JP2010116222A - 搬送装置及び記録装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】媒体を迅速にその支持部材に吸着させると共に、媒体と支持部材との間に導電性部材が介在していても吸着力が低下しにくくする。
【解決手段】ベルト帯電ローラ136は搬送ベルト43に正負交互に複数の帯電区間を形成する。搬送ローラ対22は、用紙Pに正負交互に複数の帯電区間を形成する。制御部101は、用紙Pに形成された帯電区間と搬送ベルト43に形成された帯電区間とが搬送ベルト43上において所定の整合率で配置されるタイミングで、ピックアップローラ25及び搬送ローラ対21、22を回転させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、搬送装置及び記録装置に関する。
特許文献1には、記録媒体としての記録紙を搬送する搬送ベルトにACバイアスを加え、搬送ベルトの絶縁層に正負の電荷を搬送ベルトの移動方向に対して交互に印加するインクジェット記録装置が開示されている。このように搬送ベルトに交互に正負の電荷が印加されることによって、搬送ベルトの表面付近に微小な交番電界が生じる。そのため、記録紙がその支持部材である搬送ベルトに静電力(クーロン力)によって吸着され、搬送ベルトからの記録紙の浮き上がりを防止することができる。
特開2003−103857号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術のように搬送ベルトだけを帯電させる場合、以下のような問題が生じる。まず、搬送ベルトの電荷に起因して記録紙内に誘電分極が生じ、さらに搬送ベルトからの電界を緩和しながら記録紙面上には搬送ベルトの電荷と逆極性の電荷が誘起される。この誘起される電荷によって大きな吸着力で記録紙を吸着できるようになるまである程度長い時間を要するので、この間、記録紙と搬送ベルトとの吸着力不足が生じる。そのために、高速搬送を行うことが困難となる。さらには、長期に亘るインクジェット記録装置の使用期間中には、搬送ベルトの外側面にインクが付着することがある。インクはカーボンブラック、有機顔料などの導電性材料を含んでいるため、インクの付着によって外側面の導体化が進む。このように搬送ベルトの外周面と記録紙との間に導電性部材(一例として、搬送ベルトの外側面に付着したインク層)が介在すると、記録紙に誘電分極を起こす搬送ベルトからの電界が遮蔽されてしまい、吸着力が大幅に低下してしまう。また、同様の問題は、両面印字を行う場合において、第1面に付着した水分を含むインク層が電界を遮蔽したり、仮に記録紙を帯電させることができても、インクと搬送ベルトとの間の抵抗値が低下して記録紙にある電荷と搬送ベルトにある電荷とが中和することに起因して、第2面への印字時にも生じる。
さらに、上述したような問題は、インクジェット記録装置などの印字装置だけではなく、特許文献1に開示された静電吸着機構を利用した一般の搬送装置においても生じる。
本発明の目的は、媒体を迅速にその支持部材に吸着させることができると共に、媒体とその支持部材との間に導電性部材が介在していても吸着力が低下しにくい搬送装置及び記録装置を提供することである。
本発明の搬送装置は、載置された媒体を支持する支持部材を含んでおり、前記支持部材の移動に伴って前記媒体を搬送経路に沿って搬送する搬送機構と、前記支持部材を前記搬送経路に沿って交互に異なる極性に帯電させることによって、前記支持部材に複数の帯電区間を形成する第1帯電装置と、前記媒体が前記支持部材に載置されるように、前記媒体を前記支持部材へと移送する移送機構と、前記移送機構によって前記支持部材上に載置される前の前記媒体を、前記移送機構による前記媒体の移送経路に沿って交互に異なる極性に帯電させることによって、前記媒体に複数の帯電区間を形成する第2帯電装置と、載置された前記媒体の帯電パターンと前記支持部材の帯電パターンとが前記支持部材上において所定の関係を有するように、前記搬送機構、前記移送機構、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置の少なくともいずれか1つを制御する制御手段とを備えている。
この構成によると、媒体と支持部材との両方を帯電させることで、媒体を迅速に支持部材に吸着させることができる。そのため、高速搬送が可能となる。また、媒体と支持部材との間に導電性部材(インク層など)が介在していても、吸着力が低下しにくい。そのため、支持部材からの媒体の浮き上がりを抑制することができる。さらに、各媒体を交互に両極性に帯電させるので、媒体の帯電区間が搬送後に短時間で消滅しやすい。したがって、搬送済みの複数の媒体が一個所に集められる場合であっても、これら媒体のハンドリング性が悪化することがほとんどない。
前記制御手段は、前記第1帯電装置によって前記支持部材に形成された第1の極性を有する前記帯電区間に対する、前記第2帯電装置によって前記媒体に形成された第2の極性を有する前記帯電区間の前記支持部材上における重なりの割合である整合率が、前記支持部材に形成されたいずれの前記帯電区間についても同じとなるように、前記搬送機構、前記移送機構、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置の少なくともいずれか1つを制御することが好ましい。これによって、支持部材による媒体の吸着力を一様にすることができる。したがって、少ない帯電量で大きな吸着力を得ることができる。なお、整合率とは、支持部材に形成された第1の極性を有する帯電区間の搬送経路に沿った長さに対する、媒体に形成された第2の極性を有する帯電区間のうち前記支持部材に形成された第1の極性を有する帯電区間と対向する部分の搬送経路に沿った長さの比率である。第1の極性、第2の極性はプラス、マイナスのいずれであってもよい。
前記支持部材に形成された前記複数の帯電区間の前記搬送経路に沿った長さが互いに同じであると共に、前記媒体に形成された前記複数の帯電区間の前記移送経路に沿った長さが互いに同じであり、前記支持部材の1帯電区間の前記搬送経路に沿った長さが前記媒体の1帯電区間の前記移送経路に沿った長さと同じであることが好ましい。これによって、帯電区間の長さをすべて同じとすることで、制御が簡易となる。
前記制御手段は、前記媒体に形成された第1の極性を有する帯電区間が前記支持部材上において前記支持部材に形成された第2の極性を有するいずれかの帯電区間と対向するように、前記搬送機構、前記移送機構、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置の少なくともいずれか1つを制御することが好ましい。これによって、2つの帯電区間が対向する(整合率=1)ので、非常に大きな吸着力を得ることができる。
本発明の搬送装置は、前記支持部材を除電する除電装置をさらに備えていることが好ましい。これによって、前回の帯電によって形成された帯電区間を消去することで、支持部材における帯電区間を形成する場所の自由度が高められると共に、支持部材の電位が次第に高くなるのを防止できる。
前記除電装置は、前記支持部材に形成された各帯電区間に当該帯電区間とは逆極性の電荷を付与することによって、前記支持部材を除電することが好ましい。これによって、帯電区間を高い信頼性で消去することができる。
本発明の搬送装置は、前記支持部材の動作を検知する動作センサをさらに備えており、前記制御手段は、前記動作センサの検知結果に基づいて、前記媒体の帯電パターンと前記支持部材の帯電パターンとが前記支持部材上において前記所定の関係を有するように、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置の少なくともいずれか1つを制御することが好ましい。このように動作センサを用いることで、媒体と支持部材とを所定の関係にする制御が容易となる。
本発明の搬送装置は、前記支持部材の動作を検知する動作センサをさらに備えており、前記制御手段は、前記動作センサの検知結果に基づいて、前記媒体が前記支持部材の所定領域に載置されるように、前記搬送機構及び前記移送機構の少なくともいずれか1つを制御すると共に、前記第1帯電装置が前記支持部材の前記所定領域を帯電させる期間だけ動作し且つ前記第2帯電装置が前記媒体を帯電させる期間だけ動作するように、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置を制御することが好ましい。これによって、第1帯電装置及び第2帯電装置の動作時間を短縮することができる。そのため、これらの長寿命化と消費電力の低減とを図ることができる。
前記制御手段は、前記支持部材に形成された第1の極性を有する前記帯電区間に対する、前記媒体に形成された第2の極性を有する前記帯電区間の前記支持部材上における重なりの割合である整合率が可変となるように、前記搬送機構、前記移送機構、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置の少なくともいずれか1つを制御することが好ましい。これによって、吸着力の調整をすることができる。
本発明の搬送装置は、湿度センサをさらに備えており、前記制御手段は、前記湿度センサによって検知された湿度が高いほど、前記第1帯電装置の帯電電圧及び前記第2帯電装置の帯電電圧の少なくともいずれか1つが大きくなるように、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置の少なくともいずれか1つを制御することが好ましい。これによって、湿度に応じた吸着力を得ることができる。
本発明の搬送装置は、シート状である前記媒体の厚さを指示する厚さ指示手段をさらに備えており、前記制御手段は、前記厚さ指示手段が指示する前記媒体の厚さが大きいほど、前記第1帯電装置の帯電電圧及び前記第2帯電装置の帯電電圧の少なくともいずれか1つが大きくなるように、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置の少なくともいずれか1つを制御することが好ましい。これによって、媒体の厚さに応じた吸着力を得ることができる。
前記第2帯電装置による媒体の1帯電区間あたりの帯電量が前記第1帯電装置による前記支持部材の1帯電区間あたりの帯電量よりも小さいことが好ましい。これによって、媒体の外側(媒体から支持部材へ向かう方向とは反対側)への漏れ電界が抑制され、搬送中に媒体外部に電気的外乱が生じるのを抑制することができる。例えば、インクジェットプリンタに応用した場合、漏れ電界に起因したインク滴の飛翔経路の変位を抑制することができる。また、電気的信号に対する静電気放電ノイズの低減に寄与する。
前記支持部材が無端のベルトであり、前記搬送機構は、前記ベルトが架張された2つのローラをさらに含んでいることが好ましい。これによって、簡単な構造とすることができる。
本発明の記録装置は、載置された記録媒体を支持する支持部材を有し、前記支持部材の移動に伴って前記記録媒体を搬送経路に沿って搬送する搬送機構と、前記支持部材に支持されている前記記録媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記支持部材を前記搬送経路に沿って交互に異なる極性に帯電させることによって、前記支持部材に複数の帯電区間を形成する第1帯電装置と、前記記録媒体が前記支持部材に載置されるように、前記記録媒体を前記支持部材へと移送する移送機構と、前記移送機構によって前記支持部材上に載置される前の前記記録媒体を、前記移送機構による前記記録媒体の移送経路に沿って交互に異なる極性に帯電させることによって、前記記録媒体に複数の帯電区間を形成する第2帯電装置と、載置された前記記録媒体の帯電パターンと前記支持部材の帯電パターンとが前記支持部材上において所定の関係を有するように、前記搬送機構、前記移送機構、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置の少なくともいずれか1つを制御する制御手段とを備えている。
この構成によると、媒体と支持部材との両方を帯電させることで、媒体を迅速に支持部材に吸着させることができる。そのため、高速記録が可能となる。また、媒体と支持部材との間に導電性部材(インク層など)が介在していても、吸着力が低下しにくい。そのため、支持部材からの媒体の浮き上がりを抑制することができる。したがって、液体吐出ヘッドと支持部材とのギャップを小さくすることができるので、着弾精度が向上する。各媒体を交互に両極性に帯電させるので、媒体の帯電区間が搬送後に短時間で消滅しやすい。したがって、搬送済みの複数の媒体が一個所に集められる場合であっても、これら媒体のハンドリング性が悪化することがほとんどない。
本発明の記録装置は、前記支持部材を除電する除電装置をさらに備えており、前記除電装置が、前記記録媒体と接触するように、前記記録媒体の前記支持部材からの剥離位置と前記液体吐出ヘッドとの間に配置された除電部材を含んでいることが好ましい。これによって、前回の帯電によって形成された帯電区間を消去することで、支持部材における帯電区間を形成する場所の自由度が高められると共に、支持部材の電位が次第に高くなるのを防止できる。除電部材が剥離位置と液体吐出ヘッドとの間に配置されているので、記録媒体の支持部材からの剥離が容易になる。
前記除電部材は、前記支持部材における前記記録媒体の支持面とは反対側の面と接触することが好ましい。これによって、除電部材が記録媒体の搬送の妨げとなることが少ない。
前記第2帯電装置は、前記媒体の前記支持部材との接触面とは反対側の面を帯電させることが好ましい。これによって、両面記録時において常に乾燥した面に帯電処理がなされる。そのため、ヘッドから吐出された液体の湿り気に伴う媒体の電気抵抗の低下による電荷の中和を受けにくく、吸着力の変化が少ない。
前記第2帯電装置は、前記媒体の前記支持部材との接触面を帯電させてもよい。これによって、媒体の支持部材との接触面が帯電するので、支持部材上の電荷と媒体上の電荷との電気的結合が強固となり、搬送中に媒体外部に電気的外乱が生じるのを大幅に抑制することができる。
本発明の記録装置は、前記搬送機構によって搬送された前記記録媒体を、前記液体吐出ヘッドに面する面が逆となるように前記搬送機構に再度送る再送経路をさらに備えており、前記液体吐出ヘッドは、最初に前記搬送機構によって搬送されている前記記録媒体の前記液体吐出ヘッドに面した第1面と、前記再送経路を経て次に前記搬送機構によって搬送されている前記記録媒体の第2面とに画像の記録を施すことが好ましい。これによって、両面記録における第2面への記録を行う際にも、大きな吸着力で記録媒体を支持部材に吸着させることができる。
前記制御手段は、(a)前記第2面に画像の記録が施される際の前記第1帯電装置の帯電電圧が前記第1面に画像の記録が施される際の前記第1帯電装置の帯電電圧よりも大きくなる、及び、(b)前記第2面に画像の記録が施される際の前記第2帯電装置の帯電電圧が前記第1面に画像の記録が施される際の前記第2帯電装置の帯電電圧よりも大きくなる、の少なくともいずれか1つが成り立つように、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置の少なくともいずれか1つを制御することが好ましい。これによって、第2面への記録を行う際の吸着力の低下を抑制することができる。
媒体と支持部材との両方を帯電させることで、媒体を迅速に支持部材に吸着させることができる。そのため、高速搬送又は高速記録が可能となる。また、媒体と支持部材との間に導電性部材(インク層など)が介在していても、吸着力が低下しにくい。そのため、支持部材からの媒体の浮き上がりを抑制することができる。したがって、液体吐出ヘッドと支持部材とのギャップを小さくすることができるので、着弾精度が向上する。さらに、各媒体を交互に両極性に帯電させるので、媒体の帯電区間が搬送後に短時間で消滅しやすい。したがって、搬送済みの複数の媒体が一個所に集められる場合であっても、これら媒体のハンドリング性が悪化することがほとんどない。
以下、本発明の好適な一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施の形態に係る搬送装置を含むインクジェットプリンタ内部の側面図である。図2は、図1に示すインクジェットプリンタのブロック図である。図1に示すように、印字装置であるインクジェットプリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有している。筐体1aの上面には排紙凹部6が設けられている。筐体1a内には、プリンタ1の動作を制御する制御部101と、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクをそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド2とが配置されている。図2に示すように、制御部101は、パーソナルコンピュータ(PC)100と接続されている。各ヘッド2は、ヘッド駆動回路121によって駆動される。など、ヘッド2自体は、筐体1aを介して接地されている。各ヘッド2の下面は、インクを吐出する吐出口が複数形成された吐出面2aとなっている。4つのヘッド2の下方には、印字媒体である用紙Pを、図1において左から右へと向かう搬送方向に搬送する搬送ユニット40が配置されている。さらに、搬送ユニット40の下方には、積層された複数の用紙Pを収容可能な給紙カセット24が配置されている。
筐体1a内には、ピックアップローラ25、搬送ユニット40、搬送ガイド26〜28、31、32、71〜74及び搬送ローラ対21、22、34、35、75〜79などの部材が配置されることによって、移送経路19と搬送経路20と再送経路70とが形成されている。用紙Pは、給紙カセット24から移送経路19及び搬送経路20を経て排紙凹部6に到る。再送経路70は、搬送ユニット40によって搬送された用紙Pを、4つのヘッド2の吐出面2aに面する面が前回に搬送ユニット40で搬送されたときとは逆となるように、搬送ユニット40に再度送ることが可能である。再送経路70は、4つのヘッド2よりも下流(詳細には搬送ガイド31)において搬送経路20から分岐し、給紙カセット24の出口と4つのヘッド2との間(詳細には搬送ガイド26)において移送経路19に合流している。
給紙カセット24内の用紙Pは、移送ユニット30によって搬送ユニット40へと搬送される。本実施の形態において、移送ユニット30は、ピックアップローラ25と、3つの搬送ガイド26、27、28と、2つの搬送ローラ対21、22とを含んでいる。ピックアップローラ25は、給紙カセット24に収容された複数の用紙Pのうち、最も上にある用紙Pを1枚ずつ送り出す。ピックアップローラ25は、ピックアップモータ132によって回転させられる。ピックアップモータ132は、モータドライバ122によって駆動される。ピックアップローラ25が回転することで給紙カセット24から送り出された用紙Pは、移送経路19を画定する3つの搬送ガイド26、27、28に案内されつつ2つの搬送ローラ対21、22によって搬送ユニット40へと搬送される。2つの搬送ローラ対21、22のそれぞれにおける一方のローラは、制御部101によって制御される移送モータ133の駆動によって回転する駆動ローラであり、他方のローラは一方のローラの回転に伴って回転する従動ローラである。移送モータ133は、モータドライバ123によって駆動される。本実施の形態において、移送ユニット30、ピックアップモータ132、移送モータ133、及び、モータドライバ122、123が、移送機構を構成している。
搬送ローラ対22は、図3(a)に示すように、2つの用紙帯電ローラ22a、22bからなる。2つの用紙帯電ローラ22a、22bの少なくとも一方は、その表面が絶縁性を有しており、帯電電圧を規定する電源141を介して制御部101に接続されている。本実施の形態では、用紙帯電ローラ22aが金属製の回転軸と樹脂製弾性体の表面層とからなり、回転軸が電源141に接続されている。表面層は、搬送ベルト43とほぼ同等の体積抵抗率を有する高抵抗体である。また、回転軸は付勢部材であるバネ22cによって、一方の用紙帯電ローラ22bに向かって付勢されている。用紙帯電ローラ22bは、用紙帯電ローラ22aの対向電極として働き、接地されている。バネ22cを含む付勢部材、2つの用紙帯電ローラ22a、22b及び電源141は、用紙帯電装置として機能する。電源141は、+500Vと−500Vとを短い周期(8×10-3秒)で繰り返す交番電位を発生させる。そのため、用紙帯電ローラ22aは、用紙Pの一方の面(後述する搬送ベルト43との接触面とは反対側の面)と接触することによって、用紙Pを移送経路19に沿って正負交互の極性に帯電させることが可能となっている。用紙帯電ローラ22aによって、用紙P上に複数の帯状の帯電区間が形成され、それぞれが用紙Pの移送方向と直交する方向に延在することになる。用紙Pの表面における帯電電位は±400Vである。移送方向に関する1帯電区間の長さは、5mm〜30mm程度であり、移送経路に沿った用紙Pの長さに比べて十分に短い。
搬送ユニット40は、互いに平行な2つのベルトローラ41、42と、両ローラ41、42に架け渡された支持部材であるエンドレスの搬送ベルト43とを含んでいる。ベルトローラ42は、ベルト駆動モータ134によって回転させられる。搬送ベルト43の外側面は、厚み150μm、体積抵抗率1013Ω・cm程度〜1015Ω・cm程度のポリフッ化ビニリデン(PVDF)層からなる。本実施の形態では、このように搬送ユニット40を2つのベルトローラ41、42と搬送ベルト43とからなる簡単な構造とすることができる。搬送ベルト43の外側面としては、PVDF以外に、PET、ETFE、PTFEあるいはポリミドといった高抵抗材料で構成されていてもよい。また、搬送ベルト43を2層構造として、ベルトの外側面(外層)を内側面(内層)よりも高抵抗とすることで、用紙Pと搬送ベルト43との間で生じる電荷の中和の速度を小さくすることが好ましい。例えば、外層として基材であるPVDFを用い、内層は、PVDFにカーボンを含ませて抵抗値を調整して外層よりも抵抗値の低い層とする。もちろん、基材として、PVDF以外にも、PET、ETFE、PTFE、ポリイミドなどが好適である。本実施の形態では、搬送ベルト43は、PVDFを基材とするベルトであって、1層構造である。ベルト駆動モータ134は、モータドライバ124によって駆動される。本実施の形態において、搬送ユニット40、ベルト駆動モータ134及びモータドライバ124が、搬送機構を構成している。
用紙Pの支持部材である搬送ベルト43上には、移送ユニット30によって移送された用紙Pが載置される。搬送ユニット40は、ベルト駆動モータ134の駆動に伴って、用紙Pの一方の面が4つのヘッド2に所定のタイミングで面するように用紙Pを搬送方向に搬送する。用紙Pが各ヘッド2の下方を通過する際に、各ヘッド2から用紙Pに向けて各色のインクを順次吐出することによって、用紙Pに所望のカラー画像が形成される。
搬送ベルト43のベルトローラ41の外周面上にある部分は、ベルトローラ41とベルト帯電ローラ136とによって挟持されている。ベルト帯電ローラ136は、中心に軸心となる金属、その外周にウレタンゴムなどからなる弾性層を有し、その表面が機構的な強度の高いナイロン、フッ素樹脂などから成る保護層で構成されている。保護層はMSA次に、抵抗が小さく、中抵抗(106〜1010Ωcm)の層とされる。また、軸心は、帯電電圧を規定する電源142を介して制御部101に接続されている。ベルト帯電ローラ136の構成は、用紙帯電ローラ22aの構成と共通している。ベルト帯電ローラ136は、金属製の回転軸と樹脂製弾性体の表面層とからなり、回転軸が電源142に接続されている。ベルト帯電ローラ136も、付勢部材であるバネ136aによって、対向するベルトローラ41に向けて付勢されている。ベルトローラ41は、ベルト帯電ローラ136の導電性対向電極として働き、筐体1aを介して接地されている。搬送機構のベルトローラ41を含んで、バネ136aを含む付勢部材、ベルト帯電ローラ136及び電源142は、ベルト帯電装置として機能する。電源142は、+1000Vと−1000Vとを短い周期(8×10-3秒)で繰り返す交番電位を発生させる。そのため、ベルト帯電ローラ136は、搬送ベルト43の外側面と接触することによって、図3(b)に示すように、搬送ベルト43を搬送経路20に沿って正負交互の極性に帯電させることが可能となっている。ベルト帯電ローラ136によって、搬送ベルト43上に複数の帯状の帯電区間が形成され、それぞれ用紙Pの搬送方向と直交する方向に延在することになる。搬送ベルト43の外側面における帯電電位は±500Vである。すなわち、用紙Pの1帯電区間あたりの帯電量は、搬送ベルト43の1帯電区間あたりの帯電量よりも小さい。搬送方向に関する1帯電区間の長さは、用紙Pに形成される帯電区間と同じで5mm〜30mm程度であり、搬送経路に沿った用紙Pの長さに比べて十分に短い。一例として、用紙P上でのドット密度が600dpiとなるように20kHzでインク滴を吐出するプリンタ1において、1帯電区間の長さを20mmとする場合、電源142の1/2周期(オン時間)は23ms程度となる。
用紙Pに形成された帯電区間と搬送ベルト43に形成された帯電区間との関係について図4(a)〜図4(c)を参照して説明する。搬送経路に沿った帯電区間の長さは、用紙P及び搬送ベルト43のいずれもL0となっている。本実施の形態において、制御部101は、用紙Pの帯電パターンと搬送ベルト43の帯電パターンとが搬送ベルト43上において所定の関係(配置関係)を有するように、ピックアップモータ132のモータドライバ122及び移送モータ133のモータドライバ123を制御している。詳細には、制御部101は、搬送ベルト43に形成された帯電区間Rbに対する、用紙Pに形成された逆極性を有する帯電区間Rpの搬送ベルト43上における重なりの割合である整合率が、所定の値となると共に、搬送ベルト43に形成されたいずれの帯電区間Rbについても同じとなるように、ピックアップモータ132のモータドライバ122及び移送モータ133のモータドライバ123を制御している。この制御は、後述するベルトセンサ137が出力するベルト検知信号に基づいて行われる。
さらに、制御部101は、整合率が可変となるように、ピックアップモータ132のモータドライバ122及び移送モータ133のモータドライバ123を制御する。本実施の形態において、整合率は、後で詳述するように、0.9となる場合(図4(a)参照)、1.0となる場合(図4(b)参照)、及び、0.8となる場合(図4(c)参照)の3通りがある。制御部101は、筐体1a内の湿度、用紙Pの厚さ、及び、両面印字の表裏区別に応じて、整合率を決定する。なお、整合率が1.0となる場合は、搬送ベルト43に形成された帯電区間Rbに対する、用紙Pに形成された逆極性を有する帯電区間Rpが、搬送ベルト43上においてずれのない状態で対向していることになる。
搬送ベルト43に囲まれ且つ4つのヘッド2と対向する領域には、絶縁性の樹脂からなる平プラテン44が配置されている。平プラテン44は、印字時における用紙Pの平坦性及び吐出面2aと搬送ベルト43との所定の間隔を担保するものである。平プラテン44が絶縁性なので、帯電した搬送ベルト43が平プラテン44と接触することで自然に除電されにくくなっている。なお、平プラテン44と搬送ベルト43の内側面との間に作用する摩擦力は小さい方が好ましい。両者の間に働く摩擦力と搬送ベルト43が帯電していることによって、搬送ベルト43が弱い吸着力で平プラテン44に引きつけられるため、搬送ベルト43が平プラテン44から浮き上がることがない。
搬送ベルト43の内部空間において、平プラテン44とベルトローラ42との間には、表面に絶縁性を有する除電プレート45が配置されている。除電プレート45の上面は、平プラテン44の上面と同じ高さにある。除電プレート45は、電源143を介して制御部101に接続されている。除電プレート45及び電源143は、搬送ベルト43の除電装置として機能する。除電電圧を規定する電源143は、+500Vと−500Vとを短い周期(8×10-3秒)で繰り返す交番電位を発生させる。電源143が発生させる交番電位の位相は、除電プレート45上における搬送ベルト43における帯電区間の位相と逆位相となっている。そのため、除電プレート45は、搬送ベルト43の内側面(搬送ベルト43における用紙Pの支持面とは反対側の面)と接触することによって、搬送ベルト43を除電する。そのため、除電プレート45が用紙Pの搬送の妨げとなることがない。なお、除電プレート45は、搬送方向の長さが搬送ベルト43における1帯電区間の長さ以下とされ、ここでは1帯電区間の約1/4の長さを有している。
搬送ローラ対22と最上流にあるインクジェットヘッド2との間には、用紙先端センサ51が配置されている。用紙先端センサ51は、例えば光学式の反射型もしくは透過型センサである。用紙先端センサ51は、搬送ベルト43上に載置された用紙Pの先端が当該用紙先端センサ51の下方に到達したことを示す用紙先端検知信号を出力する。用紙先端検知信号は、制御部101に供給される。
搬送ベルト43の下方には、搬送ベルト43の動作センサとしてのベルトセンサ137が配置されている。ベルトセンサ137は、例えば光学式の反射型もしくは透過型センサである。ベルトセンサ137は、搬送ベルト43の外周面に形成されたマーク(図示せず)がベルトセンサ137と対向する位置に到達したことを示すベルト検知信号を出力する。ベルト検知信号は、制御部101に供給される。搬送ベルト43に形成されたマークは、搬送ベルト43の外側面に形成された用紙載置領域から所定距離だけ離れている。本実施の形態では、マーク位置を基準として、複数の用紙載置領域が搬送ベルト43上に形成される。本実施の形態において、用紙載置領域は、搬送経路に沿って用紙Pと同じ長さを有しているとする。
ベルトセンサ137が出力するベルト検知信号は、移送ユニット30によって移送された用紙Pが搬送ベルト43の用紙載置領域に載置されるように、ピックアップモータ132のモータドライバ122及び移送モータ133のモータドライバ123を制御するために用いられる。さらに、このベルト検知信号は、ベルト帯電ローラ136の電源142が用紙載置領域を帯電させる期間だけ動作し、且つ、2つの用紙帯電ローラ22a、22bの電源141が用紙Pを帯電させる期間だけ動作するように、電源141、142を制御するために用いられる。なお、ベルトセンサ137を設ける代わりに、動作センサとしてのエンコーダをベルトローラ41又は42に接続することによって、搬送ベルト43の動作を検知するようにしてもよい。
搬送ユニット40の搬送方向に関するすぐ下流には、剥離プレート5が設けられている。剥離プレート5は、その先端が用紙Pと搬送ベルト43との間に入り込むことによって、用紙Pを搬送ベルト43から剥離させる。
剥離プレート5によって搬送ベルト43から剥離された用紙Pは、搬送ガイド31、32によりガイドされつつ搬送ローラ対34、35によって上方へ送られ、排紙凹部6に排紙される。搬送ローラ対34、35のそれぞれにおける一方のローラは、移送モータ133の駆動によって回転する駆動ローラであり、他方のローラは一方のローラの回転に伴って回転する従動ローラである。
搬送ローラ対34、35のそれぞれにおける一方の駆動ローラは、正逆両方向に回転可能である。したがって、搬送ユニット40から送られてきた用紙Pの後端が再送経路70との分岐個所を通過してから搬送ローラ対34、35の回転方向を逆にすることによって、用紙Pをスイッチバックさせることができる。スイッチバックした用紙Pは、再送経路70へ送られる。
再送経路70は、4つの搬送ガイド71、72、73、74と、5つの搬送ローラ対75、76、77、78、79とから構成されている。再送経路70において、用紙Pは、搬送ガイド71、72、73、74によりガイドされつつ搬送ローラ対75、76、77、78、79によって搬送される。搬送ローラ対75、76、77、78、79のそれぞれにおける一方のローラは、再送モータ135の駆動によって回転する駆動ローラであり、他方のローラは一方のローラの回転に伴って回転する従動ローラである。再送モータ135は、モータドライバ125によって駆動される。
再送経路70を通過して搬送ガイド26において移送経路19に合流した用紙Pは、4つのヘッド2の吐出面2aに面する面が前回に搬送ユニット40で搬送されたときとは逆となって搬送ユニット40に搬送されて、4つのヘッド2の下方を通過する。このとき、4つのヘッド2から順にインクを吐出することで、用紙Pの裏面にもカラー画像が形成されることになる。
筐体1a内には、湿度センサ138が配置されている。湿度センサ138が出力した湿度信号は制御部101に供給され、湿度に応じて整合率を調整するために(本実施の形態においては電源141が発生させる交番電位のタイミングを制御するために)用いられる。
制御部101の詳細について説明する。制御部101は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き換え可能に記憶するEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時記憶するためのRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御部101は、これらのハードウェアとEEPROM内のソフトウェアとが協働することによって、ヘッド制御部102、搬送制御部103、ベルト帯電制御部105、用紙帯電制御部106、除電制御部107、印字データ記憶部111、用紙厚さ記憶部112、表裏区別指示部113、及び、整合率決定テーブル記憶部114などとして機能する。
印字データ記憶部111は、PC100から送信された、用紙Pに形成すべき画像に関する印字データを格納する。ヘッド制御部102は、印字データ記憶部111に格納された印字データに基づいて各インクジェットヘッド2から所望のタイミングでインクが吐出されるように、ヘッド駆動回路121を制御する。
搬送制御部103は、モータドライバ122〜125を制御することによって、用紙Pが、所望のタイミングで、移送経路19、搬送経路20及び再送経路70を搬送されるようにする。本実施の形態において、搬送制御部103は、筐体1a内の湿度、用紙Pの厚さ、及び、両面印字の表裏区別に応じて整合率を0.8、0.9、1.0のいずれかに決定すると共に、決定された整合率で用紙Pが搬送ベルト43上に載置されるように、ピックアップモータ132のモータドライバ122及び移送モータ133のモータドライバ123を制御する。
ベルト帯電制御部105は、ベルトセンサ137が出力するベルト検知信号に基づいて、ベルト帯電ローラ136に接続された電源142の動作タイミングを制御する。用紙帯電制御部106は、ベルトセンサ137が出力するベルト検知信号に基づいて、用紙帯電ローラ22a(22b)に接続された電源141の動作タイミングを制御する。
除電制御部107は、用紙先端センサ51が出力する用紙先端検知信号に基づいて、除電プレート45の電源143の動作タイミングを制御する。詳細には、用紙先端検知信号が出力された時刻以降の所定期間だけ電源143を動作させる。この所定期間は、除電プレート45が搬送ベルト43に形成された複数の帯電区間のいずれかと対向している期間である。
用紙厚さ記憶部112は、用紙Pを区別する一又は複数の識別番号をそれぞれの厚さと関連付けて記憶している。用紙厚さ記憶部112の記憶内容は、ユーザによって入力されたデータにしたがって書き換え可能である。さらに、用紙厚さ記憶部112は、一又は複数の識別番号のうち、いずれの識別番号に対応した用紙Pが給紙カセット24に収容されているものであるか、いわばアクティブな識別番号(給紙カセット24に収容された用紙Pの用紙種)をその厚さと共に指示する。この指示内容は、ユーザによるボタン操作などによって変更可能である。
表裏区別指示部113は、次回行われる用紙Pへの印字が、単面印字、両面印字の第1面(表面)への印字、及び、両面印字の第2面(裏面)への印字のいずれであるかを示す表裏区別フラグを記憶している。表裏区別指示部113に記憶された表裏区別フラグは、用紙Pの片面への印字が終了するごとに書き換えられる。
整合率決定テーブル記憶部114は、互いに重複しない連続した複数の湿度範囲、互いに重複しない連続した複数の用紙Pの厚さ範囲、及び、単面印字・両面印字の表裏区別の組み合わせと、3種類の整合率(0.8、0.9、1.0)のいずれかとを対応させた整合率決定テーブルを記憶している。すなわち、このテーブルを用いると、筐体1a内の湿度と用紙Pの厚さと単面印字・両面印字の表裏区別との組み合わせに応じた整合率を、一義的に決定することができる。本実施の形態では、用紙Pの厚さが大きいほど整合率が高い。また、筐体1a内の湿度が高いほど整合率が高い。そして、単面印字時及び第1面への印字時よりも第2面への印字時のほうが整合率が高い。
なお、後述する変形例では、整合率決定テーブル記憶部114の代わりに、帯電電圧決定テーブル記憶部が設けられる。帯電電圧決定テーブル記憶部は、互いに重複しない連続した複数の湿度範囲、互いに重複しない連続した複数の用紙Pの厚さ範囲、及び、単面印字・両面印字の表裏区別の組み合わせと、3種類の帯電電圧のいずれかとを対応させた帯電電圧決定テーブルを、電源141、142のそれぞれについて記憶している。帯電電圧決定テーブルにおいては、電源141、142のいずれについても、用紙Pの厚さが大きいほど帯電電圧が高い。また、筐体1a内の湿度が高いほど帯電電圧が高い。そして、単面印字時及び第1面への印字時よりも第2面への印字時のほうが帯電電圧が高い。
次に、インクジェットプリンタ1による一連の印字動作について、図5及び図6に示すフローチャート、並びに、図8に示すタイミングチャートを参照しつつ説明する。
まず、ステップS1では、PC100から印字データを含む印字命令を受信するまで処理を待機する。印字命令を受信すると(S1:YES)、ステップS2において、受信した印字命令に含まれる印字データを印字データ記憶部111に格納する。
ステップS3では、搬送制御部103がモータドライバ124を制御してベルト駆動モータ134を駆動することによって、ベルトローラ42の回転を開始させる。これにより、搬送ベルト43は、一定の速度で走行することになる。
ステップS4では、搬送制御部103が印字を行う際の整合率を決定する。整合率の決定は、図6に示す手順で行われる。まず、ステップS101において、湿度センサ138が出力した湿度信号を取得する。そして、ステップS102において、用紙厚さ記憶部112が指示するアクティブな識別番号に係る用紙Pの厚さを取得する。さらに、ステップS103において、表裏区別指示部113が記憶している表裏区別フラグを取得する。そして、ステップS104において、搬送制御部103が、整合率決定テーブル記憶部114に格納された整合率決定テーブルを用いて、筐体1a内の湿度と用紙Pの厚さと両面印字の表裏区別との組み合わせに応じた整合率を決定する。このとき、用紙Pと搬送ベルト43の帯電電圧は、それぞれ一定に保持される。
ステップS4に関する一変形例について図7を参照して説明する。この変形例では、整合率を一定(例えば整合率=1)に保持しておくと共に、電源141、142の帯電電圧を可変とし、筐体1a内の湿度と用紙Pの厚さと単面印字・両面印字の表裏区別との組み合わせに応じて適切な帯電電圧を決定する。まず、ステップS201において、湿度センサ138が出力した湿度信号を取得する。そして、ステップS202において、用紙厚さ記憶部112が指示するアクティブな識別番号に係る用紙Pの厚さを取得する。さらに、ステップS203において、表裏区別指示部113が記憶している表裏区別フラグを取得する。そして、ステップS204において、搬送制御部103が、帯電電圧決定テーブル記憶部に格納された帯電電圧決定テーブルを用いて、筐体1a内の湿度と用紙Pの厚さと両面印字の表裏区別との組み合わせに応じた帯電電圧を、電源141、142のそれぞれについて決定する。
続いて、ステップS5では、ベルトセンサ137が搬送ベルト43に形成されたマークを検知するまで処理を待機する。
マークが検知された後、ステップS6では、ベルトセンサ137がマークを検知した時刻t0から時間T1が経過した時刻t1となるまで処理を待機する。時刻t1は、搬送ベルト43に形成された用紙載置領域の先端がベルト帯電ローラ136に到達する時刻である。時間T1は、用紙載置領域とマークとの距離、ベルト帯電ローラ136とベルトセンサ137との間の距離、及び、搬送ベルト43による用紙Pの搬送速度に基づいて決定される。そして、時間T1が経過すると(S6:YES)、ステップS7において、ベルト帯電制御部105が電源142を制御することによって、ベルト帯電ローラ136による搬送ベルト43の帯電を開始させる。これによって、図3(b)に示すように、搬送ベルト43上に、用紙載置領域の先端から複数の帯電区間が形成されることになる。また、本実施の形態では、ベルトセンサ137を用いることで、プリンタ1の制御が容易となる。
一方、マークが検知された後、ステップS8では、ベルトセンサ137がマークを検知した時刻t0から時間T2が経過した時刻となるまで処理を待機する。時間T2は、時刻t0から、用紙載置領域(複数の帯電区間)の先端が用紙Pの搬送ベルト43への載置位置(図1中のP0が示す位置)に達するまでの時間であって、時刻t0における用紙載置領域の先端の位置から載置位置までの距離及び搬送速度に基づいて決定される。そして、時間T2が経過すると(S8:YES)、ステップS9において、搬送制御部103がモータドライバ122、123を制御することによって、ピックアップモータ132及び移送モータ133の駆動を開始させ、ピックアップローラ25及び搬送ローラ対21、22が回転し始める。これにより、給紙カセット242内の最も上にある用紙Pが繰り出され、移送経路19を移送され始める。これと並列的に、用紙載置領域の先端は、載置位置を後にしてインクジェットヘッド2に向かって移動していく。用紙Pが載置位置に到達するにはさらに時間の経過を待つことになるので、本実施の形態では、用紙Pはいずれかの帯電区間に確実に載置されることになる。
続いて、ステップS10では、時刻t0から時間T3が経過した時刻t2となるまで処理を待機する。時刻t2は、移送経路19を搬送されている用紙Pの先端がローラ対22に到達する時刻である。時間T3は、時間T2と、給紙カセット24とローラ対22との間の距離を移送経路19における用紙Pの移送速度で除算して得られる商との和である。そして、時間T3が経過すると(S10:YES)、ステップS11において、用紙帯電制御部106が電源141を制御することによって、用紙帯電ローラ22a、22bによる用紙Pの帯電を開始させる。これによって、図3(a)に示すように、用紙Pに複数の帯電区間が形成されることになる。ステップS6及びステップS7の処理と、ステップS8〜ステップS11の処理とは、並列的に行われる。用紙Pが確実に帯電区間上に載置されるという観点からは、帯電された用紙Pの先端が帯電された用紙載置領域の先端の後に載置位置に到達すればよく、この条件を満足するように各ステップの開始時刻や継続時間が調整されている。
ステップS7及びステップS11が行われた後しばらくすると、用紙Pの先端が搬送ベルト43上(載置位置:P0)に達し、それ以降用紙Pが先端から後端に掛けて順次搬送ベルト43に載置されていく。本実施の形態では、用紙Pに形成された複数の帯電区間と搬送ベルト43に形成された複数の帯電区間との整合率が0.8以上であって、用紙Pに形成された各帯電区間と搬送ベルト43に形成された各帯電区間との間に吸着力が発生する。このように、用紙Pと搬送ベルト43との両方を、予め帯電完了させておくことで、用紙Pを迅速に搬送ベルト43に吸着させることができる。そのため、プリンタ1における高速搬送及び高速印字が可能となる。また、用紙Pの下面又は搬送ベルト43の外側面にインク層(カーボンブラックなどの導電性材料を含む)が形成されていても、吸着力が低下しにくい。そのため、搬送ベルト43からの用紙Pの浮き上がりを抑制することができる。したがって、ヘッド2と搬送ベルト43とのギャップを例えば0.5mm程度にまで小さくすることができるので、インク滴の用紙Pへの着弾精度が向上する。
特に、本実施の形態では、搬送ベルト43に形成されたいずれの帯電区間についても整合率が同じであるので、搬送ベルト43による用紙Pの吸着力を一様にすることができる。したがって、少ない帯電量で大きな吸着力を得ることができる。また、帯電区間の長さをすべて同じとすることで、制御が簡易となる。また、整合率を0.8以上としているので大きな吸着力が得られる。特に整合率が1.0となる場合は、用紙Pが非常に大きな吸着力で搬送ベルト43に保持されることになる。
また、整合率を可変とすることで、吸着力の調整をすることができる。本実施の形態では、筐体1a内の湿度と用紙Pの厚さと単面印字・両面印字の表裏区別との組み合わせに応じた整合率をステップS4で決定するので、適切な吸着力で用紙Pを搬送することができる。なお、整合率を変化させて吸着力を調整することによって、図7で説明した電源141、142の帯電電圧を可変とする場合よりも電源回路が簡略化できるという利点も得られる。また、図7で説明したように電源141、142の帯電電圧を可変としても、吸着力の調整をすることができる。上述した変形例では、筐体1a内の湿度と用紙Pの厚さと両面印字の表裏区別との組み合わせに応じた電源141、142の帯電電圧をステップS4で決定するので、適切な吸着力で用紙Pを搬送することができる。
本実施の形態では、上述したように、用紙Pの1帯電区間あたりの帯電量が搬送ベルト43の1帯電区間あたりの帯電量よりも小さいので、用紙Pの外側(用紙Pから搬送ベルト43へ向かう方向とは反対側)への漏れ電界が抑制される。そのため、搬送中に用紙P外部に電気的外乱が生じるのを抑制することができる。その結果、漏れ電界に起因したインク滴の飛翔経路の変位を抑制することができる。また、電気的信号に対するノイズの低減に寄与する。
さらに、本実施の形態では、用紙帯電ローラ22aが用紙Pの搬送ベルト43との接触面とは反対側の面を帯電させる。そのため、第2面の印字時であっても乾燥した面に帯電処理がなされる。したがって、ヘッド2から吐出されたインク滴の湿り気による電荷の中和を受けにくく、吸着力の変化が少なくなる。変形例として、用紙帯電ローラ22bが用紙Pの搬送ベルト43との接触面を帯電させるようにしてもよい。このとき、搬送ベルト43上の電荷と用紙P上の電荷との電気的結合が強固となり、搬送中に用紙P外部に電気的外乱が生じるのを大幅に抑制することができる。
さらに、マークが検知された後、ステップS12では、時刻t0から時間T4が経過した時刻t4となるまで処理を待機する。時刻t4は、搬送ベルト43に形成された用紙載置領域の後端がベルト帯電ローラ136に到達する時刻である。時間T4は、時間T1と、用紙載置領域の搬送経路20に沿った長さを搬送ベルト43による用紙Pの搬送速度で除算して得られる商との和である。そして、時間T4が経過すると(S12:YES)、ステップS13において、ベルト帯電制御部105が電源142を制御することによって、ベルト帯電ローラ136による搬送ベルト43の帯電を終了させる。
一方、ステップS14では、時刻t0から時間T5が経過した時刻t5となるまで処理を待機する。時刻t5は、移送経路19を搬送されている用紙Pの後端がローラ対22に到達する時刻である。時間T5は、時間T3と、用紙Pの移送経路19に沿った長さを移送経路19における用紙Pの移送速度で除算して得られる商との和である。そして、時間T5が経過すると(S14:YES)、ステップS15において、用紙帯電制御部106が電源141を制御することによって、用紙帯電ローラ22a、22bによる用紙Pの帯電を終了させる。このように、本実施の形態では、用紙帯電ローラ22a、22bが用紙Pを挟持している期間だけ電源141が動作し且つ搬送ベルト43の用紙Pが載置される領域のみが帯電区間となるように電源142が動作するので、電源141、142の動作時間を短縮することができる。そのため、これらの長寿命化と消費電力の低減とを図ることができる。
また、ステップS16では、用紙先端センサ51が用紙先端検知信号を出力するまで処理を待機する。そして、時刻t3において用紙先端検知信号が出力されると(S16:YES)、その後、所定時間が経過してから、ステップS17において、ヘッド制御部102がヘッド駆動回路121を制御することによって、ヘッド2による用紙Pへの印字が開始される。
続いて、ステップS18では、時刻t3から時間T6が経過した時刻t6となるまで処理を待機する。時間T6は、用紙先端センサ51から除電プレート45までの距離を、搬送ベルト43による用紙Pの搬送速度で除算して得られる商である。そして、時間T6が経過すると(S18:YES)、ステップS19において、除電制御部107が電源143を制御することによって、除電プレート45による搬送ベルト43の除電を開始させる。なお、一変形例として、除電の開始及び終了を時刻t0からの経過時間に基づいて制御するようにしてもよい。また、ステップS19では、除電プレート45の位置に用紙Pの先端が到達するのを待って除電を開始している。このとき、用紙Pの先端位置よりも上流に、帯電された用紙載置領域の先端部分が先行している。しかし、この部分が再びベルト帯電ローラ136によって帯電されるまでには、電化は中和されている。
なお、ステップS12及びステップS13の処理と、ステップS14及びステップS15の処理と、ステップS16〜ステップS19の処理とは、並列的に行われる。図8に示した3つの時刻t3、t4、t5の順序は単なる一例であって、時刻t3が時刻t4又は時刻t5よりも後であってもよい。用紙Pへの画像の形成が完了するまでは用紙Pが確実に帯電区間上に載置されているという観点からは、帯電された用紙Pの後端が帯電された用紙載置領域の後端の先に載置位置に到達すればよく、この条件を満足するように、各ステップの開始時刻や継続時間が調整されている。
用紙Pの後端が搬送経路に沿って最下流にあるヘッド2を通過すると、ステップS20において、ヘッド制御部102がヘッド2による用紙Pへの印字を終了させる。ステップS21では、時刻t3から時間T7が経過した時刻t7となるまで処理を待機する。時間T7は、用紙先端センサ51から除電プレート45までの距離に用紙Pの長さを足した距離を、搬送ベルト43による用紙Pの搬送速度で除算して得られる商である。そして、時間T7が経過すると(S21:YES)、ステップS22において除電制御部107が除電プレート45による搬送ベルト43の除電を終了させる。
ステップS19からステップS22までの間は、除電プレート45が、除電プレート45上にある搬送ベルト43の帯電区間と逆位相で帯電しているため、前回の帯電によって搬送ベルト43に形成された帯電区間を消去することができる。したがって、前回の帯電によって搬送ベルト43に形成された帯電区間の場所を考慮せずに、次回の帯電によって搬送ベルト43に帯電区間を形成することができる。言い換えると、毎回の帯電状態が均一になると共に、搬送ベルト43のどの場所に帯電区間を形成するかの自由度が高められる。さらに、搬送ベルト43の電位が次第に高くなるのを防止できる。特に、本実施の形態では、除電プレート45を搬送ベルト43の帯電区間と逆位相で帯電させるために、搬送ベルト43に形成された帯電区間を高い信頼性で消去することができる。また、除電プレート45が用紙Pの剥離位置と4つのヘッド2との間に配置されているので、用紙Pの搬送ベルト43からの剥離が容易になる。
続いて、ステップS23では、ステップS17からステップS20において印字が施された用紙の裏面にも印字を行うか否か、つまり用紙Pの第1面に印字を施した後に引き続いて第2面に印字を施す(両面印字)か否かを判断する。第2面への印字を行わない場合又はステップS17からステップS20において印字が施されたのが用紙の第2面であった場合(S23:NO)、ステップS24に進んで用紙Pをそのまま排紙凹部6に排紙し、印字処理を終了する。本実施の形態では、各用紙Pを交互に両極性に帯電させるので、用紙Pに形成された帯電区間が搬送後に短時間で消滅しやすい。したがって、排紙凹部6で積層された搬送済みの複数の用紙Pのハンドリング性が悪化することがほとんどない。
第2面への印字を行う場合(S23:YES)、ステップS25において、表裏区別指示部113に記憶された表裏区別フラグを両面印字の第2面への印字を指示するものに書き換える。さらに、ステップS26において、用紙Pをスイッチバックさせる。つまり、搬送ユニット40から送られてきた用紙Pの後端が再送経路70との分岐個所を通過してから搬送ローラ対34、35の回転方向を逆にすることによって、用紙Pを再送経路70へと送る。再送経路70を搬送された用紙Pは、その先端が搬送ローラ対21に当接したまま停止することになる。そして、ステップS4に戻って第2面への印字時における整合率を決定する。
しかる後、上述したのと同様の手順で第2面への印字を行う。このときも、用紙載置領域への帯電や用紙Pへの帯電の開始時刻は、搬送ベルト43上のマークの検出時刻を起点として設定されるが、搬送ローラ21による用紙Pの移送開始時刻は、用紙載置領域が載置位置に到達する時刻から所定の時間が経過した後に設定されている。所定の時間は、ちょうど、給紙カセット24から用紙Pが繰り出され、搬送ローラ21に到達するまでの時間に相当する。これによって、第1面の場合と同様に、用紙Pの搬送ベルト43への載置と搬送、インクジェットヘッド2による画像形成および用紙Pの搬送ベルト43からの剥離が行われる。両面印字における用紙Pの第2面への印字を行う際、第1面への印字によって形成されたインク層が未乾燥であると、用紙P内の抵抗値が小さくなって用紙Pにある電荷が非常に短い時間で中和しやすい。しかしながら、用紙帯電ローラ22a、22bを用いて用紙Pに帯電区間を形成することで、大きな吸着力で用紙Pを搬送ベルト43に吸着させることができる。特に本実施の形態では、インク層が形成されていない第2面に用紙帯電ローラ22aを接触させて帯電区間を形成しているので、吸着力が低下しにくくなっている。また、第2面への印字時における整合率が第1面への印字時よりも高くなるので、第2面への印字時における、導電性材料を含むインク層が表面に形成された第1面が搬送ベルト43に面することに伴う吸着力の低下を抑制することができる。図7で説明した変形例の場合においても、第2面への印字時における電源141、142の帯電電圧が第1面への印字時よりも高くなるので、第2面への印字時における吸着力の低下を抑制することができる。
上述したように、本実施の形態では、用紙P及び搬送ベルト43の両方を帯電させ、両者の帯電パターンが所定の関係を有するようにしているので、用紙Pに形成された各帯電区間と搬送ベルト43に形成された各帯電区間との間に吸着力によって、用紙Pを迅速に搬送ベルト43に吸着させることができる。したがって、用紙Pが搬送ベルト43に確実に吸着するまで、用紙Pを搬送ベルト43に向けて押圧するような機構を設ける必要がなくなる。また、第2面への印字を行う場合に帯電により発生する吸着力を低下させる原因となる第1面へのインク量を減らしたり、第1面への印字後であって第2面への印字前に第1面に付着したインクを乾燥させるといった対策を行う必要がなくなる。前者は印字品質を低下させるので、本実施の形態によると、印字品質の低下を防止することができる。また、後者は急速なインク乾燥によって用紙Pが反ってしまったり、消費電力が増大するという不利益を生じ、さらにインク乾燥処理によってスループットの低下が生じやすいが、本実施の形態によると、これらの不利益が生じることもない。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更を上述の実施の形態に施すことが可能である。例えば、上述した実施の形態では搬送機構がベルト搬送を行うものであるが、搬送機構がドラム搬送を行うものであってもよい。上述した実施の形態では厚さ指示手段として用紙厚さ記憶部が設けられているが、その代わりとして用紙Pの厚さを測定するセンサが設けられていてもよい。
また、上述した実施の形態ではピックアップモータ132及び移送モータ133の動作タイミングを制御することで、搬送ベルト43に形成された帯電区間に対する用紙Pに形成された帯電区間の整合率を調整している。しかしながら、整合率の調整は、ピックアップモータ132及び移送モータ133だけを制御するのではなく、ピックアップモータ132及び移送モータ133、ベルト駆動モータ134、電源141、並びに、電源142の少なくともいずれか1つを制御することで行ってもよい。
上述した実施の形態では電源141、142のいずれについても、用紙Pの厚さが大きいほど帯電電圧が高くなり、筐体1a内の湿度が高いほど帯電電圧が高くなる。そして、第1面への印字時よりも第2面への印字時のほうが帯電電圧が高くなる。しかしながら、用紙Pの厚さが大きいほど帯電電圧が高くなるのは、電源141、142のいずれか一方だけでもよい。筐体1a内の湿度が高いほど帯電電圧が高くなるのも、電源141、142のいずれか一方だけでもよい。第1面への印字時よりも第2面への印字時のほうが帯電電圧が高くなるのも、電源141、142のいずれか一方だけでもよい。さらに、用紙帯電ローラ22aと用紙帯電ローラ22bとにそれぞれ独立した電源を設け、これら2つの電源のどちらか一方だけについて、上述したような制御を行ってもよい。
上述した実施の形態では除電プレート45に電源143が接続されているが、除電プレート45は単に接地されているだけでもよい。上述した実施の形態では、除電プレート45は、搬送ベルト43の内側空間に配置されているが、搬送ベルト43の外側に配置されていてもよい。また、上述した実施の形態では搬送ベルト43はその外側面からベルト帯電ローラ136によって帯電させられるが、搬送ベルト43をその内側面から帯電させてもよい。また、上述した実施の形態ではローラ対22が帯電装置と移送ユニット30とを兼ねているが、帯電装置が移送ユニット30とは別に設けられていてもよい。
さらに、上述した実施の形態におけるインクジェットプリンタは両面印字が可能であるが、再送経路70を有しておらず片面印字のみ可能なインクジェットプリンタに対しても本発明は適用可能である。
また、上述の実施の形態では、搬送ベルト43によって搬送される媒体を用紙Pとして説明したが、用紙Pは、上質紙を含む紙類のほかに、PET、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンなどの透明プラスチックフィルム(シート材)や白色不透明フィルムあるいは布帛を搬送する搬送装置や記録装置にも適用できる。また、用紙Pの平坦性とヘッドギャップを確保する平プラテン44と除電プレート45は別体として配置されているが、一体に構成されていてもよい。このとき、平プラテン44の樹脂層中には除電用電極を埋め込むことになる。
さらに、上述の実施の形態では、整合率決定テーブル記憶部114は、湿度、用紙厚さおよび両面印字の有無によって整合率を決定しているが、これに加えて用紙の種類を加味して整合率を決定してもよい。例えば普通紙、上質紙のような非コート紙とコート紙とを区別する場合、コート紙のほうが整合率は高い。また、帯電電圧決定テーブル記憶部が設けられている場合も、同様に、用紙の種類を加味して帯電電圧を決定してもよく、コート紙のほうが帯電電圧は高い。
また、上述の実施の形態では、用紙Pと搬送ベルト43との吸着力の調整方法として帯電区間同士の整合率を変更する方法と、各帯電区間を形成するための帯電電圧を変更する方法とのいずれかを採用してきたが、両者を組み合わせた方法を採用してもよい。このとき、筐体1a内の湿度、用紙Pの厚さおよび単面印字・両面印字の表裏区別との組合せに応じて、整合率と帯電電圧の組合せが決まることになる。
上述した実施の形態では、ステップS8のように用紙載置領域の先端が載置位置に到達したとき、用紙Pの給紙およびその後の移送経路19での移送が始まる。しかし、用紙Pが確実に帯電区間上に載置されるという観点からは、用紙Pの先端が用紙載置領域の先端に続いて載置位置に到達すればよく、時刻t0を起点として給紙が開始され、用紙Pの先端が移送経路19を経て載置位置に到達するまでの時間が時間T2よりも短くなるように設定されていればよい。この条件を満足すれば、給紙開始時刻は時刻t1よりも前でも後でもよく、時刻t0であってもよい。
また、ステップS19で示されるように、除電プレート45による除電開始時刻は、用紙Pの先端の到達時刻に合わせてあるが、用紙載置領域の先端が除電プレート45の位置に到達する時刻としてもよい。これによって、ベルト帯電ローラ136が用紙載置領域を帯電するたびに、ばらつきのない帯電状態が毎回得られることになる。
さらに、ステップS22で示されるように、除電停止時刻は、用紙Pの後端の到達時刻に合わせてあるが、用紙載置領域の後端が除電プレート45の位置に到達する時刻としてもよい。これによって、ベルト帯電ローラ136が用紙載置領域を帯電するたびに、ばらつきのない帯電状態が毎回得られることになる。
さらに、インクジェットヘッド2を有するインクジェットプリンタ1に限らず、用紙Pにインクを熱転写するサーマルヘッドを有するプリンタなどの他の種類の記録装置に対しても本発明は適用可能である。また、本発明は、記録装置に限らず、スキャナなどの読み取り装置を含む媒体の搬送装置に適用することができる。
本発明の一実施の形態に係る搬送装置を含むインクジェットプリンタ内部の側面図である。 図1に示すインクジェットプリンタのブロック図である。 (a)は搬送ローラ対及び用紙の拡大図、(b)はベルト帯電ローラ及び搬送ベルトの拡大図である。 用紙に形成された帯電区間と搬送ベルトに形成された帯電区間との関係を示す模式図である。 図1に示すインクジェットプリンタによる一連の印字動作を示すフローチャートである。 整合率決定ステップの詳細を示すフローチャートである。 一変形例に係る帯電電圧決定ステップの詳細を示すフローチャートである。 図5に示した一連の印字動作に係るタイミングチャートである。
符号の説明
1 インクジェットプリンタ
1a 筐体
2 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
2a 吐出面
5 剥離プレート
6 排紙凹部
19 移送経路
20 搬送経路
21、22、34、35、75〜79 搬送ローラ対
22a、22b 用紙帯電ローラ(第2帯電装置の一部)
23 給紙装置
24 給紙カセット
25 ピックアップローラ
26〜28、31、32、71〜74 搬送ガイド
30 移送ユニット(移送機構)
40 搬送ユニット(搬送機構)
41、42 ベルトローラ
43 搬送ベルト
44 平プラテン
45 除電プレート(除電部材)
51 用紙先端センサ
70 再送経路
101 制御部(制御手段)
102 ヘッド制御部
103 搬送制御部
105 ベルト帯電制御部
106 用紙帯電制御部
107 除電制御部
111 印字データ記憶部
112 用紙厚さ記憶部(厚さ指示手段)
113 表裏区別指示部
114 整合率決定テーブル記憶部
121 ヘッド駆動回路
132 ピックアップモータ
133 移送モータ
134 ベルト駆動モータ
136 ベルト帯電ローラ(第1帯電装置の一部)
137 ベルトセンサ(動作センサ)
138 湿度センサ
141、142、143 電源

Claims (20)

  1. 載置された媒体を支持する支持部材を含んでおり、前記支持部材の移動に伴って前記媒体を搬送経路に沿って搬送する搬送機構と、
    前記支持部材を前記搬送経路に沿って交互に異なる極性に帯電させることによって、前記支持部材に複数の帯電区間を形成する第1帯電装置と、
    前記媒体が前記支持部材に載置されるように、前記媒体を前記支持部材へと移送する移送機構と、
    前記移送機構によって前記支持部材上に載置される前の前記媒体を、前記移送機構による前記媒体の移送経路に沿って交互に異なる極性に帯電させることによって、前記媒体に複数の帯電区間を形成する第2帯電装置と、
    載置された前記媒体の帯電パターンと前記支持部材の帯電パターンとが前記支持部材上において所定の関係を有するように、前記搬送機構、前記移送機構、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置の少なくともいずれか1つを制御する制御手段とを備えていることを特徴とする搬送装置。
  2. 前記制御手段は、前記第1帯電装置によって前記支持部材に形成された第1の極性を有する前記帯電区間に対する、前記第2帯電装置によって前記媒体に形成された第2の極性を有する前記帯電区間の前記支持部材上における重なりの割合である整合率が、前記支持部材に形成されたいずれの前記帯電区間についても同じとなるように、前記搬送機構、前記移送機構、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置の少なくともいずれか1つを制御することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
  3. 前記支持部材に形成された前記複数の帯電区間の前記搬送経路に沿った長さが互いに同じであると共に、前記媒体に形成された前記複数の帯電区間の前記移送経路に沿った長さが互いに同じであり、
    前記支持部材の1帯電区間の前記搬送経路に沿った長さが前記媒体の1帯電区間の前記移送経路に沿った長さと同じであることを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
  4. 前記制御手段は、前記媒体に形成された第1の極性を有する帯電区間が前記支持部材上において前記支持部材に形成された第2の極性を有するいずれかの帯電区間と対向するように、前記搬送機構、前記移送機構、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置の少なくともいずれか1つを制御することを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
  5. 前記支持部材を除電する除電装置をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の搬送装置。
  6. 前記除電装置は、前記支持部材に形成された各帯電区間に当該帯電区間とは逆極性の電荷を付与することによって、前記支持部材を除電することを特徴とする請求項5に記載の搬送装置。
  7. 前記支持部材の動作を検知する動作センサをさらに備えており、
    前記制御手段は、前記動作センサの検知結果に基づいて、前記媒体の帯電パターンと前記支持部材の帯電パターンとが前記支持部材上において前記所定の関係を有するように、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置の少なくともいずれか1つを制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の搬送装置。
  8. 前記支持部材の動作を検知する動作センサをさらに備えており、
    前記制御手段は、前記動作センサの検知結果に基づいて、前記媒体が前記支持部材の所定領域に載置されるように、前記搬送機構及び前記移送機構の少なくともいずれか1つを制御すると共に、前記第1帯電装置が前記支持部材の前記所定領域を帯電させる期間だけ動作し且つ前記第2帯電装置が前記媒体を帯電させる期間だけ動作するように、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置を制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の搬送装置。
  9. 前記制御手段は、前記支持部材に形成された第1の極性を有する前記帯電区間に対する、前記媒体に形成された第2の極性を有する前記帯電区間の前記支持部材上における重なりの割合である整合率が可変となるように、前記搬送機構、前記移送機構、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置の少なくともいずれか1つを制御することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の搬送装置。
  10. 湿度センサをさらに備えており、
    前記制御手段は、前記湿度センサによって検知された湿度が高いほど、前記第1帯電装置の帯電電圧及び前記第2帯電装置の帯電電圧の少なくともいずれか1つが大きくなるように、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置の少なくともいずれか1つを制御することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の搬送装置。
  11. シート状である前記媒体の厚さを指示する厚さ指示手段をさらに備えており、
    前記制御手段は、前記厚さ指示手段が指示する前記媒体の厚さが大きいほど、前記第1帯電装置の帯電電圧及び前記第2帯電装置の帯電電圧の少なくともいずれか1つが大きくなるように、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置の少なくともいずれか1つを制御することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の搬送装置。
  12. 前記第2帯電装置による媒体の1帯電区間あたりの帯電量が前記第1帯電装置による前記支持部材の1帯電区間あたりの帯電量よりも小さいことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の搬送装置。
  13. 前記支持部材が無端のベルトであり、
    前記搬送機構は、前記ベルトが架張された2つのローラをさらに含んでいることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の搬送装置。
  14. 載置された記録媒体を支持する支持部材を有し、前記支持部材の移動に伴って前記記録媒体を搬送経路に沿って搬送する搬送機構と、
    前記支持部材に支持されている前記記録媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
    前記支持部材を前記搬送経路に沿って交互に異なる極性に帯電させることによって、前記支持部材に複数の帯電区間を形成する第1帯電装置と、
    前記記録媒体が前記支持部材に載置されるように、前記記録媒体を前記支持部材へと移送する移送機構と、
    前記移送機構によって前記支持部材上に載置される前の前記記録媒体を、前記移送機構による前記記録媒体の移送経路に沿って交互に異なる極性に帯電させることによって、前記記録媒体に複数の帯電区間を形成する第2帯電装置と、
    載置された前記記録媒体の帯電パターンと前記支持部材の帯電パターンとが前記支持部材上において所定の関係を有するように、前記搬送機構、前記移送機構、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置の少なくともいずれか1つを制御する制御手段とを備えていることを特徴とする記録装置。
  15. 前記支持部材を除電する除電装置をさらに備えており、
    前記除電装置が、前記記録媒体と接触するように、前記記録媒体の前記支持部材からの剥離位置と前記液体吐出ヘッドとの間に配置された除電部材を含んでいることを特徴とする請求項14に記載の記録装置。
  16. 前記除電部材は、前記支持部材における前記記録媒体の支持面とは反対側の面と接触することを特徴とする請求項15に記載の記録装置。
  17. 前記第2帯電装置は、前記媒体の前記支持部材との接触面とは反対側の面を帯電させることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の記録装置。
  18. 前記第2帯電装置は、前記媒体の前記支持部材との接触面を帯電させることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の記録装置。
  19. 前記搬送機構によって搬送された前記記録媒体を、前記液体吐出ヘッドに面する面が逆となるように前記搬送機構に再度送る再送経路をさらに備えており、
    前記液体吐出ヘッドは、最初に前記搬送機構によって搬送されている前記記録媒体の前記液体吐出ヘッドに面した第1面と、前記再送経路を経て次に前記搬送機構によって搬送されている前記記録媒体の第2面とに画像の記録を施すことを特徴とする請求項13〜18のいずれか1項に記載の記録装置。
  20. 前記制御手段は、(a)前記第2面に画像の記録が施される際の前記第1帯電装置の帯電電圧が前記第1面に画像の記録が施される際の前記第1帯電装置の帯電電圧よりも大きくなる、及び、(b)前記第2面に画像の記録が施される際の前記第2帯電装置の帯電電圧が前記第1面に画像の記録が施される際の前記第2帯電装置の帯電電圧よりも大きくなる、の少なくともいずれか1つが成り立つように、前記第1帯電装置及び前記第2帯電装置の少なくともいずれか1つを制御することを特徴とする請求項19に記載の記録装置。
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