JP2010065800A - 転がり軸受装置 - Google Patents

Abstract

【課題】ラビリンスシールにより異物の浸入量を低減した転がり軸受装置を提供する。
【解決手段】車両アウター側に設けられ、軸受内部を外部からシールする密封装置８を備えた転がり軸受装置であって、外輪２ａの車両アウター側の一端面２ａ１は、ハブフランジ３ｂの側面３ｃと対向配置され、密封装置８は、外輪２ａの内周面に圧入嵌装される芯金８ａを有し、該芯金８ａには、外輪２ａの内周面に圧入嵌装される芯金筒部８ｃの車両アウター側から内方側である内輪２ｂ側へ折り曲げられて、延出される内フランジ部８ｅが形成され、該内フランジ部８ｅには、先端側が前記ハブフランジ３ｂ側に指向するアキシャルリップ８ｂが形成され、該アキシャルリップ８ｂの先端側２ａ４と前記ハブフランジ３ｂの側面３ｄ１とによってラビリンスシール部１０が形成されることを特徴とする。
【選択図】図３

Description

本発明は、自動車等の車両に使用する転がり軸受装置に関する。

自動車等の車両には、タイヤホイールやブレーキディスクを取り付けるための転がり軸受装置が用いられている。この転がり軸受装置は、車体側に固定された外輪と、この外輪と同心に配置され、車輪取付け用のフランジを備えた内輪と、これら外輪と内輪との間に介装される転動体とを備えている。さらに内輪と外輪との間に、この軸受部内に砂や融雪剤を含む泥水などの異物が浸入すると充填されているグリースが劣化したり、他の構成部材が発錆して、軸受部自体の寿命の低下を招くため、この軸受部に密封装置を配置する転がり軸受装置が知られている（特許文献１参照）。

特開２００８−６４２９６号公報

この特許文献１のような転がり軸受装置の密封装置は、外輪の内周面に圧入される芯金と、内輪の外周面に摺接するラジアルリップと、車輪取付け用のフランジに摺接するアキシャルリップとを備えている。ところが内輪のフランジにおけるアキシャル方向側の側面と外輪のアキシャル方向側の端面との間には隙間が存在し、この隙間は外部に対して直接的に開口されている形態であるため、異物が入りやすく、この異物の浸入量によっては十分なシール機能を発揮することができなくなるおそれがある。

本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、異物の浸入量を低減させ、シール機能などを向上させるように改良した転がり軸受装置を提供することにある。

課題を解決するための手段及び発明の効果

上記課題を解決するために、本発明の転がり軸受装置は、車両インナー側の車両固定部材に接続される外輪と、車両アウター側の車輪に接続されるハブフランジを有する内輪と、前記内輪と前記外輪との間に介在される転動体と、少なくとも車両アウター側に設けられ、前記内輪と前記外輪との間を外部からシールする密封装置と、を備えた転がり軸受装置であって、前記外輪の車両アウター側の一端面は、前記ハブフランジの側面と対向配置され、このハブフランジの側面と前記外輪の一端面との間には、所定の隙間が設けられ、前記密封装置は内輪に接触させるラジアルリップと、前記ハブフランジに接触させるアキシャルリップを備え、前記ハブフランジの側面から前記隙間を覆うように、前記芯金の前記外フランジ部の外径よりも外方の位置から車両インナー側に突堤が突出形成され、該突堤の内周面の内側に前記外輪の一端側を位置させ、この外輪の一端側と前記突堤の内周面とによってラビリンスシール部が形成されることを特徴とする。

上記構成とすることにより、隙間に直接的に浸入しようとする異物の浸入経路に、障害物として突堤が回転側であるハブフランジに配設されているため、その浸入経路を長くし、かつハブフランジの回転による遠心力で突堤に接触する異物を除去でき、これによって隙間への異物の浸入量が低減されるので、アキシャルリップに対するシール負荷が低くなり、密封装置としてのシール機能を向上させることができる転がり軸受装置を提供できる効果を奏する。

上記課題を解決するために、本発明の転がり軸受装置の前記突堤の先端側と対向する位置には、前記外輪の外周面から突設される円環状のデフレクタ板が設けられ、該デフレクタ板と前記突堤の先端側とによってラビリンスシール部が形成されることを特徴とすることにより、このラビリンスシール部と、外輪の一端側と突堤の内周面とによるラビリンスシール部の相乗作用により、隙間への異物の浸入量がさらに低減されるので、アキシャルリップに対するシール負荷が低くなり、密封装置としてのシール機能をさらに向上させることができる転がり軸受装置を提供できる。

上記課題を解決するために、本発明の転がり軸受装置の前記デフレクタ板は、断面Ｌ字状で円環状に別体形成され、当該デフレクタ板を前記外輪の外周面に固定したことを特徴とすることにより、デフレクタ板は断面Ｌ字状であるため、その折り曲げ形成も、加工コストが安価なプレスによる板金加工を採用でき、しかも固定側である外輪の外周面に固定しているため、外輪の外径側を伝って突堤側に移動しようとする異物の移動を規制できるため、ラビリンスシール部の直前で異物の浸入量が低減可能となる。これによって、ラビリンスシール部に対するシール負荷が低くなり、密封装置としてのシール機能をさらに向上させることができる転がり軸受装置を提供できる。

上記課題を解決するために、本発明の転がり軸受装置の前記ラジアルリップおよび前記アキシャルリップが接触する箇所には、表面改質膜が形成されることを特徴とすることにより、かかるリップと接触する箇所としての摺動面の発錆が防止されるとともに、シール摺動抵抗が低減するため、密封装置としてのシール機能を向上させることができる転がり軸受装置を提供できる。

以下、本発明の実施の形態につき図面に示す実施例を参照して説明する。図１は、本発明に係る転がり軸受装置の取付状態の断面図である。図１において、転がり軸受装置１は、軸受鋼材からなる固定輪としての外輪２ａと、回転輪としての内輪２ｂと、該内輪２ｂと外輪２ａとの間に介在される複数列で配列される転動体２ｃから構成される転がり軸受２を備えている。

また、内輪２ｂはハブ３と一体形成されている。ハブ３は車両アウター側で車輪（図示せず）と接続するようにして装着するためのハブボルト３ａが固定され、外方へ突設される円盤状のハブフランジ３ｂを備えている。該ハブフランジ３ｂは、内輪２ｂを構成する軸部２ｂ１の一端部（車両アウター側）の外周に一体形成されている。また、軸部２ｂ１の他端部（車両インナー側）には、外径が一段小径となった小径部２ｂ２が形成されている。該小径部２ｂ２には、別体で形成され、その外周面が複数列で配列される一方の転動体２ｃが転動する転動面２ｂ３を備える内輪分割体２ｂ４が圧入固定されている。また、軸部２ｂ１の一端部と他端部との間の外周面には、複数列で配列される他方の転動体２ｃが転動する転動面２ｂ５が形成されている。このように軸部２ｂ１の他端部に内輪分割体２ｂ４が圧入されて一体化されることによって、一端部にハブフランジ３ｂを備えた内輪２ｂが構成される。

また、外輪２ａの車両アウター側の一端面２ａ１は、ハブフランジ３ｂの側面３ｃと対向配置され、このハブフランジ３ｂの側面３ｃと外輪２ａの一端面２ａ１との間には、所定の隙間Ｓが設けられている。

内輪２ｂの軸部２ｂ１には、動力を伝達する駆動軸としてのドライブシャフト４がスプライン結合される連結挿通孔２ｂ６が形成されている。該連結挿通孔２ｂ６に動力伝達を可能となすようにドライブシャフト４を通している。そして、ドライブシャフト４の軸端面４ａを、この軸端面４ａと対向する内輪分割体２ｂ４における車両インナー側の内輪端面２ｂ７に当接させるようにして、ドライブシャフト４の延出側の端部に、ねじ締結手段としてのナット５を螺合することにより固定されている。

また、本例は駆動輪側の転がり軸受装置１であるも、軸部２ｂ１に連結挿通孔２ｂ６を形成しない形態の場合には、図２に示すように、軸部２ｂ１の他端側を外部まで延出させ、その他端側を加締めるように、ラジアル方向外方に塑性変形させて形成した加締部２ｂ８によってアキシャル方向Ｚに抜けないように固定して、従動輪用の転がり軸受装置１とすることも可能である。

図１に戻り、転がり軸受２は車両における懸架装置の車両インナー側のナックル、アクスルハウジングなどの車両固定部材６の取付口６ａに接続される。この接続は転がり軸受２の外輪２ａを取付口６ａ内に挿入して嵌装するとともに、外輪２ａから外方へ突設される鍔部２ａ２をボルト・ナットなどの締結部材７を介して車両固定部材６の取付口６ａの周辺面（車両アウター側）に固定させている。

この転がり軸受２には、外輪２ａと内輪２ｂとの間の環状空間室２ｄを外部から密封するための密封装置８、９が設けられる。該密封装置８、９は転がり軸受２のアキシャル方向Ｚの両端側に設けられる。また、内輪２ｂと外輪２ａとの間の軸受内部の環状空間室２ｄ内にはグリースが封入される。

また、少なくとも車両アウター側に設けられる密封装置８は、図３に示すように、外輪２ａの内周面２ａ３に圧入嵌装される芯金８ａを有している。芯金８ａは鋼板等の金属製からなる板金材によって全体形状が円環状に形成される。外輪２ａの内周面２ａ３に圧入嵌装される筒状の芯金筒部８ｃが形成される。

また、芯金８ａにおける芯金筒部８ｃの車両インナー側から内方側である内輪２ｂ側へ折り曲げられて、延出される内フランジ部８ｅが設けられている。この内フランジ部８ｅには、内輪２ｂ側である内方（ラジアル方向）に延出されるゴム状弾性部材からなるシールリップとしてのラジアルリップ８ｋが加硫接着されている。このラジアルリップ８ｋは、その先端が内輪の軸部２ｂ１における直軸形態の外周面２ｂ９に摺動自在に接触している。これによって、内輪２ｂと外輪２ａとの間の軸受内部の環状空間室２ｄ内のグリースの漏れを防止している。

また、内フランジ部８ｅには、アキシャル方向である車両インナー側に延出されるゴム状弾性部材からなるシールリップとしてのアキシャルリップ８ｂが設けられる。該アキシャルリップ８ｂは、先端側がハブフランジ３ｂの側面３ｃに摺動自在に接触している。これによって隙間Ｓからの異物の浸入を防止するようにできる。

また、芯金８ａが外輪２ａに圧入嵌装された状態で、その芯金筒部８ｃの外周面と内フランジ部８ｅにおける外気と接触する外部露出表面８ｆには、防錆被膜８ｇを形成している。この防錆被膜８ｇはアキシャルリップ８ｂと同じ材質であるゴム状弾性部材を加硫接着したものである。これによって、芯金８ａの発錆が防止される。

また、転がり軸受装置１の他の実施の形態の要部を図３に示す。ハブフランジ３ｂの側面３ｃから隙間Ｓを覆うように、外輪２ａの外径よりも外方の位置から車両インナー側に突堤３ｄを突出形成することもできる。この突堤３ｄの内周面３ｄ１は、車両インナー側が大径に形成されるようにテーパ面状に形成することもできる。このように突堤３ｄの内周面３ｄ１をテーパ面状に形成する際の切削加工が簡易に早く行うことができるので、例えば側面３ｃに対して直角面状（図示せず）に形成する形態に比べて加工上、好ましい形態となる。

この突堤３ｄの内周面３ｄ１の内側に、外輪２ａの一端面２ａ１の周囲の一端側２ａ４を位置させている。この外輪２ａの一端側２ａ４と突堤３ｄの内周面３ｄ１との両者によってラビリンスシール部１０が形成される。このラビシンスシール部１０は、外輪２ａの一端側２ａ４の角部を、突堤３ｄの内周面３ｄ１にそった形態のテーパ面状となしたコーナ面取部２ａ５を設け、該コーナ面取部２ａ５と突堤３ｄの内周面３ｄ１との間の間隔Ｘは、両者が協働してラビリンスシール機能を発揮するような寸法に設定されている。

本例によれば、隙間Ｓに直接的に浸入しようとする異物の浸入経路に、障害物としての突堤３ｄが回転側であるハブフランジ３ｂから突設されているため、その浸入経路を長くし、かつハブフランジ３ｂの回転による遠心力で突堤３ｄ（外周側）に接触する異物も除去でき、これによって隙間Ｓへの異物の浸入量が低減される。また、突堤３ｄの内周面３ｄ１に異物が達しても、ラビリンスシール部１０によって異物の浸入量が低減される。

また、突堤３ｄの表面全域と、シールリップと接触する摺動面としての外周面２ｂ９、側面３ｃの一部に、表面改質処理を行い表面改質膜Ｍを形成することもできる。この表面改質処理としては、ＤＬＣ（ダイヤモンド・ライク・カーボン（diamond-like carbon））処理や、クラスターダイヤ処理などが挙げられる。これら表面改質処理による一般的な特長は、硬質、潤滑性、耐摩耗性、化学的安定性、表面平滑性、離型性、耐焼付き性などを備えさせることが可能となる。前者のＤＬＣ処理は、主として炭化水素、あるいは、炭素の同素体からなる非晶質の（アモルファス）の硬質膜であり、硬質炭素膜とほぼ同義のものであるものとして知られている。また、後者のクラスターダイヤ処理は、表面がグラファイトカーボンでコーティングされた導通性をもつ直径１５ナノメートル程度の黒色ダイヤモンドを各種バインダーを介して膜状にしたものとして知られている。これらの表面改質処理によって、シールリップと接触する摺動面の発錆が防止されるとともに、シールリップの摺動抵抗の低減に寄与することができることとなる。

また、転がり軸受装置１の他の実施の形態の要部を図４に示す。なお、本例による実施の形態について、上述の構成と同一の構成の説明は一部省略し、本例特有の関連構成について説明する。図４において、突堤３ｄの先端側３ｄ２と対向する位置には、外輪２ａの外周面２ａ６から突設される円環状のデフレクタ板１１が設けられる。そして、このデフレクタ板１１と突堤３ｄの先端側３ｄ２との両者によってラビリンスシール部１２が形成される。このラビリンスシール部１２を構成するデフレクタ板１１と外輪２ａの突堤３ｄの先端側３ｄ２の間隔Ｘは、両者が協働してラビリンスシール機能を発揮するような寸法に設定されている。このデフレクタ板１１は、ステンレス製からなり、断面Ｌ字状で全体形状が円環状に別体形成され、当該デフレクタ板１１を外輪２ａの外周面２ａ６に圧入嵌装されて固定されている。

また、転がり軸受装置１の他の実施の形態の要部を図５に示す。なお、本例による実施の形態について、上述の構成と同一の構成の説明は一部省略し、本例特有の関連構成について説明する。図５において、外輪２ａの外周面２ａ６に圧入嵌装されるデフレクタ板１１は、突堤３ｄの先端側３ｄ２と対向する円環状の円板部１１ａの外径端から折り曲げられ、車両アウター側に延出される円筒部１１ｂが形成されている。この円筒部１１ｂは突堤３ｄの外周面３ｄ３と対峙するように配置されている。この外周面３ｄ３には段差部３ｄ４を形成している。この円筒部１１ｂと、突堤３ｄの外周面３ｄ３の段差部３ｄ４との両者によってラビリンスシール部１３が形成される。このラビリンスシール部１３を構成する円筒部１１ｂと突堤３ｄの外周面３ｄ３の段差部３ｄ４との間隔Ｘは、両者が協働してラビリンスシール機能を発揮するような寸法に設定されている。また、突堤３ｄの外周面３ｄ３に段差面３ｄ４を形成しない形態でも可能である。

また、転がり軸受装置１の他の実施の形態の要部を図６に示す。本例は突堤３ｄの形成位置を変えたものである。なお、本例による実施の形態について、上述の構成と同一の構成の説明は一部省略し、本例特有の関連構成について説明する。図６において、先端側３ｄ２が外輪２の一端面２ａ１に対向する位置から突設される。この外輪２の一端面２ａ１と突堤３ｄの先端側３ｄ２との両者によってラビリンスシール部１４が形成される。このラビリンスシール部１４を構成する外輪２の一端面２ａ１と突堤３ｄの先端側３ｄ２との間隔Ｘは、両者が協働してラビリンスシール機能を発揮するような寸法に設定されている。

上述で説明した複数の転がり軸受装置１は例示であり、これらの転がり軸受装置１を構成する各構成要素は種々の変更が可能であり、これらの構成要素（例えば、アキシャルリップ８ｂ、ラジアルリップ８ｋ、防錆被膜８ｇ、表面改質膜Ｍ、デフレクタ板１１、１２、１３など）を任意に組み合わせる形で転がり軸受装置１を構成することも可能である。

本発明の転がり軸受装置の取付状態を示す断面図である。 転がり軸受装置の取付状態の他の例を示す断面図である。 車両インナーの密封装置の装着箇所を示す要部拡大図。 車両インナーの密封装置の装着箇所の他の例を示す要部拡大図。 車両インナーの密封装置の装着箇所の他の例を示す要部拡大図。 車両インナーの密封装置の装着箇所の他の例を示す要部拡大図。

符号の説明

１ 転がり軸受装置
２ａ 外輪
２ａ１ 一端面
２ａ３ 内周面
２ｂ 内輪
２ｃ 転動体
３ｂ ハブフランジ
３ｃ 側面
６ 車両固定部材
８ 密封装置
８ａ 芯金
８ｂ アキシャルリップ
８ｃ 芯金筒部
８ｄ 外フランジ部
１０ ラビリンスシール部

Claims (4)

1. 車両インナー側の車両固定部材に接続される外輪と、車両アウター側の車輪に接続されるハブフランジを有する内輪と、前記内輪と前記外輪との間に介在される転動体と、少なくとも車両アウター側に設けられ、前記内輪と前記外輪との間を外部からシールする密封装置と、を備えた転がり軸受装置であって、
   前記外輪の車両アウター側の一端面は、前記ハブフランジの側面と対向配置され、このハブフランジの側面と前記外輪の一端面との間には、所定の隙間が設けられ、
   前記密封装置は内輪に接触させるラジアルリップと、前記ハブフランジに接触させるアキシャルリップと、を備え、
   前記ハブフランジの側面から前記隙間を覆うように、前記外輪の外径よりも外方の位置から車両インナー側に突堤が突出形成され、該突堤の内周面の内側に前記外輪の一端面の周囲の一端側を位置させ、この外輪の一端側と前記突堤の内周面とによってラビリンスシール部が形成されることを特徴とする転がり軸受装置。
2. 前記突堤の先端側と対向する位置には、前記外輪の外周面から突設される円環状のデフレクタ板が設けられ、該デフレクタ板と前記突堤の先端側とによってラビリンスシール部が形成されることを特徴とする請求項１に記載の転がり軸受装置。
3. 前記デフレクタ板は、断面Ｌ字状で円環状に別体形成され、当該デフレクタ板を前記外輪の外周面に固定したことを請求項２に記載の転がり軸受装置。
4. 前記ラジアルリップおよび前記アキシャルリップが接触する箇所には、表面改質膜が形成されることを特徴とする請求項１ないし３のいずれか１項に記載の転がり軸受装置。

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