上記目的を達成するために、この発明の一の局面による舶用推進ユニットは、エンジンと、エンジンの下方に延びるとともに、エンジンの駆動力を下方に伝達するドライブシャフト部と、ドライブシャフト部と交差する方向に延びるプロペラシャフト部と、プロペラシャフト部と共に回転されるプロペラと、船体を前方および後方のいずれか一方に推進させるようにプロペラシャフト部にエンジンの駆動力を入力可能な前後進切替機構部と、前後進切替機構部によりプロペラシャフト部に駆動力が入力される際の衝撃を低減するとともに、プロペラシャフト部の回転方向に沿って伸縮可能に配置されているバネ部材を含むシフトショック低減機構部とを備える。
この一の局面による舶用推進ユニットでは、上記のように、前後進切替機構部によりプロペラシャフト部に駆動力が入力される際の衝撃を低減するとともに、プロペラシャフト部の回転方向に沿って伸縮可能に配置されているバネ部材を含むシフトショック低減機構部を設けることによって、前後進切替機構部によりプロペラシャフト部に駆動力が入力される際の回転方向の衝撃(回転トルク)を、プロペラシャフト部の回転方向に沿って伸縮可能に配置されているバネ部材により直接的に吸収することができる。これにより、シフトショック低減機構部に、互いに摺動しながらスライド可能に係合する歯など、回転方向の衝撃を吸収するために、力の方向を変換する機構を設ける必要がないので、互いに摺動しながらスライド可能に係合する歯などがシフトショック低減機構部に設けられている場合と比べて、シフトショック低減機構部の寿命を長くすることができる。また、シフトショック低減機構部に、プロペラシャフト部の回転方向に沿って伸縮可能に配置されているバネ部材を設けることによって、ゴムや樹脂などと比べて弾性変形量が大きいバネ部材により、バネ部材の伸縮ストローク分変形させながら回転方向の衝撃を吸収することができるので、プロペラシャフト部に駆動力が入力される際の回転方向の衝撃を十分に和らげながら受け止めることができる。
上記一の局面による舶用推進ユニットにおいて、好ましくは、プロペラシャフト部の回転中心軸線上または回転中心軸線の延長線上に配置され、プロペラシャフト部の回転を減速する減速機構部をさらに備え、シフトショック低減機構部は、減速機構部に入力される駆動力の衝撃を低減するように構成されている。このように構成すれば、容易に、減速機構部に入力される駆動力の衝撃を低減することにより、舶用推進ユニット全体の衝撃を低減することができる。
上記減速機構部を備える舶用推進ユニットにおいて、好ましくは、減速機構部は、複数の種類の歯車が組み合わされた遊星歯車機構部を含み、シフトショック低減機構部は、遊星歯車機構部の所定の歯車を所定の角度分回動可能に保持する保持部をさらに含み、バネ部材は、所定の角度分回動可能に保持された所定の歯車と保持部との間にプロペラシャフト部の回転方向に沿って伸縮可能に配置されている。このように構成すれば、遊星歯車機構部の所定の歯車で受け止めた回転トルクの衝撃を回転方向に沿って設けられたバネ部材により直接的に吸収することができる。
上記遊星歯車機構部を有する減速機構部を備える舶用推進ユニットにおいて、好ましくは、シフトショック低減機構部は、遊星歯車機構部の所定の歯車が所定の角度よりも大きな角度回動することを規制するストッパ部をさらに含む。このように構成すれば、バネ部材により所定の歯車を所定の角度分回動させながら回転トルクの衝撃を吸収した後、ストッパ部により、所定の歯車を所定の角度で保持することができるので、遊星歯車機構部を安定した状態で駆動させることができる。
上記一の局面による舶用推進ユニットにおいて、好ましくは、シフトショック低減機構部は、バネ部材が圧縮される際にバネ部材が収納される空間のオイルを流出させるとともに、バネ部材が伸長される際にバネ部材が収納される空間にオイルを流入させるオリフィスをさらに含む。このように構成すれば、オリフィスにより、バネ部材の振動を減衰させることができる。
上記一の局面による舶用推進ユニットにおいて、好ましくは、バネ部材は、圧縮コイルバネを含み、圧縮コイルバネは、プロペラシャフト部の回転方向に沿って伸縮可能に配置されている。このように構成すれば、圧縮コイルバネを用いることにより、たとえば、プロペラシャフト部の回転方向に沿って伸縮可能な板バネを設けた場合と比べて、プロペラシャフト部の回転方向に沿って伸縮可能なストロークを大きくすることができる。
上記一の局面による舶用推進ユニットにおいて、好ましくは、減速機構部は、複数の種類の歯車が組み合わされた遊星歯車機構部を含み、シフトショック低減機構部は、遊星歯車機構部の所定の歯車を所定の角度分回動可能に保持する保持部をさらに含み、遊星歯車機構部の所定の歯車は、保持部により所定の角度分回動可能に保持されるサンギヤである。このように構成すれば、リングギヤ入力で、かつ、プラネタリギヤのキャリア出力の遊星歯車機構部に対して本発明のシフトショック低減機構部を容易に適用することができる。
上記角度分回動可能に保持されるサンギヤを有する遊星歯車機構部が設けられた舶用推進ユニットにおいて、好ましくは、バネ部材は、圧縮コイルバネを含み、サンギヤは、半径方向の外側に向かって突出するとともに、サンギヤの周方向の一方側および他方側の少なくともいずれか一方で圧縮コイルバネを支持するバネ受部を含む。このように構成すれば、サンギヤに周方向に回動される衝撃が付与される場合に、圧縮コイルバネの伸縮する際の荷重を、サンギヤにより直接的に吸収することができる。これにより、回動方向の衝撃を吸収するために、力の方向を変換する機構を設ける必要がない。
この場合において、好ましくは、圧縮コイルバネは、サンギヤのバネ受部の一方側に支持される第1圧縮コイルバネと、サンギヤのバネ受部の他方側に支持される第2圧縮コイルバネとを有する。このように構成すれば、バネ受部の一方側および他方側の両方向の回動時に、サンギヤに付与される周方向(回転方向)の衝撃を、第1圧縮コイルバネおよび第2圧縮コイルバネにより吸収することができる。
上記一の局面による舶用推進ユニットにおいて、好ましくは、バネ部材は、複数設けられており、複数のバネ部材は、少なくとも2つ以上の異なるバネ定数を有するバネ部材により構成されている。このように構成すれば、各バネ部材が共振することを抑制することができる。
上記オリフィスを有するシフトショック低減機構部を備える舶用推進ユニットにおいて、好ましくは、プロペラシャフト部の前方に延びるように配置され、ドライブシャフト部が回転することに伴って回転可能に構成された中間軸部をさらに備え、プロペラシャフト部および中間軸部は、少なくともシフトショック低減機構部のオリフィスにオイルを供給するオイル通路部を含む。このように構成すれば、オリフィス近傍にオイルを満たすことができるので、オリフィスにより、バネ部材の振動を確実に減衰させることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態による船外機が搭載された船舶を示した斜視図である。図2〜図6は、図1に示した本発明の一実施形態による船外機の構成を詳細に説明するための図である。図中、FWDは、船舶の前進方向を示しており、BWDは、船舶の後進方向を示している。まず、図1〜図6を参照して、本発明の一実施形態による船舶1に搭載された船外機3の構成について説明する。
本実施形態による船舶1には、図1に示すように、水面に浮かべられる船体2と、船体2の後部に取り付けられ、船体2を推進するための2機の船外機3および4と、船体2を操舵するための操舵部5と、操舵部5の近傍に配置され、船体2を前後方向に推進可能なコントロールレバー部6とが設けられている。なお、船外機3および4は、本発明の「舶用推進ユニット」の一例である。
2機の船外機3および4は、それぞれ、船体2の幅方向(矢印X1方向および矢印X2方向)の中心に対して対称に配置されている。また、船外機3および4は、それぞれ、ケース部300および400により覆われている。これらケース部300および400は、それぞれ、樹脂または金属により形成されており、船外機3および4の内部を水などから保護する機能を有する。
船外機3は、図2に示すように、エンジン30と、エンジン30の下方に延びるとともに、エンジン30の駆動力を下方に伝達するドライブシャフト部31と、ドライブシャフト部31と直交(交差)する方向に延びるプロペラシャフト部32と、プロペラシャフト部32の後端部に取り付けられ、プロペラシャフト部32と共に回転されるプロペラ33とを含んでいる。また、船外機3は、さらに、ドライブシャフト部31の下流側に設けられ、船体2を前方(矢印FWD方向)および後方(矢印BWD方向)のいずれか一方に推進させるようにプロペラシャフト部32にエンジン30の駆動力を入力可能な前後進切替機構部34と、プロペラシャフト部32の回転中心軸線L1上に配置され、プロペラシャフト部32の回転を減速する遊星歯車機構部35とを含んでいる。なお、遊星歯車機構部35は、本発明の「減速機構部」の一例である。
エンジン30は、ケース部300のカウリング301に収納されている。エンジン30には、軸線L2を中心にA方向に回転するクランク軸30aが設けられている。このエンジン30は、このクランク軸30aが回転されることにより駆動力が発生されるように構成されている。また、クランク軸30aには、ドライブシャフト部31の上側部分が接続されている。このドライブシャフト部31は、軸線L2上に配置されているとともに、クランク軸30aと共にA方向に回転するように構成されている。また、ドライブシャフト部31は、ケース部300のアッパーケース302およびロワーケース303に収納されている。
ドライブシャフト部31の下端部には、図3に示すように、ベベルギヤ310がドライブシャフト部31と共にA方向に回転するように取り付けられている。なお、本実施形態では、A方向は、平面的に見た場合の時計回り方向である。また、このベベルギヤ310は、前後進切替機構部34に駆動力を伝達するように構成されている。具体的には、前後進切替機構部34は、矢印FWD方向の下側に配置された前側ベベルギヤ341と、矢印BWD方向の下側に配置された後側ベベルギヤ342とを含んでいる。そして、ベベルギヤ310は、前側ベベルギヤ341の歯車部341aと噛合されているとともに、矢印BWD方向の下側に配置された後側ベベルギヤ342の歯車部342aと噛合されている。
前側ベベルギヤ341は、図4に示すように、ベベルギヤ310がA方向に回転されるのに伴って、プロペラシャフト部32の回転中心軸線L1を中心にB方向に回転されるように構成されている。ベベルギヤ310と前側ベベルギヤ341とのギヤ比は約1.75であり、ベベルギヤ310の回転は、減速されて前側ベベルギヤ341に伝達される。また、後側ベベルギヤ342は、ベベルギヤ310がA方向に回転されるのに伴って、プロペラシャフト部32の回転中心軸線L1を中心にB方向とは反対方向のC方向に回転されるように構成されている。ベベルギヤ310と後側ベベルギヤ342とのギヤ比は、ベベルギヤ310と前側ベベルギヤ341とのギヤ比と同様に約1.75であり、ベベルギヤ310の回転は、減速されて後側ベベルギヤ342に伝達される。また、本実施形態では、B方向は、プロペラシャフト部32を船外機3の後方側(矢印BWD方向側)から見た場合の時計回り方向であり、C方向は、プロペラシャフト部32を船外機3の後方側から見た場合の反時計回り方向である。
前側ベベルギヤ341は、テーパベアリング(円錐ころ軸受)からなるベアリング304に嵌め込まれている。このベアリング304は、ロワーケース303に固定されており、前側ベベルギヤ341が回転中心軸線L1を中心に回転された場合にも、前側ベベルギヤ341を安定して支持することが可能なように構成されている。また、前側ベベルギヤ341の歯車部341aの回転中心軸線L1側の部分には、後述するドッグクラッチ347の前側ドッグ347aに対して係合および離間可能なドッグ部341bが設けられている。
また、後側ベベルギヤ342は、ベアリング305に嵌め込まれている。このベアリング305は、ハウジング部306を介してロワーケース303に固定されており、後側ベベルギヤ342が回転中心軸線L1を中心に回転された際にも、後側ベベルギヤ342を安定して支持することが可能なように構成されている。また、後側ベベルギヤ342の歯車部342aの回転中心軸線L1側の部分には、後述するドッグクラッチ347の後側ドッグ347bに対して係合および離間可能なドッグ部342bが設けられている。
また、ベベルギヤ310の下方には、中間軸部材343が回転中心軸線L1を中心に回転可能に配置されている。中間軸部材343の前端部は、前側ベベルギヤ341の回転中心軸線L1に沿った開口穴341cに挿入されている。この開口穴341cの内周面には、ブッシュ344aが嵌め込まれており、中間軸部材343は、前側ベベルギヤ341に対して空転するように配置されている。また、中間軸部材343の後側部分は、後側ベベルギヤ342の回転中心軸線L1に沿った開口穴342cに挿入されている。また、開口穴342cの内周面には、ベアリング344bが嵌め込まれており、中間軸部材343は、後側ベベルギヤ342に対しても空転するように配置されている。
また、中間軸部材343の矢印FWD方向側には、回転中心軸線L1に沿った挿入穴343aが形成されている。また、中間軸部材343の外周面には、挿入穴343aと直交する貫通穴343bが形成されている。貫通穴343bは、前後方向(矢印FWD方向および矢印BWD方向)に長手方向を有する長穴状に形成されている。
中間軸部材343の回転中心軸線L1に沿った挿入穴343aには、円筒形状のスライド部材345が前後方向(矢印FWD方向および矢印BWD方向)にスライド可能に挿入されている。また、スライド部材345の貫通穴343bに対応する部分には、棒状の連結部材346がスライド部材345と直交するように取り付けられている。この連結部材346は、貫通穴343bに沿って延びるように配置されているとともに、中間軸部材343の外周面よりも外側に突出するように配置されている。また、連結部材346は、スライド部材345と固定されているので、スライド部材345が挿入穴343aに沿ってスライドされると共に貫通穴343bを前後方向にスライドされるように構成されている。
連結部材346の両端部には、ドッグクラッチ347が固定されている。ドッグクラッチ347は、中間軸部材343の外周面とスプライン係合されており、連結部材346と共に回転中心軸線L1を中心に回転するとともに中間軸部材343に対して前後方向にスライド可能に構成されている。
ドッグクラッチ347の矢印FWD方向側の端部には、前側ドッグ347aが設けられているとともに、ドッグクラッチ347の矢印BWD方向側の端部には、後側ドッグ347bが設けられている。そして、ドッグクラッチ347は、矢印FWD方向にスライドされることによって、前側ドッグ347aが前側ベベルギヤ341のドッグ部341bと係合されるように構成されている。これに対して、ドッグクラッチ347は、矢印BWD方向にスライドされることによって、後側ドッグ347bが後側ベベルギヤ342のドッグ部342bに係合されるように構成されている。つまり、ドッグクラッチ347は、前側ベベルギヤ341に係合された場合には、前側ベベルギヤ341の回転中心軸線L1を中心としたB方向(船体2が前進するためのプロペラ33の回転方向:以下、単純に「前進方向」とする。)の回転トルクを、中間軸部材343に伝達する機能を有する。その一方、ドッグクラッチ347は、後側ベベルギヤ342に係合された場合には、後側ベベルギヤ342の回転中心軸線L1を中心としたC方向(船体2が後進するためのプロペラ33の回転方向:以下、単純に「後進方向」とする。)の回転トルクを、中間軸部材343に伝達する機能を有する。なお、ドッグクラッチ347が前側ベベルギヤ341および後側ベベルギヤ342の両方に係合されない中間位置に位置する場合には、ベベルギヤ310の駆動力は、中間軸部材343に伝達されない。
また、スライド部材345の前端部には、連結部材348が係合されている。連結部材348は、スライド部材345を前後方向に移動させることにより、ドッグクラッチ347を前後方向に移動させる機能を有する。具体的には、連結部材348には、前後進切替レバー349の凸部349aが係合されている。そして、連結部材348は、前後進切替レバー349が軸線L3(図3参照)を中心に回動されるのに伴って凸部349aが前後方向に移動されることにより、前後方向に移動可能に構成されている。このように、連結部材348が前後方向に移動されるのに伴って、スライド部材345は、前後方向に移動される。なお、本実施形態では、前後進切替レバー349は、図2に示すように、ケース部300のカウリング301内に配置された図示しないアクチュエータと連動機構349bを介して接続されており、前後進切替レバー349は、図示しないアクチュエータが駆動することに伴って回動される。
また、図4に示すように、中間軸部材343の後端部近傍の回転中心軸線L1側には、プロペラシャフト部32の前端部、および、プロペラシャフト部32に取り付けられた後述する遊星歯車機構部35のキャリア354の前端部を挿入可能な凹部343cが設けられている。凹部343cは、周状の内周面を有しており、凹部343cの内周面には、ブッシュ307が配置されている。ブッシュ307は、遊星歯車機構部35のキャリア354の振れ止めの機能を有する。
また、凹部343cの底部分(矢印FWD方向側部分)には、挿入穴343aと接続されるオイル通路部343dが回転中心軸線L1と同軸上に形成されている。オイル通路部343dは、後述するプロペラシャフト部32のオイル通路部320bを介して、遊星歯車機構部35の後述するシフトショック低減機構部36などにオイルを供給する機能を有する。
また、中間軸部材343の後端部の外周部分には、中間軸部材343が延びる方向(矢印FWD方向および矢印BWD方向)と交差する方向に延びるフランジ部343eが設けられている。また、フランジ部343eには、その外周部分に周状に形成された係合部343fが形成されている。この係合部343fは、後述する遊星歯車機構部35のリングギヤ351と噛合して、中間軸部材343の回転を遊星歯車機構部35に伝達する機能を有する。
ここで、本実施形態では、遊星歯車機構部35は、ロワーケース303に取り付けられたハウジング部306に収納されているとともに、プロペラシャフト部32の前端部の外周部分に配置されている。また、遊星歯車機構部35は、中間軸部材343の下流側に設けられており、中間軸部材343により駆動力が伝達されるように構成されているとともに、中間軸部材343の回転を減速してプロペラシャフト部32に伝達するように構成されている。なお、「下流側」とは、エンジン30の駆動力の伝達方向を示し、エンジン30側を上流側、プロペラ33側を下流側として定義する。上記「中間軸部材343の下流側」とは、駆動力の伝達方向でいうと、中間軸部材343よりもプロペラ33側のことである。
次に、遊星歯車機構部35の詳細な構造について説明する。本実施形態では、遊星歯車機構部35は、中間軸部材343が回転することに伴って回転中心軸線L1を中心に回転されるリングギヤ351と、ハウジング部306に固定された後述するシフトショック低減機構部36のステータ361に対して所定の角度分回動可能に保持されたサンギヤ352と、リングギヤ351およびサンギヤ352の両方に噛合された6つのプラネタリギヤ353と、プラネタリギヤ353を回転可能に支持するキャリア354とを含んでいる。なお、サンギヤ352は、本発明の「所定の歯車」の一例である。
リングギヤ351は、中間軸部材343の係合部343fと噛合されており、中間軸部材343が回転することに伴って回転されるように構成されている。また、リングギヤ351の内周部分から所定の間隔を隔てた位置には、サンギヤ352が配置されている。サンギヤ352は、プロペラシャフト部32の外周面を周状に囲むように配置されており、サンギヤ352の内周面とプロペラシャフト部32の外周面との間には、ベアリング355が配置されている。本実施形態では、サンギヤ352は、プラネタリギヤ353と係合しているギヤ部352aよりも後方に延びるように構成されており、サンギヤ352の後部分は、後述するシフトショック低減機構部36の一部を構成する。なお、サンギヤ352の後部分の構成は、シフトショック低減機構部36の構成を説明する際に、詳細に説明する。
また、図5に示すように、6つのプラネタリギヤ353は、それぞれ、リングギヤ351とサンギヤ352との間に配置されている。また、6つのプラネタリギヤ353は、それぞれ、軸部材356を中心にD1方向(前進方向)およびD2方向(後進方向)のいずれかに回転可能に構成されており、軸部材356とプラネタリギヤ353との間には、ベアリング357が配置されている。
上記のようにリングギヤ351、サンギヤ352および6つのプラネタリギヤ353を構成することによって、後述するシフトショック低減機構部36のステータ361(図4参照)に対して所定の角度分回動可能に保持されているサンギヤ352は回転しないので、リングギヤ351がB方向(船体2が前進するためのプラネタリギヤ353の回転方向:以下、単純に「前進方向」とする。)およびC方向(船体2が後進するためのプラネタリギヤ353の回転方向:以下、単純に「後進方向」とする。)のいずれか一方に回転されるのに伴って、6つのプラネタリギヤ353を、軸部材356を中心にD1方向(前進方向)およびD2方向(後進方向)のいずれか一方に移動させることが可能となる。この場合、6つのプラネタリギヤ353は、サンギヤ352の周りを回転中心軸線L1を中心にE1方向(前進方向)およびE2方向(後進方向)のいずれか一方に移動され、プラネタリギヤ353に挿入されている軸部材356は、それぞれ、プラネタリギヤ353と共に回転中心軸線L1を中心にE1方向(前進方向)およびE2方向(後進方向)のいずれか一方に移動される。
また、6つの軸部材356は、それぞれ、図4に示すように、回転中心軸線L1を中心に回転可能なキャリア354に固定されている。具体的には、キャリア354は、プロペラシャフト部32の前端部の外周面に取り付けられた筒状部354aと、筒状部354aの外周面に形成されたフランジ部354bと、軸部材356の矢印BWD方向側端部のフランジ部354cと、フランジ部354bとフランジ部354cとを結合する柱部354dとにより主に構成されている。そして、6つの軸部材356は、それぞれ、キャリア354のフランジ部354bおよびフランジ部354cに固定されている。これにより、6つの軸部材356がサンギヤ352の周りをE1方向(図5参照)(前進方向)およびE2方向(図5参照)(後進方向)のいずれか一方に移動される際に、フランジ部354bおよびフランジ部354cを介して、キャリア354をB方向(図4および図5参照)(前進方向)およびC方向(図4および図5参照)(後進方向)のいずれか一方に回転させることが可能となる。また、キャリア354の筒状部354aは、プロペラシャフト部32の外周面とスプライン嵌合されており、プロペラシャフト部32は、キャリア354がB方向(前進方向)およびC方向(後進方向)のいずれか一方に回転されると共に、B方向(前進方向)およびC方向(後進方向)のいずれか一方に回転される。
また、キャリア354の筒状部354aの後端部は、後方に移動しないように規制されている。具体的には、プロペラシャフト部32のキャリア354が嵌め込まれている部分の後端部には、段差部320aが形成されている。そして、キャリア354は、船体2(図1参照)の前進時に、プロペラシャフト部32がプロペラ33による推力によって矢印FWD方向の力が付与されるため、プロペラシャフト部32の段差部320aにより前方(矢印FWD方向)に押圧されるように構成されている。また、キャリア354のフランジ部354bと中間軸部材343のフランジ部343eとの間には、スラストベアリング358が配置されている。
上記のように遊星歯車機構部35を構成することによって、中間軸部材343の回転を減速してプロペラシャフト部32に伝達することが可能となる。なお、本実施形態による遊星歯車機構部35の減速比は、約1.55であり、ベベルギヤ310と前側ベベルギヤ341または後側ベベルギヤ342との噛合部分の減速比(約1.75)と、遊星歯車機構部35の減速比(約1.55)との両方の減速比は、約1.75×約1.55=約2.71である。
次に、シフトショック低減機構部36について詳細に説明する。図4に示すように、本実施形態では、シフトショック低減機構部36は、プラネタリギヤ353の後方に設けられており、上記したように後部分がシフトショック低減機構部36の一部であるサンギヤ352(遊星歯車機構部35)に入力される駆動力の衝撃を低減する機能を有する。つまり、シフトショック低減機構部36は、前後進切替機構部34によりプロペラシャフト部32に駆動力が入力される際の衝撃を低減する機能を有する。
具体的には、本実施形態では、サンギヤ352の後部分は、サンギヤ352のギヤ部352aから後方向に延びる円筒部352bと、円筒部352bの半径方向の外側に向かって突出するとともに、後述する圧縮コイルバネ363および364を支持する3つのバネ受部352c(図6参照)とを有している。また、サンギヤ352の後部分は、図6に示すように、回転中心軸線L1を中心にB方向およびC方向のいずれか一方に、所定の角度分だけ回動可能にステータ361の内部に収納されている。これにより、サンギヤ352全体を、回転中心軸線L1を中心にB方向およびC方向のいずれか一方に回動させることが可能となる。なお、ステータ361は、本発明の「保持部」の一例である。
また、本実施形態では、図4に示すように、ステータ361は、ハウジング部306に収納されている。ステータ361は、回転中心軸線L1と直交する方向に円板状に延びる円板部361aと、円板部361aの外周面から矢印FWD方向に延びる外周部361bと、外周部361bの矢印FWD方向側端部に設けられたフランジ部361cとから主に構成されている。円板部361aの中心部には、円形の貫通穴361dが形成されており、貫通穴361dには、プロペラシャフト部32が挿入されている。また、外周部361bおよびフランジ部361cは、それぞれ、ハウジング部306の内周面に対して嵌め込み可能に形成されている。そして、ステータ361は、ハウジング部306に対して移動しないように嵌め込まれている。
また、本実施形態では、図6に示すように、ステータ361の外周部361bの内周面には、サンギヤ352の円筒部352bに向かって突出する3つのバネ受部361eが設けられている。ステータ361のバネ受部361eとサンギヤ352のバネ受部352cとは、それぞれ、交互に配置されており、ステータ361のバネ受部361eとサンギヤ352のバネ受部352cとの間には、それぞれ、6箇所の空間362が形成されている。空間362は、ステータ361のバネ受部361eのB方向(サンギヤ352の周方向)側の面部361fとサンギヤ352のバネ受部352cのC方向(サンギヤ352の周方向)側の面部352dとの間に形成される一方側空間362aと、ステータ361のバネ受部361eのC方向側の面部361gとサンギヤ352のバネ受部352cのB方向側の面部352eとの間に形成される他方側空間362bとを含んでいる。
そして、一方側空間362aには、それぞれ、圧縮コイルバネ363がサンギヤ352(プロペラシャフト部32)の周方向(回転方向)に沿って配置されており、圧縮コイルバネ363は、ステータ361のバネ受部361eの面部361fに支持されているとともに、サンギヤ352のバネ受部352cの面部352dを付勢している。また、他方側空間362bには、それぞれ、サンギヤ352の周方向(プロペラシャフト部32の回転方向)に沿って圧縮コイルバネ364が配置されている。圧縮コイルバネ364は、ステータ361のバネ受部361eの面部361gに支持されているとともに、サンギヤ352のバネ受部352cの面部352eを付勢している。これにより、サンギヤ352にB方向側の回転トルク(衝撃)が付与されることによりサンギヤ352がB方向に回動された場合に、圧縮コイルバネ364がプロペラシャフト部32の周方向(回転方向)のB方向に圧縮されて衝撃が吸収されるように構成されている。また、サンギヤ352にC方向側の回転トルク(衝撃)が付与されることによりサンギヤ352がC方向に回動された場合に、圧縮コイルバネ363をプロペラシャフト部32の周方向(回転方向)のC方向に圧縮されて衝撃が吸収されるように構成されている。なお、圧縮コイルバネ363は、本発明の「バネ部材」および「第1圧縮コイルバネ」の一例であり、圧縮コイルバネ364は、本発明の「バネ部材」および「第2圧縮コイルバネ」の一例である。また、圧縮コイルバネ363と圧縮コイルバネ364とは、互いに異なるバネ定数を有している。
また、本実施形態では、サンギヤ352のバネ受部352cには、ステータ361の外周部361bに沿ってB方向およびC方向の両方向に延びるストッパ352fが形成されている。また、ステータ361の外周部361bの内周面には、ストッパ361hが形成されている。ストッパ352fとストッパ361hとは、所定の間隔を隔てて配置されており、サンギヤ352が回動された場合に、互いに当接するように構成されている。これにより、サンギヤ352が回動された場合にも、サンギヤ352を所定の角度よりも大きな角度回動することを規制することが可能となる。その結果、本実施形態のステータ361は、サンギヤ352を所定の角度分回動可能に構成することが可能である。なお、ストッパ352fおよびストッパ361hは、それぞれ、本発明の「ストッパ部」の一例である。
また、本実施形態では、図4に示すように、圧縮コイルバネ363および364が配置されている空間362の矢印FWD方向側には、円板状の蓋部材365が取り付けられている。具体的には、蓋部材365は、ステータ361の外周部361bの内周面側に係合されたサークリップ366と、サンギヤ352のバネ受部352cとの間に挟み込まれている。また、蓋部材365の6つの空間362に対応する位置には、それぞれ、オリフィス365aが形成されている。6つの空間362などのステータ361の内部、および、蓋部材365近傍などの遊星歯車機構部35近傍には、オイルが満たされており、6つのオリフィス365aは、それぞれ、各空間362の内部および蓋部材365近傍のオイルを流通可能に構成されている。
そして、オリフィス365aは、圧縮コイルバネ363および364のいずれか一方が圧縮される際に、圧縮された圧縮コイルバネ363または364が収納されている側の空間362のオイルを流出させる機能を有する。また、オリフィス365aは、圧縮コイルバネ363および364のいずれか一方が伸長される際に、伸長された圧縮コイルバネ363または364が収納されている側の空間362にオイルを流入させる機能を有する。このように各空間362の内部および蓋部材365近傍のオイルが各オリフィス365aを通過することによって、圧縮コイルバネ363および364が伸縮する力を減衰させることができる。
また、プロペラシャフト部32の前部には、オイル通路部320bが形成されている。このオイル通路部320bは、回転中心軸線L1に沿って後方に延びるメイン通路320cと、サンギヤ352の内周面とプロペラシャフト部32の外周面との間に設けられたベアリング355に対応する位置で、メイン通路320cから分岐する前側分岐通路320dと、前側分岐通路320dよりも後方でメイン通路320cから分岐する後側分岐通路320e(図3参照)とにより構成されている。前側分岐通路320dは、ベアリング355を介して遊星歯車機構部35およびシフトショック低減機構部36に対してオイルを供給する機能を有する。また、後側分岐通路320eは、図3に示すように、ロワーケース303の後端部でプロペラシャフト部32を支持するベアリング321に対してオイルを供給する機能を有する。
また、プロペラシャフト部32の後端部には、プロペラ33が配置されており、1枚のプロペラ33は、中間軸部材343の回転速度よりも減速されて回転するプロペラシャフト部32と共に回転可能にプロペラシャフト部32に対して取り付けられている。
次に、図2および図4〜図6を参照して、船外機3のドライブシャフト部31からプロペラ33までの駆動力の伝達経路について説明する。まず、船体2を前進させる際の駆動力の伝達経路について説明する。この場合、前側ベベルギヤ341のB方向への回転を中間軸部材343、遊星歯車機構部35およびプロペラシャフト部32を介してプロペラ33に伝達するために、ドッグクラッチ347の前側ドッグ347aは、係合されない中間位置から前側ベベルギヤ341のドッグ部341bに係合される。
図2に示すように、エンジン30が駆動することにより、クランク軸30aがA方向に回転されるのに伴って、ドライブシャフト部31は、A方向に回転される。そして、ドライブシャフト部31のA方向の回転は、図4に示すように、前側ベベルギヤ341および後側ベベルギヤ342に入力される。
ドライブシャフト部31がA方向に回転されるのに伴って、ドライブシャフト部31の下端部近傍に取り付けられたベベルギヤ310は、A方向に回転される。そして、ベベルギヤ310がA方向に回転されるのに伴って、前側ベベルギヤ341は、B方向に回転されるとともに、後側ベベルギヤ342は、C方向に回転される。ここで、ドッグクラッチ347と前側ベベルギヤ341とが係合されるのに伴って、前側ベベルギヤ341のB方向の回転は中間軸部材343に伝達され、中間軸部材343はB方向に回転される。
そして、中間軸部材343の係合部343fから、中間軸部材343のB方向の回転が遊星歯車機構部35に伝達される。具体的には、図5に示すように、中間軸部材343の係合部343fと遊星歯車機構部35のリングギヤ351とが噛合されているので、リングギヤ351は、B方向に回転される。この時、6つのプラネタリギヤ353は、それぞれ、D1方向に回転され、サンギヤ352は、6つのプラネタリギヤ353により、C方向の回転トルクが付与される。これにより、サンギヤ352に付与されたC方向の回転トルクは、シフトショック低減機構部36に伝達される。
図6に示すように、サンギヤ352のバネ受部352cは、圧縮コイルバネ363の反力に抗してC方向に回動され、サンギヤ352のストッパ352fがステータ361のストッパ361hに当接される。その結果、サンギヤ352のストッパ352fとステータ361のストッパ361hとが当接した安定した状態で、6つのプラネタリギヤ353により付与されるC方向の回転トルクを安定して吸収することが可能となる。また、6つのプラネタリギヤ353によりC方向の回転トルクがサンギヤ352に付与されるのに伴ってバネ受部352cがC方向に回動される場合に、圧縮コイルバネ363が収納されている空間362aに充満しているオイルがオリフィス365aから空間362aの外部に流出される。また、この時、圧縮コイルバネ364が収納されている空間362bにオリフィス365aを介してオイルが流入される。これにより、バネ受部352cがC方向に回動される際に、オリフィス365aにより、減衰力を発生させることが可能となる。また、オリフィス365aにオイルが流通することにより減衰力が発生されるとともに、圧縮コイルバネ363が圧縮されることによって、サンギヤ352に付与される衝撃(回転トルク)を低減することが可能となる。
そして、図5に示すように、6つのプラネタリギヤ353がそれぞれD1方向に回転されるのに伴って、6つのプラネタリギヤ353は、それぞれ、回転中心軸線L1を中心にE1方向に移動される。これにより、6つのプラネタリギヤ353を支持する6つの軸部材356も回転中心軸線L1を中心にE1方向に移動されるので、6つの軸部材356を固定するキャリア354(図4参照)は、6つの軸部材356により、回転中心軸線L1を中心にE1方向への力が付与される。その結果、キャリア354は、B方向に回転される。
キャリア354は、プロペラシャフト部32とスプライン嵌合されているので、プロペラシャフト部32は、キャリア354と共にB方向に回転される。この時、上記リングギヤ351からキャリア354までにおいて中間軸部材343の回転は減速されるので、プロペラシャフト部32の回転速度は、中間軸部材343の回転速度に比べて小さくなっている。そして、図2に示すように、プロペラシャフト部32とプロペラ33とは、一体的に回転するように構成されているので、プロペラシャフト部32がB方向に回転されるのに伴って、プロペラ33はB方向に回転される。これにより、船外機3は、前進方向の推力を発生させることが可能となる。
次に、図2および図4〜図6を参照して、船体2を後進させる際における船外機3のドライブシャフト部31からプロペラ33までの駆動力の伝達経路について説明する。この場合、後側ベベルギヤ342のC方向への回転を中間軸部材343、遊星歯車機構部35およびプロペラシャフト部32を介してプロペラ33に伝達するために、ドッグクラッチ347の後側ドッグ347bは、係合されない中間位置から後側ベベルギヤ342のドッグ部342bに係合されている。
ドライブシャフト部31がA方向に回転されるのに伴って、ドライブシャフト部31の下端部近傍に取り付けられたベベルギヤ310は、A方向に回転される。そして、ベベルギヤ310がA方向に回転されるのに伴って、前側ベベルギヤ341は、B方向に回転されるとともに、後側ベベルギヤ342は、C方向に回転される。ここで、ドッグクラッチ347と後側ベベルギヤ342とが係合されるのに伴って、後側ベベルギヤ342のC方向の回転は中間軸部材343に伝達され、中間軸部材343はC方向に回転される。
そして、中間軸部材343の係合部343fから、中間軸部材343のC方向の回転が遊星歯車機構部35に伝達される。具体的には、中間軸部材343の係合部343fと遊星歯車機構部35のリングギヤ351とが噛合されているので、リングギヤ351は、C方向に回転される。この時、6つのプラネタリギヤ353は、それぞれ、D2方向に回転され、サンギヤ352は、6つのプラネタリギヤ353により、B方向の回転トルクが付与される。これにより、サンギヤ352に付与されたB方向の回転トルクは、シフトショック低減機構部36に伝達される。
図6に示すように、サンギヤ352のバネ受部352cは、圧縮コイルバネ364の反力に抗してB方向に回動され、サンギヤ352のストッパ352fがステータ361のストッパ361hに当接される。その結果、サンギヤ352のストッパ352fとステータ361のストッパ361hとが当接した安定した状態で、6つのプラネタリギヤ353により付与されるB方向の回転トルクを安定して吸収することが可能となる。また、6つのプラネタリギヤ353によりB方向の回転トルクがサンギヤ352に付与されるのに伴ってバネ受部352cがB方向に回動される場合に、圧縮コイルバネ364が収納されている空間362bに充満しているオイルがオリフィス365aから空間362bの外部に流出される。また、この時、圧縮コイルバネ363が収納されている空間362aにオリフィス365aを介してオイルが流入される。これにより、バネ受部352cがB方向に回動される際に、オリフィス365aにより、減衰力を発生させることが可能となる。また、オリフィス365aにオイルが流通することにより減衰力が発生されるとともに、圧縮コイルバネ364が圧縮されることによって、サンギヤ352に付与される衝撃(回転トルク)を低減することが可能となる。
そして、図5に示すように、6つのプラネタリギヤ353がそれぞれD2方向に回転されるのに伴って、6つのプラネタリギヤ353は、それぞれ、回転中心軸線L1を中心にE2方向に移動される。これにより、6つのプラネタリギヤ353を支持する6つの軸部材356も回転中心軸線L1を中心にE2方向に移動されるので、6つの軸部材356を固定するキャリア354(図4参照)は、6つの軸部材356により、回転中心軸線L1を中心にE2方向への力が付与される。その結果、キャリア354は、C方向に回転される。
キャリア354は、プロペラシャフト部32とスプライン嵌合されているので、プロペラシャフト部32は、キャリア354と共にC方向に回転される。この時、上記リングギヤ351からキャリア354までにおいて中間軸部材343の回転は減速されるので、プロペラシャフト部32の回転速度は、中間軸部材343の回転速度に比べて小さくなっている。そして、図2に示すように、プロペラシャフト部32とプロペラ33とは、一体的に回転するように構成されているので、プロペラシャフト部32がB方向に回転されるのに伴って、プロペラ33はC方向に回転される。これにより、船外機3は、後進方向の推力を発生させることが可能となる。
本実施形態では、上記のように、前後進切替機構部34によりプロペラシャフト部32に駆動力が入力される際の衝撃を低減するとともに、プロペラシャフト部32の回転方向に沿って伸縮可能に配置されている圧縮コイルバネ363および364を含むシフトショック低減機構部36を設けることによって、前後進切替機構部34によりプロペラシャフト部32に駆動力が入力される際の回転方向(B方向またはC方向)の衝撃(回転トルク)を、プロペラシャフト部32の回転方向に沿って伸縮可能に配置されている圧縮コイルバネ363および364により直接的に吸収することができる。これにより、シフトショック低減機構部36に、互いにスライド可能に係合する歯など、回転方向(B方向またはC方向)の衝撃を吸収するために、力の方向を変換する機構を設ける必要がないので、力の方向を変換する機構がシフトショック低減機構部に設けられている場合と比べて、シフトショック低減機構部36の寿命を長くすることができる。また、シフトショック低減機構部36に、プロペラシャフト部32の回転方向に沿って伸縮可能に配置されている圧縮コイルバネ363および364を設けることによって、ゴムや樹脂などと比べて弾性変形量が大きい圧縮コイルバネ363および364により、圧縮コイルバネ363および364の伸縮ストローク分変形させながら回転方向の衝撃を吸収することができるので、プロペラシャフト部32に駆動力が入力される際の回転方向(B方向またはC方向)の衝撃を十分に和らげながら受け止めることができる。
また、本実施形態では、上記のように、シフトショック低減機構部36を、遊星歯車機構部35のサンギヤ352に入力される駆動力の衝撃を低減するように構成することによって、容易に、遊星歯車機構部35に入力される駆動力の衝撃を低減することに伴って、船外機3全体の衝撃を低減することができる。
また、本実施形態では、上記のように、圧縮コイルバネ363および364を、所定の角度分回動可能に保持されたサンギヤ352とステータ361との間にプロペラシャフト部32の回転方向に沿って伸縮可能に配置することによって、遊星歯車機構部35のサンギヤ352で受け止めた回転トルクの衝撃を、回転方向に沿って設けられた圧縮コイルバネ363および364により受け止めることができる。
また、本実施形態では、上記のように、シフトショック低減機構部36に、遊星歯車機構部35のサンギヤ352が所定の角度よりも大きな角度回動することを規制するストッパ352fおよび361hを設けることによって、圧縮コイルバネ363および364によりサンギヤ352を所定の角度分回動させながら回転トルクの衝撃を吸収した後、ストッパ352fおよび361hにより、サンギヤ352を所定の角度で保持することができるので、遊星歯車機構部35を安定した状態で駆動させることができる。
また、本実施形態では、上記のように、シフトショック低減機構部36に、圧縮コイルバネ363または364が圧縮される際に圧縮コイルバネ363および364が収納される空間362のオイルを流出させるとともに、圧縮コイルバネ363または364が伸長される際に圧縮コイルバネ363および364が収納される空間362にオイルを流入させるオリフィス365aを設けることによって、オリフィス365aにより、圧縮コイルバネ363および364の振動を減衰させることができる。
また、本実施形態では、上記のように、サンギヤ352に、半径方向の外側に向かって突出するとともに、サンギヤ352のB方向およびC方向の少なくともいずれか一方で圧縮コイルバネ363および364を支持するバネ受部352cを設けることによって、サンギヤ352に周方向に回動される衝撃が付与される場合に、圧縮コイルバネ363および364の伸縮する際の荷重を、サンギヤ352により直接的に吸収することができる。これにより、回動方向の衝撃を吸収するために、力の方向を変換する機構を設ける必要がない。
また、本実施形態では、上記のように、サンギヤ352のバネ受部352cのC方向側の面部352dに付勢する圧縮コイルバネ363と、サンギヤ352のバネ受部352cのB方向側の面部352eに付勢する圧縮コイルバネ364とを設けることによって、バネ受部352cの一方側(C方向側)および他方側(B方向側)の両方向の回動時に、サンギヤ352に付与される周方向(回転方向)の衝撃を、圧縮コイルバネ363および圧縮コイルバネ364により吸収することができる。
また、本実施形態では、上記のように、圧縮コイルバネ363および364を、互いに異なるバネ定数を有するように構成することによって、各圧縮コイルバネ363および364が共振することを抑制することができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、舶用推進ユニットの一例としてエンジンおよびプロペラが船体の外側に配置された2機の船外機を備えた例を示したが、本発明はこれに限らず、エンジンが船体に固定されたスタンドライブ、エンジンおよびプロペラが船体に固定された船内機などを備えた他の舶用推進ユニットにも適用可能である。また、船体に1機の船外機を取り付けてもよいし、3機以上の船外機を取り付けてもよい。
たとえば、上記実施形態では、シフトショック低減機構部を、遊星歯車機構部のサンギヤが受ける衝撃(回転トルク)を低減するように構成した例について示したが、本発明はこれに限らず、シフトショック低減機構部を、たとえば、リングギヤなど、サンギヤ以外のギヤが受ける衝撃(回転トルク)を低減するように構成してもよいし、前後進切替機構部など、遊星歯車機構部以外で衝撃(回転トルク)を低減するように構成してもよい。
また、上記実施形態では、圧縮コイルバネを6つ設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、圧縮コイルバネを5つ以下設けてもよいし、7つ以上設けてもよい。
また、上記実施形態では、シフトショック低減機構部に、バネ定数の異なる2種類の圧縮コイルバネを設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、すべて同一のバネ定数からなる圧縮コイルバネを設けてもよい。また、バネ定数の異なる3種類以上の圧縮コイルバネを設けてもよい。
また、上記実施形態では、遊星歯車機構部を、サンギヤを圧縮コイルバネを介して回動可能に保持し、駆動力の入力をリングギヤから行うとともに、駆動力の出力をキャリアから行うように構成した例について示したが、本発明はこれに限らず、遊星歯車機構部を、たとえば、リングギヤを回動可能に保持し、駆動力の入力をサンギヤから行うとともに、駆動力の出力をキャリアから行うように構成するなど、その他の駆動力の入力および出力経路を有する遊星歯車機構部により構成してもよい。
また、上記実施形態では、シフトショック低減機構部にオイルが流出しないように構成された空間を設け、空間内に圧縮コイルバネを設けるとともに空間内にオイルを出し入れするオリフィスを設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、シフトショック低減機構部にオイルが流出しないように構成された空間を設けずに、オイルダンパーが組み合わされた圧縮コイルバネを設けてもよい。
また、上記実施形態では、本発明のバネ部材に圧縮コイルバネを適用した例について示したが、本発明はこれに限らず、本発明のバネ部材に、板バネなど、圧縮コイルバネ以外のバネ部材を適用してもよい。