JP2010094668A - アンモニア分解触媒およびその製造方法、ならびに、アンモニア処理方法 - Google Patents

アンモニア分解触媒およびその製造方法、ならびに、アンモニア処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】貴金属を用いることなく、低濃度から高濃度までの広範囲なアンモニア濃度域において、アンモニアを比較的低温で、かつ、高い空間速度で窒素と水素とに効率よく分解して高純度の水素を取得できる触媒およびその製造方法、ならびに、アンモニア処理方法を提供すること。
【解決手段】アンモニア分解触媒は、触媒活性成分が鉄族金属および金属酸化物を含有する。このアンモニア分解触媒は、鉄族金属の化合物を金属酸化物に担持させた後、前記化合物を還元処理して、前記鉄族金属を形成することにより製造される。このアンモニア分解触媒を用いて、アンモニアを含有するガスを処理すれば、前記アンモニアは窒素と水素とに分解される。
【選択図】なし

Description

本発明は、アンモニアを窒素と水素とに分解する触媒およびその製造方法、ならびに、この触媒を用いたアンモニア処理方法に関する。
アンモニアは、臭気性、特に刺激性の悪臭を有するので、ガス中に臭気閾値以上含まれる場合には、これを処理することが必要となる。そこで、従来から様々なアンモニア処理方法が検討されてきた。例えば、アンモニアを酸素と接触させて窒素と水とに酸化する方法、アンモニアを窒素と水素とに分解する方法などが提案されている。
例えば、特許文献1には、コークス炉から生じるアンモニアを窒素と水とに酸化するにあたり、例えば、白金−アルミナ触媒、マンガン−アルミナ触媒、コバルト−アルミナ触媒などを用いると共に、コークス炉から生じるアンモニアを窒素と水素とに分解するにあたり、例えば、鉄−アルミナ触媒、ニッケル−アルミナ触媒などを用いるアンモニア処理方法が開示されている。しかし、このアンモニア処理方法は、NOxが副生することが多いことから、新たにNOx処理設備が必要となるので、好ましくない。
また、特許文献2および3には、それぞれ、有機性廃棄物を処理する工程から生じるアンモニア、または、コークス炉から生じるアンモニアを、窒素と水素とに分解するにあたり、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニアなどの金属酸化物担体上にニッケルまたはニッケル酸化物を担持させ、さらにアルカリ土類金属およびランタノイド元素の少なくとも一方を金属または酸化物の形で添加した触媒を用いるアンモニア処理方法が開示されている。しかし、このアンモニア処理方法は、アンモニア分解率が低く、実用的ではない。
さらに、特許文献4には、コークス炉から生じるアンモニアを窒素と水素とに分解するにあたり、アルミナ担体上のルテニウムにアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩基性化合物を添加した触媒を用いるアンモニア処理方法が開示されている。このアンモニア処理方法は、従来の鉄−アルミナなどの触媒に比べて、より低温でアンモニアを分解できるという利点があるにもかかわらず、活性金属種として、希少貴金属であるルテニウムを用いているので、コスト面で大きな問題を抱えており、実用的ではない。
その他、アンモニアの分解によって回収された水素を燃料電池用の水素源として利用することが検討されているが、この場合は、高純度の水素を得ることが必要となる。これまでに提案されてきたアンモニア分解触媒を用いて、高純度の水素を得ようとすると、非常に高い反応温度が必要となり、あるいは、高価な触媒を多量に用いる必要があるという問題があった。
このような問題を解決するために、アンモニアを比較的低温(約400〜500℃)で分解できる触媒として、例えば、特許文献4には、鉄−セリア複合体が開示され、特許文献5には、ニッケル−酸化ランタン/アルミナ、ニッケル−イットリア/アルミナ、ニッケル−セリア/アルミナの3元系複合体が開示され、非特許文献1には、鉄−セリア/ジルコニアの3元系複合体が開示されている。
しかし、これらの触媒は、いずれも、処理ガスのアンモニア濃度が低い(具体的には、特許文献4は5体積%、特許文献5は50体積%)か、あるいは、アンモニアを基準とした空間速度が低い(具体的には、特許文献4は642h−1、特許文献5は1,000h−1、非特許文献1は430h−1)といった条件下で、アンモニア分解率を測定しているので、たとえ、アンモニア分解率が比較的低温で100%であるからと言っても、必ずしも触媒性能が高いわけではない。
このように、従来のアンモニア分解触媒は、いずれも、アンモニアを比較的低温で、かつ、高い空間速度で効率よく分解して高純度の水素を取得することはできないという問題があった。
特開昭64−56301号公報 特開2004−195454号公報 特開平1−119341号公報 特開2001−300314号公報 特開平2−198639号公報
舛田雅裕、外3名,「希土類酸化物−鉄系複合体のアンモニア分解特性」,第18回希土類討論会予稿集「希土類」,主催:日本希土類学会,開催日:2001年5月10〜11日,於中央大学,p.122−123
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、コスト面で実用上の問題がある貴金属を用いることなく、低濃度から高濃度までの広範囲なアンモニア濃度域において、アンモニアを比較的低温で、かつ、高い空間速度で窒素と水素とに効率よく分解して高純度の水素を取得できる触媒およびその製造方法、ならびに、アンモニア処理方法を提供することにある。
本発明者らは、種々検討の結果、鉄族金属を金属酸化物と組み合わせれば、アンモニアを比較的低温で、かつ、高い空間速度で窒素と水素とに効率よく分解して高純度の水素を取得できる触媒が得られることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、アンモニアを窒素と水素とに分解する触媒であって、触媒活性成分が鉄族金属および金属酸化物を含有することを特徴とするアンモニア分解触媒を提供する。本発明のアンモニア分解触媒において、前記金属酸化物は、セリア、ジルコニア、イットリア、酸化ランタン、アルミナ、マグネシア、酸化タングステンおよびチタニアよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、前記触媒活性成分は、さらに、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含有していてもよい。
また、本発明は、鉄族金属の化合物を金属酸化物に担持させた後、前記化合物を還元処理して、前記鉄族金属を形成することを特徴とするアンモニア分解触媒の製造方法を提供する。本発明によるアンモニア分解触媒の製造方法において、前記還元処理は、還元性ガスにより300〜800℃の温度で行うことが好ましい。
さらに、本発明は、上記のようなアンモニア分解触媒を用いて、アンモニアを含有するガスを処理して、前記アンモニアを窒素と水素とに分解して水素を取得することを特徴とするアンモニア処理方法を提供する。
本発明によれば、貴金属を用いることなく、低濃度から高濃度までの広範囲なアンモニア濃度域において、アンモニアを比較的低温で、かつ、高い空間速度で窒素と水素とに効率よく分解して高純度の水素を取得できる触媒、この触媒を簡便に製造する方法、ならびに、この触媒を用いて、アンモニアを窒素と水素とに分解して水素を取得する方法が提供される。
実験例11で製造された触媒11のX線回折パターンである。 実験例12で製造された触媒12のX線回折パターンである。 実験例25で製造された触媒25のX線回折パターンである。
≪アンモニア分解触媒≫
本発明のアンモニア分解触媒は、触媒活性成分が鉄族金属および金属酸化物を含有することを特徴とする。
鉄族金属としては、コバルト、ニッケルおよび鉄よりなる群から選択される少なくとも1種が用いられる。これらの鉄族金属のうち、コバルトおよびニッケルが好ましく、コバルトがより好ましい。
鉄族金属の出発原料としては、通常、触媒の原料として用いられるものである限り、特に限定されるものではないが、好ましくは、酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩などの無機化合物;酢酸塩、シュウ酸塩などの有機酸塩;アセチルアセトナト錯体、金属アルコキシドなどの有機金属錯体;などが挙げられる。
具体的には、コバルト源としては、例えば、酸化コバルト、水酸化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸アンモニウムコバルト、炭酸コバルト、酢酸コバルト、シュウ酸コバルト、クエン酸コバルト、安息香酸コバルト、2−エチルヘキシル酸コバルト、酸化リチウムコバルトなどが挙げられ、硝酸コバルトが好ましい。ニッケル源としては、例えば、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、酢酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、クエン酸ニッケル、安息香酸ニッケル、2−エチルヘキシル酸ニッケル、ビス(アセチルアセトナト)ニッケルなどが挙げられ、硝酸ニッケルが好ましい。鉄源としては、例えば、酸化鉄、水酸化鉄、硝酸鉄、硫酸鉄、炭酸鉄、酢酸鉄、シュウ酸鉄、クエン酸鉄、鉄メトキシドなどが挙げられ、硝酸鉄が好ましい。
鉄族金属は、触媒活性成分の必須成分であり、鉄族金属の含有量は、触媒活性成分100質量%に対して、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜80質量%である。
なお、鉄族金属には、その他の遷移金属(貴金属を除く)および/または典型金属を添加してもよい。その他の遷移金属としては、例えば、モリブデン、タングステン、バナジウム、クロム、マンガンなどが挙げられる。その他の典型金属としては、例えば、亜鉛、ガリウム、インジウム、スズなどが挙げられる。
その他の遷移金属および典型金属の出発原料としては、通常、触媒の原料として用いられるものである限り、特に限定されるものではないが、例えば、酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、有機金属錯体などが挙げられる。
金属酸化物としては、特に限定されるものではないが、セリア、ジルコニア、イットリア、酸化ランタン、アルミナ、マグネシア、酸化タングステンおよびチタニアよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、セリア、ジルコニア、イットリアおよび酸化ランタンよりなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。これらの金属酸化物のうち、2種類以上の金属酸化物としては、例えば、金属酸化物の混合物、複合酸化物、または、金属酸化物の固溶体を用いることができる。これらの金属酸化物のうち、セリア、ジルコニア、セリアとジルコニアとの固溶体(CeZrO)、セリアとイットリアとの固溶体(CeYO)、セリアと酸化ランタンとの固溶体(CeLaO)が好ましく、セリアとジルコニアとの固溶体(CeZrO)がより好ましい。
金属酸化物は、触媒活性成分の必須成分であり、金属酸化物の含有量は、触媒活性成分100質量%に対して、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは20〜90質量%である。
触媒活性成分は、鉄族金属および金属酸化物に加えて、さらに、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属(以下「添加成分」ということがある)を含有していてもよい。
アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどが挙げられる。これらのアルカリ金属のうち、カリウム、セシウムが好ましい。
アルカリ土類金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられる。これらのアルカリ土類金属のうち、ストロンチウム、バリウムが好ましい。
添加成分の出発原料としては、通常、触媒の原料として用いられるものである限り、特に限定されるものではないが、好ましくは、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩などが挙げられる。これらの化合物を溶解させた水溶液を調製し、この水溶液を触媒に含浸し、添加成分の出発原料を触媒に添加した後に、この添加成分の出発原料である化合物の分解処理を行うことが好ましい。分解処理としては、例えば、窒素気流下で昇温して分解する方法、水素気流下で昇温して分解する方法などが挙げられる。これらの分解処理のうち、水素気流下で昇温して分解する方法が好ましい。
添加成分の含有量は、触媒活性成分100質量%に対して、好ましくは0〜25質量%、より好ましくは0.2〜15質量%、さらに好ましくは0.4〜10質量%未満である。
触媒の耐熱性の観点から、触媒粒子の凝集を抑制することや触媒の表面積を高めることが有効であることは一般的に知られている。そこで、例えば、触媒粒子の凝集を抑制するために、金属酸化物に添加剤を加えることが考えられる。この場合には、金属酸化物および添加剤から互いに固溶しない組合せを選択することが有効である。例えば、金属酸化物として、セリアとジルコニアとの固溶体(CeZrO)を用いる場合には、この固溶体に固溶しない添加剤として、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、シリカやアルミナなどの金属酸化物の微粒子、カーボンブラックなどを添加することにより、触媒の使用時に触媒粒子の凝集が抑制されて触媒の耐熱性が向上する。
<物性>
本発明の触媒は、比表面積が好ましくは1〜300m/g、より好ましくは5〜260m/g、さらに好ましくは18〜200m/gである。なお、「比表面積」とは、例えば、全自動BET表面積測定装置(製品名「Marcsorb HM Model−1201」、株式会社マウンテック製)を用いて測定したBET比表面積を意味する。
本発明の触媒は、鉄族金属の結晶子サイズが好ましくは3〜200nm、より好ましくは5〜150nm、さらに好ましくは10〜100nmであり、金属酸化物の結晶子サイズが好ましくは2〜200nm、より好ましくは3〜100nm、さらに好ましくは4〜25nmである。結晶子サイズの測定は、X線回折測定の結果について、結晶構造の帰属を行い、最大強度を示すピークの半値幅から下記のシェラー式を用いて算出した。
Figure 2010094668
ここで、Kは形状ファクター(球状として0.9を代入)、λは測定X線波長(CuKα:0.154nm)、βは半値幅(rad)、θはブラッグ角(回折角2θの半分;deg)である。
<触媒の形状>
本発明の触媒は、触媒活性成分をそのまま触媒とするか、あるいは、従来公知の方法を用いて、触媒活性成分を担体に担持してもよい。担体としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリアなどの金属酸化物が挙げられる。
本発明の触媒は、従来公知の方法を用いて、所望の形状に成形して用いてもよい。触媒の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、粒状、球状、ペレット状、破砕状、サドル状、リング状、ハニカム状、モノリス状、網状、円柱状、円筒状などが挙げられる。
また、本発明の触媒は、構造体の表面に層状にコートして用いてもよい。構造体としては、特に限定されるものではないが、例えば、コージェライト、ムライト、炭化珪素、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリアなどのセラミックスからなる構造体;フェライト系ステンレスなどの金属からなる構造体;などが挙げられる。構造体の形状としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハニカム状、コルゲート状、網状、円柱状、円筒状などが挙げられる。
≪アンモニア分解触媒の製造方法≫
以下に、本発明のアンモニア分解触媒を製造する方法の好適な具体例を示すが、本発明の課題が達成される限り、下記の製造方法に限定されるものではない。
(1)鉄族金属の化合物の水溶液を金属酸化物に含浸し、乾燥させ、不活性ガスにより仮焼成した後、還元性ガスにより還元処理する方法;
(2)鉄族金属の化合物の水溶液を金属酸化物に含浸し、乾燥させ、水溶性の還元剤を用いて還元処理した後、濾過し、乾燥させる方法;
(3)添加成分を含有する水溶液を金属酸化物に添加し、乾燥させ、次いで、鉄族金属の化合物の水溶液を含浸し、乾燥させ、不活性ガスにより仮焼成した後、還元性ガスにより還元処理する方法;
(4)鉄族金属の化合物の水溶液を金属酸化物に含浸し、乾燥させ、さらに、鉄族金属の化合物の水溶液を金属酸化物に含浸し、乾燥させ、次いで、不活性ガスにより仮焼成した後、還元性ガスにより還元処理する方法;
(5)鉄族金属の化合物の水溶液を金属酸化物に含浸し、乾燥させ、不活性ガスにより仮焼成した後、還元性ガスにより還元処理し、添加成分を含有する水溶液を添加し、乾燥させ、再度、還元性ガスにより還元処理する方法;
(6)鉄族金属の化合物と、金属酸化物の前駆体となる水溶性金属塩とを含有する水溶液を、過剰量のアルカリ性水溶液(例えば、アンモニア水、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化カリウム水溶液など)に、撹拌しながら、滴下し、得られた固体生成物を濾過し、水洗して乾燥し、次いで、還元処理する方法;
(7)鉄族金属の化合物と、金属酸化物の前駆体となる水溶性金属塩とを含有する水溶液に、過剰量のアルカリ性水溶液(例えば、アンモニア水、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化カリウム水溶液など)を、攪拌しながら、滴下し、得られた固体生成物を濾過し、水洗して乾燥させ、次いで、還元処理する方法。
本発明によるアンモニア分解触媒の製造方法は、鉄族金属の化合物を還元処理して、前記鉄族金属を形成することを特徴とする。
還元処理は、鉄族金属の化合物を還元して鉄族金属を形成することができる限り、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、一酸化炭素、炭化水素、水素などの還元性ガスを用いる方法;ヒドラジン、リチウムアルミニウムハイドライド、テトラメチルボロハイドライドなどの還元剤を添加する方法;などが挙げられる。なお、還元性ガスを用いる場合は、その他のガス(例えば、窒素、二酸化炭素)により還元性ガスを希釈して用いることもできる。これらの方法のうち、還元性ガスとして水素を用いた還元処理が好ましい。
還元性ガスを用いる場合、好ましくは300〜800℃、より好ましくは400〜600℃の温度で加熱を行う。還元時間は、好ましくは0.5〜5時間、より好ましくは1〜3時間である。また、還元性ガスによる還元処理に先立ち、窒素、二酸化炭素などの不活性ガスを用いて、好ましくは200〜400℃の温度で、好ましくは1〜7時間、より好ましくは3〜6時間にわたり仮焼成することもできる。
還元処理を行うと、鉄族金属の化合物は、原理的には、原子価0の金属状態を示す鉄族金属に変換される。還元処理が不充分であると、鉄族金属の化合物が部分的にしか還元されず、触媒が低い活性しか示さない。しかし、このような場合であっても、アンモニア分解反応中に水素が発生することから、還元処理を行っている状態と同じ環境になるため、かかる反応を継続することにより、不充分に還元された部分の還元処理が進行して、原子価0の金属状態になり、触媒が高い活性を示すようになる。
≪アンモニア処理方法≫
本発明のアンモニア処理方法は、上記のようなアンモニア分解触媒を用いて、アンモニアを含有するガスを処理して、前記アンモニアを窒素と水素とに分解して水素を取得することを特徴とする。処理対象となる「アンモニアを含有するガス」としては、特に限定されるものではないが、アンモニアガスやアンモニア含有ガスだけでなく、尿素などのように熱分解によりアンモニアを生じる物質を含有するガスであってもよい。また、アンモニアを含有するガスは、触媒毒にならない程度であれば、他の成分を含有していてもよい。
触媒あたりの「アンモニアを含有するガス」の流量は、空間速度で、好ましくは1,000〜200,000h−1、より好ましくは2,000〜150,000h−1、さらに好ましくは3,000〜100,000h−1である。ここで、触媒あたりの「アンモニアを含有するガス」の流量とは、触媒を反応器に充填した際に触媒が占める体積あたりの単位時間あたりに触媒を通過する「アンモニアを含有するガス」の体積を意味する。
反応温度は、好ましくは180〜950℃、より好ましくは300〜900℃、さらに好ましくは400〜800℃である。反応圧力は、好ましくは0.002〜2MPa、より好ましくは0.004〜1MPaである。
本発明のアンモニア処理方法によれば、アンモニアを分解して得られた窒素および水素を、従来公知の方法を用いて、窒素と水素とに分離することにより、高純度の水素を取得することができる。
以下、実験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記の実験例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
なお、比表面積の測定には、全自動BET表面積測定装置(製品名「Marcsorb HM Model−1201」、株式会社マウンテック製)を用いた。また、X線回折測定および結晶子サイズの測定には、X線回折装置(製品名「X’Pert Pro MPD」、スペクトリス株式会社製)を用いた。X線源には、CuKα(0.154nm)を用い、測定条件として、X線出力45kV、40mA、ステップサイズ0.017°、スキャンステップ時間100秒、測定温度25℃であり、測定範囲は測定すべき鉄族金属および金属酸化物に応じて適宜選択して実施した。さらに、触媒組成の定量は、蛍光X線分析装置(製品名「RIX2000」、株式会社リガク製)による元素分析測定により行った。測定条件は、X線出力50kV、50mAであり、計算法はFP法(ファンダメンタル・パラメータ法)を用いた。
≪実験例1≫
120℃で一晩乾燥させたγ−アルミナ(Strem Chemicals Inc.製)9.01gに、硝酸ニッケル六水和物5.51gを蒸留水4.55gに溶解させた水溶液を滴下して混合した。この混合物を密閉して1時間静置した後、湯浴上で乾燥させた。この乾燥した混合物を、窒素気流下、350℃で5時間焼成した後、空気気流下、500℃で3時間焼成した。この焼成物を環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、450℃で5時間還元処理して、触媒1を得た。なお、触媒1のニッケル担持量は、11質量%であった。
≪実験例2≫
硝酸セシウム1.001gを蒸留水5.0476gに溶解させて水溶液1を得た。2.6787gの触媒1に、1.4768gの水溶液1を添加して混合した後、90℃で一晩乾燥させた。この乾燥した混合物に、再度、1.4804gの水溶液1を添加して混合した後、90℃で一晩乾燥させた。この乾燥した混合物を、窒素気流下、350℃で5時間焼成した後、空気気流下、500℃で3時間焼成した。この焼成物を環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、450℃で5時間還元処理して、触媒2を得た。
≪実験例3≫
硝酸セシウム2.0011gを蒸留水4.9936gに溶解させて水溶液2を得た。2.8595gの触媒1に、1.5130gの水溶液2を添加して混合した後、90℃で一晩乾燥させた。この乾燥した混合物に、再度、1.4367gの水溶液2を添加して混合した後、90℃で一晩乾燥させた。この乾燥した混合物を、窒素気流下、350℃で5時間焼成した後、空気気流下、500℃で3時間焼成した。この焼成物を環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、450℃で5時間還元処理して、触媒3を得た。
≪実験例4≫
120℃で一晩乾燥させたγ−アルミナ(Strem Chemicals Inc.製)10.00gに、硝酸ニッケル六水和物2.61gを蒸留水5.14gに溶解させた水溶液を滴下して混合した。この混合物を密閉して1時間静置した後、湯浴上で乾燥させた。この乾燥した混合物を、窒素気流下、350℃で5時間焼成した後、空気気流下、500℃で3時間焼成した。この焼成物を環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、450℃で5時間還元処理して、触媒4を得た。なお、触媒4のニッケル担持量は、5質量%であった。
≪実験例5≫
120℃で一晩乾燥させたγ−アルミナ(Strem Chemicals Inc.製)10.02gに、硝酸ニッケル六水和物12.39gを蒸留水5.00gに溶解させた水溶液を滴下して混合した。この混合物を密閉して1時間静置した後、湯浴上で乾燥させた。この乾燥した混合物を、窒素気流下、350℃で5時間焼成した後、空気気流下、500℃で3時間焼成した。この焼成物を環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、450℃で5時間還元処理して、触媒5を得た。なお、触媒5のニッケル担持量は、20質量%であった。
≪実験例6≫
γ−アルミナ(住友化学株式会社製)を950℃で10時間熱処理した後、粉砕し、120℃で一晩乾燥させた。この熱処理により、アルミナの結晶相は、γ相からκ相に転移していた。この熱処理アルミナ35gに、硝酸ニッケル六水和物17.34gを蒸留水28.0gに溶解させた水溶液を滴下して混合した。この混合物を湯浴上で乾燥後、環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、450℃で2時間還元処理して、触媒6を得た。なお、触媒6のニッケル担持量は、10質量%であった。
≪実験例7≫
実験例6において、硝酸ニッケル六水和物17.34gを硝酸コバルト六水和物17.28gに変更したこと以外は、実験例6と同様にして、触媒7を得た。
≪実験例8≫
γ−アルミナ(住友化学株式会社製)を950℃で10時間熱処理した後、粉砕し、120℃で一晩乾燥させた。この熱処理により、アルミナの結晶相は、γ相からκ相に転移していた。この熱処理アルミナ30gに、硝酸マグネシウム10.05gを蒸留水24.0gに溶解させた水溶液を滴下して混合した。この混合物を湯浴上で乾燥させた後、空気気流下、500℃で2時間焼成して、酸化マグネシウムが添加された熱処理アルミナを得た。この酸化マグネシウム添加熱処理アルミナ20gに、硝酸ニッケル六水和物6.7gを蒸留水16.0gに溶解させた水溶液を含浸して、酸化マグネシウム添加熱処理アルミナに硝酸ニッケル六水和物を均一に担持させた。この混合物を湯浴上で乾燥後、環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、450℃で2時間還元処理して、触媒8を得た。
≪実験例9≫
実験例8において、硝酸マグネシウム10.05gをメタタングステン酸アンモニウム水溶液(略称「MW−2」、日本無機化学工業株式会社製;酸化タングステンとして、50質量%含有)2.104gに変更したこと以外は、実験例8と同様にして、触媒9を得た。
≪実験例10≫
実験例6において、硝酸ニッケル六水和物17.34gを硫酸ニッケル六水和物6.61gに変更し、環状炉での10体積%水素ガスを用いた還元処理を行わなかったこと以外は、実験例6と同様にして、触媒10を得た。
≪実験例11≫
硝酸ニッケル六水和物34.89g、硝酸セリウム六水和物5.21gおよびオキシ硝酸ジルコニウム水溶液(商品名「ジルコゾールZN」、第一稀元素化学工業株式会社製;酸化ジルコニウムとして25質量%含有)5.91gを蒸留水500mLに添加して混合し、均一な水溶液を調製した。この水溶液を、攪拌している蒸留水500mLに水酸化カリウム88.6gを溶解させた水溶液に滴下して、沈殿物を生成させた。この沈殿物を濾過し、水洗した後、120℃で一晩乾燥させた。この乾燥した沈殿物を粉砕し、環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、600℃で1時間還元処理して、触媒11を得た。得られた触媒11のX線回折パターンを図1に示す。
≪実験例12≫
実験例11において、硝酸ニッケル六水和物34.89gを硝酸コバルト六水和物34.92gに変更したこと以外は、実験例11と同様にして、触媒12を得た。得られた触媒12のX線回折パターンを図2に示す。
≪実験例13≫
硝酸鉄九水和物48.48g、硝酸セリウム六水和物5.21gおよびオキシ硝酸ジルコニウム水溶液(商品名「ジルコゾールZN」、第一稀元素化学工業株式会社製;酸化ジルコニウムとして、25質量%含有)5.91gを蒸留水500mLに添加して混合し、均一な水溶液を調製した。この水溶液に25質量%アンモニア水88.9gを滴下して、沈殿物を生成させた。この沈殿物を濾過し、水洗した後、120℃で一晩乾燥させた。この乾燥した沈殿物を粉砕し、環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、600℃で1時間還元処理して、触媒13を得た。
≪実験例14≫
硝酸鉄九水和物48.48g、硝酸セリウム六水和物5.21gおよびオキシ硝酸ジルコニウム水溶液(商品名「ジルコゾールZN」、第一稀元素化学工業株式会社製;酸化ジルコニウムとして、25質量%含有)5.91gを蒸留水500mLに添加して混合し、均一な水溶液を調製した。この水溶液を25質量%アンモニア水600gに、撹拌下、滴下して、沈殿物を生成させた。この沈殿物を濾過し、水洗した後、120℃で一晩乾燥させた。この乾燥した沈殿物を粉砕し、環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、600℃で1時間還元処理して、触媒14を得た。
≪実験例15≫
硝酸鉄九水和物20.20g、硝酸ニッケル六水和物14.54g、硝酸セリウム六水和物4.34gおよびオキシ硝酸ジルコニウム水溶液(商品名「ジルコゾールZN」、第一稀元素化学工業株式会社製;酸化ジルコニウムとして25質量%含有)4.93gを蒸留水500mLに添加して混合し、均一な水溶液を調製した。この水溶液を、攪拌している蒸留水500mLに水酸化カリウム87.9gを溶解させた水溶液に滴下して、沈殿物を生成させた。この沈殿物を濾過し、水洗した後、120℃で一晩乾燥させた。この乾燥した沈殿物を粉砕し、環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、600℃で1時間還元処理して、触媒15を得た。
≪実験例16≫
硝酸コバルト六水和物32.17g、硝酸亜鉛六水和物0.33g、硝酸セリウム六水和物4.87gおよびオキシ硝酸ジルコニウム水溶液(商品名「ジルコゾールZN」、第一稀元素化学工業株式会社製;酸化ジルコニウムとして、25質量%含有)5.42gを蒸留水640mLに添加して混合し、均一な水溶液を調製した。この水溶液を、攪拌している蒸留水640mLに水酸化カリウム112.7gを溶解させた水溶液に滴下して、沈殿物を生成させた。この沈殿物を濾過し、水洗した後、120℃で一晩乾燥させた。この乾燥した沈殿物を粉砕し、環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、600℃で1時間還元処理して、触媒16を得た。
≪実験例17≫
硝酸コバルト六水和物34.92g、硝酸セリウム六水和物5.21gおよび硝酸イットリウム六水和物4.60gを、蒸留水500mLに添加して混合し、均一な水溶液を調製した。この水溶液を、攪拌している蒸留水500mLに水酸化カリウム87.5gを溶解させた水溶液に滴下して、沈殿物を生成させた。この沈殿物を濾過し、水洗した後、120℃で一晩乾燥させた。この乾燥した沈殿物を粉砕し、環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、600℃で1時間還元処理して、触媒17を得た。
≪実験例18≫
実験例17において、硝酸イットリウム六水和物4.60gを硝酸ランタン六水和物5.20gに変更したこと以外は、実験例17と同様にして、触媒18を得た。
≪実験例19≫
硝酸コバルト六水和物34.92g、硝酸セリウム六水和物17.4gおよびオキシ硝酸ジルコニウム水溶液(商品名「ジルコゾールZN」、第一稀元素化学工業株式会社製:酸化ジルコニウムとして、25質量%含有)19.8gを蒸留水500mLに添加して混合し、均一な水溶液を調製した。この水溶液を、攪拌している蒸留水500mLに水酸化カリウム138gを溶解させた水溶液に滴下して、沈殿物を生成させた。この沈殿物を濾過し、水洗した後、120℃で一晩乾燥させた。この乾燥した沈殿物を粉砕し、環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、600℃で1時間還元処理して、触媒19を得た。
≪実験例20≫
硝酸コバルト六水和物34.92g、硝酸セリウム六水和物2.60gおよびオキシ硝酸ジルコニウム水溶液(商品名「ジルコゾールZN」、第一稀元素化学工業株式会社製:酸化ジルコニウムとして、25質量%含有)2.95gを蒸留水500mLに添加して混合し、均一な水溶液を調製した。この水溶液を、攪拌している蒸留水500mLに水酸化カリウム77.9gを溶解させた水溶液に滴下して、沈殿物を生成させた。この沈殿物を濾過し、水洗した後、120℃で一晩乾燥させた。この乾燥した沈殿物を粉砕し、環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、600℃で1時間還元処理して、触媒20を得た。
≪実験例21≫
硝酸コバルト六水和物29.1gおよびオキシ硝酸ジルコニウム水溶液(商品名「ジルコゾールZN」、第一稀元素化学工業株式会社製:酸化ジルコニウムとして、25質量%含有)9.86gを蒸留水500mLに添加して混合し、均一な水溶液を調製した。この水溶液を、攪拌している蒸留水500mLに水酸化カリウム75.0gを溶解させた水溶液に滴下して、沈殿物を生成させた。この沈殿物を濾過し、水洗した後、120℃で一晩乾燥させた。この乾燥した沈殿物を粉砕し、環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、600℃で1時間還元処理して、触媒21を得た。
≪実験例22≫
硝酸コバルト六水和物34.92g、硝酸セリウム六水和物1.74gおよびオキシ硝酸ジルコニウム水溶液(商品名「ジルコゾールZN」、第一稀元素化学工業株式会社製:酸化ジルコニウムとして、25質量%含有)9.86gを蒸留水500mLに添加して混合し、均一な水溶液を調製した。この水溶液を、攪拌している蒸留水500mLに水酸化カリウム45.0gを溶解させた水溶液に滴下して、沈殿物を生成させた。この沈殿物を濾過し、水洗した後、120℃で一晩乾燥させた。この乾燥した沈殿物を粉砕し、環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、600℃で1時間還元処理して、触媒22を得た。
≪実験例23≫
硝酸コバルト六水和物29.1gおよび硝酸セリウム六水和物8.68gを蒸留水500mLに添加混合して、均一な水溶液を調製した。この水溶液を、攪拌している蒸留水500mLに水酸化カリウム73.0gを溶解させた水溶液に滴下して、沈殿物を生成させた。この沈殿物を濾過し、水洗した後、120℃で一晩乾燥させた。この乾燥した沈殿物を粉砕し、環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、600℃で1時間還元処理して、触媒23を得た。
≪実験例24≫
蒸留水20mLに硝酸セシウム0.0295gを溶解させた水溶液に、実験例12で調製した4gの触媒12を加え、湯浴上で加熱して乾固させ、触媒12に硝酸セシウムを含浸させた。この含浸物を120℃で一晩乾燥させた。この乾燥した含浸物を粉砕し、環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、600℃で1時間還元処理して、触媒24を得た。
≪実験例25≫
実験例24において、硝酸セシウム0.0295gを硝酸セシウム0.0593gに変更したこと以外は、実験例24と同様にして、触媒25を得た。得られた触媒25のX線回折パターンを図3に示す。
≪実験例26≫
実験例24において、硝酸セシウム0.0295gを硝酸セシウム0.12gに変更したこと以外は、実験例24と同様にして、触媒26を得た。
≪実験例27≫
実験例24において、硝酸セシウム0.0295gを硝酸セシウム0.244gに変更したこと以外は、実験例24と同様にして、触媒27を得た。
≪実験例28≫
実験例24において、硝酸セシウム0.0295gを硝酸セシウム0.374gに変更したこと以外は、実験例24と同様にして、触媒28を得た。
≪実験例29≫
実験例24において、硝酸セシウム0.0295gを硝酸セシウム0.652gに変更したこと以外は、実験例24と同様にして、触媒29を得た。
≪実験例30≫
蒸留水20mLに硝酸セシウム0.0295gを溶解させた水溶液に、実験例11で調製した4gの触媒11を加え、湯浴中で加熱して乾固させ、触媒11に硝酸セシウムを含浸させた。この含浸物を120℃で一晩乾燥させた。この乾燥した含浸物を粉砕し、環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、600℃で1時間還元処理して、触媒30を得た。
≪実験例31≫
蒸留水20mLに硝酸カリウム0.052gを溶解させた水溶液に、実験例12で調製した4gの触媒12を加え、湯浴中で加熱して乾固させ、触媒12に硝酸カリウムを含浸させた。この含浸物を120℃で一晩乾燥させた。この乾燥した含浸物を粉砕し、環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、600℃で1時間還元処理して、触媒31を得た。
≪実験例32≫
実験例31において、硝酸カリウム0.052gを硝酸カリウム0.104gに変更したこと以外は、実験例31と同様にして、触媒32を得た。
≪実験例33≫
実験例31において、硝酸カリウム0.052gを硝酸カリウム0.211gに変更したこと以外は、実験例31と同様にして、触媒33を得た。
≪実験例34≫
蒸留水20mLに硝酸バリウム0.077gを溶解させた水溶液に、実験例12で調製した4gの触媒12を加え、湯浴中で加熱して乾固させ、触媒12に硝酸バリウムを含浸させた。この含浸物を120℃で一晩乾燥させた。この乾燥した含浸物を粉砕し、環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、600℃で1時間還元処理して、触媒34を得た。
≪実験例35≫
実験例34において、硝酸バリウム0.077gを硝酸バリウム0.155gに変更したこと以外は、実験例34と同様にして、触媒35を得た。
≪実験例36≫
実験例34において、硝酸バリウム0.077gを硝酸バリウム0.846gに変更したこと以外は、実験例34と同様にして、触媒36を得た。
≪実験例37≫
蒸留水20mLに硝酸ストロンチウム0.127gを溶解させた水溶液に、実験例12で調製した4gの触媒12を加え、湯浴中で加熱して乾固させ、触媒12に硝酸ストロンチウムを含浸させた。この含浸物を120℃で一晩乾燥させた。この乾燥した含浸物を粉砕し、環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、600℃で1時間還元処理して、触媒37を得た。
≪実験例38≫
蒸留水20mLに硝酸セシウム0.0593gを溶解させた水溶液に、実験例13で調製した4gの触媒13を加え、湯浴中で加熱して乾固させ、触媒13に硝酸セシウムを含浸させた。この含浸物を120℃で一晩乾燥させた。この乾燥した含浸物を粉砕し、環状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて、600℃で1時間還元処理して、触媒38を得た。
≪アンモニア分解触媒の物性測定≫
実験例1〜38で得られた触媒1〜38について、触媒組成の定量、比表面積および結晶子サイズの測定を行った。結果を表1に示す。
Figure 2010094668
≪アンモニア分解反応≫
実験例1〜38で得られた触媒1〜38、および、純度99.9体積%以上のアンモニアを用いて、アンモニア分解反応を行い、アンモニアを窒素と水素とに分解した。
なお、アンモニア分解率は、アンモニアの空間速度6,000hr−1、反応温度400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、または、700℃、反応圧力0.101325MPa(常圧)の条件下で測定した(下記式により算出した)。その結果を表1に示す。
Figure 2010094668
Figure 2010094668
表2から明らかなように、触媒1〜38は、一部の例外を除いて、純度99.9体積%以上という高濃度のアンモニアを、400〜600℃という比較的低温で、かつ、6,000h−1という高い空間速度で効率よく窒素と水素とに分解することができる。また、触媒11、12および15〜37は、鉄族金属であるコバルトまたはニッケル、および、金属酸化物であるセリア、ジルコニア、セリアとジルコニアとの固溶体、セリアとイットリアとの固溶体またはセリアと酸化ランタンとの固溶体を含有するので、アンモニア分解率が比較的高い。さらに、触媒24〜29、触媒31〜33および触媒34〜36を比較すると、鉄族金属であるコバルトおよび金属酸化物であるセリアとジルコニアとの固溶体に添加成分であるセシウム、カリウムまたはバリウムを適切な量(具体的には、セシウムの場合は、2〜4質量%、カリウムの場合は、約1質量%、バリウムの場合は、約2質量%)で添加すれば、アンモニア分解率が向上することがわかる。しかも、触媒13〜14および触媒38を比較すると、鉄族金属である鉄および金属酸化物であるセリアとジルコニアとの固溶体に添加成分であるセシウムを適切な量(具体的には、1質量%)で添加すれば、アンモニア分解率が向上することがわかる。
本発明は、アンモニアの分解に関するものであり、アンモニアを含有するガスを処理して無臭化する環境分野や、アンモニアを窒素と水素とに分解して水素を取得するエネルギー分野などにおいて、多大の貢献をなすものである。

Claims (6)

  1. アンモニアを窒素と水素とに分解する触媒であって、触媒活性成分が鉄族金属および金属酸化物を含有することを特徴とするアンモニア分解触媒。
  2. 前記金属酸化物が、セリア、ジルコニア、イットリア、酸化ランタン、アルミナ、マグネシア、酸化タングステンおよびチタニアよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のアンモニア分解触媒。
  3. 前記触媒活性成分が、さらに、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含有する請求項1または2に記載のアンモニア分解触媒。
  4. 鉄族金属の化合物を金属酸化物に担持させた後、前記化合物を還元処理して、前記鉄族金属を形成することを特徴とするアンモニア分解触媒の製造方法。
  5. 前記還元処理を還元性ガスにより300〜800℃の温度で行う請求項4に記載のアンモニア分解触媒の製造方法。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のアンモニア分解触媒を用いて、アンモニアを含有するガスを処理して、前記アンモニアを窒素と水素とに分解して水素を取得することを特徴とするアンモニア処理方法。
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