以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態に係る撮像装置(光学装置)は、例えば撮像光学系と撮像素子を光軸方向と直交する方向に相対移動させて手振れ補正を行うものである。すなわち、手振れに応じて撮像光学系を移動させ、撮像素子との相対位置を変化させることで手振れを補正する。この撮像装置は、静止画を撮影するカメラ、動画を撮影するビデオカメラ、携帯電話に搭載される撮像部などに適用される。
まず、本実施形態に係る撮像装置の機械的な構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置における撮像部及び手振れ補正機構の分解斜視図である。図1に示すように、本実施形態に係る撮像装置は、被写体の像を取得するための撮像光学系2と撮像素子14を備えている。撮像光学系2は、撮像素子14に集光する光学系であり、撮影レンズを備えて構成されている。この撮像光学系2は、例えばホルダ2aにレンズ(図示なし)を収容して構成される。撮像光学系2は、単体のレンズで構成してもよいし、複数のレンズによるレンズ群で構成してもよい。
撮像光学系2は、第2移動部材(第2移動手段)5に取り付けられており、撮像素子14に対し光軸Oの方向(光軸方向)と直交する方向に相対移動可能に設けられている。第2移動部材5は、撮像素子14を固定する撮像素子ホルダ13に収容され、球体4で支持されることにより、撮像素子ホルダ13及び撮像素子14に対し光軸方向と直交する方向に相対移動可能となっている。このため、撮像光学系2は、第2移動部材5と共に撮像光学系2が移動することによって、撮像素子14に対し光軸方向と直交する方向に相対移動することになる。
その際、撮像光学系2を第2移動部材5に対し光軸方向へ移動可能に取り付けることが好ましい。例えば、第2移動部材5に光軸方向へ向けた支持軸3を取り付け、その支持軸3に沿って撮像光学系2を移動可能に取り付ける。撮像光学系2を光軸方向へ移動させるアクチュエータ10としては、圧電素子10aの伸縮により往復移動する駆動軸10bを備えたものが用いられる。このアクチュエータ10は、撮像光学系2を光軸方向へ移動させる第3アクチュエータとして機能するものである。圧電素子10aが第2移動部材5に取り付けられ、駆動軸10bが撮像光学系2に摩擦係合される。駆動軸10bの一端は、圧電素子10aに当接され、例えば接着剤を用いて接着されている。この駆動軸10bは、長尺状の部材であり、例えば円柱状のものが用いられる。
摩擦係合構造としては、例えば、板バネにより駆動軸10bを撮像光学系2のホルダ2aに一定の押圧力で圧接した状態とし、駆動軸10bが移動する際に一定の摩擦力を生じさせる構造とする。この摩擦力を超えるように駆動軸10bが移動することにより、慣性により撮像光学系2の位置が維持される。一方、その摩擦力を超えないように逆方向へ駆動軸10bが移動すると、撮像光学系2もその逆方向へ移動する。このような駆動軸10bの往復移動を繰り返すことにより、第2移動部材5に対し相対的に撮像光学系2を移動させることができる。圧電素子10aには、その伸長速度と収縮速度を異ならせる電気信号が制御部(図示なし)から入力される。これにより、駆動軸10bが異なる速度で往復移動し、撮像光学系2の移動制御を行うことができる。
このように、撮像光学系2を第2移動部材5に対し光軸方向へ移動可能に取り付けることにより、第2移動部材5に対し撮像光学系2のみを光軸方向へ移動させてフォーカシングを行うことができる。
撮像素子14は、撮像光学系2により結像された像を電気信号に変換する撮像手段であり、撮像素子ホルダ13に固定して取り付けられている。この撮像素子14としては、例えばCCDセンサが用いられる。
本実施形態に係る撮像装置は、第1アクチュエータ8及び第2アクチュエータ6を備えている。第1アクチュエータ8は、光軸方向と直交するヨー方向Xに撮像光学系2と撮像素子14を相対移動させるアクチュエータである。この第1アクチュエータ8は、例えば、圧電素子(第1電気機械変換手段)8aの伸縮により往復移動する駆動軸(第1駆動軸)8bを備えたものが用いられる。駆動軸8bは、ヨー方向Xに向けて配置されている。圧電素子8aは、撮像素子14が固定される撮像素子ホルダ13に取り付けられている。駆動軸8bは、第1移動部材(第1移動手段)11に摩擦係合されている。駆動軸8bの一端は、圧電素子8aに当接され、例えば接着剤を用いて接着されている。この駆動軸8bは、長尺状の部材であり、例えば円柱状のものが用いられる。
摩擦係合構造としては、例えば、板バネにより駆動軸8bを第1移動部材11に一定の押圧力で圧接された状態とし、駆動軸8bが移動する際に一定の摩擦力を生じさせる構造とする。この摩擦力を超えるように駆動軸8bが移動することにより、慣性により第1移動部材11の位置が維持される。一方、その摩擦力を超えないように逆方向へ駆動軸8bが移動すると、第1移動部材11もその逆方向へ移動する。このような駆動軸8bの往復移動を繰り返すことにより、撮像素子14に対し第1移動部材11をヨー方向Xに沿って移動させることができ、撮像素子14に対し相対的に撮像光学系2をヨー方向Xに移動させることができる。圧電素子8aには、その伸長速度と収縮速度を異ならせる電気信号が制御部(図示なし)から入力される。これにより、駆動軸8bが異なる速度で往復移動し、撮像光学系2の移動制御を行うことができる。
なお、第1アクチュエータ8は、圧電素子8aを第1移動部材11側に取り付け、駆動軸8bを撮像素子ホルダ13に摩擦係合させて構成する場合もある。
第2アクチュエータ6は、光軸方向と直交するピッチ方向Yに撮像光学系2と撮像素子14を相対移動させるアクチュエータである。この第2アクチュエータ6と第1アクチュエータ8は、撮像光学系2と撮像素子14を相対移動させる駆動手段(駆動装置)として機能するものである。
ピッチ方向Yは、光軸方向と直交しヨー方向Xと交差する方向に設定される。この第2アクチュエータ6は、例えば、圧電素子(第2電気機械変換手段)6aの伸縮により往復移動する駆動軸(第2駆動軸)6bを備えたものが用いられる。駆動軸6bは、ピッチ方向Yに向けて配置されている。圧電素子6aは、第2移動部材5に取り付けられている。駆動軸6bは、第1移動部材11に摩擦係合されている。駆動軸6bの一端は、圧電素子6aに当接され、例えば接着剤を用いて接着されている。この駆動軸6bは、長尺状の部材であり、例えば円柱状のものが用いられる。
摩擦係合構造としては、例えば、板バネにより駆動軸6bを第1移動部材11に一定の押圧力で圧接された状態とし、駆動軸6bが移動する際に一定の摩擦力を生じさせる構造とする。この摩擦力を超えるように駆動軸6bが一方向に移動することにより、慣性により第2移動部材5の位置が維持される。一方、その摩擦力を超えないように逆方向へ駆動軸6bが移動しようとすると、駆動軸6bは摩擦力によって静止したまま、第2移動部材5が一方向へ移動する。このような駆動軸6bの往復移動を繰り返すことにより、撮像素子14に対し第2移動部材5をピッチ方向Yに沿って移動させることができ、撮像素子14に対し相対的に撮像光学系2をピッチ方向Yに移動させることができる。圧電素子6aには、その伸長速度と収縮速度を異ならせる電気信号が制御部(図示なし)から入力される。これにより、駆動軸6bが異なる速度で往復移動し、撮像光学系2の移動制御を行うことができる。
第1移動部材11には、上述した摩擦係合によって第2アクチュエータ6が取り付けられている。このため、第1アクチュエータ8の作動により第1移動部材11がヨー方向Xに移動することによって第2アクチュエータ6もヨー方向Xへ移動することとなる。
なお、第2アクチュエータ6は、圧電素子6aを第1移動部材11側に取り付け、駆動軸6bを第2移動部材5に摩擦係合させて構成する場合もある。
撮像装置には、位置検出用磁石9、ホール素子15a、15bが設けられている。位置検出用磁石9は、第2移動部材5に取り付けられた磁石であり、ホール素子15a、15bで検出できるだけの磁界を発生するものであれば足りる。ホール素子15a、15bは、位置検出用磁石9から発生する磁界の状態に基づいて撮像素子14と撮像光学系2の光軸方向と直交する方向に対する相対位置を検出する磁気センサであり、例えば、基板17に取り付けられる。このホール素子15a、15bは、光軸方向と直交する方向の相対位置を検出可能なものが用いられる。基板17は、撮像素子ホルダ13に取り付けられる配線基板であり、例えばL字形に屈曲されて用いられる。この基板17には、圧電素子6a、8a、10aのリード線がそれぞれ基板17に取り付けられている。
撮像装置には、フォトインタラプタ16が設けられている。フォトインタラプタ16は、撮像光学系2の位置検出を行う位置検出センサである。フォトインタラプタ16は、基板17に取り付けられ、撮像光学系2の近傍位置に配置される。フォトインタラプタ16は、発光部と受光部を備え、発光部と受光部の間を通過する移動片2bの位置検出を通じて、撮像光学系2の光軸方向の位置を検出する。移動片2bは、撮像光学系2のホルダ2aに形成され、撮像光学系2と一体となって移動する部材である。
撮像装置は、上カバー1を備えている。上カバー1は、撮像部及び手振れ補正機構を収容する撮像素子ホルダ13の開口部分を被うカバーであり、被写体像を入射するための開口部1aを形成している。
第1移動部材11は、第1支持軸12によりヨー方向Xに沿って移動可能に支持されている。第1支持軸12は、ヨー方向Xに向けて配置される軸部材であって、撮像素子ホルダ13に取り付けられている。この第1支持軸12は、第1移動部材11の軸受け部11aを貫通して設けられている。これにより、第1移動部材11は、第1支持軸12によって撮像素子14に対しヨー方向Xのみに移動するように支持されている。
第2移動部材5は、第2支持軸7によりピッチ方向Yに沿って移動可能に支持されている。第2支持軸7は、ピッチ方向Yに向けて配置される軸部材であって、第2移動部材5に取り付けられている。この第2支持軸7は、第1移動部材11の軸受け部11bを貫通して設けられている。これにより、第2移動部材5は、第2支持軸7によって第1移動部材11に対しピッチ方向Yのみに移動するように支持されている。
次に、本実施形態に係る撮像装置の電気的構成を説明する。図2は、本実施形態に係る撮像装置の電気的構成を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態に係る撮像装置は、第1制御部(駆動信号制御手段)30を備えている。第1制御部30は、撮像光学系2と撮像素子14の光軸方向と直交する方向における相対移動を制御して手振れ補正を行う制御手段として機能するものである。この第1制御部30は、例えばCPU、ドライバチップを内蔵するLSI(Large Scale Integration)などにより構成されており、詳細は後述する。第1制御部30に接続されるジャイロセンサ50は、手振れ量を検出する手振れ検出センサとして機能するものである。このジャイロセンサ50は、防振ユニットの外部、すなわち撮像素子ホルダ13の外部に配置されている。
第1制御部30は、ジャイロセンサ50の検出信号S1xとホール素子15aの検出信号S2xを入力し、第1アクチュエータ8に駆動信号Sxを出力する。ジャイロセンサ50の検出信号S1xは、ヨー方向X(X方向)の手振れ量に関する検出信号である。ホール素子15aの検出信号S2xは、ヨー方向Xにおける撮像素子14と撮像光学系2の相対位置に関する検出信号である。
また、第1制御部30は、ジャイロセンサ50の検出信号S1yとホール素子15bの検出信号S2yを入力し、第2アクチュエータ6に駆動信号Syを出力する。ジャイロセンサ50の検出信号S1yは、ピッチ方向Y(Y方向)の手振れ量に関する検出信号である。ホール素子15bの検出信号S2yは、ピッチ方向Yにおける撮像素子14と撮像光学系2の相対位置に関する検出信号である。
また、第3アクチュエータ10に接続される第2制御部40は、撮像光学系2の光軸方向へ移動を制御する制御手段として機能するものである。この第2制御部40は、例えばオートフォーカス用ICやマイコンなどにより構成される。第2制御部40は、図示しない測距装置により被写体までの距離情報を取得し、その距離情報とフォトインタラプタ16の検出信号に基づいてアクチュエータ10に駆動信号を出力し、撮像光学系2を移動制御する。
次に、第1制御部30が有する手振れ補正信号の生成機能について説明する。図3は、本実施形態に係る撮像装置における手振れ補正回路の概要図である。第1制御部30内には、例えば図3に示す差動増幅器31を用いた手振れ補正回路が設けられている。この手振れ補正回路は、X方向の手振れ補正を行うものとY方向の手振れ補正を行うものの二つが設けられる。X方向の手振れ補正回路は、ジャイロセンサ50の検出信号S1xとホール素子15aの検出信号S2xの差分に応じて第1アクチュエータ8の駆動信号Sxを生成する。Y方向の手振れ補正回路は、ジャイロセンサ50の検出信号S1yとホール素子15bの検出信号S2yの差分に応じて第2アクチュエータ6の駆動信号Syを生成する。これにより、手振れ量と撮像光学系2と撮像素子14の相対移動量の差分を減少させて、手振れ補正が行われることとなる。
ジャイロセンサ50の検出信号S1x、S1yは、積分回路32により積分処理して差動増幅器31に入力することが好ましい。また、ホール素子15a、15bの検出信号S2x、S2yは、アンプ回路33により増幅処理してから差動増幅器31に入力することが好ましい
次に、第1制御部30が有する駆動信号の出力機能について詳細を説明する。図4は、本実施形態に係る撮像装置における第1制御部30の電気的構成の詳細を示す概要図である。図4に示すように、第1制御部30は、例えば、CPU60、ドライバチップ61,62を備えている。ドライバチップ61,62は、第1アクチュエータ8,第2アクチュエータ6と対応して設けられており、共通の電源回路63に接続されている。ドライバチップ61,62と電源回路63との間には、電源出力安定化のための電源コンデンサC1が設けられている。
CPU60はクロック回路を有しており、駆動信号Sx,Syをドライバチップ61,62に出力させるための入力信号SxIN,SyINを生成する機能を有している。この入力信号SxIN,SyINは、周波数が同一で位相が異なる信号とされ、詳細は後述する。CPU60は、例えば出力タイミングを入力信号SxIN,SyINごとに変更することで、信号の位相を制御する機能を有している。CPU60は、例えば蓄電性を有する圧電素子6a,8aの充電期間を予め計測し、入力信号SxIN,SyINの位相差が圧電素子6a,8aの充電期間よりも大きくなるように、入力信号SxIN,SyINの位相を変更する機能を有している。あるいは、圧電素子6a,8aの充電期間が重なる場合には、圧電素子8a,6aの充電期間の重なりが小さくなるように、入力信号SxIN,SyINの位相を変更する機能を有している。また、例えば電源コンデンサC1の充電期間を予め計測しておき、信号SxIN,SyINの位相差が、圧電素子6a,8aの充電期間と電源コンデンサC1の遅延時間との合計値よりも大きくなるように、信号SxIN,SyINの位相を変更して出力する機能を有している。
ドライバチップ61,62は、第1アクチュエータ8及び第2アクチュエータ6にそれぞれ接続されており、ドライブ回路として機能するものである。ドライバチップ61,62は、CPU60から入力した入力信号SxIN,SyINを電圧増幅又は電流増幅して駆動信号Sx,Syを生成し、第1アクチュエータ8及び第2アクチュエータ6へそれぞれ出力する機能を有している。ドライバチップ61,62は、例えば入力段を論理回路により構成し、出力段に電界効果型のトランジスタ(FET)を2つ備えたものが用いられる。2つのトランジスタは、出力信号として、Hi出力(高電位出力)、Lo出力(低電位出力)及びOFF出力(オープン出力)を出力可能に構成されている。
次に、ドライバチップ61,62が入出力する信号について詳細を説明する。最初に、ドライバチップ61が入出力する信号について説明する。図5は、ドライバチップ61に入力される入力信号SxINであり、横軸が時間である。図5(A)は、第1移動部材11を圧電素子8aに接近させる方向に移動させる際に入力される入力信号AIN,BIN(正転時の信号)であり、図5(B)は、第1移動部材11を圧電素子8aから離間させる方向に移動させる際に入力される入力信号AIN,BIN(逆転時の信号)である。
このように、CPU60から出力される入力信号SxINは、二つのパルス信号AIN,BINからなる。この二つのパルス信号AIN,BINは、同一の周波数f(周期T)であって、互いの位相を異ならせることにより、互いの信号の電位差が一方向に段階的に変化し、逆方向に急激に変化する信号、又は、互いの信号の電位差が一方向に急激に変化し、逆方向に段階的に変化する信号となっている。例えば、図5(A)、(B)において、一方の信号がHiとなりLoに低下した後に他方の信号がHiとなるように設定されている。それらの信号において、一方の信号がLoになった際に一定のタイムラグtOFFの経過後、他方の信号がHiとなるように設定される。
図6は、ドライバチップ61から出力される出力信号Sxであり、横軸が時間である。図6(A)、(B)の信号は、図5(A)、(B)の入力信号に基づいて出力される信号であって、第1アクチュエータ8の駆動時における信号である。すなわち、図6(A)は、第1移動部材11を圧電素子8aに接近させる方向に移動させる際に出力される出力信号AOUT,BOUT(正転時の信号)であり、図6(B)は、第1移動部材11を圧電素子8aから離間させる方向に移動させる際に出力されるAOUT,BOUT(逆転時の信号)である。
図6(A)、(B)において、それぞれの二つのパルス信号AOUT,BOUTは、圧電素子8aの二つの端子(図1参照)に入力される信号であり、上述した駆動信号Sxを構成する信号である。この二つのパルス信号は、同一の周波数f(周期T)であって、互いの位相を異ならせることにより、互いの信号の電位差が一方向に段階的に変化し、逆方向に急激に変化する信号、又は、互いの信号の電位差が一方向に急激に変化し、逆方向に段階的に変化する信号となっている。そして、AOUTとBOUTとの電位差が圧電素子8aの入力電圧となる。これらのパルス信号の電位差により圧電素子8aが伸長又は収縮する。1パルスごとの信号が連続して第1アクチュエータ8に入力されることにより、連続駆動が行われることとなる。
パルス信号AOUT,BOUTは、例えば一方の信号がHi出力となりLo出力に低下した後に他方の信号がHi出力となるように設定されている。それらの信号において、一方の信号がLo出力になった際に一定のタイムラグtOFFの経過後、他方の信号がHi出力となるように設定される。
また、パルス信号AOUT,BOUT、すなわち圧電素子8aを作動させる電気信号は、可聴周波数を超える周波数の信号が用いられる。二つの信号の周波数fは、可聴周波数を超える周波数信号とされ、例えば、30〜80kHzの周波数信号とされ、より好ましくは40〜60kHzとされる。このようは周波数の信号を用いることにより、圧電素子8aの可聴領域における作動音を低減することができる。
一方、第1アクチュエータ8の休止時における信号は、図示していないが、圧電素子8aの二つの端子に入力される電位差がゼロとなる信号である。また、電位差がゼロとなる休止時の入力信号は、図6(A)、(B)に示す駆動時の入力信号における1パルスの周期時間以上の長い時間で電位差がゼロとなる信号とすることが好ましい。
次に、ドライバチップ62が入出力する信号について説明する。ドライバチップ62の入力信号AIN,BINは、ドライバチップ61が出力する信号と振幅、波長、周波数等が同一であって、位相(又は初期位相)が異なる信号である。すなわち、図5に示すドライバチップ61の入力信号AIN,BINと比べて、CPU60により設定された位相だけずれた信号である。また、ドライバチップ62の出力信号AOUT,BOUTは、ドライバチップ61が出力する信号と振幅、波長、周波数等が同一であって、位相(又は初期位相)が異なる信号である。すなわち、図6に示すドライバチップ61の出力信号AOUT,BOUTと比べて、CPU60により設定された位相だけずれた信号である。
なお、第1アクチュエータ8、第2アクチュエータ6に入力される信号は、図6に示すものに限られるものではなく、パルス信号でなく鋸歯波状の信号や三角波状の信号などであってもよい。
次に、本実施形態に係る撮像装置における手振れ補正時の動作について説明する。
図2において、撮像装置を用いて撮影を行う際に手振れが生じている場合には、ジャイロセンサ50が手振れ量を検出し、手振れの検出信号S1を第1制御部30に出力する。第1制御部30において、ジャイロセンサ50の検出信号S1とホール素子15a、15bの検出信号S2とに基づいて、手振補正回路を用いて撮像素子14に撮像される画像がぶれないように、出力信号Sx,Syを演算する。そして、CPU60がドライバチップ61,62に対して信号AIN,BINをそれぞれ異なる位相で出力する。例えば、ドライバチップ61に対して信号AIN,BINを出力後、圧電素子8aの充電時間t5及び圧電素子6aの充電時間t6より大きい時間t7経過後に、ドライバチップ62に対して信号AIN,BINを出力する。ここで、時間t7は、圧電素子8a,6aの充電時間t5,t6と電源コンデンサC1の充電時間とに基づいて決定する。なお、出力された信号AIN,BINは正転時の信号とする。信号入力したドライバチップ61,62は、第1アクチュエータ8及び第2アクチュエータ6に対し、第1アクチュエータ8及び第2アクチュエータ6ごとに位相が異なる駆動信号AOUT,BOUTをそれぞれ出力する。圧電素子6a,8aは、それぞれ入力した駆動信号AOUT,BOUTに基づいて伸縮し、撮像光学系2と撮像素子14とを相対移動させて手振れ補正が行なわれる。
このような駆動制御を行った場合、図7に示すような駆動信号AOUT,BOUTとなる。図7(A)は、第1アクチュエータ8の駆動信号AOUT,BOUT、図7(B)は、第2アクチュエータ6の駆動信号AOUT,BOUTであり、横軸が時間である。このように、第1アクチュエータ8の駆動信号AOUT,BOUT及び第2アクチュエータ6の駆動信号AOUT,BOUTは、同一の周波数fであり、位相がt7ずれたものになっている。
図8は、図7に示す駆動信号AOUT,BOUTに対応する電流値であり、横軸が時間である。図8(A)は、第1アクチュエータ8の素子電流とその素子電流を供給する電源回路63の電源電流である。図8(B)は、第2アクチュエータ6の素子電流とその素子電流を供給する電源回路63の電源電流である。そして、図8(C)は、電源回路63の電源電流の合計値である。図8に示す素子電流及び電源電流の発生タイミングは、図7に示す各駆動信号AOUT,BOUTの波形の立ち上がりのタイミングとなる。図8(A)、(B)に示すように、第1アクチュエータ8の駆動信号AOUT,BOUT及び第2アクチュエータ6の駆動信号AOUT,BOUTは、位相がt7ずれたものになるため、電源回路63の使用タイミングが重ならない。このため、電源電流の合計の瞬間最大値は、図8(C)に示すように、圧電素子6a,8aの電源電流の瞬間最大値と等しくなる。このように、電源回路63に要求される電流値が、電源回路63の最大供給量Pを超えないため、手振れ補正動作は安定となる。そして、全体として概略平均的に電流を消費することができる。
ここで、対比のため従来の制御方法を説明する。第1制御部30において、CPU60がドライバチップ61,62に対して、各アクチュエータ6,8で同一の位相の信号AIN,BINをそれぞれ出力する場合を説明する。図15(A)は、第1アクチュエータ8の駆動信号AOUT,BOUT、図15(B)は、第2アクチュエータ6の駆動信号AOUT,BOUTであり、横軸が時間である。このように、第1アクチュエータ8の駆動信号AOUT,BOUT及び第2アクチュエータ6の駆動信号AOUT,BOUTは、同一位相の信号になっている。
そして、図16は、図15に示す駆動信号AOUT,BOUTに対応する電流値であり、横軸が時間である。図16(A)は、第1アクチュエータ8の素子電流とその素子電流を供給する電源回路63の電源電流である。図16(B)は、第2アクチュエータ6の素子電流とその素子電流を供給する電源回路63の電源電流である。そして、図16(C)は、電源回路63の電源電流の合計値である。図16(A)、(B)に示すように、第1アクチュエータ8の駆動信号AOUT,BOUT及び第2アクチュエータ6の駆動信号AOUT,BOUTは、位相が同一のものとなるため、電源回路63の使用タイミングが重なる。このため、電源電流の合計の瞬間最大値は、図16(C)に示すように、圧電素子6a,8aの電源電流の最大値の2倍となり、電源回路63の最大供給量Pを超えるため、手振れ補正動作は不安定となる。このように、従来の制御方法では、動作不安定となる。
以上のように、本実施形態に係る駆動装置及び光学装置によれば、圧電素子6a,8aに対して、それぞれ異なる位相で同一周波数fのパルス信号を供給するため、圧電素子6a,8aにおける消費電流が最大となるタイミングをそれぞれずらすことができる。よって、電源回路63の瞬間最大消費電流の増大を抑えることができるとともに、電源リップルの発生を抑制し、安定に動作させることが可能となる。さらに、駆動のための瞬間最大消費電流を小さくすることができるので、駆動回路を簡略化することが可能となる。このため、省スペース化、低価格化を図ることができる。
なお、上述した実施形態は本発明に係る駆動装置及び光学装置の一例を示すものである。本発明に係る駆動装置及び光学装置は、これらの実施形態に係る駆動装置及び光学装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る駆動装置及び光学装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
例えば、上述した実施形態では、手振れ補正機構として手振れに応じて撮像素子14に対して撮像光学系2を移動させるものについて説明したが、撮像光学系2に対し撮像素子14を移動させるものであってもよい。この場合であっても、上述した実施形態に係る撮像装置と同様な作用効果が得られる。
また、上述した実施形態では、第1アクチュエータ8及び第2アクチュエータ6は、それぞれ正転の場合を説明したが、例えば図9,10に示すように、第1アクチュエータ8が正転であり、第2アクチュエータ6が逆転の場合であっても、上述した実施形態に係る駆動装置及び光学装置と同様な作用効果が得られる。なお、第1アクチュエータ8が逆転であり、第2アクチュエータ6が正転の場合や、第1アクチュエータ8及び第2アクチュエータがそれぞれ逆転の場合であってもよい。
また、上述した実施形態では、駆動装置を手振れ補正機構を有する撮像装置に適用した例について説明したが、ズーム機構やオートフォーカス機構を有する撮像装置にも適用可能である。例えば、図11に示すように、第1アクチュエータ8により駆動可能に構成された移動レンズ103、第2アクチュエータ6により駆動可能に構成された移動レンズ102を備える撮像装置に適用することができる。この撮像装置は、例えば、光軸Oを屈曲させる屈曲光学系が適用されており、固定レンズ105、プリズム104、移動レンズ103、102、固定レンズ101及び撮像素子100を備えている。そして、第1アクチュエータ8、第2アクチュエータ6が駆動することによって移動レンズ103、102が移動し、ズーム機能及びオートフォーカス機能が実現される。固定レンズ105から入射する被写体106の像は、プリズム104を介して屈曲され、移動レンズ103、移動レンズ102、固定レンズ101を介して撮像素子100で検出される。このようなズーム及びオートフォーカス機能を有する撮像装置において、図7に示すように、各アクチュエータのパルス信号をそれぞれt7ずつ異ならせることにより、図8に示すように、各アクチュエータが電流を消費するタイミングを変更することができる。このため、電源電流を略平均化し、電源電流の瞬間最大消費電流の増大を回避して安定動作を行うことができる。このように、本発明は、手振れ補正機構、ズーム機構、又はオートフォーカス機構、若しくはこれらの組み合わせの何れにも適用可能である。
また、上述した実施形態では、第1制御部30の制御対象のアクチュエータが2つの場合を説明したが、3以上のアクチュエータを制御する場合であってもよい。例えば、上述した実施形態の撮像装置が、変倍調整機構(ズーム機能)を実現する第4アクチュエータをさらに備え、第1制御部30が、第1アクチュエータ8、第2アクチュエータ6、ズーム及びオートフォーカス用の第3アクチュエータ10及びズーム用の第4アクチュエータを制御する場合に適用できる。この場合、図12に示すように、各アクチュエータのパルス信号をそれぞれt8ずつ異ならせることにより、図13に示すように、各アクチュエータが電流を消費するタイミングを変更することができるので、電源電流を略平均化し、電源電流の瞬間最大消費電流の増大を回避して安定動作を行うことができる。
また、このように構成することにより、ズームとフォーカスのレンズ駆動を同一時間帯で実行することができるので、動作時間を短くすることができる。また、このように3つ以上のアクチュエータを制御する場合には、全ての駆動信号の波形の位相がそれぞれ全て異なる必要は無く、2つのアクチュエータについてそれぞれの駆動信号の波形の位相がずれていれば上述した実施形態に係る駆動装置及び光学装置と同様な作用効果が得られる。
さらに、上述した実施形態では、駆動装置及び光学装置のアクチュエータとして圧電素子を用いたものを採用しているが、ステッピングモータ、高分子アクチュエータ、形状記憶合金等の他の駆動部品を用いた場合、あるいはそれらを組み合わせた場合でもよい。例えば、第1ステッピングモータ及び第2ステッピングモータを備えて移動部材を移動させる場合には、図14に示すように、各ステッピングモータの駆動波形を同一とし、位相をt9だけそれぞれずらすことにより、第1ステッピングモータの電流のピークと第2ステッピングモータの電流のピークが発生するタイミングをずらすことが可能となるので、上述した実施形態に係る駆動装置及び光学装置と同様な作用効果を得ることができる。
6、8、10…アクチュエータ、5…第2移動部材(第2移動手段)、6a…圧電素子(第2電気機械変換手段)、6b…駆動軸(第2駆動軸)、8a…圧電素子(第1電気機械変換手段)、8b…駆動軸(第1駆動軸)、11…第1移動部材(第1移動手段)、30…第1制御部(駆動信号制御手段)、63…電源回路(電源)、C1…電源コンデンサ。