JP2010076331A - 保護層転写シート - Google Patents

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Abstract

【課題】保護層転写が安定して良好に行なえ、保護層転写後の印画物の耐久性が良好な保護層転写シート。
【解決手段】耐熱滑性層を有し、基材シートの前記耐熱滑性層の設けられた面と反対側の面に、熱転写可能な保護層を設け、該保護層は基材シート側から剥離層、接着層を順次含み、前記剥離層が、メタクリル酸エステル(a)と(メタ)アクリル酸(b)を共重合してなるアクリル系共重合樹脂、メタクリル酸エステル(a)とアクリル酸エステル(c)を共重合してなるアクリル系共重合樹脂、及びメタクリル酸エステル(a)と(メタ)アクリル酸(b)とアクリル酸エステル(c)を共重合してなるアクリル系共重合樹脂よりなる群から選択される1種以上のアクリル系共重合樹脂を主成分とし、前記アクリル系共重合樹脂は、前記(メタ)アクリル酸(b)が0.1〜1質量%、及び前記アクリル酸エステル(c)が0.1〜8質量%の範囲で含まれる保護層転写シート。
【選択図】図1

Description

本発明は、保護層転写シートに関し、特に、保護層転写が安定して良好に行なえ、保護層転写後の印画物の耐久性が良好な保護層転写シートに関するものである。
従来から、熱転写方式を用いて被転写体に文字や画像を形成することが行われている。熱転写方式としては、感熱昇華型転写方式と感熱溶融型転写方式が広く用いられている。このうち、感熱昇華型転写方式は、昇華性染料を色材とし、それを画像情報に応じて発熱制御されたサーマルヘッドやレーザー光等の加熱デバイスを用いて、熱転写シート上の昇華性染料層中の染料を熱転写受像シート等の被転写体に移行させて画像を形成させる方式である。この感熱昇華型転写方式は、極めて短時間の加熱によってドット単位で染料の移行量を制御できる。このように形成された画像は、使用する色材が染料であることから非常に鮮明であり、且つ透明性に優れているため、得られる画像は中間調の再現性や階調性に優れ、極めて高精細な画像を得ることができる。このため、フルカラー銀塩写真に匹敵する高品質の画像を得ることができる。このような利点から、感熱昇華型転写方式の熱転写技術は、営業写真、パーソナルコンピューター用プリンタ、ビデオプリンタなどに広く用いられている。
しかしながら、上記の感熱昇華転写方式は、印加するエネルギー量によってドット単位で染料の移行量を制御できるため、階調性画像の形成に優れているが、形成された画像は通常の印刷インキによるものとは異なり、色材が顔料でなく比較的低分子量の染料であり、且つビヒクルが存在しないため耐光性、耐候性、耐摩耗性等の耐久性に劣るという欠点がある。また、感熱溶融型記録法により形成した画像はビヒクルを有しているが、それでも通常の印刷インキで形成した画像と比べると耐久性に劣り、とりわけ耐摩耗性に劣る。
熱転写法による印画物の耐久性を高める一手段として、昇華型熱転写法又は熱溶融型記録法によって得られた画像上に、熱転写性樹脂層(熱転写性保護層)を有する保護層転写シートを重ね合わせ、サーマルヘッドや加熱ロール等を用いて熱転写性樹脂層を転写させることによって、画像上に保護層を形成する方法が知られている。印画物の画像上に保護層を設けると、画像の耐摩擦性、耐薬品性、耐溶剤性等を向上させることができる。また、保護層中に紫外線吸収剤を添加して画像の耐光性を向上させることもできる。さらには、保護層中に蛍光増白剤等を添加して、偽造を防止したり或いは印画物の白色度を向上させるといった特殊な機能を保護層に付与することもできる。
保護層転写シートとして、例えば特許文献1、2に示されているように、基材上に剥離層を形成し、その剥離層の上に、接着層を設けて、熱転写受像シートに剥離層を安定して転写させるために、接着層を設ける構成が知られている。また、剥離層を熱転写受像シート上に熱転写する際に、保護層転写シートの基材に熱による損傷等が生じないように、基材の他方の面に耐熱滑性層を設けている。
また、特許文献3には、基材シート上に剥離層、プライマー層、ヒートシール層を積層した保護層転写シートが開示されている。
特開平4−35988号公報 特開平4−142988号公報 特開2006−272872号公報
しかし、上記の従来の保護層転写シートでは、熱転写プリンタの機種の違い、プリンタの置かれている環境温度の違い、またプリント開始時と連続プリント時でのサーマルヘッドの蓄積された熱による表面温度の違い等により、保護層転写で印加されるエネルギーが変動すると、被転写体への保護層転写時の剥離力の変化が大きく、保護層転写の剥離不良が生じるという問題があった。
したがって、本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、基材シートの一方の面に、耐熱滑性層を有し、該基材シートの前記耐熱滑性層の設けられた面と反対側の面の少なくとも一部に、熱転写可能な保護層を設けた保護層転写シートにおいて、保護層転写で印加されるエネルギーが増大しても被転写体への保護層転写時の剥離力の上昇が抑えられ、保護層転写が安定して良好に行なえ、且つ、保護層転写後の印画物の耐久性(耐摩耗性および耐可塑剤性)が良好な保護層転写シートを提供することを目的とする。
本発明の保護層転写シートは、基材シートの一方の面に、耐熱滑性層を有し、該基材シートの前記耐熱滑性層の設けられた面と反対側の面の少なくとも一部に、熱転写可能な保護層を設けた保護層転写シートにおいて、該保護層は基材シート側から剥離層、接着層を順次含み、前記剥離層が、メタクリル酸エステル(a)と(メタ)アクリル酸(b)を共重合してなるアクリル系共重合樹脂、メタクリル酸エステル(a)とアクリル酸エステル(c)を共重合してなるアクリル系共重合樹脂、及びメタクリル酸エステル(a)と(メタ)アクリル酸(b)とアクリル酸エステル(c)を共重合してなるアクリル系共重合樹脂よりなる群から選択される1種以上のアクリル系共重合樹脂を主成分として含有し、前記各アクリル系共重合樹脂において、前記(メタ)アクリル酸(b)が0.1〜1質量%、及び前記アクリル酸エステル(c)が0.1〜8質量%の範囲で含まれることを特徴とするものである。剥離層に上記特定のアクリル系共重合体樹脂を用いると、熱転写プリンタの各種変動、環境温度の変動などによる保護層転写で印加されるエネルギーが増大しても、基材シートと剥離層との剥離力が増大することなく、保護層転写の剥離不良を防止することができる。
本発明の保護層転写シートによれば、プリンタの機種、環境温度などの条件や、サーマルヘッドの表面温度の条件の変動により、保護層転写で印加されるエネルギーが増大しても、被転写体への保護層転写に際し、剥離力があまり高くならずに、保護層転写が安定して良好に行なえる。また、本発明の保護層転写シートを用いて、熱転写方式を用いて被転写体に画像形成した印画物に保護層を転写することにより、優れた耐久性を有する画像形成物が得られる。
本発明の保護層転写シートは、基材シートの一方の面に、耐熱滑性層を有し、該基材シートの前記耐熱滑性層の設けられた面と反対側の面の少なくとも一部に、熱転写可能な保護層を設けた保護層転写シートにおいて、該保護層は基材シート側から剥離層、接着層を順次含み、前記剥離層が、メタクリル酸エステル(a)と(メタ)アクリル酸(b)を共重合してなるアクリル系共重合樹脂、メタクリル酸エステル(a)とアクリル酸エステル(c)を共重合してなるアクリル系共重合樹脂、及びメタクリル酸エステル(a)と(メタ)アクリル酸(b)とアクリル酸エステル(c)を共重合してなるアクリル系共重合樹脂よりなる群から選択される1種以上のアクリル系共重合樹脂を主成分として含有し、前記各アクリル系共重合樹脂において、前記(メタ)アクリル酸(b)が0.1〜1質量%、及び前記アクリル酸エステル(c)が0.1〜8質量%の範囲で含まれることを特徴とするものである。なお本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」の両方を包含する。
図1は、本発明の保護層転写シート1の一つの実施形態を示す概略断面図であり、基材シート2の一方の面に、剥離層3、接着層4を順次積層し、また基材シート2の他方の面に耐熱滑性層5を形成した構成である。剥離層3と接着層4の合わせて2層が保護層6であり、例えば保護層転写シート1の耐熱滑性層5からサーマルヘッドによる加熱を行なって、その保護層6が、熱転写で画像・文字等が形成された被転写体へ転写される。
図2は、本発明の保護層転写シート1の他の実施形態を示す概略断面図であり、基材シート2の一方の面に、耐熱滑性層5を形成し、また基材シート2の他方の面に、熱転写性色材層として、昇華性染料を含有する染料層を、イエロー染料層Y、マゼンタ染料層M、シアン染料層Cの3色と、さらに、シアン染料層Cの後に、剥離層3、接着層4の2層積層された保護層6が、面順次に繰返し形成された構成である。この形態は、3色の染料層と、保護層が一体化した熱転写シートである。
図3は、本発明の保護層転写シート1の他の実施形態を示す概略断面図であり、基材シート2の一方の面に、耐熱滑性層5を形成し、また基材シート2の他方の面に、熱転写性色材層として、昇華性染料を含有する染料層をプライマー層7を介して、イエロー染料層Y、マゼンタ染料層M、シアン染料層Cの3色と、さらに剥離層3、接着層4の2層積層された保護層6が、面順次に繰返し形成された構成である。この形態は、3色の染料層が基材シートの上に、プライマー層を介して設けられ、さらに、シアン染料層Cの後に、剥離層3、接着層4の2層積層された保護層6が、面順次に繰返し形成された構成である。この形態は、3色の染料層と、保護層が一体化した熱転写シートである。
図4は、本発明の保護層転写シート1の他の実施形態を示す概略断面図であり、基材シート2の一方の面に、耐熱滑性層5を形成し、また基材シート2の他方の面に、熱転写性色材層として、昇華性染料を含有する染料層を、イエロー染料層Y、マゼンタ染料層M、シアン染料層Cの3色と、ブラック熱溶融性インキ層BK、さらに剥離層3、接着層4の2層積層された保護層6が、面順次に繰返し形成された構成である。この形態は、3色の染料層と、ブラック1色の熱溶融性インキ層を合わせて4色の熱転写性色材層と保護層が一体化した熱転写シートである。
また、図5は、本発明の保護層転写シート1の一つの実施形態を示す概略断面図であり、基材シート2の一方の面に、剥離層3、プライマー層7、接着層4を順次積層し、また基材シート2の他方の面に耐熱滑性層5を形成した構成である。剥離層3、プライマー層7及び接着層4の合わせて3層が保護層6であり、例えば保護層転写シート1の耐熱滑性層5からサーマルヘッドによる加熱を行なって、その保護層6が被転写体へ転写される。
図6は、本発明の保護層転写シート1の他の実施形態を示す概略断面図であり、基材シート2の一方の面に、耐熱滑性層5を形成し、また基材シート2の他方の面に、熱転写性色材層として、昇華性染料を含有する染料層を、イエロー染料層Y、マゼンタ染料層M、シアン染料層Cの3色と、さらに、シアン染料層Cの後に、剥離層3、プライマー層7、接着層4の3層積層された保護層6が、面順次に繰返し形成された構成である。この形態は、3色の染料層と、保護層が一体化した熱転写シートである。
図7は、本発明の保護層転写シート1の他の実施形態を示す概略断面図であり、基材シート2の一方の面に、耐熱滑性層5を形成し、また基材シート2の他方の面に、熱転写性色材層として、昇華性染料を含有する染料層をプライマー層7を介して、イエロー染料層Y、マゼンタ染料層M、シアン染料層Cの3色と、さらに剥離層3、プライマー層7、接着層4の3層積層された保護層6が、面順次に繰返し形成された構成である。この形態は、3色の染料層が基材シートの上に、プライマー層を介して設けられ、さらに、シアン染料層Cの後に、剥離層3、プライマー層7、接着層4の3層積層された保護層6が、面順次に繰返し形成された構成である。この形態は、3色の染料層と、保護層が一体化した熱転写シートである。
図8は、本発明の保護層転写シート1の他の実施形態を示す概略断面図であり、基材シート2の一方の面に、耐熱滑性層5を形成し、また基材シート2の他方の面に、熱転写性色材層として、昇華性染料を含有する染料層を、イエロー染料層Y、マゼンタ染料層M、シアン染料層Cの3色と、ブラック熱溶融性インキ層BK、さらに剥離層3、プライマー層7、接着層4の3層積層された保護層6が、面順次に繰返し形成された構成である。この形態は、3色の染料層と、ブラック1色の熱溶融性インキ層を合わせて4色の熱転写性色材層と保護層が一体化した熱転写シートである。
上記に示した熱転写性色材層を一体化した形態に限らずに、Y、M、C、BKの他に別の色相の熱転写性色材層を追加したり、またBKの熱転写性色材層と保護層を一体化させたもの等、適宜変更することができる。
以下、本発明の保護層転写シートを構成する各層について、詳細に説明する。
(基材シート)
本発明で用いる保護層転写シートの基材シート2としては、従来公知のある程度の耐熱性と強度を有するものであればいずれのものでも良く、例えば、0.5〜50μm、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜6μmの厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等が挙げられる。上記の中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、又は、その混合物からなるポリエステルフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
(剥離層)
本発明の保護層転写シートにおける剥離層3は、メタクリル酸エステル(a)と(メタ)アクリル酸(b)を共重合してなるアクリル系共重合樹脂、メタクリル酸エステル(a)とアクリル酸エステル(c)を共重合してなるアクリル系共重合樹脂、及びメタクリル酸エステル(a)と(メタ)アクリル酸(b)とアクリル酸エステル(c)を共重合してなるアクリル系共重合樹脂よりなる群から選択される1種以上のアクリル系共重合樹脂を主成分として含有し、前記各アクリル系共重合樹脂において、前記(メタ)アクリル酸(b)が0.1〜1質量%、及び前記アクリル酸エステル(c)が0.1〜8質量%の範囲で含まれるものである。なお、主成分として含有するとは、剥離層の総量中に、上記アクリル系共重合樹脂量が、50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上含まれることを表す。
メタクリル酸エステル(a)としては、メタクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましい。メタクリル酸エステル(a)としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等を挙げることができる。中でも、メタクリル酸メチルを用いることが好ましい。
(メタ)アクリル酸(b)としては、アクリル酸、及びメタクリル酸が挙げられる。また、アクリル酸エステル(c)としては、アクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましい。メタクリル酸エステル(a)としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等を挙げることができる。中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルを用いることが好ましい。
本発明において用いられるアクリル系共重合樹脂は、それぞれのアクリル系共重合樹脂において、前記(メタ)アクリル酸(b)が0.1〜1質量%、及び前記アクリル酸エステル(c)が0.1〜8質量%の範囲で含まれるものである。それぞれのアクリル系共重合樹脂において、前記(メタ)アクリル酸(b)が1質量%を超えたり、前記アクリル酸エステル(c)が8質量%を超えると、保護層転写で印加されるエネルギーの変動による基材シートと剥離層との剥離力の変化が大きくなり保護層転写の剥離不良が発生する、または、印画物の耐久性が悪化する、恐れがある。一方、それぞれのアクリル系共重合樹脂において、前記(メタ)アクリル酸(b)や、前記アクリル酸エステル(c)が少なすぎると、密着性に問題が生じる恐れがある。
中でも、メタクリル酸エステル(a)99.0〜99.9質量%と(メタ)アクリル酸(b)0.1〜1.0質量%を共重合してなるアクリル系共重合樹脂、メタクリル酸エステル(a)92〜99質量%とアクリル酸エステル(c)1〜8質量%を共重合してなるアクリル系共重合樹脂、及びメタクリル酸エステル(a)91〜99質量%と(メタ)アクリル酸(b)0.1〜1.0質量%とアクリル酸エステル(c)0.1〜8質量%を共重合してなるアクリル系共重合樹脂よりなる群から選択される1種以上のアクリル系共重合樹脂を用いることが好ましい。更に好ましくは、メタクリル酸エステル(a)99.2〜99.8質量%と(メタ)アクリル酸(b)0.2〜0.8質量%を共重合してなるアクリル系共重合樹脂、メタクリル酸エステル(a)93〜98質量%とアクリル酸エステル(c)2〜7質量%を共重合してなるアクリル系共重合樹脂、及びメタクリル酸エステル(a)92〜98質量%と(メタ)アクリル酸(b)0.1〜0.8質量%とアクリル酸エステル(c)1.2〜7.2質量%を共重合してなるアクリル系共重合樹脂よりなる群から選択される1種以上のアクリル系共重合樹脂を用いることが望ましい。
また、メタクリル酸エステル(a)と(メタ)アクリル酸(b)とアクリル酸エステル(c)を共重合してなるアクリル系共重合樹脂であって、前記(メタ)アクリル酸(b)が0.1〜1質量%、及び前記アクリル酸エステル(c)が0.1〜8質量%の範囲で含まれるものは、中でも、保護層転写シートの密着性が良好な点から好ましい。
上記アクリル系共重合樹脂の合成方法としては、例えば、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法などの公知の重合方法が挙げられる。なかでも、懸濁重合法が好適である。
上記アクリル系共重合樹脂を懸濁重合法で製造する際の具体的な方法としては、例えば、水性媒体中に、モノマー混合物、分散剤、重合開始剤、連鎖移動剤などを添加して懸濁化し、その懸濁液を加熱して重合させ、重合後の懸濁液を濾過、洗浄、脱水、乾燥することにより製造することができる。
懸濁重合法で製造する際に使用する分散剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルのコポリマー、(メタ)アクリル酸スルホアルキルのアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルのコポリマー、ポリスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩、スチレンスルホン酸のアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルのコポリマー、あるいはこれらモノマーの組み合わせからなるコポリマーや、ケン化度70〜100%のポリビニルアルコール、メチルセルロース等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。なかでも、懸濁重合時の分散安定性が良好な(メタ)アクリル酸スルホアルキルのアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルのコポリマーが好ましい。
また、懸濁重合法で製造する際に懸濁重合時の分散安定性の向上を目的として、無機電解質を併用することができる。無機電解質としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マンガンなどが挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
上記アクリル系共重合樹脂を製造する際に使用する重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物;ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物;などが挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
上記アクリル系共重合樹脂を製造する際に使用する連鎖移動剤としては、例えば、n−ブチルメルカプタン、sec−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸メトキシブチル、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)等のチオグリコール酸エステル類;β−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、β−メルカプトプロピオン酸3−メトキシブチル、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)等のメルカプトプロピオン酸エステル類;などが挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
剥離層には、本発明の効果と保護層の透明性を損なわない範囲で、ワックス、無機系微粒子、あるいは有機系微粒子、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤等の各種添加剤を含有させても良い。上記ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリエステルワックス、ポリスチレン系パウダー、オレフィン系パウダー、マイクロクリスタリンワックス、カルナパワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等を挙げることができ、剥離層の耐擦過性及び箔切れ性が向上する。
上記の添加剤の無機系微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、等使用可能である。また、有機系微粒子としては、スチレン微粒子、アクリル微粒子、メラミン樹脂微粒子等が挙げられ、これらの微粒子添加は、箔切れ性の向上や、虹ムラ防止に対して有効である。また、保護層により覆われた被転写体の画像等の耐光性、耐候性をより向上させるために、紫外線吸収剤を添加することができ、紫外線吸収剤としては、従来から公知の有機系紫外線吸収剤であるサリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダートアミン系等を広く使用できる。また、これらの紫外線吸収剤に例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の付加重合性二重結合、あるいはアルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等の官能基を導入した紫外線吸収性樹脂を剥離層中に含有させてもよい。
剥離層は、基材シートの耐熱滑性層の設けられた側と反対面に、上記アクリル系共重合体樹脂と必要に応じて添加剤を、適当な溶剤、水などの溶媒により、溶解又は分散させて、剥離層塗工液を調整し、これを、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により塗工し、乾燥して形成することができる。剥離層の塗工量は、乾燥状態で、0.1g/m2〜10g/m2、好ましくは0.5g/m2〜5g/m2である。
(接着層)
本発明に用いられる接着層4は、本発明の保護層転写シートが備える剥離層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するものである。また、接着層は、本発明の保護層転写シートを用いて、熱転写受像シート等の被転写体上に保護層を形成する際に、保護層と被転写体とを接着する機能を有するものである。
本発明における接着層に用いられる熱可塑性樹脂としては、加熱により接着性を有するものであれば、特にその種類等は限定されるものではない。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニルおよびその共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、アクリル系・メタクリル系などの(メタ)アクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリメチルメタクリレート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニル系樹脂、マレイン酸樹脂、アルキッド樹脂、ポリエチレンオキサイ
ド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミン・アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)等の熱可塑性樹脂を用いることができる。上記の中でも180℃以下の温度でヒートシールが可能な組成物が用いられることが好ましい。
また、上記接着層には、上記熱可塑性樹脂以外に、上記剥離層で説明した添加剤を同様に使用することができる。接着層は、乾燥後塗工量が0.1g/m2〜10g/m2となる量で塗布することができるが、優れた接着性等を付与する点で、乾燥後塗工量が0.5g/m2〜5.0g/m2となる量で塗布することが好ましい。
(耐熱滑性層)
本発明における耐熱滑性層5は、サーマルヘッド等の加熱デバイスと基材シートとの熱融着を防止し、走行を滑らかに行う目的で、基材シートの染料層の設けられている面と反対側に設ける。上記の耐熱滑性層を形成する樹脂としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルアミド、アクリロニトリルースチレン共重合体等のアクリル系樹脂;芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂;ポリビニルトルエン樹脂;クマロンインデン樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリウレタン樹脂;シリコーン変性又はフッ素変性ウレタン等の天然又は合成樹脂の単体又は混合物が用いられる。
耐熱滑性層の耐熱性をより高める点からは、本発明の耐熱滑性層は、イソシアネート化合物及び水酸基含有樹脂を含む組成物から形成することが好ましい。上記イソシアネート化合物および上記水酸基含有樹脂は、層において通常、互いに重合された重合物として存在し、架橋樹脂層となっている。上記水酸基含有樹脂としては、イソシアネート化合物と反応できるものであれば特に限定されるものではない。このような水酸基含有樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ウレタンポリオール、ポリエステル等を挙げることができる。中でも本発明においては、ポリビニルブチラールが好適に用いられる。
上記イソシアネート化合物としては、例えば、従来公知の塗料、接着剤、ポリウレタンの合成等に使用されているものであれば特に限定されるものではない。このようなイソシアネート化合物としては、ジイソシアネートおよびトリイソシアネート等のポリイソシアネートを挙げることができる。本発明に用いられるポリイソシアネートの具体例としては、パラフェニレンジイソシアネート、1−クロロ−2,4−フェニルジイソシアネート、2−クロロ−1,4−フェニルジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、4,4',4''−トリメチル−3,3’,2’−トリイソシアネート−2,4,6−トリフェニルシアヌレート等を挙げることができる。
或いは、耐熱滑性層の耐熱性をより高める点から、耐熱滑性層は、ポリアミドイミド樹脂を含有することが好ましい。具体的には、特開2001−334760号公報に記載しているような、示差熱分析によるTgが200℃以上であるポリアミドイミド樹脂とポリアミドイミドシリコーン樹脂を特定量混合した物をバインダーとし、更にアルキルリン酸エステルの多価金属塩、及びフィラー(充填剤)を特定量混合させた耐熱滑性層とすることが好ましい。上記ポリアミドイミド樹脂とポリアミドイミドシリコーン樹脂の混合比は、耐熱性と滑性のバランスの点から、1対5から5対1の範囲が好ましく、特に1対2から2対1の範囲が好ましい。また、前記ポリアミドイミドシリコーン樹脂は、ポリアミドイミド樹脂と分子量1000から6000の多官能シリコーン化合物との共重合又は変性体であり、共重合又は変性量はポリアミドイミド樹脂1に対し0.01から0.3であることが好ましい。また、アルキルリン酸エステルの多価金属塩は、バインダー100質量部当たり1〜100質量部の割合であることが好ましく、更に5〜20質量部の範囲が、熱印加時の離型性と物理的強度のバランスの点から好ましい。また、前記フィラーは、バインダー100質量部当たり2〜20質量部の割合で混合されていることが好ましい。
この場合の耐熱滑性層は、イソシアネート化合物を用いて、樹脂を架橋させるものとは異なり、架橋反応させることなく、上記材料を含有する塗工液を基材シートに塗布し、乾燥させるだけで、優れた耐熱性と滑り性を有するものとなる。
これらの樹脂からなる耐熱滑性層に添加あるいは上塗りする滑り性付与剤としては、リン酸エステル、金属石鹸、シリコーンオイル、グラファイトパウダー、シリコーン系グラフトポリマー、フッ素系グラフトポリマー、アクリルシリコーングラフトポリマー、アクリルシロキサン、アリールシロキサン等のシリコーン重合体が挙げられるが、好ましくは、ポリオール、例えば、ポリアルコール高分子化合物とポリイソシアネート化合物及びリン酸エステル系化合物からなる層であり、さらに充填剤を添加することがより好ましい。
耐熱滑性層は、基材シートの上に、上記に記載した樹脂、滑り性付与剤、更に充填剤を、適当な溶剤により、溶解又は分散させて、耐熱滑性層塗工液を調整し、これを、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により塗工し、乾燥して形成することができる。耐熱滑性層の塗工量は、乾燥状態で、0.1g/m2〜2.0g/m2が好ましい。
(熱転写性色材層)
本発明において、上記の剥離層と接着層の合わせて2層からなる保護層と、同一基材シート上に、熱転写性色材層を面順次に形成することができる。これにより、熱転写プリンタの1ヘッドで、熱転写性色材層と保護層の転写を行い、また熱転写シートの供給部と巻取部のユニットを複数単位で設けることが必要でなくなり、熱転写プリンタの小型化ができ、またプリンタの搬送系が複雑化することがなく、好ましい。
熱転写性色材層は熱溶融性インキからなる色材層(熱溶融性インキ層)、あるいは昇華性染料を含む色材層(染料層)のいずれであってもよい。本発明において用いられる熱溶融性インキは、着色剤とビヒクルからなり、更に必要に応じて種々の添加剤を加えたものである。着色剤としては、有機または無機の顔料あるいは染料のうち、記録材料として要求される着色濃度を有し、光、熱、温度等により変褪色しないものが好ましい。また、加熱により発色するような物質や、被転写体に塗布されている物質と接触することにより発色するような物質を用いることもできる。そして、着色剤は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等の他に、種々の色の着色剤を使用することができる。
ビヒクルは、ワックスを主成分とし、その他にワックスと乾性油、樹脂、鉱油、セルロースおよびゴムの誘導体等との混合物が用いられる。また、熱溶融性インキからなる熱転写性色材層には、良好な熱伝導性および溶融転写性を与えるために、熱伝導性物質を含有させることができる。このような熱伝導性物質としては、カーボンブラック等の炭素質物質、アルミニウム、銅、酸化スズ、二硫化モリブデン等が挙げられる。上記の熱溶融性インキを用いて基材フィルム上へ熱転写性色材層を形成する方法としては、ホットメルトコート、ホットラッカーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の公知の方法が挙げられる。熱溶融性インキからなる熱転写性色材層の塗工量は、要求される印字濃度、熱感度等を考慮して適宜決定することができ、通常、乾燥時で0.1g/m2〜30g/m2である。
昇華性染料を含む熱転写性色材層(染料層)は、バインダー樹脂中に熱移行性の染料を分散あるいは溶解したものである。バインダー樹脂としては、染料と適度の親和性があり、且つサーマルヘッドによる加熱により、バインダー樹脂中の染料が昇華(熱移行)して被転写体に転写するものがよく、また加熱されてもバインダー樹脂そのものは転写しないものを使用する。このようなバインダー樹脂として使用される樹脂としては、例えばエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、硝酸セルロース、酢酸セルロース、酢酸・酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。
また、熱転写性色材層中に含まれる染料の割合は、染料の昇華(溶融)温度、染着性等によって変るが、上記バインダー樹脂100質量部に対して30質量部以上が好ましく、更に好ましくは、30から300質量部である。染料が30質量部未満であると印字濃度や熱感度が低く、また300質量部を越えると保存性や熱転写性色材層の基材フィルムへの密着性が低下する。
熱転写性色材層で使用する染料は、熱により溶融、拡散もしくは昇華して、被転写体に移行する染料であって、特に分散染料が好ましく用いられる。染料は昇華(溶融)性、色相、耐光性、バインダー樹脂への溶解性等を考慮して選択する。これらの染料としては、例えばジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メロシアニン等のメチン系、インドアニリン、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチンに代表されるアゾメチン系、キサンテン系、オキサジン系、ジシアノスチレン、トリシアノスチレンに代表されるシアノメチレン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、ベンゼンアゾ系、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラゾールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジスアゾ等のアゾ系、スピロピラン系、インドリノスピロピラン系、フルオラン系、ローダミンラクタム系、ナフトキノン系、アントラキノン系、キノフタロン系等のものが挙げられる。
染料層である熱転写性色材層を基材フィルム上に設けるには、公知の方法によって行える。例えば、染料及びバインダー樹脂を溶剤とともに溶解もしくは分散して熱転写性色材層用インキ組成物を調製し、これを公知の印刷方法または塗工方法から適宜選択した方法により基材フィルム上に設ければ良い。染料層の塗工量は、乾燥時で0.2g/m2〜5.0g/m2、好ましくは0.4g/m2〜2.0g/m2の厚さが適当である。
上記に説明した熱転写性色材層は、少なくとも2つ以上の異なる色相の熱転写性色材層を基材シートに面順次に形成することが要件であるが、2つ以上の熱転写性色材層の条件は、昇華性染料を用いた染料層が2つ以上であったり、染料層と熱溶融性インキの熱転写性色材層の組み合わせや、また熱溶融性インキの熱転写性色材層が2つ以上であっても良い。本発明では特に、基材シートに昇華性染料を含む熱転写性色材層として、イエロー色材層、マゼンタ色材層、シアン色材層を面順次に形成して、フルカラー写真画像に匹敵する高品質の熱転写画像を形成し、かつフルカラーの熱転写画像における各色相間で印画長のズレを防止した、鮮明な画像を形成することが好ましい。尚、黒色の文字やパターンの熱転写画像の場合、上記の染料層のイエロー色材層、マゼンタ色材層、シアン色材層の3色を重ねて、黒色を得ることは可能であるが、カーボンブラックの着色剤を使用した黒色の熱溶融性インキからなる色材層を基材シートに追加して、設けることが好ましい。これにより、黒色濃度が高く、鮮明な画像を得ることが出来る。
(プライマー層)
さらに、前記基材シートと前記熱転写性色材層との間、前記剥離層と前記接着層との間、及び/又は前記基材シートと前記耐熱滑性層との間に、プライマー層7を塗工して形成することも可能である。そのプライマー層は、以下に示すような樹脂から形成することができる。ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂やポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂等のビニル系樹脂、ポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。プライマー層は、公知の印刷方法または塗工方法から適宜選択した方法により形成することができ、プライマー層の塗工量は、乾燥時で0.2〜5.0g/m2、好ましくは0.4〜2.0g/m2の厚さが適当である。
中でも、前記剥離層と前記接着層との間に設けられるプライマー層としては、コロイド状の無機顔料の超微粒子を含有することが好ましい。コロイド状の無機顔料の超微粒子としては、例えば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等のケイ酸金属塩;アルミナ又はアルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物又はその水和物、疑ベーマイト等)、シリカ又はシリカゾル、酸化マグネシウム、酸化チタン等の金属酸化物類;炭酸マグネシウム等の炭酸塩;等の化合物を使用することができる。本発明では、金属酸化物類、炭酸塩が好ましく、金属酸化物類がより好ましく、アルミナ又はアルミナ水和物が更に好ましく、特に、アルミナゾルが耐熱性、強靭性を付与する効果が高く、好ましい。プライマー層は、上記のコロイド状無機顔料超微粒子として1種のみからなるものであってもよいし、上記コロイド状無機顔料超微粒子として2種以上からなるものであってもよい。いずれにしても、使用するコロイド状無機顔料超微粒子としては、印画時のサーマルヘッドからの瞬間的な最高加熱温度まで、相転移温度を有しない物質であれば良い。
上記コロイド状無機顔料超微粒子の平均粒径は、通常100nm以下、好ましくは50nm以下、特に好ましくは3〜30nmである。コロイド状無機顔料超微粒子は、水系溶媒にゾル状に分散しやすくする目的で、塩酸、酢酸等の分散安定剤を配合して酸性タイプに処理したものであってもよいし、微粒子電荷をカチオンにしたものであってもよいし、表面処理したものであってもよい。コロイド状無機顔料超微粒子は、例えば、アルミナゾル100(日産化学工業(株)製)、アルミナゾル200(日産化学工業(株)製)等、市販品であってもよい。
上記プライマー層は、一般に、コロイド状無機顔料超微粒子を含有する水性のプライマー層用塗工液を基材シートの剥離層上に塗布し、乾燥することにより形成することができる。上記プライマー層は、ゾルゲル法を用い形成してなるものがより好ましい。上記プライマー層は、バインダー樹脂を使用せずに、被膜を形成するので、保護層の耐熱性、強靭性をもたせることができ、さらに隣接する層(剥離層、接着層)との接着性が良好である。尚、上記のゾルゲル法の形成方法は、塗工において、コロイド状無機顔料超微粒子のゾル状から乾燥ゲル状になるように、90〜130℃の熱風にさらす等して乾燥を行う。プライマー層用塗工液は、水性媒体にコロイド状無機顔料超微粒子を分散させることにより調製することができる。つまり、上記プライマー層用塗工液における水性媒体としては、水、イソプロピルアルコール等の水溶性アルコール、水と水溶性アルコールとの混合液等が挙げられる。上記プライマー層用塗工液は、コロイド状無機顔料超微粒子が水性媒体1
00質量部に対し1〜100質量部で含有することが好ましい。
また、コロイド状無機顔料超微粒子を含有するプライマー層は、上記のコロイド状無機顔料超微粒子のみから構成するだけでなく、水溶性樹脂またはエマルジョン化可能な親水性樹脂を加えて構成することができる。水溶性樹脂としては、具体的には、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、親水性ウレタン樹脂、セルロースのヒドロキシルアルキル置換誘導体、ポリアクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸およびその金属塩等が挙げられる。親水性樹脂の添加量は、プライマー層の全固形分の0〜50質量%であることが好ましい。この場合のプライマー層の形成方法は、上記の塗工液を調整し、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の公知の手段にて塗布して、形成することができる。この場合のプライマー層は、乾燥後塗工量が0.01〜10g/m2となる量で塗布することができるが、優れた耐熱性、強靭性等を付与する点で、乾燥後塗工量が0.05g/m2〜1.0g/m2となる量で塗布することが好ましい。
保護層には、剥離安定化の要求性能に加え、「虹ムラ」(虹色のスジムラが印刷の流れ方向に見られる現象)の改善が求められている。上述のようなコロイド状無機顔料超微粒子を前記剥離層と前記接着層との間のプライマー層に用いることにより、さらに上記の虹ムラの印字不良を防止できる効果がある。
(被転写体)
本発明の保護層転写シートは、熱転写画像が形成できる被転写体であれば、任意の被転写体に対して、保護層を転写することができる。
被転写体としては、例えば、各種の紙やプラスチックシートの基材上に、従来から知られた(染料)受容層を設けた構成のものや、軟質のポリ塩化ビニル樹脂等の染料の染着性を有する基材から構成されるものは、受容層を設けずに基材単独を被転写体とすることができる。上記の各種の紙として、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、またはサイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂またはエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙等が挙げられる。
また、上記の各種プラスチックシートとしては、例えば、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等が挙げられ、また、これらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明シート(フィルム)あるいは、基材内部に微細空隙(ミクロボイド)を有する多孔質シート(フィルム)も使用でき、特に限定されない。
また、上記の紙やプラスチックシートの基材の任意の組み合わせによる積層体も使用できる。代表的な積層体の例として、セルロース繊維紙と合成紙あるいはセルロール繊維紙とプラスチックシートとの積層体等が挙げられる。以上の被転写体の厚みは、任意に選択することができ、通常は10〜300μm程度である。
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳述する。尚、文中、部又は%とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。また、質量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である。
次に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部又は%は質量基準である。
<合成例1:分散剤1の合成>
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水900部、メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム60部、メタクリル酸カリウム10部、メチルメタクリレート12部を加えて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、重合温度50℃に昇温し、重合開始剤として2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.08部を添加し、更に重合温度60℃に昇温した。該重合開始剤の添加と同時に、滴下ポンプを使用して、メチルメタクリレートを0.24部/分の速度で75分間連続的に滴下し、重合温度60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明なポリマー水溶液である固形分10%の分散剤1を得た。
<製造例1:剥離層用アクリル系共重合樹脂1の製造>
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.5部、分散剤1(固形分10%)0.2部を加えて撹拌し、均一な水溶液とした。次に、メチルメタクリレート99.5部、メタクリル酸0.5部、チオグリコール酸2−エチルヘキシル1.4部、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.3部を加え、水性懸濁液とした。次に、重合装置内を窒素置換し、重合温度75℃に昇温して約1.5時間反応させ、さらに重合率を上げるため、後処理温度として95℃に昇温して30分間保持した後、40℃に冷却して、粒状のポリマーを含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄、脱水し、40℃で16時間乾燥して、アクリル系共重合樹脂1を得た。このアクリル系共重合樹脂1の質量平均分子量(Mw)は24,800であった。
<製造例2〜6:剥離層用アクリル系共重合樹脂2〜6の製造>
表1に示すモノマーを、表1に示す割合で使用したこと以外は、アクリル系共重合樹脂1と同様にしてアクリル系共重合樹脂2〜6を得た。得られた質量平均分子量の結果を表1に示す。
(実施例1)
厚さ6μmのポリエチレンテレフタレート長尺フィルム(ルミラー、東レ(株)製)の基材シートの一方の面に、下記の耐熱滑性層用塗工液をグラビアコーターを用いて、固形分換算で1.0g/mの割合で塗布、乾燥して耐熱滑性層を形成した。
<耐熱滑性層用塗工液>
ポリビニルブチラール樹脂 13.6部
(エスレックBX−1 積水化学工業(株)製)
ポリイソシアネート硬化剤 0.6部
(タケネートD218 三井化学ポリウレタン(株)製)
リン酸エステル 0.8部
(プライサーフA208N 第一工業製薬(株)製)
メチルエチルケトン 42.5部
トルエン 42.5部
次に、上記基材シートの耐熱滑性層が形成された面とは反対面上に、以下の組成を有するインキをグラビアコーターで塗工することにより、3色を1セットとして染料層からなる熱転写性色材層を形成した。尚、染料層の塗工量は、3色全て乾燥時で1.0g/mである。
<イエロー染料層用インキの組成>
染料 5.5部
(FORON BRILLIANT YELLOW S−6GL)
ポリビニルアセタール樹脂 4.5部
(商品名 KS−5 : 積水化学工業(株)製)
ポリエチレンワックス 0.1部
溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1 質量比) 89部
<マゼンタ染料層インキの組成>
染料1 1.5部
(MS RED−G)
染料2 2.0部
(MACROLEX RED VIORET R)
ポリビニルアセタール樹脂 4.5部
(商品名 KS−5 : 積水化学工業(株)製)
ポリエチレンワックス 0.1部
溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1 質量比) 89部
<シアン染料層インキの組成>
染料 1.5部
(カヤセットブルー714)
ポリビニルアセタール樹脂 4.5部
(商品名 KS−5 : 積水化学工業(株)製)
ポリエチレンワックス 0.1部
溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1 質量比) 89部
次に、上記の染料層の各セット間に、下記の剥離層用塗工液をグラビアコーターで塗工することにより、乾燥後塗工量が1.0g/mになるように、剥離層を形成した。
<剥離層用塗工液>
上記製造例で得られた剥離層用アクリル系共重合樹脂1を、溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)に固形分が20質量%となるように溶解することにより、剥離層用塗工液を作製した。
上記の剥離層の上に、下記の接着層用塗工液をグラビアコーターで塗工することにより、乾燥後塗工量が1.0g/mになるように、接着層を形成し、実施例1の保護層転写シートを作製した。(保護層、熱転写性色材層の配置は図1に示したものと同様である。)
<接着層用塗工液>
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 50部
(ソルバインCNL、日信化学工業(株)製)
トルエン 50部
メチルエチルケトン 50部
(実施例2)
実施例1の保護層転写シートの剥離層用塗工液を、下記の塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の保護層転写シートを作製した。
<剥離層用塗工液>
剥離層用アクリル系共重合樹脂2を、溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)に固形分が20質量%となるように溶解することにより、剥離層用塗工液を作製した。
(実施例3)
実施例1の保護層転写シートの剥離層用塗工液を、下記の塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の保護層転写シートを作製した。
<剥離層用塗工液>
剥離層用アクリル系共重合樹脂3を、溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)に固形分が20質量%となるように溶解することにより、剥離層用塗工液を作製した。
(比較例1)
実施例1の保護層転写シートの剥離層を下記の塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の保護層転写シートを作製した。
<剥離層用塗工液>
剥離層用アクリル系共重合樹脂4を、溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)に固形分が20質量%となるように溶解することにより、剥離層用塗工液を作製した。
(比較例2)
実施例1の保護層転写シートの剥離層を下記の塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の保護層転写シートを作製した。
<剥離層用塗工液>
剥離層用アクリル系共重合樹脂5を、溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)に固形分が20質量%となるように溶解することにより、剥離層用塗工液を作製した。
(比較例3)
実施例1の保護層転写シートの剥離層を下記の塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の保護層転写シートを作製した。
<剥離層用塗工液>
剥離層用アクリル系共重合樹脂6を、溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)に固形分が20質量%となるように溶解することにより、剥離層用塗工液を作製した。
[評価]
上記実施例及び比較例において作製した保護層転写シートについて、下記の評価を行った。
(剥離力)
上記実施例及び比較例において作製した保護層転写シートの剥離層、接着層からなる保護層を、熱転写用受像シート(CanonコンパクトフォトプリンターCP710用受像シートを任意の大きさに切ったもの)の受容層上に、テストプリンターを用い、下記条件で転写することによって「両者が接着した試料」を作成し、以下条件で剥離力を測定した。
評価基準は、以下の通りとした。
○:剥離力30未満
△:剥離力30以上
×:測定不能(リボン貼付・凝集破壊起因)
<印画条件>
・発熱体平均抵抗値;4858Ω
・主走査方向印字密度;300dpi、副走査方向印字密度;300dpi
・印画電圧;18.5V
・1ライン周期;2msec/line
・印字開始温度;27℃
・印画幅;3cm
・印加パルス(階調制御方法);1ライン周期中に、1ライン周期を256に等分割したパルス長をもつ分割パルスの数を0から255個まで可変できるマルチパルス方式のテストプリンターを用い、各分割パルスのDuty比を90%に固定し、保護層をパルス数220個((階調)の条件で加熱して、被転写体に保護層を形成した。但し、被転写体と保護層転写シートは、重なって接着して一体化した状態を試料とし、つまり保護層転写シートを被転写体から剥がしていないものを試料とする。
<剥離条件>
上記の被転写体と保護層転写シートとが接着した試料を用いて、保護層転写シートを被転写体から剥がす際の剥離力を、180°剥離する時の剥離力を下記装置にて測定した。
・剥離装置:インストロン社製 万能型材料試験機 5565
・剥離速度:300mm/分
(密着性評価)
上記実施例及び比較例において作製した保護層転写シートの剥離層、接着層からなる保護層に、テープ(Post It(商標)、3M)を貼合し指で数回こすった後、90°方向に0.6m/minの速度で剥離した。保護層の密着性を目視にて確認し、評価基準は以下の通りとした。
◎:剥離無し
○:剥離跡は無いがテープに付着物がある
×:剥離跡が明確
(耐可塑剤性)
下記条件で、熱転写画像が形成された被転写体に、実施例、比較例の各保護層転写シートを用いて、保護層を転写し、その保護層転写した印画物の画像面と、可塑剤入り軟質塩ビシート(三菱化学(株)製、アルトロン♯480、厚み400μm)とを重ね合わせ、荷重を40g/cmとなるようにかけ、50℃環境下に48時間保存した。その後、可塑剤による画像の劣化を下記の評価基準により、目視にて評価した。
○:塩化ビニルシートへの画像の転移が全く認められない。
△:塩化ビニルシートへの画像の転移が一部認められた。
×:塩化ビニルシートへの画像の転移が全体にわたって認められた。
<印画条件>
・発熱体平均抵抗値;4858Ω
・主走査方向印字密度;300dpi、副走査方向印字密度;300dpi
・印画電圧;18.5V
・1ライン周期;2msec/line
・印字開始温度;27℃
・印画幅;3cm
・印加パルス(階調制御方法);1ライン周期中に、1ライン周期を256に等分割したパルス長をもつ分割パルスの数を0から255個まで可変できるマルチパルス方式のテストプリンターを用い、各分割パルスのDuty比を90%に固定し、イエロー、マゼンタ、シアンの各色を、この順で、被転写体の受容面に、転写してブラック画像を形成し、次いで、保護層をパルス数255個で印画することにより、保護層を転写形成した。尚、イエロー、マゼンタ、シアンによるブラック画像と、保護層転写は、各実施例及び比較例で作製した保護層転写シートを使用して行なった。
(耐摩耗性)
印画条件は上記耐可塑剤性評価と同様にし、熱転写画像が形成された被転写体に、実施例、比較例の各保護層転写シートを用いて、保護層を転写した。その保護層転写した印画物の画像面の耐摩耗試験を下記条件で行った。
その後、可塑剤による画像の劣化を以下の評価基準により、目視にて評価した。
○:画像破壊が認められない。
△:一部、画像破壊が認められた。
×:画像破壊が全体にわたって認められた。
<耐摩耗試験条件>
上記ブラック画像および保護層を転写形成した試料を用いて、下記条件にて耐摩耗試験を行った。
・評価装置:がくしん(学振)試験器
・評価条件:綿布、荷重200gで、100回反復(30回/分)
Figure 2010076331
実施例1、2、3の保護層転写シートは、保護層転写時の印加エネルギーが増大しても、剥離力を抑えることができ、保護層の転写不良がなく、安定した保護層転写が可能であることを示している。また、実施例1、2、3の保護層転写シートを用いることにより、特に従来に比べても耐摩耗性が向上し、可塑剤による劣化が抑制された画像形成物が得られることを示している。また、実施例3の保護層転写シートについては、中でも密着性が良好であった。
それに対し、比較例1及び2の保護層転写シートは、保護層転写時の印加エネルギーが増大すると、基材シートと剥離層との剥離力の増加による保護層転写の剥離不良が発生することを示している。更に、比較例1及び2の保護層転写シートを用いると、耐摩耗性が不十分であり、可塑剤により印画物の画像が劣化することも示された。また、比較例3の保護層転写シートについては、密着性に問題があることがわかった。
本発明の保護層転写シートの一つの実施形態を示す概略断面図である。 本発明の保護層転写シートの他の実施形態を示す概略断面図である。 本発明の保護層転写シートの他の実施形態を示す概略断面図である。 本発明の保護層転写シートの他の実施形態を示す概略断面図である。 本発明の保護層転写シートの他の実施形態を示す概略断面図である。 本発明の保護層転写シートの他の実施形態を示す概略断面図である。 本発明の保護層転写シートの他の実施形態を示す概略断面図である。 本発明の保護層転写シートの他の実施形態を示す概略断面図である。
符号の説明
1 保護層転写シート
2 基材シート
3 剥離層
4 接着層
5 耐熱滑性層
6 保護層
7 プライマー層
Y イエロー染料層
M マゼンタ染料層
C シアン染料層
BK ブラック熱溶融インキ層

Claims (1)

  1. 基材シートの一方の面に、耐熱滑性層を有し、該基材シートの前記耐熱滑性層の設けられた面と反対側の面の少なくとも一部に、熱転写可能な保護層を設けた保護層転写シートにおいて、該保護層は基材シート側から剥離層、接着層を順次含み、前記剥離層が、メタクリル酸エステル(a)と(メタ)アクリル酸(b)を共重合してなるアクリル系共重合樹脂、メタクリル酸エステル(a)とアクリル酸エステル(c)を共重合してなるアクリル系共重合樹脂、及びメタクリル酸エステル(a)と(メタ)アクリル酸(b)とアクリル酸エステル(c)を共重合してなるアクリル系共重合樹脂よりなる群から選択される1種以上のアクリル系共重合樹脂を主成分として含有し、前記各アクリル系共重合樹脂において、前記(メタ)アクリル酸(b)が0.1〜1質量%、及び前記アクリル酸エステル(c)が0.1〜8質量%の範囲で含まれることを特徴とする保護層転写シート。
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