JP2010095758A - ろう付造管用自動車熱交換器用ブレージングシート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】組織が繊維状であるアルミニウム合金からなる芯材と、芯材の一方の面側に配置され、組織が繊維状であるアルミニウム合金からなる犠牲材と、芯材の他方の面側に配置され、Al−Si系合金又はAl−Si−Zn系合金からなるろう材と、からなりろう付造管される自動車熱交換器用ブレージングシート。質量%で、芯材がMn:1.0〜2.0%、Si:0.5〜1.0%、Cu:0.3〜1.0%、Fe:0.1〜0.5%、残部がAl及び不可避不純物からなり、犠牲材が、Zn:2.5〜6.0%、Si:0.3〜1.0%、Mn:0.5〜1.5%、残部がAl及び不可避不純物からなることが好ましい。
【選択図】図1
Description
チューブは、このブレージングシートを管状に形成し、突合せ部を高周波加熱により電縫溶接して作製される。このチューブは、最も一般的には、芯材がJIS 3003合金、犠牲材がJIS 7072合金、ろう材がAl−Si系合金又はAl−Si−Zn系合金からなる。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、肉厚の薄いろう付型チューブを作製する際の割れ、表面肌の劣化を防止することのできる成形性に優れたブレージングシートを提供することを目的とする。
そこで本発明者等は、成形性に優れるブレージングシートを得ることを目的に鋭意検討を重ねた結果、芯材を繊維組織にすることに加えて、犠牲材をも繊維組織にすることによって、芯材と犠牲材の変形能をともに高めるとともに、芯材と犠牲材との変形能を均等にすることにより、成形性を著しく向上できることを見出した。
以上の検討に基づいてなされた本発明のブレージングシートは、組織が繊維状であるアルミニウム合金からなる芯材と、芯材の一方の面側に配置され、組織が繊維状であるアルミニウム合金からなる犠牲材と、芯材の他方の面側に配置され、Al−Si系合金又はAl−Si−Zn系合金からなるろう材と、からなりろう付造管されることを特徴とする。
そして、芯材がさらに、Mg:0.05〜0.5%を含有することが好ましく、Ti:0.05〜0.3%、Cr:0.05〜0.3%、及びZr:0.05〜0.3%の内の1種又は2種以上を含有することがさらに好ましい。また、犠牲材がさらに、Ni:0.1〜1.0%、及びFe:0.3〜1.0%の1種又は2種を含有することが好ましく、Ti:0.05〜0.3%、Cr:0.05〜0.3%、及びZr:0.05〜0.3%の内の1種又は2種以上を含有することがさらに好ましい。
なお、本発明におけるブレージングシートとは、JIS Z 3001に定義されるように、母材(芯材)の片面又は両面に、圧延加工などによってろう材をクラッドして作った板を意味する。
本発明のブレージングシートは、アルミニウム合金からなる芯材と、芯材の一方の面側に配置されるアルミニウム合金からなる犠牲材と、芯材の他方の面側に配置されるろう材と、からなるが、芯材及び犠牲材の両者が繊維状の組織を有していることが特徴である。そこで、芯材及び犠牲材の組織について説明し、ついで、本発明の好ましい組成、ブレージングシートの好ましい製造方法の順に説明する。
本発明に係るブレージングシートの芯材は、マトリックスの結晶組織(以下、単に組織という)が繊維状であることにより、チューブ成形時の曲げ加工性が良好となる。芯材の組織が、再結晶組織の場合、又は再結晶組織と繊維状組織との混合組織の場合には、成形時に芯材内の変形が不均一となり成形性が低下する。
芯材の組織は、芯材を構成するアルミニウム合金(芯材合金)の成分、均質化処理の条件、中間焼鈍の条件等の製造条件によって大きく変わるため、組織を繊維状とする条件を一概に特定することはできないが、特に最終圧延前の中間焼鈍の加熱温度が最も重要である。
上述したように、芯材の組織を繊維状とすることにより、チューブの成形性が良好となる。しかし、ろう付型チューブの場合には、B型形状にするための曲げ加工の条件が厳しいため、芯材の組織を繊維状としただけでは足りない。そこで、本発明では、犠牲材の組織を繊維状とすることにより、チューブ全体としての成形性を向上する。犠牲材の組織が、再結晶組織の場合、又は再結晶組織と繊維組織との混合組織の場合には、犠牲材と芯材との変形能が異なることによって、犠牲材中の金属間化合物の周囲に不均一な変形が生じ、金属間化合物を基点として加工時に割れが生じ、あるいは表面肌が劣化するなどの不具合が生じる。
犠牲材の組織は、犠牲材を構成するアルミニウム合金の成分、鋳造条件、均質化処理条件、中間焼鈍条件等の製造条件によって大きく変わるため、組織を繊維状とする条件を一概に特定することはできないが、特に均質化処理の条件が最も重要であり、均質化処理を行わないか、均質化処理を行なう場合には低温が好ましい。
<芯材>
Mn:1.0〜2.0%
Mnはマトリックス中にAl−Mn−Si系、Al−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物を微細に形成し、材料の強度を高める効果がある。しかし、その含有量が下限未満ではその効果が十分発揮されず、上限を超えると鋳造時に巨大な金属間化合物を生成するため材料の成形性が低下してしまう。
好ましいMnの含有量は1.2〜1.8%であり、より好ましいMnの含有量は1.4〜1.6%である。
Siはマトリックス中にAl−Mn−Si系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物を微細に形成し、材料の強度を高める効果がある。さらにマトリックス中に固溶したSiは材料の局部変形に対する抵抗を高め、成形性を向上させる効果がある。しかし、その含有量が下限未満ではその効果が十分発揮されず、上限を超えると材料の融点が低下してしまう。
好ましいSiの含有量は0.6〜0.9%であり、より好ましいSiの含有量は0.6〜0.8%である。
Cuはマトリックス中に固溶し、材料の強度を高める効果や、材料の局部変形に対する抵抗を高め、成形性を向上させる効果、さらに芯材に添加した場合、芯材の電位を貴として犠牲材との電位差を大きくして耐食性を向上させる効果がある。しかし、その含有量が下限未満ではその効果が十分発揮されず、上限を超えると材料の融点が低下してしまう。
好ましいCuの含有量は0.4〜0.8%であり、より好ましいCuの含有量は0.5〜0.7%である。
Feはマトリックス中にAl−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物を微細に形成し、材料の強度を高める効果がある。しかし、その含有量が下限未満ではその効果が十分発揮されず、上限を超えると鋳造時の巨大な金属間化合物を生成し、材料の成形性が低下してしまう。
好ましいFeの含有量は0.1〜0.4%であり、より好ましいFeの含有量は0.2〜0.4%である。
Mg:0.05〜0.5%
Mgはマトリックス中にMg2Si金属間化合物を微細に形成し、材料の強度を高める効果がある。しかしその含有量が下限未満ではその効果が十分発揮されず、上限を超えるとろう付性が低下してしまう。
好ましいMgの含有量は0.1〜0.4%であり、より好ましいMgの含有量は0.15〜0.3%である。
Ti、Cr、Zrは、各々Al3Ti、Al3Cr、またはAl3Zrを形成し、材料の強度を向上させる効果がある。その含有量が下限未満ではその効果が少なく、上限を超えると鋳造時に巨大化合物を形成し、成形性が低下してしまう。
好ましいTi、Cr、Zr(各々)の含有量は0.05〜0.25%であり、より好ましいTi、Cr、Zr(各々)の含有量は0.05〜0.2%である。
Zn:2.5〜6.0%
Znを添加すると犠牲材の電位が卑となり、芯材との電位差が大きくなり、ブレージングシートの耐食性を向上する効果がある。しかし、その含有量が下限未満ではその効果が十分発揮されず、上限を超えると材料の自己耐食性が低下してしまう。
好ましいZnの含有量は3.0〜5.5%であり、より好ましいZnの含有量は3.5〜5.0%である。
Siを添加すると犠牲材のマトリックス中にAl−Mn−Si系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物が微細に形成されて、犠牲材の再結晶を遅延させる。その結果、繊維状の組織が得られやすくなる。また、マトリックス中に固溶したSiは犠牲材の局部変形に対する抵抗を高め、成形性を向上させる効果がある。さらに、Siは犠牲材の強度を高める効果がある。しかし、その含有量が下限未満では以上の効果が十分発揮されず、上限を超えると材料の融点が低下してしまう。
好ましいSiの含有量は0.35〜0.8%であり、より好ましいSiの含有量は0.4〜0.6%である。
Mnを添加すると犠牲材のマトリックス中にAl−Mn−Si系、Al−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物が微細に形成されて、犠牲材の再結晶を遅延させる。その結果、繊維状の組織が得られやすくなる。また、マトリックス中に固溶したMnは材料の局部変形に対する抵抗を高め、成形性を向上させる効果がある。さらに、Mnは犠牲材の強度を高める効果がある。しかし、その含有量が下限未満ではその効果が十分発揮されず、上限を超えると鋳造時に巨大な金属間化合物を生成するため材料の成形性が低下してしまう。
好ましいMnの含有量は0.7〜1.4%であり、より好ましいMnの含有量は0.8〜1.3%である。
Ni:0.1〜1.0%
Niはマトリックス中にAl−Ni系金属間化合物を形成し、これが腐食環境において孔食の起点となるため、深さ方向への孔食成長を抑制する効果がある。しかし、その含有量が下限未満ではその効果が十分発揮されず、上限を超えると材料の成形性が低下するとともに自己耐食性が低下してしまう。
好ましいNiの含有量は0.2〜0.8%であり、より好ましいNiの含有量は0.3〜0.7%である。
Feはマトリックス中にAl−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物を微細に形成し、材料の強度を高める効果や、同化合物が腐食の起点となるため、犠牲材に添加された場合には深さ方向への孔食成長を抑制し、耐食性を向上させる効果がある。しかし、その含有量が下限未満ではその効果が十分発揮されず、上限を超えると鋳造時の巨大な金属間化合物を生成し、材料の成形性が低下してしまう。
好ましいFeの含有量は0.35〜0.8%であり、より好ましいFeの含有量は0.4〜0.7%である。
Ti、Cr、ZrはAl3Ti、Al3Cr、またはAl3Zrを形成し、材料の強度を向上させる効果がある。その含有量が下限未満ではその効果が少なく、上限を超えると鋳造時に巨大化合物を形成し、成形性が低下してしまう。
好ましいTi、Cr、Zr(各々)の含有量は0.05〜0.25%であり、より好ましいTi、Cr、Zr(各々)の含有量は0.05〜0.2%である。
本発明のブレージングシートに使用するろう材は、Al−Si系(JIS 4045合金,4343合金)又はAl−Si−Zn系のアルミニウム合金からなるろう材であればよく、特に限定されるものではない。
ろう材中に含まれるSiは融点を下げると共に流動性を付与する成分であり、その含有量が5%未満では所望の効果が不十分であり、一方、15%を越えて含有するとかえって流動性が低下するので好ましくない。したがって、ろう材中の好ましいSiの含有量は5〜15%が好ましい。ろう材中のSi含有量のより好ましい範囲は7〜12%である。
また、Al−Si−Zn系のろう材は前記Al−Si系ろう材にZnを1.0〜5.0%含有させたものが好ましい。
また、さらにMg、Cu、Li等を含有するAl−Si系合金、Al−Si−Zn系合金を本発明のろう材として用いることもできる。
図1を参照しながら本発明の自動車熱交換器用ブレージングシートの製造方法概略を説明する。
芯材、犠牲材及びろう材を構成するアルミニウム合金を例えば半連続鋳造法により鋳塊を製造する。
得られた芯材鋳塊及びろう材鋳塊は均質化処理が施される。芯材鋳塊の均質化処理は、380〜580℃で1〜12時間の範囲で適宜選択され、ろう材鋳塊の均質化処理は、400〜550℃で2〜10時間の範囲で適宜選択されるのが好ましい。一方、犠牲材鋳塊は、均質化処理を行わないのが好ましく、行う場合には350〜450℃、さらには370〜430℃で1〜15時間の条件で行なうことが好ましい。そうすることにより犠牲材の組織を繊維状とすることができる。
その後、所定厚さとされた芯材鋳塊、犠牲材鋳塊及びろう材鋳塊は、芯材鋳塊の一方の面側に犠牲材鋳塊を、さらに他方の面側にろう材鋳塊を組み合わせて熱間圧延し、クラッド材(ブレージングシート前駆体)とする。
第1中間焼鈍は250〜400℃で1〜10時間保持する条件で、第2中間焼鈍は150〜230℃で1〜10時間保持する条件で行えばよい。
このようにして得られた本発明のブレージングシートは、例えば特許文献1に開示された方法で、犠牲材が内周側に配置されるようにチューブ材をB型形状に折り曲げて、突き合される両縁をろう付により接合されたチューブに形成される。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートをチューブ等とし、自動車用のラジエータやヒーターコアなどのアルミニウム合金製熱交換器の組み立てに使用する場合には、アルミニウム合金のフィン材を組み合わせ、ろう付炉中においてフラックスを用いる不活性雰囲気ろう付けあるいは真空ろう付を行う。
No.1:犠牲材均質化処理;500℃×6時間、第2中間焼鈍;350℃×3時間
No.2:犠牲材均質化処理;500℃×6時間、第2中間焼鈍;220℃×5時間
No.3:犠牲材均質化処理;なし、 第2中間焼鈍;300℃×5時間
得られたブレージングシートについて、板厚方向と垂直な断面を研磨してミクロ組織を顕微鏡で観察することにより芯材、犠牲材の組織を調査(倍率:100,視野数:20)した。
その結果を表4〜表6に示す。なお、表4〜表6の「芯材組織」、「犠牲材組織」の欄において、「R」は再結晶組織を、また、「F」は繊維状の組織を示している。
得られたブレージングシートを用いて成形性の評価を行った。評価は、犠牲材を内側にしてB型形状に造管した後、目視により芯材、犠牲材に割れが生じたかを観察した。その測定結果を表4〜6に示す。なお、表4〜表6において、×は芯材及び犠牲材の両者に割れが発生し、△は芯材又は犠牲材にしわが発生し、○は芯材及び犠牲材の両者に割れが発生しなかったことを意味する。
また、これらブレージングシートを用いてそれぞれの試験片を作製し、これら試験片を窒素ガス雰囲気中で600℃に5分間保持した後、冷却速度:100℃/min.で室温まで冷却するろう付け相当の熱処理を行い、その後、下記の条件の腐食試験1〜2を行った。なお、腐食試験1は酸性環境下での耐食性を評価するものであり、腐食試験2はアルカリ環境下での耐食性を評価するものである。
試験片のろう材側を接着剤にて被覆して得られた試験材を用意し、さらにCl−:195ppm,SO4 2−:60ppm,Fe3+:30ppm,Cu2+:1ppmを含む水溶液(pH:3.0)を腐食液として用意し、この腐食液を自動車用熱交換器の冷却水と想定して、試験材を温度:80℃の腐食液に8時間浸漬保持した後、室温で16時間浸漬保持すると云う温度サイクルを加える操作を14日間行い、14日間経過後の犠牲陽極皮材層の表面からの最大孔食深さを測定した。その測定結果を表4〜6に示す。
試験片のろう材側を接着剤にて被覆して得られた試験材を用意し、Cl-:195ppm,SO4 2−:60ppm,Fe3+:30ppm,Cu2+:60ppmを含む水溶液をNaOHでpH11に調整した水溶液を腐食液として用意し、前記腐食液を自動車用熱交換器の冷却水を想定して、試験材を温度:80℃の腐食液の中に8時間浸漬保持した後、室温の静止腐食液の中に16時間に浸漬保持すると云う温度サイクルを加える操作を14日間行い、14日間経過後の犠牲陽極皮材層の表面からの最大腐食深さを測定した。その測定結果を表4〜6に示す。
得られたブレージングシートを用いて機械的強度の評価を行った。評価は、前記ろう付相当熱処理を行った後、圧延方向と平行にJIS13号B試験片を切り出し、引張試験により行なった。その測定結果を表4〜6に示す。
Claims (6)
- 組織が繊維状であるアルミニウム合金からなる芯材と、
前記芯材の一方の面側に配置され、組織が繊維状のアルミニウム合金からなる犠牲材と、
前記芯材の他方の面側に配置され、Al−Si系合金又はAl−Si−Zn系合金からなるろう材と、からなりろう付造管されることを特徴とするろう付造管用自動車熱交換器用ブレージングシート。 - 前記芯材が、質量%で、
Mn:1.0〜2.0%、
Si:0.5〜1.0%、
Cu:0.3〜1.0%、
Fe:0.1〜0.5%、
残部がAl及び不可避不純物からなり、
前記犠牲材が、質量%で、
Zn:2.5〜6.0%、
Si:0.3〜1.0%、
Mn:0.5〜1.5%、
残部がAl及び不可避不純物からなる請求項1に記載のろう付造管用自動車熱交換器用ブレージングシート。 - 前記芯材がさらに、質量%で、
Mg:0.05〜0.5%を含有する請求項2に記載のろう付造管用自動車熱交換器用ブレージングシート。 - 前記芯材がさらに、質量%で、
Ti:0.05〜0.3%、
Cr:0.05〜0.3%、及び
Zr:0.05〜0.3%の内の1種又は2種以上を含有する請求項2又は3に記載のろう付造管用自動車熱交換器用ブレージングシート。 - 前記犠牲材がさらに、質量%で、
Ni:0.1〜1.0%、及び
Fe:0.3〜1.0%の内の1種又は2種を含有する請求項2〜請求項4のいずれかに記載のろう付造管用自動車熱交換器用ブレージングシート。 - 前記犠牲材がさらに、質量%で、
Ti:0.05〜0.3%、
Cr:0.05〜0.3%、及び
Zr:0.05〜0.3%の内の1種又は2種以上を含有する請求項2〜5のいずれかに記載のろう付造管用自動車熱交換器用ブレージングシート。
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