JP3999799B2 - 無機粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、脱墨フロスを主原料とし、焼成により得られる製紙用やプラスチック用等の無機粒子を製造する方法に関し、さらに詳しくは製紙における内添もしくは外添用途に好適に使用できる無機粒子の製造方法に関する。
紙パルプ工場の各種工程から排出される製紙スラッジは、古くは、焼却炉で有機分を燃焼することにより減容化していたが、製紙スラッジは、無機充填剤および無機顔料粒子等の無機物を多量に含有しているため、燃焼しても多量の燃焼灰(無機物)が残り、減容化にも限度がある。
この問題点に対して、製紙スラッジの焼成灰をセメント原料の助剤として活用することや、土壌改良剤として活用すること等の努力もなされているが、これらの用途における使用量は僅かなものであり、結局、大部分の燃焼灰は埋立処分されているのが実情である。
このため、近年では、製紙スラッジを焼成・粉砕し、焼成灰中の無機物を製紙用填料、顔料、プラスチック用充填剤等として再利用することが、製紙業界において古紙利用率の向上とともに環境問題に関わる重要な改善課題となっている。
しかし、単なる製紙スラッジの焼却灰には有機物が燃焼されずに残るため白色度が低く、あるいは、無機物の焼結が進み、粒径が不揃いで大きくなっており、そのままの状態では紙の填料や塗工用顔料、プラスチック用の充填剤等として使用するのに適さない等の問題があり、これを解決するために焼成条件を検討する等、種々の研究・提案がなされている。
本発明者らの知見によれば、500℃未満で焼成を行うと、有機物が完全に燃焼されず、残カーボンが発生し、無機粒子の白色度低下に繋がる。一方で、500℃以上で焼成を行うと、炭酸カルシウムが酸化カルシウムや珪酸カルシウムに変化することにより、無機粒子は酸化カルシウムや珪酸カルシウムを多く含むようになり、この酸化カルシウムや珪酸カルシウムの存在が製紙用途における再利用を阻害する。
例えば、製造した無機粒子を製紙用途で再利用する場合、スラリーの形態で用いることになるが、その場合、酸化カルシウムが水酸化カルシウムとなって水に溶解したり、珪酸カルシウムが水に溶解したりする結果、pHを12程度まで押し上げてしまう。このようにpHが上昇したスラリーは、例えば塗工紙の塗工液中に配合した場合、液中の薬品と反応し凝集(pHショック)を招いたり、塗工紙紙面pHを上昇させ、オフセット印刷の刷版の劣化等の印刷上がりの低下を招いたりするおそれがある。また、このようなスラリーを抄紙内添で使用する場合には、pHの上昇によるサイズ剤等の歩留低下やカルシウムイオンと硫酸バンドとの反応による硫酸カルシウムスケールの発生に繋がる。
そこで、本発明者らが鋭意研究したところ、特許文献3記載の方法と同様に、スラリー中に二酸化炭素を吹き込むことにより、水酸化カルシウムを炭酸カルシウムに戻す(以下、炭酸化ともいう)ことができ、非常に有効であるという知見を得た。
特開2004−176208号公報 特開2002−233851号公報 特開2002−356629号公報
しかしながら、二酸化炭素を吹き込む場合、製造コストの増加を招くという問題点がある。
そこで、本発明の主たる課題は、コスト増を抑えつつスラリーのpH増を抑制することにある。他の課題は以下の記載から明らかになるであろう。
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
古紙パルプを製造する古紙処理工程において、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離される残渣である脱墨フロスを主原料として、脱水工程、乾燥工程、焼成工程および粉砕工程をこの順に経て無機粒子凝集体を製造する方法であって、
前記焼成工程が一次燃焼工程及びその後の二次燃焼工程を含み、前記一次燃焼工程において0.05から20%の酸素濃度下で焼成し、前記焼成工程からの焼成灰そのまま、並びに粉砕工程を経て得られる粉砕後の焼成灰の少なくとも一方からなる固体粒子を水中に懸濁して、スラリーを得るとともに、このスラリー中に、前記焼成工程で発生した排ガスおよびこの排ガスから分離した二酸化炭素の少なくとも一方を吹き込む、ことを特徴とする無機粒子の製造方法。
〔請求項2記載の発明〕
製造される無機粒子のX線回折(XRD)による組成分析において、pH上昇要因物質の割合が、結晶構造を有する無機粒子中における質量割合で5%以下である、請求項1記載の無機粒子の製造方法。
〔請求項3記載の発明〕
前記スラリーを得るに際し、スラリーの濃度を50質量%以下にするとともに、前記排ガスおよびこの排ガスから分離した二酸化炭素の少なくとも一方の吹き込みにより、前記スラリーのpHを11以下にする、請求項1または2記載の無機粒子の製造方法。
本発明では、焼成工程で不可避的にかつ安定的に発生する排ガスを有効利用する。よって、安定的な生産を可能としつつ、また製造コストを低く抑えつつ、スラリーのpH増を抑制できるとともに、二酸化炭素の大気排出を抑制できるようになる。
特に、製造される無機粒子のX線回折(XRD)による組成分析において、水酸化カルシウム(酸化カルシウム由来)や珪酸カルシウム等のpH上昇要因物質の割合が、結晶構造を有する無機粒子中における質量割合で5%以下であると、製紙用途において好適に実用できる無機粒子となる。ここで、「結晶構造を有する」としたのは、X線回折(XRD)で分析可能なものを対象にする意味である。
また、本発明のように焼成工程の排ガスを利用する場合、スラリーの濃度を50質量%以下とするのは極めて重要である。すなわち、排ガスを用いる場合、二酸化炭素量が変動するため、スラリー濃度が高過ぎると、二酸化炭素の量の不足若しくは二酸化炭素の接触不足により、水酸化カルシウム(酸化カルシウム由来)や珪酸カルシウム等のpH上昇要因物質の炭酸化が不十分になるおそれがあるからである。
なお、スラリーのpHは炭酸化の指標となるものであり、11以下であれば炭酸化が十分になされたことになり、上述のpH上昇要因物質の割合が5質量%以下であることに相当するものである。
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
図1は、本発明に係る無機粒子の製造設備の一例を示しており、脱水工程2、乾燥工程3、焼成工程4、および粉砕工程5をこの順に有するものである。本設備には、各種センサーおよび制御装置を備え付け、被処理物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行うことができる。また、各種の流路は、管、ダクト等で構成することができる。
〔脱水工程〕
本発明では、脱墨フロスのみを原料1として用いても良いが、脱墨フロスを主原料とする(例えば原料の50%超用いる)限り、抄紙工程における製紙スラッジ等の他製紙スラッジを適宜混合することができる。脱墨フロスは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離される残渣である。通常、古紙パルプ製造工程では、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産する目的から、使用する古紙の選定、選別を行い、一定品質の古紙を使用する。そのため、古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類やその比率、量が基本的に一定になる。しかも、無機粒子の製造方法において未燃物の変動要因となるビニールやフィルムなどのプラスチック類が古紙中に含まれていた場合においても、これらの異物は脱墨フロスを分離する前段階で除去することができる。従って、脱墨フロスは、工場排水工程や製紙原料調整工程等、他の工程で発生するスラッジと比べ、極めて安定した品質の原料1となるのである。
脱墨フロスを主とする原料1は、先ず脱水工程2において脱水する。この原料1の更なる脱水は、単段で実施することもできるが、複数段の脱水工程を経て徐々に行うのが好ましい。例えば、ロータリースクリーン等のように非加圧の弱い脱水手段を用いて水分率95〜98%程度まで脱水した後、スクリュープレス等の加圧式の強い脱水手段を用いて、さらに水分率40%〜70%程度まで脱水するのが好ましい。
このように、原料1の脱水を多段工程で行い急激な脱水を避けると、無機物の流出が抑制でき原料1のフロックが硬くなりすぎるおそれがない。脱水処理においては、原料1を凝集させる凝集剤等の脱水効率を向上させる助剤を添加しても良いが、凝集剤には、鉄分を含まないものを使用することが好ましい。鉄分が含有されると、鉄分の酸化により無機粒子の白色度を下げる問題を引き起こす。
原料1の脱水工程は、古紙パルプ製造設備に付設していても、また古紙パルプ製造設備から分離し、乾燥等の後段工程とともに一体的な設備をなしていても良い。
〔乾燥工程〕
原料1を脱水して得られる脱水物Dは、続いて乾燥工程3に搬送供給される。この搬送手段としては、トラックやベルトコンベア等の公知の手段を用いることができる。乾燥工程においては、キルン式、流動層式、サイクロン式等の各種の直接加熱式乾燥機の他、間接加熱式の乾燥機も用いることができる。
脱水物Dの乾燥は、焼成工程前の乾燥物Kの水分率が2〜20質量%となるように乾燥するのが好ましく、乾燥物Kの水分率が3〜15質量%となるように乾燥するのがより好ましく、乾燥物Kの水分率が3〜10質量%となるように乾燥するのが特に好ましい。脱水物Dを過度に乾燥すると、後の焼成において過焼する問題が生じ、反対に、脱水物Dの乾燥が不十分であると後の焼成が困難になる。
また、乾燥物Kは、粒子径355〜2000μmのものが70質量%以上となるように調整するのが好ましく、75質量%以上であるとより好ましく、80質量%以上であると特に好ましい。このような調整は篩等を用いた分級処理により行うことができる。乾燥物Kがこのような粒径分布を有していると、つまり小径な粒子の乾燥物Kを除去すると、後の焼成工程において部分的な過焼が防止され、焼成が均一になり、もって、得られる無機粒子の品質が均一になる。さらに、乾燥後に粒径分布を調整すると、小径な粒子の乾燥物Kを確実に除去することができ、また、処理効率も向上する。
〔焼成工程〕
乾燥工程3で得られた乾燥物Kは、続いて焼成工程4に供給され、有機分が燃焼除去され、無機物が焼成灰Pとして排出される。焼成灰Pの粒径分布は適宜定めることができるが、各種焼成条件の調整等により、平均粒径が10〜100μmとなるように焼成するのが好ましい。
焼成工程4は、単段で実施することもできるが、複数段の燃焼炉を経て徐々に行うのが好ましい。例えば、先ずサイクロン式燃焼炉等を用いた一次燃焼工程により、0.05から20%の酸素濃度下、より好ましくは、0.11〜16%の酸素濃度環境下、更に好ましくは5〜14%の酸素濃度環境下で焼成することで、粒子の微細化を抑制しつつ未燃率を均一かつ確実に調節し、次にロータリーキルン炉、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等を用いた二次燃焼工程により、満遍なく且つ十分に燃焼させるのは一つの好ましい形態である。温度変化が少ない環境下で過大な物理的圧力を掛けることなく攪拌しながら満遍なく燃焼させることができる観点から、二次燃焼工程ではロータリーキルン炉を用いるのが好ましい。
この場合、一次燃焼工程では、未燃率が5〜30質量%となるように処理するのが好ましく、8〜25質量%であるとより好ましく、10〜30質量%であると特に好ましい。未燃率が過度に低いと、焼成における粒子表面の過焼が生じ表面が硬くなるとともに、内部の酸素不足が生じ、無機粒子の白色度が低下する問題が生じる。反対に、未燃率が過度に高いと、後の二次燃焼工程においても未燃分が残る問題、さらにはこの未燃分が残るのを防止するためとして粒子表面が過焼するまで燃焼焼成してしまい、無機粒子表面が硬くなる問題が生じる。一次燃焼工程における炉内温度は500〜750℃とするのが好ましい。より好ましい温度範囲は550〜730℃であり、580〜700℃であると特に好ましく、600〜680℃であると格別好ましい。
一次及び二次燃焼工程における炉内温度は500〜750℃とするのが好ましい。この温度範囲は550〜580℃であると更に好ましい。特に、二次燃焼工程では、炉内温度を一次燃焼工程の炉内温度と同等、または10〜50℃低くすることで、製紙用微細粒子表面の過焼を防止しながら、未燃物を燃焼させることができる。
〔粉砕工程〕
焼成工程4より得られた焼成灰Pは、続いて粉砕工程5に供給され、ジェットミルや高速回転式ミル等の乾式粉砕機、あるいは、アトライター、サンドグラインダー、ボールミル等の湿式粉砕機を用いて所望の粒径に粉砕される。粉砕後の粒径は、用途に応じて適宜定めることができるが、填料、顔料等の製紙用途を考慮すると、平均粒径(メジアン径)が0.5〜10μmとなるように粉砕するのが好ましい。
〔懸濁・炭酸化工程〕
粉砕処理された焼成灰Fは、次に懸濁工程6に供給されて水と混合され、スラリーSとされた後に炭酸化工程7に供給される。スラリーSの濃度は適宜定めることができるが、50質量%以下、より好ましくは30質量%以下の低濃度スラリーとするのが好ましい。スラリーSの濃度が高過ぎると炭酸化が不十分になるおそれがある。懸濁に際しては、槽内にインペラーを配設した公知の混合槽を用いて、水と焼成灰Pとを混合することができる。
炭酸化工程7では、焼成工程4で発生した排ガスGの一部または全部が反応ガスとして供給され、この反応ガスがスラリーSに対して吹き込まれる。すなわち、反応ガス中に含まれる二酸化炭素により、スラリーS中の水酸化カルシウムや珪酸カルシウムが炭酸カルシウムに変化する。これにより、製造される無機粒子のX線回折(XRD)による組成分析において、pH上昇要因物質の割合が、結晶構造を有する無機粒子中における質量割合で5%以下、より好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下になるようにするのが望ましい。
具体的には、pH上昇要因物質の炭酸化に伴ってスラリーのpHが低下するため、スラリーのpHが11以下、より好ましくは10以下、特に9以下になるまで吹き込むのが好ましい。これにより、水酸化カルシウムや珪酸カルシウム等のpH上昇要因物質が十分にまたは実質的に全て炭酸化したことになる。
炭酸化に際しては、反応槽の底部にガス吹き込み口を設けるとともに、槽内のpHを測定するpH計を設け、バッチ処理で、スラリーのpHが10以下になるまで槽中のスラリーに対してガスを吹き込むことで、炭酸化を実施することができる。懸濁及び炭酸化を同一の槽内で実施することもできる。
反応ガスとしては、排ガスの直接利用の他、PSA型分離装置等の二酸化炭素分離装置8を用いて排ガスGから二酸化炭素Cを分離して用いることができる。後者の場合、分離した二酸化炭素を反応ガスの一部(残部は排ガス)または全部として用いることができる。
反応ガスの吹き込み速度は、一定とすることも、また可変とすることも可能であり、可変とする場合、pHの推移に応じて適宜調整する等することができる。
本発明では、粉砕工程5に先立って、焼成工程4より得られる焼成灰Pを、懸濁工程16および炭酸化工程17に供給し、炭酸化を図ることもできる。この場合、粉砕工程5後の懸濁工程6は不要となる。また、粉砕工程5後の炭酸化工程7は省略することもできるが、粉砕工程5の前後に併存させることで、二段階の炭酸化を行うこともでき、この場合、粉砕により再上昇したpHを炭酸化により再び下げることができる。
かくして得られたスラリー形態の無機粒子Tは、必要に応じてさらに粒径や濃度を調整する等の処理をした後、スラリーの形態のまま、あるいは脱水乾燥により粉末の形態とした後、内添用の填料や塗工用の顔料等として使用することができる。
〔付帯工程〕
品質の更なる安定化を求める場合、微細粒子の粒度を、各工程で均一に揃えるための分級を行うことが好ましく、この場合、粗大粒子や微小粒子を前工程にフィードバックすることができる。
また、乾燥工程3の前段階において、脱水物Dを造粒するのが好ましく、さらには、造粒物の粒度を均一に揃えるための分級を行うのがより好ましい。分級を行う場合、粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることで品質の安定化を図ることができる。造粒においては、公知の造粒設備を使用でき、回転式、攪拌式、押し出し式等の設備が好適である。
また、原料中に含まれる微細粒子以外の異物については予め除去しておくのが好ましく、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で砂、プラスチック異物、金属等を除去すると、除去効率の面で好ましい。特に鉄分が混入すると、鉄分の酸化により微粒子の白色度が低下する。よって、各工程を鉄以外の素材で設計またはライニングし、磨滅等により鉄分が系内に混入することを防止したり、乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し選択的に鉄分を除去したりするのが好ましい。
さらに、本発明により得られる無機粒子は、X線マイクロアナライザーによる微細粒子の元素分析において、カルシウム、ケイ素およびアルミニウムを酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含むのが好ましく、40〜82:9〜30:9〜30であるとより好ましく、60〜82:9〜20:9〜20であると特に好ましい。このような無機粒子は、比重が軽く、過度の水溶液吸収が抑えられるため、脱水工程2における脱水性が良好であり、乾燥工程3における水分調整が容易であるだけでなく、焼成工程4における未燃物の割合や、焼結による過度の硬さを生じる恐れを低減できる。
カルシウム等の含有量の調整方法としては、原料構成を調整するのが好ましく、脱墨フロスを主原料に、無機粒子凝集体中のカルシウムの調整には、中性抄紙系の排水スラッジや、塗工紙製造工程の排水スラッジを用い、ケイ素の調整には、不透明度向上剤として多量添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドの使用がある抄紙系の排水スラッジや、タルク使用の多い上質紙抄造工程における排水スラッジを用いることができる。しかし、乾燥工程3、焼成工程4において、出所が明確な塗工フロスや調整工程フロスをスプレー等で添加したり、焼却炉スクラバー石灰を添加したりすることで調整することも可能である。
表1に示す焼成灰試料A〜Lを用意した。試料A〜Lは、全て白色度が80%以上あり、製紙用填料、顔料としての無機粒子として十分な白さを有し、最も白色度が低かったのは、白色度が80.3の試料Cであった。試料Kは、未燃物が混在し、灰色を呈していた。試料Lは、未燃物は見られなかったが、黄色に焼けた状態であり、溶融物が散見された。
表2〜5に示すように、各試料を水に懸濁し、濃度30、50、60質量%のスラリーをそれぞれ製造し、各スラリーについて湿式粉砕を行うとともに、粉砕前および粉砕後の少なくとも一方において二酸化炭素を吹き込んだ。二酸化炭素は、焼成工程の排ガスから分離したものを用い、10リットル/分の速度で1回あたり2時間吹き込むこととした。粉砕前後において、二酸化炭素を吹き込むケースでは吹込みが完了した後に、スラリーのpH計測、X線回折(XRD)分析による組成分析、および平均粒径の計測を実施した。
特に、粉砕前における二酸化炭素の吹き込み際して、吹き込み開始から完了までの間のpH変化を計測した。
なお、平均粒径は、サンプル10mgをメタノール溶液8mlに添加し、超音波分散機(出力80ワット)で3分間分散させ、この溶液をコールターカウンター粒度分布測定装置(COULTER ELECTRONICS 社製TA−II型)で、50μmのアパチャーを用いて測定したものである。ただし、50μmのアパチャーで測定不可能なものについては200μmのアパチャーを使用し測定した。
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〔結果及び考察〕
計測結果を表2〜5に併記した。また、実施例1のpH変化を図2に示した。他の実施例のpH変化は図示していないが、試料粒子径と二酸化炭素吹き込み量に応じて変化速度に差異が見られること以外は、概ね実施例1と似た挙動であった。この結果からも明らかなように、本発明によれば、製造コストを低く抑えながらも、スラリーのpH増を抑制でき、また操業性も良好になることが判る。
なお、粉砕により、新たなpH上昇要因物質の溶出によりpHが上昇する現象が発生したが、粉砕後に二酸化炭素を再び吹き込むことで、pHを11以下に抑えることが可能であった。また、スラリー濃度を60%とした例では、スラリーが粘性を示し、二酸化炭素を吹き込んだ際に発泡が生じるとともに、pH変化が極めて緩慢で操業性に難があり、しかも、二酸化炭素の吹き込み時間が2時間を経過してもpHを11以下に抑えることはできなかった。
本発明は、脱墨フロスを主原料として填料や顔料等の無機粒子を製造するのに利用可能である。
製造設備のフロー図である。 スラリーのpH変化を示すグラフである。
符号の説明
1…原料、2…脱水工程、3…乾燥工程、4…焼成工程、5…粉砕工程、6…懸濁工程、7…炭酸化工程、8…二酸化炭素分離装置、D…脱水物、F…粉砕物、P…焼成物、K…乾燥物、S…スラリー、G…排ガス、C…二酸化炭素。

Claims (3)

  1. 古紙パルプを製造する古紙処理工程において、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離される残渣である脱墨フロスを主原料として、脱水工程、乾燥工程、焼成工程および粉砕工程をこの順に経て無機粒子凝集体を製造する方法であって、
    前記焼成工程が一次燃焼工程及びその後の二次燃焼工程を含み、前記一次燃焼工程において0.05から20%の酸素濃度下で焼成し、前記焼成工程からの焼成灰そのまま、並びに粉砕工程を経て得られる粉砕後の焼成灰の少なくとも一方からなる固体粒子を水中に懸濁して、スラリーを得るとともに、このスラリー中に、前記焼成工程で発生した排ガスおよびこの排ガスから分離した二酸化炭素の少なくとも一方を吹き込む、ことを特徴とする無機粒子の製造方法。
  2. 製造される無機粒子のX線回折(XRD)による組成分析において、pH上昇要因物質の割合が、結晶構造を有する無機粒子中における質量割合で5%以下である、請求項1記載の無機粒子の製造方法。
  3. 前記スラリーを得るに際し、スラリーの濃度を50質量%以下にするとともに、前記排ガスおよびこの排ガスから分離した二酸化炭素の少なくとも一方の吹き込みにより、前記スラリーのpHを11以下にする、請求項1または2記載の無機粒子の製造方法。
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