JP2010099669A - 線材の圧延方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明にかかる熱間圧延ラインは、上流側から下流側に向けて順に、加熱炉1、粗圧延機2、中間圧延機3、仕上げ圧延機4、最終仕上げ圧延機5、レイングヘッド6が配設されている。仕上げ圧延機4と最終仕上げ圧延機5との間には線材を冷却する複数の水冷装置7が配備されている。この圧延ラインにおいては、線材のボトム部が仕上げ圧延機4を抜けた直後から、最終仕上げ圧延機5内の減面率が5%以上の最終仕上げスタンドのロール又はそのロールで圧延される線材に潤滑剤が供給される。
【選択図】図1
Description
ところで、線材圧延の終末時には、線材のボトム部(終端部)が仕上げ圧延機を抜け、最終仕上げ圧延機のみに噛み込んでいる状態が発生する(この状況を尻抜けと呼ぶこともある)。定常圧延時には、線材は仕上げ圧延機と最終仕上げ圧延機との両方に噛み込んでおり、前方張力及び後方張力が付加され、圧延後の線材の幅寸法が規定のものとなっている。しかし、尻抜け時には、無張力状態となり、線材の幅寸法が規定のものより大きくなる(幅広がり状態)。
この技術によれば、線材のトップ部が上流側のロールスタンドを通過し未だ下流側ロールスタンドに噛み込んでいない状態の線速V0、線材のトップ部が下流側ロールスタンドに噛み込んだ状態での線速V1、線材のボトム部が上流側のロールスタンドを抜け下流側のロールスタンドに噛み込んだ状態での線速V2を基に、例えば、尻抜け時は、ΔVb=V2/V0、ΔVc=V2/V1が所定範囲内になるよう、ロールスタンドの駆動モータを制御している。これにより、張力を計算等で求めることなく即時に張力制御を行って、コブル等を回避すると共に圧延材の寸法精度の確保を行なうことができる。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、線材の圧延方法において、複雑な制御装置を必要とせず簡便な手法であって、コブルの発生なく安定して線材全長にわたる高い寸法精度を実現する圧延方法を提供することを目的とする。
本発明にかかる線材の圧延方法は、 仕上げ圧延機の下流側に最終仕上げ圧延機が配置され、且つ前記仕上げ圧延機と前記最終仕上げ圧延機との間の線材には張力が付与されている線材圧延ラインでの圧延方法であって、前記線材のボトム部が前記仕上げ圧延機を抜けた直後から、前記最終仕上げ圧延機内のロール又は当該ロールで圧延される線材に潤滑剤を供給することを特徴とする。
この圧延方法によると、線材のボトム部が仕上げ圧延機を抜けて張力が解放されると、最終仕上げ圧延機内のロール又はロールに噛み込む線材に潤滑剤が供給される。ロール又は線材に潤滑剤を付与すると、ロールと線材との間の摩擦抵抗が低減され、上下のロール間に挟持される線材に対して作用していた強い拘束力が緩まる。潤滑剤の作用により拘束力が緩まると、幅方向へ変形するよりも、前後方向(長さ方向)へ変形することになり、幅寸法の増大(寸法精度の悪化)を抑制することができる。その結果、張力が解放されるボトム部における幅寸法の増大を抑制して、線材全長にわたる高い寸法精度を実現することができる。
潤滑剤付与の効果は減面率が大きくなるほど大きくなり、潤滑剤の種類によらず減面率が約5%以下では効果がなくなる。このため、潤滑剤付与の効果が顕著な減面率の領域でのみ潤滑剤付与を適用するので、コストが徒に上昇しない。
なお、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1に、本実施形態に係る圧延方法が行なわれる線材の熱間圧延ライン(以下、圧延ラインと記載する)の一例を概略で示す。この圧延ラインは、ビレットなどの鋼材を連続的に熱間圧延して線材(条鋼材)を製造する製造ラインである。
この圧延ラインは、例えば、最終線径が5.0mm〜20.0mmの線材を製造するものであって、圧延速度(線速)が15m/sec〜110m/secとなる範囲で線材を製造する。
このような場合において、ロール又は線材に潤滑剤を付与すると、ロールと線材との間の摩擦抵抗が低減される。これは、上下のロール間に挟持される線材に対して作用していた強い拘束力が緩まることを示す。上下のロール間に挟持される線材に対して作用していた拘束力が強いと、前後方向(長さ方向)よりも幅方向への変形量が大きい。ところが、潤滑剤の作用により、上下のロール間の線材に対して作用していた拘束力が緩まると、幅方向へ変形するよりも、前後方向(長さ方向)へ変形することになり、幅寸法の増大を抑制できる。
本発明者らは、上述した、摩擦係数と幅広がりとの関係(摩擦係数が小さくなるほど幅広がりは減少すること)に着目した。摩擦係数を低減させる具体的な方法としては、線材のボトム部が仕上げ圧延機4を抜けた直後から(抜けると同時にも含む)最終仕上げ圧延機5内のロール又はそのロールに噛み込んでいる線材に潤滑剤を供給することとした。
潤滑剤については様々な熱間圧延用の潤滑剤があり、潤滑剤によって摩擦係数が決定される。潤滑剤を使用することで幅広がりが抑制できるため、使用した潤滑剤の摩擦低減効果の分だけ、定常部の張力を増大できることになる。言い換えるならば、定常圧延時における線材の張力と尻抜け時の無張力状態との差を、潤滑剤による摩擦低減効果が補償し、幅広がりが低減されることとなる。この圧延方法は、仕上げ圧延機4と最終仕上げ圧延機5との間で線材に張力が付与される圧延であれば、どのような圧延方法にも適用可能である。
本発明者らは、幅広がり(後述する幅広がり率で規定)と減面率とに及ぼす潤滑剤付与の影響を調査するため、剛塑性有限要素法で変形解析を行なった。潤滑剤付与の影響については、摩擦係数を変化させることで対応させ、減面率と幅広がり率との関係はロール隙を変化させることで対応させた。解析に使用した条件を表1に、減面率と幅広がり率との関係を図2にそれぞれ示す。実験条件としては、最終仕上げ圧延機5への線材の入側径=φ7.0mm、最終仕上げ圧延機5のロールカリバー形状:オーバル形状、摩擦係数は0.5(無潤滑〉、0.35(潤滑1)、0.25(潤滑2)の3種類を採用した。
また、線材の圧延における減面率が5%以下の圧延は、最終仕上げ圧延機5(サイジングミル)で行なわれるが、サイジングミルは圧延されている線材を保持するガイドを使用しないのが一般的であり、このことから、圧延安定性が要求される。一方、潤滑剤を適用すると線材の回転に対する拘束力も小さくなるため、潤滑剤を付与することで逆に寸法精度を低下させることが容易に推測される。この観点からも、減面率5%以上の条件で潤滑剤付与を適用することが好ましい。
図1に示した圧延ラインのレイアウトにおいて、仕上げ圧延機4と最終仕上げ圧延機5と間に故意に張力を発生させ(線速比の3%に設定)、潤滑剤適用有無及び適用スタンドを変更したときの最終製品の幅寸法を比較した。
今回の実施例(実験)では、潤滑剤の供給タイミングを「仕上げ圧延機4の入側でのボトム抜け時刻+仕上げ圧延機4を抜けるまでの時間α」とした。なお、潤滑供給タイミングについては、例えば、仕上げ圧延機4のモータ電流値が0となった瞬間としても良い。
表2に実験条件、図3に潤滑使用有無でのミドル部途中からボトム部までの幅寸法計測結果をそれぞれ示す。
ミドル部の製品幅寸法とボトム部の製品幅寸法とを、比較例1(条件1)と本発明(条件2)との条件で比較すると、図3に示すように、潤滑剤を付与しない場合、ボトム寸法が大幅に増加し、寸法公差±0.20mm以内となっている。これに対して、潤滑剤を付与することにより、同様の圧延条件で、全長にわたって良好な寸法精度(寸法公差±0.05mm)が確保できていることがわかる。
上記のサイズで、本発明と同様の寸法精度を得るためには、線速比R=1.0%程度に設定する必要があり、しばしばコブルが発生することもあったが、本実施形態に係る圧延方法を用いることで線速比を、安定して圧延できるR=3.0%まで上昇できることが同時に確認できた。
2 粗圧延機
3 中間圧延機
4 仕上げ圧延機
5 最終仕上げ圧延機
6 レイングヘッド
7 水冷装置
Claims (2)
- 仕上げ圧延機の下流側に最終仕上げ圧延機が配置され、且つ前記仕上げ圧延機と前記最終仕上げ圧延機との間の線材には張力が付与されている線材圧延ラインでの圧延方法であって、
前記線材のボトム部が前記仕上げ圧延機を抜けた直後から、前記最終仕上げ圧延機内のロール又は当該ロールで圧延される線材に潤滑剤を供給することを特徴とする線材の圧延方法。 - 前記最終仕上げ圧延機は複数の圧延スタンドを備え、減面率が5%以上である圧延スタンドのロール又は当該ロールで圧延される線材に潤滑剤を供給することを特徴とする請求項1に記載の線材の圧延方法。
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