JP4360811B2 - プレス成形性と加工部耐食性に優れたプレコート金属板 - Google Patents

プレス成形性と加工部耐食性に優れたプレコート金属板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、家電用、建材用、自動車用材料で、プレス成形を行った後の加工部の屋外耐食性に優れたプレコート金属板に関するものであり、特に、絞り成形のように、金属板に圧縮歪みを伴う加工部位の耐食性に優れるプレコート金属板に関する。
【0002】
【従来の技術】
家電用、建材用、自動車用等に、従来の加工後塗装されていたポスト塗装製品に代わって、着色した有機被膜を被覆したプレコート金属板が使用されるようになってきている。プレコート金属板は、金属板又はめっきを施した金属板に有機被膜を被覆したもので、美観を有しながら、加工性を有し、耐食性が良好であるという特性を有している。
【0003】
プレコート金属板の加工方法は、塗膜を被覆していない金属板と同様の加工方法が適用できるが、成形加工時の塗膜損傷(塗膜の亀裂や剥離)の問題から、従来は、引張歪みのみが作用する曲げ加工が中心であった。しかし、近年になって、圧縮と引張の歪みが作用する絞り成形を施す部位にも、プレコート金属板を適用する要望が高まりつつある。絞り加工性に優れるプレコート金属板の技術として、特許文献1には、プレコート金属板の動的貯蔵弾性率の最小値を規定することで、プレコート金属板を絞り成形したときの塗膜損傷を起こり難くした技術が開示されている。一方、缶材料の分野では、特定のポリエステル樹脂とアルキルエーテル化アミノホルムアルデヒドとを反応させた有機被膜を金属に被覆することで、絞り加工に優れ、且つ、炭酸飲料水に対する耐食性に優れる技術が、特許文献2に開示されている。
【0004】
しかし、これらの技術を単に適用したプレコート金属板は、実際のラインで連続プレス成形を行うと、プレス金型によって塗膜がかじられて、塗膜が削られる問題が発生したり、プレコート金属板の金属原板が破断したりする等して、プレス成形性が劣る。また、これらのプレコート金属板を絞り加工した部材を屋外環境に暴露すると、加工端面部から腐食が発生し易い。
【0005】
【特許文献1】
特開2001-323389号公報
【特許文献2】
特開平5-112755号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明においては、プレコート金属板を連続プレス成形におけるプレス成形性に優れ、且つ、絞り加工部端面部の屋外耐食性に優れるプレコート金属板を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、プレコート金属板を連続プレス成形したときのプレス成形性とプレス成形後の絞り加工端面部の屋外耐食性は、プレコート金属板に被覆した塗膜の物性と関係があることを見出し、かかる知見を基に本発明を完成させたものであって、本発明がその要旨とするところは、以下の通りである。
(1) 化成処理を施した金属板の片面もしくは両面に、以下の特性を有する有機樹脂塗膜を少なくとも1層有してなることを特徴とするプレコート金属板。
a) 塗膜のガラス転移温度(Tg)が40〜120℃であること。
b) 動的粘弾性測定装置で測定した塗膜のゴム状弾性領域における貯蔵弾性率の最小値が2×10Pa以下であること。
c) 塗膜の表面張力が28mN/m以下であること。
d) 塗膜の動摩擦係数が0.15以下であること。
(2) 前記塗膜を構成する主樹脂が、芳香族ジカルボン酸を70モル%以上含む酸成分とエチレングリコール及びプロピレングリコールの一方又は両方を70モル%以上含むポリオール成分から得られる、数平均分子量10000〜30000、水酸基価1〜10mg/KOHのポリエステル樹脂である(1)記載のプレコート金属板。
(3) 前記金属板が、亜鉛めっき鋼板、アルミめっき鋼板、亜鉛系合金めっき鋼板、錫系合金めっき鋼板のいずれか1種である(1)又は(2)記載のプレコート金属板。
(4) 前記化成処理がノンクロメート処理である(1)〜(3)記載のプレコート金属板。
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載のプレコート金属板を成形加工して得られる金属製部品。
(6) (5)記載の金属製部品に、更に上塗り塗料を1層以上塗装してなる金属製塗装部品。
【0008】
【発明の実施の形態】
発明者らは、プレコート金属板を連続プレス加工した際の、プレス成形性とプレス成形後の絞り加工部端面の屋外耐食性は、プレコート金属板に被覆されている塗膜の物性と関係があることを見出した。特に、連続プレス成形したときの深絞り加工部の塗膜損傷は、塗膜のゴム状領域における貯蔵弾性率と関係があり、連続プレス成形時の塗膜かじりの問題は、塗膜表面の表面張力と関係があり、更に、連続プレス成形時の金属原板の破断は、塗膜表面の動摩擦係数と関係があることを見出した。また、絞り加工部端面の耐食性は、塗膜のガラス転移温度(Tg)と関係があることを見出した。
【0009】
本発明のプレコート金属板は、化成処理を施した金属板の片面もしくは両面に、以下の特性を有する有機樹脂塗膜を少なくとも1層有してなることで達せられる。
a) 塗膜のTgが40〜120℃、好ましくは、50〜110℃であること。
b) 動的粘弾性測定装置で測定した塗膜のゴム状弾性領域における貯蔵弾性率の最小値が2×107Pa以下であること。
c) 塗膜の表面張力が28mN/m以下であること。
d) 塗膜の動摩擦係数が0.15以下であること。
【0010】
塗膜のTgが40℃未満であると、プレス加工を行ったとき、後の絞り加工部端面耐食性が低下し、また、120℃超では、プレス加工時に塗膜の伸びが原板である金属板の伸びに追従しにくく、塗膜にクラックが生じ、このクラックから腐食が発生するため不適である。
【0011】
塗膜のTg測定方法としては、プラスチックの転移温度測定方法(JIS K 7121 1987)の示差走査熱量測定(DSC法)に準じて行うことができる。
【0012】
塗膜のゴム状領域における貯蔵弾性率の最小値が2×107Pa超であると、プレコート金属板をプレス加工したときに、絞り加工部で塗膜にクラックが入り、剥離し易いため不適である。貯蔵弾性率の下限については、特に規定するものではないが、樹脂によっては、貯蔵弾性率の値が低すぎると、表面にプレッシャーマークと呼ばれる圧痕が付きやすくなる恐れがあるので、必要に応じて適宜調整する必要がある。ここで、塗膜のゴム状領域における貯蔵弾性率とは、動的粘弾性測定装置にて、一定ひずみ条件下での貯蔵弾性率の温度依存性を測定したときに、塗膜のTgより高い温度において、貯蔵弾性率が平衡状態となる領域のことである。本発明のゴム状領域の条件は、前述の試験方法以外に、一般的に知られている粘弾性試験方法から、それぞれの換算則を用いて、計算により求めることも可能である。例えば、粘弾性材料については、時間-温度の換算則が成立することが知られているため、動的粘弾性試験の貯蔵弾性率の周波数依存曲線や応力緩和試験の時間依存曲線から塗膜のゴム状領域の値から求めること、クリープ試験から得られるクリープコンプライアンス(クリープコンプライアンスは弾性率の逆数と比例関係となる)を弾性率に換算して求めること、等が挙げられる。これら粘弾性もしくはレオロジーの一般的な知見については、公知の文献、例えば、J. D. Ferry著の「Viscoelastic Properties」(発行:John Wiley and Sons(1980))や日本レオロジー学会編の「講座・レオロジー」(発行:高分子刊行会(2000))等を参考とすることができる。塗膜のゴム状領域での貯蔵弾性率は、塗膜を構成する主樹脂の分子量や、主樹脂と架橋剤の種類及びこれらの配合比を変えることで、コントロールできる。これらの因子については、特に規定するものではないが、必要に応じて適宜選定する必要がある。
【0013】
塗膜の表面張力が28mN/m超であると、プレス成形を行ったときに金型による塗膜のかじりが発生しやすく、不適である。塗膜の表面張力は、塗膜中に一般に公知のレベリング剤、スリップ剤、潤滑剤等を添加し、これらの種類及び量によってコントロールすることができる。これら添加剤の種類及び量については、特に規定するものではないが、必要に応じて適宜選定する必要がある。
【0014】
塗膜の表面張力を28mN/m以下に設定した場合、上記添加剤を塗料中に配合することで、加工性に寄与する潤滑剤が塗膜表面ににじみ出て、加工性が向上する。なお、塗膜の表面張力を28mN/m以下にするための添加剤として、潤滑剤は、塗膜表面ににじみ出て、加工性が向上するので、特に好ましい。
【0015】
塗膜の表面張力の測定は下記のとおりである。接触角測定装置(協和界面科学社製:CA-X型)を用いて、水及び流動パラフィン(和光純薬工業社製)の静的接触角を測定した。更に、水及び流動パラフィンの表面張力、分散力成分、極性成分から塗膜の表面張力を算出した。(参考文献:井本稔「表面張力の理解のために」p.127 (1993)高分子刊行会)
塗膜表面の動摩擦係数が0.15超であると、プレス成形時に原板の金属板が破断し易いため、不適である。塗膜の動摩擦係数は、塗膜中にワックス等の添加剤を添加することで、コントロールすることができる。ワックスは、一般に公知のワックス、例えば、ポリ四フッ化エチレンや、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系、天然パラフィン、合成パラフィン等の炭化水素系、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド等の脂肪酸アマイド系、脂肪酸の低級アルコール、硬化ひまし油等のエステル系、アセチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール系、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス等が、代表的なものとして挙げられる。特に、エステル系のワックスは、他のものに比べて、動摩擦係数が大きく低下するため、より好適である。ワックスの添加量は、特に規定するものではないが、結合剤となる樹脂100質量部に対して0.5〜15質量部、好ましくは1〜10質量部が適当である。0.5質量部未満であると、塗膜の動摩擦係数が0.15超になることがあり、15質量部超であると、塗装時にはじきと呼ばれる塗装欠陥が生じることがある。
【0016】
塗膜の動摩擦係数測定法を下記に示す。
【0017】
表面性測定機HEIDON-14型(新東科学社製)を用いて、荷重200g、ボール圧子φ10mm、移動速度50mm/分の条件にて、動摩擦係数を測定した。
【0018】
本発明において、結合剤として塗膜を構成する主樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、塩ビ系樹脂、及び、それらの変性樹脂等が、代表的なものとして挙げられる。特に好ましくは、成形加工性の面から、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂が良い。
【0019】
特に、ポリエステル樹脂の場合は、酸成分とポリオール成分を下記の如く規定することが好ましい。すなわち、酸成分の70モル%以上が、テレフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。酸成分として芳香族ジカルボン酸を70モル%以上にすると、塗膜が硬く強じんになり、成形加工性が良くなる。芳香族ジカルボン酸の量が70モル%未満の場合、塗膜と素材の密着性が不充分となりやすい。
【0020】
また、ポリオール成分の70モル%以上が、エチレングリコール及びプロピレングリコールの一方又は両方であることが好ましい。70モル%未満の場合、塗膜と素材の密着性が不充分になるとともに、耐食性も低下する傾向にある。
【0021】
本発明に使用される主樹脂の数平均分子量は10000〜30000、水酸基価は1〜10mg/KOHの範囲であることが好ましい。数平均分子量が10000未満の場合、加工性が劣る傾向にあり、一方、30000を超えると、樹脂粘度が上がり、作業性及び塗装性が劣る傾向にある。また、水酸基価が1mg/KOH未満の場合、素材との密着性及び加工性が劣る傾向にあり、一方、水酸基価が10mg/KOH超えると、未反応の酸成分やグリコール成分が多くなりやすく、耐食性が低下する傾向にある。
【0022】
主樹脂と共に使用される硬化剤の例としては、i)アミノ樹脂、ii)ブロック化ポリイソシアネートが一般的である。i)アミノ樹脂硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂や、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、スピログアナミン樹脂等を挙げることができるが、メラミン樹脂が好ましく、中でも、メチルエーテル化メラミン樹脂、又は、メチルエーテル化メラミン樹脂とブチルエーテル化メラミン樹脂との混合物であることが好適である。
【0023】
上記メチルエーテル化メラミン樹脂と混合して使用するブチルエーテル化メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとの付加反応生成物(1量体又は多量体)であるメチロール化メラミン樹脂中のメチロール基の一部又は全部をn-ブチルアルコール又はイソブチルアルコールでエーテル化したものである。
【0024】
上記好ましいメチルエーテル化メラミン樹脂の市販品としては、例えば、サイメル303、同325、同327、同350、同730、同736、同738(いずれも三井サイテック(株)製)、メラン522、同523(いずれも日立化成(株)製)、ニカラックMS001、同MX650(いずれも三和ケミカル(株)製)、スミマールM-55(住友化学(株)製)、レジミン740、同747(いずれもモンサント(株)製)、等のメチルエーテル化メラミン樹脂;サイメル232、同266、同XV-514(いずれも三井サイテック(株)製)、ニカラックMX500、同MX600、同MS95(いずれも三和ケミカル(株)製)、レジミン753、同755(いずれもモンサント(株)製)等のメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂、等を挙げることができる。
【0025】
上記好ましいブチルエーテル化メラミン樹脂の市販品としては、例えば、ユーバン20SE、同28SE(いずれも三井化学(株)製)、スーパーベッカミンJ-820-60、同L-117-60、同L-109-65、同G-821-60、同47-508-60、同L-118-60(いずれも大日本インキ化学工業(株)製)、等を挙げることができる。メチルエーテル化メラミン樹脂にブチルエーテル化メラミン樹脂を併用することにより、ポリエステル樹脂との相溶性の劣るブチルエーテル化メラミン樹脂が塗膜表面に移行し、この硬化膜が耐汚染性に優れた効果を発揮すると共に、塗膜硬度にも有利である。塗膜内部の架橋は、主としてメチルエーテル化メラミン樹脂によって行うことができることから、加工性の点でも有利である。
【0026】
アミノ樹脂の添加量は、有機樹脂100質量部に対して、0.5〜50質量部であることが好適である。0.5質量部未満の場合、硬化性が不充分で、プレコート膜の耐食性、耐溶剤性が満足しない。一方、50質量部以上の場合、硬化剤同士の反応が起こり、充分な成形加工性を発揮できない。
【0027】
メチルエーテル化メラミン樹脂又はこの樹脂と前記他のアミノ樹脂との混合物を使用する場合には、硬化触媒として、酸触媒を併用して、硬化反応を促進させることが好ましい。
【0028】
この硬化触媒としては、強酸、強酸の中和物等があり、代表例として、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸等の強度の酸であるスルホン酸化合物、これらのスルホン酸化合物のアミン中和物等を挙げることができる。これらの内、塗料の安定性、反応促進効果、得られる塗膜の物性等の面から、p-トルエンスルホン酸のアミン中和物及び/又はドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和物が好適である。
【0029】
硬化触媒の使用量は、主樹脂と硬化剤の合計100質重量部に対して、酸化合物の量に換算した値として、0.1〜3.0質量部であることが好適である。
【0030】
硬化剤としてのii)ブロック化ポリイソシアネートは、ポリイソシアネートの遊離イソシアネート基を、フェノール、クレゾール、芳香族第二アミン、第三級アルコール、ラクタム、オキシム等のブロック剤でブロック化させた化合物が好ましい。特に、非黄変性のヘキサメチレンジイソシアネート及びその誘導体、トリレンジイソシアネート及びその誘導体、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及びその誘導体、キシリレンジイソシアネート及びその誘導体、イソホロンジイソシアネート及びその誘導体、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びその誘導体等のブロック化ポリイソシアネート好ましい。
【0031】
さらに、スミジュール(住友バイエルウレタン株式会社登録商標)、デスモジューズ(住友バイエルウレタン株式会社登録商標)、コロネート(日本ポリウレタン株式会社登録商標)等の市販のイソシアネート化合物も使用できる。
【0032】
イソシアネート化合物のイソシアネート基と主樹脂の水酸基との比(NCO/OH)は、0.75〜1.25(モル比)の割合で配合するのがよい。好ましくは、0.85〜1.15が好ましい。(NCO/OH)の配合比が0.75より小さい場合は、塗膜の硬化が不充分であり、期待される塗膜の硬度、強度が得られ難くい。(NCO/OH)の配合比が1.25より大きい場合は、過剰のイソシアネート基同士あるいはウレタン結合との副反応が生じて、塗膜の加工性が低下する傾向にある。
【0033】
本発明のプレコート金属板の塗膜中には、必要に応じて、着色顔料、体質顔料、無機防錆顔料を併用して添加することができる。着色顔料としては、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジリコニウム(ZrO2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸バリュウム(BaSO4)、アルミナ(Al2O3)、カオリンクレー、カーボンブラック、酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)等の無機顔料や、有機顔料等の一般に公知の着色顔料が挙げられる。体質顔料も一般に公知のものを使用することができる。無機防錆顔料としては、ストロンチウムクロメート、カルシウムクロメート等の一般に公知のクロム系防錆顔料や、ノンクロメート系防錆顔料として、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、リン酸アルミ、亜リン酸アルミ、モリブデン酸、カルシウムシリケート、アルミニウム粉末、亜鉛粉末の他、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸亜鉛アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム、ハイドロカルマイト等の防錆顔料が、代表的なものとして挙げられ、これらは一種もしくは二種以上の混合物として用いられる。ノンクロメート防錆顔料の場合、環境負荷が小さくなるため、より好適である。
【0034】
これら無機防錆顔料は、樹脂(及び硬化剤)100質量部に対して5〜80質量部、好ましくは10〜60質量部添加するのが良い。5質量部未満では、防錆性が不充分となりやすく、一方、80質量部を越えると、塗料の安定性が悪くなる傾向にある。なお、無機防錆顔料の代わりに、有機系防錆剤の使用、もしくは併用も可能である。
【0035】
有機防錆剤の具体例としては、鋼材表面を不働態化し、電位を均一にする作用のある導電性ポリアニリン、塗膜と鋼材の密着性を強固にする2-ベンゾチアゾチオコハク酸や、ジフェニルチオカルバゾン、N,N-ジフェニルエチレンジアミン、S-ジフェニルカルバジド、フェノシアゾリン等が、代表的なものとして挙げられる。これら有機防錆剤の添加量は、有機樹脂(及び硬化剤)100質量部に対して0質量部超40質量部以下、好ましくは2〜30質量部添加するのが良い。
【0036】
本発明のプレコート金属板に被覆した塗膜層は、単層でも2層以上の多層塗膜でも良い。また、前記塗膜層が2層以上の場合、少なくとも最表層が本発明の条件範囲を満たしていれば良い。また、前記塗膜層が2層以上の場合、最表層以外の塗膜層は、一般に公知のプレコート用塗料を用いても良いが、a)塗膜のTgが40〜120℃である、b)動的粘弾性測定装置で測定した塗膜のゴム状弾性領域における動的貯蔵弾性率の最小値が2×107Pa以下である、の各条件を満たしていると、加工部の耐食性に優れ、より好適である。更に、前記塗膜層が2層以上の塗膜の場合、最下層(最も金属板側)の塗膜には、主に防錆顔料を添加して防錆力を持たせ、これよりも上の層には、主に着色顔料を添加して着色外観を持たせると、耐食性に優れ且つ任意の色調を得ることができるため、なお好適である。
【0037】
また、本発明のプレコート金属板の塗膜中には、必要に応じて、沈殿防止剤や分散剤等の一般に公知の添加剤を添加しても良い。本発明のプレコート金属板を構成する各塗膜を塗布する際には、樹脂を一般に公知の塗料形態にして塗布することができる。例えば、塗料樹脂を溶剤に溶解した溶剤系塗料、エマルジョン化した塗料樹脂を水等に分散した水系塗料、樹脂を粉砕してパウダー化した粉体塗料、粉砕しパウダー化した樹脂を水等に分散させたスラリー粉体塗料、樹脂をフィルム状にして貼り付けるフィルムラミネート、樹脂を溶融させてから塗布する形態等が挙げられる。塗布方法は、いずれも特に限定されず、一般に公知の塗装方法、例えば、ロール塗装、ローラーカーテン塗装、カーテンフロー塗装、エアースプレー塗装、エアーレススプレー塗装、刷毛塗り塗装、ダイコータ−塗装等が採用できるが、切り板やコイル状の金属板を連続的に塗装するためには、ロールコーター塗装、ローラーカーテンコーター塗装、カーテンフロー塗装が好適である。ロール塗装の場合、塗装する塗料の表面張力は25〜38mN/mが好適である。25mN/m未満であると、ロール塗装時に塗料中に泡が混入しやすくなり、塗膜に泡欠陥が発生することがある。38mN/m超であると、ロール塗装時に塗料の転写性が悪くなることがある。また、ローラーカーテン塗装やカーテンフロー塗装の場合は、塗料の表面張力が30mN/m以下であると、より好適である。30mN/m超では、塗料カーテンの安定性が悪く、塗装性が劣ることがある。
【0038】
本発明の塗装鋼板を塗装した後は、熱風オーブン、遠赤外線オーブン、直火型オーブン、誘導加熱型オーブン等の一般に公知のオーブン内で硬化・焼付けを行うことができる。
【0039】
本発明のプレコート金属板に用いる原板は、一般に公知の金属板、例えば、ステンレス鋼板、鋼板、アルミ板、アルミ合金板等を用いることができるが、金属板が亜鉛めっき鋼板、アルミめっき鋼板、亜鉛系合金めっき鋼板、錫系合金めっき鋼板のいずれかであると、加工部端面の耐食性により効果的であるため、より好適である。亜鉛めっき鋼板としては、溶融亜鉛めっき鋼板(例えば、新日本製鐵(株)製「シルバージンク」)や電気亜鉛めっき鋼板(例えば、新日本製鐵(株)製「ジンコート」)等が挙げられる。アルミめっき鋼板としては、溶融アルミめっき鋼板(例えば、新日本製鐵(株)製「アルシート」)等が挙げられる。亜鉛系合金めっき鋼板としては、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(例えば、新日本製鐵(株)製「スーパーアロイ」)、5%アルミ-亜鉛合金めっき鋼板(例えば、新日本製鐵(株)製「スーパージンク」)、55%アルミ-亜鉛合金めっき鋼板(例えば、新日本製鐵(株)製「ガルバリウム」)、アルミ-マグネシウム-亜鉛合金めっき鋼板(例えば、新日本製鐵(株)製「スーパーダイマ」や日新製鋼(株)製「ZAM」)等が挙げられる。錫系合金めっき鋼板としては、亜鉛-錫合金めっき鋼板(例えば、新日本製鐵(株)製「エココートT」)等が挙げられる。
【0040】
なお、本発明のプレコート金属板には、塗膜層を被覆する前に、塗膜密着性を上げるために、金属板上に化成処理を施す必要がある。化成処理は、一般に公知のもの、例えば、塗布クロメート処理、電解クロメート処理、リン酸処理、ジルコニア系処理を使用することができる。また、近年、6価クロムを含有しないノンクロメート処理も開発されているが、これらのノンクロメート前処理を用いると、環境への負荷が低減されるため、より好適である。ノンクロメート前処理の例としては、特開平9-828291号公報、特開平10-251509号公報、特開平10-337530号公報、特開2000-17466号公報、特開2000-248385号公報、特開2000-273659号公報、特開2000-282252号公報、特開2000-265282号公報、特開2000-167482号公報等に記載された技術が挙げられる。化成処理の塗布方法は、浸漬塗布、ロールコーター塗装、リンガーロール塗装、刷毛塗り、スプレー塗装等、一般に公知の塗布方法で塗布することができる。塗布した後は、必要に応じて、強制乾燥や焼付を行っても良い。
【0041】
本発明のプレコート金属板は、プレス成形性と加工部耐食性に優れるため、これを加工して得られる金属製部品は、耐食性に優れ、従来のプレコート金属板を用いて得られた金属製部品よりも加工後の耐食性に優れる。本発明の金属製品の加工方法は、曲げ加工、深絞り加工、張り出し加工、ロールフォーミング加工等、一般に公知の加工方法で加工することができる。
【0042】
本発明のプレコート金属板を加工して得られた金属製部品に、更に上塗り塗料を1層以上塗装すると、加工部端面の耐食性が更に向上したり、意匠外観が向上したりし、より好適である。本発明のプレコート金属板を加工して得られた金属部品上に上塗り塗料を塗装する際は、予め加工されたプレコート金属板の表面を研磨したり、表面上に何らかの化成処理を施す等してから塗装しても良いし、このような処理を施さなくても良い。ただし、研磨や化成処理を実施することで、上塗り塗料密着性が向上する場合があり、必要に応じて適宜選定して実施する必要がある。また、研磨や化成処理の方法は、一般に公知の方法を用いることができる。上塗り塗料に用いる塗料は、一般に公知の塗料、例えば、アクリル系塗料、ポリエステル系塗料、ウレタン系塗料、エポキシ系塗料等が挙げられる。これらの上塗り塗料は、溶剤系塗料、水系塗料、粉体塗料、紫外線硬化型塗料、電子線硬化型塗料等、一般に公知の塗料形態で使用することができる。これらの上塗り塗料には、意匠性を付与する目的で、顔料等を添加して着色することができる。着色方法は、一般に公知の着色方法にて着色することができる。また、上塗り塗料中には、必要に応じて、レベリング剤、スリップ剤、粘度調整剤等、一般に公知の添加剤を添加しても良い。上塗り塗料の塗装方法は、スプレー塗装、刷毛塗り塗装、浸漬塗装、粉体塗装等が挙げられる。上塗り塗装した後は、常温乾燥、加熱焼付硬化、紫外線硬化、電子線硬化等、一般に公知の方法で乾燥硬化することができる。
【0043】
【実施例】
以下、実験に用いた塗料の作成方法について詳細を説明する。
【0044】
(実施例1)
表1に示す樹脂、硬化剤、有機潤滑剤、顔料を混合することで、塗料を作成した。なお、これらの塗料は、本発明例ではいずれも塗料の表面張力として28mN/m以下となるように、添加剤と溶剤とで調整を行った。また、塗料の表面張力は、協和界面科学社製SURFACE TENSIONMETER GBVP-43を用いて測定し、20℃に設定した環境で、100mlのビーカーに測定する塗料を入れ、白金板を浸漬/引き上げることで表面張力値を読み取った。
【0045】
【表1】
Figure 0004360811
【0046】
1) ユニチカ社製ポリエステル樹脂、ユリエーテルUE-9800(加熱残分40%、数平均分子量13000、酸成分:テレフタル酸、イソフタル酸80モル%、ポリオール成分:エチレングリコール、プロピレングリコール80モル%)
2) 東洋紡社製ポリエステル樹脂、GK-880(加熱残分40%、数平均分子量15000、酸成分:テレフタル酸、イソフタル酸82モル%、ポリオール成分:エチレングリコール80モル%)
3) 東洋紡社製ポリエステル樹脂、バイロン29CS(加熱残分30%、数平均分子量22000、酸成分:テレフタル酸・イソフタル酸100モル%、ポリオール成分:エチレングリコール70モル%)
4) ユニチカ社製ポリエステル樹脂、ユリエーテルKZN-8502(水系、固形分28%、数平均分子量12000、酸成分:イソフタル酸80モル%、ポリオール成分:プロピレングリコール80モル%)
5) 三井化学社製ポリエステル樹脂、V-P646(加熱残分60%、数平均分子量5000、酸成分:イソフタル酸40モル%、ポリオール成分:エチレングリコール10モル%)
6) エポキシ樹脂のエポキシ基に、ジアルカノールアミンを反応させて得たアミン変性エポキシ樹脂(加熱残分50%、カチオン電着用有機樹脂)
7) 三井サイテック社製メラミン樹脂、サイメル325(加熱残分80%)
8) 三井サイテック社製メラミン樹脂、サイメル303(加熱残分100%)
9) 住友バイエルウレタン社製ブロック化ポリイソシアネート、デスモデュールBI-3175(加熱残分75%)
次に、粘弾性測定に用いた塗膜のフリーフィルムの作成方法について述べる。
作成した塗料をブリキ板の上に乾燥膜厚で10μmとなるように、バーコーターにて塗装し、到達板温が230℃の条件で乾燥硬化の後、水銀アマルガム法にてブリキ板より塗膜を遊離し、塗膜のフリーフィルムを作成した。
【0047】
以下、実験に用いたプレコート金属板の作成方法の詳細について述べる。
【0048】
厚み0.8mmの金属板を、市販のアルカリ脱脂剤を2質量%濃度、60℃温度の水溶液中に10秒間浸漬することで、アルカリ脱脂を行い、水洗後、乾燥した。次いで、脱脂した金属板上に、ロールコーターにて、下記に示す化成処理液を両面に塗布し、到達板温が60℃となるような条件で熱風乾燥させた。化成処理後、上記で作成した塗料を両面に、ローラーカーテンコーターにて、乾燥膜厚として15μm塗装した。次いで誘導加熱炉にて到達板温(PMT)230℃の条件で乾燥硬化させた。
【0049】
本実験に用いた金属板を記載する。
【0050】
溶融亜鉛めっき鋼板(新日本製鐵(株)製「シルバージンク」、めっき付着量は片面60g/m2、以下GIと記す)
本実験に用いた化成処理の内容を説明する。
【0051】
[クロメート処理]
市販のクロメート処理液(日本パーカライジング(株)製のZM1300AN)を使用した。また、金属板に塗布する際の付着量はクロム換算で50mg/m2とした。
【0052】
[ノンクロメート処理]
市販のクロメート処理液(日本パーカライジング(株)製のCT-E300N)を使用した。また、金属板に塗布する際の付着量はクロム換算で200mg/m2とした。
【0053】
以下、作成したプレコート金属板の評価試験について、詳細を説明する。
(1) 塗膜のTg
プラスチックの転移温度測定方法(JIS K 7121 1987)の示差走査熱量測定(DSC法)に準じて行なった。具体的には、塗膜片10mgを精秤し、αアルミナ容器に入れて、DSC曲線を測定した。
(2) 塗膜の表面張力
接触角測定装置(協和界面科学社製:CA-X型)を用いて、水及び流動パラフィン(和光純薬工業社製)の静的接触角を測定した。更に水及び流動パラフィンの表面張力、分散力成分、極性成分から、塗膜の表面張力を算出した(参考文献:井本稔「表面張力の理解のために」p.127(1993)高分子刊行会)。
(3) 塗膜の動摩擦係数
表面性測定機HEIDON-14型(新東科学社製)を用いて、荷重200g、ボール圧子φ10mm、移動速度50mm/分の条件にて、動摩擦係数を測定した。
(4) 塗膜の粘弾性試験
動的粘弾性試験装置(レオメトリクス社製、RSA-II)にて、作成したフリーフィルムの貯蔵弾性率の温度依存性を測定し、ゴム状領域の貯蔵弾性率の最小値を調べた。温度領域は-50〜200℃の範囲で測定した。測定条件は、ひずみ0.01%、角周波数6.28rad/秒で実施した。
(5) 耐食性試験
油圧式エリクセンタイプの20tプレス加工試験機を用いて、角筒絞り試験を行った。角筒絞り試験は、ポンチサイズ40mm×40mm、ポンチ肩R5mm、ポンチコーナーR5mm、ダイス肩R5mm、ブランクサイズφ100mmの円形、しわ押さえ圧0.8tの条件で行い、金属板が金型から絞り抜けるまで、加工を行った。なお、本試験においては、市販の潤滑油を金属板に塗布した条件で、プレス加工を行った。さらに、これら絞り加工を施した金属加工材にて、サイクル腐食試験を行った。なお、プレス加工されたサンプルの切断端面は、特にシール等せずに、切断端面が露出する状態で腐食試験を行った。サイクル腐食試験は、沖縄沿岸部や千葉県沿岸部で実施した暴露試験と相関があると言われているNCCT法(下記参照)を実施した。そして、サイクル腐食試験後の加工サンプルの端面部と加工部からの腐食程度を観察し、評価した。端面部の評価基準は、加工端面からの赤錆発生幅が3mm以下の場合を○、3mm超5mm以下の場合を△、5mm超の場合を×と評価した。また、加工部の耐食性は、赤錆発生が全く発生していない場合を○、赤錆は発生しているが、赤錆幅が3mm以下の場合を△、赤錆発生幅が3mm超の場合を×と評価した。
【0054】
[NCCT法のサイクル条件]
5%濃度の塩水噴霧を35℃の温度条件で6時間噴霧し、その後、1時間の移行期間を経た後に、70℃、相対湿度60%の条件で試験片を4時間乾燥させ、その後、2時間の移行期間を経た後に、49℃、相対湿度95%の条件で4時間の耐湿試験を行い、その後、2時間の移行期間を経た後に、-20℃の条件で冷凍試験を4時間行い、1時間の移行期間を経た後に、5%濃度塩水噴霧試験に戻るというサイクル(24時間で1サイクル)を21サイクル実施(西岡ら;材料とプロセス、Vol.9、p.522(1996)を参照)。
(6) プレス加工試験
油圧式エリクセンタイプの20tプレス加工試験機を用いて、円筒絞り試験を行った。円筒絞り試験は、ポンチサイズφ50mm、ポンチ肩R5mm、ダイス肩R5mm、絞り比2.32、しわ押さえ圧0.8tの条件で行い、金属板が破断する限界絞り高さを測定した。なお、本プレス加工試験では、潤滑油は塗布せずに、試験を行った。そして、全く板破断することなく絞り抜けるものを○、絞り抜ける前に金属板が破断するが、限界絞り高さが20mm以上のものを△、限界絞り高さが20mm未満のものを×と評価した。
(7) 連続プレス成形性評価
連続プレス成形性とは、金属板を連続してプレス成形したときに、板破断等の不具合が発生せずに、何枚の金属板を処理することができるかの特性であり、より数多くの金属板を連続して処理できることが好ましい。プレコート金属板の連続プレス性の場合、プレコート金属板の塗膜層がプレス金型によって僅かに削り取られ、連続プレス回数を重ねるごとに、この削り取られた塗膜がプレス金型上に堆積することで、金型とプレコート金属板との摺動性が低下し、プレス時の板破断が発生することが一般的であり、プレス加工時に、塗膜が金型にて削られにくい塗膜ほど、連続プレス成形性が良い。そこで、プレコート金属板をプレス成形したときに、プレス金型でプレコート金属板の塗膜がどの程度削られるかを評価する試験方法である「ビードによる塗膜かじり試験法」(公開技報95-1078)を実施した。まず、作成したプレコート金属板を30mm(幅)×300mm(長さ)の試験片に切り出し、この試験片を平面の金型と半径4mmRのビードを設けた金型とで挟み込む。この際に、評価面に金型のビードが押し付けられるように挟み込み、さらに1tonの荷重を加えて金型のビード部をプレコート金属板の評価面に押し付けた。この状態で、プレコート金属板を200mm/分の速度で引き抜き、ビードにて擦られたプレコート金属板の評価面の塗膜外観を目視にて観察し、評価した。
【0055】
評価は、塗膜が全く削られていない場合を○、部分的にスジ状の線が観察され、塗膜が部分的に削られている場合を△、全面にスジ状の線が観察され、塗膜が全面的に削られている場合を×と評価した。
(8) 上塗り塗装後の鮮映性
上記5)で実施した角筒絞り試験後、自動車用上塗塗料、自動車補修用塗料、家電用上塗塗料を塗装した。その後、スガ試験機社製写像鮮映性測定器HA-NSICにてNSIC*を測定した。
(9) 上塗り塗装後の耐チッピング性
上記5)で実施した角筒絞り試験後、自動車用上塗塗料、自動車補修用塗料、家電用上塗塗料を塗装した。その後、-20℃の雰囲気において、30°に傾けた試験片に、2kg/cm2の圧力で砕石を吹きつけ、塗膜の剥離状態を観察した。
【0056】
なお、角筒絞り試験後に塗装した上塗り塗料の詳細及びを以下に記載する。
・自動車用上塗り塗料:大日本塗料社製デリコン#1500上塗(焼付150℃×20分)
・自動車補修用塗料:大日本塗料社製オートスウィフト2Kグロス(常温乾燥)
・家電用上塗り塗料:アクローゼ#6000(焼付150℃×20分)
以下、評価結果の詳細について述べる。
【0057】
評価結果を表2に示す。本発明のプレコート金属板は、プレス加工性や連続プレス成形性に優れ、更に、プレス加工部の耐食性にも優れている。また、本発明のプレコート金属板上に上塗り塗膜を塗装したものは、良好な外観や耐チッピング性を示している。
【0058】
【表2】
Figure 0004360811
【0059】
(実施例2)
以下、実験に用いた塗料の作成方法について詳細を説明する。
【0060】
表2に示す、樹脂、硬化剤、有機潤滑剤、顔料を混合することで、プライマー塗料とトップ塗料を作成した。なお、これらの塗料の内、プライマー塗料は、本発明例では塗料の表面張力が28mN/m以下となるように、添加剤と溶剤とで調整し、トップ塗料は、塗料の表面張力が30mN/m以下となるように、添加剤と溶剤とで調整した。また、塗料の表面張力は、BYKガードナー社製の「ダイノメータ」を用いた白金リング法にて測定し、調整した。
【0061】
【表3】
Figure 0004360811
【0062】
10) ユニチカ社製ポリエステル樹脂、ユリエーテルUE-9800(加熱残分40%、数平均分子量13000、酸成分:テレフタル酸、イソフタル酸80モル%、ポリオール成分:エチレングリコール、プロピレングリコール80モル%)
11) 三井サイテック社製メラミン樹脂、サイメル325(加熱残分80%)
また、粘弾性測定に用いた塗膜のフリーフィルムの作成方法は、実施例1と同様に行った。
【0063】
以下、実験に用いたプレコート金属板の作成方法の詳細について述べる。
【0064】
以下に示す厚み0.8mmの金属板を、実施例1と同様にアルカリ脱脂した。次いで、実施例1で用いた化成処理液で同様に処理した。化成処理後、上記で作成した表3中のプライマー塗料を、片方の面に、ロールコーターにて乾燥膜厚が5μmとなるように塗装し、また、他方の面には、裏面塗料として大日本塗料社製のVニット#520を、乾燥膜厚にして5μm塗装し、誘導加熱炉にて到達板温(PMT)が210℃の条件で乾燥硬化させた。更に、プライマー塗料を塗装乾燥した面上に、上記で作成した表3中のトップ塗料を、ローラーカーテンコーターにて乾燥膜厚にして15μm塗装し、誘導加熱炉にて到達板温(PMT)が230℃の条件で乾燥硬化させた。
【0065】
本実験に用いた金属は、以下の通りである。
GI:溶融亜鉛めっき鋼板(新日本製鐵社製「シルバージンク」、めっき付着量は片面60g/m2)
AL:アルミめっき鋼板(新日本製鐵社製「アルシート」、めっき付着量は片面60g/m2)
GA:合金化溶融亜鉛めっき鋼板(新日本製鐵社製「シルバーアロイ」、めっき付着量は片面40g/m2)
SD:アルミ-マグネシウム-亜鉛合金めっき鋼板(新日本製鐵社製「スーパーダイマ」、めっき付着量60g/m2)
エコT:亜鉛-錫合金めっき鋼板(新日本製鐵社「エココートT」、めっき付着量片面40g/m2)
CR:冷延鋼板
作成したプレコート金属板は、実施例1と同様に評価試験を行った。
【0066】
以下、評価結果の詳細について述べる。
【0067】
本実験に用いた塗膜のTgとゴム状領域における動的粘弾性率の最小値を表4に示す。
【0068】
【表4】
Figure 0004360811
【0069】
また、これらの塗膜を被覆したプレコート金属板の評価結果を表5に示す。
【0070】
【表5】
Figure 0004360811
【0071】
本発明のプレコート金属板は、プレス加工性や連続プレス成形性に優れ、更に、プレス加工部の耐食性にも優れている。また、本発明のプレコート金属板上に上塗り塗料を塗装したものは、良好な外観や耐チッピング性を示している。
【0072】
【発明の効果】
本発明により、塗膜を剥離、破壊することなく、美麗な外観を保った状態で絞り等のプレス成形が可能で、且つ加工部の耐食性に優れるプレコート金属板を提供することが可能となるため、プレコート金属板の適用範囲が広がり、環境に悪い有機溶剤を用いた塗装作業の低減にもつながる。従って、本発明は産業上の極めて価値の高い発明であるといえる。

Claims (6)

  1. 化成処理を施した金属板の片面もしくは両面に、以下の特性を有する有機樹脂塗膜を少なくとも1層有してなることを特徴とするプレコート金属板。
    a) 塗膜のガラス転移温度(Tg)が40〜120℃であること。
    b) 動的粘弾性測定装置で測定した塗膜のゴム状弾性領域における貯蔵弾性率の最小値が2×10Pa以下であること。
    c) 塗膜の表面張力が28mN/m以下であること。
    d) 塗膜表面の動摩擦係数が0.15以下であること。
  2. 前記塗膜を構成する主樹脂が、芳香族ジカルボン酸を70モル%以上含む酸成分とエチレングリコール及びプロピレングリコールの一方又は両方を70モル%以上含むポリオール成分から得られる、数平均分子量10000〜30000、水酸基価1〜10mg/KOHのポリエステル樹脂である請求項1記載のプレコート金属板。
  3. 前記金属板が、亜鉛めっき鋼板、アルミめっき鋼板、亜鉛系合金めっき鋼板、錫系合金めっき鋼板のいずれか1種である請求項1又は2記載のプレコート金属板。
  4. 前記化成処理がノンクロメート処理である請求項1〜3のいずれかに記載のプレコート金属板。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のプレコート金属板を成形加工してなる金属製部品。
  6. 請求項5記載の金属製部品に、更に上塗り塗料を1層以上塗装してなる金属製塗装部品。
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