JP2012126950A - 熱交換器用アルミニウム合金フィン材および該フィン材を用いた熱交換器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、Mn:1.5〜2.0%、Si:0.7〜1.3%、Fe:0.15〜0.5%、Zn:0.05〜5.0%を含有し、1.25≦Mn/Si≦2.25、3.0≦Mn/Fe≦10.0、1.45≦(Mn+Fe)/Si≦2.80であり、残部がAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金より構成され、Alマトリクス中に存在する円相当径0.01〜1μmの金属間化合物に関して、Al−(Mn、Fe)−Si系化合物の数密度(D1)が1×103個/mm2以上、且つ、Al−(Mn、Fe)系化合物の数密度(D2)との化合物比D1/D2が20〜250であり、ろう付前の導電率が46%IACS以上で、板厚0.06mm以下である熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
【選択図】なし
Description
また、特許文献3には、Mn、Si添加量を増加させるとともに、Mn含有量とSi含有量の比(Mn/Si)を適正化させることでアルミニウム合金フィン材を高強度化することが開示されている。
そこで、これら金属間化合物の分散状態に着目して、高強度と更にはその他フィン材に求められる各種特性(耐食性、耐金型磨耗性)を満足する高性能フィン材を得るべく検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。
本発明の熱交換器用アルミニウム合金フィン材は、アルミニウム合金溶湯を鋳造する工程と、前記工程で得られた鋳塊を処理温度480℃以下且つ処理時間10時間以下で均質化処理する工程とを経て得られたものであってもよい。
本発明の熱交換器は、上記熱交換器用アルミニウム合金フィン材を備えたことを特徴とする。
本発明に係る熱交換器用アルミニウム合金フィン材(以下、単に「フィン材」と略称する。)は、熱交換器用のチューブ材(冷媒通路材)に組み付けられた状態でろう付処理されることにより、ろう材を介してチューブ材(冷媒通路材)にろう付け接合されるものである。フィン材の形状は、特に限定されず、例えば、平板状、波板状、蛇腹状等、フィン材が適用される熱交換器の形態に応じて適宜選択することができる。本発明において、フィン材の板厚は0.06mm以下とされる。
「Mn:1.5〜2.0質量%」
Mnの含有量を1.5質量%以上とすることにより、Al−(Mn、Fe)−Si系化合物による分散強化が小さくなることを防ぎ、所望のろう付後強度が得られなくなることを抑制することができる。また、Mnの含有量が1.5質量%未満の場合、相対的にSiの固溶度が増加するため、融点が低下し、ろう付熱処理後に著しいろう侵食(エロージョン)が生じやすくなる可能性がある。
さらに、Mnの含有量を2.0質量%以下とすることにより、鋳造時にAl−(Mn、Fe)系の粗大な晶出物が増加することを防ぎ、所望のろう付後強度が得られなくなることを抑制することができる。また、Mnの含有量が2.0質量%を超える場合、フィン材成形時の切断加工性が低下するおそれがある。
Siの含有量を0.7質量%以上とすることにより、Al−(Mn、Fe)−Si系化合物による分散強化が小さくことを防ぎ、所望のろう付後強度が得られなくなることを抑制することができる。また、Siの含有量を1.3質量%以下とすることにより、Siの固溶量が大きくなりすぎて融点が低下することを防ぎ、ろう付熱処理時に著しいろう侵食が生じやすくなることを抑制することができる。
Feの含有量を0.15質量%以上とすることにより、Al−(Mn、Fe)−Si系化合物およびAl−(Mn、Fe)系化合物による分散強化が小さくなることを防ぎ、所望のろう付後強度が得られなくなることを抑制することができる。
Feの含有量を0.5質量%以下とすることにより、鋳造時の晶出物が粗大化することを防ぎ、フィン材成形時の金型磨耗性が大きく低下することを抑制するとともに、所望のろう付後強度が得られなくなることを抑制することができる。また、Feの含有量が0.5質量%を超える場合、鋳造時に粗大化した晶出物(金属間化合物)が腐食の起点となることで、フィン材の自己耐食性が低下するおそれがある。
Znの含有量が0.05質量%未満の場合、電位が貴となるため、所望の犠牲陽極効果が得られず、組み合わされるチューブの侵食深さが大きくなるおそれがある。
また、Znの含有量が5.0質量%を超える場合、電位が卑となり、フィン材単体の自己耐食性が低下するおそれがある。
Mn/Siが1.25未満の場合、Siのマトリクスへの固溶量が多くなり、フィン材の融点が低下するとともに、ろう付時にフィン材へのろう侵食性が大きくなるおそれがある。
Mn/Siが2.25を超える場合、Al−(Mn、Fe)−Si系化合物による分散強化が小さくなり、所望のろう付後強度が得られないおそれがある。
なお、本発明において、各元素の成分比とは、各元素の含有量(質量%)の比を表す。
Mn/Feの含有量が3.0未満の場合、Al−Fe系の粗大な金属間化合物の割合が増加し、所望のろう付後強度が得られないおそれがある。
Mn/Feの含有量が10.0を超える場合、Al−Mn系の粗大な金属間化合物の割合が増加し、所望のろう付後強度が得られないおそれがある。
(Mn+Fe)/Siが1.45未満の場合、Siのマトリクスへの固溶量が多くなり、融点が低下するとともに、ろう付時にフィン材へのろう侵食性が大きくなるおそれがある。
(Mn+Fe)/Siが2.80を超える場合、Al−(Mn、Fe)−Si系化合物による分散強化が小さくなり、所望のろう付後強度が得られないおそれがある。
これらの元素はフィン材の強度を高める作用を有する。これらの元素の含有量が前記範囲よりも小さい場合には、金属間化合物による分散強化および固溶強化の影響が小さく、ろう付後強度への寄与が小さくなる。また、これらの元素のうち、Zr、Cr、Sr、Tiの含有量が前記範囲を超える場合には、鋳造時の晶出物が粗大化し、製造性が低下する可能性がある。また、Cuの含有量が前記範囲を超える場合には、マトリクスへの固溶度が増加し、フィン材の融点が低下するとともに、自己耐食性が低下する可能性がある。
フィン材の導電率が46%IACS未満の場合、フィン材中の各添加元素の固溶度が高く、さらに約600℃のろう付熱処理により固溶度が増すため、各化合物による分散強化が小さくなり、ろう付後に所望の強度を得られない可能性がある。
ここで、フィン材の作製工程において、均質化処理を行う場合、処理温度を480℃以下、且つ、処理時間を10時間以下に設定するか、均質化処理そのものを行わないことが好ましい。均質化処理の処理温度および処理時間が前記範囲を超える場合、金属間化合物が粗大化し、所望のろう付後強度が得られないとともに、自己耐食性が低下する可能性がある。なお、この均質化処理は必要に応じて行われるものであり、行わなくても差し支えない。
図1は、本発明に係るフィン材が適用された熱交換器の一実施形態を示す概略斜視図である。図1に示す熱交換器10は、左右に配された一対のヘッダーパイプ11と、各ヘッダーパイプ11同士の間に、互いに平行に間隔を空けて架設された複数のチューブ12と、隣接するチューブ12同士の間に配設されたフィン材1とで構成されている。
以上のような構成の熱交換器10では、各ヘッダーパイプ11と各チューブ12の内部空間(冷媒通路)が冷媒を循環するので、この冷媒と外気との熱交換をフィン材1を介して行うようになっている。
(実施例1〜20)
表1に示す含有量で各元素を含有し、残部がAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金溶湯を鋳造して鋳塊を作製し、表2に示す条件で均質化処理を行い、その後、熱間圧延、冷間圧延を順次行い、板厚0.05mm、調質H14のフィン材を製造した。なお、熱間圧延および冷間圧延の条件は、一般的に用いられる条件を用いた。
フィン材の添加元素の含有量を本発明で規定した範囲から外れるように製造した例であり、フィン材の組成を表1に示すようにし、表2に示す条件で均質化処理を行ったこと以外は、実施例1〜20と同様にしてフィン材を得た。
均質化処理の条件を本発明で規定した範囲から外れるように製造した例であり、フィン材の組成を表1に示すようにし、表2に示す条件で均質化処理を行ったこと以外は、実施例1〜20と同様にしてフィン材を得た。
各実施例および各比較例で作製したフィン材について、次のようにして、導電率、Al−(Mn、Fe)−Si系金属間化合物の数密度(D1)、Al−(Mn、Fe)系金属間化合物の数密度(D2)、ろう付後の強度を測定するとともに、腐食試験、切断試験およびろう付試験を行った。結果を表2〜表4に示した。
各フィン材について、ダブルブリッジ法を用いて導電率を測定した。
2.円相当径0.01μm〜1μmのAl−(Mn、Fe)−Si系金属間化合物の数密度(D1)、及び円相当径0.01μm〜1μmのAl−(Mn、Fe)系金属間化合物の数密度(D2)
数密度は、供試フィンの断面を20000倍×50視野でFE−SEM(Field Emission-Scanning Electron Microscope)にて円相当径0.01μm〜1μmの金属間化合物を観察し、これらを二値化処理することで、Al−(Mn、Fe)−Si系金属間化合物の数密度(D1)、Al−(Mn、Fe)系金属間化合物の数密度(D2)および化合物比D1/D2を測定した。
各フィン材のコイルについて、幅32mmの条材にスリット加工し、得られた条材を用いて、高速プレス機(株式会社黒田製作所製)のエンドシャー(切断刃の材質:SKD6(硬度HRC50))による切断試験を実施した。試験条件は条材の送り速度200spm、5mmピッチで供試材の圧延垂直方向に切断した。評価は切断回数5万ショット後の切断片断面のバリ高さを測定し、バリ高さが50μm未満のものを非常に良好(◎)、50μm以上80μm未満のものを良好(○)、80μm以上のものは不良(×)とした。バリ高さが低いほど、耐金型磨耗性が良好であることを示す。
各フィン材にろう付処理(窒素雰囲気中、600℃、3分間)を施した後、引張試験を行うことにより、各フィン材の強度を測定した。フィン材はJIS5号引張試験片(幅25mm×長さ60mm)とし、これを試験片として用い、引張試験機として島津製作所社製:AG−GI 10kNを使用して、引張速度2mm/分で引張試験を行うことにより、ろう付後の引張強度(耐力:MPa)を測定した。引張強度140MPa以上で強度良好である。
各フィン材について、窒素ガス雰囲気中、600℃で3分間ろう付加熱した後、30mm×80mmの短冊状に切り出し、SST(塩水噴霧試験)を240時間実施した。評価は、腐食試験後にリン酸クロムにて腐食生成物を除去した後、腐食減量を測定することにより行った。腐食減量が4.0mg/cm2未満のものを「○」、4.0mg/cm2以上のものを「×」と判定した。
各フィン材とチューブを接合してなるコアについて、SST(塩水噴霧試験)を2000時間実施した。評価は、腐食試験後にリン酸クロムにて腐食生成物を除去した後、チューブに生じた最大侵食深さを測定することにより行った。
各フィン材について、それぞれ、コルゲート成形加工を行い、ろう材4343/芯材3003のクラッドチューブと組付けて、フッ化物系のフラックスを塗布した後、窒素ガス雰囲気中、600℃で3分間ろう付加熱した。
次に、ろう付接合された各フィン材を、チューブ材からカッター刃にて物理的に除去し、チューブ材表面に残存するフィン接合部跡を観察した。そして、未接合箇所(ろう付を行ったが接合部跡が残らなかった箇所)の数をカウントし、下記式に基づいて接合率を求めた。
接合率=(未接合箇所の数/全接合箇所の数)×100(%)
全接合箇所の数:ろう付を行った全箇所数
未接合箇所の数:ろう付を行ったが接合部跡が残らなかった箇所の数
また、ろう付接合された各フィン材の断面を観察し、フィン材にろう材が溶融拡散していないものをろう侵食性「○」、フィン材にろう材が溶融拡散していたものを「×」と判定した。
Siの含有量およびMn、Si、Feの元素比が本発明の所定範囲外の比較例3のフィン材は、ろう付後の強度が低くなっていた。また、Siの含有量が所定範囲よりも大きく、MnとSiの元素比が本発明の所定範囲外の比較例4のフィン材は、ろう侵食が生じていた。
Znの含有量が本発明の所定範囲よりも小さい比較例7のフィン材は、組み合わされたチューブの腐食深さが深くなっていた。また、Znの含有量が本発明の所定範囲よりも大きい比較例8のフィン材は、フィン材の耐食性が低くなっていた。
均質化処理の条件が本発明の所定範囲外の比較例11〜14のフィン材は、ろう付後の強度が低く、耐食性も低くなっていた。
Claims (4)
- Mn:1.5〜2.0質量%、Si:0.7〜1.3質量%、Fe:0.15〜0.5質量%、Zn:0.05〜5.0質量%を含有し、各元素の化学成分比が1.25≦Mn/Si≦2.25、3.0≦Mn/Fe≦10.0、且つ1.45≦(Mn+Fe)/Si≦2.80であり、残部がAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金によって構成され、
Alマトリクス中に存在する円相当径0.01μm〜1μmの範囲の金属間化合物に関して、Al−(Mn、Fe)−Si系化合物の数密度(D1)が1×103個/mm2以上存在し、且つ、Al−(Mn、Fe)−Si系化合物の数密度(D1)とAl−(Mn、Fe)系化合物の数密度(D2)との化合物比D1/D2が20〜250の範囲内であり、
ろう付前の導電率が46%IACS以上であり、
板厚が0.06mm以下であることを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金フィン材。 - さらに、Cu:0.01〜0.80質量%、Zr:0.05〜0.20質量%、Cr:0.05〜0.20質量%、Sr:0.01〜0.05質量%、Ti:0.05〜0.20質量%のうち、1種または2種以上含有することを特徴とする請求項1に記載の熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
- アルミニウム合金溶湯を鋳造する工程と、前記工程で得られた鋳塊を処理温度480℃以下且つ処理時間10時間以下で均質化処理する工程とを経て得られたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の熱交換器用アルミニウム合金フィン材を備えたことを特徴とする熱交換器。
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