しかしながら上記の従来形式では、合力伝達体206の回転トルクは中間軸205の回転トルクよりも大きくなるため、図41に示すように、選択体213を高速用一方向クラッチ212から離脱させて、高速用一方向クラッチ212を機能させ、高速用一方向クラッチ212を介して高速用減速歯車210と合力伝達体206とを回転方向において接続した場合、高速用減速歯車210に噛み合っている高速用一方向クラッチ212のカム216(ラチェット爪)に大きな荷重が作用する。このように、高速用一方向クラッチ212への負荷が大きいので、高速用一方向クラッチ212のカム216を高強度に保つたり、或いは、カム216の設置数を増やす等の必要があり、高速用一方向クラッチ212が大型化して重量も増加し、これに伴って補助駆動ユニット202が大型化して重量も増加するといった問題がある。
また、合力伝達体206の回転速度は中間軸205の回転速度よりも低くなるため、図41に示すように、選択体213を高速用一方向クラッチ212から離脱させて、高速用一方向クラッチ212を機能させる際、高速用一方向クラッチ212のカム216が高速用減速歯車210の歯部210aに噛み合うタイミングが遅くなる。従って、図40に示す低速段から図41に示す高速段へ切り換えるのに要する時間が長くなるといった問題がある。
本発明は、補助駆動ユニットを小型軽量化でき、また、低速段から高速段へ切り換えるのに要する時間を短縮することが可能な電動アシスト自転車を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本第1発明は、電動駆動装置を有する補助駆動ユニットを備え、ペダルからの踏力による人力駆動力に、電動駆動装置により発生する補助駆動力を加えて走行可能である電動アシスト自転車であって、
補助駆動ユニットは、人力駆動力によって回転可能な入力回転軸と、電動駆動装置によって回転可能な補助駆動軸と、人力駆動力に補助駆動力を加えた合力を出力可能な回転出力部と、複数段の速度に切り換え可能な変速機構と、入力回転軸に入力された人力駆動力と補助駆動軸に入力された補助駆動力とが合成されて回転出力部へ伝達される低速用および高速用の回転伝達経路とを有し、
低速用の回転伝達経路と高速用の回転伝達経路とは変速比率が異なっており、
変速機構は、回転出力部と一体に回転可能な出力側回転体と、補助駆動軸と一体に回転可能な出力側中間回転体と、補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路を断続する変速用クラッチと、変速用クラッチを切り換える切換機構とを有し、
切換機構が変速用クラッチを切り換えて補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路を遮断した場合、低速用の回転伝達経路に切り換えられ、
切換機構が変速用クラッチを切り換えて補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路を接続した場合、高速用の回転伝達経路に切り換えられるものである。
これによると、低速段に切り換える場合、切換機構が変速用クラッチを切り換えて補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路を遮断する。これにより、低速用の回転伝達経路に切り換えられ、入力回転軸に入力された人力駆動力と補助駆動軸に入力された補助駆動力とが合成され、低速用の回転伝達経路を経て、回転出力部へ伝達される。
この際、回転出力部と共に出力側回転体も回転するため、出力側回転体の回転が出力側中間回転体に伝達されて、出力側中間回転体が回転するが、上記のように出力側中間回転体と補助駆動軸との間の回転伝達経路は遮断されているため、出力側中間回転体の回転は補助駆動軸に伝達されない。
また、高速段に切り換える場合、切換機構が変速用クラッチを切り換えて補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路を接続する。これにより、高速用の回転伝達経路に切り換えられ、入力回転軸に入力された人力駆動力と補助駆動軸に入力された補助駆動力とが合成され、高速用の回転伝達経路を経て、回転出力部へ伝達される。
この際、変速用クラッチは補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路を接続しており、補助駆動軸の回転トルクは回転出力部の回転トルクよりも小さくなるため、補助駆動軸に係合している変速用クラッチの係合体に作用する荷重が低減する。従って、変速用クラッチへの負荷が軽減され、変速用クラッチの係合体の強度を下げたり、或いは、係合体の設置数を減らすことができ、変速用クラッチを小型軽量化することができ、これに伴って、補助駆動ユニットを小型軽量化することができる。
また、補助駆動軸の回転速度は回転出力部の回転速度よりも高くなるため、変速用クラッチを切り換えて回転伝達経路を接続する際、変速用クラッチの係合体が補助駆動軸に噛み合うタイミングが早くなる。従って、低速段から高速段へ切り換えるのに要する時間が短縮される。
本第2発明における電動アシスト自転車は、変速機構は、入力回転軸の回転により回転可能な入力側回転体と、補助駆動軸と一体に回転可能な入力側中間回転体とを有し、
入力側回転体と出力側回転体と入力側中間回転体と出力側中間回転体とはそれぞれ歯車であり、
入力側回転体と入力側中間回転体とが歯合し、
出力側回転体と出力側中間回転体とが歯合しているものである。
これによると、低速段に切り換える場合、切換機構が変速用クラッチを切り換えて補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路を遮断する。これにより、入力回転軸に入力された人力駆動力が入力回転軸から入力側回転体を経て回転出力部に伝達されるとともに、補助駆動軸に入力された補助駆動力が補助駆動軸から入力側中間回転体、入力側回転体を経て回転出力部に伝達される。これにより、人力駆動力と補助駆動力との合力が低速用の回転伝達経路を経て回転出力部へ伝達される。
また、高速段に切り換える場合、切換機構が変速用クラッチを切り換えて補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路を接続する。これにより、入力回転軸に入力された人力駆動力が入力回転軸から入力側回転体、入力側中間回転体、補助駆動軸、出力側中間回転体、出力側回転体、回転出力部に伝達されるとともに、補助駆動軸に入力された補助駆動力が補助駆動軸から出力側中間回転体、出力側回転体、回転出力部に伝達される。これにより、人力駆動力と補助駆動力との合力が高速用の回転伝達経路を経て回転出力部へ伝達される。
本第3発明における電動アシスト自転車は、入力回転軸と入力側回転体との間の回転伝達経路に、人力駆動力を入力回転軸から入力側回転体へ伝達するが、電動駆動装置側からの補助駆動力を入力側回転体から入力回転軸へ伝達しないようにする入力側の一方向クラッチが設けられているものである。
これによると、入力回転軸に入力された人力駆動力は入力側の一方向クラッチを介して入力回転軸から入力側回転体に伝達されるが、電動駆動装置側からの補助駆動力は入力側の一方向クラッチによって入力側回転体から入力回転軸へ伝達されない。
本第4発明における電動アシスト自転車は、変速用クラッチを切り換えて補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路を遮断した場合、電動駆動装置側からの補助駆動力を入力側回転体から回転出力部へ伝達し、変速用クラッチを切り換えて補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路を接続した場合、電動駆動装置側からの補助駆動力を入力側回転体から回転出力部へ伝達しないようにする出力側の一方向クラッチが入力側回転体と回転出力部との間の回転伝達経路に設けられているものである。
これによると、低速段に切り換えた場合、変速用クラッチによって、補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路が遮断され、出力側の一方向クラッチによって、電動駆動装置側からの補助駆動力が補助駆動軸から入力側中間回転体、入力側回転体を経て回転出力部に伝達される。
また、高速段に切り換えた場合、変速用クラッチによって、補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路が接続され、出力側の一方向クラッチによって、電動駆動装置側からの補助駆動力は、入力側回転体から回転出力部へ伝達されず、補助駆動軸から出力側中間回転体、出力側回転体を経て回転出力部に伝達される。
本第5発明における電動アシスト自転車は、電動駆動装置の回転軸に歯部が形成され、
補助駆動軸に補助駆動力伝達用回転体が設けられ、
補助駆動力伝達用回転体は、歯車であって、電動駆動装置の回転軸の歯部に歯合しており、
補助駆動軸と補助駆動力伝達用回転体との間に、人力駆動力を切断するための一方向クラッチが設けられているものである。
これによると、電動駆動装置の回転軸が回転することにより、回転軸の回転が補助駆動力伝達用回転体を介して補助駆動軸に伝わり、補助駆動軸が回転する。これにより、補助駆動力が電動駆動装置から補助駆動軸に入力される。
また、補助駆動力伝達用回転体の歯数を電動駆動装置の回転軸の歯数よりも多くすることによって、低速用の回転伝達経路と高速用の回転伝達経路とにおける各変速比率をそれぞれ大きく設定することができる。
また、人力駆動力を切断するための一方向クラッチは、入力側回転体側からの人力駆動力を電動駆動装置側に伝達しないように動作する。これにより、電動駆動装置が補助駆動力を発生していない場合に、ペダルからの踏力により電動駆動装置の回転軸が強制的に回転されることを阻止して、搭乗者のペダルを漕ぐ力を軽減することができる。
本第6発明における電動アシスト自転車は、電動駆動装置の回転軸の両端部がそれぞれ回転軸用軸受部材によって回転自在に支持されているものである。
これによると、回転軸の軸心が径方向へぶれるのを防止することができ、回転軸の回転が安定する。
本第7発明における電動アシスト自転車は、出力側中間回転体は円環状に形成され、
補助駆動軸が出力側中間回転体に挿通され、
変速用クラッチは、出力側中間回転体に設けられた揺動自在な係合体と、補助駆動軸の外周に形成された係合部と、係合体用付勢部材とを有し、
係合体は、係合部に係脱自在であるとともに、係合体用付勢部材によって係合方向に付勢されており、
切換機構は、補助駆動軸の外部から、係合体を係合部に係脱させるものである。
これによると、切換機構が、変速用クラッチの係合体用付勢部材の付勢力に抗して、係合体を補助駆動軸の係合部から離脱させることにより、補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路が切断され、低速段に切り換えられる。これにより、入力回転軸に入力された人力駆動力と補助駆動軸に入力された補助駆動力とが合成され、低速用の回転伝達経路を経て、回転出力部へ伝達される。
また、切換機構が、変速用クラッチの係合体用付勢部材の付勢力を利用して、係合体を係合部に係合させることにより、補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路が接続され、高速段に切り換えられる。これにより、入力回転軸に入力された人力駆動力と補助駆動軸に入力された補助駆動力とが合成され、高速用の回転伝達経路を経て、回転出力部へ伝達される。
この際、補助駆動軸の回転トルクは回転出力部の回転トルクよりも小さくなるため、補助駆動軸の係合部に係合している変速用クラッチの係合体に作用する力が低減する。
また、補助駆動軸の回転速度は回転出力部の回転速度よりも高くなるため、変速用クラッチを切り換えて回転伝達経路を接続する際、変速用クラッチの係合体が補助駆動軸の係合部に噛み合うタイミングが早くなる。
本第8発明における電動アシスト自転車は、切換機構は、切換リングと、切換リングを補助駆動軸の軸心方向へ移動させる切換用移動装置とを有し、
補助駆動軸が切換リングに挿入され、
切換リングが遮断位置に移動した場合、係合体は、係合体用付勢部材の付勢力に抗して、一端部が切換リングの内周部によって内側へ押され、他端部が係合部から離脱し、
切換リングが接続位置に移動した場合、係合体は、係合体用付勢部材の付勢力によって、他端部が係合部に係合するものである。
これによると、切換機構の切換リングを遮断位置に移動させることにより、変速用クラッチの係合体用付勢部材の付勢力に抗して、係合体の一端部が切換リングの内周部によって内側へ押され、係合体の他端部が補助駆動軸の係合部から離脱する。これにより、補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路が切断され、低速段に切り換えられる。
また、切換リングを接続位置に移動させることにより、係合体の他端部が係合体用付勢部材の付勢力によって係合部に係合する。これにより、補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路が接続され、高速段に切り換えられる。
本第9発明における電動アシスト自転車は、切換用移動装置は、アーム部材と、軸心方向へ移動自在に保持された切換軸と、切換軸を移動させる切換用駆動装置とを有し、
切換リングはアーム部材を介して切換軸と一体的に軸心方向へ移動自在であるものである。
これによると、切換用駆動装置で切換軸を軸心方向へ移動させることにより、切換リングが切換軸と一体的に軸心方向へ移動して遮断位置と接続位置とに切り換えられる。
本第10発明における電動アシスト自転車は、補助駆動軸の先端部が補助駆動軸用軸受部材を介して回転自在に支持され、
補助駆動軸用軸受部材の外径は切換リングの内径よりも小さいものである。
これによると、切換リングが接続位置に移動した場合、切換リングが補助駆動軸用軸受部材の径方向における外側に位置し、切換リングと補助駆動軸用軸受部材とが補助駆動軸の軸心方向において重複する。このため、補助駆動ユニットを補助駆動軸の軸心方向において短縮することができる。
本第11発明における電動アシスト自転車は、出力側中間回転体は円環状に形成され、
補助駆動軸が出力側中間回転体に挿通され、
変速用クラッチは、補助駆動軸に設けられた揺動自在な係合体と、出力側中間回転体の内周に形成された係合部と、係合体用付勢部材とを有し、
係合体は、係合部に係脱自在であるとともに、係合体用付勢部材によって係合方向に付勢されており、
切換機構は、補助駆動軸の内部から、係合体を係合部に係脱させるものである。
これによると、切換機構が、変速用クラッチの係合体用付勢部材の付勢力に抗して、補助駆動軸の係合体を出力側中間回転体の係合部から離脱させることにより、補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路が切断され、低速段に切り換えられる。
また、切換機構が、変速用クラッチの係合体用付勢部材の付勢力を利用して、係合体を係合部に係合させることにより、補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路が接続され、高速段に切り換えられる。
切換機構は補助駆動軸の内部から係合体を係合部に係脱させるため、補助駆動軸の外部から係合体を係合部に係脱させる切換機構に比べて、切換機構を設けるために要するスペースが縮小され、補助駆動ユニットを小型軽量化することができる。
本第12発明における電動アシスト自転車は、切換機構は、補助駆動軸に形成された切換孔と、切換孔内に設けられた切換部材と、切換部材を軸心方向へ移動させる移動手段とを有し、
移動手段によって切換部材が切換孔内の遮断位置に移動した場合、係合体は、係合体用付勢部材の付勢力に抗して、一端部が切換部材によって外側へ押されて、他端部が係合部から離脱し、
移動手段によって切換部材が切換孔内の接続位置に移動した場合、係合体は、係合体用付勢部材の付勢力によって、他端部が係合部に係合するものである。
これによると、切換機構の切換部材を切換孔内の遮断位置に移動させることにより、変速用クラッチの係合体用付勢部材の付勢力に抗して、係合体の一端部が切換部材によって外側へ押されて、係合体の他端部が係合部から離脱する。これにより、補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路が切断され、低速段に切り換えられる。
また、切換機構の切換部材を切換孔内の接続位置に移動させることにより、係合体の他端部が係合体用付勢部材の付勢力によって係合部に係合する。これにより、補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路が接続され、高速段に切り換えられる。
本第13発明における電動アシスト自転車は、出力側中間回転体は円環状に形成され、
補助駆動軸が出力側中間回転体に挿通され、
変速用クラッチは、出力側中間回転体の内周に設けられた係合体と、補助駆動軸に設けられた係合部と、係合体用付勢部材とを有し、
係合体は、係合部に係脱自在であるとともに、係合体用付勢部材によって係合方向に付勢されており、
切換機構は、補助駆動軸の内部から、係合体を係合部に係脱させるものである。
これによると、切換機構が、変速用クラッチの係合体用付勢部材の付勢力に抗して、変速用クラッチの係合体を補助駆動軸の係合部から離脱させることにより、補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路が切断され、低速段に切り換えられる。
また、切換機構が、変速用クラッチの係合体用付勢部材の付勢力を利用して、係合体を係合部に係合させることにより、補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路が接続され、高速段に切り換えられる。
切換機構は補助駆動軸の内部から係合体を係合部に係脱させるため、補助駆動軸の外部から係合体を係合部に係脱させる切換機構に比べて、切換機構を設けるために要するスペースが縮小され、補助駆動ユニットを小型軽量化することができる。
本第14発明における電動アシスト自転車は、切換機構は、補助駆動軸に形成された軸心方向の切換孔と、補助駆動軸の係合部と切換孔内とに連通する径方向の保持孔と、保持孔内に保持された転動体と、切換孔内に設けられて転動体を補助駆動軸の径方向へ移動させる切換部材と、切換部材を軸心方向へ移動させる移動手段とを有し、
移動手段によって切換部材が切換孔内の遮断位置に移動した場合、切換部材が転動体を補助駆動軸の径方向外側へ移動させて、転動体が係合体を係合部から離脱させ、
移動手段によって切換部材が切換孔内の接続位置に移動した場合、切換部材が転動体から退避して、転動体が補助駆動軸の径方向内側へ移動し、係合体が係合部に係合するものである。
これによると、切換機構の切換部材を切換孔内の遮断位置に移動させることにより、切換部材が転動体を補助駆動軸の径方向外側へ移動させ、変速用クラッチの係合体用付勢部材の付勢力に抗して、転動体が係合体を係合部から離脱させる。これにより、補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路が切断され、低速段に切り換えられる。
また、切換機構の切換部材を切換孔内の接続位置に移動させることにより、切換部材が転動体から退避し、転動体が補助駆動軸の径方向内側へ移動し、変速用クラッチの係合体用付勢部材の付勢力により、係合体が係合部に係合する。これにより、補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路が接続され、高速段に切り換えられる。
以上のように本発明によると、高速段に切り換えた場合、変速用クラッチは補助駆動軸と出力側中間回転体との間の回転伝達経路を接続しており、補助駆動軸の回転トルクは回転出力部の回転トルクよりも小さくなるため、補助駆動軸に係合している変速用クラッチの係合体に作用する荷重が低減する。従って、変速用クラッチへの負荷が軽減され、変速用クラッチの強度を下げたり、或いは、変速用クラッチの係合体の設置数を減らすことができ、変速用クラッチを小型軽量化することができ、これに伴って、補助駆動ユニットを小型軽量化することができる。
また、補助駆動軸の回転速度は回転出力部の回転速度よりも高くなるため、変速用クラッチを切り換えて伝達経路を接続する際、変速用クラッチが補助駆動軸に噛み合うタイミングが早くなる。従って、低速段から高速段へ切り換えるのに要する時間が短縮される。
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る電動アシスト自転車について図面に基づき説明する。尚、以下の説明における左右方向および前後方向とは、進行方向に向って電動アシスト自転車1に搭乗した状態での方向を言う。また、この発明の構成が以下で述べる構成に限定されるものではない。
図1に示すように、電動アシスト自転車1は、ヘッドパイプ2a、前フォーク2b、メインパイプ2c、立パイプ2d、チェーンステー2e、シートステー2fなどからなる金属製のフレーム2と、前フォーク2bの下端に回転自在に取り付けられた前輪3と、チェーンステー2eの後端に回転自在に取り付けられた後輪4と、前輪3の向きを変更するハンドル5と、サドル6と、ペダル7と、モータ8(電動駆動装置の一例)を内蔵した補助駆動ユニット9と、モータ8に駆動用の電力を供給する二次電池からなるバッテリ10と、ハンドル5などに取り付けられて、搭乗者などが操作可能で、後述する減速機構18(図3参照)の変速機能の速度(低速(第1速)または高速(第2速))を設定する変速段手元操作部11と、ハンドル5などに取り付けられて、搭乗者などが操作可能で、電動アシスト自転車1の電源の切り換えや走行モードなどを設定する手元設定部(図示せず)等を有しており、ペダル7からの踏力による人力駆動力F1に、モータ8により発生する補助駆動力F2を加えて走行可能である。
図2〜図7に示すように、補助駆動ユニット9は、ペダル7の踏力からなる人力駆動力F1によって回転可能なクランク軸15(入力回転軸の一例)と、モータ8によって回転可能な補助駆動軸16と、人力駆動力F1に補助駆動力F2を加えた合力F3を出力可能な回転出力部材17と、複数段(低速段および高速段)の速度に切り換え可能な減速機構18(変速機構の一例)と、クランク軸15に入力された人力駆動力F1と補助駆動軸16に入力された補助駆動力F2とが合成されて回転出力部材17へ伝達される低速用および高速用の回転伝達経路20,21(図4,図9参照)と、ユニットケース22とを有している。
減速機構18は、クランク軸15の回転により回転可能な入力側回転体23と、補助駆動軸16と一体に回転可能な入力側中間回転体24と、回転出力部材17と一体に回転可能な出力側回転体25と、補助駆動軸16と共に回転可能な出力側中間回転体26と、補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路を断続する変速用クラッチ27と、変速用クラッチ27を切り換える切換機構28(図8参照)等とを有している。
入力側回転体23と入力側中間回転体24と出力側回転体25と出力側中間回転体26とはそれぞれ歯車であり、入力側回転体23と入力側中間回転体24とが歯合し、出力側回転体25と出力側中間回転体26とが歯合している。
尚、入力側回転体23の歯数は入力側中間回転体24の歯数よりも多く、出力側回転体25の歯数は出力側中間回転体26の歯数よりも多い。また、(入力側回転体23の歯数/入力側中間回転体24の歯数)の比は(出力側回転体25の歯数/出力側中間回転体26の歯数)の比よりも大きい。
左右一対のペダル7はクランクアーム30を介してクランク軸15の左右両端部に設けられている。クランク軸15には、クランク軸15からの人力駆動力F1が伝達される円筒状の人力伝達体31と、人力伝達体31と入力側回転体23との間に設けられた連動筒体32とが外嵌されている。尚、人力伝達体31は、セレーション部37(またはスプライン部)を介して、クランク軸15に外嵌され、クランク軸15と一体的に回転可能である。
人力伝達体31の外周面には、磁気異方性を付与した磁歪発生部38bが形成されているとともに、その外周に一定の隙間(空間)をあけてコイル38aが配設され、これら磁歪発生部38bおよびコイル38aにより磁歪式のトルクセンサ38(人力検知部の一例)が構成されている。これにより、クランク軸15からの人力駆動力F1が人力伝達体31に伝達されるとともに、トルクセンサ38により人力駆動力F1の大きさ(トルク)が検出される。
連動筒体32は、クランク軸15に対して回転自在の状態で配設されているが、セレーション部40(またはスプライン部)を介して、人力伝達体31と一体的に回転可能である。
連動筒体32の外周には、連動筒体32の回転状態を検出するための回転検出体41が取り付けられている。また、回転検出体41を左右から微小隙間をあけて挟むように、回転検出器42がユニットケース22側に取り付けられている。例えば、回転検出器42は、出射部と受光部とからなる対となった光センサが回転検出体41の回転方向に2つ並べられて構成され、回転検出体41は、くし(櫛)歯状に外周方向に延びる多数の歯部(遮光部)を有している。
尚、連動筒体32は人力伝達体31と一体的に回転し、人力伝達体31はクランク軸15と一体的に回転するため、回転検出体41で連動筒体32の回転量および回転方向を検知することで、クランク軸15やペダル7の回転量および回転方向も検知できるよう構成されている。
回転出力部材17は円筒状の部材であり、入力側回転体23は中心に円筒部23bを有する円環状の歯車である。回転出力部材17と入力側回転体23とはクランク軸15に外嵌されている。回転出力部材17には、駆動力出力輪体としての駆動スプロケット34が設けられ、後輪4のハブには駆動輪体としての後部スプロケット35が設けられ、駆動スプロケット34と後部スプロケット35との間に、駆動力伝達体としての無端状のチェーン36が巻回されている。
クランク軸15と入力側回転体23との間の回転伝達経路すなわち連動筒体32の外周部と入力側回転体23の内周部との間には、入力側の一方向クラッチ44が設けられている。この入力側の一方向クラッチ44は、人力駆動力F1をクランク軸15から入力側回転体23へ伝達するが、モータ8側からの補助駆動力F2を入力側回転体23からクランク軸15へ伝達しないようにするものである。これにより、ペダル7を漕いで電動アシスト自転車1を前進させている際、クランク軸15と一体的に連動筒体32が一方向へ回転し、この連動筒体32の回転が入力側の一方向クラッチ44を介して入力側回転体23に伝達され、入力側回転体23が回転する。
尚、図4,図5に示すように、入力側の一方向クラッチ44は、連動筒体32の外周部に設けられて径方向へ起立横倒自在な複数のラチェット爪44aと、これらラチェット爪44aが起立するように径方向外側へ付勢する円環状のスプリング44bとを有している。また、入力側回転体23の内周部には複数の歯部23aが形成されている。ラチェット爪44aは、起立姿勢に切り換えられた場合、歯部23aに係合し、横倒姿勢に切り換えられた場合、歯部23aから離脱する。
入力側回転体23と回転出力部17との間の回転伝達経路すなわち入力側回転体23の円筒部23bの外周と回転出力部17の内周との間には、出力側の一方向クラッチ45が設けられている。この出力側の一方向クラッチ45は、図4に示すように、変速用クラッチ27を切り換えて補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路を遮断した場合、モータ8側からの補助駆動力F2を入力側回転体23から回転出力部材17へ伝達し、図9に示すように、変速用クラッチ27を切り換えて補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路を接続した場合、モータ8側からの補助駆動力F2を入力側回転体23から回転出力部17へ伝達しないようにするものである。
尚、図4,図5に示すように、出力側の一方向クラッチ45は、入力側回転体23の円筒部23bの外周部に設けられて径方向へ起立横倒自在な複数のラチェット爪45aと、これらラチェット爪45aが起立するように径方向外側へ付勢する円環状のスプリング45bとを有している。また、回転出力部17の内周部には複数の歯部17aが形成されている。ラチェット爪45aは、起立姿勢に切り換えられた場合、歯部17aに係合し、横倒姿勢に切り換えられた場合、歯部17aから離脱する。
クランク軸15と補助駆動軸16とモータ8の回転軸48とは平行に配置されている。補助駆動軸16には、補助駆動力伝達用回転体47が外嵌されている。補助駆動力伝達用回転体47は、歯車であり、モータ8の回転軸48の先端部外周に形成された歯部50に歯合している。尚、補助駆動力伝達用回転体47の歯数はモータ8の回転軸48の歯部50の歯数よりも多く設定されている。
また、補助駆動軸16の外周と補助駆動力伝達用回転体47の内周との間には、人力駆動力切断用の一方向クラッチ49が設けられている。この人力駆動力切断用の一方向クラッチ49は、入力側回転体23側からの人力駆動力F1をモータ8側に伝達しないように動作し、補助駆動力F2を発生していない場合に、ペダル7からの踏力によりモータ8の回転軸48が強制的に回転されることを阻止して搭乗者のペダル7を漕ぐ力を軽減している。
出力側中間回転体26は円環状に形成され、補助駆動軸16が出力側中間回転体26に挿通されている。図6,図7に示すように、変速用クラッチ27は、ピン51を介して出力側中間回転体26の一端面に設けられた複数個(図7では2個)のカム52(係合体の一例)と、補助駆動軸16の外周に形成された複数(図7では4箇所)の凹部53(係合部の一例)と、ねじりコイルばね54(係合体用付勢部材の一例)とを有している。
カム52は、補助駆動軸16の周方向において所定角度おきに2個配置され、ピン51を中心に係合方向55(図11参照)と離脱方向56(図7参照)とに揺動することによって、凹部53に係脱自在である。ねじりコイルばね54は、ピン51に外嵌されており、カム52を係合方向55に付勢している。尚、カム52は2個設けられているが、2個以外の複数個又は単数個設けられてもよい。また、凹部53は補助駆動軸16の周方向における4箇所に形成されているが、4箇所以外の複数箇所又は単数箇所に設けられてもよい。
また、揺動自在な係合体の一例として、カム52を用いたが、ラチェット爪などを用いてもよい。また、係合体用付勢部材の一例として、ねじりコイルばね54を用いたが、他の種類のばねを用いてもよい。
切換機構28は、補助駆動軸16の外部から、カム52を凹部53に係脱させるものであり、切換リング58と、切換リング58を補助駆動軸16の軸心方向へ移動させる切換用移動装置59とを有している。補助駆動軸16は切換リング58に挿入されている。
図6,図8に示すように、切換リング58が、切換用移動装置59によって補助駆動軸16の軸心方向へ移動し、遮断位置P1に達した場合、図7に示すように、カム52は、ねじりコイルばね54の付勢力に抗して、一端部52aが切換リング58の内周面によって内側へ押され、ピン51を中心に離脱方向56へ揺動するため、他端部52bが凹部53から離脱する。
また、図10,図12に示すように、切換リング58が、切換用移動装置59によって補助駆動軸16の軸心方向へ移動し、接続位置P2に達した場合、カム52から離間する。これにより、図11に示すように、カム52は、ねじりコイルばね54の付勢力によって、ピン51を中心に係合方向55へ揺動するため、他端部52bが凹部53に係合する。
図13〜図16に示すように、切換リング58は、内周にテーパー面60を全周にわたって有し、外周に溝61を全周にわたって有している。切換リング58の内周には、テーパー面60から外周側へ楕円円弧形状に窪んだカム面62が形成されている。尚、カム面62は、切換リング58の周方向において、所定角度(図13では90°)毎に複数形成されている。
図6〜図8に示すように、切換用移動装置59は、アーム部材66と、軸心方向へ移動自在に保持された切換軸67と、連動筒68と、切換用コイルばね69(切換用付勢手段の一例)と、切換軸67を移動させる切換用駆動装置71とを有している。
アーム部材66は、筒状部73と、筒状部73に設けられたアーム本体74とを有している。アーム本体74は切換リング58の溝61に外周側から嵌め込まれている。尚、切換リング58は、アーム本体74に対して回転しないように、アーム本体74に回り止めされている。切換軸67はアーム部材66の筒状部73と連動筒68と切換用コイルばね69とに挿通されている。
アーム部材66と連動筒68とは切換軸67と一体的に切換軸67の軸心方向へ移動自在であり、これにより、アーム部材66のアーム本体74は、切換リング58と共に、切換軸67の軸心方向において、遮断位置P1(図8参照)と接続位置P2(図12参照)とに移動自在であり、切換用コイルばね69によって接続位置P2から遮断位置P1の方向に付勢されている。また、連動筒68は、外周部に、径方向へ突出する係合片75を有している。
切換用駆動装置71は、揺動自在な駆動アーム77と、駆動アーム77を揺動させる切換用モータ78と、切換用モータ78の回転を減速して駆動アーム77に伝達する歯車機構79とを有している。歯車機構79は複数の歯車80a〜80fからなり、このうち、歯車80fは、扇形状を有しており、駆動アーム77に一体に取り付けられている。
切換用モータ78が一方向に回転すると、切換用モータ78の回転は歯車機構79で減速されて駆動アーム77に伝達され、図12に示すように、駆動アーム77が、一方向に揺動し、切換用コイルばね69の付勢力に抗して連動筒68の係合片75を押圧するため、連動筒68と切換軸67とアーム部材66とが切換軸67の軸心に沿って一方向に移動し、切換リング58が遮断位置P1から接続位置P2に移動する。
また、切換用モータ78が他方向(逆方向)に回転すると、切換用モータ78の回転は歯車機構79で減速されて駆動アーム77に伝達され、図8に示すように、駆動アーム77が、他方向に揺動し、切換用コイルばね69の付勢力によって、連動筒68と切換軸67とアーム部材66とが切換軸67の軸心に沿って他方向に移動し、切換リング58が接続位置P2から遮断位置P1に移動する。
図6,図7に示すように、切換機構28が変速用クラッチ27のカム52を補助駆動軸16の凹部53から離脱させて補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路を遮断した場合、低速用の回転伝達経路20に切り換えられる。
ここで、低速用の回転伝達経路20とは、図4に示すように、搭乗者の人力駆動力F1がクランク軸15から人力伝達体31と連動筒体32とを経て入力側回転体23に伝達される経路と、モータ8の補助駆動力F2が回転軸48から補助駆動力伝達用回転体47と補助駆動軸16と入力側中間回転体24とを経て入力側回転体23に伝達される経路と、入力側回転体23において合成された人力駆動力F1と補助駆動力F2との合力F3が入力側回転体23から回転出力部材17へ伝達される経路とを有している。
また、図10,図11に示すように、切換機構28が変速用クラッチ27のカム52を補助駆動軸16の凹部53に係合させて補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路を接続した場合、高速用の回転伝達経路21に切り換えられる。
ここで、高速用の回転伝達経路21とは、図9に示すように、搭乗者の人力駆動力F1がクランク軸15から人力伝達体31と連動筒体32と入力側回転体23と入力側中間回転体24とを経て補助駆動軸16に伝達される経路と、モータ8の補助駆動力F2が回転軸48から補助駆動力伝達用回転体47を経て補助駆動軸16に伝達される経路と、補助駆動軸16において合成された人力駆動力F1と補助駆動力F2との合力F3が補助駆動軸16から出力側中間回転体26と出力側回転体25とを経て回転出力部材17へ伝達される経路とを有している。
尚、上記低速用の回転伝達経路20(図4参照)と高速用の回転伝達経路21(図9参照)とは変速比率(ギヤ比)が異なっている。すなわち、低速用の回転伝達経路20における変速比率は、(補助駆動力伝達用回転体47の歯数/モータ8の回転軸48の歯部50の歯数)×(入力側回転体23の歯数/入力側中間回転体24の歯数)となる。
また、高速用の回転伝達経路21における変速比率は、(補助駆動力伝達用回転体47の歯数/モータ8の回転軸48の歯部50の歯数)×(出力側回転体25の歯数/出力側中間回転体26の歯数)となる。
尚、低速用の回転伝達経路20における変速比率が高速用の回転伝達経路21における変速比率よりも大きくなる。
以下、上記構成における作用を説明する。
搭乗者が変速段手元操作部11を操作して低速段(第1速)を選択した場合、図8に示すように、切換用モータ78が他方向に回転し、駆動アーム77が、他方向に揺動し、切換用コイルばね69の付勢力によって、切換リング58がアーム部材66に連動して接続位置P2から遮断位置P1に移動する。
これにより、図6,図7に示すように、切換リング58の内周面が変速用クラッチ27のカム52の一端部52aを径方向内側に押し、カム52が、ねじりコイルばね54の付勢力に抗して、ピン51を中心に離脱方向56へ揺動する。このため、カム52の他端部52bが補助駆動軸16の凹部53から径方向外側へ離脱し、補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路が遮断される。
この状態で、ペダル7を漕ぐことにより、図4に示すように、ペダル7に作用する踏力が人力駆動力F1としてクランク軸15に入力され、クランク軸15と共に人力伝達体31と連動筒体32とが回転する。このとき、図5に示すように、入力側の一方向クラッチ44のラチェット爪44aが起立姿勢に切り換えられて入力側回転体23の歯部23aに係合するため、連動筒体32は、回転方向において、入力側の一方向クラッチ44を介して入力側回転体23に接続され、連動筒体32の回転が入力側回転体23に伝達される。
また、図4に示すように、モータ8が駆動されて回転軸48が回転することにより、補助駆動力伝達用回転体47と補助駆動軸16とが回転し、補助駆動軸16と共に入力側中間回転体24が回転し、入力側中間回転体24の回転が入力側回転体23に伝達される。これにより、ペダル7からの人力駆動力F1とモータ8からの補助駆動力F2との合力F3で入力側回転体23が回転し、このとき、図5に示すように、出力側の一方向クラッチ45のラチェット爪45aが起立姿勢に切り換えられて回転出力部材17の歯部17aに係合する。このため、入力側回転体23は、回転方向において、出力側の一方向クラッチ45を介して回転出力部材17に接続され、入力側回転体23の回転が回転出力部材17に伝達されて回転出力部材17が回転し、駆動スプロケット34が回転するとともにチェーン36が回動し、後輪4が回転する。
この際、回転出力部材17と共に出力側回転体25も回転するため、出力側回転体25の回転が出力側中間回転体26に伝達されて、出力側中間回転体26も回転するが、上記のように出力側中間回転体26と補助駆動軸16との間の回転伝達経路は遮断されているため、出力側中間回転体26の回転は補助駆動軸16に伝達されない。
このように変速用クラッチ27のカム52が補助駆動軸16の凹部53から離脱することにより(図7参照)、補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路が遮断されて、低速用の回転伝達経路20に切り換えられ、図4に示すように、クランク軸15に入力された人力駆動力F1と補助駆動軸16に入力された補助駆動力F2とが合成され、これら両者の合力F3が、低速用の回転伝達経路20を経て、回転出力部材17へ伝達される。
また、搭乗者が変速段手元操作部11を操作して高速段(第2速)を選択した場合、図12に示すように、切換用モータ78が一方向に回転し、駆動アーム77が一方向に揺動して連動筒68の係合片75を押圧するため、連動筒68と切換軸67とアーム部材66とが一方向に移動し、切換リング58が遮断位置P1から接続位置P2に移動する。
これにより、図10,図11に示すように、切換リング58の内周面が変速用クラッチ27のカム52の一端部52aから補助駆動軸16の軸心方向へ離間し、カム52がねじりコイルばね54の付勢力によってピン51を中心に係合方向55へ揺動し、カム52の他端部52bが補助駆動軸16の凹部53に係合するため、補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路が接続される。
この状態で、ペダル7を漕ぐことにより、図9に示すように、ペダル7に作用する踏力が人力駆動力F1としてクランク軸15に入力され、クランク軸15と共に人力伝達体31と連動筒体32とが回転する。このとき、図5に示すように、入力側の一方向クラッチ44のラチェット爪44aが起立姿勢に切り換えられて入力側回転体23の歯部23aに係合するため、連動筒体32は、回転方向において、入力側の一方向クラッチ44を介して入力側回転体23に接続され、連動筒体32の回転が入力側回転体23に伝達されて、入力側回転体23が回転する。
入力側回転体23は入力側中間回転体24と歯合しているため、入力側回転体23の回転が入力側中間回転体24を介して補助駆動軸16に伝達される。
また、モータ8が駆動されて回転軸48が回転することにより、回転軸48の回転が補助駆動力伝達用回転体47を介して補助駆動軸16に伝達される。これにより、ペダル7からの人力駆動力F1とモータ8からの補助駆動力F2との合力F3で補助駆動軸16が回転し、このとき、上記のように補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路が接続されているため、補助駆動軸16の回転がカム52を介して出力側中間回転体26に伝達され、出力側中間回転体26が補助駆動軸16と共に回転する。これにより、出力側中間回転体26に歯合している出力側回転体25が回転し、出力側回転体25と共に回転出力部材17が回転し、駆動スプロケット34が回転するとともにチェーン36が回動し、後輪4が回転する。
この際、上記のように入力側回転体23と回転出力部材17とがそれぞれ回転しているが、ギヤ比の違いによって、回転出力部材17が入力側回転体23の回転速度よりも高速となる。これにより、出力側の一方向クラッチ45のラチェット爪45aが回転出力部材17の歯部17aに係合せず、入力側回転体23は空回り状態に保たれる。これにより、モータ8側からの補助駆動力F2は入力側回転体23から回転出力部材17へ伝達されない。
このように変速用クラッチ27のカム52が補助駆動軸16の凹部53に係合することにより(図11参照)、補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路が接続されて、高速用の回転伝達経路21に切り換えられ、図9に示すように、クランク軸15に入力された人力駆動力F1と補助駆動軸16に入力された補助駆動力F2とが合成され、これら両者の合力F3が、高速用の回転伝達経路21を経て、回転出力部材17へ伝達される。
上記のように高速段(第2速)に切り換えた際、図9〜図11に示すように、変速用クラッチ27は補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路を接続しており、補助駆動軸16の回転トルクは回転出力部材17の回転トルクよりも小さくなるため、補助駆動軸16に係合している変速用クラッチ27のカム52に作用する力(荷重)が低減する。従って、変速用クラッチ27への負荷が軽減され、カム52の強度を下げたり、或いは、カム52の設置数を減らすことができ、変速用クラッチ27を小型軽量化することができ、これに伴って、補助駆動ユニット9を小型軽量化することができる。
また、補助駆動軸16の回転速度は回転出力部材17の回転速度よりも高くなるため、変速用クラッチ27を切り換えて回転伝達経路を接続する際、カム52が補助駆動軸16の凹部53に噛み合うタイミングが早くなる。従って、低速段から高速段へ切り換えるのに要する時間が短縮される。
また、連動筒体32が人力駆動力F1によって回転した際、入力側の一方向クラッチ44のラチェット爪44aが起立姿勢に切り換えられて入力側回転体23の歯部23aに係合するため、連動筒体32の回転が入力側の一方向クラッチ44を介して入力側回転体23に伝達されるが、入力側回転体23の回転は連動筒体32に伝達されない。
これにより、クランク軸15に入力された人力駆動力F1は入力側の一方向クラッチ44を介して連動筒体32から入力側回転体23に伝達されるが、モータ8側からの補助駆動力F2は入力側の一方向クラッチ44によって入力側回転体23から連動筒体32へ伝達されない。
また、搭乗者が変速段手元操作部11を操作して高速段(第2速)から低速段(第1速)にシフトダウンした際、切換リング58が接続位置P2(図10参照)から遮断位置P1(図6参照)に移動する途中において、図14に示すように、出力側中間回転体26と共に回転している変速用クラッチ27のカム52の一端部52aが切換リング58のカム面62に摺接しながら強制的に径方向内側へ案内されるため、ピン51を中心にカム52が確実に離脱方向56へ揺動し、図7に示すように、カム52の他端部52bが補助駆動軸16の凹部53から径方向外側へ離脱し、補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路が確実に遮断される。これにより、高速段から低速段へ良好にシフトダウンすることができる。
また、モータ8の回転は回転軸48の歯部50と補助駆動力伝達用回転体47との噛み合いによって減速されるため、図4に示した低速段(第1速)における変速比率および図9に示した高速段(第2速)における変速比率をそれぞれ大きく設定することができる。
これにより、低速段および高速段において、駆動スプロケット34の回転速度が遅くなるため、駆動スプロケット34の直径を大きくすることが可能であり、一般に汎用されている駆動スプロケットを使用することができる。また、上記のように変速比率を大きく設定できるため、駆動スプロケット34のトルクが増大し、その分、モータ8の出力トルクを低減することができ、これにより、モータ8を小型軽量化することができる。
(第2の実施の形態)
先述した第1の実施の形態では、図4に示すように、変速用クラッチ27は、補助駆動軸16の軸心方向において、入力側中間回転体24と出力側中間回転体26との間に配置されているが、本第2の実施の形態では、図17〜図22に示すように、変速用クラッチ27は、補助駆動軸16の軸心方向において、補助駆動軸16の先端部と出力側中間回転体26との間に配置されている。
すなわち、変速用クラッチ27のカム52は、ピン51を介して、出力側中間回転体26の他端面に揺動自在に設けられている。
また、補助駆動軸16は、先端部に、直径が細くなった小径部16aを有している。小径部16aにはニードルベアリング81(補助駆動軸用軸受部材の一例)が外嵌され、補助駆動軸16の先端部は、ニードルベアリング81を介して、回転自在にユニットケース22に支持されている。尚、ニードルベアリング81の外径Aは切換リング58の内径Bよりも小さい。
また、先述した第1の実施の形態では、図6,図8,図10,図12に示すように、切換リング58の遮断位置P1が右側、接続位置P2が左側に設定されているが、本第2の実施の形態では、図18,図21に示すように、切換リング58の遮断位置P1が左側、接続位置P2が右側に設定されている。
図21に示すように、切換リング58が接続位置P2に移動した場合、切換リング58がニードルベアリング81の径方向における外側に位置し、切換リング58とニードルベアリング81とが補助駆動軸16の軸心方向において所定範囲Cにわたり重複する。これにより、補助駆動ユニット9を補助駆動軸16の軸心方向において短縮することができる。
さらに、先述した第1の実施の形態と同様の作用および効果が得られる。
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態を図23〜図30に基づいて説明する。
図23〜図26に示すように、変速用クラッチ85は、ピン51を介して補助駆動軸16に設けられた「へ」の字形状のカム86(係合体の一例)と、出力側中間回転体26の内周に形成された複数(図25では6箇所)の凹部87(係合部の一例)と、ねじりコイルばね88(係合体用付勢部材の一例)とを有している。
カム86は、補助駆動軸16に形成された開口窓89内に設けられており、ピン51を中心に係合方向55(図29参照)と離脱方向56(図25参照)とに揺動することによって、凹部87に係脱自在である。ねじりコイルばね88は、ピン51に外嵌されており、カム86を係合方向55に付勢している。尚、カム86は単数個設けられているが、複数個設けられてもよい。また、凹部87は出力側中間回転体26の周方向における6箇所に形成されているが、6箇所以外の複数箇所又は単数箇所に設けられてもよい。
切換機構91は、補助駆動軸16の内部から、カム86を凹部87に係脱させるプッシュロッド方式のものであり、補助駆動軸16に形成された切換孔92と、切換孔92内に設けられた切換部材93と、切換部材93を軸心方向へ移動させる移動手段94とを有している。尚、開口窓89は補助駆動軸16の外周面と切換孔92とに開口している。
図24に示すように移動手段94によって切換部材93が切換孔92内の遮断位置P1に移動した場合、図25に示すように、切換部材93がカム86の一端部86aを径方向外側へ押すため、カム86は、ねじりコイルばね88の付勢力に抗して離脱方向56へ揺動し、他端部86bが凹部87から離脱する。
また、図28に示すように移動手段94によって切換部材93が切換孔92内の接続位置P2に移動した場合、切換部材93がカム86の一端部86aから離間するため、図29に示すように、カム86は、ねじりコイルばね88の付勢力によって係合方向55へ揺動し、他端部86bが凹部87に係合する。
尚、切換部材93はテーパー面95を有する円錐台形状の部材である。
移動手段94は、切換孔92に挿入されて切換部材93を一方向へ押して遮断位置P1から接続位置P2に移動させるプッシュロッド96と、プッシュロッド96を軸心方向へ駆動させる切換用駆動装置97と、切換孔92に挿入されて切換部材93を他方向へ押して接続位置P2(図28参照)から遮断位置P1(図24参照)に移動させる切換用コイルばね98(切換用付勢具の一例)とを有している。
図26に示すように、切換用駆動装置97は、揺動自在な駆動アーム77と、駆動アーム77を揺動させる切換用モータ78と、切換用モータ78の回転を減速して駆動アーム77に伝達する歯車機構79とを有している。歯車機構79は複数の歯車80a〜80fからなり、このうち、歯車80fは、扇形状を有しており、駆動アーム77に一体に取り付けられている。
切換用モータ78が一方向に回転すると、切換用モータ78の回転は歯車機構79で減速されて駆動アーム77に伝達され、図30に示すように、駆動アーム77が、一方向に揺動し、切換用コイルばね98の付勢力に抗してプッシュロッド96を一方向へ押圧するため、プッシュロッド96が切換部材93を押して遮断位置P1(図23,図24参照)から接続位置P2(図27,図28参照)に移動させる。
また、切換用モータ78が他方向(逆方向)に回転すると、切換用モータ78の回転は歯車機構79で減速されて駆動アーム77に伝達され、図26に示すように、駆動アーム77が他方向に揺動してプッシュロッド96から退避するため、切換部材93が切換用コイルばね98の付勢力によって接続位置P2(図27,図28参照)から遮断位置P1(図23,図24参照)に移動する。
尚、図25に示すように、切換機構91が変速用クラッチ85のカム86を出力側中間回転体26の凹部87から離脱させて補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路を遮断した場合、図23に示すように低速用の回転伝達経路20に切り換えられる。
また、図29に示すように、切換機構91が変速用クラッチ85のカム86を出力側中間回転体26の凹部87に係合させて補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路を接続した場合、図27に示すように高速用の回転伝達経路21に切り換えられる。
以下、上記構成における作用を説明する。
搭乗者が変速段手元操作部11を操作して低速段(第1速)を選択した場合、切換用モータ78が他方向に回転し、図26に示すように、駆動アーム77が他方向に揺動してプッシュロッド96から退避するため、図24に示すように、切換部材93が切換用コイルばね98の付勢力によって接続位置P2から遮断位置P1に移動する。
これにより、図24,図25に示すように、切換部材93がカム86の一端部86aを径方向外側へ押し、カム86がねじりコイルばね88の付勢力に抗して離脱方向56へ揺動し、カム86の他端部86bが凹部87から径方向内側へ離脱するため、補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路が遮断される。
このように変速用クラッチ85のカム86が出力側中間回転体26の凹部87から離脱することにより、補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路が遮断されて、図23に示すように、低速用の回転伝達経路20に切り換えられ、クランク軸15に入力された人力駆動力F1とモータ8から補助駆動軸16に入力された補助駆動力F2とが合成され、これら両者の合力F3が、低速用の回転伝達経路20を経て、回転出力部材17へ伝達される。
また、搭乗者が変速段手元操作部11を操作して高速段(第2速)を選択した場合、切換用モータ78が一方向に回転し、図30に示すように、駆動アーム77が、一方向に揺動し、切換用コイルばね98の付勢力に抗してプッシュロッド96を一方向へ押圧するため、図28に示すように、プッシュロッド96が切換部材93を押して遮断位置P1から接続位置P2に移動させる。
これにより、図28,図29に示すように、切換部材93がカム86の一端部86aから離間し、カム86がねじりコイルばね88の付勢力によって係合方向55へ揺動し、カム86の他端部86bが凹部87に係合するため、補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路が接続される。
このように変速用クラッチ85のカム86が出力側中間回転体26の凹部87に係合することにより、補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路が接続されて、図27に示すように、高速用の回転伝達経路21に切り換えられ、クランク軸15に入力された人力駆動力F1と補助駆動軸16に入力された補助駆動力F2とが合成され、これら両者の合力F3が、高速用の回転伝達経路21を経て、回転出力部材17へ伝達される。
補助駆動軸16の内部には、切換機構91の切換部材93とプッシュロッド96と切換用コイルばね98とが設けられており、切換機構91は補助駆動軸16の内部から変速用クラッチ85のカム86を出力側中間回転体26の凹部87に係脱させるため、補助駆動軸16の外部からカムを凹部87に係脱させる切換機構に比べて、切換機構91を設けるために要するスペースが縮小され、補助駆動ユニット9を小型軽量化することができる。
上記第3の実施の形態では、切換部材93とプッシュロッド96を個別の部品にしているが、プッシュロッド96の先端に切換部材93を一体的に取り付けたものであってもよい。
(第4の実施の形態)
次に、図31〜図38に基づいて、第4の実施の形態を説明する。
図31,35に示すように、補助駆動軸16とモータ8の回転軸48との間に、駆動側中間軸128が回転自在に設けられている。駆動側中間軸128には第1の駆動側回転体129が外嵌されている。第1の駆動側回転体129は、歯車であり、回転軸48の歯部50に歯合している。
また、駆動側中間軸128は第2の駆動側回転体130を有している。第2の駆動側回転体130は、歯車であり、補助駆動軸16に設けられている補助駆動力伝達用回転体47に歯合している。これにより、モータ8の回転は、回転軸48と第1の駆動側回転体129と駆動側中間軸128と補助駆動力伝達用回転体47とを介して、補助駆動軸16に伝達される。
図31〜図34に示すように、変速用クラッチ106は、出力側中間回転体26の内周に設けられた揺動自在な複数のラチェット爪107(係合体の一例)と、補助駆動軸16の外周に形成された複数の凹部108(係合部の一例)と、円環状のスプリング109(係合体用付勢部材の一例)とを有している。ラチェット爪107は、凹部108に係脱自在であるとともに、スプリング109によって係合方向55(図37参照)に付勢されている。
尚、ラチェット爪107は出力側中間回転体26の周方向における複数箇所(例えば2箇所)に所定角度(例えば180°)毎に配置され、凹部108は補助駆動軸16の周方向における複数箇所(例えば6箇所)に所定角度(例えば60°)毎に形成されている。
切換機構115は、補助駆動軸16の内部から、ラチェット爪107を凹部108に係脱させるプッシュロッド方式のものであり、補助駆動軸16に形成された軸心方向の切換孔116と、補助駆動軸16の凹部108と切換孔116とに連通する径方向の複数の保持孔117と、保持孔117内に保持された球(ボール)形状の転動体118a,118bと、切換孔116内に設けられて転動体118a,118bを補助駆動軸16の径方向へ移動させる切換部材119と、切換部材119を補助駆動軸16の軸心方向へ移動させる移動手段120とを有している。
尚、保持孔117は、一端部が補助駆動軸16の凹部108に開口し、他端部が切換孔116に開口している。また、転動体118a,118bは、各保持孔117内に、補助駆動軸16の径方向において内外2個保持されている。また、切換部材119はテーパー面121を有する円錐台形状の部材である。
図32に示すように、移動手段120によって切換部材119が切換孔116内の遮断位置P1に移動した場合、切換部材119が転動体118a,118bを補助駆動軸16の径方向外側へ移動させて、図33に示すように、外側の転動体118aがラチェット爪107を凹部108から離脱させる。
また、図36に示すように、移動手段120によって切換部材119が切換孔116内の接続位置P2に移動した場合、切換部材119が内側の転動体118bから退避して、転動体118a,118bが補助駆動軸16の径方向内側へ移動し、図37に示すように、ラチェット爪107が、スプリング109の付勢力によって係合方向55へ揺動し、凹部108に係合する。
移動手段120は、切換孔116に挿入されて切換部材119を接続位置P2から遮断位置P1に移動させる切換用コイルばね125(切換用付勢具の一例)と、切換孔116に挿入されて切換部材119を遮断位置P1から接続位置P2に移動させるプッシュロッド123と、プッシュロッド123を軸心方向へ駆動させる切換用駆動装置124とを有している。
切換部材119はプッシュロッド123の先端部(一端部)に設けられている。また、プッシュロッド123の基端部(他端部)には係止片122が設けられている。図31,図35に示すように、プッシュロッド123は、ユニットケース22内に固定された支持フレーム126に、軸心方向へ移動自在に支持されている。切換用コイルばね125は、プッシュロッド123に外嵌され、切換部材119と支持フレーム126との間に配置されている。
切換用駆動装置124は、揺動自在な駆動アーム77と、駆動アーム77を揺動させる切換用モータ78と、切換用モータ78の回転を減速して駆動アーム77に伝達する歯車機構79とを有している。歯車機構79は複数の歯車80a〜80fからなり、このうち、歯車80fは、扇形状を有しており、駆動アーム77に一体に取り付けられている。
切換用モータ78が一方向に回転すると、切換用モータ78の回転は歯車機構79で減速されて駆動アーム77に伝達され、図38に示すように、駆動アーム77が、一方向に揺動して係止片122に係合し、切換用コイルばね125の付勢力に抗してプッシュロッド123を一方向へ移動させる。これにより、プッシュロッド123と共に切換部材119が遮断位置P1(図34参照)から接続位置P2(図38参照)に移動する。
また、切換用モータ78が他方向(逆方向)に回転すると、切換用モータ78の回転は歯車機構79で減速されて駆動アーム77に伝達され、図34に示すように、駆動アーム77が他方向に揺動して係止片122から退避するため、切換部材119がプッシュロッド123と共に、切換用コイルばね125の付勢力によって、接続位置P2(図38参照)から遮断位置P1に移動する。
尚、図32,図33に示すように、切換機構115が変速用クラッチ106のラチェット爪107を凹部108から離脱させて補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路を遮断した場合、図31に示すように低速用の回転伝達経路20に切り換えられる。
また、図36,図37に示すように、切換機構115が変速用クラッチ106のラチェット爪107を凹部108に係合させて補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路を接続した場合、図35に示すように高速用の回転伝達経路21に切り換えられる。
以下、上記構成における作用を説明する。
搭乗者が変速段手元操作部11を操作して低速段(第1速)を選択した場合、図34に示すように、切換用モータ78が他方向に回転し、駆動アーム77が他方向に揺動して係止片122から退避するため、切換用コイルばね125の付勢力によって、切換部材119がプッシュロッド123と共に接続位置P2から遮断位置P1に移動する。
これにより、図32,図33に示すように、転動体118a,118bが切換部材119に押されて補助駆動軸16の径方向外側へ移動し、外側の転動体118aがスプリング109の付勢力に抗してラチェット爪107を径方向外側(離脱方向56)へ押すため、ラチェット爪107が離脱方向56へ揺動して凹部108から離脱し、補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路が遮断される。これにより、図31に示すように、低速用の回転伝達経路20に切り換えられ、クランク軸15に入力された人力駆動力F1と補助駆動軸16に入力された補助駆動力F2とが合成され、これら両者の合力F3が、低速用の回転伝達経路20を経て、回転出力部材17へ伝達される。
また、搭乗者が変速段手元操作部11を操作して高速段(第2速)を選択した場合、図38に示すように、切換用モータ78が一方向に回転し、駆動アーム77が、一方向に揺動して係止片122に係合し、切換用コイルばね125の付勢力に抗してプッシュロッド123を一方向へ移動させる。これにより、プッシュロッド123と共に切換部材119が遮断位置P1から接続位置P2に移動する。
これにより、図36,図37に示すように、切換部材119が内側の転動体118bから退避し、スプリング109によって係合方向55へ付勢されているラチェット爪107が外側の転動体118aを径方向内側へ押すため、転動体118a,118bが径方向内側へ移動してラチェット爪107から退避する。
このため、ラチェット爪107がスプリング109の付勢力によって径方向内側(係合方向55)へ揺動して凹部108に係合し、補助駆動軸16と出力側中間回転体26との間の回転伝達経路が接続される。これにより、図35に示すように、高速用の回転伝達経路21に切り換えられ、クランク軸15に入力された人力駆動力F1と補助駆動軸16に入力された補助駆動力F2とが合成され、これら両者の合力F3が、高速用の回転伝達経路21を経て、回転出力部材17へ伝達される。
補助駆動軸16の内部には、切換機構115の転動体118a,118bと切換部材119とプッシュロッド123と切換用コイルばね125とが設けられており、切換機構115は補助駆動軸16の内部から変速用クラッチ106のラチェット爪107を補助駆動軸16の凹部108に係脱させるため、補助駆動軸16の外部からラチェット爪を凹部に係脱させる切換機構に比べて、切換機構115を設けるために要するスペースが縮小され、補助駆動ユニット9を小型軽量化することができる。
(第5の実施の形態)
次に図39に基づいて、第5の実施の形態を説明する。
モータ8の回転軸48の両端部はそれぞれ、ベアリング135,136(回転軸用軸受部材)によって、回転自在にユニットケース22に支持されている。尚、回転軸48に形成された歯部50は両ベアリング135,136間に位置し、両ベアリング135,136間において、補助駆動力伝達用回転体47と歯部50とが噛み合っている。
これによると、回転軸48が回転することによって補助駆動力伝達用回転体47が回転し、補助駆動力伝達用回転体47の回転が人力駆動力切断用の一方向クラッチ49を介して補助駆動軸16に伝えられ、補助駆動軸16が回転する。
この際、回転軸48の両端部はベアリング135,136によって回転自在にユニットケース22に支持されているため、回転軸48の軸心が径方向へぶれるのを防止することができ、回転軸48の回転が安定する。