JP7179493B2 - 熱交換器用フィン材および熱交換器 - Google Patents
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Description
ろう付けタイプの熱交換器は、偏平管を用いてコルゲート型のフィンを上下から挟み込むようにろう付け接合する構成であるのに対し、拡管タイプの熱交換器は、丸孔を設けたフィンに銅管を差し込み、差し込み後に銅管を機械的に拡管することでフィンと銅管を接合する構成が採用されている。
このブレージングシートは、ろう付け加熱後の強度、ろう付け性、繰り返し曲げ性に優れた上に耐孔食性にも優れるという特徴を有している。
この熱交換器は、ブレージングシートをろう付けした場合、ろう材表面にSiが一部残留し、ここに結露水などが存在すると、Si残渣によりろう材層の表面電位が貴となり、フィンの芯材とろう材層との間に電位差が生じ、フィンの腐食摩耗量が多くなるという不具合を改善している。
また、フィンは熱交換器において熱交換性能の維持とチューブの犠牲防食という役割を負う事が多いが、フィンが過剰な腐食を受け、早期に熱交換器から脱落することで熱交換性能の維持が損なわれるとともに、チューブへの犠牲防食効果が損なわれるという問題が生じている。
長期間に渡り、熱交換器の性能を維持するためには、腐食によるフィンの早期脱落を防止し、フィンによるチューブの犠牲防食効果を長期間維持する必要がある。
また、フィンの芯材を電位的に卑として面状腐食とすることができ、フィンの伝熱面積を長期間維持し、優れた熱交換性能を長期間維持することができ、更にフィン脱落も生じ難い熱交換器を提供できる。
図1は、本発明に係わるフィン材を適用した熱交換器の一例を示すものである。この熱交換器100は左右に離間し平行に配置されたヘッダーパイプ1、2と、これらのヘッダーパイプ1、2の間に相互に間隔を保って平行に、かつ、ヘッダーパイプ1、2に対して直角に接合された複数の扁平状のチューブ(偏平管)3と、各チューブ3にろう付けされた波形のフィン(コルゲートフィン)4を主体として構成されている。ヘッダーパイプ1、2、チューブ3及びフィン4は、後述するアルミニウム合金から構成されている。
即ち、図2に示す如く、ヘッダーパイプ1、2のスリット6に対してチューブ3の端部を挿通した部分においてろう材により第1のフィレット部8が形成され、ヘッダーパイプ1、2に対しチューブ3がろう付されている。また、波形のフィン4において波の頂点の部分を隣接するチューブ3の表面または裏面に対向させてそれらの間の部分に生成されたろう材により第2のフィレット部9が形成され、チューブ3の表面側と裏面側に波形のフィン4がろう付されている。
<Si粉末>
Si粉末は、チューブ3を構成するAlと反応し、フィン4とチューブ3を接合するろうを形成するが、ろう付時にSi粉末が溶融してろう液となる。このろう液にフラックス中のZnが拡散し、チューブ3の表面に均一に広がる。液相であるろう液内でのZnの拡散速度は固相内の拡散速度より著しく大きいので、チューブ3表面のZn濃度がほぼ均一となり、これにより均一なZn溶融拡散層(犠牲陽極層)3Eが形成され、チューブ3の耐食性を向上することができる。
Si粉末の塗布量が1g/m2未満であると、ろう付性が低下する。一方、Si粉末の塗布量が5g/m2を超えると、過剰なろう形成によりフィレットにZnが濃縮しやすくなり、未反応Si残渣が発生するとともに、チューブの腐食深さが大きくなり、フィンの分離を防止しようとする目的の効果が得られない。このため、塗膜におけるSi粉末の含有量は1~5g/m2とする。好ましくは、塗膜におけるSi粉末の含有量は、1.5~4.5g/m2、より好ましくは2.0~4.0g/m2である。ここで用いるSi粉末の粒径は、一例としてD(99)で15μm以下である。D(99)は小径粒側からの体積基準の積算粒度分布が99%となる径である。
Zn含有フラックスは、ろう付に際し、チューブ3の表面に犠牲陽極層3Eを形成し、耐孔食性を向上させる効果がある。また、ろう付時にチューブ3の表面の酸化物を除去し、ろうの広がり、ぬれを促進してろう付性を向上させる作用を有する。このZn含有フラックスは、Znを含まないフラックスに比べ活性度が高いので、比較的微細なSi粉末を用いても良好なろう付け性が得られる。
非Zn含有フラックスは、K3AlF6+KAlF4なる組成のものや、LiF、KF、CaF2、AlF3、K2SiF6等のフッ化物系に加えて、KCl、BaCl、NaCl等の塩化物系がある。市販されている商品(製品)では、例えば、フッ化物系フラックスあるいはフルオロアルミン酸カリウム系のフラックスがあり、4フッ化カリウムアルミニウムを主成分とするフラックスであり、添加物を加えた種々の組成が知られており、K3AlF6+KAlF4なる組成のものや、Cs(x)K(y)F(z)などを例示できる。また、他に、LiF、KF、CaF2、AlF3、K2AlF5・5H2O等のフッ化物を添加したフッ化物系フラックスあるいはフルオロアルミン酸カリウム系のフラックスを用いることもできる。
Zn含有フラックスを用いるか、Zn含有フラックスに加えてこれらの非Zn含有フラックスを添加することでろう付け性向上に寄与する。
Zn含有フラックスの塗布量が3.0g/m2未満であると、犠牲陽極層の形成が不十分になり、第1のフィレット部8の耐食性が低下する。一方、塗布量が20g/m2を超えると、フィレット部におけるZn濃縮が顕著になり、フィレット部の耐食性が低下して、フィン分離を加速する。このため、Zn含有フラックスの塗布量を3.0~20g/m2とする。
Zn含有フラックスは、KZnF3を主体として用いることが好ましいが、KZnF3に、必要に応じて、K1-3AlF4-6、Cs0.02K1-2AlF4-5、AlF3、KF、K2SiF6などのZnを含有しないフラックスを混合した混合型のフラックスを用いても良い。塗布量はZn含有フラックスが3.0~20g/m2の範囲であれば良い。
なお、本明細書において数値範囲を表示するために、上限値と下限値を「~」を用いて連続表記した場合、特に説明しない限り、上限値と下限値を含むものとする。このため、3.0~20g/m2は3.0g/m2以上20g/m2以下を意味する。
非Zn含有フラックス塗布量が1g/m2未満であると、非Zn含有フラックスを添加した効果が得られず、非Zn含有フラックス塗布量が10g/m2を超えると、ろうの流動性が過剰に向上する事によって想定以上のZnがフィレットに濃縮して、フィン剥離に繋がる問題がある。
ろう付用塗膜7には、Si粉末、Zn含有フラックス、非Zn含有フラックスに加えてバインダーを含む。また、非Zn含有フラックスは略しても良い。バインダーの例としては、好適にはアクリル系樹脂を挙げることができる。
「バインダー塗布量:0.2~8.3g/m2」
バインダーの塗布量が0.2g/m2未満であると、塗膜硬度が低下し、加工性(耐塗膜剥離性)が低下する。一方、バインダーの塗布量が8.3g/m2を超えると、塗膜未反応によるフィレット未形成の影響でろう付性が低下する。このため、バインダーの塗布量は、0.2~8.3g/m2とすることが好ましい。なお、バインダーは、通常、ろう付の際の加熱により蒸散する。
以下、チューブ3を構成するアルミニウム合金の各構成元素の限定理由について説明する。
SiはMnと同様に強度向上効果を有する元素である。
Siの含有量が0.05%未満では、強度向上の効果が不十分である。一方、Siが1.0%を超えて含有されると、押出性が低下する。従って本発明におけるチューブ3のSi含有量は、0.05~1.0%に設定することが好ましい。
<Mn:0.1~1.5%>
Mnは、チューブ3の耐食性を向上するとともに、機械的強度を向上させる元素である。また、Mnは、押出し成形時の押出性を向上する効果をも有する。更にMnは、ろうの流動性を抑制し、フィレットとチューブ表面のZn濃度差を小さくする効果がある。
Mnの含有量が0.1%未満では、耐食性及び強度向上の効果が不十分であり、ろうの流動性を抑制する効果も低下する。一方、Mnを1.5%を超えて含有させると、押出圧力増により押出性が低下する。従って本発明におけるMn含有量は、0.1~1.5%にすることが好ましい。
Cuは、チューブ3の耐食性に影響を与える元素であり、1.0%以下では問題ないが1.0%超を含有させると自己腐食速度の増加により耐食性が低下し、チューブ表面の犠牲陽極層作製が困難になる傾向となる。
芯材4aは、質量%で、Mn:0.5~2.0%を含有し、残部不可避不純物およびアルミニウムからなるアルミニウム合金から形成されていることが好ましい。また、芯材4aは、質量%で、Mn:0.5~2.0%、Zn:0.1超~3.5質量%を含有し、残部不可避不純物およびアルミニウムからなるアルミニウム合金から形成されていても良い。なお、前記アルミニウム合金において、Fe:1.0%以下、あるいは、Si:1.5%以下であることが好ましい。
以下、芯材4aを構成するアルミニウム合金の各構成元素含有量とそれらの限定理由について個別に説明する。
Mnは芯材4aを構成するアルミニウム合金の耐食性と強度に影響があり、0.5%未満では強度低下によりプレス成型性に劣り、2.0%を超える含有量では強度が高くプレス成型性に劣り、生産性に問題を生じ易い。
<Zn:0.1超~3.5質量%>
Znは芯材4aを構成するアルミニウム合金の耐食性(犠牲防食効果)に影響があり、0.1%以下では犠牲防食効果が不足し、3.5%を超える含有量では自己腐食速度の劣化から、犠牲防食効果の不足になり易いなどの問題がある。
Feは芯材4aを構成するアルミニウム合金の自己耐食性に影響があり、1.0%を超える含有量では自己腐食速度の劣化から、犠牲防食効果の不足になり易い。
<Si:1.5%以下>
Siは芯材4aを構成するアルミニウム合金の強度に影響があり、1.5%を超える含有量では、過度な高強度により加工性が低下するという面で問題がある。
以下、Zn含有層4bを構成するアルミニウム合金の各構成元素含有量とそれらの限定理由について説明する。
Zn含有層4bは、質量%でZn:0.5~5.0%を含有するアルミニウム合金からなることが好ましい。
Zn含有層4bを構成するアルミニウム合金として、JIS1000系のアルミニウム合金に上述の範囲のZnを含有させた合金、JIS3000系のアルミニウム合金に上述の範囲のZnを含有させた合金あるいは他の含有成分として不可避不純物を含むAl‐Zn合金などを用いることができる。Zn含有層4bを構成するアルミニウム合金は、Znを上述の範囲で含むアルミニウム合金であれば、上述の種類に限らず、その他いずれの組成であっても良く、芯材4aに対し積層可能な層として形成可能なアルミニウム合金であればいずれの組成のアルミニウム合金を用いても良い。
ヘッダーパイプ1、2を構成するアルミニウム合金は、Al-Mn系をベースとしたアルミニウム合金が好ましい。
例えば、Mn:0.05~1.50%を含有することが好ましく、他の元素として、Cu:0.05~0.8%、Zr:0.05~0.15%を含有することができる。
図3は、フィン材4Aとの接合面にろう付用塗膜7を塗布したチューブ3を使用し、ヘッダーパイプ1、2、チューブ3及びフィン材4Aを組み立てた状態を示す熱交換器組立体101の部分拡大図であって、ろう付けする前の状態を示している。
図3に示す熱交換器組立体101において、チューブ3はその一端をヘッダーパイプ1に設けたスリット6に挿入し取り付けられている。また、ヘッダーパイプ1、2の芯材11の表面側にろう材層13が設けられている。
ろう付の条件は特に限定されない。一例として、炉内を窒素雰囲気とし、熱交換器組立体101を昇温速度5℃/分以上でろう付温度(実体到達温度)580~620℃に加熱し、ろう付温度で必要時間保持し、ろう付温度から常温まで冷却すればよい。
即ち、フィン4の芯材4aの厚さ方向において、Zn含有層4bを形成していた側に高い濃度のZnが含有され、高Zn含有領域(高Zn濃度側)となり、芯材4aの厚さ方向においてZn含有層4bを形成していない側には殆どZnが拡散されず、殆どZnを有していないか、芯材4aに元々含まれていたZnが存在する低Zn含有領域(低Zn濃度側)となる。
ろう付けがなされて構成された熱交換器100において、上述の組成のチューブ3とフィン4であるならば、一例として、フィン4において高Zn濃度側の電位と低Zn濃度側の電位の電位差が、30mV以上生成されている。
例えば、前述の組成のフィン4であるならば、低Zn濃度域の電位が-740~-920mV(vs SCE)であるならば、高Zn濃度域の電位が-770~-950mV(vs SCE)であり、高Zn濃度側の電位と低Zn濃度側の電位の電位差が、30~210mV程度生成されている。
また、前述の組成のチューブ3であるならば、電位が-700~-730mV(vs SCE)であり、フィン3の低Zn濃度域との電位差が30~210mV程度、フィン3の高Zn濃度域との電位差が60~250mV程度生成されている。
通常の熱交換器では、チューブの犠牲防食を果たすために、フィン自体の電位をチューブよりも低くすることがなされている。しかし、このような電位関係に調整したとしても、フィンに生成する腐食がフィンの断面方向に縦横無尽に孔食を発生させる腐食形態である場合、早期にフィンの強度が低下し、フィンの脱落に帰結することがある。
これに対し、上述の如くフィン4の高Zn濃度側の電位と低Zn濃度側の電位の電位差を30mV以上生成していると、フィン4がチューブ3の犠牲防食を行うという効果は維持しつつ、フィン4自体の腐食形態をコントロールすることでフィン4の早期離脱を防止できる構造となる。
即ち、フィン4の断面方向に縦横無尽に腐食が発生して腐食が進行するというよりは、高Zn濃度側を面状腐食にできると同時に、高Zn濃度側が低Zn濃度側を犠牲防食するために、低Zn濃度側に孔食が生じようとしたとしても、高Zn濃度側に腐食が引っ張られる結果、フィン4の断面方向に縦横無尽に孔食が発生する腐食形態を抑制できることとなる。
具体的には、腐食環境にあると、高Zn濃度側において面状腐食を生じやすいものの、フィン4の断面方向に縦横無尽に孔食が生じる腐食形態ではなくなる。
上述の構造によりフィン4のろう付け部分をフィン4と同じもしくは若干卑になるようにすることで、フィン4に覆われていない部位の犠牲陽極層を充実化し、この部位にて耐食目標前に貫通孔があくことを抑制できる。例えば、チューブ3の短側面壁表面を防食できる。
図6の構造において、チューブ3の短側面3D側にろう付け前にろう付塗膜7が形成されていないため、チューブ3の短側面3D側には犠牲陽極層3Eが形成されていない。このため、チューブ3の短側面側の電位は近傍のフィン4の電位よりも貴となる。
図7に示す構造においても、チューブ3の短側面3D側には犠牲陽極層3Eが形成されていないため、チューブ3の短側面3D側の電位は近傍のフィン4の電位より貴となる。
このため、腐食環境において長期間使用してもチューブ3に貫通孔の生成し難い、チューブ3からの冷媒漏れの生じ難い熱交換器100を提供できる。
ブレージングシートであれば、例えば、JIS4343合金や4045合金に代表されるAl-Si合金層を3~15μmの厚さで貼り合せた構成を用いることができ、置きろうであれば、例えばJIS4343合金や4045合金で調整された合金粉末とフラックスを混合し、粘性のある液体で液体状にしたものを用いることができる。
表1に示す各組成のアルミニウム合金板から、金型による打ち抜き加工と成形加工を施して厚さ0.13mm、幅18mmのコルゲートフィンを複数作成した。また、コルゲートフィンの片面に表1に示す組成のZn含有層(表1に示すZn高濃度側のZn濃度に対応するZnを含有したアルミニウム合金層)をクラッド層として貼り合わせた。
チューブの上面と下面には、Si粉末(粒径D(99):15μm以下):3.0g/m2、Zn含有フラックス(KZnF3):6.0g/m2、アクリル樹脂のバインダー:2.0g/m2となるろう付用塗膜を塗布した。
得られた各熱交換器について、vsカロメル飽和電極による電位測定(2.67%AlCl3水溶液)を行い、耐食性(フィンの腐食形態、耐フィン剥離性)について試験し、フィン強度の測定、フィン加工性の評価、チューブ強度の測定、押出性の評価を行った。
それらの結果を以下の表1、表2に纏めて記載する。各々の試験、並びに測定と評価の詳細は後に説明する。
表1に示すチューブの電位(vs SCE)は犠牲陽極層が生成されていない領域の電位である。チューブにおいてフィンとの電位差として表記した欄のZn低濃度側とは、チューブにおいて犠牲陽極層が生成されていない領域とフィンのZn低濃度領域との電位差であり、Zn高濃度側とは、チューブにおいて犠牲陽極層が生成されていない領域とフィンのZn高濃度領域との電位差である。
フィン加工性はフィンを加工する場合の金型摩耗により評価した。JIS規定3403合金、JIS規定3009合金からなる板材(厚さ0.13mm)を金型によって打ち抜き加工する場合と比較した。上述の各例のフィンを打ち抜く場合、3403合金と同等以上の加工性であれば◎と判断し、3403合金より劣るが3009合金より良好であれば○と判断し、3009合金と同等であれば△と判断し、3009合金未満の場合は×と判断した。加工性の評価として、◎は非常に良好、○は良好、△はやや良好、×は不良と判断することができる。
「耐フィン剥離性」
耐フィン剥離性は各々のミニコア試験体について、SWAAT試験(40日)後の剥離強度についてSWAAT試験前の剥離強度との対比「(SWAAT40日/SWAAT前)×100」にて評価した。
対比した値について、100~75%の試料が◎、74~50%の試料が○、49~25%の試料が△、14~0%の試料が×であると判断した。
表1に示す各組成のアルミニウム合金からチューブを押出加工する場合、押出圧力、押出速度、チューブ表面状態を総合的に観察し、評価した。押出圧力が高すぎて押し出すことができない試料、ピックアップ等の表面欠陥が多量に発生した試料は押出性において×の評価とし、表面欠陥が殆ど見あたらず、押出圧力の値、押出速度の値(目標とする押出速度に対して押出圧力が低ければ低いほど、押出性は良好と判断)から、その他の評価を表記した。具体的には、JIS規定のアルミニウム合金、3102、3003を用いた場合の押出圧力、押出速度と比較し、押出圧力が3102合金と同等あるいは同等以下であれば◎と判断し、押出圧力が3102合金より大きいが3003合金よりも小さければ○と判断した。押出圧力が3003合金と同等であれば△と判断した。
押出性の評価として、◎は非常に良好、○は良好、△はやや良好、×は不良であると判断することができる。
チューブ強度は、幅18mm、高さ1.3mm、孔数19の扁平管について、ろう付熱処理後に引張試験によって得られた結果である。
「チューブ最大腐食深さ」
チューブ最大腐食深さは、ろう付け熱処理でフィンと接合されたチューブに腐食試験(SWAAT40日)で発生する最大腐食深さ(μm)の値に応じ、以下の基準により評価した。
◎:最大腐食深さ0~40μm、○:最大腐食深さ41~80μm、△:最大腐食深さ81~120μm、×:最大腐食深さ121μm~貫通。
実施例1~実施例17の試料は、表2に示す結果が示すように、フィン強度が高く、フィン加工性に優れ、フィンの腐食形態が面状腐食であって、耐フィン剥離性が高く、チューブ強度が高く、チューブの押出性にも優れている。
即ち、実施例1~実施例17の熱交換器であるならば、フィンの耐食性に優れ、長期間使用してもフィンに脱落を生じることがなく、フィンにろう付けされるチューブの耐食性に優れた熱交換器を提供できる。
また、実施例1~実施例17で用いたフィンであるならば、チューブにろう付けして熱交換器を製造した場合、フィン強度が高く、フィン加工性に優れ、フィンの腐食形態が面状腐食であって、耐フィン剥離性が高いフィンを得られることがわかる。
比較例2の試料は、フィンの低Zn濃度側と高Zn濃度側との電位差が20mVであり少ないため、フィンの腐食形態が孔食となり、耐フィン剥離性に劣る結果となった。
比較例4の試料は、チューブを構成するアルミニウム合金のSi含有量が多いため、チューブ強度が高くなりすぎ、押出性に問題を生じた。
比較例6の試料は、チューブを構成するアルミニウム合金のMn含有量が多いため、チューブ強度が高くなりすぎ、押出性に問題を生じた。
比較例8の試料は、フィンを構成するアルミニウム合金のMn含有量が多いため、フィン強度が高くなりすぎ、フィン加工性に問題を生じた。
比較例9の試料は、フィンを構成するアルミニウム合金のSi含有量が多いため、フィン強度が高くなりすぎ、フィン加工性に問題を生じた。
Claims (4)
- 熱交換器用チューブに熱交換器用フィンがろう付けされた熱交換器に適用され、
ろう付け前の状態において芯材の片面側のみにZn含有層を有した熱交換器用フィン材であり、
ろう付け後に、その厚さ方向片面側でZn濃度が高く、反対面側でZn濃度が低いZnの濃度勾配が生成され、高Zn濃度側で低Zn濃度側よりも30mV以上低い電位とされ、前記熱交換器用チューブからもたらされるろう材、または別途追加されるろう材によってろう付けされた熱交換器用フィン材であって、
前記芯材が、Mn:0.5~2.0質量%、Fe:1.0質量%以下、Si:1.5質量%以下、Zn:0.1超~3.5質量%、残部不可避不純物およびアルミニウムの組成を有するアルミニウム合金からなり、
前記チューブが、Si:0.05~1.0質量%、Mn:0.1~1.5質量%、Cu:0.05質量%以下、残部不可避的不純物およびアルミニウムの組成を有するアルミニウム合金からなることを特徴とする熱交換器用フィン材。 - 前記芯材の前記Zn含有層側の表面に、ろう付け後において0.5~5.0質量%のZnが存在することを特徴とする請求項1に記載の熱交換器用フィン材。
- 芯材の厚さ方向片面側でZn濃度が高く、反対面側でZn濃度が低いZnの濃度勾配が生成され、高Zn濃度側の電位が低Zn濃度側の電位よりも30mV以上低い電位とされた熱交換器用フィン材が、熱交換器用チューブからもたらされたろう材、または別途追加されたろう材によって、Si:0.05~1.0質量%、Mn:0.1~1.5質量%、Cu:0.05質量%以下に規制した残部がAl及び不可避的不純物である熱交換器用チューブにろう付けされた熱交換器であり、
前記芯材が、Mn:0.5~2.0質量%、Fe:1.0質量%以下、Si:1.5質量%以下、Zn:0.1超~3.5質量%、残部不可避不純物およびアルミニウムの組成を有するアルミニウム合金からなり、
前記フィン材の低Zn濃度側の電位が前記チューブの電位よりも30mV以上低い電位とされたことを特徴とする熱交換器。 - 前記芯材の前記高Zn濃度側の表面に0.5~5.0質量%のZnが存在することを特徴とする請求項3に記載の熱交換器。
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