本発明を図面に基づいて詳しく説明する。
[実施例1]
(1)画像形成装置例
図15は本発明に係る像加熱装置を定着装置として搭載する画像形成装置の一例の概略構成図である。本実施例1の画像形成装置は転写式電子写真プロセス利用のレーザープリンタである。
本実施例1に示す画像形成装置は、記録材の幅方向(記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向)のほぼ中心を基準として記録材を搬送する中央搬送基準を採用している。
1は像担持体としての感光ドラムであり、OPC、アモルファスSe、アモルファスSi等の感光材料がアルミニウムやニッケルなどのシリンダ状の基盤上に形成されている。
感光ドラム1は矢印の時計方向に所定の周速度をもって回転駆動され、まず、その表面は帯電装置としての帯電ローラ2によって所定の極性・電位に一様帯電される。
次に、その一様帯電処理面に対して、レーザスキャナ3により、画像情報に応じてON/OFF制御されたレーザビームによる走査露光Lが施され、静電潜像が形成される。
この静電潜像は、現像装置4でトナー画像として現像、可視化される。現像方法としては、ジャンピング現像法、2成分現像法などが用いられ、イメージ露光と反転現像とを組み合わせて用いられることが多い。
可視化されたトナー画像は、転写装置としての転写ローラ5により、所定のタイミングで搬送された記録材P上に感光ドラム1上より転写される。
ここで、感光ドラム1上のトナー画像の画像形成位置と記録材Pの先端の書き出し位置が合致するようにセンサ8にて記録材Pの先端を検知し、タイミングを合わせている。所定のタイミングで搬送された記録材Pは感光ドラム1と転写ローラ5間で挟持搬送される。
このトナー画像が転写された記録材Pは像加熱装置としての定着装置6へと搬送され、トナー画像は記録材P上に加熱定着される。
一方、感光ドラム1上に残存する転写残りの残留トナーは、クリーニング装置7により感光ドラム1表面より除去される。これにより感光ドラム1は再度の画像形成に供される。
(2)定着装置
以下の説明において、定着装置及びその定着装置を構成する部材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向である。短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向である。長手サイズとは長手方向の寸法である。幅とは短手方向の寸法である。
図1は本実施例1に係る定着装置6の一例の横断面模式図である。図2は本実施例1に係る定着装置6を記録材導入側から見た図である。図3はヒータ11の一例の構成模式図であって、(a)はヒータ11の基板裏面側の構成模式図、(b)はヒータ11の基板表面側の構成模式図である。
10は加熱部材としての定着部材(加熱アセンブリ)である。20は加圧部材としての加圧ローラである。この定着部材10と加圧ローラ20を加圧した状態に接触させることによりニップ部としての定着ニップ部Nを形成させている。
定着部材10は、発熱体としてのヒータ11と、保持部材としてのフィルムガイド12と、加熱回転体としての定着フィルム13と、規制部材としての不図示の端部フランジ(以下、定着フランジと記す)などを有する。ヒータ11はフィルムガイド12の下面に固定して配置してある。定着フィルム13はフィルムガイド12に対して外嵌させて配置してある。定着フランジは、フィルムガイド12の長手方向両端部側で定着装置の装置フレーム(不図示)に装着され、ヒータ11の長手方向端部を保持する。またその定着フランジは、定着フィルム13の長手方向端部を保持するとともに定着フィルム13が長手方向に移動しないように定着フィルム13の長手方向端部を規制する。
そして、その定着フランジを加圧バネ(不図示)により所定の加圧力をもって加圧ローラ20側に加圧し、定着フィルム13の外周面をヒータ11を介して加圧ローラ20の外周面に接触させている。これにより加圧ローラ20の有する後述の弾性層202を弾性変形させて定着フィルム13外周面と加圧ローラ20外周面との間に所定幅の定着ニップ部(ニップ部)Nを形成している。
加圧ローラ20の回転駆動に伴い定着ニップ部Nにおける加圧ローラ20外周面と定着フィルム13外周面との摩擦力で定着フィルム13に回転力が作用する。これによりその定着フィルム13は、定着フィルム13の内周面がヒータ11の下面に摺動しながらフィルムガイド12の外回りを加圧ローラ20の回転に追従して回転する。
定着フィルム13はヒータ11及びフィルムガイド12に接触しながら回転するため、ヒータ11と定着フィルム13との間、及びフィルムガイド12と定着フィルム13との間の摩擦抵抗を小さく抑える必要がある。そこで、ヒータ11及びフィルムガイド12の表面に耐熱性グリース等の潤滑剤を少量介在させてある。
ヒータ11、フィルムガイド12、定着フィルム13、及び加圧ローラ20について更に詳しく説明する。
a)ヒータ11の構成
ヒータ11は、例えば、アルミナ(酸化アルミ)、AlN(窒化アルミ)等の高絶縁性の細長いセラミックス基板111や、ポリイミド、PPS、液晶ポリマー等の耐熱性樹脂基板111を有する。そしてこの基板111の裏面(加圧ローラ20と反対側の面)に通電発熱抵抗層として、例えばAg/Pd(銀パラジウム)、RuO2、Ta2N等の発熱ペースト層112を基板111の長手方向に沿って印刷して形成している。また発熱ペースト層112の保護と、発熱ペースト層112と定着フィルム10との絶縁性を確保するために、基板111裏面に発熱ペースト層112を覆うように保護層としてのガラスコート層113を形成している。115は基板111裏面に発熱ペースト層112と連続するように設けられている電極部である。
また基板111裏面には、発熱ペースト層112の発熱に応じて昇温したヒータ11の温度を検知するためのサーミスタ等の温度検知素子14が配置されている。ヒータ11の温度を制御する温度制御部(温度制御手段)CはCPUとRAMやROMなどのメモリからなっており、メモリにはヒータ11の温度制御に必要な各種の温調プログラムが記憶されている。
基板111の表面(加圧ローラ20側の面)には、定着フィルム13内周面(内面)との摺擦に耐えられるように薄層のガラスコート、フッ素樹脂層、ポリイミド層等の保護層114を基板111の長手方向に沿って形成している。本実施例1では保護層114としてポリイミド層を使用している。
本実施例1では、基板111の材料として熱伝導性の良好なAlNを用いている。そのため、発熱ペースト層112とガラスコート層113を基板111に対して、定着ニップ部Nと反対側に形成している。基板111裏面上の発熱ペースト層112への給電は、基板111の長手方向両端部において発熱ペースト層112と電気的に接続される給電用のコネクタ15に対し電源AC(図3)から給電を行なうことにより為される。
b)フィルムガイド12の構成
フィルムガイド12は、横断面略樋型形状に形成され(図1参照)、上述のヒータ11を保持する機能と、定着フィルム10の回転をガイドする機能の他に、定着ニップ部Nと反対方向への放熱を防ぐ断熱機能等を有する。このフィルムガイド12は、剛性・耐熱性・断熱性の部材であり、液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEK等の材料により形成される。本実施例1では、フィルムガイド12の材料として液晶ポリマーを使用している。
c)定着フィルム13の構成
定着フィルム13は、小熱容量で可撓性を有するエンドレスベルトからなる基層131と、この基層131を覆うように基層131の外周面上に設けられた弾性を有する弾性層132の、少なくとも2つの層から構成される。
基層131は、クイックスタートを可能にするために膜厚は200μm以下の厚みで耐熱性、高熱伝導性を有するステンレス、Al、Ni、Cu、Zn等の金属部材を単独、あるいは合金部材からなり、可撓性も有している。一方で、長寿命の定着装置6を構成するために充分な強度を持ち、耐久性に優れた基層131として、膜厚は20μm以上の厚みが必要である。ヒータ11と接触する基層131の内周面(内面)に、潤滑性の高いフッ素樹脂層、ポリイミド層、ポリアミドイミド層等を形成してあっても良い。
また、基層131はポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES等の可撓性を有する耐熱性樹脂であっても良い。樹脂製の基層131の場合には、BN、アルミナ、Al等の高熱伝導性粉末を混入してあっても良い。膜厚は金属製の場合と同様に、20μm以上200μm以下の厚みが必要である。
弾性層132は、高画質化やカラー化対応として、トナーの定着性を充分に満足し、かつ定着ムラも防止するよう、記録材P上の未定着のトナー画像Tに対し、熱を包み込むように伝達させるため、シリコーンゴム等からなる耐熱性の弾性体からなる。熱の包み込み効果による高画質化やカラー化対応のために、膜厚は50μm以上の厚みが必要である。一方で、クイックスタートを可能にするために、膜厚は500μm以下の厚みが必要である。また、熱伝導率を向上させるために、熱伝導性フィラー等の添加材を含有しても良い。
さらに、離型性と耐磨耗性を向上させるため、弾性層132を覆うようにPFA、PTFE、FEP、ETFE、CTFE、PVDF等の離型層133を形成してあってもよい(図4、図5参照)。
d)加圧ローラ20の構成
加圧ローラ20は、図3及び図4に示すように、ステンレス、SUM、Al等の金属製の芯金201と、芯金201の外周面上にシリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱ゴムあるいはシリコーンゴムを発泡して形成された弾性層202と、を有する。さらに、離型性と耐磨耗性を向上させるため、弾性層202を覆うようにPFA、PTFE、FEP等の離型層203を形成してあってもよい。本実施例1では、芯金201としてAIを、弾性層202としてシリコーンゴムを、離型層203としてPFAを、それぞれ用いてなる加圧ローラ20を使用している。この加圧ローラ20は、定着部材10の下方において定着フィルム13と平行になるように芯金201の長手方向両端部が装置フレームに回転自在に保持されている。
e)定着装置の加熱定着動作
加圧ローラ20が回転し、その加圧ローラ20の回転により定着フィルム13が回転する。そして電源ACからのヒータ11の発熱ペースト層112への給電(通電)により発熱ペースト層112が発熱しヒータ11は急速昇温して定着フィルム13を加熱する。ヒータ11の昇温とともに定着フィルム13内周面温度も上昇し、それに伴い定着フィルム13表面温度も上昇していく。その際、温度制御部Cは温度検知素子14からの出力信号を取り込み、その出力信号に基づいて電極部115から発熱ペースト112に印加する電圧のデューティー比や波数等を適切に制御することで、定着ニップ部Nの温度を所定の温度(目標温度)に維持する。
加圧ローラ20及び定着フィルム13の回転が安定し、かつ定着ニップ部Nの温度が所定の温度に維持された状態で、未定着のトナー画像Tを担持した記録材Pが定着ニップ部Nに通紙(導入)される。その記録材Pは定着ニップ部Nで加圧ローラ20外周面と定着フィルム13外周面とにより挟持搬送される。その搬送過程において記録材P上のトナー画像Tには定着フィルム13熱と定着ニップ部Nの圧力が加えられ、その熱と圧力によってトナー画像Tは記録材P上に加熱定着される。定着ニップ部Nを出た記録材Pは定着装置6から排出される。
(3)ヒータ11、定着フィルム13及び加圧ローラ20の長手方向の端部構成
図4は本実施例1に係る定着装置6の記録材Pに対する定着フィルム13と加圧ローラ20の長手方向の位置関係を表わす説明図である。図5の(a)は本実施例1に係る定着装置6の定着フィルム13と加圧ローラ20とヒータ11それぞれの長手方向端部と記録材Pとの位置関係を表わす断面図である。図5の(b)は本実施例1に係る定着装置6の記録材Pの連続通紙時におけるヒータ11の長手方向端部の温度分布図である。
本実施例1の定着装置6は、記録材の幅方向中央を定着フィルム13及び加圧ローラ20の長手方向中央の搬送基準Sに一致させた状態で各種サイズの記録材Pを定着ニップ部Nに導入するものである。そのため、連続プリント中の定着装置6における記録材Pの非搬送領域の昇温は、加圧ローラ20及び定着フィルム40の長手方向両端部近傍に発生する。図示していなが、図5の(a)と反対側の定着フィルム13と加圧ローラ20とヒータ11それぞれの長手方向端部と記録材Pとの位置関係は図5の(a)と同じである。
ヒータ11の長手方向の端部領域における熱不足の解消と異常昇温の抑制とを両立させるためには、定着フィルム13の端部領域から加圧ローラ20に熱を逃がすことが有効である。以下にその構成を説明する。
本実施例1では、定着装置6が冷えた状態からプリントを開始した時の記録材端部近傍の定着性能改善のため、ヒータ11の発熱ペースト層112の長手サイズを記録材Pの最大搬送幅WcよりもWh分長くしている(図5(a)参照)。
定着フィルム13は、定着フィルム13の長手方向両端部に基層領域Weを有する(図4、図5(a)参照)。この基層領域Weは、基層131の外周上に弾性層132が設けられておらず基層131が露出している領域である。一方、定着フィルム13の長手方向において基層領域We・We間には、記録材Pの最大搬送幅Wcよりも広い領域に亘って少なくとも弾性層132が設けられている(図4、図5(a)参照)。本実施例1では、弾性層132の長手サイズはヒータ11の発熱ペースト層(発熱領域)112の長手サイズと略同一としている。そしてその弾性層132の外周に離型層133が設けられている。弾性層132の長手サイズは、少なくとも記録材Pの最大搬送幅Wcよりも広く、かつ定着フィルム13の長手方向両端の内側に基層領域Weを形成することができれば、発熱ペースト層112との位置関係は問わない。しかし、定着装置6が冷えた状態からプリントを開始した時の記録材端部近傍の定着性能改善と後述する記録材Pの非通紙領域の昇温抑制とを両立させるためには、弾性層132と発熱ペースト層112の長手サイズを略同一とした方が好ましい。従って定着フィルム13は、定着フィルム13の長手方向において、基層領域Weと発熱ペースト112の延長領域Whと対向している対向端部領域Wdとを加算した領域を、記録材Pを搬送しない非搬送領域(記録材非搬送領域)Waとして備えている。そしてその非搬送領域Wa・Wa間を、記録材Pを搬送するための搬送領域(記録材搬送領域)Wbとしている。
上述の構成の定着フィルム13は、図4に示すように、記録材Pと対向する長手方向中央の搬送領域Wbの外径Dgに比べて、長手方向両端部の基層領域Weの外径Dsの方が小さくなる。また、定着フィルム13は、長手方向中央の搬送領域Wbに少なくとも弾性層132を有しているのに対し、長手方向両端の内側の基層領域Weに基層131のみを有している。そのため、定着フィルム13の内周面(内面)から外周面(外面)間の厚さ方向の熱伝導率としては、長手方向中央の搬送領域Wbの熱伝導率λcに比べて長手方向両端の内側の基層領域Weの熱伝導率λeを高くすることができる。本実施例1では、基層131として厚さ35μmのステンレスを、弾性層132として厚さ200μmの良熱伝導性シリコーンゴムを、離型層133として厚さ14μmのPFA樹脂を、それぞれ用いた定着フィルム13を使用している。材料としての熱伝導率はステンレスが約15W/m・K、良熱伝導性シリコーンゴムが約1.2W/m・K、PFAが約0.2W/m・Kである。
そこで、定着フィルム13の内周面から外周面間の厚さ方向の熱伝導率を実測したところ、基層131のみの基層領域Weの熱伝導率λeは15W/m・Kであった。一方、基層131に加えて弾性層132と離型層133も備える搬送領域Wbの熱伝導率λcは2.4W/m・Kであった。従って基層領域Weの熱伝導率λeは搬送領域Wbの熱伝導率λcよりも6倍程度高かった。すなわち、定着フィルム13外周面からその定着フィルム13外周面と対向する加圧ローラ20外周面へ熱を逃がす経路として、搬送領域Wbの熱伝導率λcに比べて基層領域Weの熱伝導率λcが高くなるように設定した。
定着フィルム13を介してヒータ11と所定幅の定着ニップN部を形成している加圧ローラ20の弾性層202の長手サイズは、定着フィルム13の弾性層132の長手サイズよりも長く、基層131の長手サイズよりも短い。この加圧ローラ20は、加圧ローラ20の長手方向において、定着フィルム13の弾性層132と対向する領域よりも外側の端部領域を、定着フィルム13の基層領域Weと接触する接触端部領域Wrとして備えている。そしてその接触端部領域Wrと発熱ペースト112の延長領域Whと対向している対向領域Wsとを加算した領域を、記録材Pを搬送しない非搬送領域(記録材非搬送領域)Wtとしている。そしてその非搬送領域Wt・Wt間を、記録材Pを搬送するための搬送領域(記録材搬送領域)Wuとしている。従って加圧ローラ20は、加圧ローラ20の非搬送領域Wtが定着フィルム13の非搬送領域Waと、搬送領域Wuが定着フィルム13の搬送領域Wbと、それぞれ接触している(図2参照)。
ところで、定着フィルム13の基層領域Weは搬送領域Wbよりも外径が小さい。そのため、定着ニップ部Nを形成するために、定着フィルム13と加圧ローラ20を接触させると、図2に示すように、定着フィルム13及び加圧ローラ20の外周面上の非搬送領域Wa・Wtと搬送領域Wb・Wuとの境界部分に段差Bが生じる。しかし、その段差Bを形成しているのが主に厚さ500μm以下の定着フィルム13の弾性層132であり、かつその弾性層132と対向するのも加圧ローラ20の弾性層202である。そのため、ヒータ11の下面に各々の弾性層132・202が倣って撓むことから、段差B部分で定着ニップNの幅が極端に狭くなることはなく、定着フィルム13の回転に支障を来たすことは無い。
本実施例1の定着装置6は、定着フィルム13の非搬送領域Waの基層領域Weには徐々に熱量を蓄積する弾性層132を有していない。そして搬送領域Waの弾性層132に比べて熱伝導性の大きい基層領域Weの基層131を加圧ローラ20外周面と接触させることによって熱を逃がす経路が形成されている。そのため、連続プリントによって生ずる非搬送領域の昇温を抑えることができる。一方、定着装置6が冷えた状態からプリントを開始した時の記録材端部近傍の定着性能改善については、ヒータ11における発熱ペースト層112を記録材Pの最大搬送幅Wcよりヒータ11の長手方向両端部側でWh分長くすることで対応している。
(4)比較実験
a)非搬送領域の昇温
図4及び図5に示す本実施例1の定着装置と、比較例として図6及び図7に示す定着装置と、について記録材Pの非搬送領域の昇温について比較を行なった。なお、本実施例1と比較例の違いは定着装置に組み込まれている定着フィルムのみである。
図6は従来の定着装置の記録材Pに対する定着フィルム50と加圧ローラ20の長手方向の位置関係を表わす説明図である。図7の(a)は従来の定着装置の定着フィルム50と加圧ローラ20とヒータ11それぞれの長手方向端部と記録材Pとの位置関係を表わす断面図である。図7の(b)は従来の定着装置の記録材Pの連続通紙時におけるヒータ11の長手方向端部の温度分布図である。
比較例の定着フィルム50は、図6及び図7(a)に示すように、定着フィルム50の基層501全域に弾性層502及び離型層503を設けて基層501全域を覆っている。そのため、定着ニップ部Nにおいて加圧ローラ20の非搬送領域Wtと定着フィルム50の基層501が接触することは無い。その他の定着フィルム50の層構成や膜厚等は本実施例1の定着フィルム13と共通である。
記録材Pの非搬送領域の昇温は以下の方法を用いて測定した。最大搬送幅がA4/LTRサイズで、プリント速度がA4サイズで52PPMであるプリンターを用いて、23℃/50%RHの環境下で、坪量80gのA4サイズ紙を500枚連続プリントを行ない、その時のヒータ11の長手方向の温度分布を測定した。ヒータ11の温度分布は、定着ニップ部Nと反対側のヒータ表面に熱電対を貼り付けて測定した。
本実施例1の定着装置の500枚連続プリント時点におけるヒータ11の長手方向の温度分布を図5(b)に示す。そして比較例の定着装置の500枚連続プリント時点におけるヒータ11の長手方向の温度分布を図7(b)に示す。
ヒータ11の長手方向において、記録材Pの最大搬送幅Wcと対向する領域では、本実施例1及び比較例の定着装置ともほぼ一定の温度である。定着フィルム11の非搬送領域Waで、かつヒータ11の延長領域Whと対向する領域では、本実施例1及び比較例の定着装置とも昇温している。そして定着フィルム11の非搬送領域Waで、かつヒータ11の電極115が設けられている領域では、本実施例1及び比較例の定着装置ともコネクタ15側に向けて徐々に温度は低下する。
ここで、このようなヒータ11の温度分布における本実施例1の定着装置と比較例の定着装置との違いを、図8を参照して説明する。
図8は本実施例1の定着装置と比較例の定着装置のそれぞれのヒータ11の長手方向端部及びその近傍の温度分布を比較した説明図である。
図8において、実線にて示す本実施例1は、破線にて示す比較例に比べ、定着フィルム11の非搬送領域と対向するヒータ領域、及び搬送領域と対向するヒータ領域でも紙コバ付近の昇温が全域に渡って小さかった。本実施例1では、加圧ローラ20の非搬送領域Wtは定着フィルム13の非搬送領域Waの基層領域Wrと接触している。すなわち、本実施例1では、定着フィルム13の基層131から加圧ローラ20に向けて熱を逃がす経路を有しているため、比較例と比べて昇温が小さくなったのである。
一方、比較例は、定着フィルム50の内周面から外周面間の厚さ方向の熱伝導率λは長手方向全域に渡って同等である。そのため、定着フィルム50外周面からその定着フィルム50外周面と対向する加圧ローラ20外周面へ熱を逃がす経路も長手方向全域に渡って同等である。従って、定着フィルム50の非搬送領域Waにおける昇温を抑制する効果は乏しく、本実施例1と比べて昇温が大きくなったのである。
また、比較実験で使用したプリンタには、ヒータ13の電極部115におけるコネクタ15からの給電を安定に行なうために、温度規格として電極部115を210℃以下にする必要がある(図8参照)。図8から分かるように、本実施例1の定着装置は温度規格をクリアすることができたが、比較例の定着装置はクリアできなかった。
b)通紙耐久
次に、本実施例1の定着装置と比較例の定着装置を用いて30万枚の通紙耐久を実施し、耐久経時で定着フィルム13・50の回転トルク測定を行なった。また記録材Pが定着ニップN通過時に発生する記録材Pのスリップに起因するジャムの評価と、定着フィルム13・50の離型層133・503における紙コバ削れの状態観察を行なった。通紙耐久は、最大搬送幅がA4/LTRサイズで、プリント速度がA4サイズで52PPMであるプリンターを用いて、23℃/50%RHの環境下で、坪量80gのA4サイズ紙で行なった。定着フィルム13・50の回転トルクは、初期と通紙耐久10万枚毎に、加圧ローラ20の芯金21上にかかる安定時のトルクを測定することで代用した。定着フィルム13・50の紙コバ削れは、図5(b)及び図7(b)に示すように、耐久に使用しているA4サイズの紙コバ部に相当する位置の定着フィルム13・50の離型層133・503表面の磨耗状態を目視で観察した。
その結果を表1に示す。
表1中の記録材Pのスリップに起因するジャムの結果を表す記号として、○はジャムの発生無し、×はジャムの発生有り、を示す。また、表1中の定着フィルム13・50の離型層133・503における紙コバ削れの結果を表す記号として、○は離型層の磨耗跡が見えない、△は離型層の磨耗跡は見えるが弾性層まで達していない、×は磨耗が弾性層まで達している、を示す。
表1の結果に示したように、本実施例1の定着装置を使用することにより、通紙耐久30万枚を通じて安定したトルクで定着フィルム13は回転しており、記録材Pのスリップに起因するジャムの発生も無かった。さらに、定着フィルム13の離型層133の紙コバ削れも弾性層132まで達することなく問題の無いレベルであった。
一方、比較例の定着装置を使用した場合は、初期のトルクは本実施例1と変わらないが、耐久経時で上昇し、通紙耐久20万枚に達する前に、記録材Pのスリップに起因するジャムが発生してしまい、その時のトルクは初期から約50%上昇していた。また、定着フィルム50の離型層503の紙コバ削れも通紙耐久20万枚に達する前に、弾性層502まで磨耗が達していた。
ここで、定着フィルム13・50の回転トルクは、定着フィルム13・50内周面とヒータ11・11間に介在させている耐熱性グリースの状態に大きく左右される。比較実験で使用した耐熱グリースは、図8に示すように、使用可能温度が240℃以下である。そのため、定着フィルム50の非搬送領域Waにおける昇温が大きく、耐熱グリースの使用可能温度を上回ってしまった比較例の定着装置は、定着フィルム50の回転トルクが上昇し、定着フィルム50の回転が不安定になる。その結果、比較例の定着装置では記録材Pのスリップジャムも発生したのである。
また、定着フィルム13・50の離型層133・503における紙コバ削れは、離型層133・503を形成する材料が温度が高くなると、紙コバ部との摺擦による耐磨耗性が低下する傾向がある。そのため、通紙枚数とともに紙コバ付近の定着フィルム13・50表面の温度に大きく左右される。比較実験で使用した定着フィルム50の離型層503の材料は、図8に示すように、紙コバ削れに対する許容温度が230℃以下である。そのため、定着フィルム50の非搬送領域Waにおける昇温が大きく、紙コバ削れの許容温度を上回ってしまった比較例の定着装置は、通紙枚数の増加につれて定着フィルム50の離型層503の紙コバ削れが進行する。これにより30万枚の寿命に至る前に、紙コバ削れが弾性層502まで達してしまったのである。なお、定着フィルム13において、紙コバ部以外の離型層133は、紙コバのようなするどいエッジ部との摺擦が無いため、紙コバ削れの許容温度を10℃程度上回っても、耐磨耗性は問題の無いレベルである。
以上の結果から、本実施例の定着装置6によれば、定着フィルム13の基層131から加圧ローラ20に向けて熱を逃がす経路を形成することで、定着フィルム13の非搬送領域Waにおける昇温を抑制できる。これによって、コネクタ15からのヒータ13の電極部115への給電の安定化、そして通紙耐久時における記録材Pのスリップに起因するジャムの防止、及び定着フィルム13の離型層133における紙コバ削れの軽減、を実現できるのである。
本実施例1の定着装置6に用いられる定着フィルム13の一例を説明する。
図9の(a)は本実施例1の定着装置6に用いられる定着フィルム13の一例の説明図である。図9の(b)は本実施例1の定着装置6に用いられる定着フィルム13の他の例の説明図である。
本実施例1では、上述のように定着フィルム13の非搬送領域Waに基層領域Weを設け、その基層領域Weの外周面と加圧ローラ外周面とを接触させる構成を説明した。定着フィルム13の非通紙領域Waにおける昇温を抑制するためには、定着フィルムの搬送領域Wbの内周面(内面)から外周面間(外面間)の厚さ方向の熱伝導率を、定着フィルムの搬送領域の内周面から外周面間の厚さ方向の熱伝導率に比べて大きくすればよい。そこで、非通紙領域Waの一部を構成する基層領域Weを離型層領域We1とする(図9(a)参照)。この離型層領域We1は、基層131の外周を表層である離型層133により覆うことによって構成したものである。従って離型層領域We1の内周面から外周面間の厚さ方向の熱伝導率は、搬送領域Wbの内周面から外周面間の厚さ方向の熱伝導率に比べて大きい。そしてその離型層領域We1の外周面と加圧ローラ20の外周面とを接触させている。また、非通紙領域Waの一部を構成する基層領域Weを弾性層領域We2としてもよい(図9(b)参照)。この弾性層領域We2は、基層131の外周を搬送領域Wbの弾性層132よりも薄い弾性層132により覆うことによって構成したものである。従って弾性層領域We2の内周面から外周面間の厚さ方向の熱伝導率は、搬送領域Wbの内周面から外周面間の厚さ方向の熱伝導率に比べて大きい。そしてその弾性層領域We2の外周面と加圧ローラ20の外周面とを接触させている。
従って、図9の(a)・(b)に示す定着フィルム13を用いて構成した定着装置においても図2に示す定着装置と同様の作用効果を得ることができる。
[実施例2]
本実施例2では、定着装置に用いられる定着フィルムの他の例を説明する。本実施例2においては、実施例1と共通する部材・部分には同一の符号を付して再度の説明を省略する。
図10は本実施例2に係る定着装置6を記録材導入側から見た図である。図11は本実施例2に係る定着装置6の記録材Pに対する定着フィルム30と加圧ローラ20の長手方向の位置関係を表わす説明図である。図12は本実施例2に係る定着装置6の定着フィルム30と加圧ローラ20とヒータ11それぞれの長手方向端部と記録材Pとの位置関係を表わす断面図である。
本実施例2においても、定着装置6が冷えた状態からプリントを開始した時の記録材端部近傍の定着性能改善のため、ヒータ11の発熱ペースト層112の長手サイズを記録材Pの最大搬送幅WcよりもWh分長くしている(図12参照)。
定着フィルム30は、定着フィルム30の長手方向両端部に弾性層領域We3を有する(図11、図12参照)。この弾性層領域We3は、基層301の外周上に弾性層304が設けられている領域である。一方、定着フィルム30の長手方向において弾性層領域We3・We3間には、記録材Pの最大搬送幅Wcよりも広い領域に亘って弾性層302が設けられている(図11、図12参照)。本実施例2では、弾性層302の長手サイズはヒータ11の発熱ペースト層(発熱領域)112の長手サイズと略同一としている。弾性層302の長手サイズは、少なくとも記録材Pの最大搬送幅Wcよりも広く、かつ定着フィルム30の長手方向両端の内側に弾性層領域We3を形成することができれば、発熱ペースト層112との位置関係は問わない。しかし、定着装置6が冷えた状態からプリントを開始した時の記録材端部近傍の定着性能改善と後述する記録材Pの非通紙領域の昇温抑制とを両立させるためには、弾性層302と発熱ペースト層112の長手サイズを略同一とした方が好ましい。従って定着フィルム30は、定着フィルム30の長手方向において、弾性層領域We3と発熱ペースト112の延長領域Whと対向している対向端部領域Wdとを加算した領域を、記録材Pを搬送しない非搬送領域(記録材非搬送領域)Waとして備えている。そしてその非搬送領域Wa・Wa間を、記録材Pを搬送するための搬送領域(記録材搬送領域)Wbとしている。
ここで、弾性層302・304は、各々熱伝導性フィラー等を添加することで熱伝導率を向上させているが、熱伝導率としては弾性層304の方が弾性層302よりも高くなるように設定されている。これにより、定着フィルム30の非搬送領域Waの内周面から外周面間の厚さ方向の熱伝導率λeを、搬送領域Wcの内周面から外周面間の厚さ方向の熱伝導率λcに比べて大きくしている。
本実施例2では、基層301として厚さ35μmのステンレスを、弾性層302として厚さ200μmの良熱伝導性シリコーンゴムを、弾性層304として厚さ200μmの良熱伝導性シリコーンゴムを、それぞれ用いた定着フィルム30を使用している。材料としての熱伝導率は、弾性層302の良熱伝導性シリコーンゴムが約1.2W/m・K、弾性層304の良熱伝導性シリコーンゴムが約4.3W/m・K、である。
そこで、定着フィルム30の内周面から外周面間の厚さ方向の熱伝導率を実測したところ、基層301と弾性層304とを備える弾性層領域We3の熱伝導率λeは5.9W/m・Kであった。一方、基層301と弾性層302とを備える搬送領域Wbの熱伝導率λcは2.9W/m・Kであった。従って弾性層領域We3の熱伝導率λeは搬送領域Wbの熱伝導率λcよりも2倍程度高かった。すなわち、定着フィルム30外周面からその定着フィルム30外周面と対向する加圧ローラ20外周面へ熱を逃がす経路として、搬送領域Wbの熱伝導率λcに比べて弾性層領域We3の熱伝導率λeが高くなるように設定した。
シリコーンゴムは熱伝導性フィラーを添加することで熱伝導率を高くすることができるが、フィラーを添加しすぎるとゴムとしての特性が失われてしまう。そのため、熱伝導率は高くなったとしても、弊害として硬度アップや圧縮永久歪の悪化という問題が発生する。本実施例2では、少なくとも未定着トナー画像Tを担持した記録材Pが搬送される搬送領域Wbには、ゴム特性を維持できるレベルで熱伝導率を高めたシリコーンゴムを使用した。一方、記録材Pの非搬送領域の一部を構成する弾性層領域We3は、記録材Pの加熱定着品質と直接の影響が少ない箇所である。そのため、若干ゴム特性が低下しても定着フィルム30の回転動作や通紙耐久性に不具合が発生しなければ良いため、搬送領域Wbよりも熱伝導率を高めたシリコーンゴムを使用した。
定着フィルム30を介してヒータ11と所定幅の定着ニップN部を形成している加圧ローラ20の弾性層202の長手サイズは、定着フィルム30の弾性層302の長手サイズよりも長く、基層301の長手サイズよりも短い。この加圧ローラ20は、加圧ローラ20の長手方向において、定着フィルム30の弾性層302と対向する領域よりも外側の端部領域を、定着フィルム30の弾性層領域We3と接触する接触端部領域Wrとして備えている。そしてその接触端部領域Wrと発熱ペースト112の延長領域Whと対向している対向領域Wsとを加算した領域を、記録材Pを搬送しない非搬送領域(記録材非搬送領域)Wtとしている。そしてその非搬送領域Wt・Wt間を、記録材Pを搬送するための搬送領域(記録材搬送領域)Wuとしている。従って加圧ローラ20は、加圧ローラ20の非搬送領域Wtが定着フィルム13の非搬送領域Waと、搬送領域Wuが定着フィルム13の搬送領域Wbと、それぞれ接触している(図10参照)。
本実施例2の定着装置6は、定着フィルム30の弾性層領域We3の弾性層304をその弾性層304に比べて熱伝導率の大きい搬送領域Wuの弾性層302と接触させることによって熱を逃がす経路が形成されている。そのため、連続プリントによって生ずる非搬送領域の昇温を抑えることができる。一方、定着装置6が冷えた状態からプリントを開始した時の記録材端部近傍の定着性能改善については、ヒータ11における発熱ペースト層112を記録材Pの最大搬送幅Wcよりヒータ11の長手方向両端部側でWh分長くすることで対応している。
従って、本実施例2の定着装置6も、実施例1と同様、コネクタ15からのヒータ11の電極部115への給電の安定化、そして通紙耐久時における記録材Pのスリップに起因するジャムの防止、を実現できるのである。
[実施例3]
本実施例3では、記録材の幅方向の一端を基準として記録材を搬送する片側搬送基準を採用している画像形成装置に搭載する定着装置を説明する。本実施例3においては、実施例1と共通する部材・部分には同一の符号を付して再度の説明を省略する。
図13は本実施例3に係る定着装置6を記録材導入側から見た図である。図14は本実施例3に係る定着装置6の記録材Pに対する定着フィルム30と加圧ローラ20の長手方向の位置関係を表わす説明図である。
本実施例3に示す定着装置6は、記録材の幅方向の一端を定着フィルム40及び加圧ローラ20の長手方向端部近傍の搬送基準Sに一致させ、その搬送基準Sに各種サイズの記録材Pを片寄せさせた状態で定着ニップ部Nに導入するものである。そのため、連続プリント中の定着装置6における記録材Pの非搬送領域の昇温は、搬送基準Sと反対側の加圧ローラ20及び定着フィルム40の長手方向端部近傍に発生する。
本実施例3の定着装置6は、S部と反対側の、定着フィルム40と加圧ローラ20とヒータ11それぞれの端部構成を、図5(a)に示す実施例1の定着装置6における定着フィルム13と加圧ローラ20とヒータ11それぞれの端部構成と同じにしてある。即ち、定着装置6が冷えた状態からプリントを開始した時の記録材端部近傍の定着性能改善のため、ヒータ11の発熱ペースト層112の長手サイズを記録材Pの最大搬送幅WcよりもWh分長くしている(図5(a)参照)。
定着フィルム40は、定着フィルム40の長手方向端部に基層領域Weを有する(図14)。この基層領域Weは、基層401の外周上に弾性層が設けられておらず基層401が露出している領域である。一方、定着フィルム40の長手方向において基層領域Weより搬送基準S側には、記録材Pの最大搬送幅Wcよりも広い領域に亘って少なくとも弾性層402が設けられている(図13、図14参照)。本実施例3では、弾性層402の長手サイズはヒータ11の発熱ペースト層(発熱領域)112の長手サイズと略同一としている。そしてその弾性層402の外周に離型層403が設けられている。弾性層402の長手サイズは、少なくとも記録材Pの最大搬送幅Wcよりも広く、かつ定着フィルム40の長手方向端の内側に基層領域Weを形成することができれば、発熱ペースト層112との位置関係は問わない。しかし、定着装置6が冷えた状態からプリントを開始した時の記録材端部近傍の定着性能改善と後述する記録材Pの非通紙領域の昇温抑制とを両立させるためには、弾性層402と発熱ペースト層112の長手サイズを略同一とした方が好ましい。従って定着フィルム40は、定着フィルム40の長手方向において、基層領域Weと発熱ペースト112の延長領域Whと対向している対向端部領域Wdとを加算した領域を、記録材Pを搬送しない非搬送領域(記録材非搬送領域)Waとして備えている。そしてその非搬送領域Waから搬送基準Sまでの領域を、記録材Pを搬送するための搬送領域(記録材搬送領域)Wbとしている。
上述の構成の定着フィルム40は、図14に示すように、記録材Pと対向する搬送領域Wbの外径Dgに比べて、長手方向端部の基層領域Weの外径Dsの方が小さくなる。従って実施例1の定着フィルム13と同様、定着フィルム40の内周面(内面)から外周面(外面)間の厚さ方向の熱伝導率としては、搬送領域Wbの熱伝導率λcに比べて基層領域Weの熱伝導率λeを高くすることができる。
本実施例3では、基層401として厚さ35μmのステンレスを、弾性層(不図示)として厚さ200μmの良熱伝導性シリコーンゴムを、離型層403として厚さ14μmのPFA樹脂を、それぞれ用いた定着フィルム40を使用している。そのため、定着フィルム40の内周面から外周面間の厚さ方向の熱伝導率λeは、基層401のみの基層領域Weは15W/m・Kであった。一方、基層401に加えて弾性層402と離型層403も備える搬送領域Wbの熱伝導率λcは2.4W/m・Kであった。従って基層領域Weの熱伝導率λeは搬送領域Wbの熱伝導率λcよりも6倍程度高かった。すなわち、定着フィルム13外周面からその定着フィルム13外周面と対向する加圧ローラ20外周面へ熱を逃がす経路として、搬送領域Wbの熱伝導率λcに比べて基層領域Weの熱伝導率λcが高くなるように設定した。
定着フィルム40を介してヒータ11と所定幅の定着ニップN部を形成している加圧ローラ20の弾性層202の長手サイズは、定着フィルム40の弾性層402の長手サイズよりも長く、基層401の長手サイズよりも短い。この加圧ローラ20は、加圧ローラ20の長手方向において、定着フィルム40の弾性層402と対向する領域よりも長手方向端部領域を、定着フィルム13の基層領域Weと接触する接触端部領域Wrとして備えている。そしてその接触端部領域Wrと発熱ペースト112の延長領域Whと対向している対向領域Wsとを加算した領域を、記録材Pを搬送しない非搬送領域(記録材非搬送領域)Wtとしている。そしてその非搬送領域から搬送基準Sまでの領域を、記録材Pを搬送するための搬送領域(記録材搬送領域)Wuとしている。従って加圧ローラ20は、加圧ローラ20の非搬送領域Wtが定着フィルム40の非搬送領域Waと、搬送領域Wuが定着フィルム40の搬送領域Wbと、それぞれ接触している(図13参照)。
本実施例3の定着装置6は、定着フィルム40の非搬送領域Waの基層領域Weには徐々に熱量を蓄積する弾性層402を有していない。そして搬送領域Waの弾性層402に比べて熱伝導性の大きい基層領域Weの基層401を加圧ローラ20外周面と接触させることによって熱を逃がす経路が形成されている。そのため、連続プリントによって生ずる非搬送領域の昇温を抑えることができる。一方、定着装置6が冷えた状態からプリントを開始した時の記録材端部近傍の定着性能改善については、ヒータ11における発熱ペースト層112を記録材Pの最大搬送幅Wcよりヒータ11の長手方向端部側でWh分長くすることで対応している。
従って、本実施例3の定着装置6も、実施例1と同様、コネクタ15からのヒータ11の電極部115への給電の安定化、そして通紙耐久時における記録材Pのスリップに起因するジャムの防止、を実現できるのである。
本実施例3の定着装置6において、S部と反対側の、定着フィルム40と加圧ローラ20とヒータ11それぞれの端部構成は図12に示す実施例2の定着装置6における定着フィルム30と加圧ローラ20とヒータ11それぞれの端部構成と同じにしてもよい。その実施例2の定着装置6における定着フィルム30と加圧ローラ20とヒータ11それぞれの端部構成を採用しても、実施例2の定着装置6と同様の作用効果を得ることができる。
〈その他〉
1)加熱体であるヒータ11はセラミックヒータに限られるものではなく、たとえば鉄板等の電磁誘導発熱部材等にすることもできる。
2)加圧部材の形態としては、本実施例における加圧ローラ20以外に、回動ベルト等の形態でも構わない。
3)本発明の像加熱装置は、加熱定着装置に限られず、仮定着する像加熱装置、画像を担持した記録材を再加熱してつや等の画像表面性を改質する像加熱装置等としても使用できる。
11:ヒータ、13:定着フィルム、131:基層、132:弾性層、20:加圧ローラ、N:定着ニップ部、T:未定着のトナー画像、P:記録材、Wa:非搬送領域、Wb:搬送領域、We:基層領域、We1:離型層領域、We2:弾性層領域、We3:弾性層領域