JP6968598B2 - 耐食性に優れたアルミニウム合金製熱交換器の製造方法およびアルミニウム合金製熱交換器 - Google Patents
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Description
また、ろう付時にろう付用塗膜とチューブとの反応で形成する液相ろうがフィンとチューブの接合部へ流動し、フィレットを形成して両者を接合するので、高い熱交換性能が得られる。
前記特許文献に記載の技術によれば、Si粉末とZn含有フラックスとが塗膜中で混合されているので、ろう付時にSi粉末が溶融してろう液となり、このろう液にフラックス中のZnが均一に拡散し、チューブ表面に均一に広がる。ろう液のような液相内でのZnの拡散速度は固相内の拡散速度より著しく大きいので、チューブ表面のZn濃度がほぼ均一となる。これによりチューブ表面に均一な犠牲陽極層が形成され、熱交換器用チューブの耐食性を向上させることができる。
この背景から従来の熱交換器の耐食性はチューブを腐食から守ることを主体に電位設計がなされており、チューブ自体の耐食性は良好であるものの、それ以外の箇所、特にヘッダーパイプとチューブ接合部の耐食性が懸念される。
従って熱交換器においては、チューブの耐食性に優れ、耐食寿命が長い上に、ヘッダーパイプとチューブ接合部の耐食性も良好であることが重要であるが、チューブの耐食性向上とヘッダーパイプとチューブ接合部の耐食性向上の両面において優れた特性を兼務することは難しい課題であった。
本発明において、前記チューブが、質量%で、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜1.5%、Cu:0.1%未満を含有し、残部不可避不純物およびアルミニウムからなるアルミニウム合金のチューブであることが好ましい。
本発明において、前記フィンが、質量%で、Zn:0.3〜5.0%、Mn:0.5〜2.0%、Fe:1.0%以下、Si:1.5%以下を含有し、残部不可避不純物およびアルミニウムからなるアルミニウム合金のフィンであることが好ましい。
その結果、チューブの腐食寿命を従来よりも延ばすことが可能になるとともにヘッダーパイプとチューブ接合部の耐食性に優れさせることができ、両立が難しい2つの特性を満足させた熱交換器を提供することができる。
図1は、本発明に係わる熱交換器の一例を示すものである。この熱交換器100は左右に離間し平行に配置されたヘッダーパイプ1、2と、これらのヘッダーパイプ1、2の間に相互に間隔を保って平行に、かつ、ヘッダーパイプ1、2に対して直角に接合された複数の扁平状のチューブ3と、各チューブ3に付設された波形のフィン4を主体として構成されている。ヘッダーパイプ1、2、チューブ3及びフィン4は、後述するアルミニウム合金から構成されている。
即ち、図2に示す如く、ヘッダーパイプ1、2のスリット6に対してチューブ3の端部を挿通した部分においてろう材により第1のフィレット部8が形成され、ヘッダーパイプ1、2に対しチューブ3がろう付されている。また、波形のフィン4において波の頂点の部分を隣接するチューブ3の表面または裏面に対向させてそれらの間の部分に生成されたろう材により第2のフィレット部9が形成され、チューブ3の表面側と裏面側に波形のフィン4がろう付されている。
本実施形態の熱交換器100は、後述する製造方法において詳述するように、ヘッダーパイプ1、2とそれらの間に架設された複数のチューブ3と複数のフィン4とを組み付けて図3に示す如く熱交換器組立体101を形成し、これを加熱してろう付けすることにより製造されたものである。なお、ろう付け時の加熱によってチューブ3の表面側と裏面側には後に詳述するZn溶融拡散層3Eが形成されている。
また、チューブ3の表面と裏面に、Si粉末:1〜5g/m2、Zn含有フラックス(KZnF3):8.5〜20g/m2、非Zn含有フラックス:1〜10g/m2、バインダー(例えば、アクリル系樹脂):0.2〜8.3g/m2からなるろう付用塗膜7が形成されていてもよい。
本実施形態のチューブ3は、その内部に複数の冷媒通路3Cが形成されるとともに、平坦な表面(上面)3A及び裏面(下面)3Bと、これら表面3A及び裏面3Bに隣接する側面とを具備する偏平多穴管として構成されている。一例として本実施形態にあっては、ろう付前のチューブ3の表面3Aと裏面3Bにろう付用塗膜7が形成されている。
<Si粉末>
Si粉末は、チューブ3を構成するAlと反応し、フィン4とチューブ3を接合するろうを形成するが、ろう付時にSi粉末が溶融してろう液となる。このろう液にフラックス中のZnが拡散し、チューブ3の表面に均一に広がる。液相であるろう液内でのZnの拡散速度は固相内の拡散速度より著しく大きいので、チューブ3表面のZn濃度がほぼ均一となり、これにより均一なZn溶融拡散層3Eが形成され、チューブ3の耐食性を向上することができる。
Si粉末の塗布量が1g/m2未満であると、ろう付性が低下する。一方、Si粉末の塗布量が5g/m2を超えると、過剰なろう形成によりフィレットにZnが濃縮しやすくなり、未反応Si残渣が発生するとともに、チューブの腐食深さが大きくなり、フィンの分離を防止しようとする目的の効果が得られない。このため、塗膜におけるSi粉末の含有量は1〜5g/m2とする。好ましくは、塗膜におけるSi粉末の含有量は、1.5〜4.5g/m2、より好ましくは2.0〜4.0g/m2である。ここで用いるSi粉末の粒径は、一例としてD(99)で15μm以下である。D(99)は小径粒側からの体積基準の積算粒度分布が99%となる径である。
Zn含有フラックスは、ろう付に際し、チューブ3の表面にZn溶融拡散層3Eを形成し、耐孔食性を向上させる効果がある。また、ろう付時にチューブ3の表面の酸化物を除去し、ろうの広がり、ぬれを促進してろう付性を向上させる作用を有する。このZn含有フラックスは、Znを含まないフラックスに比べ活性度が高いので、比較的微細なSi粉末を用いても良好なろう付け性が得られる。
非Zn含有フラックスは、K3AlF6+KAlF4なる組成のものや、LiF、KF、CaF2、AlF3、K2SiF6等のフッ化物系に加えて、KCl、BaCl、NaCl等の塩化物系がある。市販されている商品(製品)では、例えば、フッ化物系フラックスあるいはフルオロアルミン酸カリウム系のフラックスがあり、4フッ化カリウムアルミニウムを主成分とするフラックスであり、添加物を加えた種々の組成が知られており、K3AlF6+KAlF4なる組成のものや、Cs(x)K(y)F(z)などを例示できる。また、他に、LiF、KF、CaF2、AlF3、K2AlF5・5H2O等のフッ化物を添加したフッ化物系フラックスあるいはフルオロアルミン酸カリウム系のフラックスを用いることもできる。
Zn含有フラックスを用いるか、Zn含有フラックスに加えてこれらの非Zn含有フラックスを添加することでろう付け性向上に寄与する。
Zn含有フラックスの塗布量が8.5g/m2未満であると、Zn溶融拡散層の形成が不十分になり、第1のフィレット部8の耐食性が低下する。一方、塗布量が20g/m2を超えると、フィレット部におけるZn濃縮が顕著になり、フィレット部の耐食性が低下して、フィン分離を加速する。このため、Zn含有フラックスの塗布量を8.5〜20g/m2とする。
Zn含有フラックスは、KZnF3を主体として用いることが好ましいが、KZnF3に、必要に応じて、K1−3AlF4−6、Cs0.02K1−2AlF4−5、AlF3、KF、K2SiF6などのZnを含有しないフラックスを混合した混合型のフラックスを用いても良い。塗布量はZn含有フラックスが8.5〜20g/m2の範囲であれば良い。
非Zn含有フラックス塗布量が1g/m2未満であると、非Zn含有フラックスを添加した効果が得られず、非Zn含有フラックス塗布量が10g/m2を超えると、ろうの流動性が過剰に向上する事によって想定以上のZnがフィレットに濃縮して、フィン剥離に繋がる問題がある。
塗膜には、Si粉末、Zn含有フラックス、非Zn含有フラックスに加えてバインダーを含む。また、非Zn含有フラックスは略しても良い。バインダーの例としては、好適にはアクリル系樹脂を挙げることができる。
バインダー塗布量:0.2〜8.3g/m2
バインダーの塗布量が0.2g/m2未満であると、塗膜硬度が低下し、加工性(耐塗膜剥離性)が低下する。一方、バインダーの塗布量が8.3g/m2を超えると、塗膜未反応によるフィレット未形成の影響でろう付性が低下する。このため、バインダーの塗布量は、0.2〜8.3g/m2とすることが好ましい。なお、バインダーは、通常、ろう付の際の加熱により蒸散する。
なお、チューブ3の表面と裏面にろう材組成物を塗布する場合、ろう材組成物がヘッダーパイプ1、2に達するように、かつ、ヘッダーパイプ1、2に最も近いフィン4の頂部近傍まで到達するようにろう材組成物を塗布することが好ましい。
以下、チューブ3を構成するアルミニウム合金の各構成元素の限定理由について説明する。
SiはMnと同様に強度向上効果を有する元素である。
Siの含有量が0.05%未満では、強度向上の効果が不十分である。一方、Siが1.0%を超えて含有されると、押出性が低下する。従って本発明におけるチューブ3のSi含有量は、0.05〜1.0%に設定することが好ましい。
<Mn:0.1〜1.5%>
Mnは、チューブ3の耐食性を向上するとともに、機械的強度を向上させる元素である。また、Mnは、押出し成形時の押出性を向上する効果をも有する。更にMnは、ろうの流動性を抑制し、フィレットとチューブ表面のZn濃度差を小さくする効果がある。
Mnの含有量が0.1%未満では、耐食性及び強度向上の効果が不十分であり、ろうの流動性を抑制する効果も低下する。一方、Mnを1.5%を超えて含有させると、押出圧力増により押出性が低下する。従って本発明におけるMn含有量は、0.1〜1.5%にすることが好ましい。
Cuは、チューブ3の耐食性に影響を与える元素であり、0.1%未満では問題ないが0.1%以上含有させると自己腐食速度の増加により耐食性が低下し、チューブ表面の犠牲陽極層作製が困難になる傾向となる。
チューブ3に接合されるフィン4は、質量%で、Zn:0.3〜5.0%、Mn:0.5〜2.0%、Fe:1.0%以下、Si:1.5%以下を含有し、残部不可避不純物およびアルミニウムからなるアルミニウム合金からなることが好ましい。
フィン4は、上記組成を有するアルミニウム合金を常法により溶製し、熱間圧延工程、冷間圧延工程などを経て、波形形状に加工される。なお、フィン4の製造方法は、本発明としては特に限定をされるものではなく、既知の製法を適宜採用することができる。以下、フィン4を構成するアルミニウム合金の各構成元素の限定理由について説明する。
フィン4にZnを含有させることによってフィン4の電位を下げて、フィン4に犠牲防食効果を付与することができる。
フィン4におけるZn含有量については、質量%において0.3%以上、5.0%以下とする必要がある。フィン4におけるZn含有量が0.5%未満では犠牲防食効果が低減し、Zn含有量が5%を超えるようであると、自己耐食性が低下する傾向となる。
<Mn:0.5〜2.0%>
Mnはフィン4の強度を向上させ、耐食性も向上させる。
Mnの含有量が0.5%未満では、高温及び室温強度向上効果が不十分であり、一方、Mnの含有量が2.0%を超えると、フィン4を作製する際に加工性が不足する。したがって、フィンを構成する合金におけるMnの含有量は、0.5〜2.0%にする。
Siを含有することによって、Mnとの化合物を形成し、強度向上効果を奏し得るようにする。Si含有量が上記範囲を外れると、フィンの分離が発生し易くなる。
<Fe:1.0%以下>
Feはフィン4の強度を向上させるが、Feの含有量が1.0%を超えると、フィン4自身の自己腐食速度が増加するので耐食性が低下する。
ヘッダーパイプ1、2を構成するアルミニウム合金は、Al−Mn系をベースとしたアルミニウム合金が好ましい。
例えば、Mn:0.05〜1.50%を含有することが好ましく、他の元素として、Cu:0.05〜0.8%、Zr:0.05〜0.15%を含有することができる。
図3は、フィン4との接合面にろう付用塗膜7を塗布したチューブ3を使用して、ヘッダーパイプ1、2、チューブ3及びフィン4を組み立てた状態を示す熱交換器組立体101の部分拡大図であって、加熱ろう付けする前の状態を示している。図3に示す熱交換器組立体101において、チューブ3はその一端をヘッダーパイプ1に設けたスリット6に挿入し取り付けられている。また、ヘッダーパイプ1、2の芯材11の表面側にろう材層13が設けられている。
ろう付の条件は特に限定されない。一例として、炉内を窒素雰囲気とし、熱交換器組立体101を昇温速度5℃/分以上でろう付温度(実体到達温度)580〜620℃に加熱し、ろう付温度で30秒以上保持し、ろう付温度から400℃までの冷却速度を10℃/分以上として冷却してもよい。
また、ヘッダーパイプ1、2とチューブ3を構成するアルミニウム合金のマトリックスの一部がチューブ3に塗布されたろう付け用塗膜7の組成物と反応してろうとなって濡れ広がり、後にこれらのろうが冷却されて第1のフィレット部8が形成され、チューブ3とヘッダーパイプ1、2がろう付けされる。
チューブ3の上面と下面ではろう付によってフラックス中のZnが拡散してチューブ3の表面側または下面側に溶融拡散層3Eが形成され、チューブ表面側または下面側でZnの拡散を受けている領域がチューブ3の肉厚方向の内部側(Znの拡散を受けていない領域)よりも卑になる。ここで、チューブ3の肉厚方向の内部側とは溶融拡散層3Eが形成されているチューブ3の表面領域あるいは裏面領域よりチューブ3の肉厚方向に深い領域を示す。また、チューブ3の表面側あるいは裏面側に形成されている溶融拡散層3Eの表面電位あるいは裏面電位と前記チューブ3の内部側との電位差は60mV以上あることが望ましい。
チューブ3の上面または下面とヘッダーパイプ1、2が接近している部分ではろう付け用塗膜7の組成物とヘッダーパイプ1、2を構成するアルミニウム合金のマトリックスの一部とが反応して第1のフィレット部8が形成されている。ヘッダーパイプ1、2に近い位置のチューブ3の表面電位はZnの拡散を受けているので第1のフィレット部8の電位より低くなる。例えば、チューブ3の表面側に形成されている融拡散層3Eの表面電位は第1のフィレット部8の電位より20mV以上卑とされていることが好ましい。
これらの電位関係から、一例として、チューブ3の肉厚方向内部側(溶融拡散層3Eを除くチューブ3の内部側)の孔食電位が−745mV vs SCE、溶融拡散層3の表面部分の孔食電位が−870mV vs SCEであるならば、第1のフィレット部8の孔食電位は−840〜−850mV vs SCE、ヘッダーパイプ1、2の孔食電位は−710mV vs SCE、ヘッダーパイプ1、2の表面側の残留したろう付け層表面部分の孔食電位は−725mV vs SCEとなる。また、フィン4の孔食電位は−840mV vs SCEとなる。
なお、一例として、ヘッダーパイプ1、2の表面に一部残留しているろう材層13の表面の孔食電位は−725mV vs SCE、ヘッダーパイプ1、2自体の孔食電位は−710mV vs SCEである。従って、これらの部分の腐食も進行し易いが、ヘッダーパイプ1、2の肉厚は約1.0〜1.2mmであり、チューブ3の肉厚の約0.2〜0.3mmよりも相当厚いので、ヘッダーパイプ1、2において貫通孔は簡単には形成されない。
得られた熱交換器100は、チューブ3の上面と下面に適度なZn濃度の溶融拡散層3Eが形成されて孔食が防止され、第2のフィレット部9の腐食が抑制され、第2のフィレット部9の脱落が生じ難いので、長期に亘ってチューブ3とフィン4とが確実に接合されたままとなり、良好な熱交換性能が維持される。即ち、チューブ3に孔食が生じ難く、チューブ3自体の耐食性に優れるとともに、第2のフィレット部9の腐食抑制により第2のフィレット部9の脱落を生じ難い熱交換器100を提供できる。
また、電位差の関係から、第1のフィレット部8の孔食電位よりチューブ3の内部側の電位の方が10mV以上貴であることが好ましい。この観点からチューブ3の溶融拡散層表面とチューブ3の肉厚方向内部側の電位差が60mV以上あることが望ましい。
一例として、前記構成の熱交換器100の場合、Znフラックスの塗布量5.5g/m2の場合は、ヘッダーパイプ1、2の外側の孔食電位−736mV vs SCE、第1のフィレット部8の孔食電位−800mV vs SCE、ヘッダーパイプ近傍の溶融拡散層3Eの表面の孔食電位−811mV vs SCE、フィン間のチューブ表面の孔食電位−805mV vs SCE、チューブ内部の孔食電位−745mV vs SCE、第2フィレット部の孔食電位−931mV vs SCEに調整することができる。
Znフラックスの塗布量8.5g/m2の場合は、ヘッダーパイプ1、2の外側の孔食電位−736mV vs SCE、第1のフィレット部8の孔食電位−813mV vs SCE、ヘッダーパイプ近傍の溶融拡散層3Eの表面の孔食電位−833mV vs SCE、フィン間のチューブ表面の孔食電位−820mV vs SCE、チューブ内部の孔食電位−745mV vs SCE、第2フィレット部の孔食電位−942mV vs SCEに調整することができる。
Znフラックスの塗布量9.5g/m2の場合は、ヘッダーパイプ1、2の外側の孔食電位−736mV vs SCE、第1のフィレット部8の孔食電位−823mV vs SCE、ヘッダーパイプ近傍の溶融拡散層3Eの表面の孔食電位−849mV vs SCE、フィン間のチューブ表面の孔食電位−840mV vs SCE、チューブ内部の孔食電位−745mV vs SCE、第2フィレット部の孔食電位−948mV vs SCEに調整することができる。
Znフラックスの塗布量15.0g/m2の場合は、ヘッダーパイプ1、2の外側の孔食電位−736mV vs SCE、第1のフィレット部8の孔食電位−847mV vs SCE、ヘッダーパイプ近傍の溶融拡散層3Eの表面の孔食電位−907mV vs SCE、フィン間のチューブ表面の孔食電位−874mV vs SCE、チューブ内部の孔食電位−745mV vs SCE、第2フィレット部の孔食電位−963mV vs SCEに調整することができる。
以上説明の如くZnフラックス塗布量の調整により各部の電位を調整できる。なお、これらの塗布量と電位の関係はZnフラックスに含まれているZn量を調整することで適宜変更可能であり、上述の記載は一例に過ぎない。
チューブ用Al合金を均質加熱処理後、熱間押出によりチューブ(肉厚t:0.3mm×幅W:18mm×全体厚T:1.3mm、19穴の扁平状の押出多孔チューブを作製した。
フィン用Al合金を均質加熱処理後、熱間圧延、冷間圧延することにより、厚さ0.08mmの板材を得た。この板材をコルゲート加工することにより、フィンを作製した。
次に、チューブの表面に、後に示すろう材組成物をロール塗布し、150℃で3分間乾燥させた。
ここで用いたチューブ用Al合金は、Si:0.35%(質量%、以下同じ)、Fe:0.25%、Mn:0.3%、Cu:0.05%、残部Alと不可避不純物の組成のAl合金である。
フィン用Al合金は、Si:0.35%(質量%、以下同じ)、Fe:0.7%、Mn:1.3%、Zn:1.5%、Cu:0.05%、残部Alと不可避不純物の組成のAl合金である。
ヘッダーパイプを構成するAl合金は、JIS3003合金を用い、このヘッダーパイプの表面にろう材層(JIS4045合金)を形成したものを用いた。
ろう付け後のチューブ、ヘッダーパイプ及びフィンからなる熱交換器をSWAAT40日の腐食試験に供し、試験後に熱交換器の各部に生じた腐食状態を観察した。これらの結果を図5〜図8にまとめて示す。
図7、図8では、チューブ長さ方向中央部の表面と、チューブ長さ方向中央部に位置するR部と、フィンおよびチューブの接合部について、Zn含有フラックス量5.5g/m2、8.0g/m2、8.5g/m2、9.0g/m2、9.5g/m2、10.0g/m2、12g/m2、15g/m2により欄に分けて各々の腐食試験後の断面写真を示す。
また、いずれの試料もヘッダーパイプ近傍のチューブ表面は面食となっているが、ヘッダーパイプ近傍のチューブR部においてZn含有フラックス量5.5g/m2の塗膜、8.0g/m2の塗膜では腐食の進行が見られた。
図7、図8に示すように、チューブ表面はZn含有フラックス量の増加とともに明瞭な面食となっており、Zn含有フラックス量の低い試料であっても腐食深さは小さかった。チューブR部について、Zn含有フラックス量の低い試料に腐食の進行が見られ、フィンおよびチューブの接合部についてもZn含有フラックス量の低い試料に腐食の進行が見られたが、いずれも問題となるほど深い腐食ではなかった。
図10に図5、図6に示したヘッダー近傍チューブ表面試料(Zn含有フラックス量5.5g/m2、8.0g/m2、10g/m2)の最大腐食深さを示すが、塗膜組成1を用いた試料は最大腐食深さが大きかったが特に問題となる腐食深さではなかった。
図11に示すチューブ3の下方に冷媒通路に沿った切断面の観察結果である写真と、内柱に沿った切断面の観察結果である写真を対比して示す。図11に切断面の位置を明瞭とするために、鎖線で切断位置を示した。図11に示すように冷媒通路3Cに沿った切断面の観察写真は冷媒通路3Cの上に薄い肉厚のチューブ上壁を観察することができ、内柱3Dに沿った切断面の観察写真は内柱部分の厚い肉厚の切断面を観察することができる。
図13は第1のフィレット部とチューブ表面の溶融拡散層表面部分の孔食電位を塗膜組成1〜8の試料(Zn含有フラックス量5.5g/m2、8.0g/m2、8.5g/m2、9.0g/m2、9.5g/m2、10g/m2、12.0g/m2、15g/m2)毎に列記したグラフである。
図14に示すように第2のフィレット部とフィンとの間で孔食電位の電位差が10mV以上あるならば、第2のフィレット部よりフィンの方が優先的に腐食されることが判る。
このことから、チューブ自体の内部電位を第1のフィレット部より10mV以上貴にするならば、第1のフィレット部の方が優先的に腐食されることがわかる。
ここで熱交換器においてヘッダーパイプの肉厚は約1.0〜1.2mm程度あり、チューブの肉厚が約0.2〜0.3mmであり、約4〜5倍の肉厚を有することを考慮すると、第1にチューブ表面の溶融拡散層を面食させた後、そのままチューブ自体を腐食させるよりも第1のフィレット部を優先的に腐食させた方が貫通孔生成までの時間を稼ぐことができる。このことから、チューブ内部の電位を第1のフィレット部の電位より10mV以上貴にすることで、チューブ表面の溶融拡散層の腐食後に第1のフィレット部が腐食するような電位勾配にできることがわかる。
チューブ内部の電位と第1のフィレット部の電位差が10mV未満の場合は、第1のフィレット部が優先腐食される可能性が低くなり、溶融拡散層の腐食終了後にチューブ内部の腐食進行と第1のフィレット部の腐食が同時進行し、先にチューブに貫通孔が形成される確率が高くなり、熱交換器としての腐食寿命が短くなる恐れがある。
特に、試料No.3〜5の熱交換器はチューブ表面電位(溶融拡散層表面の電位)と第1のフィレット部電位との電位差が28mV、30mV、60mVであるが、いずれも耐食性に優れた熱交換器を提供できていることがわかる。
図15に示すようにチューブ表面と内部の電位差を65mV以上とすることでチューブ表面を確実に面食にできることがわかる。
即ち、チューブにおいて溶融拡散層表面部分とチューブにおいて溶融拡散層形成領域よりも深い内部側の電位差を65mV以上に調整することがチューブ表面の腐食形態を面食とする上で重要であることがわかる。
この試験結果から、チューブにおいて溶融拡散層表面部分とチューブにおいて溶融拡散層形成領域よりも深い内部側の電位差を60mV以上とすることが、チューブの腐食形態を面食とするために望ましいことがわかった。
Claims (8)
- Si粉末:1〜5g/m2、Zn含有フラックス:8.5〜20g/m2、バインダー:0.2〜8.3g/m2からなるろう付用塗膜を表面に形成したアルミニウム合金製のチューブに対し、ろう付け用塗膜形成部分を介しヘッダーパイプとフィンを組み付け、ろう付け温度に加熱後に冷却して熱交換器を製造する方法であって、
ろう付け温度に加熱し前記ろう付け用塗膜を溶融させた後に冷却することで前記ヘッダーパイプと前記チューブの近接部分に第1のフィレット部を形成し、前記フィンと前記チューブの近接部分に第2のフィレット部を形成するとともに、
前記チューブ表面のろう付け用塗膜形成部分に前記第1のフィレット部と前記第2のフィレット部に繋がる溶融拡散層を形成し、前記溶融拡散層表面部分の電位を前記第1のフィレット部の電位より28mV以上60mV以下卑とし、
前記チューブの肉厚方向において前記溶融拡散層形成領域よりも深い部分の電位を前記第1のフィレット部の電位より76mV以上102mV以下貴とするとともに、
前記チューブにおいて前記溶融拡散層表面部分と前記チューブにおいて前記溶融拡散層形成領域よりも深い部分の電位差を104mV以上162mV以下にすることを特徴とする耐食性に優れた熱交換器の製造方法。 - 前記チューブとして、Cuを0.1質量%未満含むアルミニウム合金製チューブを用いることを特徴とする請求項1に記載の耐食性に優れた熱交換器の製造方法。
- 前記チューブとして、質量%で、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜1.5%、Cu:0.1%未満を含有し、残部不可避不純物およびアルミニウムからなるアルミニウム合金製チューブを用いることを特徴とする請求項1に記載の耐食性に優れた熱交換器の製造方法。
- 前記フィンとして、質量%で、Zn:0.3〜5.0%、Mn:0.5〜2.0%、Fe:1.0%以下、Si:1.5%以下を含有し、残部不可避不純物およびアルミニウムからなるアルミニウム合金製フィンを用いることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の耐食性に優れた熱交換器の製造方法。
- アルミニウム合金製のチューブとフィンとヘッダーパイプがろう付けされた熱交換器であって、前記チューブと前記ヘッダーパイプが第1のフィレット部により接合され、前記チューブと前記フィンが第2のフィレット部により接合され、前記第1のフィレット部および前記第2のフィレット部がそれぞれろう付け用塗布材料の溶融凝固物からなるとともに、前記第1のフレット部と前記第2のフィレット部との間に位置する前記チューブの表面に、前記ろう付け用塗布材料の溶融拡散層が前記第1のフレット部と前記第2のフィレット部に繋がるように形成され、前記チューブの前記溶融拡散層表面部分の電位が前記第1のフィレット部の電位より28mV以上60mV以下卑であり、
前記チューブの肉厚方向において前記溶融拡散層形成領域よりも深い部分の電位が前記第1のフィレット部の電位より76mV以上102mV以下貴であり、
前記チューブにおいて前記溶融拡散層表面部分と前記チューブにおいて前記溶融拡散層形成領域よりも深い部分の電位差が104mV以上162mV以下であることを特徴とする耐食性に優れた熱交換器。 - 前記アルミニウム合金製のチューブがCuを0.1質量%未満含むことを特徴とする請求項5に記載の耐食性に優れた熱交換器。
- 前記チューブが、質量%で、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜1.5%、Cu:0.1%未満を含有し、残部不可避不純物およびアルミニウムからなるアルミニウム合金のチューブであることを特徴とする請求項5に記載の耐食性に優れた熱交換器。
- 前記フィンが、質量%で、Zn:0.3〜5.0%、Mn:0.5〜2.0%、Fe:1.0%以下、Si:1.5%以下を含有し、残部不可避不純物およびアルミニウムからなるアルミニウム合金のフィンであることを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載の耐食性に優れた熱交換器。
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