比較例6は(B)成分の代わりにグリセライドを用いているが、新油時のμ比は0.85と良好であるが、寿命が極端に短い。
▲9▼比較例7は(A)成分の代わりにトリクレジルフォスフェートを用いているが、新油時のμ比は0.85と良好であるが、寿命が極端に低い。
【0025】
【発明の効果】
本発明の潤滑油組成物は、シャダー防止性能に優れ、かつその性能を長期に渡り維持することができる。
Claims (6)
- 基油に、(A)ジチオカーバメート化合物、及び(B)炭素数8〜30を有する分岐鎖状脂肪酸とポリアルキレンポリアミンの縮合物を配合してなる潤滑油組成物。
- ポリアルキレンポリアミンが、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘプタエチレンオクタミン、ジプロピレントリアミン、テトラプロピレンペンタミンおよびヘキサブチレンヘプタミンのいずれかのポリアルキレンポリアミンであることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
- ポリアルキレンポリアミンがテトラエチレンペンタミンであることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
- (A)成分が、ジチオカルバミン酸のモリブデン塩および/または二分子のジチオカルバミン酸がアルキレン基で結合された化合物であり、(B)成分が、イソステアリン酸とテトラエチレンペンタミンの縮合物であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
- 基油が粘度指数向上剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の潤滑油組成物。
- 更に、(C)アミン系酸化防止剤を配合してなる請求項1〜5のいずれかに記載の潤滑油組成物。
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