JP7053140B2 - 熱交換器用アルミニウム合金クラッド材およびその製造方法ならびに熱交換器用アルミニウム合金チューブの製造方法 - Google Patents
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一方で、近年、自動車熱交換器の軽量化が進む中で、チューブ材も、より薄肉・高強度のクラッド材が開発されている(例えば特許文献1、2参照)。
このような電縫溶接管では、材料の薄肉化が望まれている。しかし、チューブ材薄肉化の問題点として、電縫溶接による造管性が低下する点が挙げられる。一般的にパイプの成形において、t/D(t:材料の板厚、D:パイプの直径)が1%以下の値を示すとパイプの製造が不可能になるといわれている。そのため、パイプ直径(チューブ幅)にもよるが、造管可能な材料の板厚は0.2mm以上であるといわれている。
一方で、内部冷却水の洩れに対する信頼性や現状の造管設備の有効活用の点などから、薄肉なクラッド材でも電縫溶接管を要望するニーズは非常に高く、クラッド材の材料面で電縫溶接性を改善することが求められている。
上記のようにクラッド材における造管、扁平加工などに際し、犠牲材が芯材から剥離することが造管性を低下させる原因の一つになっており、貼り合わせ性を高めたクラッド材の提供が望まれている。
しかし、薄肉なクラッド材では、電縫溶接がされた丸管から扁平管に加工する際などに突合せ部で軽度の座屈が生じやすく、本発明者はその際にMg添加の犠牲材が芯材から剥がれやすいことが分かった。
前記芯材は、質量%で、Mn:1.0~2.0%、Si:0.5~1.2%、Fe:0.1~0.5%、Cu:0.5~1.2%、Mg:0.03%未満を含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、
前記犠牲材は、質量%で、Fe:0.1~0.5%、Zn:0.2~6.0%、Mg:0.03%未満を含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、
前記ろう材は、質量%で、Si:3.0~12%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、
室温から600℃まで平均昇温速度100℃/分で昇温し、600℃で3分保持後、100℃/分の降温速度で降温冷却するろう付熱処理後のクラッド材の引張強さが170MPa以上であり、
前記芯材と前記犠牲材との接合部の最大せん断荷重が12MPa以上であり、
JIS H0500:1998に準じた90度繰り返し曲げ試験を前記犠牲材側が圧縮方向となる方向で前記熱交換器用アルミニウム合金クラッド材に6回施した後の断面観察において、クラッド界面の剥離が認められないことを特徴とする。
部材の薄肉化に伴い、高強度材が求められている。フィン材のろう付後強度が低いと車載搭載時に熱交換器に負荷される繰り返しの振動や冷却水の膨張、圧縮により破断が生じやすくなる。このためろう付熱処理後のクラッド材の引張強さを170MPa以上とする。
なお、ろう付け処理条件としては600℃3分を示すことができる。ただし、本願発明としてはろう付け処理条件がこれに限定されるものではない。
Mn:1.0~2.0%
Mnは、マトリックス中にAl-Mn-Si系、Al-Mn-Fe系、Al-Mn-Fe-Si系金属間化合物を微細に形成し、芯材の材料強度を向上させる。しかし、その含有量が下限未満では含有量が少なくその効果が十分得られない。一方、上限を超えると、鋳造性および圧延性が低下し、製造性が悪化する。このため、Mnの含有量は1.0~2.0%とする。同様の理由により、下限を1.5%、上限を1.8%とするのが望ましい。
Siは、マトリックス中にAl-Mn-Si系、Al-Mn-Fe-Si系金属間化合物を微細に形成し、材料強度を向上させる。しかし、その含有量が下限未満では含有量が少なくその効果が十分得られない。一方、上限を超えると材料の融点が低下し、ろう付性が低下する。このため、Siの含有量は0.5~1.2%とする。同様の理由により、下限を0.8%、上限を1.1%とするのが望ましい。
Feは、マトリックス中にAl-Mn-Fe系、Al-Mn-Fe-Si系金属間化合物を微細に形成し、芯材の材料強度を高める。しかし、その含有量が下限未満で含有量が少なくその効果が十分発揮されない。一方、上限を超えると、鋳造性および圧延性が低下し、製造性が悪化する。さらに耐食性も低下してしまう。このため、Feの含有量は0.1~0.5%とする。同様の理由により、下限を0.1%、上限を0.3%とするのが望ましい。
Cuは、マトリックス中に固溶し、材料強度を向上させる。しかし、その含有量が下限未満では含有量が少なくその効果が十分発揮されない。一方、上限を超えると、鋳造時性が低下し、製造性が悪化する。また材料の融点が低下し、ろう付性が低下する。このため、Cuの含有量は0.5~1.2%とする。同様の理由により、下限を0.8%、上限を1.1%とするのが望ましい。
Mgは、材料表面に強固な酸化被膜を形成するため、貼り合わせ強度を低下させる。0.03%以上になると犠牲材との熱間貼り合わせ性が大幅に低下する。このため、Mgの含有量は0.03%未満に制限する。同様の理由により、0.02%未満とするのが望ましい。
Zr、Tiは、固溶強化や金属間化合物の分散硬化により材料強度を向上させる効果があり、所望により1種または2種を含有させる。しかし、その含有量が下限未満では含有量が少なくその効果が十分発揮されない。一方、上限を超えると、鋳造性および圧延性が低下し、製造性が悪化する。このため、Zr、Tiの含有量は、それぞれ0.01~0.20%とする。同様の理由により、それぞれ、下限は0.05%、上限は0.12%である。
Fe:0.1~0.5%
Feは、マトリックス中にAl-Mn-Fe系、Al-Mn-Fe-Si系金属間化合物を微細に形成し、犠牲材の強度を向上させる。しかし、その含有量が下限未満では含有量が少なくその効果が十分発揮されない。一方、上限を超えると、鋳造性および圧延性が低下し、製造性を圧下させ、さらに、耐食性が低下する。このため、Fe含有量を0.1~0.5%とする。同様の理由により、上限を0.3%とするのが望ましい。
Znは、電位を卑にし、その結果、芯材の耐食性を向上させる。しかし、その含有量が下限未満では含有量が少なくその効果が十分発揮されない。一方、上限を超えると腐食速度が増加しすぎて却って耐食性が低下する。このため、Znの含有量は0.2~6.0%とする。同様の理由で、下限を3.0%、上限を5.0%とするのが望ましい。
Mgは、材料表面に強固な酸化被膜を形成するため、貼り合わせ性を低下させる。Mg含有量が0.03%以上になると芯材との熱間貼り合わせ性が大幅に低下する。このため、Mgの含有量は0.03%未満に制限する。同様の理由により、0.02%未満が望ましい。
Mn、Siは、犠牲材の強度を向上させる作用があり、所望により含有させる。しかし、その含有量がそれぞれ下限未満であると、含有量が少なく所望の効果が得られない。一方、上限を超えるとMnでは鋳造性、圧延性が低下し、製造性が圧下する。Siでは上限を超えると融点が低下し、ろう付性が低下する。このため、Mn、Siの含有量を上記に定める。同様の理由により、Mnでは下限を1.5%、上限を1.8%とするのが望ましく、Siでは、下限を0.8%、上限を1.1%とするのが望ましい。
Si:3.0~12.0%
ろう材中のSiは、融点を下げてろう付性を向上させる。しかし、その含有量が下限未満では所望の効果が十分発揮されずに、ろう付不良となる。一方、上限を超えると耐エロージョン性が低下する。このため、Siの含有量は3.0~12.0%とする。同様の理由により、下限は6.0%、上限は9.0%が望ましい。
Znは、ろう付け後に芯材の耐食性を向上させるので所望により含有させる。しかし、その含有量が下限未満では含有量が少なくその効果が十分発揮されない。一方、上限を超えると腐食速度が増加しすぎて却って耐食性が低下する。このため、Znの含有量は0.5~5%とする。同様の理由で、下限を1%、上限を2%とするのが望ましい。
クラッド材の熱間圧延に際し、1パスにおける圧下量を規定することで芯材と犠牲材の密着性を高めることができる。圧下量が小さすぎると熱間圧延時における芯材と犠牲材の表面酸化皮膜の破壊が不十分で密着性が低下する。一方、圧下量が大きすぎると一度接合された芯材と犠牲材の界面が次パスにてせん断応力により局部的に剥がれ密着性が低下する。このため、1パスにおける最適圧下量は25~60mm/パスであることを見出した。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
なお、この実施形態では、自動車用熱交換器用であるものとして説明しているが、本発明としては自動車用に限定されるものではない。
犠牲材1bには、質量%で、Fe:0.1~0.5%、Zn:0.2~6.0%、Mg:0.03%未満を含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、所望により、Mn:1.0~2.0%、Si:0.5~1.2%のうち、1種または2種を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金が用いられる。
ろう材1cには、質量%で、Si:3.0~12%を含有し、さらに所望によりZn:0.5~5.0%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなりアルミニウム合金からなる。
芯材用アルミニウム合金およびろう材用アルミニウム合金は、例えば400~580℃で3~10時間加熱する均質化処理を行なうことができ、ろう材は400~500℃×3~10時間の均質化処理を行なうことができる。
鋳塊は熱間圧延を経て合金板とされる。また連続鋳造圧延を経て合金板とするものであってもよい。
なお、熱間圧延に際しては、25~60mm/パスの圧下量で圧延を行うのが望ましい。 上記製造工程では、冷間圧延に際し中間焼鈍を介在させることができる。該中間焼鈍は、例えば200~400℃で1~6時間の加熱によって行なうことができる。中間焼鈍後の最終圧延では、10~50%の冷間圧延率で圧延を行なう。また、作製される材料は中間焼鈍を介さず、所望の板厚まで圧延を行なったものでもよい。
得られたクラッド材1は、その厚さが0.2mm以下であり、これにより、軽量化が達成される。
上記材料は、図3に示すように、熱交換器用としてフィン材11やヘッダーなどと組み付けて、ろう付け体としてろう付に供される。ろう付の条件は、本発明としては特に限定されるものではないが、例えば、高純度窒素ガス雰囲気中で目標温度になるまでに室温から1~15分となる昇温速度で、目標温度590℃~610で、1分~8分の保持し、冷却速度30~200℃/minなどの条件で行うことができる。ろう付けによって熱交換器20が得られる。
ろう付けされた扁平チューブ10は、ろう付後の引張強さが170MPa以上となる高い強度を有している。
この実施形態のろう付タイプチューブにおいても90°曲げ等の厳しい成形が加えられるが、犠牲材の剥がれが効果的に防止される。
本実施形態では、板厚0.2mm以下とした薄肉材において貼り合わ性が向上し、曲げ加工性も向上するものとして説明したが、本発明としてはクラッド材の板厚が特定のものに限定されるものではない。
半連続鋳造により芯材用アルミニウム合金、犠牲材用アルミニウム合金、及びろう材用合金を鋳造した。なお、芯材用アルミニウム合金、犠牲材用アルミニウム合金の組成は、表1(残部は、Al及び不可避不純物)に示す。ろう材用アルミニウム合金には、JIS A4343合金(Al-7.5%Si)を用いた。
溶製した芯材用アルミニウム合金に500℃で8時間の均質化処理を行った。また、溶製したろう材用アルミニウム合金には430℃で3時間の均質化処理を行った。これらの均質化処理の条件は一例であり、これに限定されない。犠牲材については均質化処理を行わなかったが、均質化処理を行うものとしてもよい。
冷間圧延では、中間焼鈍を400℃で4時間行い、所定の圧延率とした最終の冷間圧延により、厚さが0.20mm以下のH14調質(最終圧延率30%)のクラッド材(供試材)を作製した。クラッド材のクラッド率は、犠牲材:芯材:ろう材=20%:65%:15%とした。なお、最終圧延率は、中間焼鈍後の圧延率を示す。中間焼鈍を行わない場合は、冷間圧延全体の圧延率を示す。
なお、比較材No.2、8は鋳造が不良で供試材作成が困難であった。比較材No.4、6は、ろう付時に局部溶融が生じ、ろう付け後の評価を行うことができなかった。
伸銅品に関して規定されているJIS H0500:1998(繰り返し曲げ試験)に準じて試験を行った。供試材を0.20mm厚×3mm幅×70mm長さにし、R=2.5d(dは供試材厚み)の円弧を持つ片方の掴み部に固定し、他端をたまわないように引張りながら(引張力は150g)、円弧に沿って90度曲げ戻しを行う繰り返し曲げ試験を実施した。なお、曲げは犠牲材側が圧縮方向になる方向で実施した。
目視にて犠牲材の剥離が認められるまでの繰り返し回数を測定し、その結果を表2に記載した。繰り返し回数が6回超であったものは、繰り返し曲げ強度が良好で貼り合わせ性が良好であることを示している。
JIS G0601:2012に記載されているクラッドせん断試験に基づいて、芯材と犠牲材との接合界面にせん断荷重を負荷することにより、接合部のせん断強度を測定し、その結果を表1に記載した。最大せん断荷重が12MPa以上であったものは、接合強度が良好で、貼り合わせ性がより良好であることを示している。
供試材に、室温から600℃まで平均昇温速度100℃/分で昇温し、600℃で3分保持後、100℃/分の降温速度で降温冷却するろう付け相当加熱を施した。その後、圧延方向と平行にサンプルを切り出してJIS5号形状の試験片を作製し、引張試験を実施し、引張強さを測定した。引張速度は3mm/分とした。
引張強さが170MPa以上であったものは、ろう付後の引張強さが良好であるものとする。
なお、本発明のろう付け条件が上記に限定されるものではない。
供試材を造管した電縫溶接管を用いて、内部側に静圧を負荷し、チューブ破壊に至る耐圧強度を測定した。耐圧強度が55kg/mm2以上のものを良好として〇とし、55kg/mm2未満を不足として×として表2に示した。
1a 芯材
1b 犠牲材
1c 犠牲材
1d 突合せ部
10 チューブ
20 熱交換器
Claims (8)
- 芯材の一方の面に犠牲材がクラッドされ、前記芯材の他方の面にろう材がクラッドされた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材であって、
前記芯材は、質量%で、Mn:1.0~2.0%、Si:0.5~1.2%、Fe:0.1~0.5%、Cu:0.5~1.2%、Mg:0.03%未満を含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、
前記犠牲材は、質量%で、Fe:0.1~0.5%、Zn:0.2~6.0%、Mg:0.03%未満を含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、
前記ろう材は、質量%で、Si:3.0~12%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなり、
室温から600℃まで平均昇温速度100℃/分で昇温し、600℃で3分保持後、100℃/分の降温速度で降温冷却するろう付熱処理後のクラッド材の引張強さが170MPa以上であり、
前記芯材と前記犠牲材との接合部の最大せん断荷重が12MPa以上であり、
JIS H0500:1998に準じた90度繰り返し曲げ試験を前記犠牲材側が圧縮方向となる方向で前記熱交換器用アルミニウム合金クラッド材に6回施した後の断面観察において、クラッド界面の剥離が認められないことを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。 - 前記芯材が、さらに、質量%で、Zr:0.01~0.2%、Ti:0.01~0.2%のうち、1種または2種を含有することを特徴とする請求項1記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記ろう材が、さらに、質量%で、Zn:0.5~5.0%を含有することを特徴とする請求項1または2記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記犠牲材が、さらに、質量%で、Mn:1.0~2.0%、Si:0.5~0.8%のうち、1種または2種を含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 全体の厚さが0.2mm以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 熱交換器用のチューブに使用されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材を製造する方法であって、芯材と犠牲材とろう材をクラッドする際に、25~60mm/パスの圧下量で10~15パスの熱間圧延を行うことを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金クラッド材の製造方法。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材に、電縫溶接処理を行ってチューブ形状とし、さらに偏平薄型のチューブに成形することを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金チューブの製造方法。
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