JP6036733B2 - 塗装後耐食性の評価方法および塗装後耐食性に優れた高強度鋼板の製造方法ならびに塗装後耐食性に優れた高強度鋼板 - Google Patents
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Description
[1]化成処理前後の各々の鋼板に対してカソード分極を行い、各々のカソード電流値および化成処理前後の前記カソード電流値の減少率を求め、該減少率をもって塗装後耐食性を判断することを特徴とする塗装後耐食性の評価方法。
[2]化成処理前後の各々の鋼板に対してカソード分極を行い、各々のカソード電流値および化成処理前後の前記カソード電流値の減少率を求め、次いで、前記減少率70%以上を塗装後耐食性良好と判断することを特徴とする塗装後耐食性の評価方法。
[3]前記化成処理後の鋼板のカソード電流値が20μA/cm2以下を塗装後耐食性良好と判断することを特徴とする前記[2]に記載の塗装後耐食性の評価方法。
[4]前記化成処理後の鋼板のカソード電流値が5〜13μA/cm2を塗装後耐食性良好と判断することを特徴とする前記[2]に記載の塗装後耐食性の評価方法。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の塗装後耐食性の評価方法により得られる結果をもとに、鋼板の製造条件を決定することを特徴とする塗装後耐食性に優れた高強度鋼板の製造方法。
[6]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の塗装後耐食性の評価方法により得られる結果をもとに、研削条件、酸洗条件、巻取温度のいずれか一つ以上を決定することを特徴とする塗装後耐食性に優れた高強度鋼板の製造方法。
[7]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の塗装後耐食性の評価方法により得られる結果をもとに製造されることを特徴とする塗装後耐食性に優れた高強度鋼板。
[8]カソード電流値の減少率が70%以上であることを特徴とする塗装後耐食性に優れた高強度鋼板。
なお、前記カソード電流値の減少率とは、化成処理前後の各々の鋼板に対してカソード分極を行い、各々のカソード電流値を求め、得られる化成処理前後の前記カソード電流値の減少率である。
このカソード電流値の減少率をもって塗装後耐食性を判断する。判断基準は、目的や用途に合わせて適宜設定される。例えば、後述する実施例の塗装後耐食性評価基準の場合は、減少率が70%以上の場合を塗装後耐食性が良好と判断した例である。減少率が70%以上に加えて、化成処理後の鋼板のカソード電流値が20μA/cm2以下の場合は、塗装後耐食性がより良好と判断する。さらに、減少率が70%以上に加えて、化成処理後の鋼板のカソード電流値が5〜13μA/cm2の場合は、塗装後耐食性がより一層良好と判断する。このように、塗装後耐食性の良否の判断を化成処理前後のカソード電流値の減少率から判断し、減少率が70%以上の場合を塗装後耐食性が良好と判断することは本発明において重要な要件である。
電解液:0.5〜5質量% NaCl水溶液(空気開放、窒素脱気なし)
掃引速度:0.1〜1mV/s
電流値評価電位:―700〜―900mV vs.Ag/AgCl
次に、本発明が対象とする高強度鋼板について説明する。なお、以下の説明において、鋼成分組成の各元素の含有量の単位は「質量%」であり、特に断らない限り単に「%」で示す。
C:0.01〜0.18%
Cは、鋼組織として、マルテンサイトなどを形成させることで加工性を向上しやすくする。そのためには0.01%以上が好ましい。一方、0.18%を超えると溶接性が劣化する。したがって、C量は0.01%以上0.18%以下が好ましい。
Siは鋼を強化して良好な材質を得るのに有効な元素である。Siが0.4%未満では高強度を得るために高価な合金元素が必要になり、経済的に好ましくない。一方、2.0%を超えると良好な化成処理性が得られない場合がある。したがって、Si量は0.4%以上2.0%以下が好ましい。
Mnは鋼の高強度化に有効な元素である。機械特性や強度を確保するためは1.0%以上含有させることが好ましい。一方、3.0%を超えると溶接性や強度延性バランスの確保が困難になる場合がある。したがって、Mn量は1.0%以上3.0%以下が好ましい。
Bは鋼の焼入れ性を向上させるのに有効な元素である。0.0005%未満では焼き入れ効果が得られにくく、0.005%を超えると良好なめっき密着性が得られない場合がある。したがって、B量は0.0005%以上0.005%以下が好ましい。
Alは、脱酸剤として作用すると共に、NをAlNとして固定し、Nの悪影響を防止する作用を有する元素である。この効果は0.01%以上で得られる。0.1%を超えるとコストアップになる。したがって、Al量は0.01%以上0.1%以下が好ましい。
なお、化成皮膜欠陥の原因となるSi含有酸化物は、熱間圧延後のコイル巻取り過程、冷間圧延後の焼鈍過程において多量に形成されることが知られている。そのため、上記コイル巻取り過程および冷間圧延後の焼鈍過程において、Si含有酸化物の生成を抑制する手段として例えば、熱間圧延後の巻取り温度の低温化、あるいは生成したSi含有酸化物を除去する手段として酸洗、研削を適宜実施することが好ましい。
また、塗装後耐食性に優れた高強度鋼板は、化成処理前後の前記カソード電流値の減少率をもって塗装後耐食性を判断する本発明の塗装後耐食性の評価方法で、前記カソード電流値の減少率が70%以上となる。
表1に示す鋼成分組成(残部はFe及び不可避的不純物)からなるスラブに対して、熱間圧延を施し、板厚3〜4mmの熱延鋼板とした。次いで、酸洗により表面スケールを除去した後に冷間圧延して板厚1.8mmの冷延鋼板とした。次いで、これらの冷延鋼板を連続焼鈍した後、伸び率0.7%の調質圧延を施して冷延鋼板を得た。なお、製造条件を表2に示す。
作用極に化成処理前後の上記冷延鋼板を用い、対極にPt板、参照極にAg/AgCl電極、電解液として5質量%塩化ナトリウム水溶液を用いて、室温、大気開放にて試験を実施した。鋼板を測定液に浸漬し、浸漬開始後自然電位を600s測定した後、自然電位から掃引速度1mV/s でカソード分極を行い、−800mV(vs.Ag/AgCl)における電流値をカソード電流値とした。また、得られた結果に対して、化成処理後のカソード電流値については小さいものから順に、化成処理前後の減少率については大きいものから順に1〜10まで順位付けを行った。
化成処理の条件は以下の通りである。
アルカリ脱脂を行い水洗を行った後、表面調整剤サーフファイン5N-10 (登録商標、日本ペイント(株)製)を用いて30秒間表面調整を行い、化成処理液サーフダインSD2800(登録商標、日本ペイント(株)製)を用いて、処理温度44℃、処理時間120sの条件で化成処理を行った。化成処理皮膜の付着量は2〜3g/m2であった。
化成処理後の冷延鋼板表面を、走査型電子顕微鏡を用いて倍率300倍で10視野観察し、化成結晶の未生成部分(スケ)の有無と大きさ、および結晶粒径の不均一さを、化成処理評点として以下の5段階で評価した。
5点:スケは認められず、また結晶も均一である。
4点:わずかに結晶の不均一も認められるがスケは認められない。
3点:微小なスケが認められる。
2点:比較的大きなスケが認められる。
1点:比較的大きなスケが多数認められる。
上記冷延鋼板から試験片を採取し、化成処理、以下に示す条件にて電着塗装を施し塗装鋼板とした。次いで、塗装鋼板にクロスカットを入れ、温塩水浸漬試験を行った。温塩水浸漬試験は、5質量%塩化ナトリウム水溶液(60℃)に240時間浸漬で行った。温塩水浸漬試験後に、クロスカット部にセロハンテープを貼り、テープを剥がしてカットの左右両側の塗膜剥離幅を調べ、最大値を塗膜最大剥離幅とした。つまり、カットを中心に左右に剥離している左から右までの全幅を計り、その値の最大値を塗膜最大剥離幅とした。塗膜最大剥離幅の評価基準としては、塗膜最大剥離幅が5.0mm以下である場合を耐食性に優れているとし、3mm以下であるものを(◎)、3mm超え5mm以下であるものを(〇)とした。また、5.0mm超えは耐食性に劣っている(×)と評価した。
また、塗膜最大剥離幅の小さいものから順に1〜10まで順位付けを行った。
電着塗料: カチオン型電着塗料(日本ペイント(株)製)
塗膜膜厚:20μm
焼付条件: 170 ℃×20分間
以上により得られた結果を表3に示す。
Claims (6)
- 成分組成として、質量%で、C:0.01〜0.18%、Si:0.4〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物である高強度鋼板の塗装後耐食性を評価する方法であり、化成処理前後の各々の鋼板に対して、掃引速度:0.1〜1mV/s、電流値評価電位:―700〜―900mV vs.Ag/AgClの条件でカソード分極を行い、各々のカソード電流値および化成処理前後の前記カソード電流値の減少率を求め、次いで、前記化成処理後の鋼板のカソード電流値が5〜13μA/cm2、かつ、前記減少率70%以上を塗装後耐食性良好と判断することを特徴とする塗装後耐食性の評価方法。
- 成分組成として、さらに、質量%で、P:0.020%以下、S:0.002%以下であることを特徴とする請求項1に記載の塗装後耐食性の評価方法。
- 成分組成として、さらに、質量%で、B:0.0005〜0.005%、および/または、Al:0.01〜0.1%、Mo:0.05〜1.0%、Nb:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.05%、Cu:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0%、Cr:0.01〜0.8%のうちから選ばれる元素の1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の塗装後耐食性の評価方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗装後耐食性の評価方法により得られる結果をもとに、鋼板の製造条件を決定することを特徴とする塗装後耐食性に優れた高強度鋼板の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗装後耐食性の評価方法により得られる結果をもとに、研削条件、酸洗条件、巻取温度のいずれか一つ以上を決定することを特徴とする塗装後耐食性に優れた高強度鋼板の製造方法。
- 化成処理後の鋼板のカソード電流値が5〜13μA/cm2、かつ、カソード電流値の減少率が70%以上であることを特徴とする塗装後耐食性に優れた高強度鋼板。
なお、前記化成処理後の鋼板のカソード電流値および前記カソード電流値の減少率とは、化成処理前後の各々の鋼板に、掃引速度:0.1〜1mV/s、電流値評価電位:―700〜―900mV vs.Ag/AgClの条件でカソード分極を行い、各々のカソード電流値を求め、得られる化成処理後の鋼板のカソード電流値および化成処理前後の前記カソード電流値の減少率である。
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