JP5301304B2 - 無段変速機用潤滑油組成物 - Google Patents
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これらの金属ベルト−プーリー部分、トルクコンバーター、及び前後進切り替え機構では、通常、同一の潤滑油が使用されている。そのため、金属ベルトCVTに用いる潤滑油には、以下に記載するように、金属ベルト−プーリー部分への適合性と共に、クラッチ部分の湿式摩擦材への適合性も求められる。
(1)基油
本発明に用いる基油としては、鉱油系基油、合成系基油、及びこれらの混合基油など、無段変速機用潤滑油の基油として用いられるものであれば特に制限はないが、無段変速機用潤滑油として適切な潤滑特性を得やすいという観点からは100℃における動粘度が3.5mm2/sから5.0mm2/sであることが好ましい。また、粘度温度特性確保の観点から粘度指数は110以上、酸化安定性確保の観点からは硫黄分は0.01質量%以下であることが好ましい。
これらの基油は、鉱油及び合成油から選ばれる1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で組み合わせて混合して用いてもよい。
本発明では、下記一般式(1)で表される化合物を用いる。
本発明では、塩基性カルシウムスルホネート及び塩基性カルシウムフェネートから選ばれる少なくとも1種類を用いる。
塩基性カルシウムスルホネートと塩基性カルシウムフェネートは、クラッチの湿式摩擦材での静摩擦係数や、ベルト−プーリー間での金属間摩擦を高める効果を有する。また、燃費改善のため組成物を低粘度化した場合に問題となりやすい、部品の摩耗を防止する効果も有する。ただし、配合量が多すぎると、クラッチ結合時のショックが生じやすくなるとともに、クラッチの湿式摩擦材での動摩擦係数を長期間維持しづらくなる。このような観点から、本発明では、塩基性カルシウムスルホネート及び塩基性カルシウムフェネートから選ばれる少なくとも1種類の配合量は、潤滑油組成物全量に対してカルシウム量換算で450質量ppm以上700質量ppm以下となる割合で使用する。この配合量は、好ましくは450質量ppm以上650質量ppm以下、より好ましくは480質量ppm以上600質量ppm以下である。
また、カルシウムスルホネートとカルシウムフェネートを併用しても良い。
本発明では、粘度指数向上剤として、非分散型ポリメタクリレート系粘度指数向上剤を使用する。分子構造中にアミノ基やスルホン酸基を有する「分散型」ではなく、このような極性基を有さない「非分散型」のポリメタクリレート系粘度指数向上剤を用いることにより湿式摩擦材の摩擦特性が向上する。
非分散型ポリメタクリレート系粘度指数向上剤としては、例えば、下記一般式(5)に示す構造を有するものなどが挙げられ、構造の一部がポリメタクリレート以外の高分子化合物であっても、ポリマーの大部分がポリメタクリレートであってもよい。
非分散型ポリメタクリレート系粘度指数向上剤の配合量は、組成物全量に対して0.5質量%以上20質量%以下とし、好ましくは1質量%以上19質量%以下、より好ましくは3質量%以上17質量%以下である。
本発明の潤滑油組成物の性状としては、必要性能に応じて、例えば無段変速機用として適した、以下に記載するような性状とすることができる。
100℃における動粘度は、粘度低下による耐摩耗性及び耐焼付き性の観点からは5.8mm2/s以上であることがより好ましく、省燃費性向上の観点からは7.4mm2/s以下であることが好ましい。
粘度指数は、常温域での粘度が高まることによる省燃費性の低下防止という観点からは150以上であることが好ましい。一方、粘度指数が高すぎることによる問題は特にないが、高い粘度指数とするにはより高分子量の粘度指数向上剤を使用するケースや、その配合量が多量になるケースが多く、その結果としてせん断安定性が悪くなり、粘度の低下による摩耗防止性・耐焼付き性の悪化が生じることがある。そのため、270以下程度が現実的な上限値である。
また、−40℃でのブルックフィールド粘度(BF粘度)は、省燃費性の観点から20,000mPa・s未満とすることが好ましい。
本発明の無段変速機用潤滑油は、上記(A)、(B)、及び(C)の各成分のほかに、必要に応じて、公知の添加剤、例えば、無灰型分散剤、油性剤、摩耗防止剤、極圧剤、さび止め剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、腐食防止剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、消泡剤、着色剤、自動変速機油用パッケージ添加剤、あるいはこれらのうち少なくとも1種を含有する各種潤滑油用パッケージ添加剤などを添加することができる。
ただし、摩擦調整剤は、その種類によっては、本発明の効果に影響する場合があるので、本発明の効果を妨げないものを選択するか、その配合量を極力抑えることが望ましい。
・基油A:水素化精製基油
(流動点:−50℃、粘度指数:105、硫黄分:0.0001質量%、100℃粘度:3mm2/s)
・基油B:水素化精製基油
(流動点:−12℃、粘度指数:124、硫黄分:0.0006質量%、100℃粘度:6mm2/s)
・基油C:水素化精製基油
(流動点:−12℃、粘度指数:124、硫黄分:0.0002質量%、100℃粘度:4mm2/s)
・パッケージ添加剤1:無段変速機油用パッケージ添加剤(塩基価300の塩基性カルシウムスルホネートをカルシウム量で0.5質量%含有)
・パッケージ添加剤2:上記パッケージ添加剤1から塩基性カルシウムスルホネートを除外したもの
・スルホネート:塩基性カルシウムスルホネート(塩基価300、カルシウム含有量:11質量%)
・一般式(1)で表される化合物:一般式(1)で、R1が炭素数12のアルキル基のもの
・PMA1:重量平均分子量(Mw)が21,000である非分散型ポリメタクリレート系粘度指数向上剤
・PMA2:重量平均分子量(Mw)が15,000である非分散型ポリメタクリレート系粘度指数向上剤
・PMA3:重量平均分子量(Mw)が250,000である非分散型ポリメタクリレート系粘度指数向上剤
・PMA4:重量平均分子量(Mw)が300,000である分散型ポリメタクリレート系粘度指数向上剤
・PMA5:重量平均分子量(Mw)が440,000である非分散型ポリメタクリレート系粘度指数向上剤で、アームを7本以上有する星型重合体
・PMA6:重量平均分子量(Mw)が35,000である非分散型ポリメタクリレート系粘度指数向上剤
・PMA7:重量平均分子量(Mw)が21,000である非分散型ポリメタクリレート系粘度指数向上剤
・流動点降下剤
社団法人 自動車技術会の自動車規格JASO M348「自動変速機油摩擦特性試験方法」で定めたSAE No.2試験装置を用いて、湿式摩擦材の摩擦特性を調べた。すなわち、JASO法で5000サイクルの試験を行い、JASO M348で規定されたサイクルでの、下記に示す測定条件で測定された各摩擦係数μ0、μd、及びμtから、湿式摩擦材の摩擦特性を下記基準で評価した。
・μd:
フリクションディスクを3600rpmで一定回転させたのち、動摩擦試験用電動機の駆動電源を切り、同時に押し荷重を加えて、慣性円盤をフリクションディスクとスチールプレートで発生する摩擦トルクで制動させるとき、制動開始後、回転数が1800rpmに達したときの摩擦トルクTdを下記式(x)の摩擦トルクTとして式(x)で算出される動摩擦係数値である。
フリクションプレートが停止する直前の200rpm以下での最大トルクT0を下記式(x)の摩擦トルクTとして式(x)で算出される動摩擦係数値である。
押し荷重を加えて、フリクションディスクとスチールプレートを挟んだ後、フリクションプレートを0.7rpmで一定回転させ、回転立ち上がりから2秒後の安定トルクTtを下記式(x)の摩擦トルクTとして式(x)で算出される静摩擦係数値である。
T :摩擦トルク(Nm)
n :フリクションディスク枚数
re:平均摩擦有効半径
P :押し付け荷重
A :摩擦面積
・μ0/μdの最大値:
湿式摩擦材の結合時ショックの指標。この値が低いほど結合時ショックが小さく良好であり、1.07以下を合格とした。
・μt(静摩擦係数)の最小値:
湿式摩擦材での動力伝達の指標。この値が高いほど湿式摩擦材での伝達トルク容量が良好であり、0.125以上を合格とした。
・μd変化率:
下記式(y)により求められる湿式摩擦材での摩擦特性安定性(動摩擦係数の安定性)の指標。この値が小さいほど湿式摩擦材での摩擦特性が安定して良好であるとし、7%以下を合格とした。
JASO M358に準拠して実施した。評価は高面圧法で実施し、滑り速度0.25m/sでの摩擦係数を用いた。この値が高いほどベルト−プーリー間の伝達トルク容量が良好であり、0.135以上を合格とした。
耐摩耗性評価として、JASO M358の高面圧法に準拠して荷重1112Nで30分間摺動させた後のブロックの摩耗幅を測定した。この値が小さいほど耐摩耗性が良好であり部品耐久性が良好である。これは、0.9mm以下を合格とした。
表1及び表2に、それぞれ実施例及び比較例の結果を示す。
一方、一般式(1)の化合物を含有しない比較例1では、湿式摩擦材の結合時ショックの抑制効果が劣り、湿式摩擦材の動摩擦係数の安定性も劣る。ポリメタクリレート系粘度指数向上剤として分散型のものを配合した比較例2では、湿式摩擦材の結合時のショックの抑制効果が劣る。さらに、カルシウムスルホネートを含有しない比較例3では湿式摩擦材の静摩擦係数と金属間摩擦係数が低く、耐摩耗性も十分でない。カルシウムスルホネートを過剰に含有する比較例4では湿式摩擦材の結合時ショックの抑制効果が劣り、湿式摩擦材の動摩擦係数の安定性も劣る。
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