JP5730655B2 - 熱交換器用プレートフィン材およびその製造方法ならびに該プレートフィン材を用いた熱交換器およびその製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、貫通孔11および図示しないカラー成形部が形成されたプレートフィン材10を用意し、複数のプレートフィン材10の貫通穴11に伝熱管12を挿入し固定している。プレートフィン材10は、伝熱管12への固定によってプレートフィンとして機能する。このタイプでは、伝熱管12とプレートフィン材10に未接着部分が発生すると、熱交換器として使用する際に熱交換性能(放熱性能)が大幅に低下してしまう。
前記単材または前記クラッド材の芯材が、質量%で、Mn:1.5超〜2.0%、Fe:0.15〜0.50%を含有し、かつ前記Mn、Fe含有量が3.5≦Mn/Fe≦10.0の条件を満たし、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成を有し、窒素ガス雰囲気中で600℃で3分間のろう付け処理を行った場合、該ろう付け熱処理後において、接合部位以外の部位が断面組織において面積率で50%以上の亜結晶組織を有し、前記接合部位が断面組織において亜結晶組織の面積率が50%未満であることを特徴とする。
Mn:1.5%超え〜2.0%
Mnは、Fe等とAl−Mn−Fe系の金属間化合物を生成することでろう付後のプレートフィンの強度を向上させる効果を有している。その含有量が1.5%以下では、その効果が十分発揮されず、2.0%を超えると、Al−Mn系の巨大晶が生成してアルミニウム合金板の製造性が大幅に低下する。そのためMn含有量は1.5超え〜2.0%に定める。なお、同様の理由により、下限は1.6%、上限は1.8%とするのが望ましい。
Feは、Mn等とAl−Mn−Fe系の金属間化合物を生成することでろう付後のプレートフィンの強度を向上させる効果を有している。その含有量が0.15%未満では、フィンのろう付後のプレートフィンの強度が低下し、0.50%超えると、Al−Fe系の粗大な金属間化合物が生成し、フィン成形時の金型摩耗性が大幅に低下する。そのためFe含有量を0.15〜0.50%とする。なお、同様の理由により、下限は0.20%、上限は0.40%とするのが望ましい。
Mn含有量とFe含有量は3.5≦Mn/Fe≦10.0の条件を満たすことが必要である。Mn/Feが3.5未満であると、Al−Fe系の粗大な金属間化合物の割合が増加し、所望のろう付後強度が得られない。一方、Mn/Feが10.0を超えると、Al−Mn系の粗大な金属間化合物の割合が増加し、所望のろう付後強度が得られない。したがって、Mn/Fe比を上記範囲に限定する。なお、同様の理由で、上記比を5.0以上、8.0以下とするのが好ましい。
Si:0.05〜1.2%、Cu:0.05〜0.50%、Zr:0.05〜0.20%、Ti:0.05〜0.20%の1種または2種以上
Si、Cu、Zr、Tiは、ろう付後のプレートフィンの強度を向上させるので、所望により1種以上を含有させる。
Si、Cu、Zr、Tiの各元素の含有量が0.05%未満であると、ろう付後のプレートフィンの強度を向上させる効果が十分に得られない。一方、Siが1.2%、Cuが0.50%を超えるとプレートフィン材の自己耐食性が低下するとともに融点が低下してろう付時にプレートフィン材が溶融しやすくなる。また、Zrが0.20%、Tiが0.20%を超えると、巨大晶が生成しやすく、アルミニウム合金板の製造性が大幅に低下する。これらの理由により、Si、Cu、Zr、Tiの各含有量を上記に定める。
Znの添加はプレートフィンの電位を卑とする効果を有するので所望により含有させる。Znの含有量が0.05%未満であると、電位への寄与が小さく、伝熱管に対する所望の犠牲陽極効果が得られない。一方、Znの含有量が5.0%を超えるとプレートフィンの自己耐食性が低下する。これらの理由によりZnの含有量を上記範囲に定める。
プレートフィン材の板厚が0.05mm未満であると、プレートフィン材の成形性が低下するとともにろう付時にプレートフィンが溶融しやすくなる。一方、0.15mmを超える板厚であると熱交換器の質量が増加するとともに熱交換性能が低下する。このため、プレートフィン材の板厚を0.05〜0.15mmとする。なお、同様の理由で、下限は0.07mm、上限は0.13mmとするのが望ましい。
なお、上記板厚は、プレートフィン材がクラッド材である場合は、全厚になる。
接合部位以外の部位:断面組織において面積率50%以上の亜結晶組織
接合部位 :断面組織において亜結晶組織の面積率が50%未満
亜結晶組織は各々の結晶粒径(亜結晶粒)が数μm以下と微細なため、ろう付時に結晶粒界を経路としたろう侵食(エロージョン)が起こりやすい一方で、これら微細な亜結晶粒は材料の変形を抑制するため、ろう付後の強度が向上する。一方で再結晶組織は結晶粒が粗大なため、亜結晶組織に比べて、ろう付性(耐エロージョン性)に優れる一方で、ろう付後の強度に劣る。
そこで、プレートフィン材のろう付後の断面組織において、接合部位以外の部位で面積率で50%以上の亜結晶組織を有することでろう付後の高強度を得る。なお、同様の理由で接合部位以外の部位で70%の亜結晶組織を有するのが望ましい。また、伝熱管との接合部位において断面組織において亜結晶組織の面積率を50%未満とすることでろう付性(耐エロージョン性)を確保する。なお、同様の理由で接合部位で亜結晶組織の面積率を30%以下とするのが望ましい。
なお、プレートフィン材がクラッド材である場合、上記組織率は、芯材のものを示している。
なお、ろう付処理により完全に再結晶しない組織を亜結晶組織と定義した。
本発明の熱交換器用プレートフィン材のろう付けに際し、置きろうを用いても良く、また、前記プレートフィン材を芯材としてろう材を片面または両面にクラッドしたものとしても良い。以下に、ろう材の好適な成分を説明する。以下の成分はいずれも質量%で示されている。
ろう材のSi量は、ろう付性に影響を及ぼし、Si量が5.0%未満では、ろう付時に溶融するろうの量が少なく、伝熱管との接合が不十分となり、Si量が12.5%を超えると、プレートフィン材へのエロージョン(ろう侵食)が大きくろう付後のプレートフィンに座屈が生じるおそれがある。そのためSi含有量は5.0〜12.5%とする。なお、同様の理由により、下限は6.5%、上限は9.5%が望ましい。
Sr:0.01〜0.05%
Srは、ろう材Si粒子を微細化し、フィン成形時の金型摩耗性を向上させるとともにろう付性を向上させるので所望により含有させる。Sr含有量が0.01%未満であると、Si粒子微細化効果が得られず、0.05%を超えると巨大晶が生成しやすく、アルミニウム合金板の製造性が大幅に低下する。そのため、所望により含有させる場合、Srの含有量を0.01〜0.05%とする。
Mn、Tiは、ろう材の流動性を抑え、伝熱管との接合状態を向上させる効果があるので所望により1種または2種を含有させる。Mnの含有量が0.05%未満であると、前記効果が十分でなく、1.0%を超えると巨大晶が生成しやすく、アルミニウム合金板の製造性が大幅に低下する。そのため、Mnを所望により含有させる場合、その含有量を0.05〜1.0%とする。Tiの含有量が0.05%未満であると、上記効果が十分でなく、0.20%を超えると巨大晶が生成しやすく、アルミニウム合金板の製造性が大幅に低下する。そのため、Tiを所望により含有させる場合、その含有量は0.05%〜0.20%とする。
Znはフィンの電位を卑とする効果があるので所望により含有させる。その含有量が0.05%未満では前記効果が低く、伝熱管に対する所望の犠牲陽極効果が得られず、5.0%を超えるとプレートフィン材の自己耐食性が低下する。そのため、Znを所望により含有させる場合、その含有量を0.05〜5.0%とする。
プレートフィン材は、熱間圧延、冷間圧延を経て製造することができ、その一形態として冷間圧延中に中間焼鈍を行い、その後、最終冷間圧延を行う工程が挙げられる。当該工程では、最終冷間圧延の圧延率を規定する。
最終冷間圧延率はろう付後に所望の材料組織を得るために制御する。すなわち圧延率を適切にすることで、その後の成形加工およびろう付熱処理により、強度に優れる亜結晶組織を得るとともに伝熱管との接合部位(成形加工部位)では再結晶組織を得ることができる。ここで上記最終圧延率の範囲の下限未満では圧延による歪みエネルギーが小さく、その後の成形,ろう付処理を経てもフィン材に所望の亜結晶組織が得られない。また上限超では、歪みエネルギーが大きく、ろう付熱処理において、いずれの部位でも再結晶が進むため、所望の亜結晶組織が得られない。このため、最終冷間圧延率を3%超え〜15%未満とする。
最終板厚での焼鈍はろう付後に所望の材料組織を得るために制御する。すなわち焼鈍温度を適切にすることで、その後の成形加工およびろう付熱処理により、強度に優れる亜結晶組織を得るとともに伝熱管との接合部位(成形加工部位)では再結晶組織を得ることができる。ここで上記焼鈍温度の範囲の上限超では圧延による歪みエネルギーが小さくなり、その後の成形,ろう付処理を経てもフィン材に所望の亜結晶組織が得られない。また下限未満では、歪みエネルギーが大きく、ろう付熱処理において、いずれの部位でも再結晶が進むため、所望の亜結晶組織が得られない。そのため、最終焼鈍の温度を150℃〜250℃とする。
本発明の熱交換器用プレートフィン材の製造に用いる合金は、本発明で規定する成分設定に従って、例えば常法により溶製することができる。例えば、半連続鋳造により造塊することができるが、その溶解、鋳造方法は本発明としては特に限定されるものではない。
得られた鋳塊は、常法により均質化処理、熱間圧延や冷間圧延等の工程を経て最終板厚0.05〜0.15mmのアルミニウム合金板とする。
或いは、上記と同様に熱間圧延工程を経た後、最終板厚まで冷間圧延し、その後、150℃〜250℃の温度に加熱する最終焼鈍を行う。この場合の質別はH2nとなる。
プレートフィン材、ろう材、所望により犠牲材となる鋳塊を用意し、各材を組み合わせ、5〜20%のクラッド率で熱間圧延、冷間圧延によりクラッド材とし、クラッド材全体の最終板厚を0.05〜0.15mmとする。この際にも、上記と同様にH1nとなる質別で、冷間圧延中に1回以上の中間焼鈍を行い、最後の中間焼鈍から最終板厚までを冷間圧延率3%超え〜15%未満で最終冷間圧延を行う。あるいは、H2nとなる質別で、冷間圧延によって上記クラッド材全体の最終板厚とした後、150℃〜250℃の温度に加熱する最終焼鈍を行う。
上記で作製された熱交換器は、エアコン等の用途に使用される。該熱交換器のプレートフィンは、接合部以外では面積率で50%以上の亜結晶組織を有し、ろう付け後においても高い強度を有し、接合部であるカラー成形部3では、亜結晶組織が面積率で50%未満になっており、良好なろう付けがなされている。
一方、同様に熱間圧延、冷間圧延を行い、冷間圧延における全圧下率を95%として最終板厚0.1mmを得た。その後、表1に示す温度で6時間の最終焼鈍を行って、実施例8〜14、比較例5〜8のH2n調質材コイルを得た。これらの供試材では、Si粉末を置きろうとして用いた。
次に、各供試材について以下の評価試験を行った。
各供試材を図1のように加工し、窒素ガス雰囲気中で600℃で3分間のろう付相当の加熱処理を行い、接合部位と接合部位以外の部位の断面を、図1で示される穴の直径部で切断し、樹脂に埋めて0.5mm×厚みの視野を光学顕微鏡により200倍の倍率で観察した。接合部位、接合部位以外の部位のそれぞれの10視野について、観察結果から画像処理解析装置を用いて解析し、合計の面積からその比率(%)を算出した。算出結果は表1、2に示した。クラッド材の場合、芯材について評価した。
各供試材のコイルを幅32mmの条材にスリット加工し、得られた条材を用いて、高速プレス機(株式会社黒田製作所製)のエンドシャー(切断刃の材質;SKD6(硬度HRC50))による切断試験を実施した。試験条件は条材の送り速度200spm、5mmピッチで供試材の圧延垂直方向に切断した。評価は切断回数5万ショット後の切断片断面のバリ高さを測定し、以下のように評価した。評価結果を表3、4に示した。
非常に良好(◎):50μm未満のもの
良好(○):50μmで80μm未満のもの
不良(×):80μm以上のもの
各供試材について、単体で窒素ガス雰囲気中で600℃で3分ろう付加熱した後、JIS Z2241に基づいて、耐力(σy)を測定し、以下のように評価した。評価結果は表2、4に示した。
良好(○):60MPa以上のもの
不良(×):60MPa未満のもの
得られたプレートフィン材を所定の伝熱管と組付けて、フッ化物系のフラックスを塗布後、窒素ガス雰囲気中で600℃で3分間ろう付加熱した。その後、ろう付品の接合部位においてプレートフィンを物理的に切断し、断面観察を実施し、接合部位のフィン総断面積中のろう侵食の面積率を、ろう侵食率(%)として画像解析装置にて測定し、以下のように評価した。
非常に良好(◎):30%未満のもの
良好(○):30%以上で50%未満のもの
不良(×):50%以上のもの
2 貫通孔
3 カラー成形部
4 ろう材
5 伝熱管
Claims (8)
- 板厚が0.05〜0.15mmであり、接合部位が成形されて前記接合部位に伝熱管がろう付される単材またはクラッド材からなる熱交換器用プレートフィン材であって、
前記単材または前記クラッド材の芯材が、質量%で、Mn:1.5超〜2.0%、Fe:0.15〜0.50%を含有し、かつ前記Mn、Fe含有量が3.5≦Mn/Fe≦10.0の条件を満たし、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成を有し、窒素ガス雰囲気中で600℃で3分間のろう付け処理を行った場合、該ろう付け熱処理後において、接合部位以外の部位が断面組織において面積率で50%以上の亜結晶組織を有し、前記接合部位が断面組織において亜結晶組織の面積率が50%未満であることを特徴とする熱交換器用プレートフィン材。 - 前記組成として、さらに質量%で、Si:0.05〜1.2%、Cu:0.05〜0.50%、Zn:0.05〜5.0%、Zr:0.05〜0.20%、Ti:0.05〜0.20%のうち、1種または2種以上を含有する請求項1に記載の熱交換器用プレートフィン材。
- 質量%で、Si:5.0〜12.5%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるろう材が片面あるいは両面にクラッドされていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器用プレートフィン材。
- 前記ろう材に、さらに質量%でZn:0.05〜5.0%、Sr:0.01〜0.05%、Mn:0.05〜1.0%、Ti:0.05〜0.20%のうち、1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項3記載の熱交換器用プレートフィン材。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の熱交換器用プレートフィン材を素材とするプレートフィンの接合部位に伝熱管がろう付け接合されていることを特徴とする熱交換器。
- 請求項1または2に記載の組成を有する単材またはクラッド材の熱間圧延材を冷間圧延し、少なくとも1回の中間焼鈍を行い、最後の中間焼鈍後、最終冷間圧延を3%超〜15%未満の圧延率で行って、最終板厚を0.05〜0.15mmとすることを特徴とする熱交換器用プレートフィン材の製造方法。
- 請求項1または2に記載の組成を有する単材またはクラッド材の熱間圧延材を冷間圧延して最終板厚を0.05〜0.15mmとし、前記冷間圧延後、150〜250℃に加熱する最終焼鈍を行うことを特徴とする熱交換器用プレートフィン材の製造方法。
- 請求項6または7の製造方法により得られる熱交換器用プレートフィン材にカラーを有する穴あきの接合部位を成形して熱交換器用プレートフィンとし、前記接合部位に伝熱管を挿入し、ろう付けによって該伝熱管を前記熱交換器用プレートフィンに接合することを特徴とする熱交換器の製造方法。
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