JP4983306B2 - 塗装鋼板、加工品及び薄型テレビ用パネル - Google Patents
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Description
(1)鋼板の両面に亜鉛系めっき層及びクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に、下塗り塗膜を形成し、該下塗り塗膜上に、上塗り塗膜を形成し、バーリング加工を施した塗装鋼板であって、前記バーリング加工後の下塗り塗膜/化成皮膜界面近傍に部分的な欠陥を有し、該欠陥の生成割合が5〜60%であり、かつ下塗り塗膜と上塗り塗膜の合計膜厚が10μm超え30μm以下であることを特徴とする塗装鋼板。
本発明の塗装鋼板は、鋼板の両面に亜鉛系めっき層及びクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に、下塗り塗膜を形成し、該下塗り塗膜上に、上塗り塗膜を形成した後にバーリング加工が施され、該バーリング加工後の下塗り塗膜/化成皮膜の界面近傍に、部分的な欠陥を有し、該欠陥の生成割合が5〜60%であり、かつ下塗り塗膜と上塗り塗膜の合計膜厚が10μm超え30μm以下であることを特徴とする塗装鋼板である。
本発明の塗装鋼板の鋼板は両面に亜鉛系めっき層を有する。亜鉛系めっき層は耐食性に優れる。また、亜鉛系めっき層は化成皮膜との密着性が優れるために、本発明の塗装鋼板は加工後の耐食性に優れる。また、該めっき層は導電性を有するので、該めっき層の上に化成皮膜を形成したとき、あるいは該化成皮膜の上に有機樹脂層を形成したときに導通点として作用し、本発明の塗装鋼板の電磁波シールド性が発現される。
亜鉛系めっき層を有するめっき鋼板の両面に化成皮膜を形成する。前記化成皮膜は、環境の観点よりクロムを含有しない化成皮膜とする。この化成皮膜は、主としてめっき層と下塗り塗膜との密着性向上のために形成される。密着性を向上するものであればどのようなものでも支障はないが、密着性だけでなく耐食性を向上できるものがより好ましい。密着性と耐食性の点からシリカ微粒子を含有し、耐食性の点からリン酸及び/又はリン酸化合物を含有することが好ましい。シリカ微粒子は、湿式シリカ、乾式シリカのいずれを用いても構わないが、密着性向上効果の大きいシリカ微粒子、特に乾式シリカが含有されることが好ましい。リン酸やリン酸化合物は、例えば、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸など、これらの金属塩や化合物などのうちから選ばれる1種以上を含有すれば良い。さらに、アクリル樹脂などの樹脂、シランカップリング剤などの1種以上を添加してもよい。
下塗り塗膜は、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上であって、上塗り塗膜の下層として形成される。バーリング加工後の前記下塗り塗膜は、バーリング加工後の下塗り塗膜/化成皮膜の界面近傍に、内部応力低減するための部分的な欠陥を生成させ、該欠陥の生成割合が5〜60%となる必要がある。本発明者らは、塗装鋼板にバーリング加工を行うと、図2に示すように、加工部分の塗膜が剥離するという問題について、バーリング加工によって塗膜全体に生じる応力が塗膜の剥離と関係していることに着目し、問題の解決策について鋭意検討を行った。その結果、バーリング加工時に前記下塗り塗膜中に積極的に欠陥を生成させ、生成した前記欠陥の割合が5〜60%となるように制御することで、バーリング加工時に発生する塗膜/化成皮膜の部分的欠陥の発生により、バーリング加工時に塗膜にかかる応力を低減し、塗膜の剥離を抑止することができることを見出した。
上塗り塗膜は、前記下塗り塗膜上に、形成する有機樹脂皮膜である。この有機樹脂皮膜としては、ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などが挙げられるが、特に、主として耐汚染性、耐傷付き性、バリア性などを付与する点から、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などを使用することが好ましい。
塗装用亜鉛系めっき鋼板として、各々板厚0.5mmの電気亜鉛めっき鋼板(めっき種記号:EG)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(Fe含有量:10質量%、めっき種記号:GA)、溶融亜鉛めっき鋼板(めっき種記号:GI)、溶融Zn−Alめっき鋼板(Al含有量:4.5質量%、めっき種記号:GF)、黒色化電気亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板(Ni含有量:12質量%、めっき種記号:EZNB)および溶融Zn−Alめっき鋼板(Al含有量:55質量%、めっき種記号:GL)を準備した。めっき鋼板のめっき付着量を表1に示す。なお、鋼板の一方の面(オモテ面)と他方の面(ウラ面)のめっき付着量、およびめっき組成は同一とした。さらに、ウラ面のめっき層のRa(算術平均粗さ)は0.8μmとなるようにした。準備しためっき鋼板に脱脂処理を行った後、以下の(i)〜(iV)の処理工程を行い、塗装鋼板を作製した。
(ii)次に、ウラ面に化成処理液を塗布して表3に示す組成のウラ面の化成皮膜を形成した後、オモテ面に表1に示す含有量の顔料を有する下塗り塗料を塗布し、加熱30秒後に到達板温が210℃になる加熱処理を行い、表4に示すオモテ面の下塗り塗膜を形成した。
(iii)その後、オモテ面に上塗り塗膜として表1に示す組成となる上塗り塗膜用塗料を、表1に示す乾燥膜厚となるように塗布した後、ウラ面に、必要に応じて表5の組成となるように防錆顔料を添加した有機樹脂塗料を塗布した後、加熱開始から50秒後に到達板温が230℃となる加熱処理を行い、表1と表2に示すオモテ面の上塗り塗膜とウラ面の有機樹脂層を形成した。
(iV)その後、エリクセン押し出し装置を用いて、試験用鋼板に後述するバーリング加工を施し、バーリング加工部の端面近傍50μm長さの範囲の塗膜/化成皮膜界面近傍の断面を観察し、欠陥生成率をSEM−EDXにより測定した。
(1)バーリング加工後塗膜密着性
バーリング加工後塗膜密着性は、バーリング加工を施した各塗装鋼板に粘着テープを貼り付け、これを引き剥がした後の塗膜の剥離状態を観察し、以下の評価基準に従って評価した。バーリング加工は、5.5mmφの下穴をあけた後、オモテ面を上方とし、図1(b)に示すように、下方から13mmφのパンチで、10mm高さ円筒押し出した。
○:バーリング加工立ち上がり部mにのみわずかな剥離あり
×:連続的な剥離あり
バーリング加工後耐食性は、上記のようにバーリング加工を施した各塗装鋼板にSST試験(塩水噴霧試験:JIS Z 2371−2000)に供し、塗膜の剥離状態を観察し、以下の評価基準に従って評価した。
○:穴端面n側から立ち上がり部mに至らない剥離のみ発生
×:穴端面n側から立ち上がり部mに至る剥離が発生
深絞り加工性は、試験片をポンチ径33mmφ、ポンチ肩R:2mm、絞り比2.0、ポンチ速度:250mm/秒、オモテ面がポンチ側となるようにして成形し、破断時のシワ押さえ荷重で以下のように評価した。
シワ押さえ荷重
○:4t以上
△:2t以上4t未満
×:2t未満
張り出し加工性は、試験片を100mmφで打ち技き、ポンチ径50mmφ、ポンチ肩R:4mm、ダイ径:70mmφ、ダイ肩R:4mm、シワ押さえ厚を5ton、オモテ面がポンチ側となるようにして円錐台成形を行った。破断時の成形高さで以下のように評価した。
破断時成形高さ
○:16mm以上
△:14mm超16mm
×:14mm以下
曲げ加工性は、試験片のオモテ面を外側、ウラ面を内側にしてウラ面どうしを合わせるように曲げ加工する。その際、ウラ面間に試験片と同板厚の鋼板を1枚、2枚、3枚・・・と全板厚を変化させて挟み曲げ径Rを変化させて密着曲げ加工する。曲げられた試験片のオモテ面側にクラックが入らない最大板厚枚数で以下のように評価した。
オモテ面側にクラックが入らない最大板厚枚数
○:0〜1枚
△:2〜3枚
×:4枚以上
(6)導電性
低抵抗測定装置(ロレスタGP:三菱化学(株)製:ESPプローブ)を用い、塗装板のウラ面の表面抵抗値を測定した。その時、プローブ先端にかかる荷重を20g/sで増加させ、表面抵抗が10−4Ω以下になった時の荷重値で以下のように評価した。
表面抵抗が10−4Ω以下になった時の荷重値
○:10点測定の平均荷重が300g以下
△:10点測定の平均荷重が300g超700g以下
×:10点測定の平均荷重が700g超
図5に示すような、五面をAl板52、一面を幅20mmのフランジ55を有し、開口部を100×100×100mmとしたAl製筐体53の中に20MHzのデジタル発信器54を内蔵させ、開口部にウラ面51bを下面としてフランジ55上に設置したガスケット56に接触させるように試験片(140×140mm)51を乗せ、荷重を39.2N(4Kgf)としてガスケット56と塗装鋼板51の合わせ面から外部に漏洩する20MHz〜1GHzの電磁波ノイズをプリアンプ58で増幅したのち、スペクトラムアナライザー59を用いて測定した。受信用アンテナ57は筐体フランジ部から50mmとし、フランジ55と試験片51の間には厚さ1mmのガスケット56を用いた。なお、ガスケット56はウレタンスポンジに導電布(銅とニッケルをめっきした繊維)を巻き付けたものである。また、電磁波シールド性の評価としては、最大ノイズ強度を用い評価した。めっきのままの原板での最大ノイズ強度は40dB、導電性の無い塗膜を5μm塗布したものでは50dBであり、電磁波シールド性の評価は以下とした。
最大ノイズ強度
○:43dB以下
△:43dB超45dB以下
△:45dB超
これによれば、実施例1〜10の塗装鋼板は、いずれも優れたバーリング加工性及びバーリング加工後耐食性を有し、さらに、深絞り加工性、張り出し加工性、曲げ加工性、導電性及び電磁波シールド性を有していることがわかる。また、短時間で加熱処理を行っても十分な性能が得られており、製造の際の高速操業に非常に適していることが判る。
2 下塗り塗膜
3 化成皮膜
4 下塗り塗膜/化成皮膜界面
5 欠陥
6 上塗り塗膜
7 めっき鋼板
a、b、c 欠陥の発生長さ
L バーリング加工部の長さ
m バーリング加工の立ち上がり部
n バーリング加工の穴端面
51 試験片
51b ウラ面
52 Al板
53 Al製筐体
54 デジタル発信器
55 フランジ
56 ガスケット
57 アンテナ
58 プリアンプ
59 スペクトラムアナライザー
Claims (6)
- 鋼板の両面に亜鉛系めっき層及びクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に、下塗り塗膜を形成し、該下塗り塗膜上に、上塗り塗膜を形成し、バーリング加工を施した塗装鋼板であって、
前記バーリング加工後の下塗り塗膜/化成皮膜界面近傍に部分的な欠陥を有し、該欠陥の生成割合が5〜60%であり、かつ下塗り塗膜と上塗り塗膜の合計膜厚が10μm超え30μm以下であることを特徴とする塗装鋼板。 - 前記下塗り塗膜は、顔料の含有量が、5〜60質量%であることを特徴とする請求項1記載の塗装鋼板。
- 前記顔料は、TiO2、Cブラック、Mg処理トリポリリン酸Al、Ca処理トリポリリン酸Al及びMg交換SiO2の中から選ばれる1または2種以上であることを特徴とする請求項2記載の塗装鋼板。
- 前記鋼板の他方の面は、導電荷重が500g以下であることを特徴とする請求項1、2または3記載の塗装鋼板。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の塗装鋼板を用い、該塗装鋼板の前記一方の面が凸表面になるようにプレス加工を施して形成してなる加工品。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の塗装鋼板を用い、該塗装鋼板の前記一方の面が外部に露出する凸表面になるようにプレス加工を施して形成してなる薄型テレビ用パネル。
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