JP2015117412A - 窒化処理方法及び窒化部品 - Google Patents

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Keiichiro Kamiya
啓一郎 神谷
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Abstract

【課題】安価で一般的な材料である中炭素鋼から成る部品であっても、効果高く疲労強度を向上させ得る窒化処理方法を提供する。【解決手段】質量%でC:0.25〜0.50%,Si:0.01〜0.30%,Mn:0.40〜1.00%,P:0.030%以下,S:0.070%以下,Cu:0.60%以下,Ni:0.50%以下,Cr:0.10〜0.50%,Mo:0.05%以下,Ti:0.020%以下,s-Al:0.020%以下,N:0.020%以下,O:0.020%以下,残部Fe及び不可避的不純物の組成を有する中炭素鋼にて構成した部品を処理対象として、炉内でアンモニアガスをN供給源として窒化を行い、窒化に際して窒化ポテンシャルKNを制御することで該窒化により生成する表層の化合物層におけるγ′相の比率を30モル%以上とする。【選択図】 なし

Description

この発明は中炭素鋼から成る部品を対象とした窒化処理方法及び窒化部品に関する。
鋼部品の表面改質方法として、アンモニアガスを窒素の供給源とするガス窒化及びガス軟窒化処理が有用な方法として広く行われている。
ここでガス窒化処理では、窒素の供給源としてアンモニアガスを、ガス軟窒化処理ではアンモニアガスとC供給源となるガス(一般にはCO又はCOの単独若しくは混合ガス)との混合ガスを用い、これを炉内で鋼部品に作用させる。
これらの窒化処理は、他の表面改質方法である浸炭焼入れや高周波焼入れ等と異なって変態を伴わず、処理温度も低いことから熱処理歪み,寸法変化が小さく、また表層に鉄窒化物である化合物層が生じることで耐摩耗性,耐焼付性,耐食性の向上が期待できる。
また窒化処理では、鉄窒化物層である化合物層に起因する圧縮残留応力の付加と、その直下の窒素拡散層(以下単に拡散層とする)における窒素の浸入(ガス軟窒化処理では炭素の浸入も加わる)による硬さ上昇によって、疲労強度を向上させることができる。
従来この種の窒化処理は、窒素と親和力の大きいAl,Cr,Mo,V等の元素を添加して成る窒化鋼に対して、詳しくは窒化鋼にて構成した部品に対して行われてきた。
このような窒化鋼にて構成した部品に対して窒化処理を行うと、添加元素の窒化物の分散析出により表層を効果的に硬化することができる。
しかしながら窒化鋼は高価なCrとかMoとかV等の元素を添加した価格の高い高級な材料であり、その適用の範囲は限られてしまう。
こうしたことからJIS S30Cのような値段の安い一般的な市販の炭素鋼を用いた部品に対して窒化処理を施すことで疲労強度を高めることも従来行われている。
しかしながらこの種の炭素鋼から成る部品に対する窒化処理では、疲労強度の十分な向上を得ることが難しいのが実情であった。
従来、窒化処理によって疲労強度を向上させる方法として、処理時間を長くする、或いは数段階の処理温度で軟窒化することで窒素の拡散を促進し、拡散層の硬さを向上させる方法や、処理の前若しくは後にショットピーニングを施して表層に大きな圧縮残留応力を付加する方法、又はガス流量や温度を制御することで化合物層を薄くして、切欠感受性を下げる方法等が提案されている。
例えば下記特許文献1には、2段階の処理温度で軟窒化する点が開示されている。
また下記特許文献2には、窒化処理の後にショットピーニングを施して表層に大きな圧縮残留応力を付加する点が開示されている。
更に下記特許文献3には、熱処理(窒化処理)の初期過程で窒化ガス中に水素を添加することで化合物層を薄くし、切欠感受性を下げる点が開示されている。
しかしながらこれらの手法は、炭素鋼にて構成した部品の疲労強度を向上させる上で未だ不十分であり、加えてこれらの手法では、工程の追加や複雑化によるコストの上昇が避けられない問題がある。
特開2011−252197号公報 特開平07−286256号公報 特開2005−272884号公報
本発明は以上のような事情を背景とし、安価で一般的な材料である中炭素鋼から成る部品であっても、効果高く疲労強度を向上させ得る窒化処理方法及び窒化部品を提供することを目的としてなされたものである。
而して請求項1は窒化処理方法に関するもので、質量%でC:0.25〜0.50%,Si:0.01〜0.30%,Mn:0.40〜1.00%,P:0.030%以下,S:0.070%以下,Cu:0.60%以下,Ni:0.50%以下,Cr:0.10〜0.50%,Mo:0.05%以下,Ti:0.020%以下,s-Al:0.020%以下,N:0.020%以下,O:0.020%以下,残部Fe及び不可避的不純物の組成を有する中炭素鋼にて構成した部品を処理対象として、炉内でアンモニアガスをN供給源として窒化を行い、該窒化に際して窒化ポテンシャルKを制御することで該窒化により生成する表層の化合物層におけるγ′相の比率を30モル%以上とすることを特徴とする。
請求項2は窒化部品に関するもので、質量%でC:0.25〜0.50%,Si:0.01〜0.30%,Mn:0.40〜1.00%,P:0.030%以下,S:0.070%以下,Cu:0.60%以下,Ni:0.50%以下,Cr:0.10〜0.50%,Mo:0.05%以下,Ti:0.020%以下,s-Al:0.020%以下,N:0.020%以下,O:0.020%以下,残部Fe及び不可避的不純物の組成を有する中炭素鋼にて構成した窒化部品であって、窒化により生成する表層の化合物層におけるγ′相の比率が30モル%以上であることを特徴とする。
ガス窒化若しくはガス軟窒化処理後の窒化部品の疲労強度は、窒化によって付加される圧縮残留応力を大きくすることで、高強度化できると考えられる。
そこで本発明者は、窒化処理材における表層の窒化処理組織の性状が、圧縮残留応力に及ぼす影響を調べたところ、鉄窒化物から成る化合物層の厚み(後述のポーラス層を除いた部分の厚み)の増加に伴い圧縮残留応力が大きくなること、また化合物層におけるγ′相の比率が大きいほど、圧縮残留応力が大きくなることを確認した。
窒化により生成する表層の化合物層は、主としてε-Fe2〜3N(ε相)とγ′-FeN(γ′相)とから成るが、化合物層に占めるγ′相の量比が大きいほど圧縮残留応力が大きくなることを見出したのである。
このことからすればγ′相の量比を大きくすれば窒化部品の疲労強度が高まることが期待できる。実際に本発明者がγ′相の量比と疲労強度との関係を調べたところ、γ′相の量比を大きくすることで疲労強度が効果的に高まることを確認した。
尚、窒化により生成するε-Fe2〜3N(ε相)と、γ′-FeN(γ′相)との量比の制御は、炉内の窒化ポテンシャルKの制御によって行うことができる。
窒化処理材の組織制御については、処理雰囲気と平衡する鋼の状態がLehrerらによって報告されており(Z.f.Electrochem.,36(1930),6,383.)、炉内での窒化反応は以下の式(1)で表され、また窒化ポテンシャルKが以下の式(2)で定義されている。
NH→(N)+3/2H・・式(1)
=PNH3/PH2 3/2・・式(2)
このKを制御することによってε相(Fe2〜3N),γ′相(FeN),鉄窒化物が生じない状態を選択することができる。
ここでKの制御ないし管理は、次のようにして行うことができる。
即ち炉内の水素分圧PH2を水素センサ等で測定し、そして炉内へのNHの供給量をコントロールし、炉内のアンモニア分圧PNH3を調整することで、窒化ポテンシャルKを目標とする値に制御することができる。
本発明の窒化処理では、Kを制御することによって化合物層におけるγ′相の量比を30%以上とする。
これにより中炭素鋼部品に対し従来の窒化処理に増して大きな圧縮残留応力を付加することができ、またこれによって窒化部品の疲労強度を従来に増して高強度とすることができる。
また本発明によれば、中炭素鋼から成る部品に窒化処理を施すに当り、処理前後の特別な工程の追加や、複雑な処理条件を必要としないで、コストを大きく上げることなく窒化部品の疲労強度を高めることができる。
尚、γ′相はε相に比べて圧縮残留応力が大であり、従ってγ′相の量比を30%を超え多くするに連れて化合物層全体の圧縮残留応力が大となって望ましいが、γ′相の量比が過大になると圧縮残留応力は大となるものの、化合物層における硬さが低下してしまう。γ′相はε相に比べて硬さが軟らかいからである。
窒化処理の目的の一つには、硬質の化合物層を表面に生じさせることで耐摩耗性を得ることがあり、この点でその硬さが低下してしまうことは望ましくない。この意味においてγ′相の量比は60%以下としておくことが望ましい。
本発明では、窒化処理に際して炉内のKを制御することによって化合物層におけるγ′相の量比を30%以上とする。
これにより中炭素鋼部品に対して従来の窒化処理に増して大きな圧縮残留応力を付加することができ、またこれによって窒化部品の疲労強度を従来に増して高強度とすることができる。
また本発明によれば、中炭素鋼から成る部品に窒化処理を施すに当り、処理前後の特別な工程の追加や、複雑な処理条件を必要としないで、低コストの下で窒化部品の疲労強度を高めることができる。
次に本発明における鋼の化学成分の限定理由を以下に説明する
C:0.25〜0.50%
Cは、鋼の耐力を向上させて部品の疲労強度を向上させる上で0.25%を必要とする。一方、0.50%を超えて過剰に含有させると、窒化処理により変形した窒化部品を形状矯正する際の形状矯正能が低下する。そこで本発明ではC含有量を0.25〜0.50%とする。望ましい含有量は0.25〜0.32%である。
Si:0.01〜0.30%
Siは、疲労強度を向上させる。また鋼溶製時の脱酸剤としても働く。その働きのため0.01%以上含有させる。その一方で、0.30%を超えて過剰に含有させると、窒化部品に対する形状矯正能が低下するため、含有量を0.30%以下とする。好ましい含有量は0.01〜0.15%である。
Mn:0.40〜1.00%
Mnは、適度な範囲の添加量で耐力を向上させて疲労強度を向上させ、またSと結合してMn系硫化物を生成し被削性を向上させる。そこで本発明ではMn含有量を0.40〜1.00%とする。好ましい含有量は0.55〜0.90%である。
S:0.070%以下
Sは、被削性を向上させる働きがある一方で、過剰に含有すると靱性を低下させる。そこで本発明では含有量を0.070%以下とする。本発明において、Sは不純物成分としてのものである。
Cu:0.60%以下
Cuは、鋼の耐力を向上させ、また窒化処理により生成する化合物層の厚さを薄くし得、それらにより窒化部品の疲労強度を向上させる。
但し過剰に含有させると熱間加工性を低下させるため、本発明では0.60%以下で含有させる。含有量の好ましい範囲は0.10〜0.60%であり、より好ましい範囲は0.10〜0.30%である。
Ni:0.50%以下
Niは、窒化層におけるパーライトの延性を向上させ、更に、窒化処理における化合物層の厚さを薄くし得て、曲げ矯正能を向上させる。その一方で、過剰に添加すると、被削性が低下する。そこで本発明ではNi含有量を0.50%以下とする。好ましい含有量の範囲は0.05〜0.30%である。
Cr:0.10〜0.50%
Crは、適度な範囲の含有量で、強度と靭性を高め疲労強度を向上させる。そこで本発明ではCr含有量を0.10〜0.50%とする。好ましい範囲は0.10〜0.20%である。
Mo:0.05%以下
Moは、適度な範囲の含有量で、窒化後及び鍛造後の硬さを維持し鋼の強度を高め疲労強度を向上させる。その一方で、過剰に添加すると、被削性が低下する。そこで本発明ではMo含有量を0.05%以下とする。
Ti:0.020%以下
s-Al:0.020%以下
N:0.020%以下
なお、Ti,s-Al及びNなどは上記した必須添加元素による効果に影響を与えない範囲で、結晶粒微細化の目的をもって含まれ得る。例えば、Tiは0.020%以下、s-Alは0.020%以下、Nは0.020%以下である。
P:0.030%以下
O:0.020%以下
P及びOは製造時に不可避的に含まれ得る不可避的不純物である。本発明では、Pについては質量%で0.030%以下、Oについては0.020%以下とする。
軟窒化処理において処理雰囲気と平衡する鋼の状態を示した図である。 実施例において得られた軟窒化品の組織観察結果を示した図である。 実施例において得られた硬さ分布測定結果を示した図である。 実施例において得られた窒素量分布測定結果を示した図である。 実施例において得られた軟窒化品表層の構造分析結果を示した図である。 図2のNo.2とNo.6の残留応力分布測定結果を示した図である。 化合物層厚さ及びポーラス厚さに対する保持時間の影響を表した図である。 化合物層厚さと保持時間の平方根との関係を示した図である。 化合物層厚さと最大圧縮残留応力との関係を示した図である。 ポーラス厚さを除いた化合物層厚さと最大圧縮残留応力との関係を示した図である。 化合物層におけるγ′相の量比と最大圧縮残留応力との関係を示した図である。 曲げ疲労強度に対するγ′相量比の影響を表した図である。 曲げ疲労強度測定のために用いた試験片の形状を表した図である。
次に本発明の実施例を以下に詳述する。
1.ガス軟窒化処理の条件及び測定項目等
1.1 供試材
供試材としてJIS S30C相当(C:0.29%,Si:0.06%,Mn:0.67%,Cu:0.19%,Ni:0.10%,Cr:0.14%,Mo:0.01%,Ti:0.0081%,s-Al:0.002%,N:0.0145%,P:0.013%,S:0.057%,O:0.0048%)の圧延材を用いた。供試材を1373Kに加熱し、1223K以上を終止温度として45mm角に鍛伸した後に空冷し、更に機械加工にてφ30×20mmの表面研磨した円柱形試験片を作製した。試験片はフェライト・パーライト組織であり、フェライト面積率は60%であった。
1.2 窒化処理(ガス軟窒化処理)
窒化処理(ガス軟窒化処理)は、オリエンタルエンヂニアリング(株)製の多目的表面改質装置を使用し、(NH+CO+H)の混合ガスを用いて、873Kにおいて表1の条件で行った。
即ち炉内の水素分圧PH2を水素センサで測定しながら炉内へのNHの供給流量をコントロールし、炉内のアンモニアガス分圧(PNH3)を調整することで、窒化ポテンシャルKを1.7と0.4とに制御し、そして保持時間を変化させて化合物層の構造,化合物層の厚さを変化させた。
ここでK=1.7と0.4の各条件は図1に示すLehrer 線図上で(イ),(ロ)で表される。
=1.7はε相,K=0.4はγ′相を主体とする化合物層が生成する条件であり、Kで化合物層の構造を、保持時間により化合物層の厚さを変化させた。
1.3 軟窒化品の組織観察,硬さ分布測定,窒素量分布測定
得られた軟窒化品は、横断面でのミクロ組織の観察,硬さ分布,窒素量分布の測定に供した。
ミクロ組織は、サンプルを鏡面研磨した後5%ナイタールで腐食し、光学顕微鏡で組織観察を行った。また化合物層及びポーラス領域の厚さ(以下ポーラス厚さ)を測定した。
硬さ分布は、化合物層と拡散層の境界を原点として、深さ0.05mmから2.0mmまでをマイクロビッカース硬度計を用いて荷重2.94Nで測定した。
窒素量分布は、島津製作所製の電子線マイクロアナライザEPMA-1600を用い、化合物表層を原点として2.0mmまでの窒素量をライン分析した。
1.4 軟窒化品表層の構造分析
軟窒化品の曲面部表層から、化合物層を含む厚さ1mmのサンプルを切り出し、化合物層側からX線回折による構造分析を行った。使用した装置は(株)リガク製X線回折装置RINT-TTRIIIで、20°から120°までの回折X線をもとに、各相の同定を行った。
1.5 残留応力分布測定
軟窒化品の曲面部の長手中央付近を、微小部X線残留応力測定装置((株)リガク製 AutoMATE)を用いて、表2の条件で残留応力測定を行った。
この際、測定箇所の近傍φ3mm範囲を電解研磨した後に残留応力測定を行い、200μmまでの残留応力分布を得た。尚、田中らの文献(日本機械学會論文集.A編,62(1996),2734.)を参考に、化合物層に存在するεの103回折と拡散層のα-Feの211回折の両方で測定を行い、Fe211の応力定数は-318MPa/deg,ε-FeN103は-611MPa/degを用いた。
2.結果
2.1 軟窒化品の組織
図2に軟窒化品の表層組織と、化合物層とポーラス厚さの実績値を示す。何れのサンプルも、試料最表層の白く見える層は試料保護のためのNiメッキで、その下に化合物層及びフェライト・パーライトを呈する拡散層が認められる。化合物層は高K・長時間になるほど厚くなる傾向で、狙い通り厚さが変化している。
同様にポーラス領域も高K・長時間になるほど厚くなっているが、Kによってやや様相が異なっている。
=1.7では、化合物層の表層に厚さ2μmから5μmの微細な分布型ポーラスが、その下にチェーン型ポーラスが現れており、処理の長時間化とともにチェーン型ポーラスが顕著になる。K=0.4では、短時間処理ではポーラスは存在せず、18ks以降には微細な分布型ポーラスは生じているが、チェーン型ポーラスは認められない。
ポーラスの発生は、鉄の炭窒化物相の発生に起因し、ε相の多い領域ではε相がセメンタイトに変化してより多くのポーラスが発生すると言われている。K=0.4はγ′相が主体となる処理条件であり、ε相の発生が抑制されたため、ポーラスが生じ難かったと考えられる。
2.2 硬さ分布,窒素量分布
図3に化合物層直下の硬さ分布を示す。化合物層と拡散層との境界を原点として、原点から0.05mm位置の硬さはNo.4の低K・短時間(K=0.4,3.6ks)を除き同等であり、また窒化の影響のない2.0mm位置の硬さは全て同等である。
硬化層深さは処理時間の長時間化とともに深くなっており、想定通りの結果が得られている。
図4に窒素量分布を示す。図4は表面から2.0mmまでのEPMAライン分析結果をもとに、2.1で求めた化合物層厚さを考慮し、化合物層直下を原点としている。
硬さ分布同様にNo.4の低K・短時間(K=0.4,3.6ks)を除いて、化合物層直下や心部の窒素量はほぼ同等で、浸窒深さは処理時間の長時間化とともに深くなっている。
2.3 軟窒化材の表層構造
X線回折から得られた、各サンプルに含まれる相の積分強度比を図5に示す。No.4のK=0.4,3.6ksでは化合物層がほとんど存在せず、α-Feが強く検出されているが、それ以外はK=1.7ではε相が多く、K=0.4ではγ′相が多くなっており、狙い通りKによって化合物層の構造に差が生じていることが分かる。
2.4 残留応力分布
図2のNo.1〜No.3即ちK=1.7で3.6ks,7.2ks,18ks及びNo.4〜No.6即ちK=0.4で3.6ks,7.2ks,18ksのそれぞれについて、サンプルの残留応力分布測定を行っており、それら代表してNo.2のK=1.7,7.2ksとNo.6のK=0.4,18ksの各サンプルについての残留応力分布の測定結果を図6に示している。
尚、これら以外の他のサンプルについては最大残留応力値だけを図2に示している。
この2つのサンプルは、化合物層厚さ(ポーラス領域を除いた部分の厚さ),表層硬さ,表層窒素量がほぼ同等であるが、残留応力分布には差が認められる。
化合物層の残留応力は、No.2のK=1.7では、最表層には残留応力は存在しないが、化合物層中央部に400MPa程度のピークを持つ圧縮残留応力が存在する。
これに対しNo.6のK=0.4では、最表層で既に100MPa程度の圧縮残留応力が生じている。また、圧縮残留応力のピーク値は600MPa程度でやや大きく、位置は化合物層内の表層近くになっている。
このような残留応力分布の差は、化合物層の構造に起因すると考えられる。
尚、拡散層表層の残留応力は−250MPa程度,深さ100μm以降は−50MPa程度でほぼ一定となっており、窒化条件に拠らない。
2.5 Kの組織に及ぼす影響
化合物層厚さは処理時間の平方根に、ポーラス厚さは処理時間に比例することが知られている。図7に処理時間の化合物層厚さ・ポーラス厚さへの影響,図8に保持時間の平方根の化合物層厚さへの影響を示す。
=1.7,K=0.4のどちらも、化合物層厚さは処理時間の平方根に対して直線関係にあり、また、ポーラス厚さは処理時間に対し直線関係にあることから、本試験の結果も従来知見に沿ったものと言える。
但しK=1.7の場合は,直線は原点を通っていることから,処理開始と同時に化合物層・ポーラスが生成していると考えられるが、K=0.4では原点を通っておらず、処理を開始してから化合物層が生成するまでに潜伏期間が存在するものと考えられる。
このことからK=0.4では、初期には鋼材表面と雰囲気が平衡しておらず、反応律速で化合物が生成していると言える。
2.6 軟窒化組織の残留応力分布への影響
図9にポーラス厚さを含む化合物層厚さと化合物層内部の最大圧縮残留応力との関係を示す。化合物層厚さが増すに従い最大圧縮残留応力値は上昇し、化合物層厚さ20μm以上では一定値となる。
圧縮残留応力の増加は、残留応力が化合物層と拡散層の体積膨張量の差に起因しており、化合物層が厚くなるとともに体積膨張量の差がより大きく影響することによるものと考えられる。
また図10に示すように最大圧縮残留応力は、ポーラス領域を除いた化合物層の厚みの増大にほぼ伴って大きくなることから、図9において化合物層厚さ20μm以上で残留応力値が一定値となったのは、ポーラスが残留応力に寄与していないことによるものであり、ポーラスを除いた化合物層については、これを厚くすることで圧縮残留応力を大きくできると考えられる。
尚、残留応力分布には拡散層表層の硬さも影響すると考えられるが、No.4のK=0.4,3.6ks以外は表層硬さはほぼ同等であるから、本実験の範囲内では残留応力の差は化合物層の影響を表していると考えられる。
また、K別で比較すると、化合物層厚さが同等でもK=0.4はK=1.7に比べて最大圧縮残留応力が大きい。
図11に表層硬さが同等で、ポーラスを除く化合物層厚さが同等とみなし得る約15μmから約20μmの場合の、X線回折でのγ′相強度比と最大圧縮残留応力との関係を示す。
γ′相強度比の上昇とともに残留応力値は大きくなり、γ′相はε相よりも大きな圧縮残留応力を発生させることが伺われる。
Fe-N系窒化物の物理的性質から考えると、体積膨張率はε相がγ′相よりもやや大きい程度だが、格子定数は、母相のα-Feの2.86Åに対してγ′相は約3.8Åと30%ほど大きくなっており、ε相が約2.7Å(a軸)でα-Feに近いことから、格子定数の差が、γ′相が多い場合により大きな残留応力が発生する一因となっているのではないかと考えられる。
2.7 γ相量比の疲労強度への影響
1.1の供試材と同じ材料にて図13に示す試験片Sを作製し、図2のNo.2(K=1.7,7.2ks)及びNo.6(K=0.4,18ks)と同条件でガス軟窒化処理したものについて、JIS Z 2274に準拠した方法で小野式回転曲げ疲労試験を行った。
尚、試験条件は回転数3500rpm,試験温度は室温の条件である。
結果が図12に示してある。図12において、縦軸は負荷した応力値を、横軸は曲げの繰返し回数を示している。
この結果から、γ′相の量比が高く、これに伴って最大圧縮残留応力の高いものにあっては、γ′相の量比が少なく、最大圧縮応力の値の小さいものに比べて曲げ疲労強度が効果的に高まっていることが見て取れる。
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。

Claims (2)

  1. 質量%で
    C:0.25〜0.50%
    Si:0.01〜0.30%
    Mn:0.40〜1.00%
    P:0.030%以下
    S:0.070%以下
    Cu:0.60%以下
    Ni:0.50%以下
    Cr:0.10〜0.50%
    Mo:0.05%以下
    Ti:0.020%以下
    s-Al:0.020%以下
    N:0.020%以下
    O:0.020%以下
    残部Fe及び不可避的不純物の組成を有する中炭素鋼にて構成した部品を処理対象として、炉内でアンモニアガスをN供給源として窒化を行い、該窒化に際して窒化ポテンシャルKを制御することで該窒化により生成する表層の化合物層におけるγ′相の比率を30モル%以上とすることを特徴とする窒化処理方法。
  2. 質量%で
    C:0.25〜0.50%
    Si:0.01〜0.30%
    Mn:0.40〜1.00%
    P:0.030%以下
    S:0.070%以下
    Cu:0.60%以下
    Ni:0.50%以下
    Cr:0.10〜0.50%
    Mo:0.05%以下
    Ti:0.020%以下
    s-Al:0.020%以下
    N:0.020%以下
    O:0.020%以下
    残部Fe及び不可避的不純物の組成を有する中炭素鋼にて構成した窒化部品であって、
    窒化により生成する表層の化合物層におけるγ′相の比率が30モル%以上であることを特徴とする窒化部品。
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