JP2010090491A - 再生粒子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】特に製紙用の填料または塗工用顔料として必要な特性を備えた再生粒子を、安定して製造する。
【解決手段】製紙スラッジの脱水物を含酸素状態で燃焼する燃焼工程を含み、さらに、その再生粒子を水中に懸濁してスラリーを得る際に、分散剤としてポリカルボン酸ソーダを再生粒子100重量部に対して、0.3〜2.0重量部(対固形分)添加する工程を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、脱墨フロスを主原料として再生粒子を得る再生粒子の製造方法に関するものである。
紙パルプ工場の各種工程から排出される製紙スラッジは、無機充填剤及び無機顔料粒子をかなりの割合で含み、これらの製紙スラッジは、回収され、流動床炉やストーカー炉などの焼却炉で製紙スラッジ中の有機物を燃焼して製紙スラッジの減容化を図るとともに、エネルギーとして回収されている。
しかしながら、製紙スラッジには、多量の無機物が含有されているため、燃焼しても多量の焼却灰(無機物)が残り、減容化にも限度がある。そこで、この焼却灰をセメント原料の助剤として活用することや、土壌改良材として活用すること等の努力もなされている。しかし、これらセメント原料の助剤や、土壌改良材のとしての焼却灰の使用量はわずかなものであり、結局、大部分の焼却灰は埋立て処分されているのが実情である。
そこで、焼却によって熱エネルギーとして回収するだけでなく、製紙スラッジ中の無機物を製紙用填料、顔料、プラスチック用充填剤等として再利用することは、製紙業界において古紙利用率の向上とともに環境問題に関わる重要な改善課題である。
しかしながら、製紙スラッジの焼却灰には燃焼されずに残った有機物がカーボンとして含まれるため白色度が低く、あるいは、無機物の焼結が進み、粒子径が不揃いで大きくなっており、そのままの状態では製紙用の填料や塗工用顔料、プラスチック用の充填剤等として使用するのに適さない。
そこで、特許文献1は焼却灰を再燃焼し、白色度を向上させてから使用する方法を開示している。
しかしながら、特許文献1の焼却灰を再燃焼する方法の場合、未燃焼カーボンを完全に燃焼させるため再燃焼温度を500℃〜900℃に設定する必要があり、焼却灰の白色度は50%程度にまでしか向上せず、製紙用の填料や塗工用顔料として使用するに適するものとはならないことが知見された。また、再燃焼温度を900℃超に設定すると、焼却灰(無機物)が焼結、溶融し、極めて硬くなることが知見された。また、再焼却灰を填料として使用すると、この再焼却灰は非常に硬い性質をもつため、抄紙ワイヤーの摩耗進行が早く、抄紙ワイヤーの寿命が非常に短くなるため、実操業には使用できるものではなかった。また、この再焼却灰を塗工用顔料として使用すると、再焼却灰が非常に硬い性質であるため、摩耗による塗工設備の毀損が生じると共に、カレンダー処理を行ってもその塗工層表面の平滑性が劣るという問題が生じる。
この点、再焼却灰を粉砕し、その粒子径を小さくして、摩耗の低減、平滑性の向上を図ることも考えられるが、焼却灰を再燃焼することにより過燃焼が生じやすく、再焼却灰のイオン性が不安定になり、分散時に不定形の凝集塊や不均一な分散状態を生じ易い、更に内添填料として使用する場合には、抄紙時における歩留りが低いものになり、焼却灰自体がきわめて硬いため、粉砕のためのエネルギーコストが極めて高いものとなる。
特許文献2では、製紙スラッジを、酸素含有ガスを注入した反応器内に供給し、250℃〜300℃、3000psig程度の加温加圧下で0.25時間〜5時間酸化して、製紙スラッジ中の無機物を製紙用の顔料として再生化する方法が提案されている。
しかし、この方法は、製紙スラッジを液相のままで湿式空気酸化処理によるものであるため、酸化処理ムラが生じやすく、特許文献1と同様にイオン性が不安定になり、分散時に不定形の凝集塊や不均一な分散状態を生じ易い、更に有機物除去が十分でなく、また、得られた顔料の白色度が低く、粒子径も不揃いで、製紙用の填料や顔料として使用するには不適であり、しかも反応操作が複雑でコストが高いという問題がある。
一方、特許文献3には、製紙スラッジをいぶし焼きしてPS炭とした後、さらにこれを内熱キルン炉で焼却して製紙用原料となる白土を生成させる方法が提案されている。しかし、この方法は製紙スラッジをいぶし焼きするため、製紙スラッジからエネルギーを有効に取り出すことができないばかりか、逆に投入エネルギーが必要になるという大きなデメリットがある。また、いぶし焼きにより、揮発分が除去され有機物が燃焼(酸化)し難い所謂「残カーボン」とよばれる状態となり、後工程での燃焼が困難になるとともに、残カーボンのために長い燃焼時間を掛けなければ高い白色度を得がたく、過焼問題が生じやすく、高いカチオン性を発現する問題が生じやすく、水分散時に凝集塊を生じると共に、分散性が劣悪になる。さらに、生成した白土も粒子径が不揃いで大きくなっており、また、内熱キルンで使用される重油バーナーからのカーボンやイオウ酸化物による汚染が生じ、製紙用顔料としては使用できないという問題がある。
特許文献4のように、排水処理汚泥をロータリーキルン炉内で連続して乾燥・炭化・燃焼する方法が知られている。この方法において使用される排水処理汚泥は、種々の発生源を有する汚泥で構成されているため、発生源や発生量の変動により、得られる造粒・成形物質においても変動が生じる問題を有し、当該特許文献においては、燃焼に先立って、造粒・成形するのは、燃焼を均一に行うためであると考えられるものの、実施の形態に記載されている固形分濃度40%〜60%(換言すれば水分率60%〜40%)の状態でロータリーキルン炉内で連続して乾燥・炭化・燃焼する場合、汚泥の乾燥状態、炭化状態のいかんに係らず、キルン炉の回転によって汚泥粒子は強制的に処理が進行してしまう。従って、乾燥が不十分であると粒子内部に未燃分が多く残留しその結果燃焼が不完全となって白色度の低下を生じ、逆に過乾燥になると燃焼は完全となるが過燃焼を招き、水分散時に不均一な分散状態を招きやすく、得られた再生粒子の硬度が高くなり、この再生粒子を使用すると抄紙機でのワイヤー摩耗や紙を断裁する場合のカッター刃摩耗が生じやすくなるという問題を引き起こす。
先行する特許文献1〜4に記載の製紙スラッジを原料とする場合における最も大きな問題点は、原料とする製紙スラッジが、過燃焼等の影響により水分散時に均質な分散状態を得難く、また、抄紙工程でワイヤーを通過して流出したもの、パルプ化工程での洗浄過程で発生した固形分を含む排水から回収したもの、排水処理工程において、沈殿あるいは浮上などを利用した固形分分離装置によりその固形分を分離、回収したもの、古紙処理工程での混入異物除去したもの等の各種スラッジが混在している点である。
これらの製紙スラッジのうち、例えば、抄紙工程でワイヤーを通過して流出したものは、紙力剤等が混入しており、また、抄紙工程における抄造物の変更によって品質に変動が生じる。また、排水処理工程から回収した製紙スラッジには凝集剤が混入する他、工場全体の抄造物、生産量の変動、あるいは生産設備の工程内洗浄などにより大きな変動が生じる。
パルプ化工程での洗浄過程から生じる製紙スラッジにおいては、チップ水分やパルプ製造条件で変動が生じる他、さまざまな填料、顔料とすることができない物質が混入し、品質変動が生じる。従って、全ての製紙スラッジを無選別に用いようとすると、製紙用の填料や塗工用顔料としての品質が大きく低下し、しかも品質の変動が極めて大きく、不安定なものとなる。
すなわち、従来公知の方法で得られる再生粒子は、イオン性の変動はもとより、製紙用の填料や塗工用顔料、プラスチック用等の充填剤として使用するには品質が適さず、品質安定性に欠けるものであった。
特開平11−310732号公報 特公昭56−27638号公報 特開昭54−14367号公報 登録3812900号公報
本発明が解決しようとする課題は、特に製紙用の填料または塗工用顔料として必要な特性を備えた再生粒子を、安定して製造することにある。そして主たる課題は、再生粒子のスラリー化に際して、アニオン性の強い分散剤を用いることにより、再生粒子の凝集を防止し、均質な分散を得ることにある。
本発明者らは、優れた再生粒子を得るために、特開2008−127704において、紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料として、前記主原料を脱水、乾燥、燃焼及び粉砕工程を経て、再生粒子を得る再生粒子の製造方法であって、前記乾燥と燃焼工程が、前記脱水後の原料の乾燥と燃焼を一連で行う先の第1燃焼炉と第1燃焼炉にて燃焼された脱墨フロスを再度燃焼する、後の第2燃焼炉を有する、少なくとも2段階の燃焼工程を有し、その後に粉砕し、再生粒子を得る操作を有する再生粒子の製造方法を提案した。
さらに、その具体的な提案内容は、第1燃焼炉(内熱キルン炉)内の酸素濃度が0.2%〜20%となるように、500℃〜650℃の熱風を吹き込み、第2燃焼炉では、内熱キルン炉からの燃焼物を、550℃〜750℃の温度で燃焼するものである。
しかしながら、古紙パルプを製造する脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスは、本発明が得ようとする再生粒子の原料となる微細な無機微粒子を含有すると共に、古紙パルプとして利用が困難な微細繊維や塗工紙に多用される有機高分子であるラテックス、印刷により付与されたインキ成分を多く含み、燃焼処理においては脱墨フロスそのものが自ら燃焼反応(酸化)を生じ燃焼するため、先の出願で提案した熱風による加熱処理以上の発熱が生じ、原料の過剰燃焼を引き起こす問題がみられることを知見した。
過剰な燃焼は、次記の問題を招いている。(1)高温燃焼により原料が黄変化し白色度の低下を招く。(2)原料の溶融によりゲーレナイト等の硬質物質(参考:特願2007−22377)を生じやすくなり、抄紙設備でのワイヤー摩耗度が上昇する。(3)原料の溶融による凝集体を形成するため、後の微粉砕工程において粉砕エネルギーの増加、処理効率が低下する。(4)原料の表面が高温に晒され、原料内部よりも先に溶融されるため、原料内部まで燃焼反応(酸化反応)が進まず、有機物(カーボン)が残留する(結果として白色度の低下を招く)。
本発明者らは、前記問題を解決する手段として、過剰な燃焼をコントロールする方策に着目し、鋭意検討を行った結果、第1次燃焼炉において、燃焼温度を原料である脱墨フロスが自燃せず、脱墨フロス中に含有される有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)を放出するに必要なだけの第1次燃焼炉の炉内温度に留め、有機成分ガスの燃焼反応(酸化反応)のみを促進させることが、前記問題を解決できることを見出した。
さらに、第1次燃焼炉内において、燃焼ガス(可燃焼ガス)を燃焼させるために必要な酸素濃度0.2%〜20%を確保するとともに、脱墨フロスの過剰燃焼を防止するため、熱風供給に加え、原料となる脱墨フロスの含有水分を高める方策が有効であることを見出している。本発明者らの知見によると、第1次燃焼炉内の酸素濃度0.2%〜20%を確保することは、燃焼が促進される炉内環境となるため、脱墨フロスの過剰燃焼が発生しやすくなる。
しかるに、原料となる脱墨フロスの脱水後の水分を、40%以上、望ましくは90%未満、より好適には40%〜70%、最適には45%〜70%の高含水状態で第1次燃焼炉内に供給することが、脱墨フロスの過剰燃焼を防止するために適していることを知見した。その理由は、第1次燃焼炉内に高含水状態で供給することで、第1次燃焼炉内において水の蒸発により、炉内温度が低下し、脱墨フロスの自燃を抑え、発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)のみの燃焼を促進し、過剰な燃焼温度の上昇を抑制することができるものと考えられる。
他方、より好適には、第2次燃焼炉内の内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び/または軸心と平行な平行リフターを配設することで、原料の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる。
先に述べた発明者等の知見によると、第1次燃焼炉では、低い燃焼温度で原料脱墨フロスを燃焼反応に晒し、均質な第1次燃焼炉出口原料を得たのち、残留する白色度を低下させる原因となる炭素分をできる限り燃焼させる必要があるため、原料を緩慢に燃焼させる必要があり、可能な限り均一な燃焼を連続的に実施するには、第2次燃焼炉内での原料搬送速度を適宜コントロールする方策が最も好適と考えられ、その手段として、リフター設備を用い、原料の搬送速度を調整可能にすることができることも見出した。しかるに、公知のリフターは鉄素材で一般に製造されているため、鉄分がコンタミとして原料中に含有され、鉄の酸化により白色度を低下させる問題を招く。そこで、本発明者らは、ステンレス製のリフターを第2次燃焼炉に設けることで、前記鉄の酸化問題を生じることなく、白色度の低下がないなど、高品質の再生粒子を製造できる技術を見出した。
なお、第2次炉の構造としては、外熱または内熱キルンどちらも適宜採用することができる。外熱キルンはバーナーの直火が原料に直接晒されないため、過焼を防止でき、均一な焼成品質(高い白色度が得られる)一方、内熱キルンは、内部に貼り付けた耐火物が断熱性を持つと同時に遠赤外線を放出し、少ない熱量で加温できるメリットがある。第2燃焼炉の構造については、これら諸条件を鑑みて適宜選択できるが、いずれに方式についてもリフターを設けることが最適である。
上記のように再生粒子の製造における燃焼工程において、再生粒子を過燃焼させることなく焼成する必要がある。しかし、燃焼工程内での燃焼変動により一部過燃焼した再生粒子が生じる場合があり、その場合、過燃焼された再生粒子は、高濃度スラリー化(50〜70%)した際に、増粘凝集する問題が生じ、希釈や多量の分散剤が必要になるなど、使用に問題が生じている。また、場合によっては全くスラリー化できない問題が生じる。塗料は乾燥性、操業性、塗工紙の品質安定性の観点から高濃度化が進んでおり、濃度低下はそれらの品質を低下させる。そのため、高濃度スラリー化が必要となり、この濃度を下げることは好ましくない。
増粘凝集の問題の発生要因を鋭意検討した結果、過燃焼された再生粒子が一部カチオン性を有し、アニオン性の分散剤が分散ではなく、凝集作用を招く問題を発現させている可能性があることを知見した。その解決法として、分散剤の過剰添加が考えられるが、分散剤が過剰に添加されている状態では、その他の無機顔料(炭酸カルシウム、クレー等)が最適な分散剤添加率によって調整されている所に過剰な分散剤が添加されるため、塗料調整後に増粘または逆に粘度低下等の塗料品質の変動に繋がり、好ましくない。
本発明者は、これらの知見をもとに、アニオン性の強い分散剤を用いてカチオン性を中和させながら残るアニオン性でカチオン性を呈する再生粒子を分散させることが有効であることを見出した。
更に好適には、本発明における、第1次燃焼炉において、燃焼温度を原料である脱墨フロスが自燃せず、脱墨フロス中に含有される有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)を放出するに必要なだけの第1次燃焼炉の炉内温度に留め、有機成分ガスの燃焼反応(酸化反応)のみを促進させる方策、さらに、第1次燃焼炉内において、燃焼ガス(可燃焼ガス)を燃焼させるために必要な酸素濃度0.2%〜20%を確保するとともに、脱墨フロスの過剰燃焼を防止するため、熱風供給に加え、原料となる脱墨フロスの含有水分を高める方策との組合わせにおいて、より高品質の再生粒子を得ることができることを見出した。
ここに提案する本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
製紙工場からの製紙スラッジについて、脱水、乾燥、燃焼および粉砕工程をこの順に経て再生粒子を製造する方法であって、前記燃焼工程からの燃焼灰そのまま、並びに粉砕工程を経て得られる粉砕後の燃焼灰の少なくとも一方からなる固体粒子を水中に懸濁して、スラリーを得るとともに、前記スラリー中にポリカルボン酸ソーダを主剤とする分散剤を添加することを特徴とする再生粒子の製造方法。
〔請求項2記載の発明〕
前記スラリー化が、スラリー濃度50〜70%の高濃度で行なわれる請求項1記載の再生粒子の製造方法。
〔請求項3記載の発明〕
前記ポリカルボン酸ソーダを主剤とする分散剤が、再生粒子100重量部に対して、0.3〜2.0重量部(対固形分)添加されている請求項1又は2記載の再生粒子の製造方法。
〔請求項4記載の発明〕
前記製紙スラッジは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離される残渣である脱墨フロスであり、前記燃焼工程が、第1燃焼工程と、第1燃焼炉にて燃焼された再度燃焼する、後の第2燃焼工程とを有する、少なくとも2段階の燃焼工程を有し、前記第1燃焼工程において、300℃以上〜500℃未満で燃焼処理を行う請求項1から3のいずれかに記載の再生粒子の製造方法。
〔請求項5記載の発明〕
前記第1燃焼炉が、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉であり、前記脱水後の原料の水分率が40%以上である請求項4に記載の再生粒子の製造方法。
〔請求項6記載の発明〕
前記内熱キルン炉内の酸素濃度が0.2%〜20%となるように、300℃以上で500℃未満の熱風を吹き込む請求項5記載の再生粒子の製造方法。
〔請求項7記載の発明〕
第2燃焼炉が、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉であり、前記キルン炉内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び軸心と平行な平行リフターの少なくとも一方を配設する請求項4に記載の再生粒子の製造方法。
本発明に従えば、再生粒子の製造における燃焼工程内での燃焼変動により、一部過燃焼した再生粒子が生じた際においても、高濃度スラリー化における増粘凝集が抑えられ、希釈や分散剤の多量使用の必要がなくなるという効果がある。
以下では、本発明の位置付け、本発明の工程全体に関する実施の形態、次いでスラリー化に関する実施の形態の順で説明する。
<本発明の位置付け>
たとえば、製紙用スラッジを燃焼する場合、(1)特開2003−119695号公報記載の発明では、乾燥物を炉内の酸素濃度が0.1体積%以下となる実質的に酸素が存在しない貧酸素状態で、具体的には間接加熱炉(外熱燃焼炉)によって乾燥及び炭化処理する。次に炭化物に含まれる有機物由来の炭素を酸化させて脱炭素する、具体的には間接加熱炉によって白化処理する方法が提案されている。また、同発明は、後者の白化処理については内熱ロータリーキルン炉を使用することも教示している。
他方、本出願人は、(2)特開2002−275785号として、炭化後に再燃焼のためにロータリーキルン炉を使用することも教示している。
さらに、本出願人は、(3)特許3808852号として、「原料スラッジとして脱墨スラッジを用い、これを乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥させた脱墨スラッジをサイクロン型燃焼炉の炉上部から炉内に供給し、旋回下降させつつ燃焼させ未燃分を含む一次燃焼物を得る一次燃焼工程と、前記サイクロン型燃焼炉に連通し、その下端からの未燃分を含む一次燃焼物を受けて、機械的な攪拌により酸素との接触を促進させながら、前記一次燃焼工程の燃焼熱を利用して所定の白色度となるまで燃焼させる二次燃焼工程とを含む、ことを特徴とする脱墨スラッジからの白色顔料または白色填料の製造方法。」を提案した。
また、(4)特開2004−176208号においては、「塗工紙製造工程の排水処理汚泥」から填料を製造するに際し、成形汚泥を「一つのロータリーキルン炉内で乾燥、炭化、燃焼」を行うことを提案している。
上記(1)(2)及び(4)は、古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料とするものではなく、前述の製紙スラッジを主原料とするものである。そして、得られる再生粒子は、再生粒子「凝集体」とは異なるものと考えられる。
一方、(3)の方法によれば、本発明の実施の形態によって得られるものと同様な再生粒子を得ることができる。しかし、同方法ではサイクロン式流動燃焼炉を使用し、乾燥物を燃焼し、次いで二次燃焼を行っている。
しかし、サイクロン式流動燃焼炉自体の形式に由来するものと考えられるが、サイクロン式は数十〜数百ミクロンの原料と空気を旋回流として供給口から供給し、空気の旋回作用により空気と効果的に混合されながら燃焼させるため、原料に含有される微粒子が、排ガスとともに系外に排出され製品歩留りが低下する問題、主原料である脱墨フロスの燃焼時間(加熱時間)が短時間であることにより未燃焼分が生じやすい問題、最終的に得られる燃焼物の品質(特に形状)が一定でなく、燃焼物の白色度もバラツキが生じる場合があることが知見された。
そこで、本発明者は、過剰燃焼させないで、得られる再生粒子のイオン性を安定化させることで水分散時の均質化を図り、品質の安定した再生粒子を得る手段について検討を重ね、燃焼工程が、第1燃焼工程と、第1燃焼炉にて燃焼された脱墨フロスを再度燃焼する、後の第2燃焼工程とを有する、少なくとも2段階の燃焼工程を有し、前記第1燃焼工程において、300℃以上〜500℃未満で燃焼処理を行うことで、品質の安定した再生粒子を得、水分散時にポリカルボン酸ソーダを主剤とする分散剤を添加することで、高品質の再生粒子を製造できることを見出し、本発明を解決できたものである。
更に、イオン性が安定した好適な再生粒子を得る態様としては、脱水後の原料の乾燥と燃焼が一連で行われ、内熱による第1次燃焼炉における燃焼時間(滞留時間)が30分を超え90分以下、より好適には40分〜80分の、最適には50分〜70分第1燃焼炉を用い、好ましくは本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱(直接加熱)キルン炉により、前記脱水後の原料の乾燥及び燃焼を行い、次に、第1燃焼炉から得られる燃焼物を再度燃焼する燃焼時間(滞留時間)が、60分以上の、より好適には60分〜240分、特には90分〜150分、最適には120分〜150分の、外熱による第2燃焼炉を用い、好ましくは本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱(間接加熱)キルン炉、特に燃焼温度を容易に調整可能な外熱電気炉により、燃焼する方法を採用するものである。
また、後に図面と共に説明する実施の形態では、第1燃焼炉として内熱キルン炉、第2燃焼炉として外熱キルン炉を選択し詳説するが、これらのキルン炉としては公知の燃焼炉を使用できる。また、キルン炉に限定されることなく、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等、公知の装置を用いることもできる。
本発明において好適な態様は、先の第1燃焼炉を内熱で行い、後の第2燃焼炉を外熱で行うものである。さらに、この外熱第2燃焼炉としては重油等を熱源にした間接加熱方式の燃焼炉等の公知の燃焼方法が採用こともできる。
第1燃焼炉として好適に用いることができる内熱キルン炉によれば、乾燥及び燃焼を一つの炉で行うことができ、供給口から排出口に至るまで、緩やかに安定的に乾燥及び燃焼が進行し、かつ燃焼物の微粉化が抑制される。また、第2燃焼炉として好適に用いることができる外熱キルン炉により燃焼すると、その端部から燃焼物を所定の滞留時間をもって、他端部の排出口から排出でき、さらに外熱により燃焼物に均一な熱が加わるので、燃焼が均一なものとなり、燃焼のバラツキを生じさせないものとなる。さらに、キルン炉内壁の回転による摩擦によって燃焼物が緩やかに攪拌されるため、微粉化を生じにくい。その結果、最終的な燃焼物の品質及び形状が安定したものとなるのである。
従来の第1燃焼炉においては、原料中の微細繊維や塗工紙に多用される有機高分子であるラテックス、印刷により付与されたインキ成分等を効率よく燃焼させるために、水分率を40%未満に脱水乾燥させ、高温で燃焼させる方法が先に述べた公知文献にも記載されているものの、本発明者等の知見では、第1燃焼炉においては300℃以上〜500℃未満の従来に比して低温で加温操作することにより、原料中から、原料に含有される有機物が燃焼ガス化し、燃焼ガスを燃焼(酸化)させることが、得られる再生粒子のイオン性が安定化し、ポリカルボン酸ソーダを主剤とする分散剤と組合わせることで均一な分散が図れ、得られる再生粒子の品質安定化、白色度向上に対する寄与が大きいことを見出している。
上記のとおり、乾燥、燃焼の工程を、好適には内熱キルン炉と外熱キルン炉にて、少なくとも2段階の燃焼炉により行うことで、均一で安定的な再生粒子が得られる。
好適な燃焼炉として用いられる内熱または外熱キルン炉は、内部耐火物を円周状でなく、六角形や八角形とすることで燃焼物を滑らすことなく持ち上げて攪拌することができるが、現実には、キルン炉として円筒形であり、燃焼物攪拌用のリフターを設けることが、原料の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる点で最適である。これは、第1燃焼炉において、本発明が低温でじっくり原料全体を燃焼することを意図することとも関係すると考えられる。
ここで、本発明者らが好適な再生粒子を得るに当り、最も注力した燃焼炉の選択について説明する。
従来から慣用的に用いられてきた燃焼炉は、ストーカー炉(固定床)、流動床炉、サイクロン炉、キルン炉の4種に大別でき、本発明者らは、それぞれの焼却炉で再生粒子の製造の検討を重ねたところ、次記の事項が明らかとなった。
・ストーカー炉(固定床)については、脱墨フロスの燃焼度合い調整が困難であり、燃焼物が不均一である上に、灰分の多い脱墨フロスの燃焼では火格子間のクリアランスから落塵を生じるため適さない。火格子を通し燃焼物の下に空気を吹上げ燃焼させるため、炭酸カルシウムなどが飛灰となり排ガスとともに排ガス設備へ送られるため、歩留の低下が問題となる。
・流動床炉については、炉内の流動媒体に珪砂のような粒子状の流動媒体を使用するため、珪砂が再生粒子へ混入し品質の低下を招く問題を有する。均一な攪拌ができない。硅砂を流動層混合して燃焼させた後、硅砂と燃焼物を分離し、硅砂は燃焼炉へ戻し燃焼物のみを取り出すが、燃焼物も硅砂と同程度の粒径が生じるため分離できない。硅砂と浮遊した状態で燃焼させているため、燃焼の度合い調整が困難であり、品質のばらつきが発生する。燃焼炉のストーカ(階段状)を、所定幅で、燃焼物が通過しながら燃焼するため灰の攪拌が不十分で幅方向で燃焼にバラツキが発生する。また、硬度の高い珪砂との摩擦、衝突により燃焼物が微粉化され飛灰となって系外へ排出され歩留りが低下する。
・サイクロン炉については、炉内を一瞬で通過するため燃焼物中の固定炭素を十分に燃焼できず白色度の低下に繋がる、さらに、風送により細かい粒子はサイクロンで分離されず排ガスと一緒に排ガス処理工程に回るため歩留が低下する。
前記諸問題について鋭意検討を重ねた結果、燃焼炉としてはキルン炉にて燃焼させることが最も好適な燃焼手段として選択され、さらに以下の理由から、本発明において最適な実施の形態である、先の第1燃焼炉を内熱キルン、後の第2燃焼炉を外熱キルンとすることは次記の理由から好適であることを見出している。
外熱キルン炉は、キルン炉の外側に加熱設備を設けた構成となるため、キルン炉の構造が複雑になるとともに、燃焼物を間接的に乾燥、燃焼させるゆえに多量の熱源が必要になるため、本発明に係る、脱水後の水分率が高い原料の乾燥、燃焼処理に外熱キルン炉を先の第1燃焼炉として使用した場合には、乾燥・燃焼効率が低くなり、生産性が悪く、温度の制御が困難になるとともに多大なエネルギーコストを必要とし、費用対効果が極めて低くなる。
また、内熱キルン炉を2次燃焼炉に使用した場合には、残カーボンを燃焼するにおいて、炉内温度の調整に多量の希釈空気が必要であり、また、多量の空気を投入しないと燃焼熱を内熱キルン炉内に均一に伝えることが困難であり、さらに炉内温度の変動を抑えることが困難であるため、燃焼物の過燃焼や燃焼ムラが生じやすい問題を呈する。
さらに、通常加熱に使用される重油バーナーからの重油燃焼残カーボンやイオウ酸化物等による汚染が発生し、製品段階で白色度の低下やバラツキが生じ、得られる燃焼物の品質の均一化が困難な問題が生じる。
次に、本発明の工程全体に関する実施の形態の一例を、図面を参照しながら説明する。
<工程全体に関する実施の形態>
本形態の再生粒子の製造設備フローは、脱水工程、乾燥・燃焼工程、粉砕工程を有するが、さらに、脱墨フロスの凝集工程または造粒工程や、各工程間に分級工程等を設けてもよい。
図1に、再生粒子の製造設備フローの一部構成例(乾燥・燃焼工程、及び燃焼工程を含む設備例)を示した。本設備には、各種センサーが備わっており、被燃焼物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行っている。
図示しない、古紙パルプを製造する脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスは、種々の操作を経て、同じく図示しない公知の脱水設備により脱水される。脱水後の原料は、40%以上、望ましくは90%未満、特には45%〜70%、より好適には50%超〜60%の高含水状態とすることが望ましい。
かかる脱水後の原料10は、望ましくは、粉砕機(または解砕機)により40mm以下の粒子径に粉砕しておく。かかる原料10が貯槽12から切り出されて、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉である、第1燃焼炉14の一方側から装入機15により装入される。第1燃焼炉14の一方側には、排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。排出チャンバー18を貫通して、熱風が第1燃焼炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、第1燃焼炉14の回転に伴って前記他方側に順次移送される原料の乾燥及び燃焼を行うようになっている。
ここで、第1燃焼炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度が0.2%〜20%となるようにするのが望ましい。炉内温度としては、300℃〜500℃未満、より望ましくは400℃〜500℃未満、特に400℃〜450℃が望ましい。熱風は、バーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
排ガスチャンバー16からは、乾燥・燃焼に供した排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。排ガス中に含まれる燃焼物の微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再利用される。排ガスは、再燃焼室22でバーナーにより再燃焼が行われ、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通し、誘引ファン28により煙突30から排出される。ここで、熱交換器26は外気を昇温した後に、熱風発生炉20に送られ、第1燃焼炉14から吹き込まれる熱風の用に供せられ、排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収するようにしてある。排ガスの処理は、排ガス中に含まれる有害物質の除去に有効である。
第1燃焼炉14において乾燥及び燃焼処理を経た燃焼物は、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉である、第2燃焼炉32に装入される。この装入される燃焼物の粒径としては、40mm以下が好適である。第2燃焼炉32での熱源としては、第2燃焼炉32内の温度コントロールが容易で長手方向の温度制御が容易な電気による調整が好適であり、したがって、電気ヒーターにより間接的に第1燃焼炉14から得られる燃焼物を再び燃焼させる外熱式の第2燃焼炉32であることが望ましい。
第2燃焼炉32においては、酸素濃度を調整する空気あるいは酸素の供給機構(図示せず)にて酸素濃度が5%〜20%、望ましくは10%〜20%、特に望ましくは10%〜15%となるように燃焼するのが望ましい。温度としては、550℃〜780℃、望ましくは600℃〜750℃が望ましい。また、第2燃焼炉内での滞留時間は60分以上、より好適には60分〜240分、特には90分〜150分、最適には120分〜150分が、残カーボンを完全に燃焼させるに望ましい。
燃焼が終了した再生粒子は、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により選別され、湿式粉砕機等を用いた粉砕工程で目的の粒子径に調整された燃焼物が燃焼品サイロ38に一時貯留され、顔料や填料の用途先に仕向けられる。
なお、脱墨フロスを原料として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他製紙スラッジを適宜混入させたものを原料とした燃焼物であってもよい。
以上、概要を説明したが、その詳細及び応用例などを以下に説明する。
〔原料〕
古紙パルプ製造工程では、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産する目的から、使用する古紙の選定、選別を行い、一定品質の古紙を使用する。
そのため、古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類やその比率、量が基本的に一定になる。しかも、再生粒子の製造方法において未燃物の変動要因となるビニールやフィルムなどのプラスチック類が古紙中に含まれていた場合においても、これらの異物は脱墨フロスを得る脱墨工程に至る前段階で除去することができる。従って、脱墨フロスは、工場排水工程や製紙原料調成工程等、他の工程で発生する製紙スラッジと比べ、極めて安定した品質の再生粒子を製造するための原料となる。
本発明で云う脱墨フロスとは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離されるものをいう。
〔脱水工程〕
脱墨フロスの更なる脱水は、公知の脱水手段を適宜に使用できる。本形態における一例では、脱墨フロスは、脱水手段たる例えばスクリーンによって、脱墨フロスから水を分離して脱水する。スクリーンにおいて、水分を90%〜97%に脱水した脱墨フロスは、例えばスクリュープレスに送り、さらに所定の水分に脱水することが好適である。
脱水後の原料の水分率が70%を超えると、第1燃焼炉における乾燥・燃焼処理温度の低下を招き、加熱のためのエネルギーロスが多大になるとともに、原料の燃焼ムラが生じやすくなり均一な燃焼を進めがたくなる。さらに、排出される排ガス中の水分が多くなり、ダイオキシン対策における再燃焼処理効率の低下と、排ガス処理設備の負荷が大きくなる問題を有する。また、脱水後の原料の水分率が40%未満と低いと、脱墨フロスの過剰燃焼の原因となる。また、脱水処理エネルギーの削減にも寄与する。
以上の説明で明らかにしたように、脱墨フロスの脱水を多段工程で行い急激な脱水を避けると、無機物の流出が抑制でき脱墨フロスのフロックが硬くなりすぎるおそれがない。脱水処理においては、脱墨フロスを凝集させる凝集剤等の脱水効率を向上させる助剤を添加しても良いが、凝集剤には、鉄分を含まないものを使用することが好ましい。鉄分が含有されると、鉄分の酸化により再生粒子の白色度を下げる問題を引き起こす。
脱墨フロスの脱水工程は、本発明における再生粒子の製造工程に隣接することが生産効率の面で好ましいが、予め古紙パルプ製造工程に隣接して設備を設け、脱水を行った物を搬送することも可能であり、トラックやベルトコンベア等の搬送手段によって定量供給機まで搬送し、この定量供給機から乾燥・燃焼工程に供給する。
かかる脱水後の原料10は、第1燃焼炉に供給する操作において、望ましくは、粉砕機(または解砕機)により平均粒子径40mm以下の粒子径に揃えることが好ましく、より好ましくは平均粒子径が3mm〜30mm、さらに好ましくは平均粒子径が5mm〜20mmの範囲に成るように調整することが好ましく、好適には粒子径が50mm以下の割合が、70重量%以上に成るように粉砕しておくことがより好ましい。脱墨フロス中に含まれる炭酸カルシウムの熱変化を来たさない燃焼処理を図るため、原料の粒子径は均一であることが好ましいところ、平均粒子径が3mm未満では過燃焼になりやすく、40mmを超える平均粒子径では、原料芯部まで均一に燃焼を図ることが困難な問題を有するためである。
前記平均粒子径と粒子径の割合は、攪拌式の分散機で充分分散させた試料溶液を用いて測定した。各燃焼行程における粒子径は、JIS Z 8801−2:2000に基づき、金属製の板ふるいにて測定した。
〔第1燃焼工程〕(乾燥、燃焼工程)
かかる原料10が貯槽12から切り出されて、第1燃焼炉に供給される。第1燃焼炉は本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉方式からなり、内熱キルン炉14の一方側から装入機15により装入される。内熱キルン炉加熱手段は、熱風発生炉にて生成された熱風を内熱キルン炉の排出口側から、脱水物の流れと向流するように送り込まれる。内熱キルン炉14の一方側には、排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。排出チャンバー18を貫通して、熱風が内熱キルン炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、内熱キルン炉14の回転に伴って前記他方側に順次移送される原料の乾燥及び燃焼を行うようになっている。
すなわち、本乾燥・燃焼工程は、脱水物を、本体が横置きで中心軸周りに回転する、内熱キルン炉によって乾燥・燃焼することにより、供給口から排出口に至るまで、緩やかに乾燥と有機分の燃焼が行え、燃焼物の微粉化が抑制され、凝集体の形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物の燃焼度合いの制御と粒揃えを安定的に行うことができる。また、乾燥を別工程に分割し吹き上げ式の乾燥機を入れることもできる。
ここで、内熱キルン炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度が0.2%〜20%が好ましく、より好ましくは1%〜17%、最も好ましくは7%〜15%となるようにするのが望ましい。
酸素濃度は、原料の燃焼(酸化)により消費されるため、燃焼の状況により酸素濃度に変動を生じる。酸素濃度が過度に低いと、十分な燃焼を図ることが困難である。燃焼炉内の酸素は、原料の燃焼等によって消費され酸素濃度が低下するが、燃焼させるための熱風発生装置等により、空気などの酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、酸素濃度を維持、調節可能であり、さらに酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、燃焼炉内の温度を細かく調節可能になり、原料をムラなく万遍に燃焼することができる。
第1燃焼炉の炉内温度としては、300℃〜500℃未満、特に400℃〜500℃未満、特に好ましくは、400℃〜450℃が望ましい。第1燃焼炉においては、容易に燃焼可能な有機物を緩やかに燃焼させ、燃焼しがたい残カーボンの生成を抑える目的から燃焼温度300℃〜500℃未満の温度範囲で燃焼することが好ましい。過度に温度が低いと、有機物の燃焼が不十分であり、過度に温度が高いと過燃焼が生じ、炭酸カルシウムの分解による酸化カルシウムが生成し易くなる。さらに、熱風の温度が500℃以上の場合は、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する燃焼物の粒揃えが進行するよりも早く乾燥・燃焼が局部的に進むため、粒子表面と内部の未燃率の差を少なく均一にすることが困難になる。
熱風は、バーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
排ガスチャンバー16からは、乾燥・燃焼に供した排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再び原料に配合され再利用される。
排ガスは、再燃焼室22でバーナーにより再燃焼が行われ、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通し、誘引ファン28により煙突30から排出される。ここで、熱交換器26は外気を昇温した後に、熱風発生炉20に送られ、内熱キルン炉14から吹き込まれる熱風の用に供せられ、排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収するようにしてある。
第1燃焼炉は、脱墨フロス中に含有される燃焼容易な有機物を緩慢に燃焼させ、残カーボンの生成を抑制するため、好適には前記条件で30分〜90分の滞留時間で燃焼させることが好ましい。より好ましくは、40分〜80分が有機物の燃焼と生産効率の面で好ましい。最も好ましくは、50分〜70分の範囲が恒常的な品質を確保するために好ましい。燃焼時間が30分未満では、十分な燃焼が行われず残カーボンの割合が多くなる。燃焼時間が90分を超えると、原料の過燃焼による炭酸カルシウムの熱分解が生じ、得られる再生粒子が極めて硬くなる。
特に、次工程の第2燃焼工程内に供給する燃焼物の未燃率を、2質量%〜20質量%に乾燥・燃焼することが好ましく、より好ましくは未燃率を、5〜17質量%、特に好ましくは未燃率を、7質量%〜12質量%にすることが望ましい。
未燃率を、2質量%〜20質量%にすることで、第2燃焼工程での燃焼を短時間に効率よく行うことができるとともに、外熱炉における安定した加熱により、硬度が低く白色度が80%以上、少なくとも70%以上の高白色度の燃焼物を得ることができる。未燃物が2質量%未満では、先の第1次燃焼炉におけるエネルギーコストが高いものとなるとともに、燃焼物の硬度が比較的高くなっている場合があり、第2燃焼炉出口における白色度の低下等の品質低下を来たす場合がある。
〔第2燃焼工程〕
内熱キルン炉14において乾燥及び燃焼処理を経た燃焼物は、移送流路を通して、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱ジャケット31を有する第2燃焼炉にあたる外熱キルン炉32に装入される。
この燃焼炉では、燃焼物を、外熱で加温しながらキルン炉内壁に設けたリフターにより、原料の燃焼炉内での搬送を制御し、緩慢に燃焼させることで、さらに均一に未燃分を燃焼する。
第2燃焼炉における燃焼においては、第1燃焼炉で燃焼しきれなかった残留有機物、例えば残カーボンを燃焼させるため、第1燃焼炉において供給される原料の粒子径よりも小さい粒子径に調整された燃焼物を用いることが好ましい。乾燥・燃焼工程後の燃焼物の粒揃えは、平均粒子径が10mm以下となるように調整するのが好ましく、さらに好適には平均粒子径1mm〜8mmとなるように調整するのがより好ましく、平均粒子径を1mm〜5mmとなるように調整するのが特に好ましい。
第2燃焼炉入り口での平均粒子径が1mm未満では、過燃焼の危惧があり、平均粒子径が10mmを超える粒子径では、残カーボンの燃焼が困難であり、芯部まで燃焼が進まず得られる再生粒子の白色度が低下する問題を引き起こす。第2燃焼炉での安定生産を確保するためには、平均粒子径が1mm〜8mmの燃焼物が70%以上に成るように粒子径を調整することが好ましい。従って、得られる再生粒子の品質を均一にするという観点における実用化可能性に、有益である。さらに、本形態のように、分級を乾燥後とすると、小径な粒子の燃焼物を確実に除去することができ、また、処理効率も向上する。
外熱キルン炉32での外熱源としては、外熱キルン炉32内の温度コントロールが容易で長手方向の温度制御が容易な電気加熱方式の電気炉が好適であり、したがって、電気ヒーターによる外熱キルン炉32であることが望ましい。
外熱に電気を使用することにより、温度の調整を細かくかつ内部の温度を均一にコントロール可能になり、凝集体の形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物の燃焼度合いの制御と粒揃えを安定的に行うことができる。
さらに電気炉は、電気ヒーターを炉の流れ方向に複数設けることで、任意に温度勾配を設けることが可能であると共に、燃焼物の温度を一定時間、一定温度保持することが可能であり、第1燃焼炉を経た燃焼物中の残留有機分、特に残カーボンを第2燃焼炉で炭酸カルシウムの分解を来たすことなく未燃分を限りなくゼロに近づけることができ、例えば重質炭酸カルシウムと比べ、比較的低いワイヤー摩耗度で、高白色度の再生粒子を得ることができる。
外熱キルン炉32においては、酸素濃度が5%〜20%、より好ましくは10%〜20%、最も好ましくは、10%〜15%となるようにするのが望ましい。酸素濃度は、第2焼成炉に適宜の手段により酸素または空気投入量のコントロールによって行うことができる(具体的な形態の図示は省略してある)。
外熱キルン炉内の酸素濃度が、5%未満では、燃焼困難な残カーボンの燃焼が進まない問題を生じる。
温度としては、550℃〜780℃、より好ましくは600℃〜750℃である。
第2燃焼炉は先に述べたように、第1燃焼炉で燃焼しきれなかった残留有機物、特に残カーボンを燃焼させる必要があるため、第1燃焼炉よりも高温で燃焼させることが好ましく、燃焼温度が550℃未満では、十分に残留有機物の燃焼を図ることが困難であり、燃焼温度が750℃を超える場合は、燃焼物中の炭酸カルシウムの酸化が進行し、粒子が硬くなる問題が生じる。
また、滞留時間は60分以上の、より好適には60分〜240分、特には90分〜150分、最適には120分〜150分が望ましい。特に残カーボンの燃焼は炭酸カルシウムの分解をできる限り生じさせない高温で、緩慢に燃焼させる必要があり、滞留時間が60分未満では、残カーボンの燃焼には短時間で不十分であり、240分を超えると、炭酸カルシウムが分解する問題が生じる。
さらに、燃焼物の安定生産を行うにおいて滞留時間を60分以上、過燃焼の防止、生産性の確保のため240分以下で燃焼させることが好適である。
この外熱キルン炉32から排出される燃焼物の粒子径としては、10mm以下、より望ましくは平均粒子径を1mm〜8mm以下、最も好ましくは平均粒子径を1mm〜4mmに調整することが好適である。
燃焼が終了した再生粒子は好適には凝集体であり、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により目的の粒子径のものが燃焼品サイロ38に一時貯留され、顔料や填料の用途先に仕向けられる。
なお、脱墨フロスを原料として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他製紙スラッジを適宜混入させたものの燃焼品であってもよい。
〔粉砕工程〕
本発明に基づく再生粒子の製造方法においては、必要に応じ、さらに公知の分散・粉砕工程を設け、適宜必要な粒子径に微細粒化することで塗工用の顔料、内添用の填料として使用できる。
前記燃焼工程からの燃焼灰は、水中に30%以下の濃度で溶解し、粉砕機にて微粒子化を行う。粒子径は0.1μm〜10.0μm、より好ましくは0.3μm〜5.0μm、更に好ましくは0.5μm〜2.0μmとする。0.1μm以下では、比表面積が増大し、塗料中のバインダー成分が過剰に必要となり、コストアップ要因となると共に塗工層強度の低下を招き、製造した塗工紙の印刷時の紙紛発生等品質に影響を及ぼす。また、10.0μm以上では塗工紙表面の光沢度が低下し、印刷時の映え等の品質低下に繋がる。
粉砕工程後における再生粒子の粒子径は、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計:日機装製)により体積平均粒子径を測定した。
〔付帯工程〕
本製造設備において、より品質の安定化を求めるためには、再生粒子の粒子径を、各工程で均一に揃えるための分級を行うことが好ましく、粗大や微小粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。
また、乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロスを造粒することが好ましく、さらには、造粒物の粒子径を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましく、粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。造粒においては、公知の造粒設備を使用でき、回転式、攪拌式、押し出し式等の設備が好適である。
本製造方法の原料としては、再生粒子の原料と成り得るもの以外は予め除去しておくことが好ましく、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で砂、プラスチック異物、金属等を除去することが、除去効率の面で好ましい。特に鉄分の混入は、鉄分が酸化により微粒子の白色度低下の起因物質になるため、鉄分の混入を避け、選択的に取り除くことが推奨され、各工程を鉄以外の素材で設計またはライニングし、摩滅等により鉄分が系内に混入することを防止するとともに、さらに、乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し選択的に鉄分を除去することが好ましい。
さらに、本発明に基づく再生粒子の製造方法による再生粒子は、X線マイクロアナライザーによる微細粒子の元素分析において、カルシウム、シリカ及びアルミニウムの比率が酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含むことが好ましく、より好ましくは、40〜82:9〜30:9〜30の質量割合、さらに好ましくは、60〜82:9〜20:9〜20の割合である。
カルシウム、シリカ及びアルミニウムを酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含ませることで、比重が軽く、過度の水溶液吸収が抑えられるため、脱水工程のおける脱水性が良好であり、乾燥・燃焼工程における未燃物の割合や、燃焼工程における焼結による過度の硬さを生じる恐れを低減できる。更に、理由は定かではないが、ポリカルボン酸ソーダを主剤とする分散剤を用いた水分散において、極めて均質な分散を図ることができる。
本発明の割合に調整するための方法としては、脱墨フロスにおける原料構成を調整することが本筋ではあるが、乾燥・燃焼工程、燃焼工程において、出所が明確な塗工フロスや調成工程フロスをスプレー等で工程内に含有させる手段や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる手段にて調整することも可能である。
例えば、脱墨フロスを主原料に、再生粒子中のカルシウムの調整には、中性抄紙系の排水スラッジや、塗工紙製造工程の排水スラッジを用い、シリカの調整には、不透明度向上剤としてホワイトカーボンが多量添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドの使用がある抄紙系の排水スラッジや、クレーの使用の多い上質紙抄造工程における排水スラッジを用いることができる。
また、本製造方法で得られる再生粒子は、示差熱熱重量同時測定装置による示差熱分析において、700℃近傍で生じる炭酸カルシウムの分解(酸化カルシウムへの変化)における減量(率)が50%以上と成るように、本発明に基づいて脱墨フロスを燃焼制御することで、より正確にカルシウム成分の酸化の進行を抑制し、粒子が硬くなることを防止することができるので好ましい。
〔第2燃焼炉のリフターについて〕
先に採用理由と共に述べたように、第2次燃焼炉内の内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び/または軸心と平行な平行リフターを配設することで、原料の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる。
そして、特に、被燃焼物の装入側から排出側に向けて、螺旋状リフターと、軸心と平行な平行リフターとの順で配設するのが望ましい。
この構成によると、装入側から投入された内容物が、まず螺旋状リフターにて他端側に向けて適正量ずつ送り込まれながら持ち上げられて落下する間に、原料に起因する有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触し、さらに引き続いて平行リフターにて持ち上げられて落下する動作を繰り返すことで燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触するため、熱交換効率よく内容物を燃焼させることができる。特に、螺旋状リフターにて平行リフターに送り込まれる内容物の量がコントロールされることで、平行リフター部分における内容物の持ち上げ・落下が適正に行われ、内容物の燃焼を均一かつ効率的に行うことができる。また、耐火物の損傷の恐れがないことから、焼成物の純度の低下がなく、その生産能力も向上できる。
また、螺旋状リフターと平行リフターを、例えば耐熱性を有するステンレス鋼板などの金属製とすると、比較的温度が低いので高価な耐熱材料を用いなくても十分に耐久性と強度を確保できるとともに、耐火物製のリフターなどに比して伝熱効率が高いので、一層熱効率を向上することができる。
上記の実施の形態例を図2によって説明すると、被燃焼物は、図2では、第2燃焼炉32の左側から装入され、回転駆動手段(図示せず)にて回転駆動可能に構成され、他端側から排出される。
第2燃焼炉32は、円筒状の外筐32Aの内面に耐火キャスタブルや耐火レンガから成る耐火壁32Bを内張りして構成されている。第2燃焼炉32の耐火壁32Bの内面には、投入側において、第2燃焼炉32の軸心に対して45ー〜70ーの傾斜角で傾斜した複数条(図示例では8条)の螺旋状リフター4が等間隔に突設され、さらにこの螺旋条リフター4の配設領域の他端側に、第2燃焼炉32の軸心と平行な適当長さの平行リフター5Aが周方向に等間隔置きに複数(図示例では8つ)かつ軸心方向に複数列(図示例では8列)千鳥状に配列して突設されている。
また、平行リフター5Aは、図示の右側に排出部に向かって連続的に形成されている(図示せず)。この場合、装入側では低温であるので、ステンレス鋼板などの耐熱性と耐腐食性のある金属板にて形成するのが望ましく、排出部側では高温となるので、排出側の平行リフター5Aは耐火物製とすることができる。
本実施形態では、螺旋状リフター4はその長手方向に適当間隔おきに配設した取付ブラケット6に固定されて配設されている。また、各平行リフター5Aは、それぞれの取付ブラケット5Bに固定されて配設されている。
なお、必要ならば、螺旋状リフターまたは平行リフターの一方のみを設けることでもよい。
<スラリー化に関する実施の形態>
好適には、前記脱水工程、乾燥・燃焼工程、粉砕工程を経て得られた、安定したイオン性の再生粒子を用い、粉砕後の再生粒子を水中に懸濁して再生粒子のスラリーを得る。
粉砕後の再生粒子30%濃度スラリーは、そのままではpHが12以上あり、塗料調整工程での他の薬品との反応による品質低下が懸念されるため、焼成灰中の酸化カルシウムを炭酸カルシウムに戻し、pHを低減させるために排ガスを導入して排ガス中の二酸化炭素を利用してpHを調整させる。pHを調整させるために排ガスだけでなく市販の二酸化炭素ガスを利用することもできる。
pH調整を完了させたスラリーを脱水機に送り、濃度を50〜70%に高める。50%〜70%濃度の再生粒子は、固形状(ケーキ状)となる。脱水機は以下の方式があり、適宜選択できる。
フィルタープレス、遠心脱水機、ベルトプレス等が使用できる。固形状となった再生粒子は、分散工程に送られ、高濃度スラリー化される。分散装置は、ミキサー、コーレス分散機、ボールミル方式等が好適に使用できる。分散剤は、固形状の再生粒子に必要量添加して分散機に投入する。分散剤が徐々に均一に再生粒子に馴染み、スラリー化する。水の添加は必要無いが最終製品の濃度を安定化させるために希釈水を添加する場合がある。分散剤は、分散工程で段階的に添加する方法も採用できる。
再生粒子の濃度は50〜70重量%、好適には55〜70重量%、さらに好適には60〜65重量%とする。スラリー濃度が50重量%未満であると、塗料の低濃度化だけで無く、分散剤の効果が低下し、再生粒子スラリー中の粒子分の沈殿が生じ、再生粒子スラリーの品質安定性が低下するという問題が生じ、また、70重量%を超えるとスラリーの増粘・固化という問題が生じるとともに脱水に要するエネルギーの増加が問題となる。
本発明において好適に用いることができる、脱水工程、乾燥・燃焼工程、粉砕工程を経て得られた、残留する一部がカチオン性を有しながら、イオン性が比較的安定な再生粒子の分散においては、強いアニオン性を有する分散剤、すなわちカルボン酸基の多いポリカルボン酸ソーダ(ポイズ520(花王)、アロンA−6330(東亜合成)、SNディスパーサント5040(サンノプコ)等)が好適に用いられる。
本発明者らは、アニオン性の強い分散剤を用いてカチオン性を中和させながら残るアニオン性でカチオン性を呈する再生粒子を分散させることで、より均質な再生粒子の分散が図れ、再生粒子の分散に有効であること、更にアニオン性を呈する代表的な分散剤であるカルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等の中で、ポリカルボン酸ソーダが理由は定かではないが最も本件発明に係る再生粒子の分散性に優れていることを見出している。カルボン酸ソーダの他に、ポリアクリル酸重合金属塩(アロンT−540(東亜化成))も強いアニオン性を有し、再生粒子の分散が可能であるが、増粘凝集しやすい傾向がある。塗工紙に使用するに際して、その使用効率を考慮すると、再生粒子懸濁液の粘度は2000cps以下であることが望ましく、ポリアクリル酸重合金属塩は、再生粒子の分散としては単独での使用には適さないといえる。
分散剤としては、本発明で好適に使用できるアニオン性の分散剤のほか、カチオン性、両性、非イオン性を呈する分散剤が市販されているものの、カチオン性の脂肪族アミン塩や芳香族4級アンモニウム塩、複素環4級アンモニウム塩等は、水溶液中でイオンに解離してカチオン性を示す部分を示す分散剤であるが、酸性側では安定であるもののアルカリ性の環境下においては水不溶性の物質を生成するとともにその効力を失効するため、本発明で分散対象とする再生粒子の分散には用いることが出来ない。両性を有する分散剤には、ベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体等があげられ、分子内にアニオン性親水基とカチオン性親水基を同時に持つため、溶液のpHによりアニオン性やカチオン性いずれにも解離し、アルカリ側ではアニオン性を酸性側ではカチオン性を、中性付近では非イオン性の分散剤として作用するものの、再生粒子に対しては分散効果が低く、更に起泡性が高い問題を有し、再生粒子分散時の作業性が低下する問題を有する。非イオン性の分散剤においては、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含チッソ型等があげられ、新油性を呈する基は前記のイオン性の分散剤と大差はないものの、親水性基はOH基の数が多いほど親水性を高め得る性状を呈する分散剤であるものの、水溶液の温度により濁りや沈殿物を生じる問題を有し、焼成工程を経た比較的高温の再生粒子の分散には適さないものであった。
本発明で好適に使用できるアニオン性のポリカルボン酸ソーダは、カルボキシル基を含有した単量体を共重合可能な単量体と組み合わせ、種々の重合方法により製造されたものであり、ソーダ以外にカリウムを基体とするものがあるものの、ソーダを基体とするものが、少量で極めて高い分散性が得られ、本発明における再生粒子の分散に極めて高い効果を見出している。
分散剤の添加は、好ましくは分散機投入直前に添加することが好ましく。分散状況に応じて分割して添加することもできる。添加方法は必要量を定量ポンプで供給する。分散剤は、再生粒子100重量部に対して、0.3〜2.0重量部、より好適には0.8〜1.5重量部添加する。0.3より低いと分散に時間がかかる、または増粘凝集するという問題が生じ易く、2.0より高いとスラリーの増粘、塗料の増粘という問題が生じる場合がある。分散直後の粘度は2000cps以下、より好適には1100cps以下が望ましい。
本発明の試験例、実施例及び比較例を示す。
〔再生粒子生成〕
各種要因を変化させて、得られた再生粒子の品質を調べたところ、表1及び表2に示す結果が得られた。結果によれば、本発明の方法が比較例に対し優れていることが判る。
品質の評価は次記のように行った。
(未燃率):電気マッフル炉を予め600℃に昇温後、ルツボに試料を入れ約3時間で完全燃焼させ、燃焼前後の重量変化から未燃分を算出した。
(ワイヤー摩耗度):プラスチックワイヤー摩耗度(日本フィルコン製 3時間)、スラリー濃度2重量%で測定した。
(生産性評価):原料の脱水効率、生産性、粉砕に必要な電力を4段階評価し、最も効率の良かった条件を◎、良かったものを〇、水効率、生産性、粉砕のいずれかに問題を見出したものを△、実操業困難なものを×とした。
(品質安定性):所定の方法で得られた微粒子の、白色度、粒子径、一定時間間隔における生産量の各項目について、変動程度を測定し、変動が少ない順にランク付けを行い、上位9位までを◎、10位から20位を〇、21位から25位を△、それ以下を×とした。
(見た目):目視で再生粒子の色を比較判断し、白色と灰色に区分した。
Figure 2010090491
Figure 2010090491
Figure 2010090491
Figure 2010090491
〔分散性試験〕
前記の再生粒子生成試験における、試験例3に示す再生粒子を使用して、分散性試験を実施した。
アイリッヒミキサーを用いて、スラリー分散剤をそれぞれ添加し混合した再生粒子を58重量%含むスラリーについて、その分散性、粘度、pHを調査した。使用した分散剤については表1中に示す。粘度の測定は、B型粘度計(東機産業(株)製TVM−10M)を用い、雰囲気温度20℃における60rpmのローター回転数にて行った。分散剤は、ポリカルボン酸ソーダ(アロンA−6330(東亜合成)、ノプコサントK(サンノプコ)等)の他、比較例として、ポリアクリル酸重合金属塩(アロンT−540(東亜化成))、ポリカルボン酸アンモニウム(SNディスパーサント5468(サンノプコ))、アセチレンジオール(オルフィンPD−301(日信化学))、ナフタレン系(デモールNL(花王))、マレイン酸ソーダ(マルディスパー3030M(マルイチ株式会社))、ヘキサメタ燐酸ソーダ、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(SNウェットL(サンノプコ))を主成分とするものを使用した。
分散剤の添加濃度、分散時間、及び結果を表5に示す。ミキサーでの攪拌を60分以上実施しても分散しなかった場合は、「分散せず」とした。
表5に示すように、分散剤にポリカルボン酸ソーダを使用することにより、高濃度スラリーにおいても分散性がよく、粘度を2000cps以下に抑えられることがわかった。
Figure 2010090491
〔白色度〕
分散剤としてポリカルボン酸ソーダを用いて調整したスラリーについて、各濃度条件における白色度を測定した。
白色度:スラリーを110℃で6時間以上乾燥し、完全に水分を除去後、乾式粉砕機にて細かく粉砕し、粉体をガラスセルに詰めて色差計にて測定する。
表6に示すように、他の分散剤と比較して、白色度に有意な差はなく、塗工剤として有用性があることが判明した。
Figure 2010090491
〔経時安定性〕
分散後の再生粒子スラリーの経時安定性の調査を行った。再生粒子が高濃度であるため、スラリー後の凝集トラブルの恐れがあるが、表7に示すように分散剤と濃度の選択によっては、14日間粘度が2000cps以下に安定していることが分かった。
Figure 2010090491
本発明は、脱墨フロスなどを主原料として燃焼し、再生粒子を製造する方法として、適用可能である。
本発明に係る製造設備の概要図である。 本発明に係る第2燃焼炉の概要図で、(a)は縦断面図、(b)は内面の展開図である。
符号の説明
10…原料、14…内熱キルン炉(第1燃焼炉)、32…外熱キルン炉(第2燃焼炉)

Claims (7)

  1. 製紙工場からの製紙スラッジについて、脱水、乾燥、燃焼および粉砕工程をこの順に経て再生粒子を製造する方法であって、前記燃焼工程からの燃焼灰そのまま、並びに粉砕工程を経て得られる粉砕後の燃焼灰の少なくとも一方からなる固体粒子を水中に懸濁して、スラリーを得るとともに、前記スラリー中にポリカルボン酸ソーダを主剤とする分散剤を添加することを特徴とする再生粒子の製造方法。
  2. 前記スラリー化が、スラリー濃度50〜70重量%の高濃度で行なわれる請求項1記載の再生粒子の製造方法。
  3. 前記ポリカルボン酸ソーダを主剤とする分散剤が、再生粒子100重量部に対して、0.3〜2.0重量部(対固形分)添加されている請求項1または2記載の再生粒子の製造方法。
  4. 前記製紙スラッジは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離される残渣である脱墨フロスであり、前記燃焼工程が、第1燃焼工程と、第1燃焼炉にて燃焼された再度燃焼する、後の第2燃焼工程とを有する、少なくとも2段階の燃焼工程を有し、前記第1燃焼工程において、300℃以上〜500℃未満で燃焼処理を行う請求項1から3のいずれか1項に記載の再生粒子の製造方法。
  5. 前記第1燃焼炉が、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉であり、前記脱水後の原料の水分率が40%以上である請求項4に記載の再生粒子の製造方法。
  6. 前記内熱キルン炉内の酸素濃度が0.2%〜20%となるように、300℃以上で500℃未満の熱風を吹き込む請求項5に記載の再生粒子の製造方法。
  7. 第2燃焼炉が、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉であり、前記キルン炉内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び軸心と平行な平行リフターの少なくとも一方を配設する請求項4記載の再生粒子の製造方法。
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