JP2010052363A - 塗装鋼板、加工品及び塗装鋼板の製造方法 - Google Patents

塗装鋼板、加工品及び塗装鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】下塗り塗膜及び上塗り塗膜の総膜厚が10μm以下と薄い場合であっても、輝度感並びに素地色及び素地疵の隠蔽性に優れ、さらに、亜鉛系めっき層を形成することなく良好な耐食性を具える塗装鋼板、加工品及び塗装鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】硝酸水溶液で酸洗処理した素地鋼板2の両面にクロムを含有しない化成皮膜を有し、前記鋼板の少なくとも一方の面の化成皮膜上に、着色顔料を含有する下塗り塗膜3を有し、該下塗り塗膜3上に、光輝剤5を含有する有機樹脂皮膜である上塗り塗膜4を有し、かつ前記下塗り塗膜3と前記上塗り塗膜4の総膜厚を10μm以下とすることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、亜鉛を含有するめっきを施すことなく、良好な耐食性を有することができ、塗膜の総膜厚が10μm以下と薄い場合であっても、輝度感ならびに素地色及び素地疵の隠蔽性に優れる塗装鋼板、加工品及び塗装鋼板の製造方法に関するものである。本発明の塗装鋼板は、例えば液晶テレビやプラズマテレビのような薄型テレビ用パネルで代表されるAV機器などの素材として使用することができる。
通常、プレコート鋼板(塗装鋼板)では、外面側の下塗り塗料に主として変性ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂を使用することで、素地鋼板(化成皮膜を形成した鋼板)との密着性、耐食性などを確保し、また、外面側の上塗り塗料にポリエステル系、アクリル系塗料などを使用することで、主として耐汚染性、意匠性、耐傷付き性、耐塩酸性や耐アルカリ性であるバリア性などを付与している。
また、従来の塗装鋼板は、特許文献1に開示されているように、下塗り塗膜の膜厚が5μm程度、上塗り塗膜の膜厚が15μm程度、それらの総膜厚が20μmであるのが一般的であるが、この塗装鋼板は、塗装や焼付のための時間が多くかかるため、塗装作業の合理化や省資源化の観点からは、塗膜の薄膜化が望まれている。
ところで、従来の塗膜組成のままで10μm以下に減厚した塗膜を形成する場合、上塗り塗膜の膜厚は、通常、目標膜厚に対し±1.5μm程度変動することが想定され、鋼板の素地面の色や疵が部分的に透けて見える可能性がある。また、膜厚変動が±1.5μm程度あると、明度(L値)が変化し、これらの結果として、表面外観が不良となり、安定した意匠性が得られない。
そのため、本発明者らが10μm以下に減厚した上塗り塗膜に着色顔料を含有させることで、前記素地色及び素地疵を隠蔽する塗装鋼板を試作したが、この塗装鋼板は上塗り塗膜により入射光の大部分が反射されずに吸収されるため、ある角度から見た場合のメタリック感やキラキラ感(以後、輝度感と記載)がなく、高級製品など輝度感を必要とする用途に使用することができないと判断された。
また、前記輝度感ならびに素地色及び素地疵の隠蔽性を具える塗装鋼板としては、着色顔料及び光輝剤の双方を含有させた上塗り塗膜を形成した塗装鋼板が考えられる。しかし、この塗装鋼板では、上塗り塗膜中に着色顔料と光輝剤の双方を含有させているため、着色顔料の含有量の上限が制限されることになり、前記上塗り塗膜の膜厚が15μm以上と厚くせざるを得ないという問題があった。また、前記上塗り塗膜中に着色顔料と光輝剤の双方を含有させると、それらの含有量が多くなるため、塗膜の強度が低下するという問題もあった。
さらに、塗装鋼板は、その用途によっても異なるが、良好な耐食性を有する点やコストの点などから、亜鉛系のめっき層を設けた鋼板、例えば、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板又はアルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板等を用いることが一般的である。ただし、かかる亜鉛系めっき層は、近年の亜鉛原料価格高騰のため製品コストをアップさせること、及び、鋼板リサイクルの際にできるだけ鋼板成分以外の元素を排除したいということから、前記鋼板表面に亜鉛めっき層を形成しない表面処理鋼板の製造が望まれている。
前記亜鉛系めっき層を設けない鋼材として、例えば特許文献2に、鋼材を脱脂処理工程と、酸化処理によって前記鋼材の表面を凹凸化する工程と、変性ポリオレフィン樹脂をコーティングする工程によって製造される鋼材が挙げられる。
しかしながら、特許文献2の鋼材のように、樹脂層(特許文献2では変性変性ポリオレフィン樹脂層)を厚く鋼材表面に形成することができるのであれば、一定の耐食性を有することは可能であるものの、家庭用電気製品等に用いる場合、十分な厚さの樹脂層を鋼板表面上に形成することはコストの点からも好ましくないことから、亜鉛系めっき層を形成しない限り、所望の耐食性を得ることができないと考えられている。
特開平4−215873号公報 特開平3−80969号公報
本発明の目的は、下塗り塗膜及び上塗り塗膜の総膜厚が10μm以下と薄い場合であっても、輝度感並びに素地色及び素地疵の隠蔽性に優れ、さらに、亜鉛系めっき層を形成することなく良好な耐食性を具える塗装鋼板、加工品及び塗装鋼板の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決して優れた性能の薄膜の塗装鋼板を得るために検討を重ねた結果、素地鋼板の両面にクロムを含有しない化成皮膜を有し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に、着色顔料を含有した下塗り塗膜を形成して素地色及び素地疵の隠蔽性を実現するとともに、前記下塗り塗膜上に、光輝剤を含有する有機樹脂皮膜である上塗り塗膜を形成して輝度感を実現することで、塗膜の総膜厚が10μm以下であっても、輝度感ならびに素地色及び素地疵の隠蔽性に優れる塗装鋼板が得られることを見出した。
そして、さらに鋭意研究を重ねた結果、素地鋼板として硝酸水溶液で酸洗処理した鋼板を用いることで、前記酸洗処理の作用によって前記鋼板表面上に緻密な保護膜が形成されるため、前記塗膜の総膜厚が薄い場合であっても、鋼板表面に亜鉛系めっき層を形成することなく、良好な耐食性を具えることができることを見出した。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その要旨構成は以下の通りである。
(1)硝酸水溶液で酸洗処理した素地鋼板の両面にクロムを含有しない化成皮膜を有し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に着色顔料を含有する下塗り塗膜を有し、該下塗り塗膜上に、光輝剤を含有する有機樹脂皮膜である上塗り塗膜を有し、かつ前記下塗り塗膜と前記上塗り塗膜の総膜厚を10μm以下とすることを特徴とする塗装鋼板。
(2)前記下塗り塗膜は、着色顔料の含有量が15質量%以上とすることを特徴とする上記(1)記載の塗装鋼板。
(3)前記下塗り塗膜は、着色顔料としての黒色顔料の含有率が1質量%以上とすることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の塗装鋼板。
(4)前記黒色顔料は、カーボンブラックであることを特徴とする上記(3)記載の塗装鋼板。
(5)前記上塗り塗膜は、光輝剤の含有量が0.1〜10質量%であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1記載の塗装鋼板。
(6)前記光輝剤は、鱗片状Alであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか1記載の塗装鋼板。
(7)前記下塗り塗膜の膜厚は2〜9μmであり、前記上塗り塗膜の膜厚は1〜8μmであることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか1記載の塗装鋼板。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか1記載の塗装鋼板を用い、該塗装鋼板の前記一方の面が凸表面になるようにプレス加工を施して形成してなる加工品。
(9)鋼板の両面に対して、常温の5〜40mass%硝酸水溶液に30秒未満の間浸漬させる酸洗処理を施した後、水洗、乾燥させ、その後、鋼板の酸洗処理面に、化成処理液を塗布・乾燥させて化成皮膜を形成した後、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に着色顔料及び有機樹脂を含有する塗料を塗布・乾燥させて下塗り塗膜を形成した後、該下塗り塗膜上に、光輝剤及び有機樹脂を含有する塗料を塗布・乾燥させて上塗り塗膜を形成することを特徴とする塗装鋼板の製造方法。
この発明によれば、下塗り塗膜及び上塗り塗膜の総膜厚が10μm以下と薄い場合であっても、輝度感並びに素地色及び素地疵の隠蔽性に優れ、さらに、亜鉛系めっき層を形成することなく良好な耐食性を具える塗装鋼板、加工品及び塗装鋼板の製造方法の提供が可能となった。
以下、本発明の詳細と限定理由を図面を用いて説明する。図1は、本発明の塗装鋼板の断面を模式的に示したものである。
本発明の塗装鋼板は、図1に示すように、硝酸水溶液で酸洗処理した素地鋼板2の両面にクロムを含有しない化成皮膜3A,3Bを有し、該鋼板の少なくとも一方の面に、着色顔料を含有する下塗り塗膜4を形成し、該下塗り塗膜4上に、光輝剤5を含有する有機樹脂皮膜である上塗り塗膜6を形成し、かつ前記下塗り塗膜4と前記上塗り塗膜6の総膜厚を10μm以下とすることを特徴とする塗装鋼板1である。以下に、各構成要素についての詳細を述べる。
(素地鋼板)
本発明の塗装鋼板に用いる素地鋼板は、硝酸水溶液で酸洗処理を施した素地鋼板を用いることを特徴とする。硝酸水溶液で酸洗処理を施すことにより、素地鋼板表面に緻密な保護膜が形成される。さらに、酸洗処理を施した両面2aと2b上に、後述するクロムを含有しない化成皮膜3A,3Bを有し、3A上に後述する所定の下塗り塗膜及び上塗り塗膜を有することにより、亜鉛系めっき層を形成することなく良好な耐食性を備えることが可能となるからである。
また、鋼板の成分は、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択することができる。例えば、IF鋼、アルミキルド鋼、クロム含有鋼又はステンレス等の鋼板、さらには高張力鋼板等を用いることができる。
(化成皮膜)
この化成皮膜3A,3Bは、主として耐食性及び密着性を有するとともに、優れた導電性も有するべく形成され、環境の観点よりクロムを含有しない化成皮膜6とする必要がある。密着性を向上するものであれば任意の化成皮膜3A,3Bを用いることができるが、密着性だけでなく耐食性を向上できるものがより好ましい。そのため、密着性及び耐食性の点からシリカ微粒子を含有し、耐食性の点からリン酸及び/又はリン酸化合物を含有することが好ましい。シリカ微粒子は、湿式シリカ、乾式シリカのいずれを用いても構わないが、密着性向上効果の大きいシリカ微粒子、特に乾式シリカを含有することが好ましく、前記シリカ微粒子の平均粒径が100nm以下であることが好ましい。前記リン酸及びリン酸化合物は、例えば、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸など、これらの金属塩や化合物などのうちから選ばれる1種以上を含有すれば良い。さらに、アクリル樹脂などの樹脂、シランカップリング剤などの1種以上を添加してもよい。なお、前記化成皮膜3A,3Bの膜厚は、膜厚が薄いと密着性及び耐食性に不利となる傾向にあり、膜厚が厚いと電磁波シールド性に不利となる傾向があるので、0.02〜1.0μmの範囲であることが好ましい。
上記のような化成皮膜3A,3Bを有することにより、従来のクロメート皮膜と同程度の耐食性、密着性を有することが可能となる。
(下塗り塗膜)
本発明による下塗り塗膜は、図1に示すように、前記化成皮膜3A上に、上塗り塗膜6の下層として形成される。前記下塗り塗膜4は、着色顔料を含有する必要がある。
本発明者らは、下塗り塗膜及び上塗り塗膜の総膜厚を10μm以下に設定した上で、輝度感ならびに素地色及び素地疵の隠蔽性に優れた塗装鋼板を得るための検討を行った。なお、前記輝度感とは、具体的には、鋼板に光が照射した際に、見る方向によっては輝いて、キラキラとメタリック調に見えることであり、本発明においては、定量的に評価するため図2に示すように、45°の角度で前記塗装鋼板に光を入射させ、その入射光の反射した光を受光するときの角度である受光角度が45°の位置に変角受光器を設け、この受光器が測定した明度(L値)として評価する。
なお、図3(a)及び(b)は、従来の塗装鋼板の塗膜と入射光・反射光との関係、図4は、本発明の塗装鋼板の塗膜と入射光・反射光との関係を示した模式図である。
まず、図3(a)に示すように、化成処理を施した亜鉛めっき鋼板102上に、透明の下塗り塗膜及び着色顔料を含有する上塗り塗膜104を形成した従来の塗装鋼板101では、下塗り塗膜103と上塗り塗膜104の総膜厚T1を10μm以下にした場合、前記上塗り塗膜104中に着色顔料を含有させているため、前記素地鋼板102の素地面の色や疵が透けて見えることはないが、光輝剤が含有されていないため、入射光及び前記鋼板2で反射した光が前記上塗り塗膜104中で吸収されるか、または散乱する結果、良好な輝度感を得ることができない。
次に、図3(b)に示すように、上塗り塗膜204中に着色顔料及び光輝剤205を含有する従来の塗装鋼板201では、前記上塗り塗膜204中に着色顔料を含有しているため、前記鋼板202の素地面の色や疵が透けて見えることなく、また、光輝剤205が入射光を反射するため、良好な輝度感を得ることができる。しかし、前記反射光のうち、前記上塗り塗膜204中の表層部に位置する光輝剤により反射する光以外は、前記上塗り塗膜204中で吸収されるか、または散乱するため、所望の輝度感を得るためには、前記光輝剤205を多量に含有させなければならない。そのため、塗膜の総膜厚T2を少なくとも10μm以下に設定した場合には、十分な量の光輝剤を含有させるのは難しい。また、十分な量の光輝剤を含有させることができたとしても、塗膜の強度低下やバリア性低下等の問題が生じ、プレス性や耐食性の劣化の恐れがあった。
このため、本発明者らは、図4に示すように、下塗り塗膜4中に着色顔料を含有させることで素地鋼板2の素地色及び素地疵の隠蔽性を実現し、上塗り塗膜4中に適量の光輝剤5を含有することで輝度感を実現するような塗膜構成、すなわち、それぞれの塗膜4、6で隠蔽性と輝度感を機能分担した構成により、前記光輝剤5で反射した光が前記上塗り塗膜6中で吸収されたり、散乱することが少なくなる。その結果、塗膜の総膜厚Tが10μm以下の薄膜の場合であっても、優れた輝度感ならびに素地色及び素地疵の隠蔽性を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
また、前記下塗り塗膜4は、ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びウレタン樹脂の中から選択される少なくとも1種を含有することが、素地鋼板との密着性、耐食性等を確保する上で好ましい。
また、前記着色顔料は、下塗り塗膜4中の含有量が15質量%以上であることが好ましい。15質量%以上にすると、素地色及び素地疵の隠蔽性が十分となるからである。また、前記着色顔料は、多くなりすぎると塗膜が脆化するため、60質量%以下とすることがより好ましい。
なお、前記着色顔料としては、無機顔料又は有機顔料を用いることができるが、耐光性などに優れることから、無機顔料を用いることが好ましい。無機顔料としては、白色顔料、赤色顔料、黄色顔料、青色顔料又は黒色顔料が使用可能であり、要求される塗膜の性状に応じて適宜選択すればよい。
また、前記着色顔料として、下塗り塗膜4中に、黒色顔料を1質量%以上含有することが好ましい。前記着色顔料に黒色顔料を用いることにより、素地色及び素地疵の隠蔽性が向上する。前記黒色顔料の含有量を1質量%以上にすると、黒色度が高く、素地色及び素地疵の隠蔽性がさらに優れるからである。また、黒色顔料の含有量が5質量%以上であれば、さらに素地色及び素地疵の隠蔽性に優れるため、黒色顔料以外の着色顔料の含有量を低減させることが可能となる。一方、前記黒色顔料が多くなりすぎると塗膜が脆化するため、8質量%以下とすることがより好適である。
さらに、前記黒色顔料は、カーボンブラックであることがより好適である。カーボンブラックを用いれば、少量添加で着色可能であり、高い隠蔽性が確保できるからである。
さらにまた、前記下塗り塗膜4の膜厚は、2〜9μmであることが好ましい。下塗り塗膜4の膜厚が2μm以上であれば、下塗り塗膜の膜厚が均一になり易く、着色顔料の含有量を増やすことができるため、色調が安定し、素地色及び素地疵の隠蔽性が十分となることに加えて、耐食性の点でも好ましいからである。また、前記膜厚が9μm以下では、前記上塗り塗膜6を厚くすることができる結果、十分な輝度感を得ることができるからである。なお、下塗り塗膜の膜厚は、断面を光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察し、1視野につき任意の3箇所の膜厚を求め、少なくとも5視野を観察し、合計15箇所以上の平均値とする。図5は、前記素地鋼板上に、黒色顔料を2.8質量%含有する下塗り塗膜のみを形成した塗装鋼板の下塗り塗膜の膜厚と明度(L値)の関係の一例を示したグラフである。図5から、下塗り塗膜の膜厚が2μm以上の場合には、L値の変動が小さく色調が安定していることがわかる。
(上塗り塗膜)
本発明による上塗り塗膜6は、図1に示すように、前記下塗り塗膜4上に形成された、光輝剤5を含有する有機樹脂皮膜のことである。
前記有機樹脂皮膜の種類としては、ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などが挙げられるが、特に、主として耐汚染性、意匠性、耐傷付き性、バリア性などを付与する点から、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などを使用することが好ましい。
前記光輝剤5とは、図4に示すように、光輝剤表面で入射光を反射することにより前記塗膜に輝度感を与える意匠顔料、いわゆるメタリック顔料のことをいい、光を反射することができる材料であれば特に限定はなく、例えば、Al、CuまたはSUS(ステンレス)などの金属が挙げられる。形状についても特に限定はなく、鱗片状、粒状または繊維状等がある。
また、前記光輝剤5の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましい。0.1質量%以上であれば、上塗り塗膜6内で前記光輝剤5が何層も重なりあって形成され、該光輝剤で素地鋼板2の表面を十分に覆うことができる結果、安定した輝度感が得ることができるからである。10質量%以下とすると、上塗り塗膜6の成膜性が良好となるからである。
前記光輝剤5は、特に鱗片状Alであることが好ましい。Alは、光輝剤として効果が高く、さらに一般的でありかつ柔軟性に富むためであり、加えて、形状を鱗片状にすると、上塗り塗膜6内に、素地鋼板2の表面を効果的に被覆することができるからである。ここでいう「鱗片状Al」とは、具体的には、平均粒径が5〜50μm、平均厚が0.02〜0.7μmのものを意味する。また、平均粒径と平均厚は、光学顕微鏡又は電子顕微鏡で観察して任意の10個について平均値を求めたものであり、平均粒径は、鱗片状Alの平面部を平面に対して垂直方向から観察したときの、最大径と最小径の平均値を1個のAlの粒径として10個の平均値、前記平均厚は、鱗片状Alを断面方向の任意の2箇所で測定したときの厚さの平均値を1個のAlの厚さとして10個の平均値とする。なお、鱗片状Alを上塗り塗膜6中に含有させる場合、あらかじめ有機樹脂で被覆することが好ましい。これによって、上塗り塗膜を構成する有機樹脂との密着性が高まり、バリア性(耐塩酸性や耐アルカリ性)が向上するからである。被覆する有機樹脂の厚みは0.02〜0.08μmとすることが、良好なバリア性が得られる点でより好適である。また、前記鱗片状Alを表面被覆する有機樹脂としては、アクリル樹脂等を用いることができる。
なお、前記上塗り塗膜6は、架橋剤により硬化させた前記ポリエステル系樹脂と、平均粒子径が3〜40μm、ガラス転移温度が70〜200℃でかつ前記ポリエステル系樹脂よりも高硬度である樹脂粒子とを含有することが好ましい。
前記ポリエステル系樹脂を硬化させる架橋剤としては、例えばメラミン樹脂、尿素またはイソシアネートを用いることがプレス加工性と耐薬品性のバランスの点で好ましい。なお、メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとを縮合して得られる生成物のメテロール基の一部または総てをメタノール、エタノール、ブタノールなどの低級アルコールでエーテル化した樹脂である。
また、前記ポリエステル系樹脂は、架橋剤により硬化され塗膜の強靭性が向上し優れたプレス加工性が得られる。使用するポリエステル系樹脂の数平均分子量は5000〜25000、好ましくは10000〜22000、ガラス転移温度Tgが20〜80℃、好ましくは50〜70℃、水酸基価が3〜30 KOHmg/g、好ましくは4〜20 KOHmg/g、酸価が0〜10 KOHmg/g、好ましくは3〜9 KOHmg/gであることが好ましい。
前記ポリエステル系樹脂の数平均分子量が5000以上であれば、塗膜の伸びが十分となり、プレス加工性が向上するとともに、加工後塗膜密着性も向上する傾向がある。一方、数平均分子量が25000以下であると、塗料中に占める樹脂の割合が適度で、希釈剤を使わなくても塗料組成物の粘度が好適になり、適切な塗膜が得られ易い。さらに、他の配合成分との相溶性も向上する傾向がある。また、前記ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgが20℃以上であると、塗膜の強靭性が向上し、十分なプレス加工性が得られる。また、塗膜硬度、加工後塗膜密着性などの特性も向上する傾向がある。一方、ガラス転移温度Tgが80℃以下であると、十分な曲げ加工性も得られ易くなる。さらにまた、前記ポリエステル系樹脂の水酸基価が3KOHmg/g以上であると、架橋反応が容易となるために十分な塗膜硬度が得られ易い。一方、水酸基価が30 KOHmg/g以下であれば、十分な加工性が得られ易い。また、ポリエステル系樹脂の酸価が10 KOHmg/g以下であると、他の配合成分との相溶性が向上する傾向がある。
なお、前記ポリエステル系樹脂は、多塩基酸と多価アルコールとを常法により縮重合させることで得られるが、生成したポリエステル系樹脂の遊離カルボキシル基が極く僅かで酸価が低い場合、該ポリエステル系樹脂の水酸基の一部をカルボン酸で修飾し、酸価を3KOHmg/g以上に増やす(但し、10KOHmg/g以内)ことにより、素地に対する密着性をより一層向上させ、また、硬化速度をさらに高めることが可能である。前記多塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、シュウ酸、トリメリット酸など、若しくはこれらの低級アルキルエステルまたは酸無水物などが代表的なものとして挙げられる。
また、前記上塗り塗膜の膜厚は1〜8μmの範囲であることが好ましい。前記膜厚を1μm以上とすると、輝度感とプレス成形時の耐疵付き性が十分となるからであり、8μm以下とすると、塗装作業の合理化や省資源化の観点から有利となるからである。なお、上塗り塗膜の膜厚は、断面を光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察し、1視野につき任意の3箇所の膜厚を求め、少なくとも5視野を観察し、合計15箇所以上の平均値とする。
さらにまた、本発明では、前記下塗り塗膜と上塗り塗膜の総膜厚を10μm以下の範囲とする必要がある。従来の塗装鋼板のように塗膜を厚くしても構わないが、本発明では、特に前記塗膜が10μm以下と薄い場合に、上述したような効果を顕著に発揮するからであり、また、前記膜厚が10μm超えの場合、塗膜密着性が低下する傾向にあるためである。
(塗装鋼板の他方の面)
また、本発明の塗装鋼板は、図1に示すように、前記素地鋼板の他方の面2b上に、化成皮膜3Bを形成するものである。本発明の塗装鋼板を、例えば薄型テレビ用パネルとして使用する場合には、プレス加工したパネルの内面になる塗装鋼板の裏面(他方の面)は、溶接や電磁波シールド等の必要性から導電性を有することが好ましい。
他方の面に化成皮膜3Bを有することにより、優れた耐食性及び密着性を有する。さらに、優れた導電性も有すること、具体的には、導電荷重を500g以下とすることが、電磁波シールド性の点で好ましい。さらに好ましくは300g以下とすることである。前記導電荷重は表面抵抗が10-4Ω以下となる最小荷重のことである。
耐食性の要求度がそれほど高くない用途には、この他方の面はクロムを含有しない化成皮膜3Bだけを形成し、特に電磁波シールド性に優れた塗装鋼板として提供できる。
また、耐食性の要求度が高い用途には、この他方の面は、化成皮膜3Bの上に有機樹脂層を設けて耐食性を向上させることが好ましい。有機樹脂層の有機樹脂種としてはエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。有機樹脂層はCaイオン交換シリカを含有することがさらに優れた耐食性を得るために好ましい。
前記有機樹脂層の膜厚が0.1μm以上では耐食性に有利となり、また1μm以下では電磁波シールド性に有利となるので、0.1〜1μmであることが好ましい。
上記いずれかの塗装鋼板は、該上塗り塗膜の面が凸表面になるようにプレス加工を施して、加工品、好ましくは薄型テレビ用パネルを形成することができる。ここで、「上塗り塗膜の面が凸表面」とは、該塗装鋼板の全体形状を規定したものであり、該上塗り塗膜面の中央付近がなか高になり、そのなか高部分に相対する該塗装鋼板の他方の面(すなわち背面側)の中央付近がなか低になった形状を意味する。
上述の加工品は、より詳しくは、上述した本発明の塗装鋼板を深絞り加工、張り出し加工及び曲げ加工のうちのいずれか1以上のプレス加工によって得ることができる。該加工品は、電磁波シールド性が要求される電子機器及び家電製品等の用途で使用される加工品として好適である。例えば、プラズマディスプレイパネルや、液晶テレビなどの薄型TVの背面パネルに使用すると、大型のパネルであっても優れた電磁波シールド性が発現される。すなわち、本発明は、該上塗り塗膜の面が外部に露出する凸表面になっている上記いずれかの塗装鋼板を用いた薄型テレビ用パネルでもある。
次に、本発明による塗装鋼板の製造方法について説明すると、本発明による塗装鋼板は、鋼板の両面に対して、常温の5〜40mass%硝酸水溶液に30秒未満の間浸漬させる酸洗処理を施した後、水洗、乾燥させ、その後、化成処理液を塗布・乾燥させて化成皮膜を形成した後、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に、着色顔料及び有機樹脂を含有する塗料を塗布・乾燥させて下塗り塗膜を形成した後、該下塗り塗膜上に、光輝剤及び有機樹脂を含有する塗料を塗布・乾燥させて上塗り塗膜を形成することにより製造される。
なお、前記素地鋼板の酸洗処理の条件として、前記硝酸水溶液の濃度を5〜40mass%に限定したのは、濃度が5mass%未満の場合、鋼板表面上に前記緻密な保護膜が形成されにくいため、耐食性が低下し、一方、濃度が40mass%を超えると、前記鋼板が激しく反応するため、表面にムラ模様が発生し、外観を著しく低下させるためである。また、浸漬時間を30秒未満としたのは、30秒以上の場合、前記鋼板表面にムラ模様が発生し、外観を著しく低下させるからである。
また、化成皮膜の形成は、化成処理液を塗布・乾燥させる公知の方法により行なうことができる。前記上塗り塗料及び下塗り塗料の塗布方法は特に限定しないが、好ましくはロールコーター塗装で塗布するのがよい。塗料の塗布後、熱風乾燥、赤外線加熱、誘導加熱などの加熱手段により加熱処理を施し、樹脂を架橋させて硬化させた上塗り塗膜、下塗り塗膜を得る。加熱条件は温度170〜250℃(到達板温)で、時間20〜90秒の処理を行うことが好ましく、これによって前記上塗り塗膜及び下塗り塗膜を形成し、塗装鋼板を製造する。
ここで、加熱温度が170℃以上であれば、架橋反応が十分に進む結果、十分な塗膜性能が得られ易いため好ましい。一方、加熱温度が250℃以下であれば、塗膜の劣化が生じることがなく、意匠性に優れ、さらに塗装作業の合理化や省資源化の観点からも好ましい。また、処理時間が20秒以上であれば、架橋反応が十分に進み易くなるため、十分な塗膜性能が得られる点で好ましい。一方、処理時間が90秒以下であれば、製造コスト面で有利となる。本発明の塗装鋼板は、さらに塗装鋼板裏面の耐食性を高める目的で、前記した有機樹脂層用の塗料を鋼板裏面にも同様の方法で塗装するのが好ましい。
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
板厚0.8mmの冷延鋼板の両面に、前処理として、オルソ珪酸ソーダ(60g/L)添加のアルカリ脱脂液(液温:70℃)中で、対極をステンレス板として電流密度:5A/dmで30秒間の電解脱脂を施した後、水洗し、表1に示す条件の硝酸水溶液中に、所定時間(表1参照)浸漬させて酸洗した後、水洗、乾燥させることにより、素地鋼板を得た。
(i)オモテ面に、湿式シリカ(日産化学工業(株)製 スノーテックス(登録商標)0)2質
量%、リン酸0.8質量%およびZr化合物(第1稀元素化学工業(株)製炭酸ジルコニウムア
ンモニウム)1.2質量%(残部:水)からなる化成処理液を塗布し、加熱20秒後に到達板
温100℃となるように加熱し、湿式シリカ50質量%、リン酸20質量%、Zr化合物30質量%の組成となるオモテ面の化成処理皮膜(0.05μm)を形成した。
(ii)次に、ウラ面に、リン酸Mn9.8質量%、リン酸9.8質量%および還元V(IV)0.4質量%(残部:水)からなる化成処理液を塗布した後、オモテ面に、着色顔料を含有する下塗り塗料(大日本塗料(株)社製Vニット♯160、VP−ZW)を塗布し、加熱30秒後に到達板温が210℃になる加熱処理を行い、リン酸Mn49質量%、リン酸49質量%、還元V(IV)2質量%の組成となるウラ面化成皮膜(0.2μm)と、カーボンブラック2.8質量%、エポキシ変性ポリエステル樹脂(Tg: 75 ℃) 65.3質量%、無機系黄色顔料18.3質量%、防錆顔料12.4質量%、シリカ1.2質量%の組成となる膜厚4μmのオモテ面の下塗り塗膜を形成した。
(iii)その後、オモテ面に、鱗片状Al(平均粒径14μm、平均厚0.4μm)を含有する上塗り塗膜用塗料(大日本塗料(株)社製Vニット♯8900)を、乾燥膜厚が3μmの上塗り塗膜となるように塗布した後、ウラ面に、防錆顔料としてCa交換シリカ(GRACE DAVISON製シールデックスC303)およびMg処理トリポリリン酸2水素Alを添加したエポキシ樹脂を、乾燥膜厚が0.3μmとなるように塗布した後、加熱開始から50秒後に到達板温が230℃となる加熱処理を行い、鱗片状Al0.4質量%を含有し、残部がポリエステル樹脂(Tg: 45℃)80質量部およびメラミン樹脂20質量部の組成となるオモテ面の上塗り塗膜(3μm)と、エポキシ樹脂90質量%、Ca交換シリカ5質量%およびMg処理トリポリリン酸2水素Al 5質量%の組成となるウラ面の有機樹脂層(0.3μm)を形成した。
(実施例2〜5)
実施例2〜5は、硝酸水溶液の濃度および浸漬時間を表1に示す条件で行ったこと以外は、実施例1と同様の工程によりサンプルとなる塗装鋼板を作成した。
(実施例6)
実施例6は、処理工程(iii)において、鱗片状Alの含有量が、1.0質量%となるように上塗り塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様の工程によりサンプルとなる塗装鋼板を作製した。
(実施例7)
実施例7は、処理工程(ii)において、カーボンブラック1.2質量%、無機系黄色顔料14.3質量%、防錆顔料12.4質量%、シリカ1.2質量%、残部エポキシ変性ポリエステル樹脂の組成となる下塗り塗膜を形成し、処理工程(iii)において、鱗片状Alの含有量が0.2質量%となるように上塗り塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様の工程によりサンプルとなる塗装鋼板を作製した。
(実施例8)
実施例8は、処理工程(ii)において、カーボンブラック2.0質量%、無機系黄色顔料8.0質量%、防錆顔料12.4質量%、シリカ1.2質量%、残部エポキシ変性ポリエステル樹脂の組成となる下塗り塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様の工程によりサンプルとなる塗装鋼板を作製した。
(実施例9)
実施例9は、処理工程(ii)において、カーボンブラック5.0質量%、無機系黄色顔料5.0質量%、防錆顔料12.4質量%、シリカ1.2質量%、残部エポキシ変性ポリエステル樹脂の組成となる下塗り塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様の工程によりサンプルとなる塗装鋼板を作製した。
(実施例10)
実施例10は、処理工程(ii)において、カーボンブラック0.8質量%、無機系黄色顔料29.2質量%、防錆顔料12.4質量%、シリカ1.2質量%、残部エポキシ変性ポリエステル樹脂の組成となる下塗り塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様の工程によりサンプルとなる塗装鋼板を作製した。
(実施例11)
実施例11は、処理工程(ii)において、カーボンブラック8.0質量%、無機系黄色顔料2.0質量%、防錆顔料12.4質量%、シリカ1.2質量%、残部エポキシ変性ポリエステル樹脂の組成となる下塗り塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様の工程によりサンプルとなる塗装鋼板を作製した。
(実施例12)
実施例12は、処理工程(iii)において、鱗片状Alの含有量が0.05質量%となるように上塗り塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様の工程によりサンプルとなる塗装鋼板を作製した。
(比較例1)
比較例1は、所定の酸洗処理を施さないこと以外は、実施例1と同様の条件によって、サンプルとなる塗装鋼板を製造した。
(比較例2)
比較例2は、実施例1と同様の鋼板に対して、実施例1と同様の前処理を施した後、水洗し、濃度が10mass%、温度が常温の塩酸水溶液中に、60秒間浸漬させて酸洗したこと以外は、実施例1と同様の条件によって、サンプルとなる塗装鋼板を製造した。
(比較例3)
比較例3は、処理工程(ii)において、カーボンブラックを含有せず、無機系黄色顔料21.1質量%としたこと以外は、実施例1と同様の下塗り塗膜を形成し、処理工程(iii)において、鱗片状Alを含有せず、カーボンブラック2.8質量%を含有し、残部がポリエステル(Tg:45℃)80質量部、メラミン20質量部の組成となる膜厚4μmの上塗り塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様の工程によりサンプルとなる塗装鋼板を作製した。
(比較例4)
比較例4は、処理工程(ii)において、カーボンブラックを含有しない、エポキシ変性ポリエステル樹脂(Tg:75 ℃)66質量%、無機系黄色顔料20質量%、防錆顔料12.4質量%、シリカ1.6質量%の組成となる4μmの下塗り塗膜を形成し、処理工程(iii)において、カーボンブラック1質量%、鱗片状Al(平均粒径4μm、平均厚0.3μm)4質量%を含有し、残部が、エポキシポリエステル樹脂(Tg:45℃)70質量部およびメラミン樹脂15質量部の組成となる膜厚15μmの上塗り塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様の工程によりサンプルとなる塗装鋼板を作製した。
以上のようにして得られた塗装鋼板について各種試験を行った。本実施例で行った試験の評価方法を以下に示す。
<オモテ面の評価>
(1)輝度感
輝度感は、45°の角度で各塗装鋼板に入射した光の受光角度45°での明度(L値)を変角測色計(スガ試験機(株)製VC−2)を用いて測定した。以下の評価基準に従って評価し、評価結果を表1に示す。
○:100以上
△:90以上100未満
×:90未満
(2)素地面隠蔽性
素地面隠蔽性は、化成皮膜形成前の前記鋼板のオモテ面を、先端が金属のペンで傷を付けたのち、前記した処理工程を行って各塗装鋼板を作製し、オモテ面を目視で観察した。評価は以下の評価基準に従って行った。評価結果を表1に示す。
○:傷がわからない
△:傷がややわかる
×:傷が明瞭にわかる
(3)塗膜密着性
各塗装鋼板のオモテ面を外側、ウラ面を内側にしてウラ面同士を合わせるように曲げ加工した。その際、ウラ面間に試験片と同板厚の鋼板を、1枚挟んで密着曲げ加工した後、塗装鋼板の折り曲げ部分にニチバン(株)製のセロハン粘着テープを貼り付け、これを引き剥がした後の剥離状態を評価した。
○:異常なし
×:塗膜剥離あり
(4)プレス時の耐疵付き性
各塗装鋼板を、ブランク径67mmφ、ポンチ径33mmφ、絞り速度380mm/s、しわ押さえ圧20kNで、円筒カップ成形した後の、側壁部の塗膜の損傷を目視により評価した。
○:損傷発生せず
△:若干の損傷が認められた
×:損傷発生した
(5)クロスカット部耐食性
実施例及び比較例の各サンプルについて、以下の耐食性評価を行った。具体的には、各サンプルに対して、カッターで素地鋼に達するクロスカットを施し中性塩水噴霧試験(JIS Z2371−2000)に準拠した塩水噴霧試験を500時間行った後、各サンプルのカット部からの最大ふくれ幅の状態を観察し、以下の基準に従って評価した。評価結果を表1に示す。
○:ふくれ幅 3mm以下
△:ふくれ幅 3mm超〜5mm以下
×:ふくれ幅 5mm超
<ウラ面の評価>
(6)導電性
低抵抗測定装置(ロレスタGP:三菱化学(株)製:ESPプローブ)を用い、各塗装板のウラ面の表面抵抗値を測定した。その時、プローブ先端にかかる荷重を20g/sで増加させ、表面抵抗が10-4Ω以下になった時の荷重値で以下のように評価した。
表面抵抗が10-4Ω以下になった時の荷重値
○:10点測定の平均荷重が300g以下
△:10点測定の平均荷重が300g超500g以下
×:10点測定の平均荷重が500g超
Figure 2010052363
表1より、実施例1〜11及び比較例1〜2,4のサンプルは、優れた輝度感を有している。実施例12については、光輝剤の含有量が好適範囲より少ないため、実施例1〜11に比べて若干輝度感が劣っていることがわかった。また、比較例4については、優れた輝度感を有するものの、膜厚が10μmを超えているため、塗膜密着性に劣ることがわかった。さらに、実施例1〜7,9,11のサンプルは、いずれも、塗膜の総膜厚が7μmの薄膜でありながら、輝度感、素地面隠蔽性、塗膜密着性、プレス時の耐疵付き性及びクロスカット部耐食性についても良好な値を得ていることがわかった。実施例8は、着色顔料の含有量が好適範囲よりも少ないため、また、実施例10は、黒色顔料の含有量が好適範囲よりも少ないため、共に、若干素地面隠蔽性に劣ることがわかった。
さらに、実施例1〜12の塗装鋼板は、比較例1〜2の塗装鋼板に比べ、いずれも良好なクロスカット部耐食性を有していることがわかった。
この発明によれば、下塗り塗膜及び上塗り塗膜の総膜厚が10μm以下と薄い場合であっても、輝度感並びに素地色及び素地疵の隠蔽性に優れ、さらに、亜鉛系めっき層を形成することなく良好な耐食性を具える塗装鋼板、加工品及び塗装鋼板の製造方法の提供が可能になった。
本発明に従う塗装鋼板を模式的に示した断面図である。 輝度感の測定方法を説明するための図である。 (a)及び(b)は、従来の塗装鋼板の塗膜の構成を変化させたときの光線との関係を説明するための塗装鋼板の断面図である。 本発明に従う塗装鋼板の塗膜の構成を変化させたときの光線との関係を説明するための塗装鋼板の断面図である。 下塗り塗膜膜厚に対する明度(L値)の変化の一例を示すグラフである。
符号の説明
1、101,201 塗装鋼板
102、202 化成処理を施した亜鉛めっき鋼板
2 硝酸水溶液で酸洗処理した素地鋼板
3A,3B クロムを含有しない化成皮膜
4、103、203 下塗り塗膜
5、205 光輝剤
6、104、204 上塗り塗膜

Claims (9)

  1. 硝酸水溶液で酸洗処理した素地鋼板の両面にクロムを含有しない化成皮膜を有し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に着色顔料を含有する下塗り塗膜を有し、該下塗り塗膜上に、光輝剤を含有する有機樹脂皮膜である上塗り塗膜を有し、かつ前記下塗り塗膜と前記上塗り塗膜の総膜厚を10μm以下とすることを特徴とする塗装鋼板。
  2. 前記下塗り塗膜は、着色顔料の含有量が15質量%以上とすることを特徴とする請求項1記載の塗装鋼板。
  3. 前記下塗り塗膜は、着色顔料としての黒色顔料の含有率が1質量%以上とすることを特徴とする請求項1又は2記載の塗装鋼板。
  4. 前記黒色顔料は、カーボンブラックであることを特徴とする請求項3記載の塗装鋼板。
  5. 前記上塗り塗膜は、光輝剤の含有量が0.1〜10質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載記載の塗装鋼板。
  6. 前記光輝剤は、鱗片状Alであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の塗装鋼板。
  7. 前記下塗り塗膜の膜厚は2〜9μmであり、前記上塗り塗膜の膜厚は1〜8μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の塗装鋼板。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項記載の塗装鋼板を用い、該塗装鋼板の前記一方の面が凸表面になるようにプレス加工を施して形成してなる加工品。
  9. 鋼板の両面に対して、常温の5〜40mass%硝酸水溶液に30秒未満の間浸漬させる酸洗処理を施した後、水洗、乾燥させ、その後、鋼板の酸洗処理面に、化成処理液を塗布・乾燥させて化成皮膜を形成した後、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に着色顔料及び有機樹脂を含有する塗料を塗布・乾燥させて下塗り塗膜を形成した後、該下塗り塗膜上に、光輝剤及び有機樹脂を含有する塗料を塗布・乾燥させて上塗り塗膜を形成することを特徴とする塗装鋼板の製造方法。
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