<第1の実施の形態の構成>
図1には本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10の構成の概略が正面断面図により示されている。この図に示されるように、ウエビング巻取装置10は車体の所定部位に締結固定されるフレーム12を備えている。このフレーム12は一対の脚板14、16を備えている。脚板14、16の各々は平板状に形成されており、各々の厚さ方向に互いに対向している。脚板14と脚板16との間にはスプール18が配置されている。スプール18は軸方向が脚板14と脚板16との対向方向に沿った略円筒形状に形成されており、自らの中心軸線周りに回転可能とされている。
スプール18には長尺帯状のウエビングベルト20の長手方向基端部が係止されている。スプール18は自らの中心軸線周り一方である巻取方向(各図の矢印A方向)に回転すると、ウエビングベルト20をその長手方向基端側から外周部に層状に巻き取る。また、ウエビングベルト20を先端側へ引っ張るとスプール18に巻き取られているウエビングベルト20が引き出されると共にスプール18が巻取方向とは反対の引出方向(各図の矢印B方向)に回転する。
スプール18の内側にはエネルギー吸収手段を構成するトーションシャフト22が設けられている。トーションシャフト22はスプール側連結部24を備えている。スプール側連結部24は、スプール18の軸方向に沿って見た際の外周形状が多角形や星形等の非円形とされている。スプール18の内周部のうち、スプール18の軸方向に沿った中央側の少なくとも一部はスプール側連結部24の外周形状に対応した形状とされており、スプール18内にトーションシャフト22を配置した状態では、スプール18の中心軸線周りのスプール18に対するスプール側連結部24(ひいてはトーションシャフト22)の相対回転が不能とされている。
スプール18の軸方向に沿ったスプール側連結部24の脚板14側の端面からは、上記のエネルギー吸収手段を構成する第1エネルギー吸収手段としての第1エネルギー吸収部26がスプール側連結部24から連続して形成されている。第1エネルギー吸収部26は外周形状がスプール側連結部24の外周形状よりも充分に小さな円柱形状とされており、その軸方向一端にてスプール側連結部24に繋がっている。第1エネルギー吸収部26の他端(第1エネルギー吸収部26のスプール側連結部24とは反対側の端部)には第1連結部28が形成されている。
第1連結部28に対応してスプール18の脚板14側には、第1ロック手段としての第1ロック機構30を構成する第1ロックベース32が嵌挿されている。第1ロックベース32は嵌挿部34を備えている。嵌挿部34は外周形状が円形とされており、スプール18の脚板14側の端部からスプール18に対して同軸的に相対回転可能に嵌挿されている。嵌挿部34には脚板16の側の端面にて開口した孔部36が形成されている。スプール18の軸方向に対して直交する向きに嵌挿部34を切った際の孔部36の断面形状は、多角形や星形等の非円形とされている。
上記の第1連結部28の外周形状は、孔部36の内周形状に略等しい形状(厳密には極僅かに小さな相似形状)とされており、孔部36の脚板16側の開口端から孔部36の内側に第1連結部28が入り込んでいる。上記のように、孔部36の内周形状は多角形や星形等の非円形で、第1連結部28の外周形状は孔部36の内周形状に対応している。このため、孔部36の内側に第1連結部28が入り込んだ状態では、第1連結部28の中心軸線周りのトーションシャフト22に対する第1ロックベース32の相対回転が不能とされている。
嵌挿部34の脚板16とは反対側の端部からは連続して第1ロックベース本体38が形成されている。第1ロックベース本体38は脚板14を貫通して、脚板14の外側(脚板14の脚板16とは反対側)で脚板14に取り付けられた第1ロック機構30のハウジング40に入り込んでいる。図1及び図1における2線矢視図である図2に示されるように、第1ロックベース本体38には脚板16とは反対側の端面及び外周一部で開口したロックパウル収容部42が形成されている。
このロックパウル収容部42内には第1ロックパウル44が配置されている。第1ロックパウル44がロックパウル収容部42に案内されて第1ロック方向及び第1ロック方向とは反対の第1ロック解除方向へ移動可能とされており、ロックパウル収容部42内に第1ロックパウル44が収容されている状態(図2において実線で図示された状態)から第1ロックパウル44が第1ロック方向へ移動すると、第1ロックベース本体38の外周部におけるハウジング40の開口から第1ロックベース本体38の外側へ第1ロックパウル44が突出し、第1ロックベース本体38が貫通する脚板14のラチェット孔46の内周部に接近する。
図2に示されるように、第1ロックベース本体38から突出した第1ロックパウル44の先端部にはラチェット歯48が形成されており、ラチェット孔46の内周部に第1ロックパウル44が接近すると、ラチェット歯48がラチェット孔46の内周部に形成されたラチェット歯50に噛み合う。このようにラチェット歯50にラチェット歯48が噛み合った状態では、スプール18の中心軸線を中心とする引出方向への第1ロックパウル44の回転が規制され、このように、第1ロックパウル44の引出方向への回転が規制されることで第1ロックベース本体38(第1ロックベース32)の引出方向への回転が規制される。
一方、図1に示されるように、第1連結部28の第1エネルギー吸収部26とは反対側の端面からは軸部52が第1エネルギー吸収部26に対して同軸的に突出形成されている。軸部52は第1ロックベース32を貫通してハウジング40の内側に入り込んでいる。第1ロックベース32から突出した軸部52にはVギヤ54が回転自在に支持されている。Vギヤ54には圧縮コイルばねや捩じりばね等により構成された図示しない第1追従手段が設けられており、第1ロックベース32が回転すると第1追従手段がVギヤ54を第1ロックベース32に追従させるように付勢し、この第1追従手段の付勢力でVギヤ54が第1ロックベース32に追従するように回転する。
また、図2に示されるように、Vギヤ54には第1ロックベース32へ向けて開口した長孔58が形成されている。この長孔58には第1ロックパウル44から突出形成されたピン60が入り込んでいる。ラチェット歯48がラチェット歯50に噛み合わずにロックパウル収容部42に第1ロックパウル44が収容された状態では、長孔58の長手方向一端側にピン60が位置している。この状態から第1追従手段の付勢力に抗してVギヤ54が第1ロックベース32に対して巻取方向に相対回転すると(すなわち、例えば、引出方向に回転する第1ロックベース32に対してVギヤ54の回転遅れが生じると)、ピン60が長孔58に案内され、第1ロックパウル44を伴いて長孔58の長手方向他端側へ移動する。これにより、ラチェット歯48がラチェット歯50へ接近するように第1ロックパウル44が第1ロック方向へ移動する。
また、Vギヤ54の外周部には外歯のラチェット歯により構成されたラチェット部62が形成されている。さらに、図1に示されるように、Vギヤ54の回転半径方向に沿ったラチェット部62の側方(下方)には、加速度センサ64が配置されている。加速度センサ64はラチェット部62の外周部の側へ向けて開口するように湾曲した湾曲面を有する基部66を備えている。基部66の湾曲面上には慣性質量体としての硬球68が載置されている。
この硬球68上にはセンサ爪70がラチェット部62に対して接離する向きに揺動可能に設けられている。車両急減速状態になることで略車両前方側へ硬球68が慣性移動すると、基部66の湾曲面を硬球68が昇り、これにより、硬球68にセンサ爪70が押し上げられるとセンサ爪70がラチェット部62の外周部に形成されたラチェット歯に係合する。このように、センサ爪70がラチェット部62のラチェット歯に係合した状態では、Vギヤ54の引出方向への回転が規制される。
また、図1に示されるように、Vギヤ54の第1ロックベース32とは反対側には第1Wパウル72が設けられている。図1における3線矢視図である図3に示されるように、第1Wパウル72はVギヤ54における軸部52の貫通部分に対してVギヤ54の回転半径方向にずれた位置でVギヤ54から突出形成された支持シャフト74により、スプール18の回転軸方向に対して平行な軸周りに揺動(回動)可能に支持されている。軸部52の中心及び第1Wパウル72の中心の側方には圧縮コイルばねにより構成されたパウル付勢ばね76が配置されている。
パウル付勢ばね76の一端はVギヤ54に形成された係止壁78に圧接している。これに対し、パウル付勢ばね76の他端は係止壁78へ向けて開口するように第1Wパウル72に形成された係止溝80の底部に圧接している。上記のように、第1Wパウル72は支持シャフト74に揺動可能に支持されているが、支持シャフト74周りの巻取方向(図3の矢印C方向)に第1Wパウル72が揺動するためには、パウル付勢ばね76の付勢力に抗してパウル付勢ばね76を圧縮させなくてはならず、Vギヤ54に対する巻取方向への第1Wパウル72の相対的な揺動(回動)がパウル付勢ばね76によって抑制されている。
一方、支持シャフト74及び軸部52を介してパウル付勢ばね76とは反対側では、第1Wパウル72に係合爪82が形成されている。この係合爪82に対応して第1ロック機構30はセンサホルダ92を備えている。センサホルダ92はスプール18の軸方向に沿ってVギヤ54と対向する壁部94を備えており、この壁部94のVギヤ54と対向する側の面にはリング状のラチェット部96が形成されている。ラチェット部96の内周部は、支持シャフト74周りの第1Wパウル72の揺動半径方向に沿って第1Wパウル72と対向しており、Vギヤ54に対して第1Wパウル72が巻取方向へ相対的に揺動すると係合爪82の先端部がラチェット部96の内周部に接近して、ラチェット部96の内周部に形成されたラチェット歯に係合する。このように、係合爪82の先端部がラチェット部96のラチェット歯に係合した状態では、支持シャフト74周りの引出方向への第1Wパウル72の揺動が規制され、ひいては、引出方向へのVギヤ54の回転が規制される。
すなわち、第1ロック機構30は、第1ロックベース32、ロックパウル収容部42、第1ロックパウル44、及びラチェット部62により所謂「VSIR機構」が構成され、第1ロックベース32、ロックパウル収容部42、第1ロックパウル44、第1Wパウル72、パウル付勢ばね76、及びラチェット部96(センサホルダ92)により所謂「WSIR機構」が構成されている。
一方、図1に示されるように、スプール18の軸方向に沿ったスプール側連結部24の脚板16側の端面からは、上記のエネルギー吸収手段を構成する第2エネルギー吸収手段としての第2エネルギー吸収部126がスプール側連結部24から連続して形成されている。第2エネルギー吸収部126は外周形状がスプール側連結部24の外周形状よりも充分に小さな円柱形状とされており、その軸方向一端にてスプール側連結部24に繋がっている。
第2エネルギー吸収部126の他端(第2エネルギー吸収部126のスプール側連結部24とは反対側の端部)には第2連結部128が形成されている。第2連結部128に対応してスプール18の脚板14側には、第2ロック手段としての第2ロック機構130を構成する第2ロックベース132が嵌挿されている。第2ロックベース132は上述した第1ロックベース32と基本的には同じ構成で、スプール18の脚板16の側の端部からスプール18に嵌挿される嵌挿部34に脚板14の側へ向けて開口した非円形の孔部36が形成され、第1連結部28と同様に外周形状が孔部36の内周形状に対応した第2連結部128が孔部36に嵌挿される。これにより、孔部36の内側に第2連結部128が入り込んだ状態では、第2連結部128の中心軸線周りのトーションシャフト22に対する第2ロックベース132の相対回転が不能とされている。
嵌挿部34の脚板16とは反対側の端部からは連続して第2ロックベース本体138が形成されている。第2ロックベース本体138は脚板16を貫通して、脚板16の外側(脚板16の脚板14とは反対側)で脚板16に取り付けられた第2ロック機構130のハウジング140に入り込んでいる。図1及び図1における4線矢視図である図4に示されるように、第2ロックベース本体138には脚板14とは反対側の端面及び外周一部で開口したロックパウル収容部142が形成されている。このロックパウル収容部142内にはロック部材としての第2ロックパウル144が配置されている。
第2ロックパウル144がロックパウル収容部142に案内されて第2ロック方向及び第2ロック方向とは反対の第1ロック解除方向へ移動可能とされており、ロックパウル収容部142内に第2ロックパウル144が収容されている状態(図4において実線で図示された状態)から第2ロックパウル144が第2ロック方向へ移動すると、第2ロックベース本体138の外周部におけるハウジング140の開口から第2ロックベース本体138の外側へ第2ロックパウル144が突出し、第2ロックベース本体138が貫通する脚板16のラチェット孔146の内周部に接近する。
図4に示されるように、第2ロックベース本体138から突出した第2ロックパウル144の先端部にはラチェット歯148が形成されており、ラチェット孔146の内周部に第2ロックパウル144が接近すると、ラチェット歯148がラチェット孔146の内周部に形成されたラチェット歯150に噛み合う。このようにラチェット歯150にラチェット歯148が噛み合った状態では、スプール18の中心軸線を中心とする引出方向への第2ロックパウル144の回転が規制され、このように、第2ロックパウル144の引出方向への回転が規制されることで第2ロックベース本体138(第2ロックベース132)の引出方向への回転が規制される。
一方、図1に示されるように、第2連結部128の第2エネルギー吸収部126とは反対側の端面からは軸部152が第2エネルギー吸収部126に対して同軸的に突出形成されている。軸部152は第2ロックベース132を貫通してハウジング140の内側に入り込んでいる。第2ロックベース132から突出した軸部152には追従回転体154が回転自在に支持されている。追従回転体154は基本的に第1ロック機構30におけるVギヤ54と同等の機能を有する部材であるが、Vギヤ54とは異なり追従回転体154の外周部にはラチェット部62が形成されていない。
また、Vギヤ54に第1追従手段が設けられていたのと同様に、この追従回転体154には圧縮コイルばねや捩じりばね等により構成された図示しない第2追従手段が設けられており、第2ロックベース132が回転すると第2追従手段が追従回転体154を第2ロックベース132に追従させるように付勢し、この第2追従手段の付勢力で追従回転体154が第2ロックベース132に追従するように回転する。また、Vギヤ54に長孔58が形成されて、この長孔58に第1ロックパウル44から突出形成されたピン60が入り込んでいたのと同様に、図4に示されるように、追従回転体154には長孔158が形成され、この長孔158に第2ロックパウル144から突出形成されたピン160が入り込んでいる。
長孔58及びピン60の機能と同様に、第2追従手段の付勢力に抗して追従回転体154が第2ロックベース132に対して巻取方向に相対回転することでピン160が長孔158に案内され、第2ロックパウル144を伴いて長孔158の長手方向他端側へ移動する。これにより、ラチェット歯148がラチェット歯150へ接近するように第2ロックパウル144が第2ロック方向へ移動する。
また、図1に示されるように、追従回転体154の第2ロックベース132とは反対側には、慣性質量体としての第2Wパウル172が設けられている。図1における5線矢視図である図5に示されるように、第2Wパウル172は追従回転体154における軸部152の貫通部分に対して追従回転体154の回転半径方向にずれた位置で追従回転体154から突出形成された支持シャフト174により、スプール18の回転軸方向に対して平行な軸周りに揺動(回動)可能に支持されている。
軸部152の中心及び第2Wパウル172の中心の側方には圧縮コイルばねにより構成されたパウル付勢ばね176が配置されている。パウル付勢ばね176の一端は追従回転体154に形成された係止壁178に圧接している。これに対し、パウル付勢ばね176の他端は係止壁178へ向けて開口するように第2Wパウル172に形成された係止溝180の底部に圧接している。上記のように、第2Wパウル172は支持シャフト174に揺動可能に支持されているが、支持シャフト174周りの巻取方向(図5の矢印D方向)に第2Wパウル172が揺動するためには、パウル付勢ばね176の付勢力に抗してパウル付勢ばね176を圧縮させなくてはならず、追従回転体154に対する巻取方向への第2Wパウル172の相対的な揺動(回動)がパウル付勢ばね176によって抑制されている。
一方、支持シャフト174及び軸部152を介してパウル付勢ばね176とは反対側では、第2Wパウル172に係合爪182が形成されている。この係合爪182に対応して第2ロック機構130はハウジングラチェット192を備えている。ハウジングラチェット192は第1ロック機構130におけるセンサホルダ92と基本的に同じ構造で、スプール18の軸方向に沿って追従回転体154と対向する壁部194を備えており、この壁部194の追従回転体154と対向する側の面にはリング状のラチェット部196が形成されている。
ラチェット部196の内周部は、支持シャフト174周りの第2Wパウル172の揺動半径方向に沿って第2Wパウル172と対向しており、追従回転体154に対して第2Wパウル172が巻取方向へ相対的に揺動すると係合爪182の先端部がラチェット部196の内周部に接近して、ラチェット部196の内周部に形成されたラチェット歯に係合する。このように、係合爪182の先端部がラチェット部196のラチェット歯に係合した状態では、支持シャフト174周りの引出方向への第2Wパウル172の揺動が規制され、ひいては、引出方向への追従回転体154の回転が規制される。
すなわち、第1ロック機構30は、「VSIR機構」と「WSIR機構」とを有する構成であったのに対し、第2ロック機構130は、「VSIR機構」を備えておらず、「WSIR機構」のみで構成されている。
一方、図1における6線矢視図である図6に示されるように、スプール18の脚板14の側の端部にはガイド溝212が形成されている。ガイド溝212はスプール18の中心軸線に対して略同軸の環状に形成されており、スプール18の脚板14の側の端部にて開口している。また、図1及び図6に示されるように、スプール18には貫通孔214が形成されている。貫通孔214はトーションシャフト22が通過するスプール18の貫通孔に対してスプール18の回転半径方向に変位した位置で、スプール18の中心軸線に対して平行に形成されている。図1に示されるように、貫通孔214の脚板16の側の端部はスプール18の脚板16側の端部にて開口している。これに対し、図1及び図6に示されるように、貫通孔214の脚板14の側の端部は上記のガイド溝212の底部にて開口している。
さらに、図1に示されるように、ウエビング巻取装置10は起動遅延手段として規制手段を構成するディレーワイヤ222を備えている。図1及び図8(A)に示されるように、ディレーワイヤ222はワイヤ本体224を備えている。ワイヤ本体224は外周形状が貫通孔214の内周形状に略等しいか、又は、貫通孔214の内周形状よりも小さな棒状に形成されており、貫通孔214の内側に収容されている。図8(A)及び図8(B)に示されるように、ワイヤ本体224の脚板14の側の端部からは連続して湾曲部226が形成されている。
湾曲部226はガイド溝212に倣うように湾曲しており、ガイド溝212の底部における貫通孔214の開口端からガイド溝212に沿ってガイド溝212に収容されている。湾曲部226のワイヤ本体224とは反対側の端部からは連続して係合部228が形成されている。係合部228は湾曲部226からのワイヤ本体224の延出方向とは反対向きに湾曲部226から延出されている。
図1における7線矢視図である図7に示されるように、係合部228に対応して第1ロックベース32の嵌挿部34には抜け止め孔230が形成されており、係合部228の先端側(係合部228の湾曲部226とは反対側)が抜け止め孔230に入り込んでいる。係合部228の先端にはフランジ状の頭部232が形成されており、抜け止め孔230に係合部228が収容された状態では、脚板16の側へ向けて抜け止め孔230から抜け出るように係合部228の移動しようとすると、抜け止め孔230の内壁が頭部232に干渉して係合部228の移動を規制する。
上記のように、貫通孔214に収容されているディレーワイヤ222のワイヤ本体224の湾曲部226とは反対側は、貫通孔214の脚板16側の開口端から突出している。貫通孔214の脚板16側の開口端から突出した貫通孔214に対応して第2ロックベース132の第2ロックベース本体138には透孔242が形成されている。透孔242はその一端が第2ロックベース本体138の脚板14の側の端面で開口し、他端がロックパウル収容部142の底部にて開口している。
貫通孔214の脚板16側の開口端から突出したディレーワイヤ222は透孔242を通過してロックパウル収容部142に入り込んでいる。ロックパウル収容部142に入り込んだワイヤ本体224(ディレーワイヤ222)に対応して第2ロックパウル144には切欠部244が形成されており、ロックパウル収容部142に入り込んだワイヤ本体224は第2ロックパウル144の切欠部244の内側に入り込んでいる。切欠部244の内側にワイヤ本体224が入り込んだ状態で第2ロックパウル144が第2ロック方向(すなわち、ラチェット歯148をラチェット孔146のラチェット歯150に噛み合わせる方向)へ移動しようとすると、ワイヤ本体224が切欠部244の内壁(すなわち、第2ロックパウル144)に干渉し、第2ロックパウル144の第2ロック方向への移動を規制する。
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、本ウエビング巻取装置10の動作の説明を通して本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
(第1ロック機構30のVSIR機構の動作)
本ウエビング巻取装置10では、車両の乗員がスプール18から引き出されたウエビングベルト20を装着した状態で車両が急減速状態になると、加速度センサ64の硬球68が慣性で転動して基部66の湾曲面を昇り、硬球68がセンサ爪70を押し上げる。硬球68に押し上げられたセンサ爪70はVギヤ54に形成されたラチェット部62のラチェット歯に係合し、これによりVギヤ54の引出方向への回転が規制される。車両が急減速することで乗員の身体が車両前方側へ慣性移動すると、乗員の身体に装着されているウエビングベルト20が引っ張られ、これにより、スプール18が引出方向に回転する。スプール18はトーションシャフト22により第1ロックベース32に対して相対回転不能に繋げられているため、スプール18が引出方向に回転することで第1ロックベース32が引出方向へ回転する。
上記のように、センサ爪70により引出方向へのVギヤ54の回転が規制された状態でスプール18と共に第1ロックベース32が引出方向へ回転すると、第1ロックベース32とVギヤ54との間に相対回転が生じる。第1ロックベース32がVギヤ54に対して引出方向に相対回転すると、ピン60に案内されつつ長孔58が第1ロックパウル44を伴い第1ロック方向へ移動する。これにより、第1ロックパウル44のラチェット歯48が脚板14に形成されたラチェット孔46のラチェット歯50に噛み合う。このように、第1ロックパウル44のラチェット歯48が脚板14のラチェット歯50に噛み合うことで第1ロックベース32の引出方向への回転が規制される。
(第1ロック機構30のWSIR機構の動作)
一方、車両が急減速した際に車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の身体が急激にウエビングベルト20を引っ張ると、スプール18が急激に引出方向へ回転させられる。スプール18が急激に引出方向に回転することで、第1ロックベース32が急激に引出方向に回転し、更に、上記の第1追従手段の付勢力がVギヤ54を引出方向へ急激に回転させる。このようにVギヤ54が急激に引出方向に回転すると、パウル付勢ばね76の付勢力に抗してVギヤ54に対する第1Wパウル72の回転遅れが生じ、これにより、第1Wパウル72がVギヤ54に巻取方向に相対的に揺動する。
この第1Wパウル72の相対的な揺動により、第1Wパウル72に形成された係合爪82がセンサホルダ92のラチェット部96に係合する。このように、係合爪82がラチェット部96に係合することで、Vギヤ54の引出方向への回転が規制される。上記のように、この状態では、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張っているので、Vギヤ54の引出方向への回転が規制されることで第1ロックベース32とVギヤ54との間に相対回転が生じる。これにより、上述したように、第1ロックパウル44のラチェット歯48が脚板14に形成されたラチェット孔46のラチェット歯50に噛み合い、第1ロックベース32の引出方向への回転が規制される。
(第1ロック機構30作動状態でのトーションシャフト22の挙動)
以上のように、第1ロック機構30のVSIR機構及びWSIR機構の少なくとも何れかの一方が作動することで、第1ロックベース32の引出方向への回転、ひいては、スプール18の引出方向への回転が規制されることで、スプール18からのウエビングベルト20の引き出しが規制されるので、乗員の身体は装着したウエビングベルト20により強く拘束され、車両が急減速することによる車両前方側への乗員の身体の慣性移動が防止又は効果的に抑制される。
一方、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張ることで生じる引出方向へのスプール18の回転力が、トーションシャフト22の第1エネルギー吸収部26の機械的強度を上回ると、第1ロックベース32を介して引出方向への回転が規制されているトーションシャフト22の第1連結部28に対し、スプール18との連結部分であるスプール側連結部24が引出方向に回動し、これにより、第1エネルギー吸収部26が捩じられるように第1エネルギー吸収部26が変形する。
第1ロックベース32は引出方向への回転が規制されているものの、この第1エネルギー吸収部26の捩じれ分だけスプール18は引出方向へ回転でき、ひいては、ウエビングベルト20をスプール18から引き出すことができる。しかも、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張るエネルギーの少なくとも一部が第1エネルギー吸収部26の変形に供されるエネルギーとして消費され、これにより、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張るエネルギーの少なくとも一部が吸収される。
(ディレーワイヤ222の動作)
また、上記のように、回転規制されている第1ロックベース32に対してスプール18が引出方向に回転すると、第1ロックベース本体38(第1ロックベース32)に形成された抜け止め孔230が、スプール18に形成された貫通孔214に対してスプール18の中心軸線周りに回動し、これにより、巻取方向へ向けて貫通孔214から抜け止め孔230が離間する。このように貫通孔214に対して抜け止め孔230が相対的に巻取方向へ変位すると、抜け止め孔230にて第1ロックベース32に保持されたディレーワイヤ222の係合部228が第1ロックベース32と共に回動(変位)する。この係合部228の変位分だけ、貫通孔214の脚板14側の開口端からワイヤ本体224が引き出されて、引き出されたワイヤ本体224がガイド溝212に倣って湾曲する。
このように、ワイヤ本体224が貫通孔214の脚板14側の開口端から引き出されると、ワイヤ本体224の湾曲部226とは反対側の端部近傍は、ロックパウル収容部142から抜け出て、更に、透孔242を通過して貫通孔214に引き込まれる。これにより、ワイヤ本体224による第2ロックパウル144の干渉が解除されると共に、透孔242からもワイヤ本体224が抜け出ることでワイヤ本体224によるスプール18に対する第2ロックベース132の相対回転規制が解消される。
(第2ロック機構130の動作)
以上のように、ワイヤ本体224による第2ロックパウル144の干渉が解除された状態でスプール18が急激に引出方向へ回転させられていると、第2ロックベース132が急激に引出方向に回転し、更に、上記の第2追従手段の付勢力が追従回転体154を引出方向へ急激に回転させる。このように追従回転体154が急激に引出方向に回転すると、パウル付勢ばね176の付勢力に抗して追従回転体154に対する第2Wパウル172の回転遅れが生じ、これにより、第2Wパウル172が追従回転体154に巻取方向に相対的に揺動する。
この第2Wパウル172の相対的な揺動により、第2Wパウル172に形成された係合爪182がハウジングラチェット192のラチェット部196に係合する。このように、係合爪182がラチェット部196に係合することで、追従回転体154の引出方向への回転が規制される。上記のように、この状態では、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張っているので、追従回転体154の引出方向への回転が規制されることで第2ロックベース132と追従回転体154との間に相対回転が生じる。これにより、上述したように、第2ロックパウル144のラチェット歯148が脚板16に形成されたラチェット孔146のラチェット歯150に噛み合い、第2ロックベース132の引出方向への回転が規制される。
(第2ロック機構130作動状態でのトーションシャフト22の挙動)
以上のように、第2ロック機構130のWSIR機構が作動することで、第2ロックベース132の引出方向への回転、ひいては、スプール18の引出方向への回転が規制される。この状態で、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張ることで生じる引出方向へのスプール18の回転力が、トーションシャフト22の第2エネルギー吸収部126の機械的強度を上回っていると、第2ロックベース132を介して引出方向への回転が規制されているトーションシャフト22の第2連結部128に対し、スプール18との連結部分であるスプール側連結部24が引出方向に回動し、これにより、第2エネルギー吸収部126が捩じられるように第2エネルギー吸収部126が変形する。
第2ロックベース132は引出方向への回転が規制されているものの、この第2エネルギー吸収部126の捩じれ分だけスプール18は引出方向へ回転でき、ひいては、ウエビングベルト20をスプール18から引き出すことができる。しかも、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張るエネルギーの少なくとも一部が第2エネルギー吸収部126の変形に供されるエネルギーとして消費され、これにより、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張るエネルギーの少なくとも一部が吸収される。
(本ウエビング巻取装置10の特徴的な作用、効果)
ここで、上記のように第2エネルギー吸収部126の変形が開始された状態では、既に第1エネルギー吸収部26の変形が開始されているので、第2エネルギー吸収部126が変形されている状態では、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張るエネルギーのうち、第2エネルギー吸収部126の変形に供されるエネルギーと第1エネルギー吸収部126の変形に供されるエネルギーとの和に相当するエネルギーが吸収される。
ところで、上記のように、ワイヤ本体224(ディレーワイヤ222)の干渉が解除されるまで第2ロック方向へ第2ロックパウル144が移動することはできず、しかも、ワイヤ本体224の湾曲部226とは反対側の端部がロックパウル収容部142から抜けて出て、しかも、透孔242を通過して貫通孔214に入り込まないとワイヤ本体224(ディレーワイヤ222)による第2ロックパウル144の干渉が解除されない。このように、ワイヤ本体224の湾曲部226とは反対側の端部がロックパウル収容部142から抜けて出て、貫通孔214に入り込むには、このワイヤ本体224の湾曲部226とは反対側の端部の移動量に相当する長さだけ貫通孔214の脚板14側の端部からワイヤ本体224が引き出されなくてはならず、その長さに相当する角度だけスプール18が第1ロックベース32に対して引出方向に回転しなくてはならない。
すなわち、本ウエビング巻取装置10では、第1エネルギー吸収部26の捩じり変形が開始されてから、第2エネルギー吸収部126の捩じり変形が開始されるまでには時間的な遅延が生じる。このため、第2エネルギー吸収部126の捩じり変形が開始されるまでは、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張るエネルギーのうち、第1エネルギー吸収部26の変形に供されるエネルギーに相当するエネルギーが吸収され、その後、第2エネルギー吸収部126が変形されると、それまでのエネルギー吸収量に第2エネルギー吸収部126の変形に供されるエネルギーが重畳される。これにより、本ウエビング巻取装置10では、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張るエネルギーの吸収量を段階的に増加させることができる。
しかも、上述したように、ワイヤ本体224の湾曲部226とは反対側の端部がロックパウル収容部142から抜けて出ても、追従回転体154に対する第2Wパウル172の回転遅れが生じなければ第2ロックベース132は回転規制されない。すなわち、例えば、ウエビングベルト20を装着している乗員が比較的小柄である場合等、第1エネルギー吸収部26に捩じり変形は生じさせるものの、この状態で追従回転体154に対する第2Wパウル172の回転遅れを生じさせない程度にしか引出方向へのスプール18の回転速度が速くならないような場合には、第2エネルギー吸収部126に捩じり変形を生じさせることがない。このため、乗員の体格や車両の減速状態に応じたエネルギー吸収が可能になる。
さらに、本ウエビング巻取装置10では、上記のように、ワイヤ本体224の湾曲部226とは反対側の端部がロックパウル収容部142から抜けて出ることで第2ロック機構130が作動可能となり、第2ロック機構130が作動することで第2連結部128が保持されて第2エネルギー吸収部126の変形が可能になる。このため、第2連結部128の保持や第2ロック機構130の作動開始にガスジェネレータ等の高価なトリガ手段が不要であるのでコストを安価にできる。
<第2の実施の形態の構成>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態を説明するにあたり、前記第1の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
図9には本実施の形態に係るウエビング巻取装置300の構成の概略が正面断面図により示されている。この図に示されるように、ウエビング巻取装置300はトーションシャフト22を備えておらず、代わりにエネルギー吸収手段を構成するトーションシャフト302を備えている。トーションシャフト302はスプール側連結部24や第1連結部28を備えている点では前記第1の実施の形態におけるトーションシャフト22と同じであるが、トーションシャフト302のスプール側連結部24の脚板16側の端部には第2エネルギー吸収部126や第2連結部128を備えていない。
また、前記第1の実施の形態ではトーションシャフト22のスプール側連結部24は、概ね、スプール18の軸方向中央部近傍に位置していたが、トーションシャフト302のスプール側連結部24はスプール18の軸方向中央部よりも脚板16の側に位置している(特に本実施の形態では、トーションシャフト302のスプール側連結部24がスプール18の脚板16側の開口端近傍に位置している)。
しかも、トーションシャフト302のスプール側連結部24の脚板16側の端部からは軸部152が第1エネルギー吸収部26に対して同軸的に形成されている。また、前記第1の実施の形態におけるトーションシャフト22ではスプール側連結部24がスプール18に対して相対回転不能な状態でスプール18に繋がっていたが、本実施の形態においてもトーションシャフト302のスプール側連結部24がスプール18に対して相対回転不能な状態でスプール18に繋がっている。
また、本ウエビング巻取装置300の第2ロック手段としての第2ロック機構130は、第2ロックベース132を備えておらず、代わりに第2ロックベース312を備えている。第2ロックベース312はスプール18の脚板16側の開口端からスプール18に対して同軸的に相対回転可能に嵌挿されている。しかしながら、上記のように、本実施の形態では、トーションシャフト302に第2連結部128が形成されていないので、第2ロックベース312には第2連結部128が嵌挿される孔部36が形成されておらず、第2ロックベース312を軸部152が貫通することで、第2ロックベース312は軸部152に回転自在に支持された状態になっている。
一方、図9における10線矢視図である図10に示されるように、本ウエビング巻取装置300では、スプール18の脚板16側の端部にはガイド溝318が形成されている。ガイド溝318はスプール18の脚板14側の端部に形成されたガイド溝212と同様に、スプール18の中心軸線に対して略同軸の環状に形成されており、スプール18の脚板16側の端部にて開口している。
また、本ウエビング巻取装置300では、貫通孔214とは別にスプール18に貫通孔322が形成されている。貫通孔322は貫通孔214と同様にトーションシャフト22が通過するスプール18の貫通孔に対してスプール18の回転半径方向に変位した位置で、スプール18の中心軸線に対して平行に形成されている。図9に示されるように、貫通孔322の脚板16の側の端部はスプール18の脚板16側の端部にて開口している。
さらに、図9に示されるように、本ウエビング巻取装置300は、エネルギー吸収手段を構成する第2エネルギー吸収手段としての10はエネルギー吸収ワイヤ332を備えている。図9及び図12に示されるように、エネルギー吸収ワイヤ332はワイヤ本体334を備えている。ワイヤ本体334は外周形状が貫通孔322の内周形状に略等しいか、又は、貫通孔322の内周形状よりも小さな棒状に形成されており、貫通孔322の内側に収容されている。図12(A)及び図12(B)に示されるように、ワイヤ本体334の脚板14の側の端部からは連続して湾曲部336が形成されている。
湾曲部336はガイド溝318に倣うように湾曲しており、ガイド溝318の底部における貫通孔322の開口端からガイド溝318に沿ってガイド溝318に収容されている。湾曲部336のワイヤ本体334とは反対側の端部からは連続して係合部338が形成されている。係合部338は湾曲部336からのワイヤ本体334の延出方向とは反対向きに湾曲部336から延出されている。
図9の11線矢視図である図11に示されるように、係合部338に対応して第2ロックベース312の嵌挿部34には抜け止め孔340が形成されており、係合部338の先端側(係合部338の湾曲部336とは反対側)が抜け止め孔340に入り込んでいる。係合部338の先端にはフランジ状の頭部342が形成されており、抜け止め孔340に係合部338が収容された状態では、脚板16の側へ向けて抜け止め孔340から抜け出るように係合部338の移動しようとすると、抜け止め孔340の内壁が頭部342に干渉して係合部338の移動を規制する。
<第2の実施の形態の作用、効果>
次に、本ウエビング巻取装置300の動作の説明を通して本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
本ウエビング巻取装置300では、第1ロック機構30が動作開始してから、第2ロック機構130が作動して第2ロックベース132の引出方向への回転、ひいては、スプール18の引出方向への回転が規制されるまでは、基本的に前記第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10と同様の動作がウエビング巻取装置300でも行なわれる。このため、この点に関しては、前記第1の実施の形態と同様の作用を奏して、前記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
(エネルギー吸収ワイヤ332の挙動)
本ウエビング巻取装置300では、第2ロック機構130の第2ロックベース312がスプール18に対して同軸的に相対回転可能にスプール18の脚板16側の端部から嵌挿され、しかも、第2ロックベース312はトーションシャフト302に対して同軸的に相対回転可能にトーションシャフト302の軸部152に支持されている。
しかしながら、ワイヤ本体224(ディレーワイヤ222)の湾曲部226とは反対側の端部近傍が、透孔242を貫通してロックパウル収容部142内に入り込んでいる状態では、ワイヤ本体224(ディレーワイヤ222)によりスプール18に対する第2ロックベース312の相対回転が規制される。トーションシャフト302はスプール側連結部24にてスプール18に対して相対回転不能に繋がっているので、ワイヤ本体224(ディレーワイヤ222)によりスプール18に対する第2ロックベース312の相対回転が規制されている状態では、トーションシャフト302に対する第2ロックベース312の相対回転も間接的に規制される。
第1の実施の形態でも説明したように、ワイヤ本体224(ディレーワイヤ222)の湾曲部226とは反対側の端部近傍が貫通孔214に引き込まれることで、ロックパウル収容部142及び透孔242からワイヤ本体224が抜け出ると、ワイヤ本体224(ディレーワイヤ222)によるスプール18に対する第2ロックベース312の相対回転規制が解除される。この状態で、スプール18が急激に引出方向へ回転させられていると、第2ロック機構130のWSIR機構が作動して、第2ロックパウル144のラチェット歯148が脚板16に形成されたラチェット孔146のラチェット歯150に噛み合い、第2ロックベース132の引出方向への回転が規制される。
上記のように、この状態では、ワイヤ本体224(ディレーワイヤ222)によるスプール18に対する第2ロックベース312の相対回転規制が解除されているが、スプール18の貫通孔322にワイヤ本体334が挿入されているエネルギー吸収ワイヤ332の頭部342は、第2ロックベース312に形成された抜け止め孔340に入り込んでいるので、スプール18に対する第2ロックベース312の相対回転規制がエネルギー吸収ワイヤ332により規制される。この状態で、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張ることで生じる引出方向へのスプール18の回転力が、エネルギー吸収ワイヤ332の機械的強度を上回っていると、回転規制されている第2ロックベース312に対してスプール18が引出方向に回転する。
このスプール18の引出方向への回転で、第2ロックベース本体138(第2ロックベース312)に形成された抜け止め孔340が、スプール18に形成された貫通孔322に対してスプール18の中心軸線周りに回動し、これにより、巻取方向へ向けて貫通孔322から抜け止め孔340が離間する。このように貫通孔322に対して抜け止め孔340が相対的に巻取方向へ変位すると、抜け止め孔340にて第2ロックベース312に保持されたエネルギー吸収ワイヤ332の係合部338が第2ロックベース312と共に回動(変位)する。
この係合部338の変位分だけ、貫通孔322の脚板16側の開口端からワイヤ本体334が引き出され、引き出されたワイヤ本体334がガイド溝336に入り込み、ガイド溝336に倣って湾曲する。貫通孔322の脚板16側の開口端から引き出されたワイヤ本体334がガイド溝336に入り込むに際して、ワイヤ本体334は、その長手方向がスプール18の周方向に沿うように貫通孔322の脚板16側の開口縁でしごかれて変形する。
このように、貫通孔322から引き出されてガイド溝336に入り込んだワイヤ本体334(エネルギー吸収ワイヤ332)の長さ分だけスプール18は引出方向へ回転でき、ひいては、ウエビングベルト20をスプール18から引き出すことができる。しかも、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張るエネルギーの少なくとも一部が貫通孔322の開口縁でワイヤ本体334をしごいて変形させる際のエネルギーとして消費され、これにより、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張るエネルギーの少なくとも一部が吸収される。
(本ウエビング巻取装置300の特徴的な作用、効果)
ここで、上記のように、貫通孔322からのワイヤ本体334(エネルギー吸収ワイヤ332)の引き出しが開始された状態では、既にトーションシャフト302の第1エネルギー吸収部26の変形が開始されているので、ワイヤ本体334(エネルギー吸収ワイヤ332)が貫通孔322から引き出されてしごかれている状態では、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張るエネルギーのうち、エネルギー吸収ワイヤ332のしごき変形に供されるエネルギーとトーションシャフト302の第1エネルギー吸収部126の変形に供されるエネルギーとの和に相当するエネルギーが吸収される。
ところで、上記のように、ワイヤ本体334(エネルギー吸収ワイヤ332)の干渉が解除されるまで第2ロック方向へ第2ロックパウル144が移動することはできず、しかも、ワイヤ本体224の湾曲部226とは反対側の端部がロックパウル収容部142から抜けて出て、しかも、透孔242を通過して貫通孔214に入り込まないとワイヤ本体224(ディレーワイヤ222)による第2ロックパウル144の干渉が解除されない。このように、ワイヤ本体224の湾曲部226とは反対側の端部がロックパウル収容部142から抜けて出て、貫通孔214に入り込むには、このワイヤ本体224の湾曲部226とは反対側の端部の移動量に相当する長さだけ貫通孔214の脚板14側の端部からワイヤ本体224が引き出されなくてはならず、その長さに相当する角度だけスプール18が第2ロックベース312に対して引出方向に回転しなくてはならない。
すなわち、本ウエビング巻取装置300では、トーションシャフト302の第1エネルギー吸収部26の捩じり変形が開始されてから、貫通孔322からのワイヤ本体334(エネルギー吸収ワイヤ332)の引き出し及びしごき変形が開始されるまでには時間的な遅延が生じる。このため、エネルギー吸収ワイヤ332のしごき変形が開始されるまでは、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張るエネルギーのうち、トーションシャフト302の第1エネルギー吸収部26の変形に供されるエネルギーに相当するエネルギーが吸収され、その後、エネルギー吸収ワイヤ332がしごき変形されると、それまでのエネルギー吸収量にエネルギー吸収ワイヤ332のしごき変形に供されるエネルギーが重畳される。これにより、本ウエビング巻取装置300では、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張るエネルギーの吸収量を段階的に増加させることができる。
このように、本ウエビング巻取装置300では、第2エネルギー吸収手段の構成が前記第1の実施の形態とは異なるものの、第2エネルギー吸収手段の変形の開始を第1エネルギー吸収手段の変形開始に対して遅らせることができるので、本実施の形態に係るウエビング巻取装置300でも、前記第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10と同様の効果を得ることができる。
(補足事項)
なお、上記の各実施の形態では、ディレーワイヤ222のワイヤ本体224が第2ロックパウル144に干渉することで第2ロックパウル144が第2ロック方向に移動すること、すなわち、第2ロック機構130が作動することを規制していたが、規制手段は第2ロック手段(上記の各実施の形態で言えば第2ロック機構130)の作動を規制できればよい。したがって、ディレーワイヤ222は結果的に第2ロック機構130の作動を規制できればよく、例えば、貫通孔214に引き込まれるまでワイヤ本体224が第2Wパウル172の揺動を規制する構成であってもよいし、貫通孔214に引き込まれるまでワイヤ本体224が第2ロックベース132に対する第2Wパウル172の相対回転を規制する構成であってもよい。更には、ワイヤ本体224が第2ロックパウル144及び第2Wパウル172の双方に干渉する構成としてもよい。
また、上記の各実施の形態では、第1ロックベース32に設けられた第1ロックパウル44のラチェット歯48が、フレーム12の脚板14に形成されたラチェット孔46のラチェット歯50に噛み合うことでトーションシャフト22の第1連結部28の引出方向への回転を規制する構成であった。しかしながら、第1ロック手段の構成がこのような構成に限定されるものではない。
例えば、第1ロックベース本体38(第1ロックベース32)の外周部にラチェット歯を形成すると共に、第1ロックベース本体38の外周部に対して接離移動可能にロックパウルを設け、車両急減速状態及びスプール18が急激に引出方向に回転した状態で第1ロック手段が作動してロックパウルを第1ロックベース本体38のラチェット歯に噛み合わせて、第1ロックベース32、ひいては、トーションシャフト22の第1連結部28の引出方向への回転を規制する構成としてもよい。
さらに、上記の各実施の形態では、第2ロックベース132、312に設けられた第2ロックパウル144のラチェット歯148が、フレーム12の脚板16に形成されたラチェット孔146のラチェット歯150に噛み合うことでトーションシャフト22の第2連結部128の引出方向への回転を規制する構成であった。しかしながら、第2ロック手段の構成がこのような構成に限定されるものではない。
例えば、第2ロックベース本体138(第2ロックベース132、312)の外周部にラチェット歯を形成すると共に、第2ロックベース本体138の外周部に対して接離移動可能にロック部材としてのロックパウルを設け、ディレーワイヤ222によるロックパウルの移動規制が解消された状態でスプール18が急激に引出方向に回転した場合に第2ロック手段が作動してロックパウルを第2ロックベース本体138のラチェット歯に噛み合わせて、第2ロックベース132、312の引出方向への回転を規制する構成としてもよい。
また、上記の第2の実施の形態では、トーションシャフト302を第1エネルギー吸収手段とし、エネルギー吸収ワイヤ332を第2エネルギー吸収手段とした。しかしながら、第1エネルギー吸収手段や第2エネルギー吸収手段が上記各実施の形態で説明した態様に限定されるものではない。例えば、エネルギー吸収ワイヤ332の係合部338が収容されて頭部342に干渉する抜け止め孔340を第1ロックベース32の嵌挿部34に形成して、第1ロックベース32にエネルギー吸収ワイヤ332の係合部338を係合させると共に、トーションシャフト302を脚板14側でスプール18に対して相対回転不能に連結し、脚板16側で第2ロックベース312の第2ロックベース本体138に対して相対回転不能に連結する構成とすることもできる。このように構成した場合には、トーションシャフト302が第2エネルギー吸収手段となり、エネルギー吸収ワイヤ332を第1エネルギー吸収手段となる。
さらに、トーションシャフト22、302を設けずに、2つのエネルギー吸収ワイヤ332を設け、一方のエネルギー吸収ワイヤ332の係合部338を第1ロックベース32に係合させて、他方のエネルギー吸収ワイヤ332の係合部338を第2ロックベース312に係合させる構成としてもよい。このような構成では、第1ロックベース32に係合させた一方のエネルギー吸収ワイヤ332が第1エネルギー吸収手段となり、第2ロックベース312に係合させた他方のエネルギー吸収ワイヤ332が第2エネルギー吸収手段となる。