JP4844295B2 - 塗装鋼板、加工品及び薄型テレビ用パネル - Google Patents

塗装鋼板、加工品及び薄型テレビ用パネル Download PDF

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Description

本発明は、鋼板の両面に、亜鉛系めっき層およびクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に下塗り塗膜と特定の皮膜構造を持つ上塗り塗膜を形成し、総膜厚10μm以下とする、明度安定性ならびに素地色および素地疵の隠蔽性に優れる塗装鋼板、加工品および薄型テレビ用パネルに関するものである。本発明の塗装鋼板は、例えば液晶テレビやプラズマテレビのような薄型テレビ用パネルで代表されるAV機器などの素材として使用することができる。
通常、プレコート鋼板では、外面下塗り塗料に主として変性ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂を使用することで、下地鋼板との密着性、耐食性などを確保し、また、外面上塗り塗料にポリエステル樹脂、アクリル樹脂などを使用することで、主として耐汚染性、意匠性、耐傷付き性、耐塩酸性や耐アルカリ性であるバリア性などを付与している。
また、従来のプレコート鋼板は、特許文献1に記載されているように、下塗り塗膜の膜厚が5μm程度、上塗り塗膜の膜厚が15μmであるのが一般的であるが、このプレコート鋼板は、塗装や焼付のための時間が多くかかるため、塗装作業の合理化や省資源化の観点からは、塗膜の薄膜化が望まれている。
ところで、従来の塗膜組成で10μm以下に減厚して塗膜を形成する場合、上塗り塗膜の膜厚は、通常、目標膜厚に対し±1.5μm程度変動することが想定される。
このように塗膜が10μm以下と薄いと、鋼板の素地面の色や疵が部分的に透けて見える可能性があり、また、膜厚変動が±1.5μm程度あると、明度(L値)が変化し、これらの結果として、表面外観が不良となり、安定した意匠性が得られない。
特開平4−215873号公報
本発明の目的は、鋼板の両面に、亜鉛系めっき層及びクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に、下塗り塗膜と、特定の皮膜構造を持つ薄い上塗り塗膜を形成し、総膜厚を10μm以下とすることで、明度安定性ならびに素地色及び素地疵の隠蔽性に優れる塗装鋼板、加工品及び薄型テレビ用パネルを提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決して優れた性能の塗膜の塗装鋼板を得るために検討を重ねた結果、鋼板の両面に亜鉛系めっき層及びクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に下塗り塗膜を形成し、この下塗り塗膜上に、光を反射する物性を有する鱗片状物質(ただし、Alを除く。)を含有する有機樹脂皮膜である上塗り塗膜を形成し、前記鱗片状物質による被覆率が30%以上であり、かつ下塗り塗膜と上塗り塗膜の総膜厚が10μm以下とすることにより、明度安定性ならびに素地色及び素地疵の隠蔽性の双方に優れる塗装鋼板が得られることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
(1)鋼板の両面に亜鉛系めっき層及びクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に下塗り塗膜を形成し、この下塗り塗膜上に、光を反射する物性を有する鱗片状物質(ただし、Alを除く。)を含有する有機樹脂皮膜である上塗り塗膜を形成し、前記鱗片状物質による被覆率が30%以上であり、かつ下塗り塗膜と上塗り塗膜の総膜厚が10μm以下であることを特徴とする塗装鋼板。
(2)前記鱗片状物質による被覆率y(%)は、該上塗り塗膜の膜厚をx(μm)とするとき、下記に示す式を満足する上記(1)記載の塗装鋼板。

y≧0.0069x3−0.5365x2+11.874x−0.8291
(3)前記鱗片状物質は、Niである上記(1)または(2)記載の塗装鋼板。
(4)前記鱗片状物質は、有機樹脂で被覆したものである上記(1)、(2)または(3)記載の塗装鋼板。
(5)前記鋼板の他方の面は、導電荷重が500g以下であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項記載の塗装鋼板。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1項記載の塗装鋼板を用い、該塗装鋼板の前記一方の面が凸表面になるようにプレス加工を施して形成してなる加工品。
(7)上記(1)〜(5)のいずれか1項記載の塗装鋼板を用い、該塗装鋼板の前記一方の面が外部に露出する凸表面になるようにプレス加工を施して形成してなる薄型テレビ用パネル。
本発明によれば、明度安定性ならびに素地色及び素地疵の隠蔽性に優れる塗装鋼板、ならびにその塗装鋼板を用いて製造した加工品及び薄型テレビ用パネルを提供することが可能となった。
以下、本発明の構成と限定理由を説明する。
本発明の塗装鋼板は、鋼板の両面に亜鉛系めっき層及びクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に下塗り塗膜を形成し、この下塗り塗膜上に、光を反射する物性を有する鱗片状物質を含有する有機樹脂皮膜である上塗り塗膜を形成し、前記鱗片状物質による被覆率が30%以上であり、かつ下塗り塗膜と上塗り塗膜の総膜厚が10μm以下であることを特徴とする塗装鋼板である。
(亜鉛系めっき)
本発明の塗装鋼板の下地鋼板となる亜鉛系めっき鋼板としては、例えば、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板(例えば、溶融亜鉛−55質量%アルミニウム合金めっき鋼板、溶融亜鉛−5質量%アルミニウム合金めっき鋼板)、鉄−亜鉛合金めっき鋼板、ニッケル−亜鉛合金めっき鋼板、黒色化処理後のニッケル-亜鉛合金めっき鋼板などの各種亜鉛系めっき鋼板を用いることができる。
(化成皮膜)
亜鉛系めっき層を有するめっき鋼板の両面に化成皮膜を形成する。化成皮膜は、環境の観点よりクロムを含有しない化成皮膜とする。この化成皮膜は、主としてめっき層と下塗り塗膜との密着性向上のために形成される。密着性を向上するものであればどのようなものでも支障はないが、密着性だけでなく耐食性を向上できるものがより好ましい。密着性と耐食性の点からシリカ微粒子を含有し、耐食性の点からリン酸及び/又はリン酸化合物を含有することが好ましい。シリカ微粒子は、湿式シリカ、乾式シリカのいずれを用いても構わないが、密着性向上効果の大きいシリカ微粒子、特に乾式シリカが含有されることが好ましい。リン酸やリン酸化合物は、例えば、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸など、これらの金属塩や化合物などのうちから選ばれる1種以上を含有すれば良い。さらに、アクリル樹脂などの樹脂、シランカップリング剤などの1種以上を添加してもよい。
(下塗り塗膜)
下塗り塗膜は、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上であって、上塗り塗膜の下層として形成される。
下塗り塗膜は、従来から用いられている組成のものを用いればよいが、例えば、エポキシ変性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂およびウレタン樹脂の中から選択される少なくとも1種の有機樹脂で構成することが、下地鋼板との密着性、耐食性などを確保する上で好ましい。
(上塗り塗膜)
上塗り塗膜は、前記下塗り塗膜上に、光を反射する物性を有する鱗片状物質(ただし、Alを除く。)を含有する有機樹脂皮膜である。
この有機樹脂としては、ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などが挙げられるが、特に、主として耐汚染性、意匠性、耐傷付き性、バリア性などを付与する点から、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などを使用することが好ましい。前記有機樹脂を硬化させるために、メラミン樹脂、尿素またはイソシアネートなどの架橋剤を用いることが、加工性と耐薬品性のバランスの点で好ましい。架橋剤は有機樹脂との合計を100質量部として1〜50質量部とすることが好ましい。
下塗り塗膜と上塗り塗膜の総膜厚は、塗装作業の合理化や省資源化の観点から10μm以下とする。
下塗り塗膜の膜厚は、1〜5μmの範囲であることが好ましい。下塗り塗膜の膜厚が1μm未満だと、耐食性と化成皮膜との密着性が不十分となるからであり、前記膜厚が5μm超えだと、塗装作業の合理化や省資源化の観点から不利となるからである。
上塗り塗膜の膜厚は3〜7μmの範囲であることが好ましい。上塗り塗膜の膜厚が3μm未満だと、意匠性とバリア性が不十分となるからであり、前記膜厚が7μm超えだと、塗装作業の合理化や省資源化の観点から不利となるからである。
上塗り塗膜、下塗り塗膜および後述する有機樹脂層の膜厚は、断面を光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察し、1視野につき任意の3箇所の膜厚を求め、少なくとも5視野を観察し、合計15箇所以上の平均値とする。
本発明者らは、塗装作業の合理化や省資源化の観点から、下塗り塗膜と上塗り塗膜の総膜厚を10μm以下と薄くするための検討を行った。
図1(a)、(b)及び(c)は、塗装鋼板の塗膜の膜厚と光線進入深さとの関係を示した模式図であり、図中のa1及びa2は光線進入深さであり、t1及びt2は塗膜の膜厚である。
まず、図1(a)に示すような従来の塗装鋼板1Aでは、クロムを含有しない化成皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板(鋼板)2上に形成した塗膜3Aの膜厚t1が、光線進入深さa1よりも十分に厚い、すなわち、t1>a1であるため、前記鋼板2の素地面の色や疵が透けて見えることはなく、また、±1.5μm程度の膜厚変動があったとしても、明度(L値)の変化はほとんどなく、安定した意匠性が得られている。
しかし、図1(b)に示すように、従来の塗装鋼板1Bの塗膜3Bの膜厚t2を、光線進入深さa1よりも薄くする、すなわち、t2<a1とする場合には、前記鋼板2の素地面の色や疵が部分的に透けて見え、また、±1.5μm程度の膜厚変動があると、明度(L値)のぶれが大きくなり、安定した意匠性が得られなくなる。
このため、本発明者らは、塗装鋼板1Cの塗膜3Cの膜厚t2を、図1(b)と同様に薄くした場合であっても、図1(c)に示すように、光線進入深さa2が塗膜3C内で止まるような塗膜構成、すなわち、t2>a2となる塗膜構成にすれば、前記鋼板2の素地面の色や疵が透けて見えることはなく、また、±1.5μm程度の膜厚変動があったとしても、明度(L値)の変化はほとんどなく、安定した意匠性が得られると考え、さらに鋭意検討を重ねた結果、図2に示すように、上塗り塗膜5中に、光を反射する物性を有する鱗片状物質6を含有する構成にすることにより、前記鋼板2の素地面の色や疵が透けて見えることはなく、また、±1.5μm程度の膜厚変動があったとしても、明度(L値の変化はほとんどなく)、安定した意匠性が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
上塗り塗膜5中に含有させる鱗片状物質6を鱗片状に限定した理由は、上塗り塗膜5内に、素地鋼板2の表面を効果的に被覆することができるからである。ここでいう「鱗片状物質」とは、平均厚/平均粒径が0.15未満のものである。さらに、具体的には、平均粒径が5〜50μm、平均厚が0.02〜1.5μmのものが被覆効果が大きいので好ましい。なお、平均粒径と平均厚は、光学顕微鏡又は電子顕微鏡で観察して任意の10個について平均値を求めたものである。前記平均粒径は、鱗片状物質の平面部を平面に対して垂直方向から観察したときの、最大径と最小径の平均値を1個の鱗片状物質の粒径として10個の平均値とする。前記平均厚は、鱗片状物質を断面方向の任意の2箇所で測定したときの厚さの平均値を1個の鱗片状物質の厚さとして10個の平均値とする。
また、上塗り塗膜5中に存在する鱗片状物質6の被覆率は、30%以上である必要がある。
ここで、被覆率とは、塗装鋼板の一方の面(表面)の所定の視野における鱗片状物質6の占有する面積率である。図3は、図2の塗装鋼板1DをA方向へ眺めた図である。図3中の斜線で示す鱗片状物質6の占める面積率が被覆率となる。また、鱗片状物質6は塗装鋼板1Dの一方の面(表面)から観察したときに確認できれば、上塗り塗膜5中のどの深さ位置に存在してもよく、重なりあっている鱗片状物質6の下に位置する面積については考慮しない。
被覆率の測定方法としては、鱗片状物質の面積率を特定できる方法であればよく、例えば、図4(a)及び(b)に示すように、電子線マイクロアナライザ(EPMA)により測定する方法が挙げられる。図中の黒色以外の色を帯びている部分が鱗片状物質(ここでは鱗片状Al)であり、その部分の面積率を測定することで被覆率を得ることができる。その他の測定方法としては、走査型分析電子顕微鏡(SEM-EDX)による測定等がある。
また、鱗片状物質6の被覆率を30%以上に限定した理由は、30%以上とすることにより、鋼板2の素地面の色や疵が透けて見えることはなく、また、±1.5μm程度の膜厚変動があったとしても明度(L値)の変化はほとんどなく、安定した意匠性を得られるからである。
さらに、前記鱗片状物質による被覆率y(%)は、該上塗り塗膜の膜厚をx(μm)とするとき、次の式、
y≧0.0069x3−0.5365x2+11.874x−0.8291
を満足することが好ましい。上塗り塗膜5中の鱗片状物質6は、塗装鋼板の安定した意匠性を得るために必要であるが、膜厚が厚くなると、厚み方向で鱗片状物質6の存在しない部分が増加する。この部分を通じて光線が進入してしまうことから、膜厚が厚くなると被覆率を増大させなければならないことを見出したものである。ここで、上記の式を用いた場合、上塗り塗膜の膜厚に対して本発明の目的を得るために必要な被覆率を決めることができ有効である。図5は、上塗り塗膜の膜厚xと安定した意匠性を得るために好適な被覆率yの関係を示したグラフであり、図中の斜線部分が有効な被覆率の範囲となる。
上述した被覆率を得るためには、鱗片状物質6の含有量を6〜12質量%とすることが好ましい。6質量%未満だと、上塗り塗膜5内の鱗片状物質6で、素地鋼板2の表面を十分に覆うことができず、安定した意匠性が得られなくなる傾向があるからであり、12質量%超えでは、鱗片状物質6が上塗り塗膜5内で何層も重なりあって形成され、上塗り塗膜自体を脆くする他、コストの上昇を招く傾向があるからである。
さらに、前記鱗片状物質6は、水面拡散面積が10000〜50000 cm/gであることが好ましく、より好適には20000〜40000 cm/gである。なお、ここでいう「水面拡散面積」とは、具体的には、JIS K 5906:1998に規定されるように、試料を石油系スピリット又はアセトンで洗浄・乾燥して粉末化し、その粉末を水面上に散布し、一様に試料粉末が被覆したときの面積(cm/g)を意味する。この水面拡散面積は、素地鋼板2の表面を覆う(隠蔽する)面積(表面積)と比例関係にあるため、水面拡散面積が大きいほど、素地鋼板2の表面を覆う表面積が大きくなることを意味する。
前記鱗片状物質6の水面拡散面積を10000〜50000cm/gに限定した理由は、10000cm/g未満だと、素地鋼板2の表面を覆う面積が小さくなり、前記鋼板2の素地面の色や疵を十分に隠蔽することができなくなる傾向があるからであり、また、50000 cm/g超えだと、鱗片状物質6が上塗り塗膜5内で何層も重なりあって形成され、上塗り塗膜自体を脆くする傾向があるからである。
さらにまた、前記光を反射する物性を有する鱗片状物質6は、Alを除く金属であることが好ましく、特に、Niであることがより好適である。その他の材料を用いると、光の反射率が低く、安定した意匠性を十分に得ることができないからである。
鱗片状物質6は、有機樹脂で被覆したものであることが、上塗り塗膜を構成する有機樹脂との密着性が高まり、バリア性(耐塩酸性や耐アルカリ性)が向上する点で好ましい。樹脂被覆は、その厚みとして0.02μm以上であると、優れたバリア性が得られ、0.08μm以下で充分な効果が得られる。したがって、樹脂被覆は、その厚みを0.02〜0.08μmとすることが好ましい。また、鱗片状物質6を表面被覆する有機樹脂としては、アクリル樹脂が挙げられる。
本発明は、従来の塗装鋼板のように塗膜が厚い場合に適用しても構わないが、特に、下塗り塗膜と上塗り塗膜の総膜厚が3〜10μmの範囲と薄い場合に、上述したような効果が顕著である点で好ましい。
また、本発明の塗装鋼板を、例えば薄型テレビ用パネルとして使用する場合には、プレス加工したパネルの内面になる塗装鋼板の裏面は、溶接や電磁波シールド等の必要性から導電性を有することが必要となる。
かかる場合には、鋼板の他方の面にも、上述のクロムを含有しない化成処理皮膜を形成することで、従来のクロメート皮膜と同程度の耐食性と密着性を有するとともに、優れた導電性も有すること、具体的には、導電荷重を500g以下とすることが、電磁波シールド性の点で好ましい。さらに好ましいのは、300g以下とすることである。導電荷重は表面抵抗が10-4Ω以下となる最小荷重である。
耐食性の要求度がそれほど高くない用途には、この他方の面はクロムを含有しない化成皮膜だけを形成し、特に電磁波シールド性に優れた塗装鋼板として提供できる。
また、耐食性の要求度が高い用途には、この他方の面は、化成皮膜の上に有機樹脂層を設けて耐食性を向上させることが好ましい。有機樹脂層の有機樹脂種としてはエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。有機樹脂層はCaイオン交換シリカを含有することがさらに優れた耐食性を得るために好ましい。
有機樹脂層の膜厚が0.1μm未満では耐食性に不利となり、また1μm超えでは電磁波シールド性に不利となるので、0.1〜1μmが好ましい。
上述の塗装鋼板は、深絞り加工、張り出し加工、曲げ加工のうちのいずれか1以上のプレス加工が施され、さらに電磁波シールド性が要求される電子機器及び家電製品等の用途で使用される部材に好適である。例えばプラズマディスプレーパネルや液晶テレビなどの薄型TVの背面パネルに使用すると、大型のパネルであっても優れた電磁波シールド性が発現される。
次に、本発明の塗装鋼板の製造方法について説明すると、本発明の塗装鋼板は、被塗装鋼板である亜鉛系めっき鋼板の両面に先に述べた化成処理を施した後、下塗り塗料を片面または必要に応じて両面に塗布、加熱して、下塗り塗膜を形成した後、前記鋼板の一方の面に、鱗片状物質を混合し攪拌した上塗り塗料を塗布、加熱することにより製造される。
上塗り塗料と下塗り塗料の塗布方法は特に限定しないが、好ましくはロールコーター塗装で塗布するのがよい。塗料の塗布後、熱風乾燥、赤外線加熱、誘導加熱などの加熱手段により加熱処理を施し、樹脂を架橋させて硬化させた下塗り塗膜と上塗り塗膜を得る。加熱条件は温度170〜250℃(到達板温)で、時間20〜90秒の処理を行うことが好ましく、これによって下塗り塗膜と上塗り塗膜を形成し、塗装鋼板を製造する。
ここで、加熱温度が170℃未満では架橋反応が十分に進まないため、十分な塗膜性能が得られない。一方、加熱温度が250℃を超えると熱による塗膜の劣化が起こり、意匠性が低下し、さらに塗装作業の合理化や省資源化の観点から好ましくない。また、処理時間が20秒未満では架橋反応が十分に進まないため、十分な塗膜性能が得られない。一方、処理時間が90秒を超えると製造コスト面で不利となる。本発明の塗装鋼板は、さらに塗装鋼板裏面(他方の面)の耐食性を高める目的で、前記した有機樹脂層用の塗料を鋼板の他方の面にも同様の方法で塗装するのが好ましい。
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
本発明の実施例について説明する。
(実施例1〜3、参考例1〜7及び比較例1〜2)
塗装用亜鉛系めっき鋼板として、各々板厚0.5mmの電気亜鉛めっき鋼板(めっき種記号:EG)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(Fe含有率:10質量%、めっき種記号:GA)、溶融亜鉛めっき鋼板(めっき種記号:GI)、溶融Zn−Alめっき鋼板(Al含有率:4.5質量%、めっき種記号:GF)、黒色化電気亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板(Ni含有率:12質量%、めっき種記号:EZNB)及び溶融Zn−Alめっき鋼板(Al含有率:55質量%、めっき種記号:GL)を準備した。めっき鋼板のめっき付着量を表1に示す。なお、鋼板の一方の面(オモテ面)と他方の面(ウラ面)のめっき付着量、及びめっき組成は同一とした。準備しためっき鋼板に脱脂処理を行った後、以下の(I)〜(IV)の処理工程を行い、塗装鋼板を作製した。
(I)オモテ面に化成処理液を塗布し、加熱20秒後に到達板温100℃となるように加熱し、表3に示すオモテ面の化成皮膜を形成した。
(II)次に、ウラ面に化成処理液を塗布した後、オモテ面に下塗り塗料を塗布し、加熱30秒後に到達板温が210℃となる加熱処理を行い、表3に示す組成のウラ面の化成皮膜と、表4に示すオモテ面の下塗り塗膜(3μm)を形成した。
(III)その後、オモテ面に上塗り塗膜として表1に示す組成となる上塗り塗料を、膜厚が3μmまたは6μmになるように塗布した後、ウラ面に、必要に応じて表5の組成となるように防錆顔料を添加した有機樹脂塗料を塗布した後、加熱開始から50秒後に到達板温が230℃となる加熱処理を行い、表1と表2に示すオモテ面の上塗り塗膜とウラ面の有機樹脂層を形成した。
作製した塗装鋼板のオモテ面、ウラ面の化成皮膜、下塗り塗膜、上塗り塗膜及び有機樹脂層の構成を表1及び表2に示す。
以上のようにして得られた塗装鋼板(上塗り塗膜の膜厚が3μm)について各種試験を行った。本実施例で行った試験の評価方法を以下に示す。
<オモテ面の評価>
(1)明度安定性
明度安定性は、同じ組成の上塗り塗膜を有し、膜厚が6μmである上塗り塗膜からなる塗装鋼板との色調(L* )の差を分光式色差計(“SQ2000”日本電色工業株式会社製)を用いて測定し、以下の評価基準に従って評価した。
○:△L* ≦1
△:1<△L* ≦2
×:△L* >2
(2)素地隠蔽性
素地面隠蔽性は、塗装用亜鉛系めっき鋼板のオモテ面を、先端が金属のペンで傷を付けたのち、前記した処理工程を行ない塗装鋼板を作製した。塗装鋼板のオモテ面を目視で観察し以下の評価基準に従って評価した。
○:傷がわからない
△:傷がややわかる
×:傷が明瞭にわかる
(3)耐塩酸性
20℃、5質量%HCl水溶液に裏面と端面をシールした試験片を24時間浸漬した後、ニチバン(株)製のセロハン粘着テープを貼り付け、これを引き剥がした後の塗膜残存面積率を評価した。
○:塗膜剥離なし
△:塗膜残存面積率が100%未満50%以上
×:塗膜残存面積率が50%未満
<ウラ面の評価>
(4)導電性
低抵抗測定装置(ロレスタGP:三菱化学(株)製:ESPプローブ)を用い、塗装版のウラ面の表面抵抗値を測定した。その時、プローブ先端にかかる荷重を20g/sで増加させ、表面抵抗が10-4Ω以下になった時の荷重値で以下のように評価した。
表面抵抗が10-4Ω以下になった時の荷重値
☆:10点測定の平均荷重が200g以下
◎:10点測定の平均荷重が200g超300g以下
○:10点測定の平均荷重が300g超500g以下
△:10点測定の平均荷重が500g超700g以下
×:10点測定の平均荷重が700g超960g以下
上記各試験の評価結果を表6に示す。
これによれば、実施例1〜の塗装鋼板は、いずれも優れた明度安定性および素地面隠
蔽性を有している。また、短時間で加熱処理を行っても十分な性能が得られており、製造
の際の高速操業に非常に適していることが判る。
本発明によれば、鋼板の両面に亜鉛系めっき層及びクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に下塗り塗膜を形成し、この下塗り塗膜上に、光を反射する物性を有する鱗片状物質を含有する有機樹脂皮膜である上塗り塗膜を形成し、前記鱗片状物質による被覆率が30%以上であり、かつ下塗り塗膜と上塗り塗膜の総膜厚が10μm以下であることを特徴とする塗装鋼板を作製することで、明度安定性ならびに素地色及び素地疵の隠蔽性に優れる塗装鋼板、加工品及び薄型テレビ用パネルを提供することが可能になった。
(a)、(b)及び(c)は、塗装鋼板の塗膜の膜厚を厚くしたときの光線進入深さとの関係を説明するための塗装鋼板の断面図である。 本発明に従う塗装鋼板の断面図である。 本発明に従う塗装鋼板の概略図であって、図2の塗装鋼板1Dの断面図をA方向から眺めた平面図である。 (a)及び(b)は、本発明に従う塗装鋼板の表面EPMA観察写真であり、(a)はAlによる被覆率が7.5%の場合、(b)はAlによる鋼板表面被覆率が74.4%の場合を示す。 本発明に従う塗装鋼板の上塗り塗膜の膜厚(x)と安定した意匠性を得るために好適な被覆率(y)の関係を表わしたグラフである。
符号の説明
1A、1B、1C、1D 塗装鋼板
2 クロムを含有しない化成皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板
3A、3B、3C、3D 塗膜
4 下塗り塗膜
5 上塗り塗膜
6 鱗片状物質
7 有機樹脂

Claims (7)

  1. 鋼板の両面に亜鉛系めっき層及びクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に下塗り塗膜を形成し、この下塗り塗膜上に、光を反射する物性を有する鱗片状物質(ただし、Alを除く。)を含有する有機樹脂皮膜である上塗り塗膜を形成し、前記鱗片状物質による被覆率が30%以上であり、かつ下塗り塗膜と上塗り塗膜の総膜厚が10μm以下であることを特徴とする塗装鋼板。
  2. 前記鱗片状物質による被覆率y(%)は、該上塗り塗膜の膜厚をx(μm)とするとき、下記に示す式を満足する請求項1記載の塗装鋼板。

    y≧0.0069x3−0.5365x2+11.874x−0.8291
  3. 前記鱗片状物質は、Niである請求項1または2記載の塗装鋼板。
  4. 前記鱗片状物質は、有機樹脂で被覆したものである請求項1、2または3記載の塗装鋼板。
  5. 前記鋼板の他方の面は、導電荷重が500g以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の塗装鋼板。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載の塗装鋼板を用い、該塗装鋼板の前記一方の面が凸表面になるようにプレス加工を施して形成してなる加工品。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項記載の塗装鋼板を用い、該塗装鋼板の前記一方の面が外部に露出する凸表面になるようにプレス加工を施して形成してなる薄型テレビ用パネル。
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