JP5334086B2 - 耐食性に優れたアルミニウム製熱交器およびその製造方法 - Google Patents
耐食性に優れたアルミニウム製熱交器およびその製造方法 Download PDFInfo
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Mnは、チューブの強度を向上させることができるとともに、チューブの電位調整を行うことができるので、必須成分として含有させる。0.05%未満の含有では、効果が少なく、ヘッダーとの間に形成されるフィレットに対する良好な電位関係も得られない。一方、0.50%を超えて含有すると、材料の押出し加工性を低下させる。
Siは、Mnとともに含有させることで、微細なAl−Mn−Si系化合物を形成し、強度が有効に向上し、またチューブの電位調整をすることができるので、必須成分として含有させる。ただし、0.10%以下の含有では、上記効果が十分でなく、フィレットとの間の良好な電位関係が得られない。一方、0.50%以上含有すると、合金の融点が低下して押出加工中に材料の部分溶融による表面欠陥を生じるようになる。
適量のCu含有はチューブの耐食性および強度を向上させる作用がある。0.001%未満のCu含有では、耐食性の向上はなく、チューブの強度が低下する。一方、0.10%超のCu含有では、チューブやヘッダーとの間に形成されるフィレットの耐食性が劣化する。
またヘッダーの外部側に亜鉛を0.5〜3.0%含有した犠牲層を設け、フィレットよりもヘッダー表面の電位を卑にすることで、フィレットを犠牲防食することができる。さらにヘッダー表面の電位をチューブ表面のそれより卑とすることで、ヘッダー表面はフィレットおよびチューブを犠牲防食することができ、より熱交換器の耐食性寿命を延ばすことができる。上記犠牲材に含まれるZnが、0.5%未満では犠牲防食効果が期待できない。3.0%を超えると過剰な犠牲防食効果によりヘッダーの耐食性が低下する。なお、ヘッダーの外側に犠牲層を設ける場合、ヘッダーの内側には上記ろう材層を設けることができる。
熱交換器用チューブには、Mn:0.05〜0.50%、Si:0.10超〜0.50%未満、Cu:0.001〜0.10%を含有し、さらに必要に応じてFe:0.10〜0.50%、Ti:0.01〜0.20%の1種または2種を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有するAl合金を用いる。該Al合金を常法により溶製し、通常は押出加工を経てチューブ1とされる。この実施形態では、チューブ1は、扁平な多穴管構造とされ、内部に、複数の通路2が形成されている。
さらに、熱交換器用フィン6としてAl合金を常法により溶製し、圧延工程などを経て波形形状としたものを用意する。なお、チューブ1、ヘッダー4およびフィン6の製造方法は、本発明としては特に限定をされるものではなく、既知の製法を適宜採用することができる。
なお、塗布物の塗布量は、Si粉末において1〜5g/m2の範囲が望ましい。これは、下限未満では、形成される溶融ろうの量が不足して、接合強度が十分でなく、上限を超えると、チューブの溶融量が増加してチューブの肉厚が減少して、好ましくない。また、Zn含有フラックスは、Zn換算量で2〜10g/m2が望ましい。
ろう付に際しては、チューブ1のマトリックスの一部が前記塗布物3と反応してろうとなって、部材同士が良好にろう付される。チューブ1表面ではろう付けによってフラックス中のZnが拡散してチューブ1内側よりも卑になる。
上記ろう付けに際しては、Si粉末によるチューブの局部溶解もなく、良好なろう付けがなされ、チューブ1とヘッダー4との間に適度なフィレット10が形成される。
このフィレット10は、ろう付け後のチューブ1の表面電位よりも貴になっており、チューブ1の表面電位は、相対的にフィレット10よりも20mV以上卑である。これにより、チューブ1の表面が優先腐食状態になり、フィレット10では腐食が抑制される。上記により得られた熱交換器は、実環境にて長時間使用されても腐食による冷媒漏れが発生しない。
上記チューブとヘッダー、フィンを用いて図2に示すミニコアを組立て、窒素雰囲気の炉中で600℃、3分保持のろう付を行った。いずれのコアも接合は良好であった。表1、2には、ろう付け後のチューブ表面およびヘッダー表面の電位を示した。
また、これら種々の材料組合せからなるコアをSWAAT38日間の長期腐食試験に供した。試験後に腐食による貫通孔の有無と発生部位の確認を行った。
以上のように、本発明の条件を満たす熱交換器ではチューブとヘッダーの接合部フィレットを含めた全ての部位で耐食性が極めて良好となり、長期の使用後にも貫通孔の発生がないばかりでなく、製品の耐圧強度も維持できるなど、実用上、有益であった。
3 塗布物
4 ヘッダー
40 ろう材層
41 犠牲材層
6 フィン
10 フィレット
Claims (4)
- 質量%でMn:0.05〜0.50%、Si:0.10%超〜0.50%未満、Cu:0.001〜0.10%未満を含有し、残部アルミニウムと不可避不純物からなる合金組成を有し、表面に粒径30μm以下のSi粉末と亜鉛を含有したフッ化物系フラックスとバインダとを塗布したチューブを、亜鉛濃度が質量%で2.0%未満のろう材をクラッドしたヘッダーに組み付けてろう付けし、該ろう付けによって前記ヘッダーと前記チューブとの間に、前記チューブ表面の電位が相対的に20mV以上卑となる接合部フィレットを形成することを特徴とする耐食性に優れたアルミニウム製熱交換器の製造方法。
- 前記亜鉛を含有したフッ化物系フラックスは、亜鉛換算量で2〜10g/m2が前記チューブに塗布されていることを特徴とする請求項1に記載の耐食性に優れたアルミニウム製熱交換器の製造方法。
- 前記ヘッダーの外側に質量%で、亜鉛を0.5〜3.0%含有した犠牲層が設けられていること特徴とする請求項1または2に記載の耐食性に優れたアルミニウム製熱交換器の製造方法。
- 質量%でMn:0.05〜0.50%、Si:0.10%超〜0.50%未満、Cu:0.001〜0.10%未満を含有し、残部アルミニウムと不可避不純物からなる合金組成を有するチューブと、亜鉛濃度が質量%で2.0%未満のろう材をクラッドしたヘッダーとが、チューブ表面に塗布され、粒径30μm以下のSi粉末と亜鉛を含有したフッ化物系フラックスとバインダとを含む塗布物と、前記ヘッダーにクラッドされたろう材とによってろう付けされており、前記チューブ表面の電位が、前記ろう付けによって前記チューブとヘッダーとの間に形成された接合部フィレットの電位よりも20mV以上卑になっていることを特徴とする耐食性に優れたアルミニウム製熱交換器。
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