JP3836493B1 - 無機粒子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】脱墨フロスを主原料に、焼成を均一に行うことができ、もって均一な無機粒子を製造することができる、無機粒子の製造方法とする。
【解決手段】 脱墨フロスを主原料に、乾燥工程と焼成工程を有する無機粒子の製造方法であって、前記焼成工程において脱墨フロスを焼成するに先立ち、乾燥工程において水分率を2〜20質量%、乾燥工程出口における無機粒子の粒子径を、355〜2000μmのものが70質量%以上、焼成工程において、未燃分を5〜30%にする段階において、焼成処理温度を、500〜750℃で行うことで、無機粒子Fを得る。
【選択図】図1

Description

本発明は、脱墨フロスを主原料に、焼成して得られる製紙用やプラスチック用等の無機粒子を製造する方法に関し、更に詳しくは脱墨フロスを主原料に所定の条件下で焼成することで、多孔性、各種製紙用薬品との親和性、低磨耗性を有し製紙用やプラスチック用等の充填剤として好適に使用できる無機粒子の製造方法に関する。
紙パルプ工場の各種工程から排出される製紙スラッジは、無機充填剤及び無機顔料粒子をかなりの割合で含み、これらの製紙スラッジは、回収され、流動床炉やストーカー炉などの焼却炉で製紙スラッジ中の有機物を燃焼して製紙スラッジの減容化を図るとともに、エネルギーとして回収されている。
しかしながら、製紙スラッジには、多量の無機物が含有されているため、燃焼しても多量の燃焼灰(無機物)が残り、減容化にも限度がある。そこで、この燃焼灰をセメント原料の助剤として活用することや、土壌改良剤として活用すること等の努力もなされている。しかし、これらセメント原料や土壌改良剤の助剤としての焼却灰の使用量はわずかなものであり、結局、大部分の燃焼灰は埋立処分されているのが実情である。
このため、焼却によってエネルギーとして回収するだけでなく、焼却灰中の無機物を製紙用填料、顔料、プラスチック用充填剤等として再利用することは、製紙業界において古紙利用率の向上とともに環境問題に関わる重要な改善課題である。しかしながら、単なる製紙スラッジの焼却灰には燃焼されずに残った有機物がカーボンとして含まれるため白色度が低く、あるいは、無機物の焼結が進み、粒径が不揃いで大きくなっており、そのままの状態では紙の填料や塗工用顔料、プラスチック用の充填剤等として使用するのに適さない。
そこで、特許文献1は燃焼灰(焼却灰)を再燃焼し、白色度を向上させてから使用する方法を開示している。
しかしながら、特許文献1の焼却灰を再燃焼する方法の場合、未燃焼カーボンを完全に燃焼させるため再燃焼温度を500〜900℃に設定する必要があり、焼却灰の白色度は50%程度にまでしか向上せず、紙の填料や塗工用顔料として使用するに適するものとはならないことが知見された。また、再燃焼温度を900℃超に設定すると、燃焼灰(無機物)が焼結、溶融し、極めて硬くなることが知見された。また、再燃焼灰を填料として使用すると、この再燃焼灰は非常に硬い性質をもつため、抄紙ワイヤーの磨耗進行が早く、抄紙ワイヤーの寿命が非常に短くなるため、実操業には使用できるものではなかった。また、この再燃焼灰を塗工用顔料として使用すると、再燃焼灰が非常に硬い性質であるため、カレンダー処理を行ってもその塗工層表面の平滑性が劣るという問題が生じる。
この点、再燃焼灰を粉砕し、その粒径を小さくして、磨耗の低減、平滑性の向上を図ることも考えられるが、内添填料として使用する場合には、抄紙時における歩留りが低いものであったり、燃焼灰自体が極めて硬いため、粉砕のためのエネルギーコストが極めて高いものとなる。
また、特許文献2では、製紙スラッジを、酸素含有ガスを注入した反応器内に供給し、250〜300℃、3000psig程度の加温加圧下で0.25〜5時間酸化して、製紙スラッジ中の無機物を製紙用の顔料として再生化する方法が提案されている。
しかし、この方法は、製紙スラッジの湿式空気酸化処理によるものであるから、有機物除去が十分でなく、また、得られた顔料の白色度が低く、粒径も不揃いで、製紙用の填料や顔料として使用するには不適であり、しかも反応操作が複雑でコストが高いという問題がある。
一方、特許文献3には、製紙スラッジをいぶし焼きしてPS炭とした後、さらにこれをキルンで焼却して製紙用原料となる白土を生成させる方法が提案されている。しかし、この方法は製紙スラッジをいぶし焼きするため、製紙スラッジからエネルギーを有効に取り出すことができないばかりか、逆に投入エネルギーが必要になるという大きなデメリットがある。更に、生成した白土も粒径が不揃いで大きくなっており、製紙用顔料としては使用できないという問題がある。
また、特許文献4のように、排水処理汚泥をロータリーキルン内で連続して乾燥・炭化・焼成する方法が知られている。この方法において、焼成に先立って、造粒・成形するのは、焼成を均一に行うためであり、実施の形態に記載されている固形分濃度40〜60%(換言すれば水分率60〜40%)の状態でロータリーキルン内で連続して乾燥・炭化・焼成する場合、乾燥状態、炭化状態のいかんに係らず、キルンの回転によって汚泥粒子は強制的に処理が進行する。従って、乾燥が不十分であると粒子内部に未燃分が多く残留しその結果焼成が不完全となって白色度の低下を生じ、逆に過乾燥になると焼成は完全となるが過焼成を招き、得られた無機粒子の硬度が高くなり、この無機粒子を使用すると抄紙機でのワイヤー磨耗や紙を断裁する場合のカッター刃磨耗が生じやすくなるという問題を引き起こす。
先行する特許文献1〜4に記載の製紙スラッジを原料とする場合における最も大きな問題点は、原料とする製紙スラッジが、抄紙工程でワイヤーを通過して流出したもの、パルプ化工程での洗浄過程で発生した固形分を含む排水から回収したもの、排水処理工程において、沈殿あるいは浮上などを利用した固形分分離装置によりその固形分を分離、回収したもの、古紙処理工程での混入異物除去したもの等の各種スラッジが混在している点である。
これらのスラッジのうち、例えば、抄紙工程でワイヤーを通過して流出したものは、紙力剤等が混入しており、また、抄紙工程における抄造物の変更によって品質に変動が生じる。
排水スラッジであれば凝集剤が混入しており、更に、工場全体の抄造物、生産量の変動、あるいは生産設備の工程内洗浄などにより大きな変動が生じる。
パルプ化工程での洗浄過程から生じる製紙スラッジにおいては、チップ水分やパルプ製造条件で変動が生じるなど、さまざまな填料、顔料とすることができない物質が混入したり、品質変動が生じる。従って、全ての製紙スラッジを無選別に用いようとすると、製紙用の填料・顔料の品質が大きく低下し、しかも品質の変動が極めて大きく、不安定なものとなる。
すなわち、従来公知の方法で得られる無機粒子は、製紙用の無機粒子やプラスチック用等の充填剤として使用するには品質が適さず、品質安定性に欠けるものであった。
特開平11−310732号公報 特公昭56−27638号公報 特開昭54−14367号公報 特開2004−176208号公報
本発明が解決しようとする主たる課題は、無機粒子として求められる品質を安定的に、大量生産可能であり、しかも製造コストを低く抑えることができる、などの実用化に最適な製紙用の填料や顔料等、またプラスチック用等の充填剤として利用可能な無機粒子の製造方法を提供することにある。
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
古紙パルプを製造する脱墨工程で、パルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料として、
前記主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程、粉砕工程を経て、無機粒子を得る無機粒子の製造方法であって、
脱水工程後の原料を乾燥工程において、水分率を2〜20質量%とし、
前記焼成工程は少なくとも、入口部が上部にあり縦向きの第1段燃焼焼成炉及びこれに続く炉内温度が前記第1段燃焼焼成炉の上端部の温度より低い第2段燃焼焼成炉の2段階の焼成工程からなる、
ことを特徴とする製紙用の填料又は顔料として使用できる無機粒子の製造方法。
〔請求項2記載の発明〕
前記第1段燃焼焼成炉による、焼成工程前の無機粒子の粒子径を、355〜2000μmのものを70質量%以上にする、
請求項1記載の無機粒子の製造方法。
〔請求項3記載の発明〕
前記第1段燃焼焼成炉において燃焼焼成し、未燃分を5〜30%として、
前記第1段燃焼焼成炉に続く第2段燃焼焼成炉で燃焼焼成する焼成工程を経る、
請求項1または請求項2記載の無機粒子の製造方法。
〔請求項4記載の発明〕
前記第2段燃焼焼成炉の温度を前記第1段燃焼焼成炉上端部の温度より低くし、
かつ前記第2段燃焼焼成炉の温度を500〜700℃とする、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の無機粒子の製造方法。
〔請求項5記載の発明〕
前記乾燥工程における乾燥手段として、少なくとも原料をかきあげる一対のロールと、上方に熱風を吹き上げる熱風吹上手段とを備える、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の無機粒子の製造方法。
本発明によると、無機粒子として求められる品質を安定的に、大量生産可能であり、製造コストを低く抑えることができる、などの実用化に最適な製紙用填料・顔料、またプラスチック等の充填剤として供することができる無機粒子の製造方法を提供することができる。
次に、本発明の実施の形態の一例を、図面を参照しながら説明する。
〔概要〕
本形態の無機粒子の製造設備フローは、脱水工程、乾燥工程、燃焼焼成工程、粉砕工程を有するが、更に、脱墨フロスの凝集工程、造粒工程、各工程間に設けられる分級工程等を設けてもよい。
図1に、本形態の無機粒子の製造設備フローの一部構成例を示した。本設備には、各種センサーが備わっており、被処理物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行っている。
また、以下の具体的説明で示す移送流路、給送流路、排送流路、循環流路、返送流路等の各種流路は、例えば、管、ダクト等で構成することができる。
本形態においては、以下に脱墨フロスSを原料として用いた場合を例示するが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他製紙スラッジを適宜用いることができる。
〔原料〕
古紙パルプ製造工程では、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産する目的から、使用する古紙の選定、選別を行い、一定品質の古紙を使用する。
そのため、古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類やその比率、量が基本的に一定になる。しかも、無機粒子の製造方法において未燃物の変動要因となるビニールやフィルムなどのプラスチック類が古紙中に含まれていた場合においても、これらの異物は脱墨フロスを得る脱墨工程に至る前段階で除去することができる。従って、脱墨フロスは、工場排水工程や製紙原料調整工程等、他の工程で発生するスラッジと比べ、極めて安定した品質の無機粒子を製造するための原料となる。
本発明で云う脱墨フロスとは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離されるものをいう。
〔脱水工程〕
脱墨フロスSの更なる脱水は、公知の脱水手段を適宜に使用できる。本形態における一例では、脱墨フロスSは、脱水手段たる例えばロータリースクリーン14によって、脱墨フロスSから水を分離して脱水する。 ロータリースクリーン14において、水分95〜98%に脱水した脱墨フロスSは、好適には例えばスクリュープレス15に送り、更に40%〜70%に脱水することができる。
以上のように、脱墨フロスSの脱水を多段工程で行い急激な脱水を避けると、無機物の流出が抑制でき脱墨フロスSのフロックが硬くなりすぎるおそれがない。脱水処理においては、脱墨フロスSを凝集させる凝集剤等の脱水効率を向上させる助剤を添加しても良いが、凝集剤には、鉄分を含まないものを使用することが好ましい。鉄分が含有されると、鉄分の酸化により無機粒子の白色度を下げる問題を引き起こす。
脱墨フロスSの脱水工程は、本発明における無機粒子製造工程に隣接することが、生産効率の面で好ましいが、予め古紙パルプ製造工程に隣接して設備を設け、脱水を行った物を搬送することも可能である。
〔乾燥工程〕
脱墨フロスSを脱水して得た脱水物Dは、トラックやベルトコンベア等の搬送手段によって定量供給機16まで搬送し、この定量供給機16から乾燥手段17に供給する。
この乾燥手段17は、脱水物Dが供給される乾燥容器17bと、この乾燥容器17bの底部に備わり供給された脱水物Dをかきあげる一対のロール17a,17aと、この一対のロール17a,17a相互間から上方に熱風を吹き上げる熱風吹上手段と、から主になる。また、熱風吹上手段は、乾燥容器17bの底部に給送流路56が接続され、この給送流路56を通して、乾燥容器17b内に熱風が吹き込まれる構成となっている。
すなわち、本乾燥手段17は、脱水物Dを、一対のロール17a,17aという有形的な手段によって、強くかつ大まかにほぐし、これに加えて熱風という無形的な手段によって、弱くかつ精細にほぐすことにより、大きい・小さい、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物Dの水分率の制御と粒揃えを安定的に行うことができる。
特に、乾燥容器17b内に供給する脱水物Dを、水分率40〜70質量%に脱水している場合は、熱風の温度を、100〜200℃にするのが好ましく、120〜180℃にするのがより好ましく、130〜170℃にするのが特に好ましい。脱水物Dの水分率が40〜60質量%の場合は、100℃の熱風でも十分に乾燥することができる。他方、熱風の温度は200℃以下とすることが好ましい。熱風の温度が200℃を超える場合は、大きい・小さい、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物Dの粒揃えが進行するよりも早く乾燥が進むため、粒子表面と内部の水分率の差を少なく均一にすることが困難になる。
以上の脱水物Dの乾燥は、焼成工程前の乾燥物Kの水分率が2〜20質量%となるように乾燥するのが好ましく、乾燥物Kの水分率が3〜15質量%となるように乾燥するのがより好ましく、乾燥物Kの水分率が3〜10質量%となるように乾燥するのが特に好ましい。脱水物Dを、水分率が2質量%未満の範囲まで乾燥すると、後行する焼成において、過焼する問題が生じる。他方、脱水物Dを、水分率が20質量%を超える範囲で乾燥すると、後行する焼成を確実に行うことが困難になる。
乾燥物Kの粒揃えは、粒子径355〜2000μmのものが70質量%以上となるように調整するのが好ましく、粒子径355〜2000μmのものが75質量%以上となるように調整するのがより好ましく、粒子径355〜2000μmのものが80質量%以上となるように調整するのが特に好ましい。
また、乾燥物Kを、粒子径355μm〜2000μm以上のものが70質量%以上となるように製造すると、つまり小径な粒子の乾燥物Kを除去すると、部分的な過焼が防止され、焼成が均一になる。従って、得られる無機粒子の品質を均一にするという観点における実用化可能性に、有益である。更に、本形態のように、分級を乾燥後とすると、小径な粒子の乾燥物Kを確実に除去することができ、また、処理効率も向上する。
〔焼成工程〕
サイクロン18内を底部まで落下した乾燥物Kは、移送流路58を通して、かつこの移送流路58の途中に備わる排風ファンHで勢いを増して、サイクロン式の第1焼成段階を構成する第1燃焼焼成炉21に送られる。
この第1燃焼焼成炉21では、乾燥物Kを、旋回落下させることで粒子の微細化を抑制し、また、この過程で、焼成し未燃分を調整する。
第1燃焼焼成炉21での焼成は、未燃率が5〜30質量%となるように行うのが好ましく、8〜25質量%となるように行うのがより好ましく、10〜20質量%となるように行うのが特に好ましい。第1燃焼焼成が、未燃率が5質量%未満では、焼成における粒子表面の過焼が生じ表面が硬くなるとともに、内部の酸素不足が生じ、無機粒子の白色度が低下する問題が生じる。他方、第1燃焼焼成を、未燃率が30質量%を超えると、後行する第2燃焼焼成後においても未燃分が残る問題、更にはこの未燃分が残るのを防止するためとして粒子表面が過焼するまで燃焼焼成してしまい、無機粒子表面が硬くなる問題が生じる。
第1燃焼焼成炉21の形態は、特に限定されないが、サイクロン式であることが好ましい。サイクロン式によると、前述のとおり、粒子の微細化を抑制することで未燃率を均一かつ確実に調節することができる。
焼成温度範囲は、510〜750℃の範囲で行うことが好ましく、第1段階燃焼焼成は、第1燃焼焼成炉21上端部の温度を510〜750℃とし、第2燃焼焼成炉25内の温度を第1燃焼焼成炉21上端部の温度より低い500〜700℃とするのが好ましく、第1燃焼焼成炉21上端部の温度を550〜730℃とし、第第2燃焼焼成炉25内の温度を第1燃焼焼成炉21上端部の温度より低い510〜680℃とするのがより好ましく、第1燃焼焼成炉21上端部の温度を580〜700℃とし、第2燃焼焼成炉内の温度を焼成炉21上端部の温度より低い550〜660℃とするのが特に好ましい。第1燃焼焼成炉21上端部の温度を600〜680℃とし、第2燃焼焼成炉25内の温度を第1燃焼焼成炉21上端部の温度より低い580〜650℃とすると、製造される製紙用微細粒子が再生填料や顔料として使用するに好適なものとなる。
第2燃焼焼成炉25内の温度を第1燃焼焼成炉21上端部の温度より10〜50℃低くすることで、製紙用微細粒子表面の過焼を防止しながら、未燃物を燃焼させることができる。
第1燃焼焼成炉21で得た焼成物は、第2焼成段階である第2燃焼焼成炉25に送り、燃焼焼成する。第2燃焼焼成炉25は、ロータリーキルン炉、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等、公知の装置を用いることができるが、本発明においては、温度変化が少ない環境下で過大な物理的圧力を掛けることなく攪拌しながら満遍なく燃焼させることができる方策として、ロータリーキルン炉が好ましい。
〔粉砕工程〕
本発明に基づく無機粒子の製造方法においては、必要に応じ、更に公知の分散・粉砕工程を設け、適宜必要な粒径に微細粒化することで塗工用の顔料、内添用の填料として使用できる。
一例では、焼成後、得られた微細粒子は、ジェットミルや高速回転式ミル等の乾式粉砕機、あるいは、アトライター、サンドグラインダー、ボールミル等の湿式粉砕機を用いて粉砕する。填料、顔料用途への使用においては、粒径の均一化や微細化が必要であるが、本発明に基づく製造方法にて得られた微細無機粒子を用いた、填料、顔料用途等への最適な粒径、顔料径については、本形態の微細粒子は、一次粒子が平均粒子径0.01〜0.1μmであり、この一次粒子が凝集した二次粒子が平均粒子径0.1〜10μmであるのが好ましい。
〔付帯工程〕
本製造設備において、より品質の安定化を求めるにおいては、無機粒子の粒度を、各工程で均一に揃えるための分級を行うことが好ましく、粗大や微小粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。
また、乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロスを造粒することが好ましく、更には、造粒物の粒度を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましく、粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。造粒においては、公知の造粒設備を使用でき、回転式、攪拌式、押し出し式等の設備が好適である。
本製造設備においては、微細粒子以外の異物を除去することが好ましく、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で砂、プラスチック異物、金属等を除去することが、除去効率の面で好ましい。特に鉄分の混入は、鉄分が酸化により微粒子の白色度低下の起因物質になるため、鉄分の混入を避け、選択的に取り除くことが推奨され、各工程を鉄以外の素材で設計又はライニングし、磨滅等により鉄分が系内に混入することを防止するとともに、更に、乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し選択的に鉄分を除去することが好ましい。
更に、本発明に基づく無機粒子の製造方法による無機粒子凝集体は、X線マイクロアナライザーによる微細粒子の元素分析において、カルシウム、シリカ及びアルミニウムの比率が酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含むことが好ましく、より好ましくは、40〜82:9〜30:9〜30の質量割合、更に好ましくは、60〜82:9〜20:9〜20の割合である。
カルシウム、シリカ及びアルミニウムを酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含ませることで、比重が軽く、過度の水溶液吸収が抑えられるため、脱水工程のおける脱水性が良好であり、乾燥工程における水分調整が容易であるだけでなく、焼成工程における未燃物の割合や、焼結による過度の硬さを生じる恐れを低減できる。
焼成工程において、本発明の割合に調整するための方法としては、脱墨フロスにおける原料構成を調整することが本筋ではあるが、乾燥工程、焼成工程において、出所が明確な塗工フロスや調整工程フロスをスプレー等で工程内に含有させる手段や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる手段にて調整することも可能である。
例えば、脱墨フロスを主原料に、無機粒子凝集体中のカルシウムの調整には、中性抄紙系の排水スラッジや、塗工紙製造工程の排水スラッジを用い、シリカの調整には、不透明度向上剤として多量添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドの使用がある抄紙系の排水スラッジや、タルク使用の多い上質紙抄造工程における排水スラッジを用いることができる。
本発明の実施例及び比較例を示す。
各種要因を変化させて、得られた無機粒子の品質を調べたところ、表1に示す結果が得られた。
品質の評価は次記のように行った。
(生産性評価):原料の脱水効率、生産性、粉砕に必要な電力を4段階評価し、 最も効率の良かった条件を◎、良かったものを〇、水効率、生産性、粉砕のいずれかに問題を見出したものを△、実操業困難なものを×とした。
(ワイヤー磨耗度):プラスチックワイヤー磨耗度(日本フィルコン製 3時間)、スラリー濃度2重量%で測定した。
(品質安定性):所定の方法で得られた微粒子の、白色度、粒径、一定時間間隔における生産量の各項目について、変動程度を測定し、変動が少ない順にランク付けを行い、上位5位までを◎、6位から10位を〇、11位から13位を△、それ以下を×とした。
(見た目):目視で無機粒子の色を比較判断し、白色と灰色に区分した。
(質量割合):4.7メッシュの篩にて2000μmを超える質量割合を、42メッシュの篩にて、355μm未満の質量割合を想定した。
(粒子径):X線マイクロアナライザーにて実測した。
Figure 0003836493
本発明は、製紙用スラッジを焼成して無機粒子を製造する方法として、適用可能である。
製紙用填料の製造設備フロー図である。
符号の説明
16…定量供給機、17…乾燥手段、21…焼成炉、23…熱交換器、25…燃焼焼成炉、D…脱水物、F…粉砕物、J…焼成物、K…乾燥物、S…脱墨フロス。

Claims (5)

  1. 古紙パルプを製造する脱墨工程で、パルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料として、
    前記主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程、粉砕工程を経て、無機粒子を得る無機粒子の製造方法であって、
    脱水工程後の原料を乾燥工程において、水分率を2〜20質量%とし、
    前記焼成工程は少なくとも、入口部が上部にあり縦向きの第1段燃焼焼成炉及びこれに続く炉内温度が前記第1段燃焼焼成炉の上端部の温度より低い第2段燃焼焼成炉の2段階の焼成工程からなる、
    ことを特徴とする製紙用の填料又は顔料として使用できる無機粒子の製造方法。
  2. 前記第1段燃焼焼成炉による、焼成工程前の無機粒子の粒子径を、355〜2000μmのものを70質量%以上にする、
    請求項1記載の無機粒子の製造方法。
  3. 前記第1段燃焼焼成炉において燃焼焼成し、未燃分を5〜30%として、
    前記第1段燃焼焼成炉に続く第2段燃焼焼成炉で燃焼焼成する焼成工程を経る、
    請求項1または請求項2記載の無機粒子の製造方法。
  4. 前記第1段燃焼焼成炉の温度を510〜750℃とし、
    前記第2段燃焼焼成炉の温度を前記第1段燃焼焼成炉上端部の温度より低くし、
    かつ前記第2段燃焼焼成炉の温度を500〜700℃とする、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の無機粒子の製造方法。
  5. 前記乾燥工程における乾燥手段として、少なくとも原料をかきあげる一対のロールと、上方に熱風を吹き上げる熱風吹上手段とを備える、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の無機粒子の製造方法。
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JP2008156773A (ja) * 2006-12-22 2008-07-10 Daio Paper Corp 塗工板紙及びその製造方法
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