JP2010058164A - ダイカスト金型の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】回転曲げ、熱疲労等の機械的強度が著しく改善されたダイカスト金型の製造方法を提供する。
【解決手段】窒化ガス雰囲気中で金型を加熱して、該金型の表面に窒化層6を形成するダイカスト金型の製造方法において、窒化ガスが、NH3、NH3とN2との混合物又はNH3とH2との混合物のいずれかであり、かつ加熱時の圧力が、1,000〜10,000Paであること、また、加熱温度が450〜550℃であることを特徴とする方法である。
【選択図】図6
【解決手段】窒化ガス雰囲気中で金型を加熱して、該金型の表面に窒化層6を形成するダイカスト金型の製造方法において、窒化ガスが、NH3、NH3とN2との混合物又はNH3とH2との混合物のいずれかであり、かつ加熱時の圧力が、1,000〜10,000Paであること、また、加熱温度が450〜550℃であることを特徴とする方法である。
【選択図】図6
Description
本発明はダイカスト金型の製造方法に関し、更に詳しくは、窒化処理が施されたダイカスト金型の製造方法に関する。
従来から、鋼材の耐摩耗性、耐疲労性等の機械的性質を高めるための一手段として、窒化処理が使用されている。該窒化処理としては、ガス窒化、ガス軟窒化、塩浴軟窒化、イオン窒化等が知られている。ダイカスト金型等の鋼材の窒化処理には、主としてガス軟窒化が使用されている。
例えば、所定の処理を施した鉄鋼部品を、NH3、CO2及びN2の雰囲気中、500〜600Torr(約67,000〜80,000Pa)の減圧下で軟窒化温度に所定時間加熱するガス軟窒化方法が知られている(特許文献1)。該方法は、500〜600Torrの減圧下で窒化することにより、鉄鋼部品の表面に生ずる、CO2、H2O等の酸化性ガスによる酸化を抑えて、窒化層のポーラス化を抑制し、鉄鋼部品の機械的強度を高めることを目的としている。また、CO2ガスも含む雰囲気を使用することにより同時に浸炭をも行い、更なる機械的強度の向上を図ろうとするものである。該発明により、確かに、窒化層のポーラス化を抑制することはできたが、窒化処理後の鉄鋼部品の機械的強度は未だ十分であるとは言えなかった。
工具及び金型の製造において、窒化処理前に脱炭処理する窒化した工具、金型の製造方法が知られている(特許文献2)。該方法は、予め炭素を低減させて、窒化層中での窒素の固溶、拡散を容易にして、工具及び金型のより深部まで高硬度にすることを目的とするものである。該発明は、窒化の前処理として、脱炭処理することに特徴を有するものである。窒化処理自体に特徴があるものではなく、窒化処理の方法及び条件についての記載も全くない。窒化処理としては、従来から一般的に使用されているガス軟窒化を使用すると考えられる。
また、熱間工具鋼を加工して金型を成形し、該金型を熱処理して所定の硬さに保持し、該金型の表面窒化硬化層の厚みが50μm以下で、表面硬さがHv600〜Hv900になるように、その金型を窒化処理するダイカスト金型の製造方法が知られている(特許文献3)。該方法においては、窒化ガスとして、CO2:4%、NH3:10%、残部N2の混合ガス、及びNH3:30%、RXガス:30%、残部N2の混合ガスが使用されている。該発明においては、金型表面に化合物層が殆ど形成されないように窒化することを特徴としている。
ところで、ダイカスト金型の製造に使用されている従来の窒化処理において、未だ十分な機械的強度が得られていない原因の一つとして、窒化処理の際に、窒化される母材中に余分な炭窒化物が生成されることが知られている。この炭窒化物の生成を抑えるべく、特許文献2では、窒化処理が施される金型母材中に存在する炭素に着目し、窒化処理前に予め脱炭を施して、金型母材中に存在する炭素量を低減させると言う試みがなされている。しかし、該試みは、前処理により炭窒化物の生成を抑制するものであり、窒化処理自体により抑制するものではない。また、特許文献3は、窒化処理による金型表面の炭窒化物層の形成を抑制するものである。窒化ガスとして、CO2、NH3、残部N2の混合ガスを使用した際には、CO2ガスを全体の4%程度にすることにより金型表面の炭窒化物の形成を抑制し得ることが記載されている。しかし、NH3、RXガス、残部N2の混合ガスを使用した際には、如何にして炭窒化物の形成を抑制し得たのかの記載はない。特許文献3においては、単に二つの実験例が開示されているのみで、窒化処理をどのように実施すれば、金型表面の炭窒化物層の形成を抑制し得るのかは明確ではない。加えて、特許文献3記載の発明においては、窒化ガスとして、上記のように浸炭性ガスを使用していることから、母材中の炭窒化物の形成を完全に抑制することは不可能である。
そこで、本発明者は、従来の窒化処理において、何故、炭窒化物が形成されるのか、まず、その原因を探求した。その結果、原因として考えられる二つの仮説に到達した。一つは、窒化処理自体の機構によるものである。即ち、金型母材中で生ずる内部窒化現象は、母材表面から侵入してきた窒素が母材に存在する合金炭化物から合金元素を奪い取ることにより生ずる。この際、合金元素を奪われた炭素は再固溶しようとするが、窒化処理温度で存在するα‐Fe中に炭素は殆ど固溶できないため、炭素は母材内部に拡散していく。このとき、内部窒化反応が速く進むと、窒素の母材内部への拡散が炭素の拡散よりも先行する。その結果、表面にも内部にも拡散できない炭素が粒界に残留して脆弱化の原因である炭化物又は炭窒化物が形成される。もう一つは、従来の窒化処理における浸炭性ガス、例えば、CO2
、CO等の存在である。即ち、浸炭性ガスが存在すると、母材表面より炭素が内部に侵入する。従来の窒化処理においては浸炭性ガスの割合は、窒化ガスに比べて著しく小さい。従って、窒化反応が優先的に進み、浸炭により母材内部に侵入した炭素は表層において化合物層となるか、又は母材内部へと拡散していく。母材内部へと拡散した炭素は、粒界に偏析して炭化物又は炭窒化物となる。加えて、浸炭性ガスの使用は、浸炭性ガスを使用しない場合と比べて、化合物層の成長速度を速める。
、CO等の存在である。即ち、浸炭性ガスが存在すると、母材表面より炭素が内部に侵入する。従来の窒化処理においては浸炭性ガスの割合は、窒化ガスに比べて著しく小さい。従って、窒化反応が優先的に進み、浸炭により母材内部に侵入した炭素は表層において化合物層となるか、又は母材内部へと拡散していく。母材内部へと拡散した炭素は、粒界に偏析して炭化物又は炭窒化物となる。加えて、浸炭性ガスの使用は、浸炭性ガスを使用しない場合と比べて、化合物層の成長速度を速める。
本発明者は、これら二つの仮説に基づき更に検討を進めた。その結果、表面化合物層を薄くするためには浸炭性ガスの使用は好ましくない。そして、浸炭性ガスを使用しなければ、化合物層の成長はアンモニアから生成される活性窒素の影響を大きく受けることになる。このとき、加熱時の圧力をコントロールして、窒化反応の速度を抑制すると、表面化合物層の成長を抑制し得ると共に、粒界炭化物及び炭窒化物の生成も抑制し得ることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、金型表面及び母材中に生成し得る炭化物又は炭窒化物の生成を抑制し、回転曲げ、熱疲労等の機械的強度を改善することである。
本発明者は、上記のごとく鋭意検討した結果、上記課題を解決し得ることを見出した。即ち、本発明は、
(1)窒化ガス雰囲気中で金型を加熱して、該金型の表面に窒化層を形成するダイカスト金型の製造方法において、窒化ガスが、NH3、NH3とN2との混合物又はNH3とH2との混合物のいずれかであり、かつ加熱時の圧力が、1,000〜10,000Paであることを特徴とするダイカスト金型の製造方法である。
(1)窒化ガス雰囲気中で金型を加熱して、該金型の表面に窒化層を形成するダイカスト金型の製造方法において、窒化ガスが、NH3、NH3とN2との混合物又はNH3とH2との混合物のいずれかであり、かつ加熱時の圧力が、1,000〜10,000Paであることを特徴とするダイカスト金型の製造方法である。
好ましい態様として、
(2)加熱時の圧力が1,000〜5,000Paである上記(1)記載の製造方法、
(3)加熱温度が450〜550℃である上記(1)又は(2)記載の製造方法、
(4)窒化ガスが、NH3とH2との混合物である上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の製造方法、
(5)ダイカスト金型が、熱間工具鋼から形成されたものである上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の製造方法、
(6)熱間工具鋼が、SKD61又はSKT4である上記(5)記載の製造方法
を挙げることができる。
(2)加熱時の圧力が1,000〜5,000Paである上記(1)記載の製造方法、
(3)加熱温度が450〜550℃である上記(1)又は(2)記載の製造方法、
(4)窒化ガスが、NH3とH2との混合物である上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の製造方法、
(5)ダイカスト金型が、熱間工具鋼から形成されたものである上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の製造方法、
(6)熱間工具鋼が、SKD61又はSKT4である上記(5)記載の製造方法
を挙げることができる。
本発明の製造方法により得られたダイカスト金型は、表面化合物層の形成が抑制され、かつ粒界炭化物及び炭窒化物がほぼ存在しない故に、回転曲げ、熱疲労等の機械的強度が著しく良好である。従って、金型使用中に、金型表面に生ずるヒートチェックや摩耗の発生を防止し得るばかりではなく、金型の大割れによる寿命の低下を防止することができる。
本発明の製造方法において、窒化ガスとして、NH3、NH3とN2との混合物又はNH3とH2との混合物のいずれかが使用される。即ち、CO2、CO等の浸炭性ガスは使用しない。本発明の製造方法は、浸炭性ガスを含まない上記のガスを使用することにより、表面化合物並びに粒界炭化物及び炭窒化物の生成を抑制することができる。
上記ガスとしては、好ましくはNH3とH2との混合物が使用される。NH3ガスにH2ガス又はN2ガスを含めることにより、NH3からの活性窒素の生成を適切に制御することができるからである。このような観点から、NH3とH2との混合物において、NH3とH2との体積比は、1:4〜1:1であることが好ましい。また、NH3とN2との混合物において、NH3とN2との体積比は、同じく1:4〜1:1であることが好ましい。
窒化処理における加熱時の圧力は、上限が好ましくは10,000Pa、より好ましくは5,000Paであり、下限が好ましくは1,000Paである。上記圧力の上限及び下限は、下記の窒化処理における加熱温度との関係から決定した。ここで、図1は、窒化処理における加熱時の圧力に対する表面化合物層厚さの変化を示すグラフである。また、図2は、窒化処理における加熱時の圧力に対する窒化層厚さの変化を示すグラフである。図1に示すように、加熱温度が上限の550℃においては、圧力が10,000Paを超えると表面化合物層の厚さが著しく増加する。一方、図2に示すように、
加熱温度が下限の450℃においては、圧力が1,000Pa未満では窒化速度(窒化層厚さ)が急激に減少するため実用的ではない。そこで、窒化処理における加熱時の圧力を、1,000〜10,000Paと規定した。
加熱温度が下限の450℃においては、圧力が1,000Pa未満では窒化速度(窒化層厚さ)が急激に減少するため実用的ではない。そこで、窒化処理における加熱時の圧力を、1,000〜10,000Paと規定した。
窒化処理における加熱温度の上限は、好ましくは550℃、より好ましくは530℃であり、下限は、好ましくは450℃、より好ましくは460℃である。上記上限を超えては、窒化反応が速く進み過ぎ、表面化合物層並びに粒界炭化物及び炭窒化物の増加を招き、所望の機械的強度が得られないことがある。一方、上記下限未満では、窒化反応が遅くなり、実用的ではない。また、窒化処理時間には特に制限はないが、好ましくは3〜20時間である。該処理時間は、窒化処理の圧力及び温度に依存して適宜定めることができる。
本発明におけるダイカスト金型に使用される材料は、通常、熱間工具鋼と呼ばれるものであり、例えば、SKD61、SKT4、SKD4、SKD8、SKD62、SKH51(いずれもJIS記号)等が挙げられる。
本発明において、窒化処理の方法に特に制限はなく、公知の方法を使用することができる。例えば、所定の形状に加工された金型を、真空チャンバー内に収納し、該真空チャンバー内を室温で上記の所定圧力まで減圧する。次いで、所定の温度に昇温した後、チャンバー内の圧力を保持しつつ所定のガスを導入し、所定時間保持して、窒化処理を行う。これにより、窒化処理された金型を製造することができる。
上記本発明の方法により窒化処理されたダイカスト金型は、その表面に窒化層を有する。ここで、表面とは、いわゆる最表面ばかりではなく、窒素が金型の最表面から母材内部に拡散し得る範囲を言う。また、窒化層の生成の有無及びその厚さは該表面の硬度、例えば、ビッカース硬度(Hv)を測定することにより確認することができる。本発明の方法により窒化処理されたダイカスト金型の表面化合物層(炭化物及び炭窒化物層)の厚さは、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、更に好ましくは5μm以下である。また、金型内部の粒界に、長さ20μm以上、厚さ1μm以上の炭化物及び炭窒化物層を実質的に有しない。これにより、非常に良好な機械的強度をダイカスト金型に付与することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例及び比較例において使用した材料及び試験方法は、下記の通りである。
<材料>
熱間工具鋼SKD61(焼入焼戻処理により硬さ46HRCとしたもの)
熱間工具鋼SKT4(焼入焼戻処理により硬さ37HRCとしたもの)
熱間工具鋼SKD61(焼入焼戻処理により硬さ46HRCとしたもの)
熱間工具鋼SKT4(焼入焼戻処理により硬さ37HRCとしたもの)
<試験方法>
熱疲労試験
試験片として、図3に示す直径15±0.03mm及び厚さ20±0.03mmの円柱形の鋼材を使用した。そして、図4に示すように、試験片1を治具5に設置し、高周波加熱2により4秒間で600℃に加熱し、次いで、3秒間水冷装置3で水冷した後、1秒間エアーブローしてほぼ室温まで冷却した。また、適宜、熱電対4で試験片1の温度を確認した。この操作を10,000サイクル繰り返した。このようにして熱疲労試験を施した試験片の略中央を試験片両端面に対して略平行に切断し、切断面(横断面)表面に存在するクラック本数を数えた。この操作を試験片3個に対して実施し、クラック本数としてその平均値をとった。熱疲労の結果は、窒化処理を施されていない試験片のクラック本数に対する、窒化処理を施された試験片のクラック本数の比で評価した。
熱疲労試験
試験片として、図3に示す直径15±0.03mm及び厚さ20±0.03mmの円柱形の鋼材を使用した。そして、図4に示すように、試験片1を治具5に設置し、高周波加熱2により4秒間で600℃に加熱し、次いで、3秒間水冷装置3で水冷した後、1秒間エアーブローしてほぼ室温まで冷却した。また、適宜、熱電対4で試験片1の温度を確認した。この操作を10,000サイクル繰り返した。このようにして熱疲労試験を施した試験片の略中央を試験片両端面に対して略平行に切断し、切断面(横断面)表面に存在するクラック本数を数えた。この操作を試験片3個に対して実施し、クラック本数としてその平均値をとった。熱疲労の結果は、窒化処理を施されていない試験片のクラック本数に対する、窒化処理を施された試験片のクラック本数の比で評価した。
回転曲げ試験
装置として、小野式回転曲げ疲労試験機を使用した。107回疲労限(限界荷重)は、α≒3.6のノッチ付き試験片を使用して、常温で試験することにより測定した。回転曲げの結果は、窒化処理を施されていない試験片の限界荷重に対する、窒化処理を施された試験片の限界荷重の比で評価した。
装置として、小野式回転曲げ疲労試験機を使用した。107回疲労限(限界荷重)は、α≒3.6のノッチ付き試験片を使用して、常温で試験することにより測定した。回転曲げの結果は、窒化処理を施されていない試験片の限界荷重に対する、窒化処理を施された試験片の限界荷重の比で評価した。
顕微鏡観察試験
走査型電子顕微鏡を使用して倍率400Xで試験片断面を観察し、表面化合物層厚さ(μm)並びに粒界炭化物及び炭窒化物の有無を調べた。まず、図3に示す窒化処理後の試験片表面にニッケルメッキを施した後、試験片の横断面を観察面として切断することにより観察に供する切断片を得た。次いで、この切断片を樹脂中に埋め込み、切断片表面が鏡面になるまで機械研磨を施した後、ナイタールで腐食し、これを試験片として組織観察を実施した。粒界炭化物及び炭窒化物の有無は、顕微鏡視野(0.8mm×0.8mm)において、粒界に、長さ20μm以上、厚さ1μm以上の炭化物及び炭窒化物層が存在するか否かで判断した。
走査型電子顕微鏡を使用して倍率400Xで試験片断面を観察し、表面化合物層厚さ(μm)並びに粒界炭化物及び炭窒化物の有無を調べた。まず、図3に示す窒化処理後の試験片表面にニッケルメッキを施した後、試験片の横断面を観察面として切断することにより観察に供する切断片を得た。次いで、この切断片を樹脂中に埋め込み、切断片表面が鏡面になるまで機械研磨を施した後、ナイタールで腐食し、これを試験片として組織観察を実施した。粒界炭化物及び炭窒化物の有無は、顕微鏡視野(0.8mm×0.8mm)において、粒界に、長さ20μm以上、厚さ1μm以上の炭化物及び炭窒化物層が存在するか否かで判断した。
[実施例1〜13及び比較例1〜3]
各実施例及び比較例とも、夫々の試験片を、まず、アセトン中で超音波洗浄した後、室温の窒化炉に装入した。次いで、所定の圧力まで窒化炉内圧力を減圧し、該圧力に保持した。次いで、所定温度まで昇温した後、約1時間保持して炉内温度を均一にした。次いで、所定の窒化ガスを炉内に導入して、窒化処理を所定時間実施した。窒化処理終了後、室温のN2ガスを吹き込んで冷却、排気し、炉内温度を室温まで冷却した。窒化処理後の試験片について、上記の各試験を実施した。窒化処理の条件及び試験結果は表1に示されている。
各実施例及び比較例とも、夫々の試験片を、まず、アセトン中で超音波洗浄した後、室温の窒化炉に装入した。次いで、所定の圧力まで窒化炉内圧力を減圧し、該圧力に保持した。次いで、所定温度まで昇温した後、約1時間保持して炉内温度を均一にした。次いで、所定の窒化ガスを炉内に導入して、窒化処理を所定時間実施した。窒化処理終了後、室温のN2ガスを吹き込んで冷却、排気し、炉内温度を室温まで冷却した。窒化処理後の試験片について、上記の各試験を実施した。窒化処理の条件及び試験結果は表1に示されている。
実施例1〜5は、窒化圧力を本発明の範囲内で変化させたものである。圧力を高くすると表面化合物層の厚さは増加する傾向にあったが、粒界炭化物及び炭窒化物はいずれも観察されなかった。熱疲労試験結果及び回転曲げ試験結果はいずれも良好であり、高い機械的強度を有していた。実施例6〜8は、実施例3に対して、窒化ガスの組成を変えたものである。実施例6は、実施例3に対して、H2ガスの割合を減らして(体積比を変えて)NH3ガスの割合を増加したものである。表面化合物層厚さが若干増大し、回転曲げ強度が多少低下した。この結果から、NH3とH2との混合物において、NH3とH2との体積比は、1:4〜1:1が好ましいことが分かった。実施例7は、実施例3に対して、NH3ガスの割合を更に増加したものである。表面化合物層厚さが更に増大し、熱疲労試験結果及び回転曲げ試験結果が多少悪化した。しかし、実施例6及び7共に、本発明の効果を十分発揮するものであった。実施例8は、実施例6においてH2ガスをN2ガスに置き換えたものである。実施例6とほぼ同様の結果が得られた。実施例9、10及び11は、実施例3に対して、窒化処理時の加熱温度を変化させたものである。温度増加により表面化合物層が僅かに生ずる傾向にあるが、いずれも本発明の効果を十分に発揮するものであった。実施例12は、実施例3に対して、窒化処理時間を増加させたものである。表面化合物層は増大したが、粒界炭化物及び炭窒化物の生成は認められず、良好な機械的強度を有していた。実施例13は、実施例3で使用したSKD61に代えて、SKT4を使用したものである。表面化合物層厚さが著しく増加したが、粒界炭化物及び炭窒化物の生成は認められず、機械的強度は良好であった。
一方、比較例1は、実施例3に対して、窒化処理時の圧力を本発明の範囲未満にしたものである。窒化処理がなされず、機械的強度は著しく悪いものであった。比較例2は、実施例3に対して、窒化処理時の圧力を本発明の範囲を超えて高くしたものである。著しく厚い表面化合物層、並びに粒界炭化物及び炭窒化物が生成され、機械的強度は著しく悪いものとなった。比較例3は、浸炭性ガスであるCO2ガスを加えて軟窒化処理を施したものである。著しく厚い表面化合物層、及び粒界炭化物及び炭窒化物が生成され、機械的強度は著しく悪いものとなった。
実施例2及び比較例1においては、夫々、窒化処理後の試験片ついて、その最表面からの各距離におけるビッカース硬度(Hv)を測定した。その結果を図5に示す。実施例2の試験片では、比較例1の試験片に比べて、最表面近傍及び最表面からより深くまでより高い硬度を有することが明らかである。このことは、実施例2の試験片では、比較例1の試験片に比べて、より強固かつ厚い窒化層が試験片表面に生じていることを示すものである。
図6及び7には、実施例2及び比較例3の窒化処理後の試験片の顕微鏡写真を示した。実施例2の試験片では、表面化合物層(7)並びに粒界炭化物及び炭窒化物層(8)は認められなかった。一方、比較例3の試験片では、表面化合物層(7)並びに粒界炭化物及び炭窒化物層(8)(図7中丸で囲ったもの)が顕著に認められた。このように、CO2等の浸炭性ガスを使用しない本発明の方法では、ダイカスト金型の強度に悪影響を及ぼす表面化合物層及び粒界炭化物及び炭窒化物層の生成を抑制することができる。
本発明の方法により窒化されたダイカスト金型は、表面化合物層が薄く、かつ粒界炭化物及び炭窒化物が存在しない故に、回転曲げ、熱疲労等の機械的強度が著しく良好である。従って、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等及びその合金から成る寸法精度を要求される製品、例えば、自動車関連部品等の大量生産に極めて有効に使用し得る。
1 試験片
2 高周波加熱機
3 水冷装置
4 温度計
5 治具
6 ニッケルメッキ層
7 表面化合物層
8 粒界炭化物及び炭窒化物層
2 高周波加熱機
3 水冷装置
4 温度計
5 治具
6 ニッケルメッキ層
7 表面化合物層
8 粒界炭化物及び炭窒化物層
Claims (3)
- 窒化ガス雰囲気中で金型を加熱して、該金型の表面に窒化層を形成するダイカスト金型の製造方法において、窒化ガスが、NH3、NH3とN2との混合物又はNH3とH2との混合物のいずれかであり、かつ加熱時の圧力が、1,000〜10,000Paであることを特徴とするダイカスト金型の製造方法。
- 加熱時の圧力が1,000〜5,000Paである請求項1記載のダイカスト金型の製造方法。
- 加熱温度が450〜550℃である請求項1又は2記載のダイカスト金型の製造方法。
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