上記背景技術では、極性反転前や、極性反転の前後にインバータ出力(ランプ電流、ランプ電圧、ランプ電力)を増大させ、放電灯の電極温度を最適値まで上げることによって、放電灯から放出されるノイズの低減や、光のちらつきであるフリッカの低減を図っている。しかし、放電灯が具備する2つの電極の熱伝導率が互いに異なると、2つの電極に対して均等に熱を加えることは難しい。
例えば、図14(a)(b)は、片口金の放電灯La(車載用メタルハライドランプ)の概略構成を示しており、円筒状の口金20は、その略中心に中心電極片21を設け、外周には外側電極片(図示なし)を設けている。そして、口金20にはガラスからなるバルブ30が取り付けられており、バルブ30内には中心電極41および外側電極42が収納されて、中心電極41は中心電極片21に接続し、外側電極42は、バルブ30外の接続導体50を介して外側電極片に接続している。
このような放電灯Laの場合、中心電極41は外側電極42に比べて熱伝導率が大きくなる。それは、金属の熱伝導率は、ガラスに比べて100倍程度大きいことから、口金20までの距離が短い中心電極41のほうが熱伝導率は大きくなる。
図15(b)は、図15(a)に示す矩形波状のランプ電流を放電灯Laに供給した場合の電極温度の変化であり、Y41は中心電極41の温度変化、Y42は外側電極42の温度変化を各々示す。ここで、ランプ電流が中心電極41から外側電極42に流れる方向を正とし、外側電極42から中心電極41に流れる方向を負としており、中心電極41は、ランプ電流が正のときに陽極、ランプ電流が負のときに陰極となり、外側電極42は、ランプ電流が負のときに陽極、ランプ電流が正のときに陰極となる。そして、中心電極41および外側電極42ともに、陽極になったときに電極温度が上昇し、陰極になったときに電極温度が下降し、外側電極42の平均温度は中心電極41の平均温度より高くなっている。
このように、2つの電極(中心電極41および外側電極42)の温度が互いに異なると、放電灯から放出されるノイズの低減や、光のちらつきであるフリッカの低減を図るために、極性反転前や極性反転の前後においてインバータ出力を増大させた場合に、温度が高いほうの電極が劣化して寿命が短くなるという課題が生じた。
また、放電灯の寿命の観点から、極性反転前や極性反転の前後におけるインバータ出力の増大を抑制すると、温度が低いほうの電極側での放電が不安定となり、フリッカが発生したり、最悪の場合は立ち消えが発生してしまう。また、立ち消えが生じなくても、再点弧が発生するため、点灯時のノイズが大きくなってしまう。
また、特に車両に搭載している放電灯点灯装置では、始動後、急速に(数秒間)光束を立ち上げる必要があり、始動時のインバータ出力を定格点灯時に比べて大きくして光束を立ち上げる技術は、一般に知られている。図16は、車載用の有水銀高輝度放電灯点灯装置の出力電力目標値の変化を示す。始動後の約4秒間は一定の電力(例えば、75W)を放電灯に供給し、始動後の40〜60秒付近までは出力を徐々に低減させて、その後は定格電力(例えば、35W)に漸近させていくカーブ特性をマイコン内に記憶しておき、出力電力目標値読み出しの際に、始動後の時間経過を確認しながら出力電力目標値を読み出すことで、光束の急激な立ち上げを実現できる。
しかし、上記のように光束を急激に立ち上げるために始動時の高出力化を図ると、大電流を流している期間が長くなる。車載用の有水銀高輝度放電灯点灯装置では、図17に示すように、始動後の数秒間は放電灯のインピーダンスが低いためにランプ電流は最大電流制限値Imaxに規制される。この間にランプ電圧は上昇するが、出力目標値に達しないため、ランプ電流=最大電流制限値Imaxを維持する。この状態で、極性反転前や極性反転の前後におけるインバータ出力の増大制御を行うと、図18に示すようにランプ電流が最大電流制限値Imaxを越えてしまう。なお、図18では、極性反転前にランプ電流を増大させる例を示している。また、極性反転時の出力増大の別の手段としては、定常時のランプ電流の所定割合分だけ極性反転時に増大させる方法もあるが、この場合は、さらに顕著にランプ電流が最大電流制限値Imaxを越えてしまう。
そして、ランプ電流が最大電流制限値を超えてしまうと、放電灯の寿命が短くなる。最悪の場合には放電灯の破損につながる。また、放電灯点灯装置も最大電流制限値を越える電流を出力することは考慮されていないため、装置自体が壊れてしまう虞がある。また、大電流を出力可能な放電灯点灯装置は、装置自体の大型化や高コスト化といった課題が生じる。
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、放電灯から放出されるノイズの低減や、光のちらつきであるフリッカの低減を図るとともに、電極間の温度差を抑制して電極の劣化を防止し、放電灯の長寿命化を図ることができる放電灯点灯装置、前照灯、車両を提供することにある。
請求項1の発明は、直流電源の出力を所望の直流電圧に変換する電力変換手段と、電力変換手段の直流出力を極性反転して矩形波出力を生成し、当該矩形波出力を放電灯に供給するインバータ手段と、矩形波出力が極性反転するタイミングに同期して当該矩形波出力を増大させる出力増大手段とを備え、矩形波出力は、互いに極性の異なる第1の半周期と第2の半周期とで1周期を構成し、第2の半周期に極性反転する直前の第1の半周期における出力と、第1の半周期に極性反転する直前の第2の半周期における出力とは互いに異なり、且つ第1の半周期における矩形波出力の積分値と、第2の半周期における矩形波出力の積分値とは、互いの絶対値が等しいことを特徴とする。
この発明によれば、放電灯点灯装置において、放電灯から放出されるノイズの低減や、光のちらつきであるフリッカの低減を図るとともに、電極間の温度差を抑制して電極の劣化を防止し、放電灯の長寿命化を図ることができる。
請求項2の発明は、請求項1において、前記放電灯は、互いに熱伝導率が異なる2つの電極を具備する交流ランプであり、前記第1の半周期では、当該2つの電極のうち熱伝導率が大きい電極が陽極となり、前記第2の半周期では、当該2つの電極のうち熱伝導率が小さい電極が陽極となり、第2の半周期に極性反転する直前の第1の半周期における出力は、第1の半周期に極性反転する直前の第2の半周期における出力より大きいことを特徴とする。
この発明によれば、陽極になったときに電極温度が上昇し、陰極になったときに電極温度が下降し、熱伝導率が大きい電極は熱伝導率が小さい電極に比べて温度が低くなり易いが、2つの電極の温度差を小さくすることで、温度が高いほうの電極の劣化を防止して、放電灯の長寿命化を図ることができる。
請求項3の発明は、請求項2において、前記放電灯は、中心電極と外側電極とを具備する片口金型の高圧放電灯であり、中心電極の熱伝導率は外側電極の熱伝導率より大きく、前記第1の半周期では中心電極が陽極となり、前記第2の半周期では外側電極が陽極となり、第2の半周期に極性反転する直前の第1の半周期における出力は、第1の半周期に極性反転する直前の第2の半周期における出力より大きいことを特徴とする。
この発明によれば、中心電極と外側電極との温度差を小さくすることで、温度が高くなり易い外側電極の劣化を防止して、放電灯の長寿命化を図ることができる。
請求項4の発明は、請求項1乃至3いずれかにおいて、前記出力増大手段は、第1の半周期において第2の半周期に極性反転する前から第2の半周期に極性反転するまでの第1の期間に矩形波出力を増大させ、第2の半周期において第1の半周期に極性反転する前から第1の半周期に極性反転するまでの第2の期間に矩形波出力を増大させ、第1,第2の期間は矩形波出力の1周期の1/4以下であることを特徴とする。
この発明によれば、矩形波出力が正から負に極性反転するとき、矩形波出力が負から正に極性反転するときの両方で、矩形波出力を増大させているので、極性反転時の電極温度の低下が抑制され、極性反転時および極性反転直後の放電を安定させることができる。
請求項5の発明は、請求項1乃至3いずれかにおいて、前記出力増大手段は、第1の半周期において第2の半周期に極性反転する前から第2の半周期に極性反転するまでの第1の期間に矩形波出力を増大させ、第2の半周期における所定の第2の期間に矩形波出力を増大させることを特徴とする。
この発明によれば、第2の期間の発生タイミングを制御することで、極性反転時の電極の温度を調整することができる。例えば、第2の期間の発生タイミングを第2の半周期の後半に近付けるほど、第2の半周期で陽極となる電極の温度を高くすることができる。
請求項6の発明は、請求項1乃至3いずれかにおいて、前記出力増大手段は、第1の半周期において第2の半周期に極性反転する前から第2の半周期に極性反転するまでの第1の期間に矩形波出力を増大させ、第2の半周期は矩形波出力を一定に維持することを特徴とする。
この発明によれば、第2の半周期では矩形波出力を増大させないので、回路的なストレスや放電灯へのストレスを低減させて、効率的に電極の温度を上昇させることができる。さらに、第2の半周期では矩形波出力を一定に維持しているので、制御および回路構成が簡単になり、小型化や低コスト化を図ることができる。
請求項7の発明は、請求項1乃至3いずれかにおいて、前記出力増大手段は、第1の半周期において第2の半周期に極性反転する前から第2の半周期に極性反転するまでの第1の期間に矩形波出力を増大させ、続いて第2の半周期に極性反転してからの第2の期間に矩形波出力を増大させることを特徴とする。
この発明によれば、極性反転時および極性反転直後の放電を安定させることができる。
請求項8の発明は、請求項7において、前記矩形波出力の1周期の波形は、出力値がゼロを通過する点に対して略点対称に生成されることを特徴とする。
この発明によれば、制御および回路構成が簡単になり、小型化や低コスト化を図ることができる。
請求項9の発明は、請求項1乃至8いずれかにおいて、始動期間に放電灯に供給される電力は、定格点灯時の放電灯に供給される定格電力より大きく、前記出力増大手段は、始動期間の少なくとも一部において前記矩形波出力を増大させる量を、定格点灯時に前記矩形波出力を増大させる量より小さくしたことを特徴とする。
この発明によれば、定格点灯時におけるノイズの低減やフリッカ防止という効果と、始動時(光束立ち上げ時)での過大な出力重畳を抑制することによる放電灯の長寿命化という効果とを両立させることができる。
請求項10の発明は、前記放電灯は車両の前照灯であり、請求項1乃至9いずれか記載の放電灯点灯装置を用いて前照灯を点灯させることを特徴とする。
この発明によれば、前照灯点灯装置において、放電灯から放出されるノイズの低減や、光のちらつきであるフリッカの低減を図るとともに、電極間の温度差を抑制して電極の劣化を防止し、放電灯の長寿命化を図ることができる。また、車両に搭載される機器には、安全性とノイズに対して非常に厳しい規制があるため、前照灯点灯装置に請求項1乃至9いずれか記載の放電灯点灯装置を用いることで、より安全性を向上させることができる。
請求項11の発明は、請求項1乃至9いずれか記載の放電灯点灯装置、または請求項10記載の前照灯点灯装置を搭載したことを特徴とする。
この発明によれば、車両において、放電灯から放出されるノイズの低減や、光のちらつきであるフリッカの低減を図るとともに、電極間の温度差を抑制して電極の劣化を防止し、放電灯の長寿命化を図ることができる。また、車両に搭載される機器には、安全性とノイズに対して非常に厳しい規制があるため、車両に請求項1乃至9いずれか記載の放電灯点灯装置、または請求項10記載の前照灯点灯装置を用いることで、より安全性を向上させることができる。
以上説明したように、本発明では、放電灯から放出されるノイズの低減や、光のちらつきであるフリッカの低減を図るとともに、電極間の温度差を抑制して電極の劣化を防止し、放電灯の長寿命化を図ることができるという効果がある。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
図1は、本実施形態の放電灯点灯装置の回路構成を示しており、放電灯点灯装置は、直流電源E1の直流出力を所定の直流電圧に変換するDC/DCコンバータ部1と、DC/DCコンバータ部1の直流出力を低周波の矩形波出力に変換し、この矩形波出力を放電灯Laに供給するインバータ部2と、始動時に放電灯Laに数10kVの高電圧を印加して点灯開始させるイグナイタ部3と、DC/DCコンバータ部1およびインバータ部2の各動作を制御する制御部4とで構成される。
DC/DCコンバータ部1は、トランスTr1の一次巻線N11とスイッチング素子Q1とが直流電源E1の両端間に接続し、トランスTr1の二次巻線N12はその両端間にダイオードD1とコンデンサC1との直列回路が接続されて、電力変換手段を構成しており、コンデンサC1の両端がDC/DCコンバータ部1の出力端になる。なお、二次巻線N12の一端は、直流電源E1の負極に接続している。
インバータ部2は、DC/DCコンバータ部1の出力端間にスイッチング素子Q2,Q4の直列回路、およびスイッチング素子Q3,Q5の直列回路を接続したフルブリッジ型のインバータ手段であり、スイッチング素子Q2,Q4の接続中点、スイッチング素子Q3,Q5の接続中点がインバータ部2の出力端になる。
イグナイタ部3は、インバータ部2の出力端間に接続されたコンデンサC2と、コンデンサC2に並列接続されたパルストランスTr2の一次巻線N21とスパークギャップSG1との直列回路と、パルストランスTr2の二次巻線N22とを備え、二次巻線N22と放電灯Laとの直列回路が、一次巻線N21とスパークギャップSG1との直列回路に並列接続されている。
制御部4は、電力目標記憶部4aと、電流目標演算部4bと、反転判断部4cと、電流目標上昇部4dと、誤差アンプ4eとで構成され、ランプ電圧(DC/DCコンバータ部1の出力電圧)、ランプ電流(DC/DCコンバータ部1の出力電流)を検出して出力電力が目標電力となるようにDC/DCコンバータ部1を制御する機能と、インバータ部2においてDC/DCコンバータ部1の直流出力を周期的に極性反転した低周波の矩形波出力を生成させる機能とを備える。まず、電力目標記憶部4aには、始動時、点灯時、調光時等の各状態におけるDC/DCコンバータ部1の出力電力目標値Y1を予め格納しており、電流目標演算部4bが、出力電力目標値Y1をランプ電圧検出値Y2で割ることによって、DC/DCコンバータ部1の出力電流目標値Y3を導出する。
また、反転判断部4cは、インバータ部2へ反転命令Y4を出力して、反転命令を受け取ったインバータ部2は、スイッチング素子Q2,Q5とスイッチング素子Q3,Q4とを交互にオン・オフして、DC/DCコンバータ部1の直流出力を所定周期で極性反転させることで矩形波出力を生成する。さらに反転判断部4cは、反転命令Y4を出力するとともに、極性反転に同期した極性反転タイミングを示す反転同期信号Y5を電流目標上昇部4dへ出力する。この反転同期信号Y5は、少なくとも極性反転前から極性反転までの所定範囲を極性反転タイミングとして生成され、必要によって極性反転前から極性反転を経て極性反転後までを含んで生成される。
電流目標上昇部4dは、反転同期信号Y5に同期したタイミングで出力電流目標値Y3に所定電流値を加算した出力電流目標値Y6を出力する。すなわち、出力電流目標値Y6は、反転同期信号Y5が入力されていない間は出力電流目標値Y3と等しく、反転同期信号Y5が入力されたタイミングで出力電流目標値Y3より大きな値となる。
そして、誤差アンプ4eは、ランプ電流検出値Y7を出力電流目標値Y6と比較し、その比較結果に基づいて、ランプ電流検出値Y7が出力電流目標値Y6に一致するように出力制御信号Y8を生成し、出力制御信号Y8によってDC/DCコンバータ部1のスイッチング素子Q1をオン・オフ駆動する。
そして、直流電源E1がDC/DCコンバータ部1に供給され、スイッチング素子Q1がオンすると、トランスTr1の一次巻線N11とスイッチング素子Q1との直列回路に電流が流れる。しかし、トランスTr1の二次巻線N12には、ダイオードD1に逆電圧が印加されて電流が流れないため、トランスTr1にエネルギーが蓄積される。次に、スイッチング素子Q1がオフすると、トランスTr1の二次巻線N12 → コンデンサC1 → ダイオードD1の経路で電流が流れ、トランスTr1に蓄積されていたエネルギーがコンデンサC1に移動する。
点灯前の放電灯Laは開放状態であるため、スイッチング素子Q1のオン・オフ動作を繰り返すとコンデンサC1の電圧は上昇し、インバータ部2のスイッチング素子Q2,Q5をオン状態、スイッチング素子Q3,Q4をオフ状態に維持しておくことによって、イグナイタ部3のコンデンサC2の電圧も上昇する。コンデンサC2の電圧が所定電圧を超えると、スパークギャップSG1がブレークダウンして、トランスTr2の一次巻線N21に瞬間的に電圧が印加され、トランスTr2の二次巻線N22には高電圧(数10kV程度)が発生し、この高電圧によって放電灯Laがブレークダウンする。放電灯Laがブレークダウンすると、DC/DCコンバータ部1からインバータ部2を介して放電灯Laへ電流が供給され、放電灯Laはアーク放電を介して点灯状態に移行する。
放電灯Laの点灯後は、インバータ部2が、DC/DCコンバータ部1の直流出力を所定の時間間隔で交番させた矩形波出力を放電灯Laへ供給し、電流目標演算部4bは、出力電力目標値Y1とランプ電圧検出値Y2とに基づいて出力電流目標値Y3を導出する。そして、電流目標上昇部4dは、インバータ部2の出力の交番タイミングに同期して(反転同期信号Y5に同期して)出力電流目標値Y3を増大させた出力電流目標値Y6を生成する。誤差アンプ4eは、ランプ電流検出値Y7を出力電流目標値Y6と比較して、その誤差量に応じた出力制御信号Y8を生成する。DC/DCコンバータ部1は、出力制御信号Y8によってスイッチング素子Q1がオン・オフされることで、出力電力が目標電力となるように制御される。
上記構成によって、インバータ部2が出力する矩形波電流(放電灯Laに供給されるランプ電流)は、その極性反転のタイミングに同期して電流値が増大しており、放電灯Laの点灯安定化を図っている。すなわち、DC/DCコンバータ部1と制御部4とで出力増大手段を構成している。
次に、マイコンを用いて制御部4を構成した場合の動作を、図2のフローチャートに示す。
まず、リセット入力等による電源オンが発生すると、インバータ部2が出力する矩形波出力の反転時間や反転回数等の変数を初期化し(S1)、放電灯Laの点灯前の無負荷時において、イグナイタ部3を用いた始動制御を行う(S2)。そして、放電灯Laが点灯したか否かを判定し(S3)、点灯していない場合はS2に戻って始動制御を繰り返し、点灯している場合は、以下の定電力制御を行う。
点灯後の定電力制御では、まず、ランプ電圧(DC/DCコンバータ部1の出力電圧)をA/D変換して読み込み(S4)、読み込んだランプ電圧を過去のランプ電圧と併せて平均化処理を行う(S5)。このランプ電圧の平均化処理は、最新の3個のランプ電圧検出値を記憶しておき、そして、新規にランプ電圧を読み込んだときは、記憶している3個のランプ電圧と新規のランプ電圧とを足し合わせた後に4で割った結果を、ランプ電圧の平均値とする。このランプ電圧の平均値が、ランプ電圧検出値Y2となる。
次に、マイコンのROMに格納しているデータテーブルから、このときの出力電力目標値Y1を読み出し(S6)、出力電力目標値Y1をランプ電圧検出値Y2で割ることによって、出力電流目標値Y3を導出する(S7)。そして、反転同期信号Y5が発生(セット)しているか否かを判定し(S8)、反転同期信号Y5がセットされていなければ、反転同期信号Y5に同期していないタイミングであると判断して、出力電流目標値Y3をそのまま出力電流目標値Y6に設定する。一方、反転同期信号Y5がセットされておれば、反転同期信号Y5に同期したタイミングであると判断して、出力電流目標値Y3に所定電流値を加算した出力電流目標値Y6を生成する(S9)。
S9における処理において、出力電流目標値Y3に加算される所定電流値は、放電灯Laの定格電流値の0.1〜1.0倍程度に設定されることで、ノイズの低減やフリッカの防止を図ることができる。例えば、定格電流値=0.4Aの車載用有水銀HIDランプに対しては、0.04〜0.4Aを出力電流目標値Y3に加算し、定格電流値=0.8Aの車載用有水銀HIDランプに対しては、0.08〜0.8Aを出力電流目標値Y3に加算する。
次に、ランプ電流(DC/DCコンバータ部1の出力電流)をA/D変換して読み込み(S10)、読み込んだランプ電流を過去のランプ電流と併せて平均化処理を行う(S11)。このランプ電流の平均化処理は、最新の3個のランプ電流検出値を記憶しておき、そして、新規にランプ電流を読み込んだときは、記憶している3個のランプ電流と新規のランプ電流とを足し合わせた後に4で割った結果を、ランプ電流の平均値とする。このランプ電流の平均値が、ランプ電流検出値Y7となる。そして、ランプ電流検出値Y7を出力電流目標値Y6と比較し(S12)、その比較結果に基づいて、ランプ電流検出値Y7が出力電流目標値Y6に一致するように出力制御信号Y8を更新する(S13)。
次に、インバータ部2における前回の極性反転から次回の極性反転までの周期が経過したか否かを判断する(S14)。なお、反転周期は、数100Hz〜数kHzである。そして、周期が経過していた場合、極性反転させる反転命令Y4をインバータ部2に出力して(S15)、S16に進む。S14において周期が経過していない場合もS16に進む。
そして、極性反転タイミング(例えば、極性反転の200μsec前〜50μsec後までの範囲内)であるか否かを判断し(S16)、極性反転タイミングであれば、ランプ電流の増大を図るために反転同期信号Y5を発生(セット)させる(S17)。極性反転タイミング外であれば、反転同期信号Y5を発生させない(クリアする)(S18)。そして、極性反転後の時間計算を行って(S19)、上記以外の制御を行う(S20)。なおS16における極性反転タイミングは、上記時間内に限定されるものではなく、反転周期の半周期の2%〜30%程度であればよい。
このように、制御部4にマイコンを用いた場合には、上記フローチャートに従って動作することで、インバータ部2の極性反転タイミングに同期してランプ電流を増大させる制御と、放電灯Laを所定電力で点灯させる制御との両方を実現することができる。
図3(a)〜(e)は、本実施形態におけるランプ電流の波形を例示している。ここで、放電灯Laには図14(a)(b)に示す片口金の放電灯を用いて、ランプ電流が中心電極41から外側電極42に流れる方向を正とし、外側電極41から中心電極42に流れる方向を負としており、中心電極41は、ランプ電流が正のときに陽極、ランプ電流が負のときに陰極となり、外側電極42は、ランプ電流が負のときに陽極、ランプ電流が正のときに陰極となる。
本発明では、インバータ部2が出力する矩形波電流(ランプ電流)は、正の半周期Tp(第1の半周期:中心電極41が陽極である期間)と負の半周期Tn(第2の半周期:外側電極42が陽極である期間)とを極性反転させて交互に繰り返しており、正の半周期Tpでは振幅Ip1の矩形波、負の半周期Tnでは振幅In1の矩形波を基本波として出力するとともに、少なくとも正の半周期Tpから負の半周期Tnへ極性反転する直前において当該基本波に増大電流が重畳される。すなわち、正の半周期Tpから負の半周期Tnへ極性反転する直前におけるランプ電流の振幅Ip2の絶対値が、負の半周期Tnから正の半周期Tpへ極性反転する直前におけるランプ電流の振幅In2の絶対値より大きくなるようにしている。これは、中心電極41のほうが外側電極42よりも熱伝導率が大きく、中心電極41のほうが外側電極42に比べて温度が低くなり易いことから、Ip2>In2に設定して、中心電極41と外側電極42との温度差を小さくしている。なお、基本波の振幅Ip1,In1は互いに略等しく設定されてもよく、振幅Ip1,In1を互いに異なる値に設定してもよい。また、正の半周期Tpと負の半周期Tnとは互いに略等しく設定されてもよく、半周期Tp,Tnを互いに異なる値に設定してもよい。
さらには、正の半周期Tpにおけるランプ電流の積分値と、負の半周期Tnにおけるランプ電流の積分値とは、互いの絶対値が等しくなるようにランプ電流の波形が設定されている。すなわち、1周期[Tp+Tn]におけるランプ電流の平均値がゼロとなるので、正・負のランプ電流によるアーク放電がほぼ対称となる。
したがって、中心電極41と外側電極42との温度差を小さくし、且つ正・負のランプ電流によるアーク放電をほぼ対称とすることによって、一方の電極のみで劣化が進むという現象を抑制でき、放電灯Laの長寿命化を図ることができる。
また、極性反転タイミングに同期してランプ電流を増大させて、放電灯Laの電極温度を最適値まで上げることで、放電灯Laから放出されるノイズの低減や、光のちらつきであるフリッカの低減も図ることができる。
図3(a)〜(e)は、上記効果(放電灯Laの長寿命化とノイズおよびフリッカの低減との両立)を実現するランプ電流の各波形であり、まず図3(a)では、正の半周期Tpにおいて負の半周期Tnに極性反転する直前から極性反転するまでの期間Tp1(第1の期間:1周期[Tp+Tn]の1/4以下に設定される)、および負の半周期Tnにおいて正の半周期Tpに極性反転する直前から極性反転するまでの期間Tn1(第2の期間:1周期[Tp+Tn]の1/4以下に設定される)に、反転判断部4cが反転同期信号Y5を出力しており、ランプ電流は、期間Tp1ではIp1からIp2まで徐々に線形に増大した後、パルス状に減少し、期間Tn1ではIn1からIn2までパルス状に増大した後、In2から徐々に線形に減少している。したがって、ランプ電流が正から負に極性反転するとき、ランプ電流が負から正に極性反転するときの両方でランプ電流を増大させているので、極性反転時の電極温度の低下が抑制され、極性反転時および極性反転直後の放電を安定させることができる。また、Ip2>In2に設定されるとともに、1周期[Tp+Tn]におけるランプ電流の平均値がゼロとなるので、一方の電極のみで劣化が進むという現象を抑制して、放電灯Laの長寿命化を図っている。
次に、図3(b)では、正の半周期Tpにおいて負の半周期Tnに極性反転する直前から極性反転するまでの期間Tp1(第1の期間:1周期[Tp+Tn]の1/4以下に設定される)に、反転判断部4cが反転同期信号Y5を出力しており、ランプ電流は、期間Tp1でIp1からIp2までパルス状に増大した後、パルス状に減少している。一方、負の半周期Tnでは、反転判断部4cが任意のタイミングに発生する期間Tn1(第2の期間:1周期[Tp+Tn]の1/4以下に設定される)で反転同期信号Y5を出力しており、負の半周期Tnのランプ電流は、任意のタイミングで発生する期間Tn1で、In1からIn3までパルス状に増大した後、パルス状に減少している。したがって、期間Tn1の発生タイミングを制御することで、極性反転時の電極の温度を調整することができる。例えば、期間Tn1の発生タイミングを負の半周期Tnの後半に近付けるほど、外側電極42の温度を高くすることができる。また、負の半周期Tnにおいて正の半周期Tpへ極性反転する直前におけるランプ電流の振幅In2は、基本波の振幅In1と等しく、Ip2>In2に設定されるとともに、1周期[Tp+Tn]におけるランプ電流の平均値がゼロとなるので、一方の電極のみで劣化が進むという現象を抑制して、放電灯Laの長寿命化を図っている。
次に、図3(c)では、正の半周期Tpにおいて負の半周期Tnに極性反転する直前から、極性反転後の負の半周期Tnにおいて一定時間が経過するまでの期間Taに、反転判断部4cが反転同期信号Y5を出力しており、ランプ電流は、正の半周期Tpにおいて負の半周期Tnに極性反転する直前から極性反転するまでの期間Tp1(第1の期間:1周期[Tp+Tn]の1/4以下に設定される)に、Ip1からIp2まで徐々に線形に増大した後、パルス状に減少している。一方、負の半周期Tnに極性反転してから一定時間が経過するまでの期間Tn1(第2の期間:1周期[Tp+Tn]の1/4以下に設定される)においては、ランプ電流がIn3までパルス状に増大した後、In3からIn1まで徐々に非線形に減少している。したがって、期間Tn1ではランプ電流を非線形に減少させるので、パルス状に変化させる場合や、線形に変化させる場合に比べて、回路的なストレスや放電灯Laへのストレスを低減させて、効率的に電極の温度を上昇させることができる。さらに、ランプ電流を増大させる場合も徐々に非線形に変化させれば、同様の効果を得ることができる。また、負の半周期Tnから正の半周期Tpへ極性反転する直前におけるランプ電流の振幅In2は、基本波の振幅In1と等しく、Ip2>In2に設定されるとともに、1周期[Tp+Tn]におけるランプ電流の平均値がゼロとなるので、一方の電極のみで劣化が進むという現象を抑制して、放電灯Laの長寿命化を図っている。
次に、図3(d)では、正の半周期Tpにおいて負の半周期Tnに極性反転する直前から極性反転するまでの期間Tp1(第1の期間:1周期[Tp+Tn]の1/4以下に設定される)に、反転判断部4cが反転同期信号Y5を出力しており、ランプ電流は、期間Tp1でIp1からIp2までパルス状に増大した後、パルス状に減少している。一方、負の半周期Tnでは、反転判断部4cが反転同期信号Y5を出力することなく、ランプ電流をIn1に一定に維持している。したがって、負の半周期Tnではランプ電流を増大させないので、回路的なストレスや放電灯Laへのストレスを低減させて、効率的に電極の温度を上昇させることができる。さらに、負の半周期Tnではランプ電流をIn1に一定に維持しているので、制御および回路構成が簡単になり、小型化や低コスト化を図ることができる。また、負の半周期Tnから正の半周期Tpへ極性反転する直前におけるランプ電流の振幅In2は、基本波の振幅In1と等しく、Ip2>In2に設定されるとともに、1周期[Tp+Tn]におけるランプ電流の平均値がゼロとなるので、一方の電極のみで劣化が進むという現象を抑制して、放電灯Laの長寿命化を図っている。
次に、図3(e)では、正の半周期Tpにおいて負の半周期Tnに極性反転する直前から極性反転して一定時間が経過するまでの期間Taに、反転判断部4cが反転同期信号Y5を出力しており、ランプ電流は、正の半周期Tpにおいて負の半周期Tnに極性反転する直前から極性反転するまでの期間Tp1(第1の期間:1周期[Tp+Tn]の1/4以下に設定される)において、Ip1からIp2までパルス状に増大した後、パルス状に減少している。一方、負の半周期Tnに極性反転してから一定時間が経過するまでの期間Tn1(第2の期間:1周期[Tp+Tn]の1/4以下に設定される)においては、ランプ電流がIn3までパルス状に増大した後、In3からIn1までパルス状に減少している。したがって、正の半周期Tpでのランプ電流波形と負の半周期Tnでのランプ電流波形とが、ランプ電流波形が極性反転してゼロを通過する点に対して、略点対称の関係になっており、制御および回路構成が簡単になり、小型化や低コスト化を図ることができる。また、負の半周期Tnから正の半周期Tpへ極性反転する直前におけるランプ電流の振幅In2は、基本波の振幅In1と等しく、Ip2>In2に設定されるとともに、1周期[Tp+Tn]におけるランプ電流の平均値がゼロとなるので、一方の電極のみで劣化が進むという現象を抑制して、放電灯Laの長寿命化を図っている。
(実施形態2)
本実施形態の放電灯点灯装置は、実施形態1と同様に図1の構成を備えており、同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
図4は、マイコンを用いて制御部4を構成した場合の動作を示し、実施形態1との相違点は、S8とS9との間にS9aのステップを挿入したことである。S9aにおいては、電流目標上昇部4dが出力電流目標値Y3に加算する所定電流値を変動させて、ランプ電流の増大量ΔIlaを変化させており、その処理を以下説明する。
まず、図5(a)(b)は、始動後の経過時間に応じてランプ電流の増大量ΔIlaを変化させる特性を示しており、図5(a)の特性は、始動後の経過時間0〜4秒では、ランプ電流の増大量ΔIlaが0.2A一定であり、経過時間4〜50秒では、ランプ電流の増大量ΔIlaが0.2Aから0.4Aまで線形に増大し、経過時間50秒以降では、ランプ電流の増大量ΔIlaが0.4A一定となる。一方、図5(b)の特性は、始動後の経過時間0〜4秒では、ランプ電流の増大量ΔIlaが0A一定であり、経過時間4〜50秒では、ランプ電流の増大量ΔIlaが0Aから0.4Aまで線形に増大し、経過時間50秒以降では、ランプ電流の増大量ΔIlaが0.4A一定となる。
次に、図6(a)(b)は、放電灯Laへの出力電力に応じてランプ電流の増大量を変化させる特性を示しており、図6(a)の特性は、出力電力が定格電力(34W)を超えて40W付近に達するまでは、ランプ電流の増大量ΔIlaが0.4A一定であり、40W付近を超えてから最大電力(75W)までは、ランプ電流の増大量ΔIlaが0.4Aから0.2Aまで線形に減少し、最大電力(75W)以上では、ランプ電流の増大量ΔIlaが0.2A一定となる。一方、図6(b)の特性は、出力電力が定格電力(34W)を超えて40W付近に達するまでは、ランプ電流の増大量ΔIlaが0.4A一定であり、定格電力(34W)を超えてから60Wまでは、ランプ電流の増大量ΔIlaが0.4Aから0Aまで線形に減少し、60W以上では、ランプ電流の増大量ΔIlaが0A一定となる。
次に、図7(a)(b)は、放電灯Laのランプ電圧に応じてランプ電流の増大量を変化させる特性を示しており、図7(a)の特性は、ランプ電圧が始動電圧(20V)を超えて30Vに達するまでは、ランプ電流の増大量ΔIlaが0.2A一定であり、30Vを超えてから定格電圧(85V)までは、ランプ電流の増大量ΔIlaが0.2Aから0.4Aまで線形に増大し、定格電圧(85V)以上では、ランプ電流の増大量ΔIlaが0.4A一定となる。一方、図7(b)の特性は、ランプ電圧が始動電圧(20V)を超えて30Vに達するまでは、ランプ電流の増大量ΔIlaが0A一定であり、30V以上では、ランプ電流の増大量ΔIlaが0.4A一定となる。
次に、図8(a)(b)は、放電灯Laのランプ電流に応じてランプ電流の増大量を変化させる特性を示しており、図8(a)の特性は、ランプ電流が定格電流(0.4A)を超えて0.6A付近に達するまでは、ランプ電流の増大量ΔIlaが0.4A一定であり、0.6A付近を超えてから始動電流(2.6A)までは、ランプ電流の増大量ΔIlaが0.4Aから0.2Aまで線形に減少し、始動電流(2.6A)以上では、ランプ電流の増大量ΔIlaが0.2A一定となる。一方、図8(b)の特性は、ランプ電流が定格電流(0.4A)を超えて2.2Aに達するまでは、ランプ電流の増大量ΔIlaが0.4A一定であり、2.2Aを超えてから始動電流(2.6A)までは、ランプ電流の増大量ΔIlaが0.4Aから0Aまで線形に減少し、始動電流(2.6A)以上では、ランプ電流の増大量ΔIlaが0A一定となる。
図9は、電力目標記憶部4aに格納された出力電力目標値Y1の特性を表しており、出力電力目標値Y1は、始動後の経過時間0〜4秒では、75W一定であり、経過時間4〜50秒では、75Wから35Wに非線形に減少し、経過時間50秒以降では、35W一定となる。
そして、図9の出力電力目標値Y1に対して、図5(a)に示すように始動後の経過時間に応じてランプ電流の増大量ΔIlaを変化させて、図3(e)のランプ電流波形を生成した場合に、始動後の経過時間:4秒におけるランプ電流波形を図10(a)に示し、始動後の経過時間:50秒におけるランプ電流波形を図10(b)に示す。経過時間:4秒では、図10(a)に示すように、ランプ電流の基本波振幅2.6Aに対して、極性反転直前のランプ電流増大量ΔIlaは0.2Aとなり、経過時間:50秒では、図10(b)に示すように、ランプ電流の基本波振幅0.4Aに対して、極性反転直前のランプ電流増大量ΔIlaは0.4Aとなる。
したがって、始動時からの経過時間が50秒以降では、極性反転直前のランプ電流増大量ΔIlaを十分確保して、定格点灯時におけるノイズの低減やフリッカ防止という効果を実現している。さらに始動時からの経過時間4秒までは、定格点灯時よりも大きな一定の始動電力を放電灯Laへ供給している期間であり、この期間ではランプ電流増大量ΔIlaを抑制しており、光束立ち上げ時の過大な電力(電流)重畳による放電灯Laの短寿命化を防止している。すなわち、定格点灯時におけるノイズの低減やフリッカ防止という効果と、光束立ち上げ時での過大な電力(電流)重畳を抑制することによる放電灯Laの長寿命化という効果とを両立させている。
一方、ランプ電流の増大量ΔIlaを常に0.4A一定にして、図3(e)のランプ電流波形を生成した場合に、始動後の経過時間:4秒におけるランプ電流波形を図11(a)に示し、始動後の経過時間:50秒におけるランプ電流波形を図11(b)に示す。経過時間:4秒では、図11(a)に示すように、ランプ電流の基本波振幅2.6Aに対して、極性反転直前のランプ電流増大量ΔIlaは0.4Aとなり、経過時間:50秒では、図11(b)に示すように、ランプ電流の基本波振幅0.4Aに対して、極性反転直前のランプ電流増大量ΔIlaは0.4Aとなる。この場合、始動時からの経過時間4秒までは、定格点灯時よりも大きな始動電力を放電灯Laへ供給している期間であり、この期間のランプ電流増大量ΔIlaは定格点灯時と同じ0.4Aであるので、光束立ち上げ時の過大な電力(電流)重畳によって放電灯Laの短寿命化を引き起こす虞がある。
また、図8(b)に示すように、ランプ電流に応じてランプ電流の増大量ΔIlaを変化させた場合は、始動から4秒経過するまではランプ電流が2.6A以上であることから、極性反転直前のランプ電流増大量ΔIlaは0Aとなり、その後は徐々にランプ電流増大量ΔIlaが増加していく。これによって、ランプ電流増大量ΔIlaを重畳したランプ電流が最大電流制限値を越えないように制御可能となり、放電灯Laの短寿命化防止効果がさらに高まる。
さらに、ランプ電流増大量ΔIlaを変動させるのではなく、電流値割合[Ip2/Ip1]、[In2/In1]、[In3/Ip1]を変動させてもよい(図3(a)〜(e)参照)。
なお、実施形態2で用いるランプ電流波形は図3(e)に示すものだけでなく、図3(a)〜(d)に示すランプ電流波形であっても、上記同様の効果を得ることができる。
また、実施形態1,2においては、極性反転タイミングにおいてランプ電流を増大させるとともに、負の半周期Tnに極性反転する直前の正の半周期Tpにおけるランプ電流の振幅Ip2を、正の半周期Tpに極性反転する直前の負の半周期Tnにおけるランプ電流の振幅In2より大きくし、且つ正の半周期Tpにおけるランプ電流の積分値と負の半周期Tnにおけるランプ電流の積分値との互いの絶対値が等しくなるようにランプ電流の波形を設定する(すなわち、1周期[Tp+Tn]におけるランプ電流の平均値がゼロ)ことで、定格点灯時におけるノイズの低減やフリッカ防止という効果と、放電灯Laの長寿命化という効果とを両立させている。しかし、極性反転タイミングにおいてランプ電圧またはランプ電力を上記同様に増大させることでも、上記同様の効果を得ることができる。この場合も、正の半周期Tpにおけるランプ電圧またはランプ電力の積分値と、負の半周期Tnにおけるランプ電圧またはランプ電力の積分値とは、互いの絶対値が等しくなるようにランプ電圧またはランプ電力の波形が設定されている。すなわち、1周期[Tp+Tn]におけるランプ電圧の平均値がゼロとなり、または半周期Tp、半周期Tnにおける各ランプ電力が等しくなるので、正・負のアーク放電がほぼ対称となる。
また、実施形態1,2においては、有水銀の車載用高輝度放電灯を用いた場合について記載したが、無水銀の車載用高輝度放電灯を用いた場合には、光束を立ち上げるために、有水銀の車載用高輝度放電灯を用いる場合に比べて大きな電力を長時間印加する必要があり、本発明の効果はさらに高まる。
(実施形態3)
本実施形態は、実施形態1または2の放電灯点灯装置を用いた前照灯点灯装置および車両であり、図12にその概略構成を示す。
車両Kの前照灯Laには放電灯が用いられ、直流電源E1には車載のバッテリーが用いられ、前照灯点灯装置Aには実施形態1または2の放電灯点灯装置が用いられる。車両Kに搭載される機器には、安全性とノイズに対して非常に厳しい規制があるため、前照灯点灯装置Aに実施形態1または2の放電灯点灯装置を用いることで、放電灯Laの長寿命化とノイズおよびフリッカの低減とを両立させることができ、より安全性を向上させた前照灯点灯装置Aおよび車両Kとなる。