JP2016037554A - グリース組成物 - Google Patents

Abstract

【課題】新たなグリース用添加剤を添加した潤滑性に優れたグリース組成物を提供する。
【解決手段】潤滑油基油、増ちょう剤、および下記一般式（１）で表されるスルホラン誘導体を含有するグリース組成物。

（１）
（上記式中、Ｒ^１は炭素数１〜２０の炭化水素基、Ｒ^２、Ｒ^３はそれぞれ水素または炭素数１〜２０の炭化水素基を示す。）
【選択図】なし

Description

本発明は、潤滑特性に優れるグリース組成物に関する。

グリースは、主に機械の摺動部や回転部など、接触する面が動くために潤滑剤の膜を付着した状態に保つのが難しい摺動面に用いられている。近年、自動車や電気機器等の機械技術の進歩に伴い、各種機器は小型軽量化、高出力化、ロングライフ化の傾向あり、運転条件が過酷になってきている。これに伴い、各種機器に使用されるグリースも潤滑性等の要求性能が高まっている。
このグリースの潤滑性の改善のため、基油、増ちょう剤、添加剤の選択が種々提案され、例えば、特定の亜リン酸エステルを添加するもの（特許文献１）、有機モリブデンと、ジチオリン酸亜鉛、ポリサルファイド、トリグリセライドを含有させるもの（特許文献２）などが知られている。
しかし、さらなる潤滑性の向上のために、新たなグリース用の添加剤の開発が要求されている。

特開２０１２−０５７１３４号公報 特開２０１４−０４３５２６号公報

本発明は、上記課題を解決するもので、新たなグリース用の添加剤を添加した潤滑性に優れたグリース組成物を提供するものである。

本発明者は、潤滑性の優れたグリース組成物を開発すべく鋭意研究を進めた結果、特定のスルホラン誘導体がグリース用添加剤として有効であることを偶然見出した。また、このスルホラン誘導体は、特定の条件において、他の添加剤との相乗効果を有することも確認された。

本発明は、かかる知見に基づきなされたもので、次の通りである。
〔１〕潤滑油基油、増ちょう剤、および下記一般式（１）で表されるスルホラン誘導体を含有するグリース組成物。

（１）

（上記式中、Ｒ^１は炭素数１〜２０の炭化水素基、Ｒ^２、Ｒ^３はそれぞれ水素または炭素数１〜２０の炭化水素基を示す。）
〔２〕スルホラン誘導体が、上記一般式（１）において、Ｒ^１は炭素数４〜１８のアルキル基、Ｒ^２、Ｒ^３はそれぞれ水素または炭素数１〜８の炭化水素基である上記〔１〕に記載のグリース組成物。
〔３〕スルホラン誘導体の含有量が０.２〜１０質量％である上記〔１〕または〔２〕に記載のグリース組成物。
〔４〕さらに、リン含有有機化合物、硫黄含有有機化合物およびリン‐硫黄含有有機化合物の少なくとも一種類を含有する上記〔１〕〜〔３〕のいずれか１項に記載のグリース組成物。

本発明のグリース組成物は、摩擦係数が低く、耐荷重能が高く、潤滑性に極めて優れるという格別の効果を奏する。

［潤滑油基油］
本発明の潤滑油基油は、通常の潤滑油に用いられる潤滑油基油であれば、鉱油系、合成油系、動植物油系あるいはこれらの混合物のいずれも用いることができる。
この潤滑油基油は、１００℃における動粘度が１〜２００ｍｍ^２／ｓのものが好ましく、５〜５０ｍｍ^２／ｓのものがより好ましい。
潤滑油基油の含有量はグリース組成物全量基準で、好ましくは５０質量％以上、より好ましくは６０質量％以上である。また、含有量の上限は、他の成分の残部となり、通常、好ましくは９５質量％以下、より好ましくは８５質量％以下である。

鉱油系潤滑油基油は、一般に、原油を常圧蒸留し、あるいはさらに減圧蒸留して得られる留出油を各種の精製プロセスで精製した潤滑油留分を基油とし、これをそのまま、或いはこれに各種の添加剤等を調合して調製される。前記精製プロセスは、水素化精製、溶剤抽出、溶剤脱ろう、水素化脱ろう、硫酸洗浄、白土処理などであり、これらを適宜、所望の順序で組み合わせて処理して、本発明に好適な鉱油系の潤滑油基油を得ることができる。異なる原油あるいは留出油を、異なるプロセスの組合せ、順序により得られた、性状の異なる複数の精製油の混合物も好適な基油として用いることができる。
この鉱油系潤滑油基油は、取り扱いの安全上の観点から芳香族分が２０％以下のものが好ましい。

合成油系潤滑油基油は、例えば、ポリ‐α‐オレフィン（ＰＡＯ）、低分子量エチレン・α‐オレフィン共重合体、ポリブテンやポリイソブテンなどの高分子ポリマー、エステル系、エーテル系などの含酸素系合成油、シリコーン油、フッ素化油、アルキルナフタレンなどを単独であるいは組み合わせて用いることができる。

動植物油系の潤滑油基油としては、牛乳脂、牛脂、ラード(豚脂)、羊脂、鯨油、鮭油、かつお油、にしん油、鱈油、さらには大豆油、菜種油、ひまわり油、サフラワー油、落花生油、とうもろこし油、綿実油、米ぬか油、ゴマ油、オリーブ油、アマニ油、ヒマシ油、カカオ脂、パーム油、ヤシ油、麻実油、米油、茶種油を好適に用いることができる。

［増ちょう剤］
本発明では、通常のグリース組成物に用いられる金属石けん系、ウレア系、さらには、有機合成樹脂粉体、無機粉体、アミド化合物からなるゲル化剤、ワックスなどの増ちょう剤を用いることができる。
金属石けん系の増ちょう剤としては、金属のカルボン酸塩（金属石けん）であり、ナトリウム石けん、カルシウム石けん、アルミニウム石けん、リチウム石けんが挙げられ、中でもリチウム石けんが好ましい。
石けんを形成するカルボン酸としては、脂肪酸、脂肪族２価カルボン酸などが挙げられ、いわゆる複合金属石けんでもよい。

ウレア系の増ちょう剤としては、例えば、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、ポリウレア化合物（ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物を除く）等のウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン等のウレタン化合物またはこれらの混合物等が挙げられ、中でも、ジウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン化合物またはこれらの混合物が好ましい。

有機合成樹脂粉体としては、フッ素樹脂粒子（特には、ポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子）などが挙げられる。
無機粉体としては、シリカなどの金属酸化物、炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩、硫酸カルシウムなどの金属硫酸塩、ｈ−ＢＮなどの窒化物が挙げられる。また、ベントナイトなどの鉱物由来の金属酸化物も挙げられる。

アミド化合物からなるゲル化剤としては、モノアミド、ビスアミド、トリアミドなどが挙げられる。中でも、脂肪族モノアミド、脂肪族ビスアミドが好ましい。
ワックスとしては、石油系ワックス、合成ワックス、天然樹脂ワックスなどが挙げられる。
増ちょう剤の含有量は、グリース組成物全量基準で、好ましくは３〜４５質量％、より好ましくは５〜３０質量％である。

［スルホラン誘導体］
本発明のスルホラン誘導体は、次の一般式（１）で示される化合物である。

（１）

ここで、Ｒ^１は炭素数１〜２０の炭化水素基、Ｒ^２、Ｒ^３はそれぞれ水素または炭素数１〜２０の炭化水素基を示す。
なお、上記スルホラン誘導体のなかでも、一般式（１）中のＲ^１が炭素数４〜１８のアルキル基のものが好ましく、より好ましくは、炭素数６〜１６のアルキル基のもので、一方、Ｒ^２、Ｒ^３がそれぞれ水素または炭素数１〜８の炭化水素基のものが好ましく、Ｒ^２、Ｒ^３がともに水素のものがより好ましい。
このスルホラン化合物はシール膨潤剤として市販されており、また、例えば、特開２００６−２０６５８０号公報に記載の方法で製造することができる。
このスルホラン誘導体の含有量は、グリース組成物全量基準で、好ましくは０.２〜１０質量％、より好ましくは０.５〜５質量％である。

［第２添加剤］
本発明においては、上記潤滑油基油、増ちょう剤、およびスルホラン誘導体に、さらに、第２添加剤として、リン含有有機化合物、硫黄含有有機化合物およびリン‐硫黄含有有機化合物から選択される少なくとも一種類の化合物を含有することが好ましい。これらのリン含有有機化合物、硫黄含有有機化合物およびリン‐硫黄含有有機化合物は、通常の潤滑油の添加剤として使用されているものを用いることができる。
例えば、リン含有有機化合物としては、リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性リン酸エステル、またはこれらのアミン塩、アンモニウム塩が挙げられる。中でも、ジフェニルハイドロジェンホスファイトやトリクレジルホスフェートが好ましい。

硫黄含有有機化合物としては、ポリサルファイド、硫化オレフィン、硫化油脂などが挙げられる。
リン‐硫黄含有有機化合物としては、ジチオリン酸亜鉛（ＺｎＤＴＰ）、モリブデンジチオカーバメート（ＭｏＤＴＣ）、モリブデンジチオフォスフェート（ＭｏＤＴＰ）などが挙げられる。
第２添加剤の含有量は、グリース組成物全量基準で、好ましくは０.１〜１０質量％、より好ましくは０.２〜５質量％である。また、リン元素含有量としては、グリース組成物全量基準で、好ましくは０.０１〜１質量％、より好ましくは０.０２〜０.５質量％である。硫黄元素含有量としては、グリース組成物全量基準で、好ましくは０.０１〜１質量％、より好ましくは０.０２〜０.５質量％である。

［その他の添加剤］
本発明のグリース組成物には必要に応じて、上記第２添加剤以外の公知の添加剤を含有させてもよい。このような添加剤として、フェノール系、アミン系などの酸化防止剤、カルボン酸塩、スルホン酸塩などの防錆剤、ポリアルキレングリコール、グリセリンなどの耐摩耗剤、塩素化パラフィンなどの極圧剤、高級脂肪酸、合成エステルなどの油性向上剤、グラファイト、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤などが挙げられる。なお、これらは、単独または２種類以上組合せて添加してもよい。

［グリースの調製、性状］
本発明のグリース組成物は、一般的なグリースの調製方法、すなわち、潤滑油基油に、増ちょう剤を配合してベースグリースを作成し、これに添加剤を配合、混合して調製しても、潤滑油基油、増ちょう剤、添加剤を一度に配合、混合して調製してもよい。
本発明のグリース組成物は、室温において、半固体状または固体状であり、ＪＩＳ Ｋ２２２０に規定されるちょう度番号で０００号〜６号までのちょう度を有するものである。

潤滑油基油に表１に記載の増ちょう剤を加え、各種添加剤をそれぞれ表１に示す組成となるように加えて攪拌した後、その混合物をロールミルに通し、実施例及び比較例のグリース組成物を得た。
ここで、ＰＡＯは、ポリ‐α‐オレフィン（４０℃での動粘度：４８ｍｍ^２／ｓ）である。
鉱油１は、原油由来成分の水素化分解により得られた高精製度鉱油（４０℃での動粘度：３８ｍｍ^２／ｓ）である。
鉱油２は、溶剤精製パラフィン系鉱油（４０℃での動粘度：１００ｍｍ^２／ｓ）である。
増ちょう剤のウレアは、ジフェニルメタン‐４,４’‐ジイソシアネート（ＭＤＩ）とモノアミンを反応させて得られたウレア系の増ちょう剤で、ここでモノアミンは、ｐ‐トルイジン２モル部とシクロヘキシルアミン８モル部の混合物を用いたものである。
増ちょう剤のＬｉ石けんは、ステアリン酸リチウムである。

亜リン酸エステルは、ジフェニルハイドロジェンホスファイトである。
リン酸エステルは、トリクレジルホスフェートである。
硫黄化合物は、ポリサルファイド（硫黄元素含有量４０％）である。
スルホラン誘導体は、前記一般式（１）において、Ｒ^１が炭素数８のアルキル基、Ｒ^２、Ｒ^３が水素の化合物である。
ＺｎＤＴＰ（ジチオリン酸亜鉛）は、アルキル基の炭素数が６、Ｚｎ元素含有量：８.７質量％のものである。
ＭｏＤＴＣ（モリブデンジチオカーバメート）は、アルキル基の炭素数が４〜１２、Ｍｏ元素含有量：１０.０質量％のものである。

摩擦特性は、ボール／ディスク型のＳＲＶ試験において、ボール１０ｍｍ球、振動数５０Ｈｚ、振幅１.０ｍｍ、温度４０℃、荷重５０Ｎで、５分間摩擦し、１００Ｎに荷重を上げて、さらに５分間摩擦し、次いで２００Ｎで５分間摩擦し、それ以降、１００Ｎずつ荷重を増加し、６００Ｎまでの各荷重の摩擦係数を測定した。
摩擦係数が０.３以上に急激に上昇し、焼付が生じた荷重を焼付荷重（耐荷重能）として測定した。なお、６００Ｎでも焼付しなかった場合は、焼付荷重６００Ｎ以上とした。
また、軽荷重の摩擦特性は、軸受などの実使用環境における省エネルギー効果に重要であるため、５０Ｎ時の摩擦係数を摩擦特性として測定した。
ＳＲＶ試験に用いた試験機は、ＡＳＴＭ Ｄ５７０６に従ったものであり、ボール及びディスクの材質は、ＳＵＪ‐２である。
これらの結果を表１に示した。
この結果から明らかなように、スルホラン誘導体を添加したグリース組成物は、従来の亜リン酸エステルやリン酸エステルを添加したものに比較して、耐荷重能が大幅に向上していることが分かる。

本発明のグリース組成物は、摩擦係数が低く、耐荷重能が高く、潤滑性に優れるので、自動車や電気機器の摺動部や回転部などの潤滑剤として利用できる。

Claims (4)

1. 潤滑油基油、増ちょう剤、および下記一般式（１）で表されるスルホラン誘導体を含有するグリース組成物。
   

   

   （１）
   （上記式中、Ｒ^１は炭素数１〜２０の炭化水素基、Ｒ^２、Ｒ^３はそれぞれ水素または炭素数１〜２０の炭化水素基を示す。）
2. スルホラン誘導体が、上記一般式（１）において、Ｒ^１は炭素数４〜１８のアルキル基、Ｒ^２、Ｒ^３はそれぞれ水素または炭素数１〜８の炭化水素基である請求項１に記載のグリース組成物。
3. スルホラン誘導体の含有量が０.２〜１０質量％である請求項１または２に記載のグリース組成物。
4. さらに、リン含有有機化合物、硫黄含有有機化合物およびリン‐硫黄含有有機化合物の少なくとも一種類を含有する請求項１〜３のいずれか１項に記載のグリース組成物。