しかしながら、上記特許文献1に開示された船舶用推進装置(舶用推進ユニット)では、プロペラ軸に駆動力が入力される際の衝撃を低減するためには、駆動軸部に設けられた歯を被動軸部に設けられた歯に対してプロペラ軸の軸線に沿った方向に摺動しながらスライドさせる必要があるため、駆動軸部に設けられた歯と被動軸部に設けられた歯とが互いに磨耗する場合があるという不都合がある。このため、回転周方向の衝撃を低減する機構の寿命が短くなる場合があるという問題点がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、回転周方向の衝撃を低減する機構の寿命を長くすることが可能なショック低減機構および舶用推進ユニットを提供することである。
課題を解決するための手段および発明の効果
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面によるショック低減機構は、入力軸から出力軸への駆動力の伝達経路に設けられたショック低減機構であって、入力軸の第1方向および第2方向の回転に伴って、それぞれ、第3方向および第4方向の負荷がかかる負荷部と、負荷部による負荷を受ける負荷受部と、負荷部と負荷受部との間に設けられ、負荷部が第3方向の負荷を受ける場合および第4方向の負荷を受ける場合のいずれの場合であっても、出力軸の回転周方向上で圧縮されることによって衝撃を低減可能に配置されている複数のバネと、負荷受部に移動可能に収容され、複数のバネの各々の一方側に接触して支持する複数の第1バネ支持部が物理的に一体に設けられた第1収容部材と、負荷受部に移動可能に収容され、複数のバネの各々の他方側に接触して支持する複数の第2バネ支持部が物理的に一体に設けられているとともに、第1収容部材に対して相対的に回動されることにより複数のバネをそれぞれ伸縮可能な第2収容部材とを備え、第1収容部材は、負荷部が第3方向の負荷を受ける場合に、第2収容部材と近づくように第3方向に移動されるように構成されており、第2収容部材は、負荷部が第4方向の負荷を受ける場合に、第1収容部材と近づくように第4方向に移動されるように構成されている。
この第1の局面によるショック低減機構では、上記のように、負荷部と負荷受部との間に、負荷部が第3方向の負荷を受ける場合および第4方向の負荷を受ける場合のいずれの場合であっても、出力軸の回転周方向上で圧縮されることによって衝撃を低減可能に配置されている複数のバネを設けることによって、停止している状態から回転される際、または、回転方向が逆方向に変換される際の回転周方向の衝撃を、出力軸の回転周方向上で圧縮可能に配置されているバネにより直接的に吸収することができる。これにより、互いに摺動しながらスライド可能に係合する歯など、回転周方向の衝撃を吸収するために、力の方向を変換する機構を設ける必要がないので、回転周方向の衝撃を低減する機構の寿命を長くすることができる。また、第1収容部材が第3方向に移動された場合および第2収容部材が第4方向に移動された場合のいずれの場合であっても、複数のバネの各々を圧縮させることができる。これにより、負荷部に大きな衝撃が付与された場合にも、複数のバネの各々の反力により、効果的に回転周方向の衝撃を吸収することができる。
上記第1収容部材および第2収容部材を備えるショック低減機構において、好ましくは、第1収容部材および第2収容部材には、それぞれ、互いに近づく方向に移動された際に当接する第1当接部および第2当接部が設けられており、第1当接部および第2当接部が互いに当接することにより、バネが所定の圧縮量以上圧縮されないように構成されている。このように構成すれば、複数のバネにより衝撃を吸収する際に、バネが所定の圧縮量以上圧縮されることに起因してバネが破損するのを抑制することができる。
この場合において、好ましくは、出力軸は、複数のバネにより衝撃が低減された後、第1当接部と第2当接部とが当接した状態で、駆動するように構成されている。このように構成すれば、複数のバネによる衝撃の低減後は、第1収容部材と第2収容部材との当接により第1収容部材および第2収容部材の相対的な回転位置が互いに固定された状態で、出力軸に駆動力を伝達することができるので、出力軸の駆動回転を安定させることができる。
上記第1収容部材および第2収容部材を備えるショック低減機構において、好ましくは、負荷部は、負荷部が第3方向の負荷を受ける場合に、第1収容部材を第3方向に押圧するとともに、負荷部が第4方向の負荷を受ける場合に、第2収容部材を第4方向に押圧する押圧部を含む。このように構成すれば、押圧部により、容易に、第1収容部材および第2収容部材を負荷部が負荷を受けた方向に移動させることができる。
上記第1収容部材および第2収容部材を備えるショック低減機構において、好ましくは、負荷受部は、第1収容部材が第3方向に押圧された場合に、第2収容部材を支持するとともに、第2収容部材が第4方向に押圧された場合に、第1収容部材を支持する支持部を含む。このように構成すれば、支持部により、第1収容部材が負荷部により第3方向に押圧された場合に、第2収容部材が第1収容部材と共に第3方向に移動するのを抑制することができるとともに、第2収容部材が負荷部により第4方向に押圧された場合に、第1収容部材が第2収容部材と共に第4方向に移動するのを抑制することができる。
上記第1の局面によるショック低減機構において、好ましくは、負荷部は、入力軸から出力軸への伝達経路に設けられる遊星歯車機構部の入力ギヤおよび出力ギヤ以外のギヤを含み、負荷受部は、入力ギヤおよび出力ギヤ以外のギヤに対してバネを介して接続するとともに、固定的に設置されたハウジング部を含む。このように構成すれば、入力ギヤおよび出力ギヤ以外のギヤとハウジング部との間に設けられたバネにより、入力ギヤおよび出力ギヤ以外のギヤに付与される衝撃が直接的にハウジング部に伝達されるのを抑制することができる。
上記第1の局面によるショック低減機構において、好ましくは、負荷部は、入力軸に設けられ、入力軸と一体的に回転するように構成され、負荷受部は、負荷部に対してバネを介して接続するように、出力軸に設けられ、出力軸と一体的に回転するように構成されている。このように構成すれば、負荷部と負荷受部との間に配置されたバネにより、入力軸に付与される衝撃が直接的に出力軸に伝達されるのを抑制することができる。
上記第1の局面によるショック低減機構において、好ましくは、バネは、圧縮コイルバネを含み、圧縮コイルバネは、出力軸の回転周方向上で伸縮可能に配置されている。このように構成すれば、圧縮コイルバネを用いることにより、出力軸の回転周方向上で伸縮可能なストロークを大きくすることができる。
この発明の第2の局面による舶用推進ユニットは、エンジンと、エンジンの下方に延びるとともに、エンジンの回転力を下方に伝達するドライブシャフト部と、エンジンの駆動力を出力し、ドライブシャフト部と交差する方向に延びるプロペラシャフト部と、プロペラシャフト部と共に回転されるプロペラと、船体を前方および後方のいずれか一方に推進させるためにプロペラシャフト部の回転方向を変換するように構成された前後進切替機構部と、前後進切替機構部からの回転力が入力される入力軸と、入力軸の第1方向および第2方向の回転に伴って、それぞれ、第3方向および第4方向の負荷がかかるサンギヤを含む遊星歯車機構部と、サンギヤによる負荷を受ける固定的に設置されたハウジング部と、サンギヤとハウジング部との間に設けられ、サンギヤが第3方向の負荷を受ける場合および第4方向の負荷を受ける場合のいずれの場合であっても、プロペラシャフト部の回転周方向上で圧縮されることによって衝撃を低減可能に配置されている複数のバネ部材とを含むショック低減機構とを備える。
この第2の局面による舶用推進ユニットでは、上記のように、サンギヤとハウジング部との間に、サンギヤが第3方向の負荷を受ける場合および第4方向の負荷を受ける場合のいずれの場合であっても、プロペラシャフト部の回転周方向上で圧縮されることによって衝撃を低減可能に配置されている複数のバネ部材を含むショック低減機構を設けることによって、停止している状態から回転される際、または、回転方向が逆方向に変換される際の回転周方向の衝撃を、プロペラシャフト部の回転周方向上で圧縮可能に配置されているバネ部材により直接的に吸収することができる。これにより、互いに摺動しながらスライド可能に係合する歯など、回転周方向の衝撃を吸収するために、力の方向を変換する機構を設ける必要がないので、回転周方向の衝撃を低減する機構の寿命を長くすることができる。
上記第2の局面による舶用推進ユニットにおいて、好ましくは、ショック低減機構は、ハウジング部に収容され、複数のバネ部材の各々の一方側を支持する第1収容部材と、ハウジング部に収容され、複数のバネ部材の各々の他方側を支持するとともに、第1収容部材に対して相対的に回動されることにより複数のバネ部材をそれぞれ伸縮可能な第2収容部材とをさらに含み、第1収容部材は、サンギヤが第3方向の負荷を受ける場合に、第2収容部材と近づくように第3方向に移動されるように構成されており、第2収容部材は、サンギヤが第4方向の負荷を受ける場合に、第1収容部材と近づくように第4方向に移動されるように構成されている。このように構成すれば、第1収容部材が第3方向に移動された場合および第2収容部材が第4方向に移動された場合のいずれの場合であっても、複数のバネ部材の各々を圧縮させることができる。これにより、サンギヤに大きな衝撃が付与された場合にも、複数のバネ部材の各々の反力により、効果的に回転周方向の衝撃を吸収することができる。
この場合において、好ましくは、第1収容部材および第2収容部材には、それぞれ、互いに近づく方向に移動された際に当接する第1当接部および第2当接部が設けられており、第1当接部および第2当接部が互いに当接することにより、バネ部材が所定の圧縮量以上圧縮されないように構成されている。このように構成すれば、複数のバネ部材により衝撃を吸収する際に、バネ部材が所定の圧縮量以上圧縮されることに起因してバネ部材が破損するのを抑制することができる。また、この発明の第3の局面による舶用推進ユニットは、エンジンと、エンジンからの回転力が入力される入力軸と、入力軸から出力軸への駆動力の伝達経路に設けられたショック低減機構とを備え、ショック低減機構は、入力軸の第1方向および第2方向の回転に伴って、それぞれ、第3方向および第4方向の負荷がかかる負荷部と、負荷部による負荷を受ける負荷受部と、負荷部と負荷受部との間に設けられ、負荷部が第3方向の負荷を受ける場合および第4方向の負荷を受ける場合のいずれの場合であっても、出力軸の回転周方向上で圧縮されることによって衝撃を低減可能に配置されている複数のバネと、負荷受部に移動可能に収容され、複数のバネの各々の一方側に接触して支持する複数の第1バネ支持部が物理的に一体に設けられた第1収容部材と、負荷受部に移動可能に収容され、複数のバネの各々の他方側に接触して支持する複数の第2バネ支持部が物理的に一体に設けられているとともに、第1収容部材に対して相対的に回動されることにより複数のバネをそれぞれ伸縮可能な第2収容部材とを含み、第1収容部材は、負荷部が第3方向の負荷を受ける場合に、第2収容部材と近づくように第3方向に移動されるように構成されており、第2収容部材は、負荷部が第4方向の負荷を受ける場合に、第1収容部材と近づくように第4方向に移動されるように構成されている。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図10を参照して、本発明の第1実施形態によるシフトショック低減機構部16を船外機1に適用した構成について説明する。なお、図中、FWDは、前進方向を示しており、BWDは、後進方向を示している。なお、船外機1は、本発明の「舶用推進ユニット」の一例である。
第1実施形態による船外機1は、図1に示すように、エンジン10と、エンジン10の下方に延びるとともに、エンジン10の駆動力を下方に伝達するドライブシャフト部11と、エンジン10の駆動力を出力し、ドライブシャフト部11と直交(交差)する方向に延びるプロペラシャフト部12と、プロペラシャフト部12と共に回転されるプロペラ13とを含んでいる。また、船外機1は、さらに、船体(図示せず)を前方(矢印FWD方向)および後方(矢印BWD方向)のいずれか一方に推進させるためにプロペラシャフト部12の回転方向を変換するように構成された前後進切替機構部14と、プロペラシャフト部12の回転中心軸線L1上に配置され、プロペラシャフト部12の回転を減速する遊星歯車機構部15とを含んでいる。なお、プロペラシャフト部12は、本発明の「出力軸」の一例である。
エンジン10は、ケース部100のカウリング101に収納されている。エンジン10には、軸線L2を中心にA方向に回転するクランク軸10aが設けられている。また、クランク軸10aには、ドライブシャフト部11の上側部分が接続されている。このドライブシャフト部11は、軸線L2上に配置されているとともに、クランク軸10aと共にA方向に回転するように構成されている。また、ドライブシャフト部11は、ケース部100のアッパーケース102およびロワーケース103に収納されている。
ドライブシャフト部11の下端部には、図2に示すように、ベベルギヤ110がドライブシャフト部11と共にA方向に回転するように取り付けられている。なお、第1実施形態では、A方向は、平面的に見た場合の時計回り方向である。また、このベベルギヤ110は、前後進切替機構部14に駆動力を伝達するように構成されている。具体的には、前後進切替機構部14は、矢印FWD方向の下側に配置された前側ベベルギヤ141と、矢印BWD方向の下側に配置された後側ベベルギヤ142とを含んでいる。そして、ベベルギヤ110は、前側ベベルギヤ141の歯車部141aと噛合されているとともに、矢印BWD方向の下側に配置された後側ベベルギヤ142の歯車部142aと噛合されている。
前側ベベルギヤ141は、ベベルギヤ110がA方向に回転されるのに伴って、プロペラシャフト部12の回転中心軸線L1を中心にB方向に回転されるように構成されている。ベベルギヤ110と前側ベベルギヤ141とのギヤ比は約1.75であり、ベベルギヤ110の回転は、減速されて前側ベベルギヤ141に伝達される。また、後側ベベルギヤ142は、ベベルギヤ110がA方向に回転されるのに伴って、プロペラシャフト部12の回転中心軸線L1を中心にB方向とは反対方向のC方向に回転されるように構成されている。ベベルギヤ110と後側ベベルギヤ142とのギヤ比は、ベベルギヤ110と前側ベベルギヤ141とのギヤ比と同様に約1.75であり、ベベルギヤ110の回転は、減速されて後側ベベルギヤ142に伝達される。また、第1実施形態では、B方向は、プロペラシャフト部12を船外機1の前方側(矢印FWD方向側)から見た場合の反時計回り方向であり、本発明の「第1方向」および「第4方向」の一例である。また、C方向は、プロペラシャフト部12を船外機1の前方側から見た場合の時計回り方向であり、本発明の「第2方向」および「第3方向」の一例である。
前側ベベルギヤ141は、テーパベアリング(円錐ころ軸受)からなるベアリング104に嵌め込まれている。このベアリング104は、ロワーケース103に固定されており、前側ベベルギヤ141が回転中心軸線L1を中心に回転された場合にも、前側ベベルギヤ141を安定して支持することが可能なように構成されている。また、前側ベベルギヤ141の歯車部141aの回転中心軸線L1側の部分には、後述するドッグクラッチ147の前側ドッグ147aに対して係合および離間可能なドッグ部141bが設けられている。
また、後側ベベルギヤ142は、ベアリング105に嵌め込まれている。このベアリング105は、ハウジング部106を介してロワーケース103に固定されており、後側ベベルギヤ142が回転中心軸線L1を中心に回転された際にも、後側ベベルギヤ142を安定して支持することが可能なように構成されている。また、後側ベベルギヤ142の歯車部142aの回転中心軸線L1側の部分には、後述するドッグクラッチ147の後側ドッグ147bに対して係合および離間可能なドッグ部142bが設けられている。
また、ベベルギヤ110の下方には、前側ベベルギヤ141または後側ベベルギヤ142を介してドライブシャフト部11からの回転力が入力される中間軸部材143が回転中心軸線L1を中心に回転可能に配置されている。なお、中間軸部材143は、本発明の「入力軸」の一例である。中間軸部材143の前端部は、前側ベベルギヤ141の回転中心軸線L1に沿った開口穴141cに挿入されている。中間軸部材143は、前側ベベルギヤ141に対して空転するように配置されている。また、中間軸部材143の後側部分は、後側ベベルギヤ142の回転中心軸線L1に沿った開口穴142cに挿入されている。また、中間軸部材143は、後側ベベルギヤ142に対しても空転するように配置されている。
また、中間軸部材143の矢印FWD方向側には、回転中心軸線L1に沿った挿入穴143aが形成されている。また、中間軸部材143の外周面には、挿入穴143aと直交する貫通穴143bが形成されている。貫通穴143bは、前後方向(矢印FWD方向および矢印BWD方向)に長手方向を有する長穴状に形成されている。
中間軸部材143の回転中心軸線L1に沿った挿入穴143aには、円筒形状のスライド部材145が前後方向(矢印FWD方向および矢印BWD方向)にスライド可能に挿入されている。また、スライド部材145の貫通穴143bに対応する部分には、棒状の連結部材146がスライド部材145と直交するように取り付けられている。この連結部材146は、貫通穴143bに沿って延びるように配置されているとともに、中間軸部材143の外周面よりも外側に突出するように配置されている。また、連結部材146は、スライド部材145と固定されているので、スライド部材145が挿入穴143aに沿って前後方向(矢印FWD方向および矢印BWD方向)にスライドされると共に貫通穴143bを前後方向にスライドされるように構成されている。
連結部材146の両端部には、ドッグクラッチ147が固定されている。ドッグクラッチ147は、中間軸部材143の外周面とスプライン係合されており、連結部材146と共に回転中心軸線L1を中心に回転するとともに前後方向にスライド可能に構成されている。
ドッグクラッチ147の矢印FWD方向側の端部には、前側ドッグ147aが設けられているとともに、ドッグクラッチ147の矢印BWD方向側の端部には、後側ドッグ147bが設けられている。そして、ドッグクラッチ147は、矢印FWD方向にスライドされることによって、前側ドッグ147aが前側ベベルギヤ141のドッグ部141bと係合されるように構成されている。これに対して、ドッグクラッチ147は、矢印BWD方向にスライドされることによって、後側ドッグ147bが後側ベベルギヤ142のドッグ部142bに係合されるように構成されている。つまり、ドッグクラッチ147は、前側ベベルギヤ141に係合された場合には、前側ベベルギヤ141の回転中心軸線L1を中心としたB方向(前進するためのプロペラ13(図1参照)の回転方向:以下、単純に「前進方向」とする。)の回転トルクを、中間軸部材143に伝達する機能を有する。その一方、ドッグクラッチ147は、後側ベベルギヤ142に係合された場合には、後側ベベルギヤ142の回転中心軸線L1を中心としたC方向(後進するためのプロペラ13(図1参照)の回転方向:以下、単純に「後進方向」とする。)の回転トルクを、中間軸部材143に伝達する機能を有する。なお、ドッグクラッチ147が前側ベベルギヤ141および後側ベベルギヤ142の両方に係合されない中間位置に位置する場合には、ベベルギヤ110の駆動力は、中間軸部材143に伝達されない。
また、スライド部材145の前端部には、連結部材148が係合されている。連結部材148は、スライド部材145を前後方向に移動させることにより、ドッグクラッチ147を前後方向に移動させる機能を有する。具体的には、連結部材148には、前後進切替レバー149の凸部149aが係合されている。そして、連結部材148は、前後進切替レバー149が軸線L3(図2参照)を中心に回動されるのに伴って凸部149aが前後方向に移動されることにより、前後方向に移動可能に構成されている。これにより、スライド部材145を、前後方向に移動することが可能となる。
また、図3に示すように、中間軸部材143の後端部近傍の回転中心軸線L1側には、プロペラシャフト部12の前端部、および、プロペラシャフト部12に取り付けられた後述する遊星歯車機構部15のキャリア154の前端部を挿入可能な凹部143cが設けられている。凹部143cは、周状の内周面を有しており、凹部143cの内周面には、ブッシュ107が配置されている。ブッシュ107は、遊星歯車機構部15のキャリア154の振れ止めの機能を有する。
また、凹部143cの底部分(矢印FWD方向側部分)には、挿入穴143aと接続されるオイル通路部143dが回転中心軸線L1と同軸上に形成されている。オイル通路部143dは、プロペラシャフト部12のオイル通路部120aを介して、遊星歯車機構部15の後述するシフトショック低減機構部16などにオイルを供給する機能を有する。
また、中間軸部材143の後端部の外周部分には、中間軸部材143が延びる方向(矢印FWD方向および矢印BWD方向)と交差する方向に延びるフランジ部143eが設けられている。また、フランジ部143eには、その外周部分に周状に形成された係合部143fが形成されている。この係合部143fは、後述する遊星歯車機構部15のリングギヤ151と噛合して、中間軸部材143の回転を遊星歯車機構部15に伝達する機能を有する。
遊星歯車機構部15は、ロワーケース103に取り付けられたハウジング部106に収納されているとともに、プロペラシャフト部12の前端部の外周部分に配置されている。また、遊星歯車機構部15は、中間軸部材143により駆動力が伝達されるように構成されているとともに、中間軸部材143の回転を減速してプロペラシャフト部12に伝達するように構成されている。
次に、遊星歯車機構部15の詳細な構造について説明する。第1実施形態では、遊星歯車機構部15は、中間軸部材143が回転することに伴って回転中心軸線L1を中心に回転されるリングギヤ151と、中間軸部材143のB方向およびC方向の回転に伴って、それぞれ、C方向およびB方向の負荷を受けるサンギヤ152と、リングギヤ151およびサンギヤ152の両方に噛合された6つのプラネタリギヤ153と、プラネタリギヤ153を回転可能に支持するキャリア154とを含んでいる。なお、リングギヤ151は、本発明の「入力ギヤ」の一例であり、サンギヤ152は、本発明の「入力ギヤおよび出力ギヤ以外のギヤ」および「負荷部」の一例である。また、プラネタリギヤ153は、本発明の「出力ギヤ」の一例である。また、第1実施形態の遊星歯車機構部15は、サンギヤ152が回転しないように構成され、リングギヤ151から駆動力が入力されるとともに、プラネタリギヤ153を支持するキャリア154から出力される遊星歯車機構部である。
リングギヤ151は、中間軸部材143の係合部143fと噛合されており、中間軸部材143が回転することに伴って回転されるように構成されている。また、リングギヤ151の内周部分から所定の間隔を隔てた位置には、サンギヤ152が配置されている。サンギヤ152は、プロペラシャフト部12の外周面を周状に囲むように配置されており、後述するシフトショック低減機構部16に所定の角度分回動可能に保持されている。サンギヤ152の内周面とプロペラシャフト部12の外周面との間には、ベアリング155が配置されている。第1実施形態では、サンギヤ152は、プラネタリギヤ153と係合しているギヤ部152aよりも後方に延びるように構成されており、サンギヤ152の後部分は、後述するシフトショック低減機構部16の一部を構成する。なお、サンギヤ152の後部分の構成は、シフトショック低減機構部16の構成を説明する際に、詳細に説明する。
また、図4に示すように、6つのプラネタリギヤ153は、それぞれ、リングギヤ151とサンギヤ152との間に配置されている。また、6つのプラネタリギヤ153は、それぞれ、軸部材156を中心にD1方向(前進方向)およびD2方向(後進方向)のいずれかに回転可能に構成されており、軸部材156とプラネタリギヤ153との間には、ベアリング157が配置されている。これにより、サンギヤ152は、中間軸部材143がB方向に回転された場合に、遊星歯車機構部15のプラネタリギヤ153がD1方向に回転されるのに伴ってC方向の負荷がかかるように構成されている。また、サンギヤ152は、中間軸部材143がC方向に回転された場合に、遊星歯車機構部のプラネタリギヤ153がD2方向に回転されるのに伴ってB方向の負荷がかかるように構成されている。
上記のようにリングギヤ151、サンギヤ152および6つのプラネタリギヤ153を構成することによって、後述するシフトショック低減機構部16に対して所定の角度分回動可能に保持されているサンギヤ152は回転しないので、リングギヤ151がB方向(前進するためのプラネタリギヤ153の回転方向:以下、単純に「前進方向」とする。)およびC方向(後進するためのプラネタリギヤ153の回転方向:以下、単純に「後進方向」とする。)のいずれか一方に回転されるのに伴って、6つのプラネタリギヤ153を、軸部材156を中心にD1方向(前進方向)およびD2方向(後進方向)のいずれか一方に移動させることが可能となる。この場合、6つのプラネタリギヤ153は、サンギヤ152の周りを回転中心軸線L1を中心にE1方向(前進方向)およびE2方向(後進方向)のいずれか一方に移動され、プラネタリギヤ153に挿入されている軸部材156は、それぞれ、プラネタリギヤ153と共に回転中心軸線L1を中心にE1方向(前進方向)およびE2方向(後進方向)のいずれか一方に移動される。
また、6つの軸部材156は、それぞれ、図3および図5に示すように、回転中心軸線L1を中心に回転可能なキャリア154に固定されている。具体的には、キャリア154は、プロペラシャフト部12の前端部の外周面に取り付けられた筒状部154aと、筒状部154aの外周面に形成されたフランジ部154bと、軸部材156(図3参照)の矢印BWD方向側端部のフランジ部154cと、フランジ部154bとフランジ部154cとを結合する柱部154d(図5参照)とにより主に構成されている。そして、6つの軸部材156は、図3に示すように、それぞれ、キャリア154のフランジ部154bおよびフランジ部154cに固定されている。これにより、6つの軸部材156がサンギヤ152の周りをE1方向(図4参照)(前進方向)およびE2方向(図4参照)(後進方向)のいずれか一方に移動される際に、フランジ部154bおよびフランジ部154cを介して、キャリア154をB方向(図3および図4参照)(前進方向)およびC方向(図3および図4参照)(後進方向)のいずれか一方に回転させることが可能となる。また、キャリア154の筒状部154aは、プロペラシャフト部12の外周面とスプライン嵌合されており、プロペラシャフト部12は、キャリア154がB方向(前進方向)およびC方向(後進方向)のいずれか一方に回転されると共に、B方向(前進方向)およびC方向(後進方向)のいずれか一方に回転される。
次に、シフトショック低減機構部16について詳細に説明する。なお、シフトショック低減機構部16は、本発明の「ショック低減機構」の一例である。図3に示すように、第1実施形態では、シフトショック低減機構部16は、プラネタリギヤ153の後方に設けられており、サンギヤ152がB方向の負荷を受ける場合およびC方向の負荷を受ける場合のいずれの場合であっても、サンギヤ152(遊星歯車機構部15)に入力される駆動力の衝撃を低減する機能を有する。つまり、シフトショック低減機構部16は、前後進切替機構部14によりプロペラシャフト部12に駆動力が入力される際の衝撃を低減する機能を有する。また、シフトショック低減機構部16は、上記したように中間軸部材143からプロペラシャフト部12への駆動力の伝達経路に設けられている。
具体的には、第1実施形態では、シフトショック低減機構部16は、図6に示すように、中間軸部材143(図3参照)のB方向およびC方向の回転に伴って、それぞれ、C方向およびB方向の負荷がかかるサンギヤ152のギヤ部152a(図3参照)から後方向に延びる円筒部152bと、円筒部152bからの負荷を受けるハウジング部161と、円筒部152bとハウジング部161との間に設けられた圧縮コイルバネからなる5つのバネ部材162とにより構成されている。なお、ハウジング部161は、本発明の「負荷受部」の一例である。また、シフトショック低減機構部16は、さらに、ハウジング161に収容され、5つのバネ部材162の各々の一方側を支持する一方側収容部材163と、ハウジング161に収容され、5つのバネ部材162の各々の他方側を支持する他方側収容部材164とにより構成されている。なお、一方側収容部材163は、本発明の「第2収容部材」の一例であり、他方側収容部材164は、本発明の「第1収容部材」の一例である。
シフトショック低減機構部16のハウジング部161は、図3および図7に示すように、矢印FWD方向に開口する円環状の溝形状に形成されている。また、ハウジング部161の外周部分には、図7に示すように、複数の突起部161aが形成されており、突起部161aは、ハウジング部106(図3参照)に係合されている。また、ハウジング部161の溝部161bには、図6および図7に示すように、一方側収容部材163(図6および図8参照)がB方向に移動するのを規制してバネ部材162(図6参照)の荷重を支持するとともに、他方側収容部材164(図6および図9参照)がC方向に移動するのを規制してバネ部材162(図6参照)の荷重を支持する複数の支持部161cが設けられている。複数の支持部161cは、それぞれ、溝部161bの内周面から傾斜するように回転中心軸線L1に向かって突出する形状を有している。この複数の支持部161cの一方側傾斜面161dは、一方側収容部材163を支持するとともに、他方側傾斜面161eは、他方側収容部材164を支持する機能を有する。また、ハウジング部161の内周部には、ベアリング155を介してプロペラシャフト部12が挿入されている。
ハウジング部161の溝部161bには、図6に示すように、他方側収容部材164(図6および図9参照)が収容されている。他方側収容部材164は、ハウジング部161に対してB方向およびC方向に回動可能に配置されている。また、他方側収容部材164には、図6および図9に示すように、5つのバネ部材162(図6参照)の各々のC方向側を支持するC方向側収容部164aが設けられている。これらC方向側収容部164aのB方向側部分には、それぞれ、平坦面状の当接部164bが形成されている。なお、当接部164bは、それぞれ、本発明の「第1当接部」の一例である。これら当接部164bは、それぞれ、後述する一方側収容部材163のB方向側収容部163a(図6参照)とC方向側収容部164aとが互いに近づく方向に移動された際に、後述する一方側収容部材163の当接部163b(図6参照)と当接するように構成されている。また、C方向側収容部164aのC方向側部分には、後述するサンギヤ152の突起部152c(図6および図10参照)がB方向に移動される際の荷重(負荷)を受ける荷重受部164cが設けられている。
また、図6に示すように、ハウジング部161の溝部161bの半径方向の中心側の部分には、サンギヤ152の円筒部152bが収容されている。サンギヤ152の円筒部152bには、図6に示すように、半径方向の外側に向かって延びる5つの突起部152cが形成されている。これら5つの突起部152cは、それぞれ、サンギヤ152にB方向およびC方向の負荷が付与されていない場合に、ハウジング部161の支持部161cの頂点部161fと対向するように配置されている。また、これらサンギヤ152の突起部152cは、サンギヤ152がB方向の負荷を受ける場合に、他方側収容部材164をB方向に押圧するとともに、サンギヤ152がC方向の負荷を受ける場合に、一方側収容部材163をC方向に押圧するように構成されている。
また、ハウジング部161の溝部161bには、図3に示すように、さらに、他方側収容部材164およびサンギヤ152の円筒部152bの矢印FWD方向側から一方側収容部材163が収容されている。一方側収容部材163は、図6に示すように、ハウジング部161に対してB方向およびC方向に回動可能に配置されている。また、一方側収容部材163には、図6および図8に示すように、5つのバネ部材162の各々のB方向側を支持するB方向側収容部163aが設けられている。これらB方向側収容部163aのC方向側部分には、それぞれ、平坦面状の当接部163bが形成されている。なお、当接部163bは、本発明の「第2当接部」の一例である。これら当接部163bは、それぞれ、他方側収容部材164のC方向側収容部164a(図6参照)とB方向側収容部163aとが互いに近づく方向に移動された際に、他方側収容部材164の当接部164b(図6参照)と当接するように構成されている。また、B方向側収容部163aのB方向側部分には、サンギヤ152の突起部152c(図6参照)がC方向に移動される際の荷重(負荷)を受ける荷重受部163cが設けられている。
また、第1実施形態では、図6に示すように、上記したように、5つのバネ部材162は、それぞれ、一方側収容部材163のB方向側収容部163aおよび他方側収容部材164のC方向側収容部164aの両方に付勢するように収容されている。そして、一方側収容部材163と他方側収容部材164とが相対的にB方向またはC方向に回動された場合に、5つのバネ部材162を、それぞれ、伸縮することが可能となる。また、5つのバネ部材162は、図6および図7に示すように、それぞれ、ハウジング部161の外周部に設けられたバネ挿入穴161gからB方向側収容部163a(図6参照)およびC方向側収容部164a(図6参照)に挿入されている。
また、図3に示すように、ハウジング部161の矢印FWD方向側には、一方側収容部材163の矢印FWD方向側に設けられた円板部163dが配置されている。円板部163dは、ハウジング部161の溝部161bの内周面側に係合されたサークリップ165と、サンギヤ152の円筒部152bの外周面側に係合されたサークリップ166とにより矢印BWD方向に向かって支持されている。
また、プロペラシャフト部12の前部には、オイル通路部120aが形成されている。このオイル通路部120aは、ベアリング155を介して遊星歯車機構部15およびシフトショック低減機構部16に対してオイルを供給する機能を有する。また、オイル通路部120aは、図2に示すように、ロワーケース103の後部でプロペラシャフト部12を支持するベアリング121に対してオイルを供給する機能を有する。
また、プロペラシャフト部12の後端部には、プロペラ13が配置されており、プロペラ13は、中間軸部材143の回転速度よりも減速されて回転するプロペラシャフト部12と共に回転可能にプロペラシャフト部12に対して取り付けられている。
次に、図1〜図4、図6および図11を参照して、船外機1のドライブシャフト部11からプロペラ13までの駆動力の伝達経路およびシフトショック低減機構部16の動作について説明する。まず、前進させる場合について説明する。この場合、前側ベベルギヤ141のB方向への回転を中間軸部材143、遊星歯車機構部15およびプロペラシャフト部12を介してプロペラ13に伝達するために、ドッグクラッチ147の前側ドッグ147aは、係合されない中間位置から前側ベベルギヤ141のドッグ部141bに係合される。
図1に示すように、エンジン10が駆動することにより、クランク軸10aがA方向に回転されるのに伴って、ドライブシャフト部11は、A方向に回転される。そして、ドライブシャフト部11のA方向の回転は、図2に示すように、前側ベベルギヤ141および後側ベベルギヤ142に入力される。
具体的には、ドライブシャフト部11がA方向に回転されるのに伴って、ドライブシャフト部11の下端部近傍に取り付けられたベベルギヤ110は、A方向に回転される。そして、ベベルギヤ110がA方向に回転されるのに伴って、前側ベベルギヤ141は、B方向に回転されるとともに、後側ベベルギヤ142は、C方向に回転される。ここで、ドッグクラッチ147と前側ベベルギヤ141とが係合されるのに伴って、前側ベベルギヤ141のB方向の回転は中間軸部材143に伝達され、中間軸部材143はB方向に回転される。
そして、中間軸部材143の係合部143fから、中間軸部材143のB方向の回転が遊星歯車機構部15に伝達される。具体的には、図3に示すように、中間軸部材143の係合部143fと遊星歯車機構部15のリングギヤ151とが噛合されているので、リングギヤ151は、B方向に回転される。この時、図4に示すように、6つのプラネタリギヤ153は、それぞれ、D1方向に回転され、サンギヤ152は、6つのプラネタリギヤ153により、C方向の回転トルクが付与される。これにより、サンギヤ152に付与されたC方向の回転トルクが、シフトショック低減機構部16に伝達される。これにより、図11に示すように、サンギヤ152の5つの突起部152cは、C方向に回転される。
そして、サンギヤ152の突起部152cは、一方側収容部材163の荷重受部163cをC方向に押圧するので、一方側収容部材163は、C方向に回転され、B方向側収容部163aは、C方向に移動される。この時、他方側収容部材164は、支持部161cの他方側傾斜面161eによりC方向に回転されるのが規制されているので、5つのバネ部材162は、それぞれ、C方向側収容部164aに支持された状態で、B方向側収容部163aによりC方向に圧縮される。これにより、サンギヤ152に付与された衝撃を低減することが可能となる。また、C方向に回転された一方側収容部材163の当接部163bは、他方側収容部材164の当接部164bに当接される。これにより、サンギヤ152に付与された衝撃をバネ部材162により低減した後、サンギヤ152を、当接部164bおよび163bが互いに当接した安定した位置に留めることが可能となる。その結果、当接部164bおよび163bが互いに当接した安定した状態で、遊星歯車機構部15およびプロペラシャフト部12は駆動される。
そして、図4に示すように、6つのプラネタリギヤ153がそれぞれD1方向に回転されるのに伴って、6つのプラネタリギヤ153は、それぞれ、回転中心軸線L1を中心にE1方向に移動される。これにより、6つのプラネタリギヤ153を支持する6つの軸部材156も回転中心軸線L1を中心にE1方向に移動されるので、6つの軸部材156を固定するキャリア154(図3参照)は、6つの軸部材156により、回転中心軸線L1を中心にE1方向への力が付与される。その結果、キャリア154は、B方向に回転される。
キャリア154は、プロペラシャフト部12とスプライン嵌合されているので、プロペラシャフト部12は、キャリア154と共にB方向に回転される。この時、上記リングギヤ151からキャリア154までにおいて中間軸部材143の回転は減速されるので、プロペラシャフト部12の回転速度は、中間軸部材143の回転速度に比べて小さくなっている。そして、図1に示すように、プロペラシャフト部12とプロペラ13とは、一体的に回転するように構成されているので、プロペラシャフト部12がB方向に回転されるのに伴って、プロペラ13はB方向に回転される。これにより、船外機1は、前進方向の推力を発生させることが可能となる。
次に、図1〜図4、図6および図12を参照して、後進させる際における船外機1のドライブシャフト部11からプロペラ13までの駆動力の伝達経路およびシフトショック低減機構部16の動作について説明する。この場合、図2に示すように、後側ベベルギヤ142のC方向への回転を中間軸部材143、遊星歯車機構部15およびプロペラシャフト部12を介してプロペラ13(図1参照)に伝達するために、ドッグクラッチ147の後側ドッグ147bは、係合されない中間位置から後側ベベルギヤ142のドッグ部142bに係合されている。
ドライブシャフト部11がA方向に回転されるのに伴って、ドライブシャフト部11の下端部近傍に取り付けられたベベルギヤ110は、A方向に回転される。そして、ベベルギヤ110がA方向に回転されるのに伴って、前側ベベルギヤ141は、B方向に回転されるとともに、後側ベベルギヤ142は、C方向に回転される。ここで、ドッグクラッチ147と後側ベベルギヤ142とが係合されるのに伴って、後側ベベルギヤ142のC方向の回転は中間軸部材143に伝達され、中間軸部材143はC方向に回転される。
そして、図3に示すように、中間軸部材143の係合部143fから、中間軸部材143のC方向の回転が遊星歯車機構部15に伝達される。具体的には、リングギヤ151は、C方向に回転される。この時、図4に示すように、6つのプラネタリギヤ153は、それぞれ、D2方向に回転され、サンギヤ152は、6つのプラネタリギヤ153により、B方向の回転トルクが付与される。これにより、サンギヤ152に付与されたB方向の回転トルクは、シフトショック低減機構部16に伝達される。これにより、図12に示すように、サンギヤ152の5つの突起部152cは、B方向に回転される。
そして、サンギヤ152の突起部152cは、他方側収容部材164の荷重受部164cをB方向に押圧するので、他方側収容部材164は、B方向に回転され、C方向側収容部164aは、B方向に移動される。この時、一方側収容部材163は、支持部161cの一方側傾斜面161dによりB方向に回転されるのが規制されているので、5つのバネ部材162は、それぞれ、B方向側収容部163aに支持された状態で、C方向側収容部164aによりB方向に圧縮される。これにより、サンギヤ152に付与された衝撃を低減することが可能となる。また、B方向に回転された他方側収容部材164の当接部164bは、一方側収容部材163の当接部163bに当接される。これにより、サンギヤ152に付与された衝撃をバネ部材162により低減した後、サンギヤ152を、当接部163bおよび164bが互いに当接した安定した位置に留めることが可能となる。その結果、当接部163bおよび164bが互いに当接した安定した状態で、遊星歯車機構部15およびプロペラシャフト部12は駆動される。
そして、図4に示すように、6つのプラネタリギヤ153がそれぞれD2方向に回転されるのに伴って、6つのプラネタリギヤ153は、それぞれ、回転中心軸線L1を中心にE2方向に移動される。これにより、6つのプラネタリギヤ153を支持する6つの軸部材156も回転中心軸線L1を中心にE2方向に移動されるので、6つの軸部材156を固定するキャリア154(図3参照)は、6つの軸部材156により、回転中心軸線L1を中心にE2方向への力が付与される。その結果、キャリア154は、C方向に回転される。
そして、キャリア154がC方向に回転するのに伴って、プロペラシャフト部12は、キャリア154と共にC方向に回転される。この時、上記リングギヤ151からキャリア154までにおいて中間軸部材143の回転は減速されるので、プロペラシャフト部12の回転速度は、中間軸部材143の回転速度に比べて小さくなっている。そして、図1に示すように、プロペラシャフト部12とプロペラ13とは、一体的に回転するように構成されているので、プロペラシャフト部12がC方向に回転されるのに伴って、プロペラ13はC方向に回転される。これにより、船外機1は、後進方向の推力を発生させることが可能となる。
第1実施形態では、上記のように、サンギヤ152とハウジング部161との間に、サンギヤ152がC方向の負荷を受ける場合およびB方向の負荷を受ける場合のいずれの場合であっても、プロペラ軸部12の回転周方向上で圧縮されることによって衝撃を低減可能に配置されている5つのバネ部材162を設けることによって、停止している状態から回転される際、または、回転方向が逆方向に変換される際の回転周方向の衝撃を、プロペラシャフト部12の回転方向(B方向またはC方向)に沿って圧縮可能に配置されているバネ部材162により直接的に吸収することができる。これにより、互いに摺動しながらスライド可能に係合する歯など、回転周方向(B方向またはC方向)の衝撃を吸収するために、力の方向を変換する機構を設ける必要がないので、回転周方向の衝撃を低減する機構の寿命を長くすることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、他方側収容部材164のC方向側収容部164aを、サンギヤ152がB方向の負荷を受ける場合に、一方側収容部材163と近づくようにB方向に移動されるように構成するとともに、一方側収容部材163のB方向側収容部163aを、サンギヤ152がC方向の負荷を受ける場合に、他方側収容部材164と近づくようにC方向に移動されるように構成することによって、他方側収容部材164のC方向側収容部164aがB方向に移動された場合および一方側収容部材163のB方向側収容部163aがC方向に移動された場合のいずれの場合であっても、複数のバネ部材162の各々を圧縮させることができる。これにより、サンギヤ152に大きな衝撃が付与された場合にも、複数のバネ部材162の各々の反力により、効果的に回転周方向の衝撃を吸収することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、一方側収容部材163および他方側収容部材164のそれぞれの当接部163bおよび当接部164bが互いに当接することにより、バネ部材162を所定の圧縮量以上圧縮されないように構成することによって、5つのバネ部材162により衝撃を吸収する際に、バネ部材162が所定の圧縮量以上に圧縮されることに起因してバネ部材162が破損するのを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、プロペラシャフト部12を、5つのバネ部材162により衝撃が低減された後、当接部163bと当接部164bとが当接した状態で、駆動するように構成することによって、5つのバネ部材162による衝撃の低減後は、一方側収容部材163と他方側収容部材164との当接により一方側収容部材163および他方側収容部材164の相対的な回転位置が互いに固定された状態で、プロペラシャフト部12に駆動力を伝達することができるので、プロペラシャフト部12の駆動回転を安定させることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、ハウジング部161に、他方側収容部材164がB方向に押圧された場合に、一方側収容部材163を支持するとともに、一方側収容部材163がC方向に押圧された場合に、他方側収容部材164を支持する支持部161cを設ける。これにより、支持部161cにより、他方側収容部材164がサンギヤ152によりB方向に押圧された場合に、一方側収容部材163が他方側収容部材164と共にB方向に移動するのを抑制することができるとともに、一方側収容部材163がサンギヤ152によりC方向に押圧された場合に、他方側収容部材164が一方側収容部材163と共にC方向に移動するのを抑制することができる。
(第2実施形態)
次に、図13〜図15を参照して、本発明の第2実施形態による4輪車両5の構成について説明する。なお、図中、FWDは、前進方向を示しており、BWDは、後進方向を示している。第2実施形態では、シフトショック低減機構部56を4輪車両5のプロペラシャフト部55に設けた例について説明する。
第2実施形態では、図13に示すように、4輪車両5は、一対の前輪51aを有する前輪部51と、一対の後輪52aを有する後輪部52と、後輪部52を駆動する駆動源であるエンジン53と、エンジン53の駆動回転を変速および回転方向を切り替える変速機54と、変速機54と後輪部52とを接続するとともに、エンジン53の駆動力を後輪部52に伝達するプロペラシャフト部55とにより主に構成されている。
プロペラシャフト部55は、図13および図14に示すように、変速機54から出力される回転が入力される前側シャフト551と、入力された回転を後輪部52(図13参照)に出力する後側シャフト552とを有している。なお、前側シャフト551は、本発明の「入力軸」の一例であり、後側シャフト552は、本発明の「出力軸」の一例である。そして、前側シャフト551と後側シャフト552とは、図14に示すように、シフトショック低減機構部56を介して連結されている。なお、シフトショック低減機構部56は、本発明の「ショック低減機構」の一例である。
第2実施形態では、シフトショック低減機構部56は、前側シャフト551がF方向の負荷を受ける場合およびG方向の負荷を受ける場合のいずれの場合であっても、後側シャフト552に入力される駆動力の衝撃を低減する機能を有する。なお、F方向は、本発明の「第1方向」および「第3方向」の一例であり、G方向は、本発明の「第2方向」および「第4方向」の一例である。つまり、シフトショック低減機構部56は、変速機54(図13参照)によりプロペラシャフト部55に駆動力が入力される際の衝撃を低減する機能を有する。
具体的には、シフトショック低減機構部56は、前側シャフト551を支持する前側支持部561と、後側シャフト552を支持する後側支持部562と、前側シャフト551の後(矢印BWD方向)端部に一体的に設けられた負荷部563と、後側シャフト552の前(矢印FWD方向)端部に一体的に設けられた負荷受部564と、負荷部563と負荷受部564との間に設けられた圧縮コイルバネからなる5つのバネ部材565(図15参照)とにより構成されている。負荷部563は、前側シャフト551と一体的に回転するように構成されているとともに、負荷受部564は、後側シャフト552と一体的に回転するように構成されている。また、シフトショック低減機構部56は、さらに、負荷受部564に収容され、5つのバネ部材565の各々の一方側を支持する一方側収容部材566と、負荷受部564に収容され、5つのバネ部材565の各々の他方側を支持する他方側収容部材567とにより構成されている。なお、一方側収容部材566は、本発明の「第2収容部材」の一例であり、他方側収容部材567は、本発明の「第1収容部材」の一例である。
シフトショック低減機構部56の負荷受部564は、図14および図15に示すように、矢印FWD方向に開口する円環状の溝形状に形成されている。また、負荷受部564の溝部564bには、図15に示すように、一方側収容部材566がF方向に移動するのを規制してバネ部材565の荷重を支持するとともに、他方側収容部材567がG方向に移動するのを規制してバネ部材565の荷重を支持する複数の支持部564cが設けられている。
また、負荷受部564の溝部564bには、他方側収容部材567が収容されている。他方側収容部材567は、負荷受部564に対してF方向およびG方向に回動可能に配置されている。また、他方側収容部材567には、5つのバネ部材565の各々のG方向側を支持するG方向側収容部567aが設けられている。これらG方向側収容部567aのF方向側部分には、それぞれ、平坦面状の当接部567bが形成されている。なお、当接部567bは、本発明の「第1当接部」の一例である。これら当接部567bは、それぞれ、後述する一方側収容部材566のF方向側収容部566aとG方向側収容部567aとが互いに近づく方向に移動された際に、後述する一方側収容部材566の当接部566bと当接するように構成されている。また、G方向側収容部567aのG方向側部分には、後述する負荷部563の突起部563cがF方向に移動される際の荷重(負荷)を受ける荷重受部567cが設けられている。
また、負荷部563には、半径方向の外側に向かって延びる5つの突起部563cが形成されている。これら5つの突起部563cは、それぞれ、負荷部563にF方向およびG方向の負荷が付与されていない場合に、負荷受部564の支持部564cの頂点部564fと対向するように配置されている。また、これら負荷部563の突起部563cは、負荷部563がF方向の負荷を受ける場合に、他方側収容部材567をF方向に押圧するとともに、負荷部563がG方向の負荷を受ける場合に、一方側収容部材566をG方向に押圧するように構成されている。
また、負荷受部564の溝部564bには、さらに、他方側収容部材567および負荷部563の矢印FWD方向側から一方側収容部材566が収容されている。一方側収容部材566は、負荷受部564に対してF方向およびG方向に回動可能に配置されている。また、一方側収容部材566には、5つのバネ部材565の各々のF方向側を支持するF方向側収容部566aが設けられている。これらF方向側収容部566aのG方向側部分には、それぞれ、平坦面状の当接部566bが形成されている。なお、当接部566bは、本発明の「第2当接部」の一例である。これら当接部566bは、それぞれ、他方側収容部材567のG方向側収容部567aとF方向側収容部566aとが互いに近づく方向に移動された際に、他方側収容部材567の当接部567bと当接するように構成されている。そして、当接部566bおよび567bが互いに当接した状態で、プロペラシャフト部56は、F方向またはG方向に回転されるように構成されている。また、F方向側収容部566aのF方向側部分には、負荷部563の突起部563cがG方向に移動される際の荷重(負荷)を受ける荷重受部566cが設けられている。
また、第2実施形態では、上記したように、5つのバネ部材565は、それぞれ、一方側収容部材566のF方向側収容部566aおよび他方側収容部材567のG方向側収容部567aの両方に付勢するように収容されている。そして、一方側収容部材566と他方側収容部材567とが相対的にF方向またはG方向に回動された場合に、5つのバネ部材565を、それぞれ、伸縮することが可能となる。
また、図14に示すように、負荷受部564の矢印FWD方向側には、一方側収容部材566の矢印FWD方向側に設けられた円板部566dが配置されている。円板部566dは、負荷受部564の溝部564bの内周面側に係合されたサークリップ568と、負荷部563の外周面側に係合されたサークリップ569とにより矢印BWD方向に向かって支持されている。
第2実施形態では、上記のように、負荷部563と負荷受部564との間に設けられ、負荷部563がF方向の負荷を受ける場合およびG方向の負荷を受ける場合のいずれの場合であっても、後側シャフト552の回転周方向上で圧縮されることによって衝撃を低減可能に配置されている複数のバネ部材565を設けることによって、停止している状態から回転される際、または、回転方向が逆方向に変換される際の回転周方向の衝撃を、後側シャフト552の回転周方向上で圧縮可能に配置されているバネ部材565により直接的に吸収することができる。これにより、互いに摺動しながらスライド可能に係合する歯など、回転周方向の衝撃を吸収するために、力の方向を変換する機構を設ける必要がないので、停止している状態から回転される際、または、回転方向が逆方向に変換される際の衝撃を低減する機構の寿命を長くすることができる。
また、第2実施形態では、上記のように、負荷部563を、前側シャフト551と一体的に回転するように構成するとともに、負荷受部564を、負荷部563に対してバネ部材565を介して接続し、後側シャフト552と一体的に回転するように構成することによって、負荷部563と負荷受部564との間に配置されたバネ部材565により、前側シャフト551に付与される衝撃が直接的に後側シャフト552に伝達されるのを抑制することができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1および第2実施形態では、ショック低減機構を船外機の駆動系および4輪車両の駆動系に適用した例について示したが、本発明はこれに限らず、たとえば、前後進切替および変速機などを有する、自動二輪車、鉄道車両などの輸送機械や、工作機械などの産業機械などの駆動系に適用してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、バネ部材を5つ設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、バネ部材を4つ以下設けてもよいし、6つ以上設けてもよい。
また、上記第1実施形態では、シフトショック低減機構部を、遊星歯車機構部のサンギヤが受ける衝撃を低減するように構成した例について示したが、本発明はこれに限らず、シフトショック低減機構部を、たとえば、リングギヤなど、サンギヤ以外のギヤが受ける衝撃を低減するように構成してもよいし、前後進切替機構部など、遊星歯車機構部以外で衝撃を低減するように構成してもよい。
また、上記第1実施形態では、遊星歯車機構部を、サンギヤを圧縮コイルバネを介して回動可能に保持し、駆動力の入力をリングギヤから行うとともに、駆動力の出力をキャリアから行うように構成した例について示したが、本発明はこれに限らず、遊星歯車機構部を、たとえば、リングギヤを回動可能に保持し、駆動力の入力をサンギヤから行うとともに、駆動力の出力をキャリアから行うように構成するなど、その他の駆動力の入力および出力経路を有する遊星歯車機構部により構成してもよい。
また、上記第2実施形態では、負荷部および負荷受部を、それぞれ、前側シャフトおよび後側シャフトと一体的に構成した例について示したが、本発明はこれに限らず、負荷部および負荷受部を、それぞれ、前側シャフトおよび後側シャフトと別体に構成してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、本発明のバネ部材に圧縮コイルバネを適用した例について示したが、本発明はこれに限らず、本発明のバネ部材に、板バネなど、圧縮コイルバネ以外のバネ部材を適用してもよい。