JP7295378B2 - ガス軟窒化処理部品及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、ガス軟窒化処理を施された鋼部品とその製造方法に関する。
自動車や各種産業機械などに使用される鋼部品には、表面の疲労強度が要求されるものがある。例えばトランスミッション中のCVTプーリやカムシャフトでは耐摩耗性や曲げ疲労強度、歯車では面疲労強度や曲げ疲労強度などの疲労特性が要求される。これらの特性の改善には、表面硬度の向上が有効とされており、窒化および軟窒化処理の適用が進められている。窒化処理および軟窒化処理では高い表面硬度が得られ、かつ熱処理ひずみが小さいという利点がある。
窒化は鋼の表面に窒素を侵入させる表面硬化熱処理であり、軟窒化は鋼の表面に窒素と炭素を侵入させる表面硬化熱処理である。窒化および軟窒化に用いる媒体には、ガス、塩浴、プラズマなどがある。自動車のトランスミッション部品には、主に、生産性に優れるガス窒化およびガス軟窒化が適用されている。
ガス窒化およびガス軟窒化によって生成される硬化層は、拡散層と、拡散層よりも表面側に生成する厚さ数~数十μmの化合物層である。
拡散層は、侵入窒素や炭素の固溶強化、窒化物の粒子分散強化機構により硬化された層である。拡散層の硬さおよび深さを向上することで、部品の曲げ疲労強度や面疲労強度が向上することが知られており、従来から、拡散層の硬さや深さの向上については多くの研究がなされてきた。
化合物層は主に、FeN~FeN(ε相)とFeN(γ’相)の鉄窒化物で構成されており、母相に比べて硬さが極めて高い。そのため化合物層は耐摩耗性の向上に有効である。ε相はγ’相に比べCの固溶範囲が大きく、成長速度も大きいことから、浸炭性ガスを混合させる軟窒化ではε相主体の化合物層が形成されやすく、窒化に比べ鋼種を問わず短時間で厚い化合物層を得ることができる。そのため軟窒化は、部品の耐摩耗性を向上させる目的で古くから利用されてきた。
化合物層と耐摩耗性および疲労強度に関する従来知見として、以下が挙げられる。
特許文献1には、ε単相の化合物層の厚さが8~30μm、ビッカース硬さが680HV以上であり、化合物層中の空隙の体積率が10%未満であることを特徴とする窒化または軟窒化部品が開示されている。
また、特許文献2には、窒化後における化合物層厚さが1~5μmであり、且つ、窒化後の面粗度がRz1.6以下であり、化合物層はγ’相またはγ’相とε相の混相であり、空隙比率が5%以下であることを特徴とする回転圧縮機用ベーンが開示されている。
国際公開第2016/153009号 特開2005-16386号公報
特許文献1の窒化または軟窒化部品では、化合物層の最表面から最下面(化合物層と拡散層の界面)中の空隙比率を抑制しているが、実際には空隙は鋼の表面~約3μmまでの領域に集中することが多く、この領域において空隙が多いと、良好な曲げ疲労強度が得られない。そのため、表面~3μmにおける空隙比率を抑制するための鋼の成分、窒化制御方法に改善の余地がある。
特許文献2の窒化部品では、化合物層が最小1μmと非常に薄く、ε相よりも低硬度のγ’相を主体とした相構造であるため、良好な耐摩耗性が得られない可能性がある。
本発明の目的は、良好な耐摩耗性に加え、回転曲げ疲労強度にも優れた部品及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは、軟窒化によって鋼材の表面に形成される化合物層の形態に着目し、疲労強度との関係を調査した。
その結果、成分を調整した鋼を、一定の雰囲気下で窒化ポテンシャル制御しながら軟窒化することにより、化合物層の表面側に生成される空隙を抑制し、化合物層の厚さを一定の範囲とし、化合物層の硬さを一定値以上とすることにより、優れた耐摩耗性、及び回転曲げ疲労強度を有する軟窒化部品を作製できることを見出した。
本発明は、上記の知見をもとに、さらに検討を重ねてなされたものであって、その要旨は以下のとおりである。
[1]組成が、質量%で、
C:0.05%~0.60%、
Si:0.05%~1.50%、
Mn:0.20%~2.50%、
P:0.025%以下、
S:0.050%以下、
Cr:0.50%~2.50%、
V:0.05%~1.30%、
Al:0.050%以下、
N:0.0030~0.0250%、
Mo:0~1.50%、
Cu:0~1.00%、
Ni:0~1.00%、
Nb:0~0.300%、
Ti:0~0.2500%、及び
B :0~0.0100%
を含有し、残部はFe及び不純物であり、
C、Mn、Cr、V、Moの含有量が式(1)を満たす鋼と、
上記鋼の表面に形成された、Fe、N、C及び上記鋼が含有する元素からなる厚さ3~20μmの化合物層を有し、
上記化合物層の硬さが740HV以上であり、
上記化合物層はε相を上記鋼の表面に垂直な断面における面積率で50%超含有し、残部がγ’相であり、
上記化合物層の表面から深さ3μmまでの領域において、面積換算による円相当径で0.3μm以上の空隙の上記鋼の表面に垂直な断面における積率が15%未満であることを特徴とするガス軟窒化処理部品。
0.00≦-2.1×C+0.04×Mn+0.5×Cr+1.8×V-1.5×Mo≦0.50 ・・・式(1)
ただし、式(1)中の元素記号は当該元素の含有量(質量%)を示し、含有しない場合は0を代入する。
[2]前記[1]のガス軟窒化処理部品を製造する方法であって、
組成が、質量%で、
C:0.05%~0.60%、
Si:0.05%~1.50%、
Mn:0.20%~2.50%、
P:0.025%以下、
S:0.050%以下、
Cr:0.50%~2.50%、
V:0.05%~1.30%、
Al:0.050%以下、
N:0.0030~0.0250%、
Mo:0~1.50%、
Cu:0~1.00%、
Ni:0~1.00%、
Nb:0~0.300%、
Ti:0~0.250%、及び
B :0~0.0100%
を含有し、残部はFe及び不純物であり、
C、Mn、Cr、V、Moの含有量が式(1)を満たす鋼材を
所定の形状に加工する工程と、
前記加工された鋼材にガス軟窒化処理を施す工程、とを有し、
前記ガス軟窒化処理は、CO2、CO、炭化水素ガスのうち少なくとも1種を含むガスを、式(2)で表す浸炭性ガス投入比率で2体積%以上10体積%未満含み、
残部はNH3、H2、N2及び不純物ガスであるガス雰囲気中において、
温度550℃以上630℃以下で、1時間以上10時間以下保持して行い、
前記ガス雰囲気は、式(3)によって求められる窒化ポテンシャルKNが0.15以上0.40以下であって
式(4)によって求められる上記窒化ポテンシャルKNの平均値KNaveが0.18以上0.30未満であることを特徴とするガス軟窒化処理部品の製造方法。
0.00≦-2.1×C+0.04×Mn+0.5×Cr+1.8×V-1.5×Mo≦0.50 ・・・式(1)
ただし、式(1)中の元素記号は当該元素の含有量(質量%)を示す。
浸炭性ガス投入比率(体積%)
=CO2、CO、炭化水素ガスの総投入流量(l/min)/雰囲気ガスの総投入流量(l/min)×100 ・・・式(2)
N=(NH3分圧)/[(H2分圧)3/2](atm-1/2) ・・・ 式(3)
Figure 0007295378000001
ただし、式(4)において、添字iは一定時間間隔毎の測定回を表し、X0は窒化ポテンシャルKNの測定間隔(時間)を、KNXiはガス軟窒化処理中のi回目の測定における窒化ポテンシャルKNを、Xは合計のガス軟窒化処理時間を示す。
本発明によれば、耐摩耗性に加え回転曲げ疲労強度に優れた軟窒化処理部品を得ることができる。
ローラピッティング試験用小ローラの形状を示す図である。なお、図中の寸法の単位は「mm」である。 ローラピッティング試験用大ローラの形状を示す図である。なお、図中の寸法の単位は「mm」である。 回転曲げ疲労試験用円柱試験片の形状を示す図である。なお、図中の寸法の単位は「mm」である。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
[鋼の成分]
鋼における各成分元素の含有量及び部品表面における元素の濃度の「%」は、特に断りのない限り「質量%」を意味する。
[C:0.05~0.60%]
Cは、化合物層中のε相を安定化させる他、部品の芯部硬さを確保するために必要な元素である。これらの効果を得るため、Cは0.05%以上が必要である。一方、Cの含有量が0.60%を超えると、素材となる棒鋼、線材や熱間鍛造後の硬さが高くなりすぎるため、切削加工性が大きく低下する。C含有量の好ましい範囲は0.08~0.55%である。
[Si:0.05~1.50%]
Siは、固溶強化によって、芯部硬さを高める元素である。また、高温による軟化抵抗を高めるため、部品が接触摩擦環境下で高温となる際に耐摩耗性を高める。これらの効果を発揮させるため、Siは0.05%以上が必要である。一方、Siの含有量が1.50%を超えると、素材となる棒鋼、線材や熱間鍛造後の硬さが高くなりすぎるため、切削加工性が大きく低下する。Si含有量の好ましい範囲は0.08~1.30%である。
[Mn:0.20~2.50%]
Mnは、軟窒化処理によって、化合物層や拡散層中に微細な軟窒化物(Mn)を形成し、耐摩耗性や曲げ疲労強度を高める元素である。また、固溶強化によって、芯部硬さを高める。これらの効果を得るため、Mnは0.20%以上が必要である。一方、Mnの含有量が2.50%を超えると、耐摩耗性や曲げ疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、素材となる棒鋼、線材や熱間鍛造後の硬さが高くなりすぎるため、切削加工性が大きく低下する。Mn含有量の好ましい範囲は0.40~2.30%である。
[P:0.025%以下]
Pは不純物であって、粒界偏析して部品を脆化させるので、含有量は少ない方が好ましい。Pの含有量が0.025%を超えると、耐摩耗性や曲げ疲労強度が低下する場合がある。耐摩耗性や曲げ疲労強度の低下を防止するためのP含有量の好ましい上限は0.018%である。Pの含有量は0でもよいが、完全に0とするのは難しく、0.001%以上含有してもよい。
[S:0.050%以下]
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、切削加工性を向上させる元素であるが、Sの含有量が0.050%を超えると、粗大なMnSを生成しやすくなり、耐摩耗性や曲げ疲労強度が大きく低下する。耐摩耗性や曲げ疲労強度の低下を防止するためのS含有量の好ましい上限は0.030%である。Sの含有量は0でもよいが、完全に0とするのは難しく、0.001%以上含有してもよい。
[Cr:0.50~2.50%]
Crは、軟窒化処理によって、化合物層や拡散層中に微細な軟窒化物(CrN)を形成し、耐摩耗性や曲げ疲労強度を高める元素である。これらの効果を得るため、Crは0.50%以上が必要である。一方、Crの含有量が2.50%を超えると、耐摩耗性や曲げ疲労強度を向上させる効果が飽和するだけでなく、素材となる棒鋼、線材や熱間鍛造後の硬さが高くなりすぎるため、切削加工性が著しく低下する。Cr含有量の好ましい範囲は0.70~2.00%である。
[V:0.05~1.30%]
Vは、軟窒化処理によって、化合物層や拡散層中に微細な軟窒化物(VN)を形成し、耐摩耗性や曲げ疲労強度を高める元素である。これらの効果を得るため、Vは0.05%以上が必要である。一方、Vの含有量が1.30%を超えると、耐摩耗性や曲げ疲労強度を向上させる効果が飽和するだけでなく、素材となる棒鋼、線材や熱間鍛造後の硬さが高くなりすぎるため、切削加工性が著しく低下する。V含有量の好ましい範囲は0.10~1.10%である。
[Al:0.050%以下]
Alは、脱酸元素である。また、Nと結合してAlNを形成し、オーステナイト粒のピンニング作用により、軟窒化処理前の鋼材の組織を微細化し、軟窒化処理部品の機械的特性のばらつきを低減する効果を持つ。この効果を得るためには、0.005%以上が必要である。一方で、Alは硬質な酸化物系介在物を形成しやすく、Alの含有量が0.050%を超えると、曲げ疲労強度の低下が著しくなり、他の要件を満たしていても所望の曲げ疲労強度が得られなくなる。曲げ疲労強度の低下を防止するためのAl含有量の好ましい上限は0.040%である。Alの含有量は0でもよい。
[N:0.0030~0.0250%]
Nは、Mn、Cr、Al、Vと結合してMn、CrN、AlN、VNを形成する。中でも窒化物形成傾向の高いAl、Vはオーステナイト粒のピンニング作用により、軟窒化処理前の鋼材の組織を微細化し、軟窒化処理部品の機械的特性のばらつきを低減する効果を持つ。Nの含有量が0.0030%未満ではこの効果は得難い。一方で、Nの含有量が0.0250%を超えると、粗大なAlNやVNが形成されやすくなるため、上記の効果は得難くなる。N含有量の好ましい上限は0.0200%である。Nの含有量は0でもよい。
本発明の軟窒化処理部品の素材となる鋼の化学成分は、上記の元素を含有し、残部はFe及び不純物である。不純物とは、原材料に含まれる、あるいは製造の過程で混入する成分であり、意図的に鋼に含有させたものではない成分のことをいう。不純物とは、例えば、0.05%以下のPb、Bi、Te、Sn、0.01%以下のCa、W、Co、As、Mg、Zr、In、REM等である。Pb,Bi,Te,Snは被削性を向上させる目的で、0.30%以下を添加しても大きな影響はない。
ただし、本発明の軟窒化処理部品の素材となる鋼は、Feの一部に代えて、以下に示す元素を含有してもよい。
[Mo:0~1.50%]
Moは、化合物層中のε相を安定化させ、また、化合物層や拡散層中に微細な窒化物(MoN)を形成し、硬さを高めるため、耐摩耗性や曲げ疲労強度の向上に有効な元素である。これらの効果を確実に得るため、Moは0.01%以上の含有が好ましい。一方、Moの含有量が1.50%超であると、素材となる棒鋼、線材や熱間鍛造後の硬さが高くなりすぎるため、切削加工性が著しく低下する他、合金コストが増大する。Mo含有量のさらに好ましい下限は0.05%であり、好ましい上限は1.20%未満である。
[Cu:0~1.00%]
Cuは、固溶強化元素として部品の芯部硬さならびに窒素拡散層の硬さを向上させる。Cuの固溶強化の作用を確実に発揮させるためには0.01%以上の含有が好ましい。一方、Cuの含有量が1.00%超であると、素材となる棒鋼、線材や熱間鍛造後の硬さが高くなりすぎるため、切削加工性が著しく低下する他、熱間延性が低下するため、熱間圧延時、熱間鍛造時に表面傷発生の原因となる。熱間延性維持のためのCu含有量のさらに好ましい下限は0.05%であり、好ましい上限は0.90%未満である。
[Ni:0~1.00%]
Niは、固溶強化により芯部硬さ及び表面硬さを向上させる。Niの固溶強化の作用を確実に発揮させるためには0.01%以上の含有が好ましい。一方、Niの含有量が1.00%超であると、棒鋼、線材や熱間鍛造後の硬さが高くなりすぎるため、切削加工性が著しく低下する他、合金コストが増大する。十分な切削加工性を得るためのNi含有量の好ましい下限は0.05%であり、好ましい上限は0.90%未満である。
[Nb:0~0.300%]
Nbは、窒化時に鋼の表層に侵入したNや、母相のCと結合し、微細な窒化物や炭窒化物を形成することで表面硬さや芯部硬さを向上させる。この効果を確実に発揮させるためには0.010%以上の含有が好ましい。一方、Nbの含有量が0.300%超では、粗大な窒化物、炭窒化物が生成し、鋼中の固溶C、N量が増加しないため、効果が飽和する。Nb含有量のさらに好ましい下限は0.015%であり、好ましい上限は0.250%未満である。
[Ti:0~0.250%]
Tiは、窒化時に鋼の表層に侵入したNや、母相のCと結合し、微細な窒化物や炭窒化物を形成することで表面硬さや芯部硬さを向上させる。この効果を確実に発揮させるためには0.005%の含有が好ましい。一方、Tiの含有量が0.2500%超では、粗大な窒化物、炭窒化物が生成し、鋼中の固溶C、N量が増加しないため、効果が飽和する。Ti含有量のさらに好ましい下限は0.007%であり、好ましい上限は0.200%である。
[B:0~0.0100%]
固溶Bは、Pの粒界偏析を抑制し、靭性を向上させる効果を持つ。また、Nと結合して析出するBNは、切削性を向上させる。これらの作用を確実に得るため、Bは0.0005%(5ppm)以上とすることが好ましい。一方、Bの含有量が0.0100%を超えると、上記効果が飽和するだけでなく、多量なBNが偏析することで鋼材に割れが生じることがある。B含有量のさらに好ましい下限は0.0008%であり、好ましい上限は0.0080%である。
[0.00≦-2.1×C+0.04×Mn+0.5×Cr+1.8×V-1.5×Mo≦0.50]
本発明の軟窒化処理部品の成分は、さらに、C、Mn、Cr、V、Moの含有量(質量%)が以下の式(1)を満たすとよい。
0.00≦-2.1×C+0.04×Mn+0.5×Cr+1.8×V-1.5×Mo≦0.50 ・・・式(1)
ただし、式(4)中の元素記号は当該元素の含有量(質量%)を示し、含有しない場合は0を代入する。
C、Mn、Cr、VおよびMoは、化合物層の厚さに影響を及ぼす元素である。C及びMoにはε相を安定化させ、厚さを高める効果がある。一方Mn、CrおよびVには、化合物層を薄くする効果がある。そのため、これらの元素の含有量を一定の範囲に制御することで、化合物層の厚さを安定して制御でき、耐摩耗性および曲げ疲労強度を向上させることができる。
これらの効果を得るため、式(1)中の{-2.1×C+0.04×Mn+0.5×Cr+1.8×V-1.5×Mo}の値は0.00以上であるとよい。一方、{-2.1×C+0.04×Mn+0.5×Cr+1.8×V-1.5×Mo}の値が0.50を超えると、化合物層が薄くなり、所望の面疲労強度及び曲げ疲労強度が得られないことがある。{-2.1×C+0.04×Mn+0.5×Cr+1.8×V-1.5×Mo}の値の好ましい下限は0.03%であり、好ましい上限は0.45%である。
次に、本発明の軟窒化処理部品の化合物層について説明する。
本発明にかかる軟窒化処理部品は、鋼材を素形材に加工したうえで、所定の条件下で軟窒化処理を行うことによって製造される。本発明にかかる軟窒化処理部品は、鋼芯部と、鋼芯部の上に形成された窒素拡散層と、窒素拡散層の上に形成された化合物層とを備える。すなわち、本発明にかかる軟窒化処理部品は、表面に化合物層があり、化合物層の内側に窒素拡散層があり、窒素拡散層の内側に鋼芯部がある構造を有する。
化合物層は、窒化処理により鋼に侵入した窒素原子と、素材に含まれる鉄原子とが結合して形成した鉄窒化物を主として含む層である。化合物層は主として鉄窒化物により構成されるが、鉄及び窒素のほかに、素材の鋼材に含有されている各元素(すなわち、鋼芯部に含有される各元素)も化合物層に含まれる。一般に、化合物層に含まれる元素の90%以上(質量%)は窒素および鉄である。化合物層に含まれる鉄窒化物は、FeN~FeN(ε相)若しくはFeN(γ’相)である。
[化合物層の厚さ:3μm以上20μm以下]
化合物層の厚さは、軟窒化処理部品の耐摩耗性や曲げ強度に影響する。化合物層は拡散層に比べ変形能が小さいため、化合物層が厚すぎると、曲げによる破壊起点となりやすい。また、化合物層が薄すぎると、一部化合物層のない表面が存在する場合があり、耐摩耗性や曲げ強度が低下する。本発明の軟窒化処理部品においては、耐摩耗性や曲げ強度の観点から、化合物層の厚さは3μm以上20μm以下とする。化合物層厚さの好ましい範囲は5μm以上15μm以下である。
化合物層の厚さは、走査型電子顕微鏡(Scannnig Electron Microscope:SEM)によって測定することができる。ガス軟窒化処理した部品の垂直断面を研磨し、3%ナイタール溶液で20~30秒間エッチングを行う。化合物層は、鋼の表層に白い未腐食の層として観察される。4000倍で撮影した組織写真10視野(1視野当たりの面積:6.6×10μm)から化合物層を観察し、それぞれ水平方向に10μm毎に3点で化合物層の厚さを測定する。前記10視野は、互いに重複しないように測定される。そして、測定された30点の平均値を化合物層厚さ(μm)と定義する。
[化合物層中のε相の面積率:50%超]
化合物層の構成相は、軟窒化処理部品の耐摩耗性や曲げ強度に影響する。ε相はhcp構造であり、fcc構造であるγ’相に比べ変形能が小さい。一方で、ε相はγ’相に比べ、NおよびCの固溶範囲が広く、高硬度である。ε相の面積率が低いと、化合物層の硬さが小さくなりやすく、耐摩耗性が低下することがある。本発明の軟窒化処理部品においては、化合物層中のε相の面積率は50%超とする。ε相の面積率の好ましい範囲は70%超である。
ε相の面積率は、組織写真を画像処理することにより求める。具体的には、後方散乱電子回折法(Electron BackScatter Diffraction:EBSD)により、4000倍で撮影した窒化処理部品の表面に垂直な断面の組織写真10枚に対して、化合物層中のγ’相、ε相を判別し、化合物層中に占めるε相の面積率を、画像処理により2値化して求める。そして、測定された10視野のε相の面積率の平均値を、ε相の面積率(%)と定義する。
[化合物層表層の空隙面積率:15%未満]
表面から3μmの深さの範囲の化合物層に空隙が存在すると応力集中が生じ、耐摩耗性が低下したり、曲げ疲労における破壊の起点となる。そのため、空隙面積率は15%未満とする必要がある。
空隙面積率は、SEMによって測定することができる。窒化処理部品の表面に垂直な断面において最表面から3μmまでの深さと最表面に沿った長さ30μmとの積からなる長方形の領域(面積90μm)の視野中に占める空隙の総面積の比(空隙面積率、単位は%)を、画像処理アプリケーションにより求める。そして、測定された10視野の平均値を、空隙面積率(%)と定義する。化合物層が3μm未満の場合においても、同様に表面から3μm深さまでを測定対象とする。前記10視野は、互いに重複しないように測定される。測定する空隙の大きさは、面積換算による円相当径で0.3μm以上のものを対象とするとよい。
空隙面積率は好ましくは12%未満、より好ましくは7%未満であり、さらに好ましくは3%未満であり、0であることが最も好ましい。
[化合物層の硬さ:740HV以上]
化合物層の硬さが高くなると、部品の耐摩耗性や回転曲げ疲労強度が向上する。化合物層の硬さは、ε相の面積率を高めたり、CrNやVNなどの窒化物を化合物層中に析出させたり、置換型元素を化合物層に固溶させることで高めることができる。その一方で窒化温度によっても変化する。本発明の軟窒化処理部品は、化合物層の硬さを740HV以上とすることにより、優れた耐摩耗性、回転曲げ疲労強度を有するものとなる。化合物層の硬さは、好ましくは770HV以上である。
次に、本発明の軟窒化処理部品の製造方法の一例を説明する。
本発明に係る鋼部品は、前記の成分を有する鋼材を熱間鍛造などの加工によって所定の形状とし、必要に応じて切削加工や研削加工を施した後(説明の便宜上、この状態のものを以下「鋼材」と呼ぶ)で、ガス軟窒化処理を施して製造することができる。
[ガス軟窒化処理]
ガス軟窒化処理は、NH、H、Nに加え、鋼の表面にCを侵入させる目的でCO、CO、もしくはCHやCなどの炭化水素ガスを合計で99体積%以上含むガス雰囲気中で窒化ポテンシャルを制御した条件で施される。なお、残部は不可避的にO2などの不純物を含んでもよい。好ましくは、NH、H、N、CO、CO、CH、Cが合計で99.5体積%以上であるとよい。
[処理温度:550~630℃]
ガス軟窒化処理の温度は、主に、窒素の拡散速度と相関があり、表面硬さ及び硬化層深さに影響を及ぼす。処理温度が低すぎれば、窒素の拡散速度が小さく、化合物層の厚さや硬化層深さが小さくなる。一方、軟窒化処理温度が高すぎると化合物層表面側から空隙が生成されやすくなる他、化合物層の硬さが低下する。加えて、処理温度がAC1点を超えれば、フェライト相(α相)よりも窒素の拡散速度が小さいオーステナイト相(γ相)が化合物層と拡散層の界面から生成され、硬化層深さが浅くなる。したがって、本実施形態における軟窒化処理温度はフェライト温度域周囲の550~630℃である。この場合、化合物層の硬さが低くなるのを抑制でき、かつ、硬化層深さが浅くなるのを抑制できる。
[ガス窒化処理全体の処理時間(保持時間)]
ガス軟窒化処理全体の時間、つまり、軟窒化処理の開始から終了までの時間(保持時間)は、化合物層の形成及び分解と窒素の拡散浸透と相関があり、表面硬さ及び硬化層深さに影響を及ぼす。処理時間が短すぎると化合物層の厚さや、硬化層深さが小さくなる。一方、処理時間が長すぎれば、化合物層表面の空隙面積率が増加し、曲げ疲労強度が低下する。処理時間が長すぎればさらに、製造コストが高くなる。したがって、ガス軟窒化処理の処理時間(保持時間)は1時間以上10時間以下であるとよい。保持時間の下限は、好ましくは1.5時間、さらに好ましくは2.0時間にするとよい。
[ガス軟窒化処理における浸炭性ガスの投入比率]
本発明におけるガス軟窒化処理では、CO、CO、若しくはCHやCなどの炭化水素ガスのうち、少なくとも1種を含む単独もしくは混合ガスを、式(2)で示す浸炭性ガス投入比率(%)で管理する。
浸炭性ガス投入比率(体積%)
=CO、CO、及び炭化水素ガスの総投入流量(l/min)/雰囲気ガスの総投入流量(l/min)×100 ・・・式(2)
浸炭性ガス投入比率が2%未満だと、均一なε相が形成されず、耐摩耗性が下がることがある。一方、浸炭性ガス投入比率が10%以上だと、相対的にNH、Hなどの窒化反応ガスの分圧が低くなることで、化合物層の生成速度が小さくなり、化合物層が薄くなったり、化合物層厚さのバラつきが大きくなることで耐摩耗性や曲げ疲労強度が低下する。したがって本発明における浸炭性ガスの投入比率は、2%以上10%未満とする。
なお、浸炭性ガスの投入比率の好ましい範囲は、3%以上9%未満であり、より好ましくは4%以上8%未満である。
[ガス軟窒化処理における窒化ポテンシャル]
本発明の軟窒化処理方法では、窒化ポテンシャルを制御する。上述した鋼材を以下の条件で軟窒化することにより、厚さ3~20μmの化合物層を有し、上記化合物層の表面から深さ3μmまでの領域において空隙の面積率が15%未満のガス軟窒化処理部品を得ることができる。
ガス軟窒化処理の窒化ポテンシャルKは下記式(3)で定義される。
=(NH分圧)/[(H分圧)3/2](atm-1/2) ・・・ 式(3)
また、窒化ポテンシャルKの平均値KNaveは下記式(4)で定義される。
Figure 0007295378000002
ここで、式(4)において、添字iは一定時間間隔毎の測定回を表し、Xは窒化ポテンシャルKの測定間隔(時間)、KNXiは窒化処理中のi回目の測定における窒化ポテンシャルKを、Xは合計の窒化処理時間(例えば、Xの等間隔で測定した場合はX×iになる。)を示す。
ガス軟窒化処理の雰囲気のNH及びHの分圧は、ガスの流量を調整することにより制御することができる。
本発明者らの検討の結果、ガス軟窒化処理の窒化ポテンシャルは、化合物層の厚さ、空隙面積率に影響し、最適な窒化ポテンシャルは、式(3)によって求められる下限及び上限がそれぞれ0.15及び0.40であり、式(4)によって求められる平均が0.18以上0.30未満であることを見出した。
このように、本発明における成分系の鋼を軟窒化する場合、軟窒化処理条件を複雑にすることなく、安定的に厚さ3~20μmの化合物層を有し、表面から深さ3μmまでの領域において空隙の面積率が15%以下で、硬さが740HV以上の化合物層を有するガス軟窒化処理部品とすることができる。
表1に示す化学成分を有する鋼a~zを、50kg真空溶解炉で溶解して溶鋼を製造し、前記溶鋼を鋳造してインゴットを製造した。なお、表2-1及び表2-2中のa~rは、本発明で規定する化学成分を有する鋼である。一方、鋼s~zは、少なくとも1元素以上、本発明で規定する化学成分から外れた比較例の鋼である。尚、表1において、「式(1)」は、“-2.1×C+0.04×Mn+0.5×Cr+1.8×V-1.5×Mo”の値を示す。また、下線は本発明の範囲外の組成であることを示し、空欄は合金元素を意図的に添加しないことを示す。また、表1に示す鋼a~zの組成のうち、表1に示す成分以外の成分(残部)は、Fe及び不純物である。
Figure 0007295378000003
前記鋼a~zのそれぞれのインゴットを熱間鍛造して直径40mmの丸棒とした。続いて、各丸棒を焼鈍した後、切削加工を施し、図1に示す耐摩耗性を評価するためのローラピッティング試験用の小ローラ、図2に示す大ローラを作製した。さらに、図3に示す回転曲げ疲労強度を評価するための円柱試験片を作製した。
採取された試験片に対して、次の条件でガス軟窒化処理を実施した。試験片をガス軟窒化炉に装入し、炉内にNH、H、N、COの各ガスを導入して、表2-1及び表2-2に示す条件で軟窒化処理を実施した。なお、COガスの投入比率が一定となるよう、NH、H、Nガスの総投入流量およびCOガスの投入流量は処理中に変化させないようにした。軟窒化処理後の試験片に対して、80℃の油を用いて油冷を実施した。
雰囲気中のH分圧は、ガス軟窒化炉体に直接装着した熱伝導式Hセンサを用いて測定した。標準ガスと測定ガスとの熱伝導度の違いをガス濃度に換算して測定した。H分圧は、ガス軟窒化処理の間、継続して測定した。
また、NH分圧は、炉外に取り付けたガラス管式NH分析計を用いて、10分毎に測定した。
窒化ポテンシャルKが目標値に収束するように、NH流量、H流量及びN流量を調整した。10分毎に窒化ポテンシャルKを記録し、処理中の最小値、最大値および平均値を導出した。
Figure 0007295378000004
Figure 0007295378000005
[化合物層厚さ及び空隙面積率の測定]
ガス軟窒化処理後の小ローラの、長手方向に垂直な方向の断面を鏡面研磨し、エッチングした。走査型電子顕微鏡(Scannnig Electron Microscope:SEM)、日本電子社製;JSM-7100F)を用いてエッチングされた断面を観察し、化合物層厚さの測定及び化合物層表層の空隙の有無の確認を行った。エッチングは、3%ナイタール溶液で20~30秒間行った。
化合物層は、鋼の表層に存在する白い未腐食の層として確認可能である。4000倍で撮影した組織写真10視野(視野面積:6.6×10μm)から化合物層を観察し、それぞれ10μm毎に3点の化合物層の厚さを測定した。そして、測定された30点の平均値を、化合物厚さ(μm)と定義した。
同様に、最表面から3μm深さの範囲の面積90μm中に占める空隙の総面積の比(空隙面積率、単位は%)を、画像処理アプリケーション(日本電子社製;AnalysisStation)により求めた。そして、測定された10視野の平均値を、空隙面積率(%)と定義した。化合物層が3μm未満の場合においても、同様に表面から3μm深さまでを測定対象とした。
[化合物層の硬さ]
化合物層の硬さは、ナノインデンテーション装置(Hysitron社製;TI950)により、次の方法で測定した。化合物層の厚さ方向中央近傍位置において、圧子を押込み荷重10mNにてランダムに50点押し込むことによって、得られた荷重-変位曲線からビッカース硬さHVを測定した。圧子は三角錐(バーコビッチ)形状であり、硬さ導出はISO14577-1に準拠し、ナノインデンテーション硬さHITからビッカース硬さHVへの換算を、次式により行った。
HV=0.0924×HIT(MPa)
測定した50点の平均値を、化合物層の硬さ(HV)と定義した。
[耐摩耗性評価試験]
耐摩耗性は、ローラピッティング試験機(小松設備社製;RP102)により、次の方法で評価した。ローラピッティング試験用小ローラを、熱処理ひずみを除く目的で掴み部の仕上げ加工を行った後、それぞれローラピッティング試験片に供した。仕上げ加工後の形状を図1に示す。
ローラピッティング試験は、上記のローラピッティング試験用小ローラと図2に示す形状のローラピッティング試験用大ローラの組み合わせで、表4に示す条件で行った。
なお、図1、2における寸法の単位は「mm」である。上記ローラピッティング試験用大ローラは、JIS G 4053(2016)のSCM420規格を満たす鋼を用いて、一般的な製造工程、つまり「焼きならし→試験片加工→ガス浸炭炉による共析浸炭→低温焼戻し→研磨」の工程によって作製した後、表面に微細な凹凸を付与する目的で、粒子径が0.8mmの鋼球を用いて投射圧0.2MPaのショットピーニング処理を行ったものであり、表面から0.05mmの位置、すなわち、深さ0.05mmの位置におけるビッカース硬さHVは740~760で、また、ビッカース硬さHvが550以上の深さは、0.8~1.0mmの範囲にあった。
表3に、耐摩耗性の評価を行った試験条件を示す。試験は繰返し数5×106回で打ち止めし、粗さ計を使用して、小ローラの摩耗部を主軸方向に沿って走査し、最大摩耗深さを測定し、N数を5として摩耗深さの平均値を算出した。本発明部品においては、摩耗深さが10μm以下であることを目標とした。
Figure 0007295378000006
[回転曲げ疲労強度評価試験]
ガス軟窒化処理に供した円柱試験片に対し、JIS Z 2274(1978)に準拠した小野式回転曲げ疲労試験を実施した。回転数は3000rpm、試験打ち切り回数は、一般的な鋼の疲労限を示す1×10回とし、回転曲げ疲労試験片において、破断が生じずに1×10回に達した最大応力を回転曲げ疲労試験片の疲労限とした。
本発明部品においては、疲労限における最大応力が500MPa以上であることを目標にした。
[試験結果]
結果を表2-1及び表2-2に示す。試験番号1~26は、鋼の成分及びガス軟窒化処理の条件が本発明の範囲内であり、化合物厚さが3μm以上20μm以下、化合物層空隙面積率が15%未満、化合物層の硬さが740MPa以上となった。その結果、摩耗深さが10μm未満、回転曲げ疲労強度が500MPa以上と良好な結果が得られた。
試験番号27~44は、鋼の成分、およびガス軟窒化処理の条件の一部が本発明の範囲外であり、化合物層の厚さ、ε相の面積率、空隙面積率、硬さのうちいずれか、もしくは複数の特性が、本発明における目標値に届かなかった。その結果、耐摩耗性もしくは回転曲げ疲労強度が本発明の目標を満たさなかった。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示にすぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
本発明によれば、耐摩耗性に加え回転曲げ疲労強度に優れた軟窒化処理部品とその製造方法を提供することができ、特に耐摩耗性及び曲げ疲労強度に優れる連続可変トランスミッション(CVT)、カムシャフト部品等を提供することができる。

Claims (2)

  1. 組成が、質量%で、
    C:0.05%~0.60%、
    Si:0.05%~1.50%、
    Mn:0.20%~2.50%、
    P:0.025%以下、
    S:0.050%以下、
    Cr:0.50%~2.50%、
    V:0.05%~1.30%、
    Al:0.050%以下、
    N:0.0030~0.0250%、
    Mo:0~1.50%、
    Cu:0~1.00%、
    Ni:0~1.00%、
    Nb:0~0.300%、
    Ti:0~0.2500%、及び
    B :0~0.0100%
    を含有し、残部はFe及び不純物であり、
    C、Mn、Cr、V、Moの含有量が式(1)を満たす鋼と、
    上記鋼の表面に形成された、Fe、N、C及び上記鋼が含有する元素からなる厚さ3~20μmの化合物層を有し、
    上記化合物層の硬さが740HV以上であり、
    上記化合物層はε相を上記鋼の表面に垂直な断面における面積率で50%超含有し、残部がγ’相であり、
    上記化合物層の表面から深さ3μmまでの領域において、面積換算による円相当径で0.3μm以上の空隙の上記鋼の表面に垂直な断面における面積率が15%未満であることを特徴とするガス軟窒化処理部品。
    0.00≦-2.1×C+0.04×Mn+0.5×Cr+1.8×V-1.5×Mo≦0.50 ・・・式(1)
    ただし、式(1)中の元素記号は当該元素の含有量(質量%)を示し、含有しない場合は0を代入する。
  2. 請求項1に記載のガス軟窒化処理部品を製造する方法であって、
    組成が、質量%で、
    C:0.05%~0.60%、
    Si:0.05%~1.50%、
    Mn:0.20%~2.50%、
    P:0.025%以下、
    S:0.050%以下、
    Cr:0.50%~2.50%、
    V:0.05%~1.30%、
    Al:0.050%以下、
    N:0.0030~0.0250%、
    Mo:0~1.50%、
    Cu:0~1.00%、
    Ni:0~1.00%、
    Nb:0~0.300%、
    Ti:0~0.250%、及び
    B :0~0.0100%
    を含有し、残部はFe及び不純物であり、
    C、Mn、Cr、V、Moの含有量が式(1)を満たす鋼材を
    所定の形状に加工する工程と、
    前記加工された鋼材にガス軟窒化処理を施す工程、とを有し、
    前記ガス軟窒化処理は、CO2、CO、炭化水素ガスのうち少なくとも1種を含むガスを、式(2)で表す浸炭性ガス投入比率で2体積%以上10体積%未満含み、
    残部はNH3、H2、N2及び不純物ガスであるガス雰囲気中において、
    温度550℃以上630℃以下で、1時間以上10時間以下保持して行い、
    前記ガス雰囲気は、式(3)によって求められる窒化ポテンシャルKNが0.15以上0.40以下であって
    式(4)によって求められる上記窒化ポテンシャルKNの平均値KNaveが0.18以上0.30未満であることを特徴とするガス軟窒化処理部品の製造方法。
    0.00≦-2.1×C+0.04×Mn+0.5×Cr+1.8×V-1.5×Mo≦0.50 ・・・式(1)
    ただし、式(1)中の元素記号は当該元素の含有量(質量%)を示す。
    浸炭性ガス投入比率(体積%)
    =CO2、CO、炭化水素ガスの総投入流量(l/min)/雰囲気ガスの総投入流量(l/min)×100 ・・・式(2)
    N=(NH3分圧)/[(H2分圧)3/2](atm-1/2) ・・・ 式(3)
    Figure 0007295378000007
    ただし、式(4)において、添字iは一定時間間隔毎の測定回を表し、X0は窒化ポテンシャルKNの測定間隔(時間)を、KNXiはガス軟窒化処理中のi回目の測定における窒化ポテンシャルKNを、Xは合計のガス軟窒化処理時間を示す。
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