JP5790540B2 - 鋼材の化成処理性の判定方法および化成処理性に優れた鋼材の製造方法 - Google Patents

鋼材の化成処理性の判定方法および化成処理性に優れた鋼材の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5790540B2
JP5790540B2 JP2012036154A JP2012036154A JP5790540B2 JP 5790540 B2 JP5790540 B2 JP 5790540B2 JP 2012036154 A JP2012036154 A JP 2012036154A JP 2012036154 A JP2012036154 A JP 2012036154A JP 5790540 B2 JP5790540 B2 JP 5790540B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
chemical conversion
steel
steel material
conversion treatment
treatment
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012036154A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013170305A (ja
Inventor
石黒 康英
康英 石黒
昌利 荒谷
昌利 荒谷
昭夫 佐藤
昭夫 佐藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2012036154A priority Critical patent/JP5790540B2/ja
Publication of JP2013170305A publication Critical patent/JP2013170305A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5790540B2 publication Critical patent/JP5790540B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Chemical Treatment Of Metals (AREA)

Description

本発明は、鋼材の化成処理性に係り、とくに、高Si含有鋼材の化成処理性の簡便な判定方法に関する。なお、ここでいう「化成処理性」とは、主として、塗装の下地処理として、リン酸亜鉛系処理液(化成処理液)を使用して形成される、皮膜(化成皮膜)の健全性をいうものとする。なお、リン酸亜鉛系処理液以外に、加工や冷牽時の潤滑性確保を目的としたリン酸マンガン系処理液、その他のリン酸塩系処理液を使用する場合も含むものとする。また、ここでいう「鋼材」には、鋼板、鋼帯、形鋼、鋼管、棒鋼、線材等を含むものとする。
従来から、鋼材表面には塗装処理を施して、鋼材の耐食性を向上させている。そして、塗装処理の前処理として、鋼材表面に化成処理を施し、化成皮膜(化成結晶)を形成し、塗膜(塗装皮膜)の密着性をより向上させている。しかし、近年、鋼材の高強度化が要望され、鋼材にSi、Mn等の合金元素が多量に添加されるようになっている。このような合金元素の多量添加、とくにSiの多量添加により、鋼材の化成処理性が著しく低下して、問題となってきた。
Siを多量に含有した鋼材の化成処理性が低下する機構については、現在までに、ある程度明らかになっている。
Siを含有すると、鋼材の表層には、Si系酸化物が濃化する。このSi系酸化物が、下地鋼材からFeがFe2+となり一様に溶けることを妨げ、化成処理時にアノード・カソード反応に基づくリン酸鉄亜鉛(化成結晶)の形成を阻害する。このため、鋼材表面に緻密かつ微細な化成結晶が形成されにくくなる。Si含有量の少ない一般軟鋼材では、非常に緻密な化成結晶が形成されるのに対し、とくに高Si含有鋼材表面に、化成処理を施すと、場合によっては形成される化成結晶は、粗大でかつ疎らで、さらに結晶が形成されない部分(スケ)が見られる化成結晶となることがある。
そのため、従来から、高Si含有鋼材では、化成処理を施す前に、機械的方法で表面を研削したり、酸洗等の化学的方法で表面を溶かして、化成反応を阻害するSi系酸化物を取り除くことが行われてきた。例えば、特許文献1には、酸素分圧を特定範囲に制御した雰囲気中で焼鈍を行い、ついで特定温度範囲を急冷する冷却を行ったのち、さらに表面を研削し、さらに酸洗を行い酸化膜を除去する、リン酸皮膜処理性に優れた高Si含有高張力鋼板の製造方法が記載されている。
しかし、研削や酸洗は、それ自体が工数が掛かり、しかも完全にSi酸化層を削り取るのは困難である。しかも、Si系酸化物はガラスであり、塩酸や硝酸などの一般的な酸には溶解しない。さらに酸洗では、Si系酸化物だけを選択的に除去できないため、下地鋼材を多く溶解することが必要となる。
また、特許文献2には、鋼材を、まず硫酸イオン濃度および弗化水素濃度が特定範囲の硫弗化酸中に浸漬したのち、塩化イオン濃度が特定範囲の塩酸中に浸漬する鋼材表面の処理方法が記載されている。このように、フッ酸系の薬剤を使用して酸洗すれば、Si系酸化物を完全に除去することができるが、やや危険度が増すなどの問題がある。
そこで、難溶性のSi系酸化物の形成を回避して、酸に溶解しやすいSi−Mn複合酸化物を形成させることにより、化成処理性を改善させる技術が、例えば、特許文献3に記載されている。
特許文献3には、Si、Mn含有量をSi/Mn比で0.4以下に調整した引張強さが550MPa以上のフェライト−マルテンサイト系の複合組織鋼板であって、MnとSiの原子比(Mn/Si)が0.5以上の微細なMn−Si複合酸化物が表面と直交する断面で表層(表面からの深さが2μmで表面長さが10μmの領域)に10個以上存在し、かつ表面に占める割合が10%以下である、塗膜密着性に優れた高強度冷延鋼板が記載されている。
また、特許文献4には、Si、Mn含有量をSi/Mn比で0.4以下に調整し、MnとSiの原子比(Mn/Si)が0.5以上である長径0.01〜5μmの微細Mn−Si複合酸化物が、表面で10個/100μm以上存在し、かつ表面に占める割合が10%以下である、引張強さ550MPa以上で強度−伸びバランスTS×Elが19000以上の、塗膜密着性と加工性に優れた高強度冷延鋼板が記載されている。
Si−Mn複合酸化物も、Si酸化物と同様に、化成処理性には悪影響を及ぼすが、Si−Mn複合酸化物は酸に溶けやすいため、特許文献3,4に記載された技術では、冷延鋼板の製造ラインに設置されていることが多い「インライン酸洗」で、Si−Mn複合酸化物を除去することを意図している。しかし、特許文献3,4に記載された技術では、Mn含有量をSi含有量に依存して決定するため、鋼の成分設計の自由度が制限されるという問題があり、しかも上記した成分範囲であっても、化成処理性が悪い場合もあり、化成処理性の向上効果も限定的であるという問題がある。
また、機械潤滑向けのリン酸亜鉛処理膜を形成する、いわゆるボンデ処理では、前処理としてショットブラスト等を行うことにより、化成処理性が向上することが知られている。例えば、特許文献5には、珪砂を添加したリン酸亜鉛化成処理液を表面に噴射し表面を清浄化したのち、リン酸亜鉛化成処理液をさらに噴射して、表面に化成皮膜を形成する方法が記載されている。化成処理前にショットブラストを施すと、化成処理性が改善する理由は、ショットブラストにより、表面が機械化学的に活性化されるためであると考えられている(例えば、非特許文献1)。しかし、ショットブラスト処理された表面を大気中に放置したり、焼鈍したりすると、表面の機械化学的活性が減衰し、所望の化成処理性の改善が図れないという問題がある。実用的には、ショットブラストを適用してから塗装を施すまでにはかなりの時間を要するため、化成処理性改善の効果が減衰し、ショットブラストをインラインで連続的に適用することは実現性に乏しいと言える。
さらに、特許文献6には、質量%で、C:0.01%以下、N:0.01%以下を含み、Tiを含有する鋼板を焼鈍したのち。0.8〜5%の調質圧延を施す、リン酸塩処理性に優れた冷延鋼板の製造方法が記載されている。なお、特許文献6に記載された技術では、調質圧延の伸長率が2.7%以上では化成処理性が飽和するとしている。
また、特許文献7には、質量%で、Siを0.5〜2.5%含有する組成で、CとTiを特定関係を満足するように含有させ、平均結晶粒径を3.0μm以下、表面粗さRaで1.5μm以下に調整した、化成処理性と耐食性に優れる高張力熱延鋼板が記載されている。特許文献7に記載された技術では、結晶粒径を細かくしかつ表面を滑らかにすることにより、化成処理性が向上するとしている。
しかし、製品として出荷された鋼材には、さらにプレス加工、曲げ加工等の加工が施されて部材とされるため、鋼材の表面は、もとのままの表面状態が維持されることは稀である。このため、特許文献6,7に記載された技術で製造された鋼板では、加工を施されたのちまでも、優れた化成処理性が維持されているとは考えにくい。
また、最近、表面歪の付与により高Si含有鋼板の化成処理性を改善する技術が提案されている。例えば、特許文献8には、化成処理性に優れた高加工性高強度薄鋼板の製造方法が記載されている。特許文献8に記載された技術は、質量%で、C:0.05%以上、Si:0.7%超え、Mn:0.8%以上を含有する組成の薄鋼板に、表層に付加される表面歪の絶対値の和が公称歪で5%以上となるように調整して加工工程を施し、化成処理性を改善する技術である。特許文献8に記載された技術によれば、酸洗、研削を施すことなく、良好な化成処理性を具備する高Si含有高強度鋼板が得られるとしている。
特開2003−226920号公報 特開2004−256896号公報 特開2005−248281号公報 特開2005−281787号公報 特公昭46−6327号公報 特開昭62−116723号公報 特開2002−226944号公報 特開2010−89128号公報
玉井、森:金属表面技術、vol.31(1980)、pp.482−486.
しかしながら、特許文献8に記載された技術は、表層にSiが最も濃化した状態の特殊な形態の鋼板について化成処理性を改善するためのものである。一般的には鋼板表層へのSiの濃化はその都度変化して、一定とはなっていない。したがって、特許文献8に記載された技術は、一般的であるとはいい難い。また、通常は、鋼材の製造履歴が不明の場合が多く、表層のSiの濃化状態が不明で、当該鋼材の化成処理性を判定できない場合が多い。このため、鋼材の化成処理性の簡便な判定方法が要望されていた。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、鋼材の化成処理性の簡便な判定方法およびそれを利用した化成処理性に優れた鋼材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、鋼材の化成処理性を評価できる、各種方法について鋭意研究した。その結果、鋼材を化成処理液に浸漬した際に生じる浸漬電位の変化挙動が、鋼材の化成処理性と相関があることを見出した。
鋼材を化成処理液に浸漬しながら、浸漬電位を測定すると、浸漬電位は、浸漬と同時に、−0.56〜−0.58Vまで急激にマイナス側に振れ、その後、浸漬時間の経過とともに、ほぼ一定値(−0.59〜−0.60V)(自然浸漬電位)に収斂していく。この鋼材の浸漬電位の変化挙動の一例を図1に示す。本発明者らは、各種薬液について、鋼材の浸漬電位の変化挙動を調査した結果、浸漬する薬液により収斂する値(電位)が若干相違する程度で、鋼材の浸漬電位の変化挙動は、浸漬する薬液によらず共通することを知見した。そして、更なる検討により、浸漬開始から所定の電位(自然浸漬電位)まで収斂する時間が、鋼材の化成処理性とよく対応することを見出し、この時間が鋼材の化成処理性の指標となることに想到した。
そして、この浸漬開始から所定の電位(自然浸漬電位)まで収斂する時間により、鋼材の化成処理性が大きく変化していることを知見した。化成処理性が良好な鋼材では、この時間が、化成処理液ごとに決められた所定の適正処理時間(化成処理時間)と比較して短く、所定の適正処理時間以下、好ましくは2/3以下となっていることを見い出した。この時間が短いほど、化成処理性が優れた鋼材であることも知見した。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加え完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)鋼材を化成処理液に浸漬し、該浸漬した前記鋼材の電位を浸漬開始から連続的に測定し、得られた前記鋼材の電位変化から鋼材の化成処理性を判定する鋼材の化成処理性の判定方法であって、前記鋼材の電位が浸漬開始から前記化成処理液における自然浸漬電位と同じになるまでに要する時間が、前記化成処理液を用いて鋼材の化成処理を行う際に予め決められた適正処理時間以下である場合を化成処理性に優れた鋼材であると判定することを特徴とする鋼材の化成処理性の判定方法。
(2)(1)において、前記化成処理液を用いて鋼材の化成処理を行う際に予め決められた適正処理時間以下に代えて、前記化成処理液を用いて鋼材の化成処理を行う際に予め決められた適正処理時間の2/3以下とすることを特徴とする鋼材の化成処理性の判定方法。
(3)(1)または(2)において、前記鋼材が、質量%で、C:0.001〜0.40%、Si:0.5〜3.5%を含有する高Si含有鋼材であることを特徴とする鋼材の化成処理性の判定方法。
(4)鋼材を化成処理を施す部材向け製品とするに当たり、該鋼材から試験片を採取し、該試験片を化成処理液に浸漬し、該浸漬した前記試験片の電位を浸漬開始から連続的に測定し、前記試験片の電位が浸漬開始から前記化成処理液における自然浸漬電位と同じになるまでに要する時間を求め、該時間が、前記化成処理液を用いて鋼材の化成処理を行う際に予め決められた適正処理時間以下である場合に、該鋼材を製品とし、前記時間が、前記化成処理液を用いて鋼材の化成処理を行う際に予め決められた適正処理時間超えである場合には、さらに該鋼材に化成処理性を改善する処理を施すことを特徴とする化成処理性に優れた鋼材の製造方法。
(5)(4)において、前記化成処理液を用いて鋼材の化成処理を行う際に予め決められた適正処理時間以下に代えて、前記化成処理液を用いて鋼材の化成処理を行う際に予め決められた適正処理時間の2/3以下とすることを特徴とする鋼材の製造方法。
(6)(4)または(5)において、前記鋼材が、質量%で、C:0.001〜0.40%、Si:0.5〜3.5%を含有する組成の高Si含有鋼材であることを特徴とする鋼材の製造方法。
(7)(4)ないし(6)のいずれかにおいて、前記化成処理性を改善する処理が、前記鋼材に表面歪を付加する処理、前記鋼材の表面を研削または研磨する処理、前記鋼材の表面にショットブラストを施す処理、および前記鋼材に酸洗を施す処理のいずれかであることを特徴とする鋼材の製造方法。
本発明によれば、鋼材の化成処理性を簡便に判定でき、その判定結果により必要に応じて、化成処理性改善のための処理を選別して、容易に化成処理性に優れた鋼材とすることができ、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、鋼材ごとの化成処理性が判定できるという効果もある。
鋼材を化成処理液に浸漬した際の電位の変化挙動の一例を模式的に示すグラフである。 本発明で使用する鋼材の浸漬電位測定装置の概略を模式的に示す説明図である。 均一粒の化成結晶が形成された一例を示す、走査型電子顕微鏡組織写真である。 化成結晶にスケがある場合の一例を示す、走査型電子顕微鏡組織写真である。
まず、鋼材の化成処理性の判定方法について説明する。
本発明では、まず、評価しようとする鋼材1と、好ましくは白金Pt製の対極(対抗電極)2と、さらに参照電極6と、容器7に保持された薬液(化成処理液)3と、ポテンショスタット4とを用意する。なお、薬液3は一定温度に保持しておくことが必要で、恒温槽等に容器7ごと浸漬しておくことが好ましい。対極2、参照電極6は、予め薬液3中に配置しておいてもよい。
そして、図2に示すように、対極2、参照電極6をポテンショスタット4と結線しておき、鋼材1とポテンショスタット4と結線してうえで、鋼材1を対極2と対向するように、薬液(化成処理液)3中に浸漬する。鋼材1が薬液中に浸漬された後直ちに、参照電極6を鋼材1のできるだけかぎり近くまで近づけて配置することが好ましい。
鋼材1が薬液3に浸漬された時間を起点(=0s)として、ポテンショスタット4で、鋼材1の浸漬電位を連続して測定し、図1に示すような浸漬電位−時間曲線を記録する。
なお、正確な測定を行うためには、鋼材1は、非電導性樹脂中に埋め込むなどして、測定面のみが露出した状態に調整し、測定面とは異なる箇所、好ましくは測定面の反対側に導線5を取り付けておくことが好ましい。また、測定面の裏側に薬液が回り込まないように、樹脂埋込に際して隙間をあけないように埋め込むことが肝要である。さらに、導線5は薬液3と接触させないように、テフロン(登録商標)等のチューブの内側に通すことが好ましい。これにより、測定精度が向上する。なお、対象とする鋼材1には、予め実際に化成処理を行う場合と同様の前処理を施しておくことは言うまでもない。
また、測定に使用する薬液(化成処理液)3は、実際に鋼材表面に化成処理皮膜を形成するときに使用する薬液と同じものを使用することが望ましいが、通常、化成処理液は時間の経過と共に変化するため、市販されている一般的な薬液(化成処理液)を用いてもよい。
市販されている薬液としては、リン酸亜鉛系薬剤では、日本ペイント(株)製化成処理液「SD2800」(商品名)、日本パーカライジング(株)製化成処理液「バルボンド138」(商品名)が、また、リン酸マンガン系化成処理剤では、例えば、日本パーカライジング(株)製化成処理液「バルホスM5」(商品名)等がある。なお、薬液はこれらに限定されることはなく、市販の薬液がいずれも利用できる。また、市販の薬液に、製造装置、製造ラインに適合するように各種添加物を添加された薬液を用いてもよい。
鋼材の浸漬電位は、鋼材の浸漬と同時に、−0.56〜−0.58V程度まで急激にマイナス側に振れ、その後、浸漬時間の経過とともに、ほぼ一定値(−0.59〜−0.60V)(自然浸漬電位)に収斂していく。使用する薬液により収斂する値(自然浸漬電位)が若干相違するが、得られる浸漬電位−時間曲線(鋼材の浸漬電位の変化挙動)の形態そのものは、浸漬する薬液によらず、ほぼ共通している。
図1に示すような浸漬電位−時間曲線から、本発明では、浸漬電位が一定値(自然浸漬電位)に収斂するまでに要した時間tN(s)を求める。そして、得られた時間tNと、使用した薬液(化成処理液)ごとに予め決められた処理時間(適正処理時間)tSとを比較する。本発明では、得られた時間tNが、当該薬液の適正処理時間tSの2/3以下である場合を化成処理性に優れた鋼材と評価する。また、得られた時間tNが、当該薬液の適正処理時間tS以下である場合も、化成処理性は若干悪くなるが、問題ない程度であると評価する。
なお、ここでいう「化成処理性に優れた」とは、(1)化成結晶が、緻密な均一粒であって、スケがない組織であること、が満足される場合をいう。
ここでいう「緻密」なものとは、化成結晶が「均一粒」であり、同時に、「スケ無し」の場合である。したがって、「緻密」なものについては、とくに具体的な数値の限定を提示しない。また、「均一粒」とは、見た目で均質に見える場合には、化成結晶が、平均結晶粒径に対して±20%以内の粒径を有する場合であり、見た目で明らかに粗大粒と小さい粒が混ざっている場合には、粗大粒の粒径が、微小粒の粒径の2倍未満である場合をいう。
図3に「均一粒」の一例を示す。図3は、一般軟鋼材(JIS規格SPCC級)を基板としてその表面に通常の化成処理を施した場合の走査型電子顕微鏡(SEM)組織写真であり、球状の化成結晶が均一かつ均質に形成されている。
また、「スケ」とは、通常、化成結晶がついていない部分のことを指す。しかし、「スケ」と判定された領域を、拡大して観察すると、全く化成結晶がついてないと見做せる部分と、周りの化成結晶の大きさに対して、非常に小さな化成結晶が、疎らに非常に薄い密度で付いている部分とがある場合がある。そこで、「スケ無し」とは、SEMで、倍率:1000倍で観察した際に、サンプルの異常部分を外したランダムな部分(端部を外し、代表性のある部分)を1視野もしくは2視野観察し、スケが見られない場合をいうものとする。「スケ」がある場合の化成結晶の一例(走査型電子顕微鏡(SEM)組織写真)を図4に示す。
具体的にいえば、「スケ」とは、化成結晶が均一粒(平均結晶粒径に対して±20%以内)の場合には、隣り合う結晶粒が、互いに直径の5倍を超えて存在し、その間の領域には化成結晶が形成されていない箇所をいう。また、「スケ」とは、化成結晶が粗大粒と小さい粒の混粒の場合には、粗大粒の直径の5倍を超える領域内に化成結晶が形成されていない箇所をいう。なお、この場合、状況によっては、そのスケの中に、小さい化成結晶粒が混入することがあるが、そのスケの中が、小さい化成結晶粒で全面的に埋まっている以外の場合を、スケとみなす。
このようなことから、本発明では「スケ」がないことは、SEM観察に基づき、判定することにする。倍率:1000倍で1〜2視野をランダムに、SEM観察もしくはSEM写真撮影して、スケが無いことをもって「化成処理性に優れている」と判定する。1000倍程度の倍率で観察すれば、スケの有無や、化成結晶の緻密かつ均質性が判断できる。
なお、本発明でいう化成処理性が「問題のない程度」とは、1000倍程度の倍率でSEM観察を行い、「スケ」が、化成結晶が均一粒(平均結晶粒径に対して±20%以内)の場合には、「スケ」があっても粒直径の3倍程度までであり、また、化成結晶が粗大粒と小さい粒の混粒の場合には、「スケ」が粗大粒の直径の3倍程度までである場合をいうものとする。
また、本発明では、化成処理後の評価で、上記した(1)の条件を満足する場合を「化成処理性に優れる」とするが、塗装処理後の評価で「化成処理性に優れる」と判定(確認)することもできる。塗装処理後の評価で「化成処理性に優れる」とする場合は、(2)塗装後に、クロスカット等を付与し腐食試験を行った際に見られる、アルカリブリスター、カソードフクレと呼ばれる現象(塗装のはがれ、フクレ)が、軽微なレベルに留まること、である。
なお、塗装処理後の評価は、つぎのように行うことが好ましい。
化成処理後にカチオン電着塗装を施した鋼板を試験材(大きさ:30mm×100mm以上)として行う。なお、試験材の端部(5〜10mm)は、テープでシールしておくことは言うまでもない。そして、試験材の観察対象面に、クロスカット、もくしは、クロスカットできないような小面積サンプルの場合には1本線状のカットを施した後、適切な腐食加速試験を実施する。なお、比較材として、一般軟鋼材(SPCC)についても同時に腐食加速試験を行うこととする。なお、腐食加速試験としては、CCT試験(Cyclic Corrosion Test)、SST試験(Salt Spray Test)が好適である。
CCT試験は、JASO-M609-91、JIS K5621等に規定される。また、SST試験は、JIS Z 2371等に規定されている。また、塩水浸漬試験(Salt Dip Test)を用いてもよい。
腐食加速試験後に、試験材を軽く水洗し乾燥したのち、ガムテープ等の粘着力の強いテープで、塗膜を剥離し、クロスカット部からの片側フクレ幅を測定する。そして、この片側フクレ幅が、比較材に比べて、誤差を加味した上で同等あるいはそれ以下である場合を「化成処理性に優れる」と判定する。なお、この場合、通常部分(クロスカット部および隣接する部分以外)において、ピンプル、ブリスター、ふくれ、剥がれ、がないことは言うまでもない。
つぎに、上記した鋼材の化成処理性の判定方法を利用した、化成処理性に優れた鋼材の製造方法について説明する。
本発明が対象とする鋼材は、鋼板(薄鋼板、厚鋼板)、鋼帯、鋼管、棒鋼、条鋼、線材等を含めて、化成処理を施されることが想定される鋼材とする。このため、本発明が対象とする鋼材は、質量%で、C:0.001〜0.40%、Si:0.5〜3.5%を含有する組成の高Si含有鋼材とすることが好ましい。対象とする鋼材のC含有量は、化成処理を行うことが殆どない、グラファイトが晶出する鋳鉄系材料を除くという意味から、質量%で、0.001〜0.40%の範囲に限定した。また、本発明が対象とする鋼材は、Siを0.5質量%以上含有する鋼材とした。
Siは、鋼材表層にSi膿化層を形成し、化成処理性を低下させる。Siが0.5質量%未満の含有では、通常、化成処理性が良好に維持されるため、本発明の対象外とする。一方、3.5質量%超えて含有すると、鋼材が脆くなり、圧延ができなくなる。このようなことから、対象とする鋼材のSi含有量は0.5〜3.5質量%の範囲に限定した。なお、ここでいう「Si濃化層」とは、Si自体の濃化、Siを含みその他元素等の濃化、Si酸化物の濃化、Siを含みその他元素の酸化物の濃化、およびそれらの複合酸化物、共晶酸化物、包晶酸化物等の濃化までを含むものとする。
C、Si以外の、その他の元素については、Mnを0.7〜3.0%の範囲に限定することが好ましい。
Mn:0.7〜3.0%
Mnは、焼入れ性の増加を介して、鋼材の強度を増加させる作用を有する。また、MnはSと結合しMnSを形成して、Sの悪影響を抑制することができる。このような効果を得るとともに、所望の高強度を確保するために、0.7%以上含有することが望ましい。一方、3.0%を超える含有は、偏析が著しくなり、延性、靭性が低下する。このようなことから、Mnは0.7〜3.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、Mnは、Siほどではないが、鋼材表面に偏析する傾向を有するため、化成処理性を若干低下させる懸念があり、化成処理性改善の処置を必要とする場合がある。
C、Si、Mn以外の元素については化成処理性に影響することが少ないため、とくに限定する必要はないが、P:0.02%以下、S:0.005%以下、Al:0.01%以下、Ti:0.03%以下、N:0.01%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とすることが好ましい。
P:0.02%以下
Pは、不純物として存在するが、鋼材の靭性や、溶接性を低下するという悪影響を及ぼすために、できるだけ低減することが望ましい。とくに、高強度鋼材の場合には、その悪影響を強く受ける。しかし、過度の低減は精錬コストを高騰させるため、Pは0.02%以下に限定することが好ましい。
S:0.005%以下
Sは、鋼中では硫化物を形成し、延性、靭性、さらには耐食性を低下させる。とくに、高強度材の場合には、高靭性や高延性を確保するために、できるだけ低減することが望ましい。しかし、過度の低減は精錬コストを高騰させるため、Sは0.005%以下に限定することが好ましい。
Al:0.01%以下
Alは、脱酸剤として作用するとともに、TiによりTiNとして窒素(N)が固定できない場合に、Nを窒化物をして固定し安定化させる作用を有する。このような効果を得るためには、0.003%以上含有することが望ましいが、0.01%を超える含有は、清浄度が低下し、延性、靭性、さらには耐食性が低下する。このため、Alは0.01%以下に限定することが好ましい。
Ti:0.03%以下
Tiは、Alと同様に、Nを窒化物として固定し、安定化させる作用を有する。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましいが、0.03%を超える含有は、窒素含有量にもよるが、靭性を低下させる悪影響を有する。このため、Tiは0.03%以下に限定することが好ましい。
N:0.01%以下
Nは、不純物としてできるだけ低減することが望ましいが、0.01%程度まで許容できる。このため、Nは0.01%以下程度とすることが好ましい。
また、上記した組成に加えてさらに、Cr:1%以下、Ni:0.1%以下、Mo:1%以下、V:0.1%以下、Ni:0.1%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Cu:0.5%以下、および/または、Nb:0.1%以下、および/または、Ca:0.01%以下、REM合計:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有してもよい。
Cr:1%以下、Ni:0.1%以下、Mo:1%以下、V:0.1%以下、Ni:0.1%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
Cr、Mo、V、Ni、Bは、Si、Mnと同様で、焼入れ性を増加させる作用を有する元素であり、必要に応じて1種または2種以上、選択して含有できる。しかし、多量の含有は、溶接接合部(HAZを含む)の健全性に悪影響を与える危険性がある。このため、含有する場合には、Cr:1%以下、Ni:0.1%以下、Mo:1%以下、V:0.1%以下、Ni:0.1%以下、B:0.01%以下に限定することが好ましい。
Cu:0.5%以下
Cuは、耐遅れ破壊特性、耐食性を向上させる元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果を得るためには、0.02%以上含有することが望ましいが、0.5%を超える含有は、靭性を低下させ、表面清浄性を低下させる。
Nb:0.1%以下
Nbは、結晶粒の微細化に寄与する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましいが、0.1%を超える含有は、靭性を低下させる。
Ca:0.01%以下、REM合計:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種
Ca 、REMはいずれも、硫化物の形状を制御する作用を有し、靭性、延性の向上に寄与する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種を含有できる。このような効果を得るためには、それぞれCa:0.001%以上、REM:0.01%以上含有することが望ましいが、Ca:0.01%、REM合計:0.01%を超える多量の含有は、介在物量を増加させて、清浄度を低下させる。
上記した以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
上記した組成を有する溶鋼を、転炉等の通常公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法等の通常公知の鋳造方法でスラブ等の鋼素材(鋳片)とする。なお、得られた鋳片は、熱間圧延を施され鋼片(鋼素材)として鋼素材としてもよい。これら鋼素材は、熱間圧延、あるいはさらに冷間圧延、連続焼鈍等の所定の製造工程を経て、所望の寸法形状の鋼材(鋼板(薄鋼板、厚鋼板)、鋼帯、鋼管、棒鋼、条鋼等)とする。製造工程は、通常公知の製造工程がいずれも適用でき、製造工程をとくに限定する必要はない。
本発明では、所望の寸法形状とされた鋼材を化成処理を施す部材向け製品とするに当たり、まず、上記した鋼材の化成処理性の判定方法を適用して、当該鋼材の化成処理性を判定する。
すなわち、化成処理を施す部材向け製品とする鋼材から、試験片を採取する。そして、採取した試験片を、図2に示す構成の測定装置に組み込み、当該鋼材(試験片)の電位(浸漬電位)を、浸漬開始時から連続的に測定して、浸漬電位−時間曲線を求める。得られた浸漬電位−時間曲線から、当該鋼材(試験片)の電位(浸漬電位)が、浸漬開始から一定値(自然浸漬電位)に収斂するまで、すなわち薬液(化成処理液)における自然浸漬電位と同じになるまで、に要する時間tを求める。そして、得られた時間tNと、使用した薬液(化成処理液)ごとに予め決められた処理時間(適正処理時間)tSとを比較する。本発明では、得られた時間tNが、当該薬液の適正処理時間tSの2/3以下である場合を化成処理性に優れた鋼材と評価する。また、得られた時間tNが、当該薬液の適正処理時間tS以下である場合も、化成処理性は若干悪くなるが、問題ない程度であると評価する。
「化成処理性に優れた」と評価された鋼材、および「問題ない程度である」と評価された鋼材は、そのまま、化成処理を施す部材向け製品とする。
一方、得られた時間tNが、当該薬液の適正処理時間tSを超える鋼材には、さらに、化成処理性を改善する処理を施す。
鋼材の化成処理性を改善する処理としては、つぎの例えば、
(1)鋼材に表面歪を付加する処理、
(2)鋼材の表面を研削または研磨する処理(物理的な除去処理)、
(3)鋼材の表面にショットブラストを施す処理、
(4)鋼材に酸洗を施す処理(化学的な除去処理)
が考えられるが、これに限定されるものではない。要するに、鋼材表面に存在する化成処理性を劣化させる因子を取り除く、例えば、上記したような処理を施せばよい。化成処理性を劣化させる因子としては、Si濃化層に限らず、表面に形成された酸化物、ごみ、汚れ、濃化元素等がある。
鋼材表層のSi濃化層の形成は、鋼材のSi含有量と、鋼材の製造工程に密接に関連する。
熱延鋼帯(熱延薄鋼板)でいえば、Si濃化層は、熱延工程および焼鈍工程で生じる。例えば、熱延鋼帯(熱延薄鋼板)では、化成処理を施される使途に使用される場合には、通常、酸洗処理を施され、ある程度、表層の黒皮が除去された状態で出荷されるのが一般的である。したがって、酸洗時に、ある程度、Si濃化層が除去された状態となっているが、しかし、Si濃化層の除去のされ方は、鋼板ごとに、バラツキがある。
また、冷延鋼帯(冷延薄鋼板)では、熱延鋼板での酸洗処理により除去されたSi濃化層が、それに続く冷延−連続焼鈍工程により形成される。Si濃化層は、焼鈍炉の炉内環境、雰囲気、露点、ライン速度、前後のライン停止タイミング、炉内開放直後等の異常状況等に大きく影響され、各鋼板ごとに、Si濃化層の形成程度が微妙に異なる。
本発明では、「鋼材の化成処理性の判定方法」を利用して、鋼材ごとに、当該鋼材の化成処理性の劣化程度を判定し、その判定結果に基づき、すなわち、化成処理性の劣化程度に応じて、化成処理性を改善する処理を施す。
例えば、(1)鋼材に表面歪を付加する処理では、付加する歪の量は、当該鋼材の化成処理性の判定結果、すなわち、劣化の程度に応じて、適宜決定すればよい。鋼材の化成処理性の劣化の程度は、鋼材単位(製造単位:コイル、大板単位)でおおよそ整理できる。したがって、鋼材の化成処理性の劣化の程度毎に、判定すればよい。例えば、鋼材表面でのSi濃化層をはじめ、化成処理性の劣化因子が過度に濃化していない場合、すなわち劣化の程度が小さい場合には、例えば表面歪が5%未満でも、十分に良好な化成処理性を確保できる。いずれにしろ、鋼材に良好な化成処理性を回復させるためには、予め、本発明の判定方法で得られた化成処理性の劣化の程度と、付加する表面歪量とを関連づけておけばよいことになる。
また、(2)鋼材の表面を研削または研磨する処理(物理的な除去処理)では、研削または研磨で除去する量は、当該鋼材の化成処理性の判定結果、すなわち、劣化の程度に応じて、予め求められた、例えば、本発明の判定方法で得られた化成処理性の劣化の程度と除去する量との関係式等に基づいて、適宜決定すればよい。
また、(3)鋼材の表面にショットブラストを施す処理、(4)鋼材に酸洗を施す処理(化学的な除去処理)の場合も同様で、ショットブラストの程度、あるいは酸洗の程度は、当該鋼材の化成処理性の判定結果、すなわち、劣化の程度に応じて、予め求められた関係式等に基づいて、適宜決定すればよい。
上記したような処理を施すことにより、鋼材の化成処理性が改善し、化成処理を施される部材向け鋼材として好適な、鋼材を製造できることになる。
以下、実施例に基づいて、さらに本発明について説明する。
(実施例1)
表1に示す組成の鋼材を対象とした。
鋼材Aは、一般の冷延軟鋼板(SPCC材:板厚0.8mm)であり、この鋼材を基準とした。鋼材Bは、Si:1.5質量%含有の高Si含有冷延焼鈍鋼板(板厚:2.0mm)であり、鋼材Cは、Si:1.6質量%含有の高Si含有冷延焼鈍鋼板(板厚:1.7mm)であり、鋼材Dは、Si:1.1質量%含有の高Si含有冷延焼鈍鋼板(板厚:1.8mm)であり、鋼材Eは、Si:1.4質量%含有の高Si含有冷延焼鈍鋼板(板厚:2.1mm)であり、鋼材Fは、Si:1.7質量%含有の高Si含有冷延焼鈍鋼板(板厚:1.2mm)である。
これら鋼材B〜Fは、表1に示す組成の鋼素材(スラブ)に、熱間圧延、酸洗、冷間圧延、連続焼鈍の各工程を経て、連続焼鈍炉で再結晶されたのち、インライン水冷装置で焼入れ、連続焼鈍炉の過時効炉で焼戻されて製造されたものである。なお、鋼材Bは、連続焼鈍炉を定期修理し、再稼動させた直後に通板した冷延焼鈍鋼板である。定期修理に際しては炉内を大気に開放するため、稼動直後の通板では炉内の露点が上昇し、鋼板表面近傍でのSi酸化物の濃化が著しくなり、著しく化成処理性が低下する。通常は、化成処理性の低下を抑えるため、炉内が安定し露点が低下したのちに、Si等を多量に含む高張力鋼板を通板する。鋼材C〜Fは、炉内が安定したのちに、連続焼鈍炉で焼鈍した鋼板である。
また、鋼材Gは、Si:1.1質量%含有の高Si含有冷延焼鈍鋼板(板厚:1.6mm)で、熱間圧延、酸洗、冷間圧延、連続焼鈍の各工程を経て、連続焼鈍炉で再結晶されたのち、水冷ロールとの接触で抜熱されて焼入れされたのち、連続焼鈍炉で焼戻されて製造されたものである。
また、鋼材Hは、Si:1.6質量%含有の高Si含有冷延焼鈍鋼板(板厚:1.6mm)で、熱間圧延、酸洗、冷間圧延、連続焼鈍の各工程を経て、連続焼鈍炉で再結晶されて製造されたものである。
上記した各鋼材から浸漬電位測定用サンプルを採取した。なお、この実施例では、鋼材A〜Hをいずれも薄鋼板とし鋼材の製造ままの表面肌について、評価した。
そして、サンプルの少なくとも10mm角の表面(測定面)が薬液と接触可能なように、非電導性樹脂を用いて、サンプルを埋込むか、あるいはサンプルを被覆した。非電導性樹脂としては、テクノビット3040樹脂またはベークライト系樹脂を用いた。
樹脂が固化した後、測定面(サンプル表面)を保護しながら、また、サンプルとドリルが直接接触しないように、測定面の反対側(裏側)からドリルで、樹脂に孔を穿けた。そして、導線をその孔に通してサンプルの裏側と接触させ、サンプルとの導通をとった。なお、薬液に触れないように、導線をテフロンチューブに通して立ち上げた。また、導線とサンプルの裏側接触部は非導電性樹脂で埋めた。また、テフロンチューブを介した導線の取出し部も、導線が薬液に触れないように非導電性樹脂で埋めた。
このようにして用意した、測定面だけが露出したサンプルに、複数の容器と水洗できる容器とを用意して、脱脂、表面調整を行ったのち、図2に示す浸漬電位測定装置で、薬液3を満たした容器7に浸漬して浸漬電位を連続して測定した。これにより、電着塗装工程以前の工程を実施でき、化成処理時の自然浸漬電位が測定できることになる。
なお、薬液3はリン酸亜鉛系化成処理液である日本ペイント(株)製サーフダイン「SD2800」とし、液温は43℃とした。また、脱脂は、容器に日本ペイント(株)製サーフクリーナー「SD250」を満たし、液温:43℃で120s間浸漬したのち、流水洗(容器に水を注ぎ続ける状態)することにより行った。なお、浸漬中はサンプルを上下させた。
また、表面調整は、容器に日本ペイント(株)製サーフファイン「5N-10」を入れ、液温:RTで30s間浸漬することにより行った。
なお、容器7は、恒温槽(図示せず)に浸漬した状態とし、薬液3の温度を一定とした。また、容器7内の薬液3に、対極2、参照電極6を浸漬したままにした。また、ポテンショ・スタット4に対して、あらかじめ対極2は結線したままにしておいた。
ポテンショ・スタット4の出力「浸漬電圧−時間曲線」は直ちに打ち出せるように準備しておいたうえで、測定面だけが露出した鋼材(サンプル)1に、ポテンショ・スタット4を結線する。なお、その直前に、参照電極6をポテンショ・スタットに結線しておく。また、結線された鋼材(サンプル)1が薬液3に浸漬されたと同時に、参照電極6を鋼材(サンプル)1に近接させた。
記録された「浸漬電圧−時間曲線」から、浸漬開始を起点(=0s)として、一定値(自然浸漬電位)に収斂する時間を測定する。収斂時間を精度よく測定できるように、記録紙の送り速度を調整することは言うまでもない。収斂した時間は、浸漬開始時の電圧よりも、マイナス側に大きくなり、安定した状態が10s以上続いた場合を「収斂した」と判断し、浸漬開始から安定した浸漬電位になり始めた時間までの時間経過を、浸漬開始から化成処理液における自然浸漬電位と同じになるまでに要する時間tとした。
得られた時間tを、使用した薬液の標準処理時間tと比較し、t超えである場合を×、t以下である場合を○、tの2/3以下である場合を◎、として評価した。なお、薬液が、リン酸亜鉛系化成処理液「SD2800」(商品名)の場合には、tは120sである。
得られた結果を表2に示す。
ついで、上記した鋼材A〜Hから、化成処理用サンプル(大きさ:70mm×150mm)を採取した。そして、該サンプルに化成処理を施し、形成された化成結晶を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。
化成処理用サンプルには、前処理として脱脂−表面調整からなる処理を施したのち、化成処理を施したのち、化成処理を施す一連の処理を施して、化成皮膜を形成した。なお、脱脂−表面調整、化成処理は、自然浸漬電位を測定した場合と同じ処理とした。
化成処理用サンプルは、ラックに引っ掛けられ、上下懸垂&搬送式の半自動的な実験装置で、上記した一連の処理を施された。
なお、上記した処理時間は、タクト時間を含まないため、ラックが薬液槽、水洗槽に入る時間、抜ける時間が、ラックに引っ掛ける位置によって実浸漬時間が若干異なるが、処理時間に多くても10秒程度の差がプラスされる。上記したようにして化成結晶を形成されたサンプルについて、走査型電子顕微鏡(SEM)(倍率:1000倍)を用いて、ランダムな1視野について二次電子像を観察し、スケの存在の有無で、化成処理性を判断した。スケの無い場合を化成処理性が良好と判断し、○と評価した。一方、スケのある場合を化成処理性が不良であると判断し、×と評価した。
得られた結果を表2に併記する。
つぎに、化成結晶の形成状態と、塗装耐食性との関係を確認するため、化成処理皮膜を形成した一部の鋼材について、さらに、塗装を施し、塗膜の耐食性(塗装耐食性)について調査した。
塗装耐食性の評価は、汎用的な軟質鋼板(JIS規格のSPCC材)を比較材として、同一タイミングで試験し、塗装耐食性を評価した。SPCC材は、積極的なSi添加がなく、かつ、その他の合金元素も殆ど添加されていないので、もともと化成処理性が良好である。
化成皮膜の形成までは、上記した条件と同じ条件で行った。なお、試験板は、同一条件で各3枚準備した。塗装は、電着塗装とした。
電着塗装条件は、PN−150グレーを使い、温度:28℃、電圧:180V、塗装時間:180sとした。これにより、片面で約20〜25μm厚さの塗膜が形成された。
塗膜を形成された試験板は、片面のみを評価対象面として、非対象面には、全面をテープでマスキングした。また、試験板の端部5〜10mm程度をテープでマスキングした。なお、評価対象面にはクロスカットを入れて、腐食加速試験を実施した。
腐食加速試験は、試験板を、5%NaCl水溶液(液温:55℃)中に、10日間浸漬する試験とした。試験後、塗膜に粘着テープを貼り付けて剥がす、テープ剥離試験を実施した。テープ剥離後、クロスカット部からの片側フクレ幅を測定し、塗装耐食性を評価した。試験板の片側フクレ幅が、比較材であるSPCC材の片側フクレ幅と比較して同等であるか、3mmまでであれば、塗装耐食性の観点から判断して、当該鋼材の化成処理性は優れていると判定した。なお、片側フクレ幅が1.5mm以下の場合を「◎」、1.5mm超え3mm以下の場合を「○」は、3mm超えの場合を「×」と表記した。ただし基準材(鋼材No.A)片面フクレ幅は0.8mmであったため、この結果をベースに考えると、下限は0.8mmとなる。なお、SPCC材の片側フクレ幅は、通常、1〜1.5mm程度に収まる。
得られた結果を表2に併記する。
本発明の鋼材の化成処理性の判定方法は、化成結晶の観察結果、塗装耐食性の試験結果と対応しており、簡便で優れた方法であると言える。また、本発明になる鋼材の化成処理性の判定方法は、鋼材の化成処理性を評価するうえでは優れた方法であり、本発明の方法で鋼材ごとの化成処理性を的確に判断できると言える。Si含有鋼材は、一般的にSi含有量に応じて、化成処理性が低下すると言われているが、必ずしもそう言えない場合が多い。というのは、鋼材の化成処理性は、製造プロセスの変動を踏まえて変化しているためである。このようなことから、対象とする鋼材ごとに化成処理性を判定する本発明になる判定方法は、鋼材ごとの化成処理性を的確に判定でき優れていると言える。
(実施例2)
表1に示す組成を有する鋼材I〜Kは鋼管である。鋼材A(汎用的な軟質系冷延焼鈍板(SPCC材))を素材とした電縫鋼管である鋼材A2および鋼材I〜Kについて、リン酸マンガン系化成処理液を用いた場合の化成処理を実施例1と同様に調査した。鋼管を冷牽する際には、表面にカジリが生じる場合があるため、潤滑性確保のために、リン酸マンガン系化成処理皮膜を形成する場合が多い。
鋼材Iは冷延鋼板を素材とする外径89.1mmφ×肉厚1.8mmの電縫鋼管であり、鋼材Jは冷延鋼板を素材とする外径101.6mmφ×肉厚2mm、鋼材Kは冷延鋼板を素材とする外径76.2mmφ×肉厚1.6mmの電縫鋼管である。また、鋼材A2は外径50 mmφ×肉厚2 mmの電縫鋼管である。
上記した各鋼材から、サンプルを切出し、管外側が露出するように、実施例1と同様にサンプルを非電導性樹脂を用いて樹脂埋込した、脱脂−流水洗−表面調整を行ったのち、薬液(化成処理液)に浸漬して浸漬電位を測定した。
薬液3(化成処理液)としては、リン酸マンガン系化成処理液である日本パーカライジング(株)製「バルホスM5」(商品名)を用い、液温82℃とした。
なお、脱脂は、日本パーカライジング(株)製ファインクリーナー「E6400」(商品名)を用い、60℃で600s間浸漬したのち、フィルターをとおした上水を投入しながら流水洗することにより行った。また、表面調整は、日本パーカライジング(株)製「プレバレンVM」(商品名)を用い、45℃で90s間浸漬することにより行った。
得られた結果「浸漬電位−時間曲線」から、実施例1と同様に、浸漬開始から自然浸漬電位と同じになるまでに要する時間tNを求め、使用した薬液における標準処理時間tsと比較し、化成処理性を評価し、実施例1と同様に、「◎」、「○」、「×」で表示した。
得られた結果を表3に示す。
ついで、上記した鋼材A2、I〜Kから、鋼管のまま、半割り、あるいは1/4割した化成処理用サンプルを採取し、実施例1と同様に化成結晶をSEMで観察した。実施例1と同様に「スケ」の有無で化成処理性を評価し、「○」、「×」で表示した。なお、化成処理用サンプルは、脱脂−表面調整からなる前処理を施したのち、化成処理を施す一連の処理を施して、化成処理皮膜を形成した。なお、脱脂−表面調整、化成処理は、自然浸漬電位を測定した場合と同じ処理とした。
得られた結果を表3に示す。
本発明の鋼材の化成処理の判定方法は、化成結晶の観察結果と対応しており、簡便で優れた方法であると言える。
(実施例3)
実施例1、2で、本発明の判定方法で化成処理性に劣ると判断された鋼材について、さらに、本発明でいう「化成処理性を改善する処理」を施すことにより、化成処理性に優れた鋼材とすることができることについて説明する。
まず、実施例1で、本発明の判定方法で化成処理性に劣る(×)と判断された鋼材B、Eから試験材を採取した。これら試験材に、圧下率を2.5〜20%の範囲で種々変化させて冷間圧延を施し、サンプルとした。なお、参考として、本発明の判定方法で化成処理性が問題ない程度(○)であると判断された鋼材Dについても実施した。得られたサンプルについて、本発明の鋼材の化成処理性の判定方法を適用し、実施例1と同様にサンプルの化成処理性を判定した。なお、薬液をリン酸亜鉛系化成処理液「SD2800」(商品名)とした。
さらに、得られたサンプルに、実施例1と同様に化成処理を施し、実施例1と同様に得られた化成結晶について走査型電子顕微鏡観察を行い、スケの存在の有無で、化成処理性を判断した。
また、一部のサンプルでは、上記したように化成処理を施しさらに、実施例1と同様に電着塗装を施したのち腐食加速試験を実施し、実施例1と同様に塗装耐食性を調査した。
得られた結果を表4に示す。
連続焼鈍炉内が安定しないときに焼鈍された鋼材Bから採取したサンプル(サンプルNo.B1〜No.B6)では、冷間圧下率:5%の冷間圧延(表面歪の付与)が施されたサンプル(サンプルNo.B3)で始めて、化成処理性が「○」となり、化成処理性が改善されはじめている。それ未満の歪付与では、化成処理性の判定は「×」であり化成処理性の改善は認められない。また、冷間圧下率:7.5%の冷間圧延を施されたサンプル(サンプルNo.B4)では、化成処理性の判定が「◎」となり、軟質鋼板(SPCC)と同程度までに、著しく化成処理性が改善されている。このことから、高Si含有鋼材が、完全に化成処理性が劣化した材料であるとは言えないことになる。
一方、連続焼鈍炉内が安定してから焼鈍された鋼材Eから採取したサンプルでは、冷間圧下率:2.5%の冷間圧延を施されたサンプル(サンプルNo.E1)で、化成処理性の判定が「○」となり、表面歪付与量が少なくても、化成処理性が改善している。化成処理性の劣化の程度が少なければ、問題のない程度までの化成処理性の改善に要する歪付与量も少なくて済むことになる。
また、化成処理性が問題のない程度であると判定された鋼材Dでは、冷間圧下率:5%の冷間圧延(表面歪の付与)を施すこと(サンプルNo.D1)により、軟質鋼板(SPCC)と同程度までに、化成処理性が顕著に改善されている。
このように、本発明の化成処理性改善処理を施すことにより、化成処理性が劣化した鋼材といえども、軟質鋼材と同程度に化成処理性を改善することができる。本発明を適用すれば、高Si含有鋼材が、完全に化成処理性が劣化した材料であるとは言えないことになる。
(実施例4)
また、本発明の判定方法で化成処理性に劣ると判断された鋼材Fから試験材を採取し、これら試験材に、ショットブラスト処理を施し、サンプルとした。得られたサンプルについて、本発明の鋼材の化成処理性の判定方法を適用し、実施例1と同様にサンプルの化成処理性を判定した。なお、薬液は、リン酸亜鉛系化成処理液「SD2800」(商品名)とした。なお、化成処理性の判定は、ショットブラスト処理後直ちにと、3日間大気中に放置したのちに、行った。
さらに、得られたサンプルに、薬液をリン酸亜鉛系化成処理液「SD2800」(商品名)として、実施例1と同様に化成処理を施し、得られた化成結晶について走査型電子顕微鏡観察を行い、スケの存在の有無で、化成処理性を判断した。なお、化成処理は、ショットブラスト処理後直ちにと、3日間大気中に放置したのちに、それぞれ実施した。
また、一部のサンプルでは、上記したように化成処理を施したのち、さらに実施例1と同様に電着塗装を施したのち腐食加速試験を実施し、塗装耐食性を調査した。
得られた結果を表5に示す。
ショットブラスト処理を施すことにより、本発明方法による判定、SEM観察、塗装耐食性の判定による化成処理性は、いずれも顕著に向上している。また、ショットブラスト処理後、化成処理までの経過時間の影響は少ないといえる。
(実施例5)
また、本発明の判定方法で化成処理性に劣ると判断された鋼材G,Hから試験材を採取し、これら試験材に、手研磨(#400仕上げ)、酸洗処理、あるいは2〜3%のスキンパスを施したのち酸洗処理を、それぞれ施した。なお、酸洗処理は、サンプルを濃塩酸に浸漬し、水素発生が一旦安定したのち、サンプルを掴んで撹拌しながら行った。
得られたサンプルについて、本発明の鋼材の化成処理性の判定方法を適用し、薬液をリン酸亜鉛系化成処理液「SD2800」(商品名)として、実施例1と同様にサンプルの化成処理性を判定した。
さらに、得られたサンプルに、実施例1と同様に、薬液をリン酸亜鉛系化成処理液「SD2800」(商品名)として、化成処理を施し、実施例1と同様に、得られた化成結晶について走査型電子顕微鏡観察を行い、スケの存在の有無で、化成処理性を判断した。
得られた結果を表6に示す。
手研磨(#400仕上げ)処理(サンプルNo.G1)、酸洗処理(サンプルNo.H1)、あるいは2〜3%のスキンパスを施したのち酸洗処理(サンプルNo.H2)を施すことにより、化成処理性は「○」または「◎」となり、改善されている。本発明の判定方法で化成処理性に劣ると判断された鋼材G,Hに、本発明における化成処理性改善処理である、研磨処理、酸洗処理、スキンパス処理を施すことにより、化成処理性が改善され、化成処理性に優れた鋼材とすることができる。
(実施例6)
本発明の判定方法で化成処理性に劣ると判断された鋼材I,J,Kから試験材を採取し、これら試験材に、ショットブラスト(ショット条件:スチールショット(#280)を圧力4.8kgf/cm2で300s間吹きつけ)、酸洗→ショットブラスト(ショット条件:スチールショット(#280)を圧力4.8kgf/cm2で300s間吹きつけ)、機械研削(約1μm削除)、手研磨(#180から順次仕上げて、最終#800仕上げ)、のいずれかを施した。
得られたサンプルについて、本発明の鋼材の化成処理性の判定方法を適用し、薬液をリン酸マンガン系化成処理液(「パルホスM5」(商品名))として、実施例2と同様にサンプルの化成処理性を判定した。
さらに、得られたサンプルに、実施例2と同様に、薬液をリン酸マンガン系化成処理液(「パルホスM5」(商品名))として、化成処理を施し、実施例1と同様に、得られた化成結晶について走査型電子顕微鏡観察を行い、スケの存在の有無で、化成処理性を判断した。
得られた結果を表7に示す。
ショットブラスト処理(サンプルNo.I1)を施すことにより、化成処理性は「○」となり、改善されている。また、酸洗→ショットブラスト処理(サンプルNo.I2,No.J1,No.K1)を施すことにより、化成処理性は「◎」または「○」となり、改善されている。また、手研磨(#800仕上げ)処理(サンプルNo.K2)によっても、化成処理性は改善されている。
以上のように、本発明における化成処理性改善処理を施すことにより、化成処理性が劣化していると判定された鋼材でも、化成処理性が顕著に改善できることがわかる。
したがって、本発明になる鋼材の化成処理性の判定方法を適用して、鋼材の化成処理性を判定し、その結果に応じて、化成処理性改善処理を施せば、化成処理性に優れた鋼材を容易に安定して製造できる。
1 鋼材(試験片)
2 対極(対抗電極)
3 薬液(化成処理液)
4 ポテンショスタット
5 導線
6 参照電極
7 容器

Claims (7)

  1. 鋼材を化成処理液に浸漬し、該浸漬した前記鋼材の電位を浸漬開始から連続的に測定し、得られた前記鋼材の電位変化から鋼材の化成処理性を判定する鋼材の化成処理性の判定方法であって、
    前記鋼材の電位が浸漬開始から前記化成処理液における自然浸漬電位と同じになるまでに要する時間が、前記化成処理液を用いて鋼材の化成処理を行う際に予め決められた適正処理時間以下である場合を化成処理性に優れた鋼材であると判定することを特徴とする鋼材の化成処理性の判定方法。
  2. 前記化成処理液を用いて鋼材の化成処理を行う際に予め決められた適正処理時間以下に代えて、前記化成処理液を用いて鋼材の化成処理を行う際に予め決められた適正処理時間の2/3以下とすることを特徴とする請求項1に記載の鋼材の化成処理性の判定方法。
  3. 前記鋼材が、質量%で、C:0.001〜0.40%、Si:0.5〜3.5%を含有する高Si含有鋼材であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼材の化成処理性の判定方法。
  4. 鋼材を化成処理を施す部材向け製品とするに当たり、該鋼材から試験片を採取し、該試験片を化成処理液に浸漬し、該浸漬した前記試験片の電位を浸漬開始から連続的に測定し、前記試験片の電位が浸漬開始から前記化成処理液における自然浸漬電位と同じになるまでに要する時間を求め、該時間が、前記化成処理液を用いて鋼材の化成処理を行う際に予め決められた適正処理時間以下である場合に、該鋼材を製品とし、前記時間が、前記化成処理液を用いて鋼材の化成処理を行う際に予め決められた適正処理時間超えである場合には、さらに該鋼材に化成処理性を改善する処理を施すことを特徴とする化成処理性に優れた鋼材の製造方法。
  5. 前記化成処理液を用いて鋼材の化成処理を行う際に予め決められた適正処理時間以下に代えて、前記化成処理液を用いて鋼材の化成処理を行う際に予め決められた適正処理時間の2/3以下とすることを特徴とする請求項4に記載の化成処理性に優れた鋼材の製造方法。
  6. 前記鋼材が、質量%で、C:0.001〜0.40%、Si:0.5〜3.5%を含有する組成の高Si含有鋼材であることを特徴とする請求項4または5に記載の鋼材の製造方法。
  7. 前記化成処理性を改善する処理が、前記鋼材に表面歪を付加する処理、前記鋼材の表面を研削または研磨する処理、前記鋼材の表面にショットブラストを施す処理、および前記鋼材に酸洗を施す処理のいずれかであることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の鋼材の製造方法。
JP2012036154A 2012-02-22 2012-02-22 鋼材の化成処理性の判定方法および化成処理性に優れた鋼材の製造方法 Active JP5790540B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012036154A JP5790540B2 (ja) 2012-02-22 2012-02-22 鋼材の化成処理性の判定方法および化成処理性に優れた鋼材の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012036154A JP5790540B2 (ja) 2012-02-22 2012-02-22 鋼材の化成処理性の判定方法および化成処理性に優れた鋼材の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013170305A JP2013170305A (ja) 2013-09-02
JP5790540B2 true JP5790540B2 (ja) 2015-10-07

Family

ID=49264444

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012036154A Active JP5790540B2 (ja) 2012-02-22 2012-02-22 鋼材の化成処理性の判定方法および化成処理性に優れた鋼材の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5790540B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6070917B1 (ja) * 2015-06-25 2017-02-01 新日鐵住金株式会社 塗装鋼板
JP6803799B2 (ja) * 2017-05-12 2020-12-23 日本製鉄株式会社 被覆鋼管の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013170305A (ja) 2013-09-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101935112B1 (ko) 용융 아연 도금 강판 및 그 제조 방법
TWI467027B (zh) High strength galvanized steel sheet
KR101950618B1 (ko) 용융 아연 도금 강판
RU2554264C2 (ru) Горяче-или холоднокатаный стальной лист, способ его изготовления и его применение в автомобильной промышленности
JP5499664B2 (ja) 疲労耐久性に優れた引張最大強度900MPa以上の高強度冷延鋼板及びその製造方法、並びに、高強度亜鉛めっき鋼板及びその製造方法
TWI507535B (zh) Alloyed molten galvanized steel sheet
US10676804B2 (en) Steel sheet provided with a coating providing sacrificial cathodic protection comprising lanthane
CN104040001B (zh) 合金化热镀锌钢板
JP5907320B1 (ja) ステンレス冷延鋼板用素材およびその製造方法
KR101720891B1 (ko) 합금화 용융 아연 도금 강판 및 그 제조 방법
JP6402830B2 (ja) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法
WO2017090236A1 (ja) 高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、高強度溶融亜鉛めっき鋼板用熱延鋼板の製造方法、高強度溶融亜鉛めっき鋼板用冷延鋼板の製造方法、および高強度溶融亜鉛めっき鋼板
JP5392116B2 (ja) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
EP4079922A2 (en) Aluminum alloy-plated steel sheet, hot-formed member, and methods for manufacturing aluminum alloy-plated steel sheet and hot-formed member
US9758892B2 (en) Steel sheet for electroplating, electroplated steel sheet, and methods for producing the same
WO2010041763A1 (ja) 化成処理性に優れた高加工性高強度鋼管およびその製造方法
JP5578116B2 (ja) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法
JP4940813B2 (ja) TS×Elの値が21000MPa・%以上である溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP3631710B2 (ja) 耐食性と延性に優れたSi含有高強度溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法
JP5790540B2 (ja) 鋼材の化成処理性の判定方法および化成処理性に優れた鋼材の製造方法
JP5309862B2 (ja) 部材加工後の化成処理性に優れた鋼材およびその製造方法
JP2007314858A (ja) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法
JP2007291445A (ja) 濡れ性、ふくれ性に優れた高張力溶融亜鉛めっき熱延鋼板の製造方法
JP6838665B2 (ja) 高強度合金化電気亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP5434040B2 (ja) 化成処理性に優れた高加工性高強度薄鋼板の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20130716

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20140326

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140825

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150113

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150127

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20150707

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20150720

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5790540

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250