[参考例1]
(1)画像形成装置例の説明
図1は本参考例における画像形成装置の構成略図である。本例の画像形成装置は電子写真プロセス利用のレーザプリンタである。
1は感光ドラムであり、OPC、アモルファスSe、アモルファスSi等の感光材料がアルミニウムやニッケルなどのシリンダ状の基盤上に形成されている。
感光ドラム1は矢印の方向に回転駆動され、まず、その表面は帯電装置としての帯電ローラ2によって一様帯電される。
次に、その感光ドラム1の一様帯電面に対してレーザスキャナユニット3によりレーザビーム走査露光Lが施されて画像情報の静電潜像が形成される。感光ドラム1に対するレーザビーム走査露光Lは画像情報に応じてON/OFF制御されたレーザビームがレーザスキャナユニット3内で回転するポリゴンミラーにより反射されてなされる。
この静電潜像は現像装置4で現像、可視化される。現像方法としては、ジャンピング現像法、2成分現像法、FEED現像法などが用いられ、イメージ露光と反転現像とを組み合わせて用いられることが多い。
可視化されたトナー画像は、転写装置としての転写ローラ5により、不図示の給紙機構部から所定のタイミングで搬送された記録材P上に感光ドラム1上より未定着画像として転写される。ここで感光ドラム1上のトナー画像の画像形成位置と記録材の先端の書き出し位置が合致するようにセンサ6にて記録材Pの先端を検知し、タイミングを合わせている。所定のタイミングで搬送された記録材Pは感光ドラム1と転写ローラ5に一定の加圧力で挟持搬送される。以上が画像形成部の構成である。
このトナー画像が転写された記録材Pは加熱定着装置7へと搬送され、固着画像として定着される。
一方、感光ドラム1上に残存する転写残りの残留トナーは、クリーニング装置8により感光ドラム1表面より除去される。
(2)加熱定着装置7
図2は加熱定着装置7の要部の正面模型図、図3は同じく縦断正面模型図、図4は同じく拡大横断面模型図、図5は図4の部分拡大模型図である。
本例の加熱定着装置7は、特開平4−44075〜44083号公報、特開平4−204980〜204984号公報等に開示の、移動部材として円筒状(エンドレスベルト状)・可撓性の定着フィルムを用いた、フィルム加熱方式、加圧用回転体駆動方式(テンションレスタイプ)の加熱装置である。
1)装置7の全体的構成
以下の説明において、装置構成部材について長手または長手方向とは記録材搬送路面内において記録材搬送方向に直交する方向に並行な方向である。
9は加熱部材(定着部材)、24は加圧部材としての加圧ローラである。加熱部材9において、11は横断面略半円形樋型の断熱ステイホルダー、23はこの断熱ステイホルダー11の下面に保持した加熱体としてのヒータ、22はヒータを取り付けた断熱ステイホルダー11にルーズに外嵌させた、移動部材として円筒状・可撓性の定着フィルムである。加圧ローラ24は芯金両端部を装置の左右側板(不図示)間に軸受部材を介して回転自由に支持させて配設してある。加熱部材9はこの加圧ローラ24の上側に並行に配列してある。そして、断熱ステイホルダー11の左右両端部をそれぞれ加圧バネ(不図示)によって下方に所定の加圧力で加圧状態にする。これにより、加熱部材9のヒータ23が定着フィルム22を挟んで加圧ローラ24の上面に対して加圧ローラ24の弾性層に抗して圧接して、記録材上のトナーを加熱溶融させる定着ニップ部Nが形成される。
加圧ローラ24は図4のように駆動手段Mにより矢印の反時計方向に所定の周速度で回転駆動される(加圧部材駆動式)。加圧ローラ24の回転駆動に伴い、該加圧ローラ24と定着フィルム22の外面との定着ニップ部Nにおける摩擦力で円筒状の定着フィルム22に回転力が作用する。そして、定着フィルム22が断熱ステイホルダー11の外回りを定着ニップ部Nにおいて定着フィルム22の内周面がヒータ23の下向き面に接触して摺動しながら矢印の時計方向に従動回転する。断熱ステイホルダー11により定着フィルム22の回転安定性が保たれる。また、断熱ステイホルダー11の端部には定着フィルム22の断熱ステイホルダー11の長手方向に沿う寄り移動を規制するフランジ部材(不図示)を配設してある。
加圧ローラ24の回転駆動による定着フィルム22の回転がなされ、また後述するようにヒータ23に対する通電により該ヒータ23が昇温して所定の目標温度に温調される。この状態において、定着ニップ部Nの定着フィルム22と加圧ローラ24との間に未定着トナー画像tを担持した記録材Pが耐熱性の定着入口ガイド14に沿って導入される。記録材Pはトナー画像担持面が定着フィルム22の外面に密着して定着フィルム22と一緒に定着ニップ部Nを挟持搬送されていく。この挟持搬送過程において、ヒータ23の熱が定着フィルム22を介して記録材Pに付与される。この熱と定着ニップ部Nの加圧力により、未定着トナー画像tが記録材Pの面に加熱加圧定着される。定着ニップ部Nを通った記録材Pは定着フィルム22の面から曲率分離して排出搬送される。定着ニップ部Nより排出された記録材Pは耐熱性の不図示の定着排紙ガイドに案内されて不図示の排出トレイ上に排出される。
本参考例においては、記録材Pの装置内搬送は記録材中心で行なう中央基準搬送である。図2において、Oはその中央基準線である。D1は装置に通紙使用可能な記録材の最大通紙幅である。ここで本参考例において、記録材について通紙幅または紙幅は記録材面において記録材搬送方向に直交する方向の記録材寸法である。
2)定着フィルム22
定着フィルム22は熱容量の小さな可撓性部材であり、クイックスタートを可能にするために総厚100μm以下の厚みの耐熱性フィルムである。基層としてポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK等の耐熱性樹脂、あるいは耐熱性、高熱伝導性を有するSUS、Al、Ni、Ti、Zn等の金属部材を単独ないし複合して形成してある。樹脂製の基層の場合には、高熱伝導性を向上するために、BN、アルミナ、Al等の高熱伝導性粉末を混入してあっても良い。また、長寿命の定着フィルムを構成するために十分な強度を持ち、耐久性に優れた基層として、総厚20μm以上の厚みが必要である。よって定着フィルムの総厚みとしては20μm以上100μm以下が最適である。
さらにオフセット防止や記録材の分離性を確保するために表層にはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン共重合体)、CTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂などの離型性の良好な耐熱樹脂を混合ないし単独で離型性層を被覆してある。
被覆の方法としては、基層の外面をエッチング処理した後に離型性層をディッピング、粉体スプレー等の塗布によるものや、あるいはチューブ状に形成されたものを基層の表面に被せる方式のものであっても良い。
また、ヒータ23と接触する定着フィルム内面に潤滑性の高いフッ素樹脂層などを形成してあっても良い。
3)ヒータ23
ヒータ23は上記定着フィルム基層を基材としてなる定着フィルム22の内部に具備される。そして、定着ニップ部Nにおいて該ヒータ23が定着フィルム22の内面に接触する。これにより、定着ニップ部Nを加熱して、定着ニップ部Nに搬送された記録材P上のトナー画像tを溶融、定着させる。このヒータ23及び定着ニップ部近傍の詳細は(3)項で詳述する。
4)断熱ステイホルダー11
断熱ステイホルダー11はヒータ23を保持し、定着ニップ部Nと反対方向への放熱を防ぐための部材である。この断熱ステイホルダー11は液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEK等の耐熱性樹脂により形成されている。そして、この断熱ステイホルダー11に対して定着フィルム22が余裕を持ってルーズに外嵌されて断熱ステイホルダー11の外回りを回転自在に配置されている。
また、定着フィルム22は内部のヒータ23及び断熱ステイホルダー11に摺擦しながら回転するため、ヒータ23及び断熱ステイホルダー11と定着フィルム22の間の摩擦抵抗を小さく抑える必要がある。このためヒータ23及び断熱ステイホルダー11の表面に耐熱性グリースなどの潤滑剤を少量介在させてある。これにより定着フィルム22はスムーズに回転することが可能となる。
5)加圧ローラ24
加圧部材としての加圧ローラ24はSUS、SUM、Al等の金属製芯金10の外側にシリコンゴムやフッ素ゴムなどの耐熱ゴムあるいはシリコンゴムを発泡して形成された弾性層13からなり、この上にPFA、PTFE、FEPなどの離型性層16を形成してあっても良い。
(3)ヒータ23
図6の(a)はヒータ23の表面側の平面模型図である。図6の(b)はヒータ23の裏面側の一部切欠き平面模型図と通電制御系のブロック回路図である。
本参考例のヒータ23は裏面加熱型のセラミックスヒータである。23aはアルミナ・窒化アルミ等のセラミック材料より形成される高熱伝導性・電気絶縁性の細長い基板である。この基板23aは記録材搬送方向に直交する方向を長手とする横長・薄肉の部材である。基板23aの幅は図5のように定着ニップ部Nの幅(記録材搬送方向のニップ寸法)より広いものとしてある。
上記基板23aの一方側の面を定着ニップ部Nにおいて定着フィルム22に対応する表面側とする。この基板表面側の、定着フィルム22と摺擦する部分には、摺動層23dを設けてあっても良い。摺動層23dは、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン共重合体)、CTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)等のフッ素樹脂層を単独ないし混合して被覆することで形成することができる。あるいは、例えば、グラファイト二硫化モリブデン等からなる乾性被膜潤滑剤、ガラス、DLC(ダイアモンドライクカーボン)等を薄く塗布あるいは蒸着することによって形成することもできる。これにより、定着ニップ部Nにおいて定着フィルム22とヒータ23は低摩擦係数で滑らかに摺動することが可能になる。あるいは、基板23aの定着フィルム22と摺動する面の表面粗さを所定以下に抑え、潤滑性グリース等により摺動性を確保し、熱抵抗を小さく抑えることで熱効率を向上させる構成であっても良い。
また、上記基板23aの定着ニップ部N側とは反対側の面を裏面側とする。この基板裏面側には、基板長手方向に沿って、通電発熱体パターンである少なくとも2本の第1と第2の通電発熱抵抗層23bおよび23cを基板短手方向に配列して形成具備させてある。第1の通電発熱抵抗層23bは第2の通電発熱抵抗層23cよりも記録材移動方向において上流側にある。上記第1と第2の通電発熱抵抗層23bおよび23cは、例えば、Ag/Pd(銀パラジウム)、Ni/Cr、RuO2、Ta2N、TaSiO2等の導電剤とガラス、ポリイミド等のマトリックス成分からなる通電発熱抵抗材料を用いてスクリーン印刷により基板裏面に、例えば、厚み10μm程度、幅1〜5mm程度の線状もしくは細帯状で弓状に塗工して形成する。あるいは、通電発熱抵抗材料を、蒸着、スパッタリング、メッキ、金属箔等により塗工して形成することもできる。
第1の通電発熱抵抗層23bの長さL1は、装置に通紙可能な記録材の最大通紙幅D1と同程度の長さであり、発熱分布は長手方向に実質均一としてある。
第2の通電発熱抵抗層23cの長さL2は、第1の通電発熱抵抗層23bの長さL1より長く、長手方向の両端部(以下、端部と記す)の長さL3の範囲部分の抵抗値を高くすることにより、端部の発熱量が多くなるようにしてある。すなわち、第2の通電発熱抵抗層23cは、長手方向で不均一な抵抗値分布を持っており、端部の単位長さあたりの抵抗値を中央部に比べて高くなるように形成してある。具体的には、第2の通電発熱抵抗層23cは長さL2の両端部L3の長さに於いて、同一ペーストの通電発熱抵抗層23cの幅を絞ることによって長さL3だけ中央付近に比べて単位長さあたりの抵抗値を高く設定してある。これにより、第2の通電発熱抵抗層23cの端部の単位長さあたり発熱量は第2の通電発熱抵抗層23cの中央部および第1の通電発熱抵抗層23bの単位長さあたり発熱量より大きくなっている。なお図6では、第2の通電発熱抵抗層23cについて、抵抗層の幅を変えることにより単位長さあたりの発熱量を変えているが、ペーストを変えることによって抵抗値分布を持たせ、発熱量を変えても良いことは言うまでもない。
Aは加圧ローラ24の弾性層13の長さ寸法であり、第2の通電発熱抵抗層23cの長さ寸法L2よりも長い。すなわち、第1と第2の通電発熱抵抗層23bと23cは長手方向で加圧ローラ24の弾性層13の長さ範囲の内側に配設してある。
Bは定着フィルム22の長さ寸法であり、加圧ローラ24の弾性層13の長さ寸法Bよりも長い。すなわち、加圧ローラ24の弾性層13は長手方向で定着フィルム22長さ範囲の内側に配設してある。
第1と第2の通電発熱抵抗層23bおよび23bの同じ側の各一端部側にはそれぞれ電気的に導通させて第1と第2の給電用電極部23gおよび23hを形成具備させてある。また第1と第2の通電発熱抵抗層23bおよび23bの同じ側の各他端部側にはそれぞれ電気的に導通させて両者に共通の第3の給電用電極部23fを形成具備させてある。上記の第1〜第3の給電用電極部23g・23h・23fは、例えば、Agペースト等の導電剤をスクリーン印刷により基板裏面に塗工して形成することができる。
また第1と第2の通電発熱抵抗層23bおよび23c、及び第1〜第3の給電用電極部23g・23h・23fの一部を覆わせて、耐熱性の絶縁性保護層23eを形成してある。この絶縁性保護層23eは、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、ガラスなどの耐熱性・絶縁性材料をスクリーン印刷により基板裏面に塗工して形成することができる。
上記のヒータ23をその表面側、すなわち、摺動層23dを形成した側を外側にして、断熱ステイホルダー11の下面に長手に沿って形成した溝部に嵌め込んで接着してもしくは不図示の保持部材で圧接させて保持させてある。
また上記ヒータ23の裏面側の長手方向略中央部(中央基準搬送の中央基準線Oに略対応する位置)において絶縁性保護層23eに所定の加圧力で圧接させてヒータ23の温度を検知するためのサーミスタ等の温度検知素子15を配設してある。
41・42は第1と第2の給電用コネクタである。第1の給電用コネクタ41は断熱ステイホルダー11に保持させたヒータ23の第1と第2の給電用電極部23g・23h側に嵌着され、第1と第2の給電用電極部23g・23hにそれぞれ第1の給電用コネクタ41側の給電接点が接触状態になる。第2の給電用コネクタ42はヒータ23の第3の給電用電極部23f側に嵌着され、第3の給電用電極部23fに第2の給電用コネクタ42側の給電接点が接触状態になる。
そして、第1の通電発熱抵抗層23bと第2の通電発熱抵抗層23cにはそれぞれ下記
の回路で給電がなされることで独立に発熱する。
すなわち、第1の通電発熱抵抗層23bには、電源回路部(電源)43→第1のトライアック44→第1の給電用コネクタ41→第1の給電用電極部23g→第1の通電発熱抵抗層23b→第3の給電用電極部23f→第2の給電用コネクタ42→電源回路部43、の回路で給電がなされる。
また、第2の通電発熱抵抗層23cには、電源回路部43→第2のトライアック45→第1の給電用コネクタ41→第2の給電用電極部23h→第2の通電発熱抵抗層23c→第3の給電用電極部23f→第2の給電用コネクタ42→電源回路部43、の回路で給電がなされる。つまり、第1の通電発熱抵抗層23bと第2の通電発熱抵抗層23cは電気回路部43に対して並列に接続されている(図6参照)。
第1と第2のトライアック44と45はそれぞれ制御手段であるエンジンコントロールユニット46で制御される。エンジンコントロールユニット46は例えばROM・RAM内蔵のワンチップマイクロコンピュータ(以下、CPUと記す)である。前記の第1と第2のトライアック44・45はこのCPU46によりそれぞれ制御される。
温度検知素子15によるヒータ温度検知信号はCPU46に入力する。CPU46はその入力する温度検知信号に応じて第1と第2のトライアック44・45を制御して第1と第2の通電発熱抵抗層23b・23cに印加される電圧のデューディー比や波数等を適切に制御する。これにより、定着ニップ部N内での温調温度を略一定に保ち、記録材P上のトナー画像を定着するのに必要な加熱を行う。すなわち、CPU46は温度検知素子15から入力する検知温度が目標温度を維持するように第1と第2のトライアック44・45を制御して第1と第2の通電発熱抵抗層23b・23cへの通電を個別に制御している。つまり、第1の通電発熱抵抗層23bと第2の通電発熱抵抗層23cはCPU46により個別に制御可能となっている。
また、CPU46は各種情報に応じて第1と第2のトライアック44・45を制御して、第1の通電発熱抵抗層23bに対する通電と第2の通電発熱抵抗層23cに対する通電との両者間の通電比率を変更する。
(4)電流検知手段及び通電比率制御
CPU46はヒータ23で消費される電力Wを検知する電力検知手段としての電力検出回路部47を有している。具体的には、第2の給電用コネクタ42と電源回路部43との電路に電流検知手段である電流計48を介入させてある。この電流計48は電源回路部43からヒータ23(=第1と第2の通電発熱抵抗層23b・23c)に流れる電流値を測定する。その電流測定値が電力検出回路部47に入力する。
電力検出回路部47は入力する電流測定値とヒータ23の総抵抗値Rから電力W=I2Rを算出する。また電力検出回路部47は、ヒータ23の、プリント開始からの連続通紙中の積算電力量(検知電力の積算値(積算電力値))を消費電力量として算出する。
なお、電力検知手段については、電流検知手段と電圧検知手段を設け、電力W=電流I×電圧Vで算出する方法とすることもできる。
CPU46は上記の消費電力量に応じて第1と第2の通電発熱抵抗層23b・23cの両者間の通電比率を決定する。そしてその決定された通電比率にて第1と第2の通電発熱抵抗層23b・23cに通電がなされる第1と第2のトライアック44・45を制御する。CPU46はヒータ23の温調についてはその決定された通電比率は変えないで、温度検知素子15から入力する温度検知信号に応じて第1と第2のトライアック44・45を制御して第1と第2の通電発熱抵抗層23b・23cに印加される電圧のデューディー比や波数等を適切に制御する。
本参考例ではCPU46はプリント開始からのヒータ23の消費電力量である積算電力値(W・s)に応じて第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cの通電比率を下げるタイミングを設定するようになっている。
本参考例ではCPU46のROMに参照テーブルとして予め実験により得た表1のような積算電力値−通電比率相関テーブルを記憶させてある。そして、CPU46はプリント開始からの連続通紙中の積算電力値により、参照テーブルとの対応において、第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cの通電比率を段階的に下げていくような制御をする(すなわち、消費電力量に応じて、2本の通電発熱体の通電比率を変化させるプリント枚数を変更する制御)。
表1の右欄の枚数換算は、サイズは幅216mmと等しいが、表面粗さや厚みの異なる2種類の記録材AおよびBを連続プリントした場合に所定の積算電力値に到達するまでの枚数を示す。
記録材Aは表面が平滑な厚紙である。この記録材Aは定着ニップ部N内の熱を奪いやすく、定着ニップ部内温度を維持するために電力が多く必要である。そのため表1のように積算電力値の増加が早く、早いプリント枚数で通電比率が下がることになる。
一方、記録材Bは表面が粗い紙である。この記録材Bは定着ニップ部N内の熱を奪いにくいため、定着ニップ部N内温度を維持するための電力は少なく、多くプリントを行わなければ通電比率は低下しない。
すなわち、端部定着性は問題ないが、非通紙部昇温が高くなりやすい記録材Aのような場合は第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cの通電比率を早く低下させて端部の発熱量を小さくすることにより非通紙部昇温を小さくする。
また、非通紙部昇温は高くなりにくいが、端部定着性が発生し易い記録材Bのような場合は、第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cの通電比率を低下させるのを遅くして、端部の定着性を確保する。
以上の構成で、サイズが等しく幅216mmの2種類の記録材AおよびBを連続プリントした場合の非通紙部昇温、端部定着性を測定した。
ここで、非通紙部昇温とは、装置に通紙可能な最大通紙幅の記録材(最大サイズ紙)よりも通紙幅が小さい記録材(小サイズ紙)を連続通紙したときに、最大サイズ紙通紙幅−小サイズ紙通紙幅=非通紙部分は記録材の加熱に熱が消費されないために、この非通紙部分に対応するヒータ部分の温度が小サイズ紙の通紙部分に対応するヒータ部分の温度よりも昇温していく現象である。また、非通紙部は最大サイズ通紙幅−小サイズ通紙幅というわけではなく、単に通紙されない部分を非通紙部としている。発熱抵抗層の長さは最大サイズ紙通紙幅より長い(第2の発熱抵抗層)ため最大通紙幅の記録材を通紙しても非通紙部昇温は発生する。
実験に用いた構成は以下のとおりである。まず基本的構成として、ヒータ23は、その基板23aとして幅10mmの高熱伝導性AlN基板を用いた。
そのAlN基板23aの定着ニップ部N側(基板表面側)には摺動層23dとしてポリイミド樹脂をスクリーン印刷により10μmの厚みで形成した。
AlN基板上の定着ニップ部N側とは反対側(基板裏面側)に第1と第2の2本の通電発熱抵抗層23bと23cとしてAg/Pdの導電剤とマトリックス成分として燐酸系ガラスの混合物を有機溶剤、バインダー、分散剤等と混合してペースト状にしたものをスクリーン印刷して600℃で焼成したものを用いた。
第1の通電発熱抵抗層23bは長さL1=216mmであり、長手方向にわたって単位長さあたりの抵抗値が同一である。
第2の通電発熱抵抗層23cは長さL2=222mmである。両端部の距離L3=20mmの単位長さあたりの抵抗値を中央部の単位長さあたり抵抗値に対して140%に形成し、通電した時に端部の発熱量が大きくなるようにした。
また、第1と第2のそれぞれの通電発熱抵抗層23bおよび23cの抵抗値の比は2:3となるように形成した。この結果、同等のデューティー比で通電発熱抵抗層への通電を行った場合、上流側の第1の通電発熱抵抗層23bによる発熱量と下流側の第2の通電発熱抵抗層23cによる発熱量の比は3:2となる。
また、定着フィルム22は内径30mm、厚み40μmのSUSスリーブにプライマ層を5μm、PFA樹脂を10μmディッピングにより塗布することにより形成した。
また、加圧ローラ24は、直径20mmのAl芯金10に、弾性層13としてシリコンゴム層を厚み5mmで形成し、更に外層15にはPFAチューブを被覆した。
実験では画像形成装置の記録材搬送スピードが300mm/sとなるように設定しており、加熱ヒータ23の温調温度は210℃とした。
比較例(従来例)として積算電力値に係わらず第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cの通電比率をプリント枚数により低下させた場合の非通紙部昇温、端部定着性も測定した。結果を図7および表2に示す。
表2のように従来例では定着性の悪い記録材Bにとっては発熱抵抗層23bに対する発熱抵抗層23cの通電比率を早く下げすぎていたため記録材端部に於いて定着不良気味であった。
本参考例では記録材Bに対して端部定着性を満足できるように発熱抵抗層23bに対する23cの通電比率を下げているため端部定着不良は発生しなかった。
また、図7に示されるように非通紙部昇温についても従来例では紙種により大きく異なり、記録材Aを連続プリントした場合には高温になっていた。
ここで、図7および後述する図8において、非通紙部温度は最大サイズ記録材の端部と第2の発熱抵抗層端部の間のヒータ基板の温度である。最大通紙幅の記録材を連続プリントした場合の非通紙部温度はプリント枚数が増加していくにつれて高くなる。プリント初期は発熱抵抗層より外側の部材に熱を奪われてしまうため非通紙部温度はむしろ温調温度より低くなってしまう。その為にプリント初期は第2の発熱抵抗層の通電比率を大きくしている。
本参考例では紙種による差が小さくなっており、記録材Aを連続プリントした場合に従来例と比較して非通紙部温度が低く抑えられている。
また、加熱定着装置7が温まった状態からのプリントでも同様に表1のような積算電力値により第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cへの通電比率を低下させた場合、加熱定着装置7が温まっており、端部定着性が十分確保できているにも関わらず、端部への熱の供給が余分になされるため非通紙部の昇温が大きくなってしまう。したがって、プリント動作直前に加熱ヒータ23に配設された温度検知素子15が検知した温度により表3のように予め積算電力値を加算しておくようにする。
すなわち、CPU46のROMに参照テーブルとして、前記表1の積算電力値−通電比率の相関テーブルとともに、予め実験により定めた表3の初期サーミスタ温度(℃)−積算電力加算量(W・s)の相関テーブルを記憶させてある。CPU46はプリント動作直前に加熱ヒータ23に配設された温度検知素子15が検知した温度により、表3の参照テーブルとの対応において、適切な積算電力加算量を決定する。その積算電力加算量に対応する表1の積算電力値に対応する通電比率からプリントを開始させる。以後は同様にプリント開始からのヒータ23の消費電力量である積算電力値(W・s)により表1の参照テーブルに従って第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cの通電比率を所定に変化させる。
以上のようにすることで、加熱定着装置が温まっている場合でも非通紙部が過度に昇温しないように第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cの通電比率を下げることが可能となる。
また、積算電力を検出する手段は画像形成装置に具備されたヒータ23に流れる電流Iの検知手段による検出値とI、ヒータ23の総抵抗値RによりW=I2Rで算出された値等、電力を算出できればどのような手段でも良い。
本参考例では上記のようにプリント開始からの積算電力の増加に伴い第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cの通電比を低下させている。しかし、通電比率制御はこれに限られない。たとえば、CPU46が表4のようにプリント枚数に対する通電比率の参照テーブルを複数A〜D有しており、表5のようにプリント開始直前の温度検知素子15の測定値とプリント初期の消費電力の参照テーブルにより表4の複数のテーブルA〜Dのうちの最適なテーブルを選択する方法等、プリント中の電力をもとに通電比率を決定していればどのような方法でも良い。
ここで、上記比較例としての従来例の制御について説明する。第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cの通電比率の制御は表6および表7のようになっている。
すなわちプリント初期時は端部定着不良を防止するために第1の通電発熱抵抗層23bへの通電に対して端部発熱量の多い第2の通電発熱抵抗層23cへの通電を高くする。しかし、プリント枚数が増加するにつれて表6のように端部発熱量の多い第2の通電発熱抵抗層23cへの通電を徐々に下げていき非通紙部昇温を防止する。
また、記録材のサイズによっても第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cへの通電比率の制御は異なり、幅の小さい記録材ほど非通紙部昇温は高くなりやすいため、表7のように端部発熱量の多い発熱抵抗層27cの通電比率を低下させる速度を速くしている。
しかしながら、非通紙部昇温や定着性は記録材の幅だけではなく、記録材の厚み、粗さによっても大きく変化する。図8は同じサイズであり、表面粗さや厚みの異なる2種類の記録材Aおよび記録材Bを同様の制御で連続プリントした場合の非通紙部昇温と定着性の測定結果である。記録材Aは表面粗さが小さく厚みがあり、記録材Bは表面粗さが大きい。このときの第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cへの通電比率は表6のとおりにプリント枚数により徐々に低下させている。
記録材Aは定着ニップ部N内の熱を多く奪う。そのため、定着ニップ部N内の温度を一定に保つためにヒータ23の発熱量は多くなる。そのため非通紙部昇温が記録材Bよりかなり高く、このような高温でプリントが続けられると、ステイホルダー11や定着フィルム22、加圧ローラ24などの部材がダメージを受け、耐久性が悪化してしまう。
一方、記録材Bは表面が粗く定着性が悪い紙である上、定着ニップ部N内の熱をあまり奪わないためヒータ23の発熱量も小さい。そのため、非通紙部及び端部のヒータ温度が初期は低いため、記録材端部に於いて定着不良が発生してしまう。記録材Aで発生する非通紙部昇温を防止するために第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cの通電比率を早く低下させるようにすれば非通紙部昇温は抑えられるが、記録材Bをプリントした際の端部定着不良が更に悪化してしまう。また、記録材Bで発生する端部定着不良を防止するために第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cの通電比率の低下を遅らせれば端部定着不良は防止できるが、記録材Aをプリントした際の非通紙部昇温が更に高くなってしまう。また、画像形成装置が記録材の粗さや厚みを判別する手段を設け、粗さや厚み情報をもとに第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cへの通電比率を決定する方法も考えられるが、記録材判別手段によりコストが高くなってしまう。さらに記録材Aで発生するような非通紙部昇温や記録材Bで発生するような初期端部定着不良は画像形成装置が高速化することでより顕著となる。
以下に参考例2について説明する。画像形成装置全体の構成、加熱定着装置構成、ヒータ構成等は前記参考例1と同様であるため再度の説明を省く。
本参考例においてもプリント開始からの積算電力値により第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cの通電比率を下げるが、記録材のサイズ(記録材幅)に応じて通電比率を下げるための積算電力値の閾値を変更することを特徴とする。
表面粗さや厚みが同様の記録材であれば、記録材幅が小さくなるにつれて非通紙部昇温は大きくなるため、それぞれの記録材幅に最適な通電発熱抵抗層23b・23cへの通電制御を行う必要がある。
本参考例では、表8、表9、表10のように、それぞれ積算電力値の増加により通電比率を下げるが、通電比率を下げる割合の異なる、制御1、制御2、制御3、の3種類の制御において、それぞれ、幅D1=216mm(A4記録材で横送り)、D2=210mm(Letterサイズ紙の幅)、D3=184.2mm(Executiveサイズ紙の幅)の三種類の記録材を連続プリントした場合の非通紙部温度および端部定着性の測定を行った。結果も同じく表8、表9、表10に示す。
通紙幅D1および通紙幅D2の記録材については50枚/分でプリントを実施し、通紙幅D3の記録材に関しては記録材に対して通電発熱抵抗層のはみ出している領域が広く、非通紙部の昇温が特に厳しいことから25枚/分でプリントを実施した。非通紙部昇温の評価は表面が平滑で非通紙部昇温が高くなるような記録材を用い、端部定着性の評価は、表面が粗く定着性の悪い記録材を用いた。表中の端部定着性の欄は、○が問題のないレベル、△が許容できるレベル、×が劣悪を意味する。また、非通紙部温度の欄は○が問題のない温度、△が許容できる温度、×が劣悪を意味する。
表8の制御1に従って通電比率を低下させてプリントを行った場合、通紙幅D1=216mmの記録材においては非通紙部昇温や端部定着不良の発生しない良好な画像を得ることができた。しかし、通紙幅D2=210mmの記録材では若干非通紙部昇温が高くなった。通紙幅D3=184.2mmの記録材では非通紙部昇温が高くなり過ぎてしまった。
表9の制御2に従って通電比率を低下させてプリントを行った場合は幅D2=210mmの記録材においては非通紙部昇温や端部定着不良の発生しない良好な画像を得ることができた。しかし、通紙幅D1=216mmの記録材では若干の端部定着不良が発生した。通紙幅D3=184.2mmの記録材では非通紙部昇温が高くなってしまっている。
また、表10の制御3に従って通電比率を低下させてプリントを行った場合は、通紙幅D3=184.2mmの記録材においては非通紙部昇温や端部定着不良の発生しない良好な画像を得ることができた。しかし、通紙幅D1=216mmおよび幅D2=210mmの記録材において端部定着不良が大幅に悪化してしまった。
以上の結果より、幅D1=216mmの記録材をプリントする場合は制御1、幅D2=210mmの記録材をプリントする場合は制御2、幅D3=184.2mmの記録材をプリントする場合は制御3、に従って第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cの通電比率を低下させることにより様々な記録材サイズについてそれぞれのサイズに最適な通電比率制御を行うことができる。
すなわち、本参考例においては、CPU46のROMに、表8の制御1の参照テーブル、表9の制御2の参照テーブル、表10の制御3の参照テーブル等、様々な記録材サイズの関する通電比率制御参照テーブルを記憶させてある。CPU46は記録材サイズ選択検知手段49から入力する使用記録材のサイズ情報に応じて対応する記録材サイズに関する参照テーブルに基づいて通電比率制御を実行させる。
記録材サイズ選択検知手段49は、具体的には、画像形成装置のコントロールパネル(不図示)に配設された使用記録材サイズ選択キー(記録材カセット選択キー)や記録材搬送路に配設した記録材サイズ検出センサ等である。
[参考例3]
以下に参考例3について説明する。画像形成装置全体の構成、加熱定着装置構成、ヒータ構成等は前記参考例1と同様であるため再度の説明を省く。
本参考例においてもプリント開始からの積算電力値により第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cの通電比率を下げるが、画像形成装置が雰囲気温度を検知する手段50(図6)を有する場合の制御について説明する。
すなわち、プリント前の記録材の温度は雰囲気温度と同等になっていると考えられる。例えば低温環境においては記録材も十分冷えているため常温と比較してプリント中の消費電力は大きく積算電力の増加も早い。そのため、第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cへの通電比率は少ないプリント枚数で低下する。しかし、低温環境では加熱定着装置自体も冷えているため非通紙部昇温はすぐには高くなっておらず、むしろ、通電比率を早く低下させることにより端部の定着性が悪化してしまう。
逆に、高温環境では記録材も温まっており、常温と比較してプリント中の消費電力は小さく積算電力の増加量が少ない。そのため多くプリントを行わなければ通電比率は低下しない。しかし、加熱定着装置自体は温まっているため多くの枚数を端部発熱量の大きい第2の通電発熱抵抗層23cへの通電比率が高いままプリントを行うと非通紙部昇温が高くなりすぎてしまう。
本参考例では画像形成装置に環境温度を検知する手段50を具備させて、環境温度情報をCPU46にフィードバックさせる。CPU46は入力する検知環境温度に応じて、高温環境、常温環境、低温環境毎に第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cへの通電比率を変更するための積算電力閾値が異なることを特徴とする。つまり、CPU46は通電比率を下げるタイミングに相当する積算値の閾値を雰囲気温度に応じて設定するようになっている。
すなわち、CPU46のROMに、表11のような、高温環境(31℃よりも高温)、常温環境(17〜31℃)、低温環境(17℃よりも低温)に関する通電比率制御参照テーブルを記憶させてある。CPU46は入力する検知環境温度に応じて、対応する環境温度に関する参照テーブルに基づいて通電比率制御を実行させる。つまり表11のように高温環境になる程、第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cへの通電比率を低下させるための積算電力量を小さくする。
以上のような制御とすることにより、雰囲気温度がどのような温度であっても非通紙部昇温や端部定着不良を防止することができる。
[実施例]
以下に本発明の実施例について説明する。画像形成装置全体の構成、加熱定着装置構成、ヒータ構成等は前記参考例1と同様であるため再度の説明を省く。
本実施例においてもプリント開始からの積算電力値により第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cの通電比率を下げるが、画像形成装置が複数のプリントモード(単位時間あたりの出力枚数が異なる複数のプリントモード)を有する場合の制御について説明する。
本実施例では画像形成装置が2つのプリントモードを有している。すなわち、通常使用するノーマルモード、定着性の悪いラフ紙を確実に定着させるラフ紙モードである。
ラフ紙モードは定着性を向上させるためにヒータ23の温度を高く維持する上に、連続プリント時は給紙間隔を空け、記録材間隔を長くすることにより加圧ローラ24が温まりやすいようにしている。
一方、記録材が定着ニップ部Nを通過する際に上昇した非通紙部温度は記録材が定着ニップ部N内に存在しない間に低下するため、記録材間隔が長くなるほど非通紙部昇温は高くなりにくい。また、ラフ紙モードが記録材間隔を長くせず加熱ヒータの温度のみを高く維持する制御の場合であっても、ラフ紙モードではあらゆる記録材において定着性は確実に保証しなくてはならない。
したがって、本実施例では画像形成装置が複数のプリントモードを有し、プリントモード毎に第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cへの通電比率を変更するための積算電力閾値が異なることを特徴とする。
図6において、51はプリントモード選択手段である。このプリントモード選択手段51は画像形成装置のコントロールパネル(不図示)に配設されたプリントモード選択キーである。本実施例ではノーマルモードかラフ紙モードが選択される。
本実施例では、ノーマルモードは55枚/分でプリントを実施し、ラフ紙モードは45枚/分でプリントを実施している。
そして、ノーマルモードし、が選択された場合には、CPU46は、参考例1の表1を参照テーブルとする通電比率制御を実行する。ラフ紙モードが選択された場合には、表12の参照テーブルに基づいて通電比率制御を実行する。
すなわち、ラフ紙モードはノーマルモードと比較して、第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cへの通電比率を低下させるための積算電力量を大きくして端部発熱量の大きい第2の通電発熱抵抗層23cへの通電比率が高い状態を長く維持することにより端部の定着性を向上させる。
以下に参考例4について説明する。本参考例は、連続プリント中に給紙間隔を変更することが可能な画像形成装置で、変更された給紙間隔に応じて前記少なくとも2本の通電発熱体への通電比率を決定する構成(ラフ紙モード等のモード=紙間隔)である。
おおまかな画像形成装置全体の構成、加熱定着装置構成、ヒータ構成等は前記参考例1と同様であるため再度の説明を省く。
本参考例においてもプリント開始からの積算電力値により第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cの通電比率を下げるが、連続プリント中の給紙間隔変更された場合の制御について説明する。
本参考例では非通紙部昇温を防止するために記録材情報や定着器状態に応じて、連続プリント中に給紙間隔を変更している。例えば、発熱体幅に比べて十分幅の小さい記録材が連続してプリントされた場合は非通紙部温度が上昇するのを予測して定着器の状態や連続プリント枚数に応じて連続プリント中に給紙間隔を長くしている。すなわち、給紙間隔が長くなる場合は非通紙部温度が上昇しており、端部定着性は問題無い状態である。従って表13のように給紙間隔が長くなるにしたがって、積算電力量を加算し、給紙間隔が長くならない場合よりも早く第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cの通電比率を小さくするようにする。表13のような制御にすることにより端部の発熱量を更に小さくすることができ、非通紙部の昇温を抑えることができる。
以上説明した
参考例と実施例の通電比率制御を適宜組み合わせて実行させることもできることは勿論である。すなわち、プリント開始からの積算電力値により第1の通電発熱抵抗層23bに対する第2の通電発熱抵抗層23cの通電比率を下げることを基本にして、これに、ヒータのプリント開始時の温度、通紙使用される記録材のサイズ情報、雰囲気温度情報、プリントモード、給紙間隔変更情報等の他のパラグラフの1つ、又は複数の組み合わせ、もしくは全てを加味した参照テーブルにより通電比率制御を実行させることができる。