JP2023064350A - ろう付性に優れた熱交換器用チューブと熱交換器 - Google Patents

ろう付性に優れた熱交換器用チューブと熱交換器 Download PDF

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茂紀 中西
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【課題】本発明は、組み立て時にろう付組成物塗膜の剥がれや剥離を生じることがなく、ろう付後の残渣を生じないようにした熱交換器用チューブとそのチューブを備えた熱交換器の提供を目的とする。【解決手段】本発明のチューブは、溝部あるいは孔部を複数備えたプレート型のフィンが複数、所定の間隔をあけて配置され、各フィンに形成されている溝部あるいは孔部に嵌合されるチューブ本体からなる熱交換器用チューブであって、前記チューブ本体の外表面に、円相当直径で5~40μmの円に内接する凹部が1mm2当たり60~20,000個形成され、前記凹部の面積率が5~50%であるとともに、前記外表面にろう粉末とフッ化物フラックスのどちらか一方または両方の混合物にバインダを添加してなるろう付組成物の塗膜が塗布されたことを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、ろう付性に優れた熱交換器用チューブと熱交換器に関する。
チューブ、フィン及びヘッダーパイプを主構成要素とし、これらのろう付によって製造されるアルミニウム合金製熱交換器では、これまで、表面にZn溶射した押出チューブと、Al-Si合金ろう材を両面にクラッド(3層積層)したブレージングシートからなるフィンとの組み合わせが広く使用されてきた。しかし、近年、Si粉末とZn含有フラックスとバインダからなるろう付用塗膜を表面に形成した押出チューブとフィンとを組み合わせることによって、安価で高品質、高性能な製品をグローバルに製造できるようになった。
前述の熱交換器は、ろう付用塗膜のフラックスに含まれるZnがろう付時に拡散し、チューブ表面に犠牲陽極層を形成するので、チューブに生じた腐食の進行を抑制し、チューブでの腐食による冷媒漏れを防止している。
また、ろう付時にろう付用塗膜とチューブとの反応で形成する液相ろうがフィンとチューブの接合部へ流動し、フィレットを形成して両者を接合するので、高い熱交換性能が得られる。
例えば、以下の特許文献1および特許文献2に記載の粉末ろう組成物、熱交換器を用いることにより、チューブとフィンとのろう付接合部に選択腐食を発生することがなく、信頼性の高い、工業上実用性の高い扁平多穴管(チューブ)及び熱交換器が得られている。
特開平7-227695号公報 特開2004-330233号公報
従来、粉末ろう組成物を扁平多穴管に塗布する場合、その表裏面にバーコータやロールコータなどの塗布装置を用いて塗布することが一般的である。これは、フィンに接触する部分がチューブの表裏面であること、これら塗布装置によりろう付組成物を目的のスピードで均一塗布できること、大量生産に好適であることなどによる。
ところで、熱交換器には、更なる小型化、軽量化が進められており、ろう付部分の信頼性のより一層の向上対策などが求められている。
熱交換器に適用される扁平多穴管とフィンを接合する構造において、フィンに形成したスリット状の孔部に扁平多穴管を差し込んで両者を位置決めし、ろう付する構造が知られている。この構造においては、スリット状の孔部に扁平多穴管を差し込む必要があるため、孔部内縁に沿って扁平多穴管を摺り合わせながら差し込む必要がある。この場合、ろう付組成物の塗膜に剥離が生じると、ろう付不良を引き起こすおそれがある。
本願発明は、組み立て時にろう付組成物塗膜の剥がれや剥離を生じることがなく、ろう付後の残渣やそれによる接合不良を生じないようにした熱交換器用チューブとそのチューブを備えた熱交換器の提供を目的とする。
(1)本発明の熱交換器用チューブは、溝部あるいは孔部を複数備えたプレート型のフィンが複数、所定の間隔をあけて配置され、各フィンに形成されている溝部あるいは孔部に嵌合されるチューブ本体からなる熱交換器用チューブであって、前記チューブ本体の外表面に、円相当直径で5~40μmの円に内接する凹部が1mm当たり60~20000個形成され、前記凹部の面積率が5~50%であるとともに、前記外表面にろう粉末とフッ化物フラックスのどちらか一方または両方の混合物にバインダを添加してなるろう付組成物の塗膜が塗布されたことを特徴とする。
(2)本発明の熱交換器用チューブにおいて、凹部の直径の平均値をd、凸部の高さをhとしたとき、h/d≧0.15となる凸部の割合が30%以上であることが好ましい。
この関係であると、塗膜の密着性をより強固にできるため好ましい。
(3)本発明に係る熱交換器は、(1)または(2)に記載のチューブと前記チューブに接合されたフィンを備えたことを特徴とする。
本発明は、組み立て時にろう付組成物塗膜の剥がれや剥離を生じることがなく、ろう付後の残渣を生じないようにした熱交換器用チューブを提供できる。
本発明に係る第1実施形態の熱交換器用チューブと熱交換器を示すもので、図1(A)は熱交換器を組み立てた状態を示す斜視図、図1(B)は同チューブの詳細図。 本発明に係る第2実施形態の熱交換器用チューブと熱交換器を示すもので、図2(A)は熱交換器を組み立てた状態を示す斜視図、図2(B)は同熱交換器の部分断面図、図2(C)は同チューブとプレート型フィンの接合部分を示す断面図。 実施例19に係るチューブ本体の平面壁外表面を示す電子顕微鏡画像(SEM画像)。 比較例4に係るチューブ本体の平面壁外表面を示す電子顕微鏡画像(SEM画像)。 実施例12に係るチューブ本体断面の表面側において凹部と凸部の定義について説明するための解析図。
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。
本実施形態の熱交換器1は、図1(A)に示すように、熱媒としての流体を通すための複数の扁平管(チューブ)2と、これら扁平管2の外表面(表面と裏面)に接触して熱を放散するための複数のプレート型のフィン3と備え、扁平管2内を流通する熱媒体としての流体と、フィン3間を流通する空気との間で熱交換がなされる。これら扁平管2及びフィン3は、いずれもアルミニウム合金から構成されている。
扁平管2は、図1(B)に例示するように幅寸法に対して高さ(厚み)が小さい扁平な形状であり、その外周を形成するチューブ本体4の内側に幅方向に間隔をおいて複数の内柱(仕切壁)5が形成され、チューブ本体4の内側空間が相互に平行な複数の内部流路6に分割された構造の、いわゆる多穴管である。
なお、一例として扁平管2は図1(A)(B)に詳細構造を示すように、20個程度の内部流路6を形成した構造が採用されるが、後述する第2実施形態の構造を示す図2(B)では図を簡略化するために6個の内部流路6を形成した構造として示している。
扁平管2を構成するチューブ本体4は、相互に対向して平行に離間配置された平面壁4A、4Aとこれら平面壁4A、4Aの幅方向両端側を個々に一体に連結した断面半円型のコーナー壁4Bとからなる。一方のコーナー壁4Bと他方のコーナー壁4Bとの間に内柱5が図1(B)に示す形態ではほぼ等間隔で19個平行に形成されているので、図1(B)に示す扁平管2は、20個の内部流路6が形成されている。なお、扁平管2はアルミニウム合金の押出成形により一体形成されている。
一般的な規模の熱交換器1に適用される扁平管2において内部流路6は数個~数10個形成される。また、扁平管2は高さ(総厚)1mm~数mm程度、幅数10mm程度であって、内部流路6を区画する内柱5の肉厚は、0.1~1.5mm程度の肉薄構造が採用される。
扁平管2を構成するアルミニウム合金の一例として、質量%でMn:0.2~1.5%、Si:0.2~0.5%、Cu:0.2%未満を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金を適用することができる。
フィン3を構成するアルミニウム合金の一例として、質量%でMn:1.0~1.8%、Si:0.7%以下、Fe:0.3%以下、Zn:0.5~2.5%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金を適用することができる。
ろう付前の扁平管2において、平面壁4Aの外表面には、例えば、以下に説明するろう付用組成物からなる塗膜10が形成される。
塗膜10を構成するろう付用組成物は、例えば、ろう粉末とフラックスとバインダとからなるろう付組成物である。ろう粉末としては、Si粉末、Al-Si粉末、Al-Si-Zn粉末等が用いられ、フラックスとしては、K1-3AlF4-6、Cs1-3AlF4-6、Cs0.021-2AlF4-5、AlF、KF、KZnF、KSiFなどのフッ化物系フラックスが用いられ、バインダとしてはアクリル系樹脂が用いられる。ろう粉末とフラックスについては、どちらか一方または両方の混合物を用いることが好ましく、必要に応じて更にバインダを添加しても良い。
ろう粉末とフラックスおよびバインダからなるろう付用組成物の一例として、ろう粉末:2~3g/mおよびフラックス:4~7.5g/mと、これらの合計量に対しバインダを固形分重量%で10~20%含有したろう付用組成物を用いることができる。
塗膜10において、ろう粉末の量が2g/m未満ではろう付不良となり易く、ろう粉末の量が6g/mを超える量では塗膜が未反応となり易い。塗膜10において、フラックスの量が4g/m未満では塗膜未反応となり、ろう付困難となり易く、フラックスの量が20g/mを超える場合、残渣を取り除くための追加工程が必要となる。塗膜10において、バインダの量が10%未満では、塗膜硬度が小さくなり易く、バインダの量が20%を超える量では塗膜がチューブと未反応となり易い。
塗膜10の塗布量は6~33g/mの範囲であることが好ましい。本実施形態の場合、扁平管2の外部全面にわたって塗膜10が塗布されていてもよいが、図1に示す嵌合構造に対応するため、フィン3と接触しない幅方向の他端部を除き、フィン3と接触する幅方向の一端部から扁平な表面にかけた部分に塗膜10が塗布されていてもよい。
ろう付組成物の塗布方法は、本実施形態において特に限定されるものではなく、スプレー法、シャワー法、フローコータ法、ロールコータ法、刷毛塗り法、浸漬法、静電塗布法などの適宜の方法によって行うことができる。
塗膜10の塗布量が6g/m未満では、充分なフィンフィレットを築くことができず、塗布量が33g/mを超える量であると、塗膜が未反応となりやすく、ろう付不良を引き起こすおそれがある。塗布量6~33g/mの範囲であるならば、前述の塗膜硬度を実現できる必要量の範囲であり、扁平管2とフィン3を確実にろう付することができる最適の範囲である。
一方、フィン3は、長方形板状に形成され、一定の間隔をおいて複数相互に平行に配置されており、それらの一側部に、扁平管2を幅方向に挿入する溝部7が側部の長手方向に沿うように所定間隔で複数形成されている。また、各溝部7の両側縁には、フィン3に対し垂直に立ち上げてなる片型の立ち上げ部8が一体に形成されている。
そして、扁平管2とフィン3とは、一定間隔に並べた複数のフィン3の一側方から図1(A)の矢印で示すように、扁平管2を幅方向に沿って各溝部7内に嵌合し固定することで組み立てられている。この構造の場合、扁平管2は、幅方向一端部から扁平な表面にかけた部分が溝部7内に収容され、幅方向の他端部は溝部7の開口部に配置されており、また、溝部7の立ち上げ部8が扁平管2の扁平な表面(表面壁4Aに塗布されている塗膜10の表面)に接触している。そして、扁平管2の幅方向一端部から扁平な表面にかけた部分がフィン3に対し、以下に説明するろう付により固定されている。
本実施形態に係る扁平管2においては、塗膜10を塗布した平面壁4A、4Aの外面、に以下に説明する微細な凹部が複数形成されている。
凹部は円相当直径で5~40μmの円に内接する凹部が1mm当たり60~20000個形成される。平面視形状は、三角形、四角形、五角形、あるいはそれ以上の角部を有する多角形状の如何なる形状、あるいは、砥粒状、ざらめ状など、任意の形状であっても良い。図3に、後述する実施例で得られた凹部の電子顕微鏡(SEM)画像を示すように、種々の平面視形状の凹部が形成されている。
凹部の深さは5~40μm程度であり、この凹部が平面壁4Aの外面に1mm当たり60~20000個形成され、前記凹部の面積率(凹部の面積/視野面積)が5~50%である。
これら微細な凹部が扁平管2の平面壁4Aの外面に形成されていることで、その上に塗布される塗膜に対しアンカー効果を発揮させて塗膜の密着性を向上させる。
凹部の円相当直径が5μm未満の場合は、塗膜密着性の向上効果に乏しく、40μmを超える場合も凹部個数が少なるため、塗膜の密着性が問題となる。
1mm当たりの凹部個数が60個未満では、塗膜10に対するアンカー効果が不足し、熱交換器の組立時に塗膜剥離が問題となり易い。1mm当たりの凹部個数が60~20000個を超えると、Al-Siろうの流動を妨げるため、ろう付接合不良が多くなる。
前記凹部の面積率が5%未満の場合、塗膜10に対するアンカー効果が不足し、熱交換器の組立時に塗膜剥離が問題となり易い。前記凹部の面積率が50%を超えると、Al-Siろうの流動を妨げるため、ろう付接合不良が多くなる。
さらに、前記凹部の周縁部に凸部が形成されていることが好ましい。凹部の直径の平均値をd、凸部の高さをhとしたとき、h/d≧0.15となる凸部の割合が30%以上であると塗膜の密着性をより強固なものにすることができる。
前記凹部をチューブ2の表面に形成する方法として、機械的、物理的、電気化学的、化学処理的の何れを選択しても良く、具体的には、ショットブラスト、研磨、プラズマ、レーザー、アルマイト、湿式エッチングなどを用いることができる。例えば、凹凸を機械的に付与する方法では、研磨シートなどの任意の番手を用い、圧延機のロールに貼り付け、適度な荷重でチューブ2に押し付けることで凹凸を形成させることができる。また、押し付ける回数やロールへの通し方を選択することで凹部の大きさ、個数を変量させることも可能である。
塗膜10を塗布した扁平管2を図1の矢印で示すようにフィン3の溝部7内に嵌合した後、全体を加熱炉に入れて加熱することにより、扁平管2表面の塗膜10を溶融させ、その後、冷却し固化させることで、フィン3と扁平管2の当接部分に塗膜の溶融凝固物であるフィレットを形成し、扁平管2とフィン3をろう付し、熱交換器1を形成することができる。
前述の組み立て作業において、扁平管2はフィン3の溝部7の両側縁に擦られながら溝部7内に嵌合されることになり、フィン3の溝部7の両側縁に形成されている立ち上げ部8が扁平管2表面に塗布されている塗膜10の一部を削り取ってしまうおそれがある。
しかし、本実施形態では塗膜10を塗布した扁平管2の外表面に前述の凹部が複数設けられているため、塗膜10は複数の凹部によるアンカー効果により剥離防止される。
仮に、フィン3の溝部7に沿って扁平管2がある程度の摩擦を生じながら嵌合されたとしても、嵌合時に立ち上げ部8によって削り取られる塗膜量を少なくすることができ、扁平管2の表面にろう付に必要十分な量の塗膜10を残留させることができる。
即ち、塗膜10が複数の凹部により扁平管2の外表面に固着されていると、嵌合時に扁平管2が溝部7に対しある程度低い摩擦でもって滑りつつ嵌合したとして、塗膜10が削り取られる割合を少なくできる。
また、扁平管2の表面から削り取られたろう付用組成物はフィン3の溝部7の側縁付近の表面に付着しており、ろう付時に加熱されると、溶融してフィン3と扁平管2との間に流動して周囲のろう材と合流し、フィレットを形成するとともに、フィン3と扁平管2との隙間が小さい場合に、その隙間にも侵入する。
したがって、扁平管2の表面に残留しているろう付用組成物により、フィレット不足を生じることなく、フィン3と扁平管2を確実にろう付できる。
なお、ろう付に際し、不活性雰囲気などの適切な雰囲気で適温に加熱し、塗膜10を溶融させる。これによりフラックスの活性度が上がって、フラックス中の成分が扁平管2の表面とフィン3の表面に拡散し、酸化皮膜を破壊してぬれを促進する。
ろう付のための加熱温度は、上述したように、塗膜10の融点以上であるが、上述した組成からなるろう付組成物の場合、580~610℃での範囲に加熱することができ、1~10分程度保持した後、冷却することができる。
本実施形態の塗膜10の構造によれば、ろう付のために扁平管2をフィン3の溝部7に嵌合して表面の塗膜10をフィン3の溝部7の周縁部分で擦り付けたとしても、塗膜10が削り取られる量は少ない。このため、ろう付部分に十分な塗膜10を残してろう付ができるので、良好なろう付がなされ、扁平管2とフィン3との間に十分なサイズのフィレットを形成できる。
図2は、本発明に係る熱交換器の第2実施形態を示している。
この実施形態の熱交換器11は、熱媒としての流体を通す複数本の扁平管12と、これら扁平管12が串刺し状態に嵌合することにより扁平管12の外表面に接触して熱を放散する多数のフィン13と、各扁平管12を連結するヘッダ管14と、このヘッダ管14を通して流体を扁平管12に供給する供給管15及び扁平管12を経由した流体を回収する回収管16とを備えている。これら扁平管12、フィン13、ヘッダ管14、供給管15及び回収管16は、いずれもアルミニウム合金から構成されている。
また、扁平管12は、図1の扁平管2と同様、幅寸法に対して高さ(厚み)が小さい扁平形状とされており、長さ方向の途中で折り曲げ形成されることにより、直管部17の間にU字状の曲管部18が屈曲形成され、その直管部17の各端部がヘッダ管14に接続されている。このヘッダ管14は、内部が複数に分割され、そのヘッダ管14の両端部に供給管15及び回収管16が接続されていることにより、供給管15から回収管16に向けて各扁平管12がヘッダ管14内を経由して順次連結状態とされ、流路が蛇行状に形成される。扁平管12は第1実施形態のチューブ本体4と同様のアルミニウム合金製のチューブからなるが、チューブの構造は同等のため説明は省略する。
一方、フィン13は、一定の間隔をおいて相互に平行に配置されており、扁平管12を部分的に嵌合する孔部19が複数形成されている。また、孔部19の周縁部にはバーリング加工が施されており、図2(C)に示すように、孔部19の周縁部を垂直に立ち上げてなる立ち上げ部20が一体に形成されている。
そして、扁平管12とフィン13とは、一定間隔に並べたフィン13を串刺しするように、フィン13の孔部19内に扁平管12の直管部17が嵌合し、その直管部17の部分でフィン13がろう付により固定されている。
この形態の熱交換器11を組み立ててろう付する場合、ろう付前の組み立ての段階においてフィン13の孔部19内に扁平管12の直管部17を嵌合して組み立てる必要がある。このため、直管部17にろう付用組成物の塗膜を塗布しておく場合、嵌合により塗膜が剥がされるおそれがあるので、先の第1実施形態の場合と同様に微細な凹部を複数形成しておき、これらの凹部を形成した外表面に塗膜10を塗布する。
扁平管12の直管部17をフィンの孔部19内に挿入するようにしてフィン13を一枚ずつ嵌め込む。あるいは、予めフィン13を複数枚並べておいて扁平管12を差し込むこともできる。
この際には、図2(C)に示すように、フィン13の立ち上げ部20が挿入方向の後方を向くように挿入される。そして、多数枚のフィン13を順次嵌め込み、前方のフィン13の立ち上げ部20に後方のフィン13の表面が接触した状態とすることにより、各フィン13が立ち上げ部20の長さに相当する一定の間隔を開けて配置される。
このようにして多数枚のフィン13を扁平管12に嵌め込んだ後、全体を加熱炉に入れて加熱することにより、扁平管12表面のろう付用組成物を溶融させ、その後、冷却して固化させフィン13と扁平管12とを一体化する。
前述の組み立て作業において、フィン13は扁平管12の直管部17表面を擦りながら嵌め込まれることになり、フィン13が扁平管12表面に塗布されている塗膜10の一部を削り取ろうとするが、塗膜10が前記複数の凹部により定着されているので、塗膜10が削り取られる量は少なく、ろう付部分に必要十分なろう付用組成物が残留する。
このため、ろう付部分に良好なフィレットを形成することができ、第1実施形態の熱交換器1の場合と同様、フィン13と扁平管12を良好な強度でろう付することができる。
質量%でMn:0.3%、Si:0.35%、Cu:0.1%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金鋳塊を均質化処理した後、押出加工することにより、高さ(厚さ):1mm、外壁厚さ:0.25mm、内柱太さ(仕切壁厚さ):0.25mm、穴幅(内部流路幅):0.7mm、穴高さ(内部流路高さ):0.5mm、穴数(内部流路数):12個の扁平押出管を作製した。
各扁平管(チューブ)の表裏面に#120、#240、#400、#600、#1200、#1500の研磨シートを用い、何れかを圧延機のロールに貼り付け、2~5%の圧下率で1~30回までチューブに凹凸を付与するための圧延を行った。そのうち一部は、凸部の高さを調整するため表面を再度研磨した。
<内接円直径の平均値(d:μm)、凹部の個数(個/mm)、面積率(%)>
チューブ表面の凹部が内接する円の直径の平均値dと、凹部の個数、面積率はSEM(走査電子顕微鏡)画像を用いて行い、画像の二値化処理によって算出した。図3は後に記載の表1に示す実施例19のチューブ表面を示すSEM画像を示し、図4は表1に示す比較例4のSEM画像を示す。
<凸部の高さ(h:μm)、凹部の深さ(μm)>
チューブ表面に形成されている凹部と凸部は、チューブ表面に対するレーザマイクロスコープ用いた観察により決定した。
凹部の開口部周縁で凸部の高さhは、レーザマイクロスコープの観察により、圧延方向と平行に任意で500μm長さ×10断面の凹凸測定により求めた。凹部の深さが5~40μmで、断面視野の凹部の数に対してh/d≧0.15となる凸部の割合が30%以上である場合に凸部有と判断した。
後に記載の表1に示す実施例12におけるレーザマイクロスコープ観察結果を一例として図5に示す。
h/d≧0.15となる凸部の割合の判定方法は、図5の丸囲み数値1の領域は、凹部が写っていないため、凹部も凸部もカウントしない領域、丸囲み2の領域は、凹部の個数としてカウントするが、凸が低いため、凸部とはカウントしない領域である。丸囲み数値3の領域は、h/d=4.0/21.2=0.19であり、凹部と凸部としてカウントする。丸囲み数値4の領域は、h/d=2.8/21.2=0.13であり、凹部の個数としてカウントするがh/dの値が0.15以下のため凸部とはカウントしない。丸囲み数値5の領域は、凹部の個数としてカウントするが、凸が低いため凸部とはカウントしない。丸囲み数値6の領域は、h/d=8.2/21.2=0.39であり、凹部と凸部の個数としてカウントする。丸囲み数値7の領域は、凹部の個数としてカウントするが、凸が低いため、凸部とはカウントしない。
実施例12では、丸囲み数値2~7の領域を凹部の個数としてカウントし、丸囲み数値3、7の領域を凸部ありと判定した。
実施例12では、圧延方向と平行に任意で500μm長さ×10断面の凹凸測定により凸部の割合(凸部の個数/凹部の個数)を算出した。
<鉛筆引掻き硬度>
鉛筆引掻き硬度の測定は、JISK5600-5-4:1999の方法に従い測定した。2H以上を◎、H以上を○、それ以下を×と評価した。
<ろう付後接合不良の評価>
ろう付後の接合不良は、接合部の90%以上が正常である場合は○、90%以下は×と評価した。接合部のろう付が正常とはチューブとフィンがフィレットを介して良好に接合されていることを意味し、一方、チューブとフィンが未接合の部分を接合不良箇所と判断し、接合箇所に対する接合不良箇所の長さの比率で判断した。
<残渣>
チューブに対し塗膜未反応による残渣が面積割合で10%以下である場合は○、10%以上であった場合は×と評価した。
その後、3g/mSiろう粉末、6g/mフラックス量(KZnF量)、15%バインダ量のろう付組成物からなる塗膜を塗布量10g/mで塗布し、塗膜付きチューブを作製した。
ろう付後の接合不良と塗膜の残渣の有無は、図1(B)に示すように塗膜を備えた扁平管を用いて3段のフィンを図1(A)に示すように組み付けて熱交換器試験体を構成し、この試験体を窒素ガス雰囲気中の加熱炉において昇温速度:100℃/分、保持:600℃で3分、冷却速度:-70℃/分の条件でろう付熱処理を行った後、ろう付接合状態が分かるように、フィンをある程度取り除いたチューブを作製して行った。
Figure 2023064350000002
Figure 2023064350000003
表1に示す実施例の結果が示すように、チューブ本体の外表面に、円相当直径で5~40μmの円に内接する凹部が1mm当たり60~20000個形成され、前記凹部の面積率が5~50%であるチューブであれば、熱交換器に組み付ける場合に塗膜剥離を生じることのないチューブを提供できることが分かる。また、上述のチューブであるならば、熱交換器に組み付けてろう付した後にろう付不良や残渣を生じることのないチューブを提供できることが分かる。
さらに、断面視野の凹部の数に対してh/d≧0.15となる凸部の割合が30%以上で、凹部の周縁部に凸部がある場合はより密着性が高いことが分かる。
表1、表2に示す比較例の結果が示すように、チューブ本体の外表面に、円相当直径で5~40μmの円に内接する凹部が1mm当たり60~20000個形成され、直径5μm未満の円に内接する平面視多角形状、あるいはざらめ状などの凹部を有する比較例は、鉛筆引掻き硬度が不足し、一部の比較例はろう付接合不良や残渣を生じた。直径40μmを超える円に内接する平面視多角形状、あるいはざらめ状などの凹部を有する比較例は、鉛筆引掻き硬度が不足するか、ろう付接合不良や残渣を生じた。前述の望ましい大きさ範囲の凹部であっても、凹部の個数が60~20000個の範囲に入っていない比較例は、鉛筆引掻き硬度が不足するか、ろう付接合不良や残渣を生じた。また、望ましい大きさと個数の凹部を有していても、凹部の面積率が上述の範囲に入っていない比較例は、鉛筆引掻き硬度が不足するか、ろう付接合不良や残渣を生じた。
このため、上述の範囲の直径を有する円に内接する大きさの凹部であり、個数と面積率が上述の範囲の凹部を有するチューブ本体ならば、熱交換器に組み付けてろう付した後にろう付接合不良や残渣を生じることのないチューブを提供できることが分かる。
1…熱交換器、2…扁平管(チューブ)、3…フィン、4…チューブ本体、4A…表面壁、7…溝部、10…塗膜、11…熱交換器、12…扁平管(チューブ)、13…フィン、19…孔部。

Claims (3)

  1. 溝部あるいは孔部を複数備えたプレート型のフィンが複数、所定の間隔をあけて配置され、各フィンに形成されている溝部あるいは孔部に嵌合されるチューブ本体からなる熱交換器用チューブであって、
    前記チューブ本体の外表面に、円相当直径で5~40μmの円に内接する凹部が1mm当たり60~20000個形成され、前記凹部の面積率が5~50%であるとともに、前記外表面にろう粉末とフッ化物フラックスのどちらか一方または両方の混合物にバインダを添加してなるろう付組成物の塗膜が塗布されたことを特徴とする熱交換器用チューブ。
  2. 前記凹部の周縁部に凹部の直径の平均値をd、凸部の高さをhとしたとき、h/d≧0.15となる凸部の割合が30%以上形成されたことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器用チューブ。
  3. 請求項1または請求項2に記載の熱交換器用チューブと前記熱交換器用チューブに接合されたフィンを備えたことを特徴とする熱交換器。
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