JP2010106148A - 難燃性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温信頼性を有し、難燃性と耐熱性とが同時に高められた樹脂成形体を形成できるようにする。
【解決手段】樹脂成分と、式(1)の環状ホスファゼン化合物とを含んでいる組成物。
Figure 2010106148

nは3〜8の整数、Aは下記式(2)で示される置換アリールオキシ基を含む基。
Figure 2010106148

Yは、フェニレン基、ビフェニレン基およびナフチレン基から選ばれた基、Qは、ハメットの置換基定数σpが−0.2以下でありかつ活性プロトンを持たない電子供与性基。
【選択図】なし

Description

本発明は、難燃性樹脂組成物、特に、環状ホスファゼン化合物を含む難燃性樹脂組成物に関する。
産業用および民生用の機器並びに電気製品などの分野において、合成樹脂は、その加工性、耐薬品性、耐候性、電気的特性および機械的強度等の点で他の材料に比べて優位性を有するため多用されており、また、使用量が増加している。しかし、合成樹脂は、燃焼し易い性質を有するため、難燃性の付与が求められており、近年その要求性能が次第に高まっている。このため、LSI等の電子部品の封止剤や基板等に使用されている樹脂組成物、例えばエポキシ樹脂組成物は、難燃性を高めるために、ハロゲン含有化合物や、ハロゲン含有化合物と酸化アンチモンなどのアンチモン化合物との混合物が一般的な難燃剤として添加されている。ところが、このような難燃剤を配合した樹脂組成物は、燃焼時や成形時等において、環境汚染のおそれがあるハロゲン系ガスを発生する可能性がある。また、ハロゲン系ガスは、電子部品の電気的特性や機械的特性を阻害する可能性がある。そこで、最近では、合成樹脂用の難燃剤として、燃焼時や成形時等においてハロゲン系ガスが発生しにくい非ハロゲン系のもの、例えば、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水和物系難燃剤並びにリン酸エステル系、縮合リン酸エステル系、リン酸アミド系、ポリリン酸アンモニウム系、ホスフィン酸アルミニウム系およびホスファゼン系などのリン系難燃剤が多用されるようになっている。
このうち、金属水和物系難燃剤は、脱水熱分解の吸熱反応とそれに伴う水の放出が合成樹脂の熱分解や燃焼開始温度と重複した温度領域で起こることで難燃化効果を発揮するが、その効果を高めるためには樹脂組成物に対して多量に配合する必要がある。このため、この種の難燃剤を含む樹脂組成物の成形品は、機械的強度が損なわれるという欠点がある。一方、リン系難燃剤のうち、リン酸エステル系および縮合リン酸エステル系の難燃剤は、可塑効果を有するため、難燃性を高めるために樹脂組成物に対して多量に添加すると、樹脂成形品の機械的強度が低下するなどの欠点が生じる。また、リン酸エステル系、リン酸アミド系、ポリリン酸アンモニウム系およびホスフィン酸アルミニウム系の難燃剤は、容易に加水分解することから、機械的および電気的な長期信頼性が要求される樹脂成形品の製造用材料としては実質的に使用が困難である。これらに対し、ホスファゼン系の難燃剤は、他のリン系難燃剤に比べて可塑効果および加水分解性が小さく、樹脂組成物に対する添加量を大きくすることができるため、特許文献1〜5に記載のように、合成樹脂用の有効な難燃剤として多用されつつあるが、樹脂組成物に対する添加量を増やすと、高温下における樹脂成形品の信頼性を損なう可能性がある。具体的には、熱可塑性樹脂系の樹脂組成物の場合は、高温下においてその樹脂成形体からホスファゼン系の難燃剤がブリードアウト(溶出)し易く、また、熱硬化性樹脂系の樹脂組成物の場合は、高温下においてその樹脂成形品にフクレ等の変形が発生し、当該樹脂成形品が積層基板等の電気・電子分野において用いられる場合は変形によるショートを引き起こす可能性がある。
特開2000−103939号公報 特開2004−83671号公報 特開2004−210849号公報 特開2005−8835号公報 特開2005−248134号公報
そこで、ホスファゼン系の難燃剤は、高温下での樹脂成形品の信頼性(高温信頼性)を高めるための改良が検討されており、その例として特許文献6〜10には、反応性基を有するホスファゼン系の難燃剤およびそれを用いた樹脂組成物(例えば、エポキシ樹脂組成物やポリイミド樹脂組成物)が開示されている。この種のホスファゼン系難燃剤は、樹脂成分との相溶性が良好であるため、樹脂組成物に対して多量に添加した場合であっても樹脂成形品の高温信頼性を損ないにくいが、添加量を増しても樹脂成形品の難燃性を効果的に高めるのが困難という、それが要求される本質的効果の点で不十分であり、また、樹脂成形品のガラス転移温度を低下させるために樹脂成形品の耐熱性を損なうことにもなる。
特開平6−247989号公報 特開平10−259292号公報 特開2003−302751号公報 特開2003−342339号公報 特開2004−143465号公報
本発明の目的は、ホスファゼン系難燃剤を用いた難燃性樹脂組成物について、高温信頼性を有し、しかも難燃性と耐熱性とが同時に高められた樹脂成形体を形成できるようにすることにある。
本発明者らは、難燃性樹脂組成物において樹脂成分と混合する難燃剤として環状ホスファゼン化合物に着目し、さらに、環状ホスファゼン化合物の置換基の種類に着目した。そして、ハメットの置換基定数σpが−0.2以下で活性プロトンを持たない電子供与性基(すなわち、非プロトン性の電子供与性基)を有するアリールオキシ基が置換した環状ホスファゼン化合物を樹脂成分へ添加して調製した組成物は、樹脂成分と環状ホスファゼン化合物との相溶性が良好であることから高温信頼性、すなわち、環状ホスファゼン化合物のブリードアウトや変形が生じにくい樹脂成形体を製造することができ、また、この樹脂成形体は難燃性および耐熱性において同時に優れていることを見出した。
本発明の難燃性樹脂組成物は、樹脂成分と、ハメットの置換基定数σpが−0.2以下でありかつ活性プロトンを持たない電子供与性基を置換基として有するアリールオキシ基を備えた環状ホスファゼン化合物とを含んでいる。
この組成物において用いられる環状ホスファゼン化合物は、例えば、下記の式(1)で表されるものである。
Figure 2010106148
式(1)中、nは3〜8の整数を示し、Aは下記のA1基およびA2基からなる群から選ばれた基を示しかつ少なくとも1つがA2基である。
A1基:炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも1種の基が置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリールオキシ基。
A2基:下記の式(2)で示される置換アリールオキシ基。
Figure 2010106148
式(2)中、Yは、フェニレン基、ビフェニレン基およびナフチレン基からなる群から選ばれた基を示し、Qは、ハメットの置換基定数σpが−0.2以下でありかつ活性プロトンを持たない電子供与性基を示す。
この環状ホスファゼン化合物は、通常、下記の式(3)で表される環状ホスホニトリルジハライドの全ハロゲン原子を、少なくとも一つが下記のA2基により置換されるよう下記のA1基およびA2基からなる群から選ばれた基により置換することで得られるものである。
Figure 2010106148
式(3)中、nは3〜8の整数を示し、Xはハロゲン原子を示す。
A1基:炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリールオキシ基。
A2基:下記の式(2)で示される置換アリールオキシ基。
Figure 2010106148
式(2)中、Yは、フェニレン基、ビフェニレン基およびナフチレン基からなる群から選ばれた基を示し、Qは、ハメットの置換基定数σpが−2.0以下でありかつ活性プロトンを持たない電子供与性基を示す。
式(1)で表される環状ホスファゼン化合物は、通常、nが3若しくは4である。
式(1)で表される環状ホスファゼン化合物の一例は、Aとして下記のA1基およびA2基を有するものである。
A1基:フェノキシ基およびメチルフェノキシ基からなる群から選ばれた基。
A2基:式(2)において、Yがフェニレン基若しくはナフチレン基であり、Qがアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、トリメチルシリルオキシ基およびt−ブチル基からなる群から選ばれた電子供与性基である基。
ここで、A2基は、例えば、3−メトキシフェノキシ基、3−エトキシフェノキシ基、3−(n−プロポキシ)フェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−エトキシフェノキシ基、4−(n−プロポキシ)フェノキシ基、4−アリルオキシフェノキシ基、4−(ジメチルアミノ)フェノキシ基、3−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基、4−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基、3−(t−ブチル)フェノキシ基および4−(t−ブチル)フェノキシ基からなる群から選ばれた基である。
式(1)で表される環状ホスファゼン化合物の他の例は、Aの全てが3−メトキシフェノキシ基、3−エトキシフェノキシ基、3−(n−プロポキシ)フェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−エトキシフェノキシ基、4−(n−プロポキシ)フェノキシ基、4−アリルオキシフェノキシ基、4−(ジメチルアミノ)フェノキシ基、3−(t−ブチル)フェノキシ基および4−(t−ブチル)フェノキシ基からなる群から選ばれたものである。
本発明の組成物の一形態において用いられる樹脂成分は、マレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂および液晶ポリマーからなる群から選ばれたものである。また、本発明の他の形態において用いられる樹脂成分は、エポキシ樹脂およびポリイミド系樹脂からなる群より選ばれたものである。
本発明の樹脂成形体は、本発明の難燃性樹脂組成物からなるものである。また、本発明の電気・電子部品は、本発明の樹脂成形体を用いたものである。
本発明の難燃性樹脂組成物は、樹脂成分に対し、上述のような特定の置換基を有するアリールオキシ基を備えた環状ホスファゼン化合物を難燃剤として組合せたものであるため、高温信頼性が良好であると同時に難燃性および耐熱性にも優れた樹脂成形体を形成することができる。
本発明の樹脂成形体は、本発明の難燃性樹脂組成物からなるものであるため、高温信頼性が良好であると同時に難燃性および耐熱性にも優れている。
本発明の電気・電子部品は、本発明の樹脂成形体を用いたものであるため、高温信頼性が良好であると同時に難燃性および耐熱性にも優れている。
本発明の難燃性樹脂組成物は、樹脂成分と環状ホスファゼン化合物とを含むものである。樹脂成分としては、各種の熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂を使用することができる。これらの樹脂成分は、天然のものであってもよいし、合成のものであってもよい。
ここで利用可能な熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、スチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン樹脂(MBS樹脂)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(MABS樹脂)、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂(AAS樹脂)、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル、脂肪族系ポリアミド、芳香族系ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリチオエーテルスルホン、ポリエーテルスルホン並びに液晶ポリマー等を挙げることができる。変性ポリフェニレンエーテルとしては、例えば、ポリフェニレンエーテルの一部または全部に、カルボキシル基、無水ジカルボキシル基、エポキシ基、オキセタン基、アミノ基、ヒドロキシ基、アクリル基またはメタクリル基などの反応性官能基をグラフト反応や共重合など何らかの方法で導入したものが用いられる。
熱可塑性樹脂は、本発明の難燃性樹脂組成物の利用目的に応じて選択することができる。例えば、本発明の樹脂組成物を電子機器用途、特に、OA機器、AV機器、通信機器および家電製品用の筐体や部品用の材料として用いる場合は、熱可塑性樹脂としてポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアミド若しくは液晶ポリマー等を用いるのが好ましい。
一方、ここで利用可能な熱硬化性樹脂の具体例としては、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、マレイミド−シアン酸エステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリベンズイミダゾール、ポリカルボジイミドおよびエポキシ樹脂等を挙げることができる。このうち、エポキシ樹脂は、強度、電気特性および接着性に優れているので、電気・電子部品用途をはじめとする各種の用途用の難燃性樹脂組成物において特に好ましく用いられる。
熱硬化性樹脂は、本発明の難燃性樹脂組成物の利用目的に応じて選択することができる。例えば、本発明の樹脂組成物を電子部品用途、特に、各種IC素子の封止材、配線板の基板材料、層間絶縁材料や絶縁性接着材料等の絶縁材料、導電材料および表面保護材料として用いる場合は、熱硬化性樹脂として、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、マレイミド樹脂(特に、ビスマレイミド樹脂)、シアン酸エステル樹脂若しくはエポキシ樹脂等を用いるのが好ましい。
本発明の難燃性樹脂組成物において、樹脂成分としては、上述の熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂以外の耐熱性樹脂を用いることもできる。このような耐熱性樹脂を用いると、より確実に難燃性と耐熱性とが同時に高められた樹脂成形体を実現することができる。
樹脂成分として用いられる耐熱性樹脂の例としては、ポリイミド系樹脂を挙げることができる。ポリイミド系樹脂を樹脂成分として含む難燃性樹脂組成物は、耐熱性に優れる一方で、樹脂の設計によっては接着性を確保できる自由度を有するため、電気・電子部品用途をはじめとする各種の樹脂成形体の製造用材料として特に好ましく用いられる。
ポリイミド系樹脂としては、完全にイミド化したポリイミド樹脂の他に、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸や一部がイミド化されたポリアミド酸を使用することもできる。また、ポリイミド系樹脂の一部または全部に、カルボキシル基、無水ジカルボキシル基、エポキシ基、オキセタン基、アミノ基、ヒドロキシ基、アクリル基またはメタクリル基などの反応性官能基をグラフト反応や共重合など何らかの方法で導入した変性ポリイミド系樹脂を用いることもできる。
上述の各種樹脂成分は、それぞれ単独で用いられてもよいし、必要に応じて2種以上のものが併用されてもよい。
本発明の難燃性樹脂組成物において用いられる環状ホスファゼン化合物は、アリールオキシ基上の置換基として活性プロトンを持たない電子供与性基を有するものである。特に、ハメットの置換基定数σpが−0.2以下でありかつ活性プロトンを持たない置換基を有するアリールオキシ基を備えた環状ホスファゼン化合物を用いるのが好ましい。ハメットの置換基定数σpは、例えば下記の非特許文献1〜2に記載されており、σpが負の値で、−0.2以下であれば、強い電子供与性置換基となる。
"Some Relations between Reaction Rates Equilibrium Constants",Hammett,L.P.,Chemical Reviews,第17巻125〜136頁(1935年) "A survey of Hammett substituent constants and resonance and Field parameters", Hansch,C.;Leo,A.;Taft,R.W.,Chemical Reviews,第91巻165〜195頁(1991年)
ハメットの置換基定数σpは−0.2以下であるが活性プロトンを持つ置換基を有するアリールオキシ基を含む環状ホスファゼン化合物を用いた場合は、当該ホスファゼン化合物が樹脂成分との反応性を示すため、耐熱性および高温信頼性に優れた樹脂成形体を得るのが困難になる。したがって、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基およびブチルアミノ基等のモノアルキルアミノ基、アニリノ基等のアリールアミノ基、並びにヒドロキシ基、ヒドロキシアミノ基、アミノ基、ヒドラジド基、ウレイド基および1−アジリジニル基等のハメットの置換基定数σpは−0.2以下であるが、活性プロトンを持つ置換基を有するアリールオキシ基を含む環状ホスファゼン化合物は、本発明において用いる環状ホスファゼン化合物から除外される。
本発明の難燃性樹脂組成物において、このような環状ホスファゼン化合物は、1種類のものが用いられてもよいし、2種類以上のものが併用されてもよい。
本発明で用いられる環状ホスファゼン化合物として好ましいものは、例えば、下記の式(1)で表されるものである。
Figure 2010106148
式(1)において、nは3から8の整数を示しているが、3から6の整数が好ましく、3若しくは4が特に好ましい。したがって、環状ホスファゼン化合物として特に好ましいものは、nが3のアリールオキシシクロトリホスファゼン(3量体)およびnが4のアリールオキシシクロテトラホスファゼン(4量体)である。また、本発明で用いられる環状ホスファゼン化合物は、nが異なる2種以上のものの混合物であってもよい。
また、式(1)において、Aは、下記のA1基およびA2基から成る群から選ばれた基を示している。但し、Aのうちの少なくとも1つはA2基である。
[A1基]
炭素数が6〜20のアリールオキシ基。このアリールオキシ基は、炭素数が1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも1種の基が置換されていてもよい。
このようなアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、エチルメチルフェノキシ基、ジエチルフェノキシ基、n−プロピルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、イソプロピルメチルフェノキシ基、イソプロピルエチルフェノキシ基、ジイソプロピルフェノキシ基、n−ブチルフェノキシ基、sec−ブチルフェノキシ基、t−ブチルフェノキシ基、n−ペンチルフェノキシ基、n−ヘキシルフェノキシ基、エテニルフェノキシ基、1−プロペニルフェノキシ基、2−プロペニルフェノキシ基、イソプロペニルフェノキシ基、1−ブテニルフェノキシ基、sec−ブテニルフェノキシ基、1−ペンテニルフェノキシ基、1−ヘキセニルフェノキシ基、フェニルフェノキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基およびフェナントリルオキシ基等を挙げることができる。このうち、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ジエチルフェノキシ基、2−プロペニルフェノキシ基、フェニルフェノキシ基およびナフチルオキシ基が好ましく、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基およびナフチルオキシ基がさらに好ましく、フェノキシ基およびメチルフェノキシ基が特に好ましい。
[A2基]
下記の式(2)で示される置換アリールオキシ基。
Figure 2010106148
式(2)中、Yは、フェニレン基、ビフェニレン基およびナフチレン基からなる群から選ばれた基を示し、Qは、ハメットの置換基定数σpが−0.2以下でありかつ活性プロトンを持たない置換基を示す。
Qとしては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基およびアリルオキシ基等のアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、トリメチルシリルオキシ基並びにt−ブチル基を挙げることができる。
なお、Yにおいて、Qは2個以上置換していてもよい。この場合、Qは、一種類のものが2個以上置換していてもよいし、二種類以上のものが2個以上置換していてもよい。また、YにおけるQの置換位置は、パラ位に限定されるものではない。さらに、Yにおいて、Qとともに、他の置換基が置換していてもよい。この場合、他の置換基は、ハメットの置換基定数σpが−0.2を超えるものであってもよいが、活性プロトンを持たないものが好ましい。
式(2)で示される置換アリールオキシ基として好ましいものは、Yがフェニレン基若しくはナフチレン基のものである。このような置換アリールオキシ基の具体的としては、2−メトキシフェノキシ基、3−メトキシフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、2−エトキシフェノキシ基、3−エトキシフェノキシ基、4−エトキシフェノキシ基、2−(n−プロポキシ)フェノキシ基、3−(n−プロポキシ)フェノキシ基、4−(n−プロポキシ)フェノキシ基、2−(イソプロポキシ)フェノキシ基、3−(イソプロポキシ)フェノキシ基、4−(イソプロポキシ)フェノキシ基、2−(n−ブトキシ)フェノキシ基、3−(n−ブトキシ)フェノキシ基、4−(n−ブトキシ)フェノキシ基、2−アリルオキシフェノキシ基、3−アリルオキシフェノキシ基、4−アリルオキシフェノキシ基、4−(2−メトキシフェニル)フェノキシ基、4−(3−メトキシフェニル)フェノキシ基、4−(4−メトキシフェニル)フェノキシ基、4−(2−エトキシフェニル)フェノキシ基、4−(3−エトキシフェニル)フェノキシ基、4−(4−エトキシフェニル)フェノキシ基、4−[2−(n−プロポキシ)フェニル]フェノキシ基、4−[3−(n−プロポキシ)フェニル]フェノキシ基、4−[4−(n−プロポキシ)フェニル]フェノキシ基、4−(2−イソプロポキシフェニル)フェノキシ基、4−(3−イソプロポキシフェニル)フェノキシ基、4−(4−イソプロポキシフェニル)フェノキシ基、4−[2−(n−ブトキシ)フェニル]フェノキシ基、4−[3−(n−ブトキシ)フェニル]フェノキシ基、4−[4−(n−ブトキシ)フェニル]フェノキシ基、4−(2−アリルオキシフェニル)フェノキシ基、4−(3−アリルオキシフェニル)フェノキシ基、4−(4−アリルオキシフェニル)フェノキシ基、4−メトキシ−1−ナフチルオキシ基、5−メトキシ−1−ナフチルオキシ基、4−エトキシ−1−ナフチルオキシ基、5−エトキシ−1−ナフチルオキシ基、4−(n−プロポキシ)−1−ナフチルオキシ基、5−(n−プロポキシ)−1−ナフチルオキシ基、4−イソプロポキシ−1−ナフチルオキシ基、5−イソプロポキシ−1−ナフチルオキシ基、4−(n−ブトキシ)−1−ナフチルオキシ基、5−(n−ブトキシ)−1−ナフチルオキシ基、4−アリルオキシ−1−ナフチルオキシ基、5−アリルオキシ−1−ナフチルオキシ基、4−メトキシ−2−ナフチルオキシ基、6−メトキシ−2−ナフチルオキシ基、4−エトキシ−2−ナフチルオキシ基、6−エトキシ−2−ナフチルオキシ基、4−(n−プロポキシ)−2−ナフチルオキシ基、6−(n−プロポキシ)−2−ナフチルオキシ基、4−イソプロポキシ−2−ナフチルオキシ基、6−イソプロポキシ−2−ナフチルオキシ基、4−(n−ブトキシ)−2−ナフチルオキシ基、6−(n−ブトキシ)−2−ナフチルオキシ基、4−アリルオキシ−2−ナフチルオキシ基および6−アリルオキシ−2−ナフチルオキシ基等のアルコキシ基置換アリールオキシ基、2−(ジメチルアミノ)フェノキシ基、3−(ジメチルアミノ)フェノキシ基、4−(ジメチルアミノ)フェノキシ基、4−[2−(ジメチルアミノ)フェニル]フェノキシ基、4−[3−(ジメチルアミノ)フェニル]フェノキシ基、4−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]フェノキシ基、4−(ジメチルアミノ)−1−ナフチルオキシ基、5−(ジメチルアミノ)−1−ナフチルオキシ基、4−(ジメチルアミノ)−2−ナフチルオキシ基および6−(ジメチルアミノ)−2−ナフチルオキシ基等のジメチルアミノ基置換アリールルオキシ基、2−(ジフェニルアミノ)フェノキシ基、3−(ジフェニルアミノ)フェノキシ基、4−(ジフェニルアミノ)フェノキシ基、4−[2−(ジフェニルアミノ)フェニル]フェノキシ基、4−[3−(ジフェニルアミノ)フェニル]フェノキシ基、4−[4−(ジフェニルアミノ)フェニル]フェノキシ基、4−(ジフェニルアミノ)−1−ナフチルオキシ基、5−(ジフェニルアミノ)−1−ナフチルオキシ基、4−(ジフェニルアミノ)−2−ナフチルオキシ基および6−(ジフェニルアミノ)−2−ナフチルオキシ基等のジフェニルアミノ基置換アリールオキシ基、2−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基、3−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基、4−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基、4−[2−(トリメチルシリルオキシ)フェニル]フェノキシ基、4−[3−(トリメチルシリルオキシ)フェニル]フェノキシ基、4−[4−(トリメチルシリルオキシ)フェニル]フェノキシ基、4−(トリメチルシリルオキシ)−1−ナフチルオキシ基、5−(トリメチルシリルオキシ)−1−ナフチルオキシ基、4−(トリメチルシリルオキシ)−2−ナフチルオキシ基および6−(トリメチルシリルオキシ)−2−ナフチルオキシ基等のトリメチルシリルオキシ基置換アリールオキシ基、並びに、2−(t−ブチル)フェノキシ基、3−(t−ブチル)フェノキシ基、4−(t−ブチル)フェノキシ基、4−[2−(t−ブチル)フェニル]フェノキシ基、4−[3−(t−ブチル)フェニル]フェノキシ基、4−[4−(t−ブチル)フェニル]フェノキシ基、4−(t−ブチル)−1−ナフチルオキシ基、5−(t−ブチル)−1−ナフチルオキシ基、4−(t−ブチル)−2−ナフチルオキシ基および6−(t−ブチル)−2−ナフチルオキシ基等のt−ブチル基置換アリールオキシ基等が挙げられる。
これらの具体例のうちでより好ましいものは、Yがフェニレン基のものであり、3−メトキシフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−エトキシフェノキシ基、4−エトキシフェノキシ基、3−(n−プロポキシ)フェノキシ基、4−(n−プロポキシ)フェノキシ基、3−(イソプロポキシ)フェノキシ基、4−(イソプロポキシ)フェノキシ基、3−(n−ブトキシ)フェノキシ基、4−(n−ブトキシ)フェノキシ基、3−アリルオキシフェノキシ基、4−アリルオキシフェノキシ基、4−(4−メトキシフェニル)フェノキシ基、4−(4−エトキシフェニル)フェノキシ基、4−[4−(n−プロポキシ)フェニル]フェノキシ基、4−[4−イソプロポキシフェニル]フェノキシ基、4−[4−(n−ブトキシ)フェニル]フェノキシ基および4−(4−アリルオキシフェニル)フェノキシ基等のアルコキシ基置換フェニルオキシ基、3−(ジメチルアミノ)フェノキシ基、4−(ジメチルアミノ)フェノキシ基および4−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]フェノキシ基等のジメチルアミノ基置換フェニルオキシ基、3−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基、4−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基および4−[4−(トリメチルシリルオキシ)フェニル]フェノキシ基等のトリメチルシリルオキシ基置換フェニルオキシ基、若しくは、3−(t−ブチル)フェノキシ基、4−(t−ブチル)フェノキシ基および4−[4−(t−ブチル)フェニル]フェノキシ基等のt−ブチル基置換フェニルオキシ基等がさらに好ましい。
特に、3−メトキシフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−エトキシフェノキシ基、4−エトキシフェノキシ基、3−(n−プロポキシ)フェノキシ基、4−(n−プロポキシ)フェノキシ基、4−アリルオキシフェノキシ基、4−(ジメチルアミノ)フェノキシ基、3−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基、4−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基、3−(t−ブチル)フェノキシ基および4−(t−ブチル)フェノキシ基が好ましい。
式(1)において、Aは2n個含まれており、このうちの少なくとも1つがA2基である。したがって、式(1)で表される環状ホスファゼン化合物は、次の形態に大別することができる。
[形態1]
2n個の全てのAがA2基のものである。この場合、Aは、全てが同じA2基であってもよいし、2種以上のA2基であってもよい。例えば、式(1)のnが3であるアリールオキシシクロトリホスファゼン化合物、式(1)のnが4であるアリールオキシシクロテトラホスファゼン化合物、式(1)のnが5であるアリールオキシシクロペンタホスファゼン化合物および式(1)のnが6であるアリールオキシシクロヘキサホスファゼン化合物であって、Aの全てが1種のA2基であるもの、Aの全てが2種以上のA2基であるもの並びにこれらの任意の混合物を挙げることができる。
この形態の環状ホスファゼン化合物におけるA2基は、通常、3−メトキシフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−エトキシフェノキシ基、4−エトキシフェノキシ基、3−(n−プロポキシ)フェノキシ基、4−(n−プロポキシ)フェノキシ基、4−アリルオキシフェノキシ基、4−(4−メトキシフェニル)フェノキシ基、4−(ジメチルアミノ)フェノキシ基、4−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]フェノキシ基、3−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基、4−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基、3−(t−ブチル)フェノキシ基および4−(t−ブチル)フェノキシ基からなる群から選ばれたものが好ましく、3−メトキシフェノキシ基、3−エトキシフェノキシ基、3−(n−プロポキシ)フェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−エトキシフェノキシ基、4−(n−プロポキシ)フェノキシ基、4−アリルオキシフェノキシ基、4−(ジメチルアミノ)フェノキシ基、3−(t−ブチル)フェノキシ基および4−(t−ブチル)フェノキシ基からなる群から選ばれたものが特に好ましい。
[形態2]
2n個のAのうちの一部(すなわち、少なくとも1つ)がA2基であり、他のAがA1基のものである。ここで、Aの2つ以上がA2基の場合、各A2基は同じものであってもよいし、異なる2種以上のものであってもよい。また、A2基以外のAは、全てが同じA1基であってもよいし、2種以上のA1基であってもよい。
この形態の環状ホスファゼン化合物として好ましいものは、2n個のAのうちの2個〜(2n−2)個がA2基のものである。特に、式(1)のnが3であるアリールオキシシクロトリホスファゼン化合物、式(1)のnが4であるアリールオキシシクロテトラホスファゼン化合物、式(1)のnが5であるアリールオキシシクロペンタホスファゼン化合物および式(1)のnが6であるアリールオキシシクロヘキサホスファゼン化合物であって、2n個のAのうちの2個〜(2n−2)個がA2基のもの並びにこれらの任意の混合物である。このような環状ホスファゼン化合物は、他の環状ホスファゼン化合物に比べ、成形性により優れた樹脂組成物を実現可能な点において有利である。
なお、2n個のAのうちの2個〜(2n−2)個がA2基であるか否かは、環状ホスファゼン化合物またはその製造過程における中間体のTOF−MS分析により確認することができる。
このような形態の環状ホスファゼン化合物の具体例としては、式(1)のnが3であるアリールオキシシクロトリホスファゼン化合物、式(1)のnが4であるアリールオキシシクロテトラホスファゼン化合物、式(1)のnが5であるアリールオキシシクロペンタホスファゼン化合物または式(1)のnが6であるアリールオキシシクロヘキサホスファゼン化合物であって、Aが、A2基である3−メトキシフェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−メトキシフェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−メトキシフェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−メトキシフェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−エトキシフェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−エトキシフェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−エトキシフェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−エトキシフェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−(n−プロポキシ)フェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−(n−プロポキシ)フェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(n−プロポキシ)フェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(n−プロポキシ)フェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−アリルオキシフェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−アリルオキシフェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(4−メトキシフェニル)フェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(4−メトキシフェニル)フェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(ジメチルアミノ)フェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(ジメチルアミノ)フェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]フェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]フェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−(t−ブチル)フェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−(t−ブチル)フェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(t−ブチル)フェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの並びにA2基である4−(t−ブチル)フェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのものとの組合せのもの等が挙げられる。
このうち、式(1)のnが3であるアリールオキシシクロトリホスファゼン化合物、式(1)のnが4であるアリールオキシシクロテトラホスファゼン化合物、式(1)のnが5であるアリールオキシシクロペンタホスファゼン化合物、式(1)のnが6であるアリールオキシシクロヘキサホスファゼン化合物であって、Aが、A2基である3−メトキシフェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−メトキシフェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−メトキシフェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−メトキシフェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−エトキシフェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−エトキシフェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−エトキシフェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−エトキシフェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−(n−プロポキシ)フェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−(n−プロポキシ)フェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(n−プロポキシ)フェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(n−プロポキシ)フェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−アリルオキシフェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−アリルオキシフェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(ジメチルアミノ)フェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(ジメチルアミノ)フェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(t−ブチル)フェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(t−ブチル)フェノキシ基とA1基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの並びにこれらの任意の混合物が好ましい。
これらのうちでより好ましいものは、Yがフェニレン基であり、かつ、Qがアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、トリメチルシリルオキシ基およびt−ブチル基からなる群から選ばれたものであるA2基と、フェノキシ基およびメチルフェノキシ基のうちの1つのA1基との組合せのものである。特に、式(1)のnが3であるアリールオキシシクロトリホスファゼン化合物若しくは式(1)のnが4であるアリールオキシシクロテトラホスファゼン化合物であって、Aが、A2基である3−メトキシフェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−メトキシフェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−エトキシフェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−エトキシフェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である3−(n−プロポキシ)フェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(n−プロポキシ)フェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−アリルオキシフェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(ジメチルアミノ)フェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの、A2基である4−(t−ブチル)フェノキシ基とA1基であるフェノキシ基との組合せのもの並びにこれらの任意の混合物が好ましい。
本発明で用いられる上述の環状ホスファゼン化合物は、通常、下記の式(3)で表わされる環状ホスホニトリルジハライドを原料とし、その全ハロゲン原子を、少なくとも1つが上述のA2基により置換されるよう上述のA1基およびA2基からなる群から選ばれた基により置換することで得られる。
Figure 2010106148
ここで、上記環状ホスホニトリルジハライドのハロゲン原子をA1基およびA2基に置換するための方法として、例えば、次の非特許文献3、4に記載された方法を参照することができる。
PHOSPHORUS−NITROGEN COMPOUNDS、H.R.ALLCOCK著、1972年刊、ACADEMIC PRESS社 PHOSPHAZENES、A WORLDWIDE INSIGHT、M.GLERIA、R.DE JAEGER著、2004年刊、NOVA SCIENCE PUBLISHERS INC.社
本発明の難燃性樹脂組成物は、上述の樹脂成分と環状ホスファゼン化合物とを均一に混合することで調製することができる。ここで用いられる上述の環状ホスファゼン化合物は、樹脂成分との相溶性が良好であるため、樹脂成分と均一に混合することができる。
本発明の難燃性樹脂組成物における環状ホスファゼン化合物の使用量は、樹脂成分の種類や本発明の組成物の用途等の各種条件に応じて適宜設定することができるが、通常、固形分換算での樹脂成分100部に対して0.1〜200部に設定するのが好ましく、0.5〜100部に設定するのがより好ましく、1〜50部に設定するのがさらに好ましい。環状ホスファゼン化合物の使用量が0.1部未満の場合は、十分な難燃性を示す樹脂成形体が得られ難くなる可能性がある。逆に、環状ホスファゼン化合物の使用量が200部を超えると、樹脂成分本来の特性が損なわれ、樹脂成分による当該特性を示す樹脂成形体が得られ難くなる可能性がある。
本発明の難燃性樹脂組成物は、上述の必須成分、すなわち、上述の樹脂成分および環状ホスファゼン化合物の他に、用途や樹脂成分の種類等に応じ、その目的とする物性を損なわない範囲で、各種の充填剤や添加剤等を配合することができる。
使用可能な充填剤および添加剤は、樹脂組成物の技術分野において常用されているものであれば特に限定されるものではなく、公知の各種のものである。充填剤の具体例としては、粘土、クレー、カオリン、ベントナイト、長石やマイカ等のケイ酸アルミナ、タルクや滑石等のケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム(ワラストナイト)、軽石粉等のケイ酸塩、天然シリカ、焼成シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、ホワイトカーボン、アエロジル、ケイ砂、石英粉およびケイ藻土等の無水ケイ酸若しくはケイ酸、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデンおよび酸化亜鉛等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸バリウムおよび炭酸マグネシウム等の炭酸塩、硫酸バリウムおよび硫酸マグネシウム等の硫酸塩、チタン酸カリウムおよびチタン酸バリウム等のチタン酸塩、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、カーボンブラックおよびグラファイト等の炭素類、ホウ酸亜鉛およびモリブデン酸亜鉛等の亜鉛化合物、ガラスバルーン、シラスバルーンおよびフェノールバルーン等の無機若しくは有機のバルーン、ガラス繊維、ガラス布およびガラス微粉末等のガラス類並びにアルミナシリカ繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、炭素繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、液晶繊維およびPBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)繊維等の繊維類を挙げることができる。これらの充填剤は、2種以上のものが併用されてもよい。
また、添加剤の具体例としては、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系およびベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系およびヒドラジド系等の酸化防止剤、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、リン酸アミド、リン酸アミドエステル、リン酸アンモニウム、ホスフィン酸アルミニウムおよび赤リンなどのリン系、メラミン、メラミンシアヌレート、メラム、メレム、メロンおよびサクシノグアナミン等の窒素系、シリコーン系、臭素系および塩素化パラフィンなどの各種難燃剤、三酸化アンチモン等の難燃助剤、シラン系やチタン系等のカップリング剤、染料、顔料、着色剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、重合禁止剤、ハジキ防止剤、消泡剤、離型剤並びに帯電防止剤等を挙げることができる。
本発明の難燃性樹脂組成物は、各種の樹脂成形体を製造するための材料、例えば、粉体塗料、電着塗料およびPCM(プレコートメタル)用塗料等の塗料、接着剤、シーリング材、成型材料、複合材料、積層板並びに封止材等の製造用の材料として用いることができる。そして、本発明の難燃性樹脂組成物を用いたこのような材料から成る各種の樹脂成形体、例えば、塗膜や成型品は、難燃性樹脂組成物において樹脂成分と環状ホスファゼン化合物との相溶性が良好であって環状ホスファゼン化合物のブリードアウトが生じにくいことから高温信頼性に優れているだけではなく、難燃性に優れ、また、高いガラス転移温度を示すことから耐熱性においても優れたものになる。
このため、本発明の難燃性樹脂組成物は、各種の電気部品や電子部品用の各種の製造材料、例えば、半導体封止用材料、回路基板(特に、金属張り積層板、プリント配線板用基板)の製造用材料、プリント配線板用の接着剤、プリント配線板用の接着剤シート、プリント配線板用の絶縁性回路保護膜、プリント配線板用の導電ペースト、多層プリント配線板用の封止剤、多層基板の層間絶縁材料、絶縁性接着材料、回路保護剤、カバーレイフィルムおよびカバーインク等として用いるのが特に好ましい。そして、このような各種の製造材料を用いて形成された樹脂成形体を用いた電気・電子部品は、高温信頼性が良好であると同時に難燃性および耐熱性に優れたものになる。
以下に実施例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下において、「unit mol」の「unit」は、環状ホスファゼン化合物の最小構成単位、例えば、一般式(1)については(PNA)を意味し、一般式(3)については(PNX)を意味する。一般式(3)において、Xが塩素の場合、その1unit molは115.87gである。また、以下においては、特に断りがない限り、「%」および「部」とあるのは、それぞれ「重量%」および「重量部」を意味する。
合成例および参考例で得られたホスファゼン化合物は、H−NMRスペクトルおよび31P−NMRスペクトルの測定、アルカリ溶融後の硝酸銀を用いた電位差滴定法による塩素元素(残留塩素)の分析、並びにTOF−MS分析の結果に基づいて同定した。
合成例1(形態2に係る環状ホスファゼン化合物の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素導入管を備えた5リットルのフラスコ中に、ヘプタンによる洗浄で油分を完全に取り去った油性水素化ナトリウム(151g,6.3mol)を仕込んだ。これにヘキサクロロシクロトリホスファゼン(348g,3.0unit mol)のテトラヒドロフラン(700mL)溶液を加えて0℃まで冷却した後、3−メトキシフェノール(247g,2.0mol)およびp−クレゾール(454g,4.2mol)のテトラヒドロフラン(700mL)溶液を1時間かけて滴下し、5時間還流撹拌した。この反応液にトルエン(500mL)および水(700mL)を加えて分液し、有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で2回洗浄して無水硫酸マグネシウムで脱水乾燥した後に溶媒を留去したところ、微黄色粘稠質の生成物788g(収率:97%)が得られた。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
H−NMRスペクトル(300MHz,CDCl、δ、ppm):
2.1(12H,s),3.7(6H,s),6.6−7.3(24H)
31P−NMRスペクトル(120MHz,CDCl、δ、ppm):
9.4−10.1
◎MS(LDI−TOF)m/z:
825,810,793
◎残存塩素分析:
<0.01%
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[N(OCOMe)(OCMe)]、[N(OCOMe)(OCMe)]および[N(OCOMe)(OCMe)]の混合物であり、その平均組成が[N(OCOMe)2.0(OCMe)4.0]の環状ホスファゼン化合物の混合物であることを確認した。
合成例2(形態1に係る環状ホスファゼン化合物の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、水分離用受器および窒素導入管を備えた5リットルのフラスコ中に48%NaOH水溶液(550g,6.6mol)、トルエン(1,000mL)および4−メトキシフェノール(681g,6.3mol)を仕込んだ。これを窒素雰囲気下で撹拌加熱し、共沸脱水によりフラスコ内の水分を除去してナトリウム4−メトキシフェノキシドを調製した後、このスラリー溶液を40℃に冷却した。
このスラリー溶液にヘキサクロロシクロトリホスファゼン(348g,3.0unit mol)を仕込み、6時間還流した。反応終了後、反応液を5%NaOH水溶液で4回洗浄した。そして、これを2%硝酸で中和して分液し、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水乾燥した後に溶媒を留去したところ、白色固体の生成物857g(収率:98%)が得られた。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
H−NMR(300MHz,CDCl、δ、ppm):
3.7(18H,s),6.6(12H,d),6.7(12H,d)
31P−NMR(120MHz,CDCl、δ、ppm):
9.9
◎MS(LDI−TOF)m/z:
874
◎残存塩素分析:
<0.01%
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[N(OCOMe)]の構造を持つ環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
合成例3(形態1に係る環状ホスファゼン化合物の製造)
ヘキサクロロシクロトリホスファゼンに替えて分子式[PNClで示される、nが3から8のクロロシクロホスファゼンオリゴマー混合物(348g,3.0unit mol)を用い、合成例2と同様の操作を行う事で白色固体の生成物840g(収率:96%)を得た。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
H−NMR(300MHz,CDCl、δ、ppm):
3.7(6H,m),6.6−6.7(8H,m)
31P−NMR(120MHz,CDCl3、δ、ppm):
−17.3(六量体),−16.9(五量体),−11.2(四量体),9.9(三量体)
◎MS(LDI−TOF)m/z:
1748,1456,1165,874
◎残存塩素分析:
<0.01%
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[NP(OCOMe)の組成を持つ、nが3から8の環状ホスファゼン化合物の混合物であることを確認した。
合成例4(形態2に係る環状ホスファゼン化合物の製造)
4−メトキシフェノール(681g,6.3mol)に替えて4−メトキシフェノール(248g,2.0mol)およびフェノール(395g,4.2mol)の混合物を用い、合成例2と同様の操作を行う事で微黄色粘稠質の生成物737g(収率:98%)を得た。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
H−NMR(300MHz,CDCl、δ、ppm):
3.7(6H,m),6.6−7.0(28H,m)
31P−NMR(120MHz,CDCl3、δ、ppm):
9.3−10.0
◎MS(LDI−TOF)m/z:
784,754,724
◎残存塩素分析:
<0.01%
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[N(OCOMe)(OPh)]、[N(OCOMe)(OPh)]および[N(OCOMe)(OPh)]の混合物であり、その平均組成が[N(OCOMe)2.0(OPh)4.0]の環状ホスファゼン化合物の混合物であることを確認した。
合成例5(形態1に係る環状ホスファゼン化合物の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素導入管を備えた7リットルのフラスコ中に、分子式[PNClで示される、nが3から8のクロロシクロホスファゼンオリゴマー混合物(348g,3.0unit mol)、炭酸カリウム(912g,6.6mol)およびアセトニトリル(1,600mL)を仕込んだ。そして、これを撹拌しているところに4−アリルオキシフェノール(946g,6.3mol)のアセトニトリル(1,300mL)溶液を1時間かけて滴下し、8時間還流撹拌した。反応液にトルエン(1,000mL)および水(1,000mL)を加えて分液し、有機層を飽和食塩水で2回洗浄して無水硫酸マグネシウムで脱水乾燥した後に溶媒を留去したところ、微黄色固体の生成物950g(収率:92%)が得られた。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
H−NMR(300MHz,CDCl、δ、ppm):
4.5(4H,d),5.3−5.4(4H,m),6.0(2H,m),6.6−7.1(8H)
31P−NMR(120MHz,CDCl3、δ、ppm):
−17.2(六量体),−16.8(五量体),−11.2(四量体),9.8(三量体)
◎MS(LDI−TOF)m/z:
1716,1373,1030
◎残存塩素分析:
<0.01%
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[NP(OCOCHCH=CHの組成を持つ、nが3から8の環状ホスファゼン化合物の混合物であることを確認した。
合成例6(形態1に係る環状ホスファゼン化合物の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素導入管を備えた5リットルのフラスコ中に、薄く切った金属ナトリウム(145g,6.3mol)およびテトラヒドロフラン(500mL)を仕込んだ。これに4−(ジメチルアミノ)フェノール(864g,6.3mol)のテトラヒドロフラン(1,000mL)溶液を30℃で1時間かけて滴下し、2時間撹拌した後、オクタクロロシクロテトラホスファゼン(348g,3.0unit mol)のテトラヒドロフラン(700mL)溶液をさらに1時間かけて滴下し、4時間撹拌を継続した。反応液にメタノール(50mL)を加えて1時間撹拌した後、トルエン(500mL)および水(1,000mL)を加えて分液し、有機層を飽和食塩水で2回洗浄して無水硫酸マグネシウムで脱水乾燥した後に溶媒を留去したところ、微黄色粘稠質の生成物886g(収率:93%)が得られた。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
H−NMR(300MHz,CDCl、δ、ppm):
2.8(48H,s),6.5−6.6(32H,m)
31P−NMR(120MHz,CDCl、δ、ppm):
−11.4
◎MS(LDI−TOF)m/z
1270
◎残存塩素分析
<0.01%
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[N(OCNMe]の構造を持つ環状ホスファゼン化合物であることを確認した。
合成例7(形態1に係る環状ホスファゼン化合物の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、水分離用受器および窒素導入管を備えた5リットルのフラスコ中に48%KOH水溶液(772g,6.6mol)、クロロベンゼン(1,200mL)および4−(t−ブチル)フェノール(1,082g,7.2mol)を仕込んだ。これを窒素雰囲気下で撹拌加熱し、共沸脱水によりフラスコ内の水分を除去してカリウム4−(t−ブチル)フェノキシドを調製した後、このスラリー溶液を40℃に冷却した。
得られたスラリー溶液に、分子式[PNClで示される、nが3から8のクロロシクロホスファゼンオリゴマー混合物(348g,3.0unit mol)を加え、18時間還流した。反応終了後、反応液を1,800mLまで濃縮し、クロロホルム(1,000mL)を加えて5%NaOH水溶液で4回洗浄した。そして、これを2%硝酸で中和して分液し、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水乾燥した後に溶媒を留去したところ、白色固体の生成物972g(収率:94%)が得られた。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
H−NMR(300MHz,CDCl、δ、ppm):
1.2−1.3(18H,m),6.8−7.3(8H)
31P−NMR(120MHz,CDCl、δ、ppm):
−17.2(六量体),−16.8(五量体),−11.0(四量体),10.1(三量体)
◎MS(LDI−TOF)m/z:
1032,1374,1718,2061
◎残存塩素分析:
<0.01%
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[NP(OC−t−Bu)の組成を持つ環状ホスファゼン化合物の混合物であることを確認した。
合成例8(形態2に係る環状ホスファゼン化合物の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素導入管を備えた5リットルのフラスコ中にヘキサクロロシクロトリホスファゼン(348g,3.0unit mol)、4−(トリメチルシリルオキシ)フェノール(365g,2.0mol)、フェノール(395g,4.2mol)およびテトラヒドロフラン(1,000mL)を仕込んだ。そして、これを0℃で撹拌しているところに、カリウムt−ブトキシド(707g,6.3mol)のテトラヒドロフラン(1,000mL)溶液を2時間かけて滴下し、40℃で2時間撹拌した。反応液を水および飽和食塩水で2回洗浄して無水硫酸マグネシウムで脱水乾燥した後に溶媒を留去したところ、微黄色粘稠質の生成物784g(収率:90%)が得られた。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
H−NMR(300MHz,CDCl、δ、ppm):
0.1(18H,m),6.5−7.2(28H,m)
31P−NMR(120MHz,CDCl、δ、ppm):
10.3
◎MS(LDI−TOF)m/z:
958,869,781
◎残存塩素分析:
<0.01%
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は、[N(OCOSiMe)(OPh)]、[N(OCOSiMe(OPh)]および[N(OCOSiMe(OPh)]の混合物であり、その平均組成が[N(OCOSiMe2.0(OPh)4.0]の環状ホスファゼン化合物の混合物であることを確認した。
参考例1(環状ホスファゼン化合物の製造)
PHOSPHORUS−NITROGEN COMPOUNDS、H.R.ALLCOCK著、1972年刊、151頁、ACADEMIC PRESS社(先に挙げた非特許文献3)に記載されている方法に従い、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン(348g,3.0unit mol)から[N(OPh)]の化学式で示される白色固体の環状ホスファゼン化合物を製造した。
参考例2(環状ホスファゼン化合物の製造)
ヘキサクロロシクロトリホスファゼン81%とオクタクロロシクロテトラホスファゼン19%とからなるシクロホスファゼン混合物(348g,3.0unit mol)を用い、参考例1と同様の方法で[N(OPh)]および[N(OPh)]の化学式でそれぞれ示される白色固体の環状ホスファゼン化合物の混合物を得た。
参考例3(環状ホスファゼン化合物の製造)
4−メトキシフェノールに替えてp−クレゾール(681g,6.3mol)を用いた点を除いて合成例2と同様に操作し、[N(OCCH]の化学式で示される白色固体の環状ホスファゼン化合物を得た。
実施例1〜8および比較例1〜3
ポリカーボネート樹脂(三菱瓦斯化学株式会社の商品名「ユーピロンS3000」)100部に対し、合成例1〜8で得られた環状ホスファゼン化合物または参考例1〜3で得られた環状ホスファゼン化合物を表1に示す割合で添加して200〜240℃で5分間溶融混練することで樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物をプレス成形機を用いて190〜200℃で10分間加熱プレスし、厚さ1.6mmのシートを得た。このシート(試験片)について、UL−94難燃性試験(垂直燃焼試験)を実施し、また、熱変形温度(耐熱性)およびブルーミング性(高温信頼性)を調べた。各項目の評価方法は下記の通りである。結果を表1に示す。
(燃焼性試験)
アンダーライターズラボラトリーズ(Underwriter’s Laboratories Inc.)のUL−94垂直燃焼試験に基づき、10回接炎時の合計燃焼時間と燃焼時の滴下物による綿着火の有無により、V−0、V−1、V−2および規格外の四段階に分類した。評価基準を以下に示す。難燃性レベルはV−0>V−1>V−2>規格外の順に低下する。
V−0:下記の条件を全て満たす。
(A)試験片5本を1本につき二回ずつ、合計10回の接炎後からの消炎時間の合計が50秒以内。
(B)試験片5本を1本につき二回ずつ接炎を行い、それぞれの接炎後からの消炎時間が10秒以内。
(C)すべての試験片で滴下物による、300mm下の脱脂綿への着火がない。
(D)すべての試験片で、二回目の接炎後のグローイングは30秒以内。
(E)すべての試験片で、クランプまでフレーミングしない。
V−1:下記の条件を全て満たす。
(A)試験片5本を1本につき二回ずつ、合計10回の接炎後からの消炎時間の合計が250秒以内。
(B)試験片5本を1本につき二回ずつ接炎を行い、それぞれの接炎後からの消炎時間が30秒以内。
(C)すべての試験片で滴下物による、300mm下の脱脂綿への着火がない。
(D)すべての試験片で、二回目の接炎後のグローイングは60秒以内。
(E)すべての試験片で、クランプまでフレーミングしない。
V−2:下記の条件を全て満たす。
(A)試験片5本を1本につき二回ずつ、合計10回の接炎後からの消炎時間の合計が250秒以内。
(B)試験片5本を1本つき二回ずつ接炎を行い、それぞれの接炎後からの消炎時間が30秒以内。
(C)試験片5本のうち、少なくとも1本、滴下物による、300mm下の脱脂綿への着火がある。
(D)すべての試験片で、二回目の接炎後のグローイングは60秒以内。
(E)すべての試験片で、クランプまでフレーミングしない。
(熱変形温度)
ASTM D−648に準じ、荷重1.82MPaで試験した。
(ブルーミング性)
試験片を150℃で6時間加熱し、試験片表面での染み出し状態(試験片内部からの浸出状態)を目視観察した。評価の基準は次の通りである。
◎:染み出しが全く見られない。
〇:染み出しがほとんど見られない。
△:若干の染み出しが見られる。
×:著しい染み出しが見られる。
Figure 2010106148
表1から明らかなように、実施例1〜8の樹脂組成物からなるシート(樹脂成形体)は、比較例1〜3のものに比べて難燃性に優れ、また、熱変形温度が高いことから耐熱性に優れており、さらに、ブルーミングが実質的に見られないことから高温信頼性(耐ブリードアウト性)においても優れている。
実施例9〜16および比較例4〜6
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパン・エポキシ・レジン社の商品名「エピコート1001」:エポキシ当量456g/eq.、樹脂固形分70%)651部、クレゾールノボラックエポキシ樹脂(東都化成株式会社の商品名「YDCN−704P」:エポキシ当量210g/eq.、樹脂固形分70%)300部、ノボラック型フェノール樹脂(昭和高分子株式会社の商品名「BRG−558」:水酸基価106g/eq.、樹脂固形分70%)303部、水酸化アルミニウム361部および2−エチル−4−メチルイミダゾール0.9部の混合物に対し、合成例1〜8で得られた環状ホスファゼン化合物または参考例1〜3で得られた環状ホスファゼン化合物を表2に示す割合で添加し、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)を加えて樹脂固形分65%のエポキシ樹脂ワニス(樹脂組成物)を調製した。
次に、調製したエポキシ樹脂ワニスを厚さが180μmのガラス織布に塗布して含浸させ、160℃の温度で乾燥してプリプレグを製造した。こうして得られた厚さ180μmのガラス織布プリプレグを8枚積層し、これを温度170℃、圧力4MPaで100分間加熱・加圧して厚さ1.2mmのガラスエポキシ積層板を得た。
このガラスエポキシ積層板から長さ5インチ、幅0.5インチ、厚さ1.2mmの試験片を切り出し、その燃焼性、ガラス転移温度(Tg)および高温信頼性を調べた。ここで、燃焼性は、実施例1〜8および比較例1〜3の場合と同じく、UL−94規格垂直燃焼試験に準拠した方法により評価した。また、ガラス転移温度は、JIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」に準じ、DSCによって測定した。さらに、高温信頼性は、試験片を290℃で20分間処理し、外観の変化を観察することで評価した。結果を表2に示す。なお、表2の高温信頼性の結果において、「有」は試験片からの環状ホスファゼン化合物等のブリードアウトがないこと(すなわち、高温信頼性が有ること)を意味し、「無」はそのブリードアウトがあること(すなわち、高温信頼性が無いこと)を意味している。
Figure 2010106148
表2から明らかなように、実施例9〜16の樹脂組成物からなるガラスエポキシ積層板(樹脂成形体)は、比較例4〜6の樹脂組成物からなるものに比べて難燃性に優れ、また、ガラス転移温度が高いことから耐熱性に優れており、さらに、高温信頼性(耐ブリードアウト性)にも優れている。
実施例17〜24および比較例7〜9
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパン・エポキシ・レジン社の商品名「jER1004」:エポキシ当量925)278部、クレゾールノボラックエポキシ樹脂(東都化成株式会社の商品名「YDCN−703P」:エポキシ当量210)126部、ビスフェノールA型ノボラック樹脂(大日本インキ化学株式会社の商品名「PHENOLITE VH−4170」:水酸基価118)106部、ヒドロキシ基およびカルボキシ基等の極性官能基を有する架橋型スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子(JSR社の商品名「XSK−500」:平均粒径0.5μm)300部、表3に示す割合の合成例1〜8で得られた環状ホスファゼン化合物または参考例1〜3で得られた環状ホスファゼン化合物、2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチルフェノール3部、水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社の商品名「H−421」)200部および2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社の商品名「キュアゾール 2E4MZ」)2部からなる混合物を調製し、これに溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルおよびメチルエチルケトンを加えて固形分が33%の接着剤組成物(樹脂組成物)を得た。
厚さ25μmのポリイミドフイルム(東レデュポン株式会社の商品名「カプトン」)に対し、得られた上述の接着剤組成物を乾燥後の厚さが15μmになるようにロールコーターを用いて塗布して乾燥し、接着剤付きポリイミドフイルムを得た。この接着剤付きポリイミドフイルムの接着剤組成物層側と銅箔(厚さ35μm)の処理面とを重ね合わせて120℃のラミネートロールで圧着し、更に、100℃で3時間、130℃で3時間および160℃で3時間処理してフレキシブル銅張積層板を作製した。また、厚さ40μmのポリプロピレンフイルムに対し、得られた上述の接着剤組成物を乾燥後の厚さが50μmになるようにロールコーターを用いて塗布して乾燥し、ポリプロピレンフイルムをキャリアフイルムとする接着剤フイルムを得た。
得られた接着剤フイルムの接着剤組成物層側を厚さ125μmのポリイミド補強板に対して120℃のラミネートロールで圧着した。そして、キャリアフイルムのポリプロピレンフイルムを剥がし、接着剤組成物層に対して得られたフレキシブル銅張積層板のフイルム面を重ね合わせた。これを160℃、0.5MPaで15分間加熱加圧接着し、評価用の補強板付きフレキシブル銅張積層板を作製した。
得られた補強板付きフレキシブル銅張積層板について、難燃性および高温信頼性を評価した。難燃性は、補強板付きフレキシブル銅張積層板の銅箔を全面エッチングにより除去したものを試験片とし、実施例1〜8および比較例1〜3の場合と同じくUL−94規格垂直燃焼試験に準拠した方法により評価した。また、高温信頼性は、加湿前後のはんだ耐熱性により評価した。加湿前のはんだ耐熱性は、難燃性試験に適用したものと同様の試験片を100℃で60分加熱乾燥した後、260℃、288℃および310℃の各はんだ浴に20秒間フロートさせて外観変化(特に膨れ)の有無を確認することで評価した。一方、加湿後のはんだ耐熱性は、試験片を60℃、相対湿度85%で1時間加湿処理した後、260℃のはんだ浴に1分間フロートさせて外観変化(特に膨れ)の有無を確認することで評価した。結果を表3に示す。各はんだ耐熱性の結果において、「有」は外観変化が発生しなかったことから耐熱性および高温信頼性が有ることを示し、「無」は外観変化が発生したことから耐熱性および高温信頼性が無いことを示す。
Figure 2010106148
表3から明らかなように、実施例17〜24の接着剤組成物を用いて形成された補強板付きフレキシブル銅張積層板(樹脂成形体)は、難燃性において比較例7〜9と略同等であるが、加湿前後のはんだ耐熱性が比較例7〜9よりも良好であり、耐熱性および高温信頼性において優れている。
合成例9(ポリアミド酸の合成)
300mLセパラブルフラスコに撹拌機、ディーンシュターク管、還流冷却器、200ml滴下ロートおよび窒素導入菅を設置した。この反応機のセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、N−メチルピロリドン106.7g、メシチレン45.7gおよびピロメリット酸二無水物(三菱瓦斯化学株式会社製)45.8gを仕込んだ。それを撹拌しながら、末端アミノ化ポリプロピレングリコール(ハンツマン・コーポレーション社の商品名「ジェファーミンD400」)12.3g、末端アミノ化ポリプロピレングリコール(ハンツマン・コーポレーション社の商品名「ジェファーミンD230」)11.0gおよび末端アミノ化ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール共重合体)(ハンツマン・コーポレーション社の商品名「ジェファーミンXTJ542」)36.8gを昇温下で1時間かけて滴下した。その後、内部温度を180℃まで昇温させ、180℃で還流を4時間維持した後に室温まで冷却した。冷却後、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル(JFEケミカル株式会社製)18.6gを添加した。添加後、20時間窒素雰囲気下で撹拌を継続し、固形分45質量%の部分的にイミド化されたポリアミド酸の溶液を得た。
合成例10(ポリアミド酸の合成)
合成例9で用いたものと同様の反応機のセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、N−メチルピロリドン106.7g、メシチレン45.7gおよびビフェニルテトラカルボン酸二無水物(JFEケミカル株式会社製)56.0gを仕込んだ。それを撹拌しながら、末端アミノ化ポリプロピレングリコール(ハンツマン・コーポレーション社の商品名「ジェファーミンD230」)22.0gおよび末端アミノ化ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール共重合体)(ハンツマン・コーポレーション社の商品名「ジェファーミンXTJ542」)34.9gを昇温下で1時間かけて滴下した。その後、内部温度を180℃まで昇温させ、180℃で還流を4時間維持した後に室温まで冷却した。冷却後、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(三井化学株式会社製)16.4gを添加した。添加後、20時間窒素雰囲気下で撹拌を継続し、固形分45質量%の部分的にイミド化されたポリアミド酸の溶液を得た。
実施例25〜32および比較例10〜12
合成例9、10で得られたポリアミド酸(部分的にイミド化されたポリアミド酸)の溶液900部と表4に示す割合の合成例1〜8で得られた環状ホスファゼン化合物または参考例1〜3で得られた環状ホスファゼン化合物とからなる混合物を調製し、これに溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミドを加えて固形分が50%の樹脂組成物を得た。
厚さ25μmのポリエチレンテレフタラートフィルム(東洋紡績株式会社の商品名「M5001」)に対し、得られた上述の樹脂組成物をアプリケーターを用いて塗布して乾燥し、厚さ25μmのドライフィルムを得た。そして、株式会社名機製作所製の真空ラミネーターを用い、銅(12μm)/ポリイミド(25μm)/銅(12μm)のフレキシブル銅張積層板(三井化学株式会社の商品名「ネオフレックス(登録商標)NFX−2ABEPFE(25T)」の片面に対して得られたドライフィルムを80℃で1分間、0.5MPaの加熱、加圧条件下に貼りあわせた後、160℃で1時間加熱キュアすることで評価用のカバーフィルム付きフレキシブル銅張積層板を作製した。
得られたカバーフィルム付きフレキシブル銅張積層板について、難燃性、加湿試験後のブリードアウト性および加湿後のはんだ耐熱性を評価した。難燃性は、カバーフィルム付きフレキシブル銅張積層板の銅箔を両面エッチングにより除去したものを試験片とし、下記のUL−94難燃性試験(薄型垂直燃焼試験)に準拠した方法により評価した。加湿試験後のブリードアウト性は、難燃性の評価で用いたものと同様の試験片について、60℃、相対湿度90%で加湿した後の表面に結晶状の析出物があるかないかで評価した。加湿後のはんだ耐熱性は、難燃性の評価で用いたものと同様の試験片について、60℃、相対湿度85%で1時間加湿処理した後、260℃のはんだ浴に1分間フロートさせた場合の外観変化(特に膨れ)の有無を確認することで評価した。結果を表4に示す。加湿後のはんだ耐熱性の結果において、「有」は外観変化が発生しなかったことから耐熱性および高温信頼性が有ることを示し、「無」は外観変化が発生したことから耐熱性および高温信頼性が無いことを示す。
(難燃性試験)
アンダーライターズラボラトリーズ(Underwriter’s Laboratories Inc.)のUL−94薄型垂直燃焼試験に基づき、10回接炎時の合計燃焼時間と燃焼時の滴下物による綿着火の有無により、VTM−0、VTM−1、VTM−2および規格外の四段階に分類した。評価基準を以下に示す。難燃性レベルはVTM−0>VTM−1>VTM−2>規格外の順に低下する。
VTM−0:下記の条件を全て満たす。
(A)試験片5本を1本につき二回ずつ、合計10回の接炎後からの消炎時間の合計が50秒以内。
(B)試験片5本を1本につき二回ずつ接炎を行い、それぞれの接炎後からの消炎時間が10秒以内。
(C)すべての試験片で滴下物による、300mm下の脱脂綿への着火がない。
(D)すべての試験片で、二回目の接炎後のグローイングは30秒以内。
(E)すべての試験片で、クランプまでフレーミングしない。
VTM−1:下記の条件を全て満たす。
(A)試験片5本を1本につき二回ずつ、合計10回の接炎後からの消炎時間の合計が250秒以内。
(B)試験片5本を1本につき二回ずつ接炎を行い、それぞれの接炎後からの消炎時間が30秒以内。
(C)すべての試験片で滴下物による、300mm下の脱脂綿への着火がない。
(D)すべての試験片で、二回目の接炎後のグローイングは60秒以内。
(E)すべての試験片で、クランプまでフレーミングしない。
VTM−2:下記の条件を全て満たす。
(A)試験片5本を1本につき二回ずつ、合計10回の接炎後からの消炎時間の合計が250秒以内。
(B)試験片5本を1本つき二回ずつ接炎を行い、それぞれの接炎後からの消炎時間が30秒以内。
(C)試験片5本のうち、少なくとも1本、滴下物による、300mm下の脱脂綿への着火がある。
(D)すべての試験片で、二回目の接炎後のグローイングは60秒以内。
(E)すべての試験片で、クランプまでフレーミングしない。
Figure 2010106148
表4から明らかなように、実施例25〜32のカバーフィルム付きフレキシブル銅張積層板は、難燃性において比較例10〜12と略同等であるが、加湿試験後のブリードアウト性および加湿後のはんだ耐熱性が比較例10〜12よりも良好であり、耐熱性および高温信頼性においても優れている。

Claims (11)

  1. 樹脂成分と、
    ハメットの置換基定数σpが−0.2以下でありかつ活性プロトンを持たない電子供与性基を置換基として有するアリールオキシ基を備えた環状ホスファゼン化合物と、
    を含む難燃性樹脂組成物。
  2. 前記環状ホスファゼン化合物が下記の式(1)で表されるものである、請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
    Figure 2010106148
    (式(1)中、nは3〜8の整数を示し、Aは下記のA1基およびA2基からなる群から選ばれた基を示しかつ少なくとも1つがA2基である。
    A1基:炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも1種の基が置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリールオキシ基。
    A2基:下記の式(2)で示される置換アリールオキシ基。
    Figure 2010106148
    式(2)中、Yは、フェニレン基、ビフェニレン基およびナフチレン基からなる群から選ばれた基を示し、Qは、ハメットの置換基定数σpが−0.2以下でありかつ活性プロトンを持たない電子供与性基を示す。)
  3. 前記環状ホスファゼン化合物は、下記の式(3)で表される環状ホスホニトリルジハライドの全ハロゲン原子を、少なくとも一つが下記のA2基により置換されるよう下記のA1基およびA2基からなる群から選ばれた基により置換することで得られるものである、請求項2に記載の難燃性樹脂組成物。
    Figure 2010106148
    (式(3)中、nは3〜8の整数を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
    A1基:炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリールオキシ基。
    A2基::下記の式(2)で示される置換アリールオキシ基。
    Figure 2010106148
    (式(2)中、Yは、フェニレン基、ビフェニレン基およびナフチレン基からなる群から選ばれた基を示し、Qは、ハメットの置換基定数σpが−2.0以下でありかつ活性プロトンを持たない電子供与性基を示す。)
  4. 前記環状ホスファゼン化合物は式(1)のnが3若しくは4である、請求項2または3に記載の難燃性樹脂組成物。
  5. 前記環状ホスファゼン化合物は、式(1)のAとして下記のA1基およびA2基を有するものである、請求項2から4のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
    A1基:フェノキシ基およびメチルフェノキシ基からなる群から選ばれた基。
    A2基:式(2)において、Yがフェニレン基若しくはナフチレン基であり、Qがアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、トリメチルシリルオキシ基およびt−ブチル基からなる群から選ばれた電子供与性基である基。
  6. A2基が3−メトキシフェノキシ基、3−エトキシフェノキシ基、3−(n−プロポキシ)フェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−エトキシフェノキシ基、4−(n−プロポキシ)フェノキシ基、4−アリルオキシフェノキシ基、4−(ジメチルアミノ)フェノキシ基、3−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基、4−(トリメチルシリルオキシ)フェノキシ基、3−(t−ブチル)フェノキシ基および4−(t−ブチル)フェノキシ基からなる群から選ばれた基である、請求項5に記載の難燃性樹脂組成物。
  7. 前記環状ホスファゼン化合物は、式(1)のAの全てが3−メトキシフェノキシ基、3−エトキシフェノキシ基、3−(n−プロポキシ)フェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−エトキシフェノキシ基、4−(n−プロポキシ)フェノキシ基、4−アリルオキシフェノキシ基、4−(ジメチルアミノ)フェノキシ基、3−(t−ブチル)フェノキシ基および4−(t−ブチル)フェノキシ基からなる群から選ばれたものである、請求項2から4のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
  8. 前記樹脂成分が、マレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂および液晶ポリマーからなる群から選ばれたものである、請求項1から7のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
  9. 前記樹脂成分が、エポキシ樹脂およびポリイミド系樹脂からなる群より選ばれたものである、請求項1から7のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物からなる樹脂成形体。
  11. 請求項10に記載の樹脂成形体を用いた電気・電子部品。
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