JP2010082401A - マイクロニードルアレイ - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明は、皮膚表層及び/又は皮膚角質層に容易に刺入できるマイクロニードルを有し、刺入後に皮膚表層及び/又は皮膚角質層において溶解消失するマイクロニードルアレイを提供する。
【解決手段】 微細な針状のマイクロニードルが基板の表面に形成されてなるマイクロニードルアレイであって、該マイクロニードルが重量平均分子量40万以上の高分子量ヒアルロン酸60〜90重量%と重量平均分子量5万以下の低分子量高分子物質40〜10重量%よりなることを特徴とするマイクロニードルアレイ。
【選択図】図2

Description

本発明は皮膚表層及び/又は皮膚角質層に修飾効果及び/又は機能効果を与えるためのマイクロニードルアレイに関する。
従来、皮膚表層及び/又は皮膚角質層に修飾効果及び/又は機能効果を与えるためには、薬効成分を含む液状物質、軟膏剤、クリーム製剤、テープ製剤、バッチ製剤、パップ製剤等が使用されており、局部に塗布又は貼付することにより、薬物を皮膚や粘膜を透過して投与している。
しかし、これらの製剤は皮膚上に塗布又は貼付することにより使用するものなので、使用中に発汗、洗浄、外的圧力等により消失したり脱落するという欠点があった。又、これらの製剤は薬効成分を皮膚に浸透させ体内に拡散することにより薬効を発揮するものであるが、皮膚表層及び/又は皮膚角質層は体内へ異物の侵入を抑止するバリアー機能を有しているので、薬理効果を発揮するのに充分な量の薬効成分を吸収させるのは困難であり、且つ、皮膚表層及び/又は皮膚角質層の特定の場所に薬効成分を確実に供給することは困難であった。
最近、これらの問題を解決し、皮膚表層及び/又は皮膚角質層の特定の場所に薬効成分を確実に供給する方法として、マイクロニードルの研究が盛んに行なわれている。例えば、マルトース等の生体内で溶解消失する糖質からなり、一辺又は直径が0.1〜100μmの正方形又は円形の断面形状であり、長さが0.5〜500μmの正方柱状又は円柱状のパイルを基板上に設けた機能性マイクロパイル(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
特開2003−238347号公報
上記機能性マイクロパイルを使用する際には、機能性マイクロパイルのパイルを皮膚表層及び/又は皮膚角質層に刺入すると、パイルは皮膚表層及び/又は皮膚角質層において溶解消失する。従って、皮膚表層及び/又は皮膚角質層の特定の場所に薬効成分を確実に供給することができる。又、パイルは非常に細いので皮膚表層及び/又は皮膚角質層に刺入しても痛みはないし出血することなく且つ穿刺創は速やかに閉鎖されるので、皮膚表層及び/又は皮膚角質層の特定の場所に薬効成分を確実に供給する方法として好適である。
しかしながら、パイルの機械的強度が小さいとパイルを皮膚表層及び/又は皮膚角質層に刺入する際にその表面において刺入することなく折れてしまい、上記マルトース等の生体内で溶解消失する糖質で適当な機械的強度を有するパイルを形成することは困難であった。
本発明の目的は、上記欠点に鑑み、皮膚表層及び/又は皮膚角質層に容易に刺入でき、刺入後に皮膚表層及び/又は皮膚角質層において容易に溶解消失するマイクロニードルアレイを提供することにある。
本発明のマイクロニードルアレイは、微細な針状のマイクロニードルが基板の表面に形成されてなるマイクロニードルアレイであって、該マイクロニードルが重量平均分子量40万以上の高分子量ヒアルロン酸60〜90重量%と重量平均分子量5万以下の低分子量高分子物質40〜10重量%よりなることを特徴とする。
本発明で使用されるヒアルロン酸は、グリコサミノグリカン(ムコ多糖)の一種であり、N−アセチルグルコサミンとグルクロン酸の二糖単位が連結した構造を有している。ヒアルロン酸としては、例えば、鶏冠、臍帯等から単離される生物由来のヒアルロン酸、乳酸菌、連鎖球菌等により大量生産される培養由来のヒアルロン酸等が挙げられる。生物由来のヒアルロン酸は、その由来となる生物が有するコラーゲンを完全には除去できず、残存するコラーゲンが悪い影響を与える可能性があるので、コラーゲンを含有しない培養由来のヒアルロン酸が好ましい。
ヒアルロン酸から成形された成形体は、重量平均分子量が小さくなると硬くなり、大きくなると機械的強度が向上し粘り強くなる。即ち、ヒアルロン酸から成形されたマイクロニードルは重量平均分子量が小さくなると硬くなるが、機械的強度が低下し皮膚に刺入する際に折れやすくなる。逆に、重量平均分子量が大きくなると機械的強度が向上し粘り強くなるので保存時や皮膚に刺入する際に折れにくくなるが、硬さが低下し皮膚に刺さりにくくなる。
従って、本発明においては、マイクロニードルを皮膚に刺入する際に刺さりやすい重量平均分子量40万以上の高分子量ヒアルロン酸と、硬さを向上させ皮膚に刺さりやすくする効果のある、重量平均分子量5万以下の低分子量高分子物質を併用する。
上記高分子量ヒアルロン酸の重量平均分子量は40万以上であればよく、350万以下が好ましい。又、上記低分子量高分子物質としては、ヒアルロン酸、ポリビルピロリドン、コラーゲン、キトサン、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース(ナトリウム塩)及びポリビルアルコールが挙げられ、これらは単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。低分子量高分子物質の重量平均分子量は5万以下であればよく、1000以上が好ましい。尚、本発明において、重量平均分子量はゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された値である。
又、高分子量ヒアルロン酸と低分子量高分子物質の比率は、各成分の重量平均分子量によっても異なるので、好ましい機械的強度及び硬さになるように適宜決定されればよく、高分子量ヒアルロン酸60〜90重量%と低分子量高分子物質40〜10重量%よりなる。
上記高分子量ヒアルロン酸と低分子量高分子物質よりなるマイクロニードルには、更に、薬効成分が添加されていてもよい。上記薬効成分としては、従来から経皮吸収製剤として使用されている薬物及び化粧品の原料であれば特に限定されず、例えば、解熱鎮痛消炎剤、ステロイド系抗炎症剤、血管拡張剤、不整脈用剤、血圧降下剤、局所麻酔剤、ホルモン剤、抗ヒスタミン剤、全身麻酔剤、睡眠鎮痛剤、抗癲癇剤、精神神経用剤、骨格筋弛緩剤、自立神経用剤、抗パーキンソン剤、利尿剤、血管収縮剤、呼吸促進剤、麻薬等が挙げられる。
上記解熱鎮痛消炎剤としては、例えば、イブプロフェン、フルルピプロフェン、ケトプロフェン等が挙げられ、上記ステロイド系抗炎症剤としては、例えば、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、プレドニゾロン等が挙げられる。上記血管拡張剤としては、例えば、塩酸ジルチアゼム、硝酸イソソルビド等が挙げられる。上記不整脈用剤としては、例えば、塩酸プロカインアミド、塩酸メキシレチン等が挙げられる。
上記血圧降下剤としては、例えば、塩酸クロニジン、塩酸ブニトロロール、カプトプリル等が挙げられる。上記局所麻酔剤としては、例えば、塩酸テトラカイン、塩酸プロピトカイン等が挙げられる。上記ホルモン剤としては、例えば、プロピルチオウラシル、エストラジオール、エストリオール、プロゲステロン等が挙げられる。上記抗ヒスタミン剤としては、例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等が挙げられる。
上記全身麻酔剤としては、例えば、ペントバルビタールナトリウム等が挙げられる。上記睡眠・鎮痛剤としては、例えば、アモバルビタール、フェノバルビタール等が挙げられる。上記抗癲癇剤としては、例えば、フェニトインナトリウム等が例示される。上記精神神経用剤としては、例えば、塩酸クロルプロマジン、塩酸イミプラミン、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム等が挙げられる。上記骨格筋弛緩剤としては、例えば、塩酸スキサメトニウム、塩酸エペリゾン等が挙げられる。
上記自立神経用剤としては、例えば、臭化ネオスチグミン、塩化ベタネコール等が挙げられる。上記抗パーキンソン剤としては、例えば、塩酸アマンタジン等が挙げられる。上記利尿剤としては、例えば、ヒドロフルメチアジド、イソソルビド、フロセミド等が挙げられる。上記血管収縮剤としては、例えば、塩酸フェニレフリン等が挙げられる。上記呼吸促進剤としては、例えば、塩酸ロベリン、ジモルホラミン、塩酸ナロキソン等が挙げられる。上記麻薬としては、例えば、塩酸モルヒネ、塩酸コカイン、塩酸ペチジン等が挙げられる。
上記化粧品の原料としては、例えば、アスコルビン酸リン酸ナトリウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、パルミチン酸アスコルビル、コウジ酸、ルシノール、トラネキサム酸、油用性甘草エキス、ビタミンA誘導体等の美白成分;レチノール、レチノイン酸、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール等の抗しわ成分;酢酸トコフェロール、カプサイン、ノリル酸バニリルアミド等の血行促進成分;ラズベリーケトン、月見草エキス、海草エキス等のダイエット成分;イソプロピルメチルフェノール、感光素、酸化亜鉛等の抗菌成分、サルチル酸等の消炎成分、ビタミンD、ビタミンD、ビタミンK等のビタミン類等が挙げられる。
上記薬効成分はいずれも分子量600以下の低分子化合物であるが、高分子の薬効成分であってもよく、好ましい高分子薬効成分としては、例えば、生理活性ペプチド類とその誘導体、核酸、オリゴヌクレオチド、各種の抗原蛋白質、バクテリア、ウイルスの断片等が挙げられる。
上記生理活性ペプチド類とその誘導体としては、例えば、カルシトニン、副腎皮質刺激ホルモン、副甲状腺ホルモン(PTH)、hPTH(1→34)、インスリン、セクレチン、オキシトシン、アンギオテンシン、β−エンドルフィン、グルカゴン、バソプレッシン、ソマトスタチン、ガストリン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、エンケファリン、ニューロテンシン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ブラジキニン、サブスタンスP、ダイノルフィン、甲状腺刺激ホルモン、プロラクチン、インターフェロン、インターロイキン、G−CSF、グルタチオンパーオキシダーゼ、スーパーオキシドディスムターゼ、デスモプレシン、ソマトメジン、エンドセリン、及びこれらの塩等が挙げられる。抗原蛋白質としては、HBs表面抗原、HBe抗原等が挙げられる。
本発明のマイクロニードルアレイは、上記高分子量ヒアルロン酸と低分子量高分子物質よりなる、微細な針状のマイクロニードルが基板の表面に形成されてなるが、基板はその表面にマイクロニードルを形成しうるものであれば、特に限定されないが、マイクロニードルを構成する高分子量ヒアルロン酸と低分子量高分子物質よりなるフィルム又はシートであってもよい。
上記マイクロニードルの形状は、皮膚に容易に刺入できる微細な針状であれば、特に限定されず、例えば、円錐状、コニーデ状、三角錐状、四角錘状、六角錐状、八角錘状等の針状の形状が挙げられる。又、マイクロニードルの大きさは、一般に根元の直径又は一辺の長さが100〜300μmであり、高さが150〜1200μmが好ましい。マイクロニードルの間隔も特に限定されるものではないが、一般に100〜1000μmが好ましい。
本発明のマイクロニードルアレイの製造方法は、特に限定されず、従来公知の任意の方法で製造されればよく、例えば、マイクロニードルの形状が穿設された型に、上記高分子量ヒアルロン酸と低分子量高分子物質及び必要に応じて薬効成分の水溶液を流延し、乾燥した後剥離する方法が挙げられる。
本発明のマイクロニードルアレイの構成は上述の通りであり、マイクロニードルは重量平均分子量40万以上の高分子量ヒアルロン酸と重量平均分子量5万以下の低分子量高分子物質よりなるので、適度な機械的強度、粘り及び硬度を有しており、皮膚表層及び/又は皮膚角質層に折れることなく容易に刺入でき、マイクロニードルは皮膚表層及び/又は皮膚角質層において溶解消失する。
従って、皮膚表層及び/又は皮膚角質層の特定の場所にヒアルロン酸を確実に供給することができ、更に、マイクロニードルに薬効成分を添加すれば、皮膚表層及び/又は皮膚角質層の特定の場所に薬効成分を確実に供給することができる。
次に、本発明を図面を参照して詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜5、比較例1〜9)
図1は本発明のマイクロニードルアレイの製造方法の一例を示す断面図である。図中1は、感光性樹脂に光照射するリソグラフィ法により所定形状のマイクロニードルパターンを形成した後、電鋳加工することにより所定形状のマイクロニードルパターンを転写したマイクロニードル形成用凹部11が形成された鋳型である。
マイクロニードル形成用凹部11は根元の直径が200μmで深さ500μmの円錐状であり、500μm間隔に格子状に配列されており、1cmあたり400個形成されている。
図中2はヒアルロン酸組成物の水溶液層であり、表1に示した所定量の重量平均分子量90万の高分子量ヒアルロン酸(紀文フードケミカル社製、商品名「FCH−80」、培養由来)、下記低分子量高分子物質及び薬効成分としてレチノイン酸(ナカライテスク社製)を適当量のエタノールに溶解して得られたヒアルロン酸組成物の水溶液を鋳型1上に流延して形成した。
低分子量高分子物質
A;ヒアルロン酸(重量平均分子量1万以下、キューピー社製、商品名「ヒアロオリゴ」、培養由来)
B;コラーゲン(重量平均分子量5千、ニッピ社製、商品名「リヤスシャークコラーゲン」)
C;ポリビニルピロリドン(重量平均分子量2万4千、ナカライテスク社製、商品名「ポリビニルピロリドンK−25」)
D;ゼラチン(重量平均分子量8千、ニッピ社製、商品名「ニッピハイグレードゼラチンタイプAP」)
参照用高分子物質
E;ゼラチン(重量平均分子量10万、ニッピ社製、商品名「メディゼラチン」)
F;ポリビニルピロリドン(重量平均分子量36万、ナカライテスク社製、商品名「ポリビニルピロリドンK−90」)
Figure 2010082401
次に、加熱してヒアルロン酸の水溶液層2の水分を蒸発させた後、鋳型1から剥離して、図2に示した本発明のマイクロニードルアレイを得た。マイクロニードルアレイは基板3の表面にマイクロニードル形成用凹部11の形状が転写された微細な円錐状の多数のマイクロニードル4が立錐されており、基板3とマイクロニードル4の両方共表1に示したヒアルロン酸組成物から形成されていた。得られたマイクロニードルアレイを直径1.0cmの円形に切り出してパッチを得た。得られたマイクロニードルの状況を顕微鏡で観察して結果を表2に示した。
マイクロニードル4は高さaが500μm、根元の直径bが200μmであり、マイクロニードル4とマイクロニードル4の間隔cは500μmで格子状に配列されており、1cmあたり400個形成されていた。又、基板3の厚さdは200μmであった。
得られたマイクロニードルアレイを被験者の上腕外側に強く押し当て、その上を粘着テープで保護し、45分後にマイクロニードルアレイを皮膚から剥がして、マイクロニードルの状況を顕微鏡で観察して結果を表2に示した。
尚、マイクロニードルは正常に皮膚に刺入されるとマイクロニードル(ヒアルロン酸組成物)は皮膚内で溶解消失する。通常、皮膚内の全てのマイクロニードルが溶解するには60〜90分必要である。又、マイクロニードルが柔らかすぎて皮膚内に刺入されない場合は皮膚上で先端部が曲がってしまうことが観察される。
又、曲げテストを行い、結果を表2に示した。曲げテストは得られたパッチを2枚に折りたたみ、パッチが折れる状況を目視で観察した。パッチの両端を手で押さえて力をかけて曲げる時、マイクロニードルは皮膚に刺入可能であるほどに十分に硬い場合は折れるが、マイクロニードルが柔らかい場合は折れずに最終的に2枚に折りたたむことができる。
Figure 2010082401
本発明のマイクロニードルアレイの製造方法の一例を示す断面図である。 本発明のマイクロニードルアレイの一例を示す断面図である。
符号の説明
1 鋳型
11 マイクロニードル形成用凹部
2 ヒアルロン酸組成物の水溶液層
3 基板
4 マイクロニードル

Claims (6)

  1. 微細な針状のマイクロニードルが基板の表面に形成されてなるマイクロニードルアレイであって、該マイクロニードルが重量平均分子量40万以上の高分子量ヒアルロン酸60〜90重量%と重量平均分子量5万以下の低分子量高分子物質40〜10重量%よりなることを特徴とするマイクロニードルアレイ。
  2. 高分子量ヒアルロン酸が、培養由来のヒアルロン酸であることを特徴とする請求項1記載のマイクロニードルアレイ。
  3. 低分子量高分子物質の重量平均分子量が1000以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のマイクロニードルアレイ。
  4. 低分子量高分子物質が、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン、コラーゲン、キトサン、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース(ナトリウム塩)及びポリビニルアルコールよりなる群から選ばれた1種以上の物質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のマイクロニードルアレイ。
  5. 低分子量ヒアルロン酸が培養由来のヒアルロン酸であることを特徴とする請求項4記載のマイクロニードルアレイ。
  6. 更に、マイクロニードルに薬効成分が添加されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のマイクロニードルアレイ。
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