JP2010090441A - 部材加工後の化成処理性に優れた鋼材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】好ましくは質量%で、C:0.05%以上、Si:0.7%超え、Mn:0.8%以上を含有する鋼材の表面に、めっき付着量が10mg/m2以下の軽度の金属めっきを施す。これにより、Siを0.7%超えて含有しても、化成処理性の低下はなく、また、表面歪で2%を超える加工を施されても、加工による化成処理性の低下を防止できる。金属めっきとしては、Ni、Cu、Mo等のめっきとすることが好ましい。軽度の金属めっき層は、下地鋼材を部分的に覆うように、不連続に形成され、化成結晶が析出する際の、カチオン・ポイントとして機能し、緻密でかつ微細な化成結晶の形成が可能となる。
【選択図】なし
Description
例えば、特許文献1には、酸素分圧を特定範囲に制御した雰囲気中で焼鈍を行い、ついで特定温度範囲を急冷する冷却を行ったのち、さらに表面を研削しさらに酸洗を行い酸化膜を除去する、りん酸塩被膜処理性に優れた高Si含有高張力鋼板の製造方法が記載されている。また、特許文献2には、(Si含有量)/(Mn含有量)を0.4以上とする冷延鋼板を、露点が−20〜0℃の雰囲気中で軟化焼鈍し、Si基酸化物の表面被覆率が20%以下、Si基酸化物の直径が円相当径で5μm以下とし、その後に、水焼入れ、焼戻しを施したのち塩酸あるいは硫酸に浸漬する酸洗を施す、化成処理性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法が記載されている。
また、特許文献3には、鋼材を、まず硫酸イオン濃度および弗化水素濃度が特定範囲の硫弗化酸中に浸漬したのち、塩化物イオン濃度が特定範囲の塩酸中に浸漬する鋼材表面の処理方法が記載されている。フッ酸系の薬剤を使用して酸洗すれば、Si系酸化物を完全除去することができるが、やや危険度が増すなどの問題がある。
軽度の金属めっきを施された鋼材に加工を施し部材とすると、めっき付着量が多い場合に部材の化成処理性が顕著に低下する理由は、現在までに完全に説明できるまでに至っていないが、本発明者らはつぎのように考えている。
まず、本発明者らが行った基礎的実験結果について説明する。
脱脂処理は、日本ペイント製薬液:EC90MおよびEC90L-2の混合液を使用し、温度:42℃として、試験片表面に120s間吹き付ける処理とした。また、表面調整処理は、日本ペイント製薬液:5N-10を使用し、該薬液に室温環境で、30s間浸漬する処理とした。化成処理は、日本ペイント製薬液:SD2500を用い、液温:43±3℃として、TA(全リン酸濃度):20〜26pt.、FA(遊離酸度):0.7〜0.9pt. 、AC(促進剤濃度):2.8〜3.5pt.の条件で、該薬液に120s間浸漬した後、170℃×20minで焼成する処理とした。また、塗装後耐食性の評価を行う場合に、上記した化成処理後に行うカチオン電着塗装処理は、日本ペイント製薬液:V-50を用い、液温:28℃、付加電圧:180V、処理時間:180sの条件で、凡そ膜厚:20〜25μmの塗膜を形成する処理とした。
なお、ここでいう「均一粒」とは、見た目で均質に見えるものについては、平均結晶粒径の±20%以内であるか、見た目で明らかに粗大粒と微小粒が混ざっている場合には、粗大粒の粒径が、微小粒の粒径の3倍以下である場合をいう。
しかし、例えば、試験板No.3〜7の比較から、化成処理性は、Si含有量のみに依存しているわけではなく、鋼板製造時のプロセスパラメータの変動の影響を受けて、Si系酸化物の表面濃化が変動し、化成処理性にバラツキが生じる場合があると考えられる。したがって、Si含有量が化成処理性劣化の原因のひとつであるが、それのみで化成処理性の劣化が生じるとはいえない。なお、製造プロセスの条件変動に伴い、表層でのSiの濃化具合が変化するため、0.7質量%超えのSiを含有する場合には、例えば表2中の試験板No.5〜No.8の比較から明らかなように、表面に軽度な金属めっきを施すことが鋼材の化成処理性向上には有効な手段であるといえる。
(1)表面歪で2%超えの加工を施されてなる部材用の鋼材であって、該鋼材の表面にめっき付着量δが10mg/m2以下の金属めっき層を有することを特徴とする部材加工後の化成処理性に優れた鋼材。
(3)(1)または(2)において、前記金属めっき層が、Feより貴な金属のめっき層であることを特徴とする鋼材。
(4)(3)において、前記Feより貴な金属のめっき層が、Niめっき層、Cuめっき層、またはMoめっき層であることを特徴とする鋼材。
(6)(5)において、前記加工が、各方向の表面歪の絶対値の和で2%超えであることを特徴とする部材。
(7)下地鋼材の表面に軽度の金属めっきを施すに当たり、前記軽度の金属めっきを、めっき付着量δが10mg/m2以下である金属めっきとすることを特徴とする、部材加工後の化成処理性に優れた鋼材の製造方法。
(9)(7)または(8)において、前記金属めっきが、Feより貴な金属のめっきであることを特徴とする鋼材の製造方法。
(10)(9)において、前記Feより貴な金属めっきが、Niめっき、Cuめっき、またはMoめっきであることを特徴とする鋼材の製造方法。
(12)(7)ないし(11)のいずれかに記載の鋼材の製造方法で得られた鋼材を母材として、該母材に所定量α(%)の加工を施して所定形状の部材とする部材の製造方法であって、前記所定量αが、各方向の表面歪の絶対値の和で2%超えであることを特徴とする化成処理性に優れた部材の製造方法。
α≦2 かつ δ≦10 ‥‥(1)
α>2 かつ δ≦10 ‥‥(2)
α≦2 かつ δ>10 ‥‥(3)
α>2、δ>10でかつ α ≦ −δ/4+8.5 ‥‥(4)
(ここで、δ:鋼材のめっき付着量(mg/m2)、α:加工の所定量;各方向の表面歪の絶対値の和(%))
のうちのいずれかを満足することを特徴とする化成処理性に優れた部材の製造方法。
(15)(14)において、前記Feより貴な金属のめっき層が、Niめっき層、Cuめっき層、またはMoめっき層であることを特徴とする部材の製造方法。
(16)(12)ないし(15)のいずれかにおいて、前記加工の所定量αが、前記鋼材の製造時に付加された表面歪の絶対値の和と、加工により付加された表面歪の絶対値の和との合計であることを特徴とする部材の製造方法。
金属めっき層のめっき付着量の測定には、化学的方法を用いることが好ましい。化学的方法は、めっきされた鋼材について、その重量と表面積とを測定した後、めっき層のみを溶解し下地鋼材を溶解しない薬液を利用して、めっき層のみを除去したのち、乾燥して重量を測定して、めっき付着量を算出する方法である。なお、予め、化学的方法で決定されためっき付着量について蛍光X線等による較正曲線等が求められている場合には、蛍光X線等を用いて求めてもよい。
また化成結晶組織における「スケ無し」とは、試験サンプルの中央付近で、異常部分を除くランダムな部分を倍率:1000倍で2視野以上観察し、「スケ」が見られない場合をいう。「スケ」とは、通常、化成結晶がついていない部分のことを指す。しかし、拡大して観察すると、全く化成結晶がついてないと見做せる部分と、周りの化成結晶サイズに対して、非常に小さな化成結晶が疎らに、非常に薄い密度で付いている部分もある。このため本発明では、「スケ」とは、化成結晶が均一粒(平均結晶粒径に対して、±20%以内)の場合には、化成結晶粒径(直径)の3倍を超える領域に化成結晶が形成されていない箇所をいい、化成結晶が粗大粒と微小粒との混粒の場合には、粗大粒の粒径(直径)の5倍を超える領域に化成結晶が形成されていない箇所をいうものとする。
試験材は、腐食試験の対象面積として、端部をテープでシールした残りの部分(露出した部分)が30mm×100mm以上のものを使うことを前提にする。なお、対象が鋼管である場合は半割りした試験材とする。また、試験材とする鋼管が小径すぎて、1つのサンプルで上記した露出面積を確保できない場合には、2個以上の試験片を用いて評価してもよい。
加工に際し、鋼材(部材)に導入される歪は、加工面(平面)の直交する2方向と、これらと直交する肉厚方向、との3方向の歪として表示できるが、本発明では加工により導入される歪は、表面歪のみに着目し、肉厚方向の歪については考慮しない。
α>2 かつ δ≦10 ‥‥(2)
を満足する場合である。
α>2、δ>10でかつ α ≦ −δ/4+8.5 ‥‥(4)
(ここで、δ:鋼材のめっき付着量(mg/m2)、α:加工の所定量;各方向の表面歪の絶対値の和(%))
を満足する場合であれば、化成処理性が良好に保たれる場合がある。その理由については、現在までのところ明確になったわけではないが、本発明者らは、加工歪量αとめっき付着量δが(4)式を満足する範囲内であれば、金属めっき層が加工によって変形しても、カチオン・ポイントとして作用するためと推測される。
なお、加工の所定量αが表面歪で2%以下であれば、化成処理性の劣化は少ない。すなわち、めっき付着量δと、加工の所定量αとが、次(1)、(3)式
α≦2 かつ δ≦10 ‥‥(1)
α≦2 かつ δ>10 ‥‥(3)
を満足する場合である。
加工により鋼材(部材)に導入される表面歪は、スキンパス圧延、単純な曲げ加工であれば、1軸の歪で表されるが、複雑な加工となると、2軸の表面歪として表すことになる。また、本発明では、導入される加工歪は、その方向を考慮せず、その絶対値で表す。2軸の加工歪が導入される場合には、それぞれの絶対値の和を、その加工により導入された加工歪(表面歪)と規定する。2軸の方向としては、最も加工された方向すなわち表面歪の主歪方向と、それに直交する方向とすることが好ましい。
つぎに、本発明鋼材の母材(下地鋼材)として使用する鋼材の好ましい組成について説明する。本発明鋼材は表面に軽度な金属めっき層を有するため、下地鋼板の組成はとくに限定する必要はないが、圧延ままあるいは酸洗、研磨、研削ままでは化成処理性が低下している高Si含有高強度鋼材では、表面に軽度な金属めっき層を形成することにより、化成処理性が向上することが期待される。なお、以下、とくに断らない限り、組成における質量%は単に%で記す。
Cは、鋼の強度を増加させる元素であり、引張強さ:590MPa以上の高強度を確保するためには、0.05%以上の含有を必要とする。一方、Cの上限は限定しないが、通常の圧延等により製造される鋼板(鋼帯)、鋼管、条鋼等の鋼材では、1%程度が上限である。溶接等を施される使途では、0.5%以下とすることが好ましい。鋼管の場合、0.5%を超えるCの含有は、電縫溶接部の健全性が低下する。なお、より好ましくは0.3%以下である。
Si:0.7%超え
Siは、フェライトの安定化に寄与するとともに、固溶強化や焼入れ性向上を介して、鋼の強度を増加させるとともに、さらに加工性を向上させる作用も有する元素である。Siを多量に含有させると、一般的に、伸び値が高くなり加工性が向上するが、化成処理性が顕著に低下する。Siが0.7%以下の場合には、化成処理性の低下は、許容される範囲内で問題にならないレベルである。このため、本発明では、従来から化成処理性が顕著に低下すると言われている0.7%超えをSiの下限値とすることが好ましい。なお、さらに好ましくは1%以上である。Siを0.7%超え、さらには1%以上含有する場合には、とくに表層にSi系酸化物が濃化しやすく、鋼材(圧延まま、焼鈍まま)の化成処理性に問題を残している。本発明によれば、従来から化成処理性が顕著に低下すると言われているこのような範囲のSiを含有していても、優れた化成処理性を有する鋼材(部材)とすることができる。なお、本発明ではSi含有の上限は、とくに限定する必要はないが、材質の作り込みの観点から2.5%以下とすることが好ましい。
Mn:0.8%以上
Mnは、Cと同様に、固溶強化、さらには焼入れ性の向上を介して、鋼の強度を増加させる元素であり、所望の高強度を確保するために、本発明では0.8%以上の含有を必要とする。更にMnは、鋼中Sを、MnSとして固定し、Sを無害化する作用も有する。このようなことから、Mnは0.8%以上に限定することが好ましい。なお、引張強さ:780MPa以上を確保するためには、1.5%以上含有することが好ましい。一方、5%を超える過剰の含有は、延性を著しく低下させる。このため、Mnは5%以下に限定することが好ましい。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として作用するとともに、NをAlNとして固定し、Nの悪影響を防止する作用を有する元素である。このような効果は0.01%以上の含有で顕著となる。一方、0.1%を超える含有は、Al系介在物量が増加し、鋼の清浄度を低下させる。このため、Alは0.1%以下に限定した。
Nは、Cと同様に、固溶して鋼の強度を増加させる元素であるが、多量に含有すると、延性を低下させるとともに、時効硬化させる。このため、Nは0.010%以下に限定することが好ましい。なお、好ましくは0.0050%以下である。
上記した組成に加えて、さらにTi:0.03%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Cr:1%以下、Mo:1%以下、Ni:1%以下、Cu:1%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Ca:0.1%以下、REM:0.05%以下のうちから選ばれた1種または2種、を必要に応じ選択して含有することができる。
Ti、Nb、Vはいずれも、炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化防止、さらには析出強化による強度増加に寄与する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上を含有できる。このような効果は、Ti:0.01%以上、Nb:0.005%以上、V:0.01%以上のそれぞれの含有で認められる。一方、Ti:0.03%、Nb:0.1%、V:0.1%、をそれぞれ超える含有は、延性の低下が著しくなる。そのため、含有する場合には、Ti:0.03%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下に限定することが好ましい。
Cr、Mo、Ni、Cu、Bはいずれも、固溶強化あるいは焼入れ性向上を介して、鋼の強度増加に寄与する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上を含有できる。このような効果は、Cr:0.03%以上、Mo:0.02%以上、Ni:0.03%以上、Cu:0.02%以上、B:0.001%以上の含有で認められる。また、Cuは耐食性、耐遅れ破壊性の向上にも寄与する。一方、Cr:1%、Mo:1%、Ni:1%、Cu:1%、B:0.01%を超える含有は、溶接性、電縫溶接部の健全性に悪影響を及ぼす。このため、含有する場合には、Cr:1%以下、Mo:1%以下、Ni:1%以下、Cu:1%以下、B:0.01%以下に、それぞれ限定することが好ましい。
Ca、REMはいずれも、介在物の形態を制御し、延性の向上に寄与する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種を含有できる。このような効果は、Ca:0.002%以上、REM:0.02%以上の含有で顕著となるが、Ca:0.1%、REM:0.05%を超える含有は、介在物量が過剰となり、かえって、延性を低下させる。このため、含有する場合には、Ca:0.1%以下、REM:0.05%以下に限定することが好ましい。
また、本発明鋼材の母材となる鋼材(下地鋼材)の組織はとくに限定されない。本発明では、フェライトを主体とした組織、冷延後の焼鈍時に急冷処理を施されて生成したマルテンサイトを主体とする組織、残留オーステナイトやベイナイトを含む組織、基地中に微細な析出物が分散した組織など、いかなる組織の鋼材も、本発明鋼材の母材(下地鋼材)として適用可能である。また、本発明鋼材の母材となる鋼材の製造方法はとくに限定されない。熱延鋼板、冷延鋼板、さらには焼鈍の有無等、いかなる製造方法の鋼材も、本発明鋼材の母材として適用可能である。
上記した組成、組織を有する鋼材を下地鋼材として、該下地鋼材の表面に軽度の金属めっきを施す。軽度の金属めっきは、めっき付着量を10mg/m2以下とする金属めっきとする。好ましい軽度の金属めっきとしては、Ni、Cu、Mo、Ti、W、Coのうちから選ばれた1種、なかでもNi、Cu、Moのうちの1種の金属めっきとすることが好ましい。
表1に示す鋼No.Gの組成を有する鋼に、熱間圧延、冷間圧延さらに焼鈍を施したのち、インラインで酸洗、および表3に示すめっき付着量のNiめっきを施したのち、スキンパス圧延(圧下率:0.5%)を施し、試験板No.25、No.26(帯板)とした。
さらに、これら試験板No.25、No.26を母材として、ケージロール方式(CBR方式)で連続的に、オープン管形状にロール成形するロール成形工程と、該オープン管形状の両端面を加圧し、電縫溶接して管とする接合工程、および該管の断面形状をサイザー等で矯正する絞り矯正(サイジング)工程と、を施して、外径48.6mmφ×肉厚2mmの管材P1、P2とした。管の外表層および内表層に付加される曲げ歪(円周方向表面歪)は、管の肉厚tと外径Dから幾何学的に決まる歪で、t/D×100(%)で算出される。この歪は、管外側では引張歪、管内側では圧縮歪となるが、ここでは、歪の方向に関係なく、円周方向表面歪の絶対値を付加歪の指標とした。更に、接合工程、絞り矯正(サイジング)工程で付加される歪も計算し、それらの絶対値を、円周方向表面歪の絶対値に加算した。
脱脂処理は、日本ペイント製薬液:EC90MおよびEC90L-2の混合液を使用し、温度:42℃として、試験片表面に120s間吹き付ける処理とした。また、表面調整処理は、日本ペイント製薬液:5N-10を使用し、該薬液に室温環境で、30s間浸漬する処理とした。化成処理は、日本ペイント製薬液:SD2500を用い、液温:43±3℃として、TA(全リン酸濃度):20〜26pt.、FA(遊離酸度):0.7〜0.9pt. 、AC(促進剤濃度):2.8〜3.5pt.の条件で、該薬液に120s間浸漬した後、170℃×20minで焼成する処理とした。また、塗装後耐食性の評価を行う場合に、上記した化成処理後に行うカチオン電着塗装処理は、日本ペイント製薬液:V-50を用い、液温:28℃、付加電圧:180V、処理時間:180sの条件で、凡そ膜厚:20〜25μmの塗膜を形成する処理とした。
なお、ここでいう「均一粒」とは、見た目で均質に見えるものについては、平均結晶粒径の±20%以内であるか、見た目で明らかに粗大粒と微小粒が混ざっている場合には、粗大粒の粒径が、微小粒の粒径の3倍以下である場合をいう。
また、管材P1、P2は、試験板No.25、No.26を母材として、造管加工されたものであり、ロール成形工程で5.1%の表面歪が管外側、および管内側に付加されている。Niめっき付着量が10 mg/m2程度であれば、この造管時の加工による化成処理性の低下は認められない。また、化成処理性は、管内側、管外側でとくに大きな相違は認められなかった。このことから、造管時のロールとの接触の有無が化成処理性に影響する決定的な要因であるとはいえない。
ついで、上記した管材P1、P2を母材として、該母材にパイプ加工を施し、部材G1,G2とした。このパイプ加工は、表4に示すように、円周方向に圧縮の表面歪が、長手方向に引張の表面歪が導入される加工とした。
表1に示す組成と、表2に示す引張特性を有する試験板No.5に酸洗および、表2に示すめっき付着量のNiめっきを施した、金属めっき板である試験板No.22、No.23を母材とした。なお、めっき付着後、スキンパス圧延を施した。そしてこれら母材に、表6に示す加工条件で張出し成形加工(2軸加工)を施し、部材E1〜E5とした。なお、張出し成形加工では、ブランクの形状を変化させて加工により付加される歪量を調整した。
なお、付加された歪量は、予め表面にスクライブドサークル(図4)を付した試験板に曲げ加工を施し、スクライブドサークルを用いて、直交する2軸の各方向における変化を測定した。付加された歪量は、各方向で付加された表面歪の絶対値の和で評価した。
Claims (16)
- 表面歪で2%超えの加工を施されてなる部材用の鋼材であって、該鋼材の表面にめっき付着量δが10mg/m2以下の金属めっき層を有することを特徴とする部材加工後の化成処理性に優れた鋼材。
- 前記鋼材の組成が、質量%で、
C:0.05%以上、 Si:0.7%超え、
Mn:0.8%以上
を含有する組成であることを特徴とする請求項1に記載の鋼材。 - 前記金属めっき層が、Feより貴な金属のめっき層であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼材。
- 前記Feより貴な金属のめっき層が、Niめっき層、Cuめっき層、またはMoめっき層であることを特徴とする請求項3に記載の鋼材。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載の鋼材を母材として、該母材に加工を施してなる化成処理性に優れた部材。
- 前記加工が、各方向の表面歪の絶対値の和で2%超えであることを特徴とする請求項5に記載の部材。
- 下地鋼材の表面に軽度の金属めっきを施すに当たり、前記軽度の金属めっきを、めっき付着量δが10mg/m2以下である金属めっきとすることを特徴とする、部材加工後の化成処理性に優れた鋼材の製造方法。
- 前記下地鋼材に前記軽度の金属めっきを施す前に、該下地鋼材に、酸洗および/または表面研削を施すことを特徴とする請求項7に記載の鋼材の製造方法。
- 前記金属めっきが、Feより貴な金属のめっきであることを特徴とする請求項7または8に記載の鋼材の製造方法。
- 前記Feより貴な金属めっきが、Niめっき、Cuめっき、またはMoめっきであることを特徴とする請求項9に記載の鋼材の製造方法。
- 前記下地鋼材の組成が、質量%で、
C:0.05%以上、 Si:0.7%超え、
Mn:0.8%以上
を含有する組成であることを特徴とする請求項7ないし10のいずれかに記載の鋼材の製造方法。 - 請求項7ないし11のいずれかに記載の鋼材の製造方法で得られた鋼材を母材として、該母材に所定量α(%)の加工を施して所定形状の部材とする部材の製造方法であって、前記所定量αが、各方向の表面歪の絶対値の和で2%超えであることを特徴とする化成処理性に優れた部材の製造方法。
- 表面にめっき付着量δの金属めっき層を有する鋼材を母材として、該母材に所定量α(%)の加工を施して所定形状の部材とする部材の製造方法であって、前記めっき付着量δと、前記加工の所定量αとが、下記(1)〜(4)式のうちのいずれかを満足することを特徴とする化成処理性に優れた部材の製造方法。
記
α≦2 かつ δ≦10 ‥‥(1)
α>2 かつ δ≦10 ‥‥(2)
α≦2 かつ δ>10 ‥‥(3)
α>2、δ>10でかつ α ≦ −δ/4+8.5 ‥‥(4)
ここで、δ:鋼材のめっき付着量(mg/m2)、
α:加工の所定量;各方向の表面歪の絶対値の和(%) - 前記金属めっき層が、Feより貴な金属のめっき層であることを特徴とする請求項13に記載の部材の製造方法。
- 前記Feより貴な金属のめっき層が、Niめっき層、Cuめっき層、またはMoめっき層であることを特徴とする請求項14に記載の部材の製造方法。
- 前記加工の所定量αが、前記鋼材の製造時に付加された表面歪の絶対値の和と、加工により付加された表面歪の絶対値の和との合計であることを特徴とする請求項12ないし15のいずれかに記載の部材の製造方法。
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