JP2010048328A - アンギュラ玉軸受、複列アンギュラ玉軸受および転がり軸受 - Google Patents

アンギュラ玉軸受、複列アンギュラ玉軸受および転がり軸受 Download PDF

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則秀 佐藤
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Abstract

【課題】 低トルク、耐グリース漏洩、耐ダスト、および省スペースを同時にかつ低コストで達成することができるアンギュラ玉軸受、複列アンギュラ玉軸受および転がり軸受を提供する。
【解決手段】 アンギュラ玉軸受において、冠形状の保持器5にグリース掻き取り抑制手段としての凹み部を設け、玉4に付着しているグリースを保持器5の内径面5dで掻き取る量を減少させ、さらにシール部材6において、副リップ8dによって形成されるラビリンスシールLsと、主リップ8cによって形成される接触シールS1によってグリースがシールされ、外部へのグリース漏出を防止する。
【選択図】 図1

Description

この発明は、アンギュラ玉軸受、複列アンギュラ玉軸受および転がり軸受に関し、例えば、回転支持部に用いられる玉軸受のグリース漏れの解決と低トルクを実現し得る技術に関する。
各種回転機械装置、とりわけアイドラプーリ、オルタネータ等の自動車補機に使用される密閉板付玉軸受には、耐高温性、高速、耐泥水性、耐ダスト、耐グリース漏洩性、長寿命および低トルクが要求される。特に、転動体に玉を使用する軸受の耐グリース漏洩策として、通常、シール形状にて対策するのが一般的である。しかしながら、シール形式を非接触とすると低トルクとなるが、耐グリース漏洩性、耐ダスト性が問題となる。シール形式を接触とすれば、耐ダスト性は高くなるが、高トルクとなる。
シールリップ部分にグリースが存在した状態で軸受温度が上昇すれば、次のような現象が起きる。すなわち軸受内部の空気の膨張によって軸受内部の圧力が上昇し、軸受外部と圧力差が生じ、シールリップ部分を開いてグリースや空気が軸受外部へ漏洩する現象(以下、この現象を「呼吸」と称す)が起きる。この呼吸現象により、グリース漏洩が生じる。問題解決のため、シールリップ形状の変更、およびラビリンスすきまを形成するもの(特許文献1)や、スリンガを設けるもの(特許文献2)がある。
特開2005−330986号公報 特開2003−262234号公報
上記シールリップ形状の変更等を行うものは、内輪シール溝の変更が必要である。スリンガを設けるものは、軸受の軸方向に前記スリンガを設けるためのスペースが必要であり、部品点数が増えて製造コストが高くなる。
従来の冠形保持器を用いた軸受において、低トルク、耐グリース漏洩、耐ダスト、省スペース、安価を同時に達成することは困難である。
この発明の目的は、低トルク、耐グリース漏洩、耐ダスト、および省スペースを同時にかつ低コストで達成することができるアンギュラ玉軸受、複列アンギュラ玉軸受および転がり軸受を提供することである。
この発明における、第1の発明のアンギュラ玉軸受は、内外輪間に介在する複数の玉が保持器に保持され、これら内輪および外輪間の軸受空間を塞ぐシール部材を外輪に設けたアンギュラ玉軸受において、前記内輪の外径面にシール溝を周方向に形成し、前記シール溝に対向した外輪内径面に前記シール部材の外周縁を固定し、そのシール部材の内周部に主リップと副リップとを設け、前記主リップを前記シール溝に接触させて接触シールを形成するとともに、副リップを前記シール溝又はその近辺に接近させてラビリンスシールを形成してなり、前記シール部材の内輪外径面の高さ近辺の位置に分岐部を設け、その分岐部から内径方向に突き出した部分により前記の主リップを形成し、その主リップの先端部を前記シール溝の外側溝壁に接触させて前記の接触シールを形成し、前記分岐部から軸方向内向きに突き出した部分により前記の副リップを形成し、その副リップの先端部とシール溝の内側溝壁との間で前記のラビリンスシールを形成し、前記保持器は、環状体の一側面部に一部が開放されて内部に玉を保持するポケットを、前記環状体の円周方向複数箇所に有する冠形状であり、前記玉に付着するグリースを保持器内径面で掻き取ることを抑制するグリース掻き取り抑制手段を、前記保持器に設けたことを特徴とする。
この構成によると、冠形状の保持器にグリース掻き取り抑制手段を設けたため、保持器背面側からのグリース漏洩を抑制できる。これにより、内輪外径部へのグリース付着防止を図ることができる。さらにシール部材において、副リップによって形成されるラビリンスシールと、主リップによって形成される接触シールによってグリースがシールされ、外部への漏出が防止される。外部からの異物の浸入もこれらの接触シールおよびラビリンスシールによって防止される。
副リップの外径面は、シール溝に隣接する内輪外径面と同程度の高さで軸方向に拡がっているので、転走溝側から押し出されるグリースが、副リップの外径面に円滑に移動する。それ故、ラビリンスシールを通過するグリース量を減少させ得る。副リップにより軸受の内部圧力が緩和され、主リップに作用する内部圧力が低減される。よって、この主リップによって形成される接触シールの締め代を小さくして低トルク化を図れる。このようなシール部材を用いることにより、ラビリンス構造による低トルクかつ高シール性を実現できる。この場合、スリンガ等を設けるスペースを不要とし、部品点数を増やすことなく製造コストの低減を図れる。
この発明における、第2の発明の複列アンギュラ玉軸受は、内周に複列の軌道面を有する外輪と、前記軌道面に対向する複列の軌道面を外周に有する内輪と、これら内輪と外輪の軌道面間に介在した複列の玉と、各列の玉を保持する2個の保持器と、前記外輪に設けられこれら内輪および外輪間の軸受空間を塞ぐ両側のシール部材とを備えた複列アンギュラ玉軸受において、前記の第1の発明における、シール部材、冠形状の2個の保持器を設け、2個の保持器のポケット面が向かい合うように配置され、前記玉に付着するグリースを保持器内径面で掻き取ることを抑制するグリース掻き取り抑制手段を、前記各保持器に設けたものである。
この構成によると、冠形状の各保持器にグリース掻き取り抑制手段を設け、2個の保持器のポケット面が向かい合うように配置されるため、保持器背面側からのグリース漏洩を抑制する。これにより、内輪外径部へのグリース付着を防止し、内輪のシール溝へのグリース付着防止を図れる。
さらに上記シール部材において、ラビリンスシールと接触シールによってグリースがシールされ、外部への漏出が防止される。外部からの異物の浸入もこれらの接触シールおよびラビリンスシールによって防止される。
副リップの外径面は内輪外径面と同程度の高さで軸方向に拡がっているので、転走溝側から押し出されるグリースが円滑にその外径面側に移動する。それ故、ラビリンスシールを通過するグリース量を減少させ得る。主リップと副リップが分かれる分岐部の位置が「内輪外径面の高さ近辺の位置」であるというのは、内輪外径面の軸方向の延長線上又はその延長線の近辺に分岐部が存在することを意味し、これによってその分岐部から内輪に向かってほぼその外径面の高さで副リップが延び出すことになる。副リップにより軸受の内部圧力が緩和され、主リップに作用する内部圧力が低減される。よって、この主リップによって形成される接触シールの締め代を小さくして低トルク化を図れる。
複列アンギュラ玉軸受において、前述の保持器形状により、グリースが内輪外径部に付着するのを抑制し、保持器背面側つまり反ポケット側からのグリース漏洩を抑制し得る。さらに、シール部材を用いることにより、ラビリンス構造による低トルクかつ高シール性を実現できる。
前記グリース掻き取り抑制手段は、前記各ポケットの内面に、保持器内径側のポケット開口縁から保持器外径側へ延びる凹み部を設けても良い。この場合、この凹み部により、玉に付着しているグリースを保持器内径面で掻き取る量が減少する。凹み部により、保持器のポケット開口縁付近に堆積し得るグリースを、ポケットの内面に円滑に浸入させて潤滑に寄与させ得る。
前記シール部材は、前記分岐部を介して逆L形に主リップと副リップおよびこれらに対向した前記シール溝の内側側壁により囲まれ、前記ラビリンスシールにおいて軸受内部に連通するとともに、前記接触シールにおいて閉鎖されたグリース溜まりを形成したものであっても良い。グリース溜まりが軸受の内部圧力を一層緩和する作用を行うので、主リップの締め代を小さくして低トルク化を図れ、同時に高シール化を図れる。
前記シール部材は、前記副リップの最大径部分の半径を内輪外径面の半径より大とし、この副リップの先端部に、前記内輪外径面を基準にした傾斜角度が90度以上となるテーパ面を形成しても良い。このようなテーパ面を設けることにより、グリースを副リップの外径面に円滑に移行させ得る。
前記副リップの内径面を、前記内輪外径面に対して一定の角度をもって傾斜させ、この傾斜させた副リップの内径面と、シール溝の内側側壁との間でラビリンスシールを形成しても良い。このように副リップの内径面を傾斜させてラビリンスシールを簡単に形成することができ、このラビリンスシールによってグリース漏出圧力が低減される。
前記保持器の各ポケットの背面における保持器内径縁から保持器外径側へ延びる凹み部を設けても良い。ポケットでの内径面の面積を低減でき、グリース漏れ防止の効果を上げ得る。
この発明における、第3の発明の転がり軸受は、第1の発明のシール部材および保持器を転がり軸受に適用したものである。
冠形状の保持器にグリース掻き取り抑制手段を設けたため、保持器背面側からのグリース漏洩を抑制し、内輪外径部へのグリース付着防止を図ることができる。さらに、上記シール部材において、副リップによって形成されるラビリンスシールと、主リップによって形成される接触シールによってグリースがシールされ、外部への漏出が防止される。外部からの異物の浸入もこれらの接触シールおよびラビリンスシールによって防止される。その他第1の発明と同様の作用効果を奏する。
第3の発明において、前記グリース掻き取り抑制手段は、前記各ポケットの内面に、保持器内径側のポケット開口縁から保持器外径側へ延びる凹み部を設けたものであり、前記各ポケットの開放側に、円周方向に対面する一対の爪が軸方向に突出して設けられ、前記各ポケットの一対の爪の保持器内径側の先端間の間隔よりも、保持器外径側の先端間の間隔を狭くしたものであっても良い。
凹み部により、玉に付着しているグリースを保持器内径面で掻き取る量が減少する。さらに、各ポケットの開放側に突出して設けられた一対の爪により、玉に付着のグリースを、外輪側から内輪の外径部に近付けず、内輪側からのグリースも、内輪の外径部から離れた爪の保持器外径側で掻き取る。これにより、軸受からのグリース漏れをより確実に防止できる。
前記保持器における各ポケットの開放側に、円周方向に対面する一対の爪が軸方向に突出して設けられ、前記各ポケットの一対の爪の保持器内径側の先端間を開放し、保持器外径側の先端間を連結したものであっても良い。
玉に付着したグリースを、外輪側から内輪の外径部に近付けず、内輪側からのグリースも、内輪の外径部から離れた爪の保持器外径側で掻き取れる。
前記各ポケットの一対の爪の先端間の間隔を、保持器内径側から保持器外径側に向けて段階的に狭くしても良い。この場合、爪を種々の製造方法により容易に形成でき、保持器の製造コストの低減を図れる。
前記各ポケットの一対の爪の先端間の間隔を、保持器内径側から保持器外径側に向けて無段階に狭くしても良い。この場合、一対の爪の先端間の間隔を段階的に狭くするものよりも、爪自体の剛性を高め得る。
ポケットにおける保持器円周方向の中心を通る保持器半径方向の直線に投影した前記爪の全幅をIt としたとき、前記直線に投影した前記爪における保持外径側の爪部の幅Ie が2/3It 以下となるように、保持器外径側の前記爪部の幅を設定しても良い。この場合、グリース漏洩防止効果をより上げることができる。
前記爪の保持器円周方向に沿う断面でのポケット中心相当位置から保持器内径側の爪先端および保持器外径側の爪先端の保持器円周方向に対する角度を、保持器外径側の爪先端の角度が保持器内径側の爪先端の角度の1.5倍以上となるように設定するのが、グリース漏洩防止効果をより上げるうえで好ましい。
この発明の第1の発明のアンギュラ玉軸受は、内外輪間に介在する複数の玉が保持器に保持され、これら内輪および外輪間の軸受空間を塞ぐシール部材を外輪に設けたアンギュラ玉軸受において、前記内輪の外径面にシール溝を周方向に形成し、前記シール溝に対向した外輪内径面に前記シール部材の外周縁を固定し、そのシール部材の内周部に主リップと副リップとを設け、前記主リップを前記シール溝に接触させて接触シールを形成するとともに、副リップを前記シール溝又はその近辺に接近させてラビリンスシールを形成してなり、前記シール部材の内輪外径面の高さ近辺の位置に分岐部を設け、その分岐部から内径方向に突き出した部分により前記の主リップを形成し、その主リップの先端部を前記シール溝の外側溝壁に接触させて前記の接触シールを形成し、前記分岐部から軸方向内向きに突き出した部分により前記の副リップを形成し、その副リップの先端部とシール溝の内側溝壁との間で前記のラビリンスシールを形成し、前記保持器は、環状体の一側面部に一部が開放されて内部に玉を保持するポケットを、前記環状体の円周方向複数箇所に有する冠形状であり、前記玉に付着するグリースを保持器内径面で掻き取ることを抑制するグリース掻き取り抑制手段を、前記保持器に設けたため、低トルク、耐グリース漏洩、耐ダスト、および省スペースを同時にかつ低コストで達成できる。
この発明の第2の発明の複列アンギュラ玉軸受は、内周に複列の軌道面を有する外輪と、前記軌道面に対向する複列の軌道面を外周に有する内輪と、これら内輪と外輪の軌道面間に介在した複列の玉と、各列の玉を保持する2個の保持器と、前記外輪に設けられこれら内輪および外輪間の軸受空間を塞ぐ両側のシール部材とを備えた複列アンギュラ玉軸受において、前記第1の発明における、シール部材、冠形状の2個の保持器を設け、2個の保持器のポケット面が向かい合うように配置され、前記玉に付着するグリースを保持器内径面で掻き取ることを抑制するグリース掻き取り抑制手段を、前記各保持器に設けたため、低トルク、耐グリース漏洩、耐ダスト、および省スペースを同時にかつ低コストで達成できる。
この発明の第3の発明の転がり軸受は、内外輪間に介在する複数の玉が保持器に保持され、これら内輪および外輪間の軸受空間を塞ぐシール部材を外輪に設けた転がり軸受において、前記の第1の発明における、シール部材、冠形状の保持器を設けたため、低トルク、耐グリース漏洩、耐ダスト、および省スペースを同時にかつ低コストで達成できる。
この発明の一実施形態を図1ないし図6と共に説明する。この実施形態に係る玉軸受1は、単列アンギュラ玉軸受である。図1に示すように、この単列アンギュラ玉軸受は、内輪2と外輪3の軌道面2a,3aの間に複数の玉4を介在させ、これら玉4を保持する保持器5(または後述する保持器5C)を設け、内外輪2,3間に形成される環状空間のうちポケット開放側の一端を後述の図2、図3に示すシール部材6で密封したものである。軌道面2a,3aは、図1一点鎖線にて示す予め定める接触角となるように形成される。シール溝10の無い図1左側の内輪外径面を成すカウンターボア部は、同図右側の外径部2Dよりも小径に形成されている。これにより外輪3および玉4に対し、内輪2をこの左側の内輪外径面から容易に組み込むことができる。さらに、ポケット背面側における保持器5,5Cの内径面5dと、内輪外径面との距離を長くし得る。軸受空間にはグリースが封入される。
このアンギュラ玉軸受では、以下のシール部材6と後述する保持器5とを用いることで、低トルク、耐グリース漏洩、耐ダスト、および省スペースを同時にかつ低コストで達成している。
シール部材6について説明する。
図1に示すように、内輪外径面における右側部に、環状のシール溝10が周方向に沿って形成されている。外輪内径面には、シール溝10に対向したシール部材固定溝9が形成される。
シール溝10とシール部材固定溝9との間に、環状のシール部材6が介在される。このシール部材6は、芯金7に合成ゴム8をモールドしたものであり、外周縁6aが前記シール部材固定溝9に嵌入固定される。図2に示すように、芯金7の内径R1は、内輪2の内輪外径面(外径部)2Dの外径R2より大である。これら芯金7の内径と内輪外径面2Dの軸方向の延長線Lとの間において、合成ゴム8の部分にくびれ部8aが形成され、このくびれ部8aにおいて合成ゴム8の肉厚が小さくなっている。
くびれ部8aから内径方向に直線状に延び出した部分が形成され、その途中に分岐部8bが設けられる。分岐部8bから内径方向に延びた部分が主リップ8cとなり、内向き軸方向に分かれた部分が副リップ8dとなる。主リップ8cと副リップ8dが分岐部8bで逆L形に連続する。
分岐部8bは、主リップ8cの厚さと副リップ8dの厚さをそれぞれ延長した部分が交差する範囲であって、図2における一点鎖線で囲まれた部分をいう。この分岐部8bは、内輪外径面2Dの延長線L1より内径側に微小量ΔXだけ隔たった位置にある。このような隔たりΔXが存在することにより、内輪外径面2Dと副リップ8dとの間には、半径R2から半径R3を減じた段差が生じる。前記段差は、図2矢印aにて表記するように、内輪外径面2D側から副リップ8d側に移動するグリースに対して障害になることはない。ただし、隔たりΔXが大きくなると、後述のグリース溜まりGdの容積が減少し、グリースの漏出圧を緩和する作用が低減するので、前記隔たりΔXの大きさはその緩和作用を損なわない範囲に制限される。分岐部8bの位置が前記より外径側に寄ることにより、副リップ8dの外周半径R3が内輪外径面2Dの半径R2よりも大、つまりR3>R2となって前記段差部がグリースの移動に対して障害になる場合は、後述の図49(a)に示すような、テーパ面8daを設けることが望ましい。
図2に示すように、前記副リップ部8dの先端部は、シール溝10の傾斜した内側溝壁10aに平行な傾斜面に形成され、この内側溝壁10aとの間でラビリンスシールLsが形成される。
シール溝10は、溝底10b,外側溝壁10c,および外側ランド10dを有する。外側ランド10dの半径R4は、内輪外径面2Dの半径R2より小である。
主リップ8cの先端部には、外側面の方向に若干反った摺接部8caが設けられ、その先端先鋭部がシール溝10の外側溝壁10cに所要の締め代をもって接触される。これによって、図3(b)に示すように、接触シールS1が形成される。図3(b)において、摺接部8caの先端部の自然状態における形状を一点鎖線で示す。摺接部8caの先端部が外側溝壁10cに接触することにより変形した形状を実線で示し、この変形部分において接触シールS1が形成されることを示す。他の図面においては、便宜上接触シールS1を自然状態における形状のみで示している。
主リップ8cと副リップ8dは分岐部8bを介して逆L形をなすが、その逆L形部分とこれに対向したシール溝10の内側溝壁10aによって囲まれた部分が比較的容積の大きいグリース溜まりGdとなる。このグリース溜まりGdはラビリンスシールLsで軸受内部に連通し、かつ接触シールS1で閉鎖される。軸受内部圧力の異常上昇時の減圧対策として、小溝部8cbが、摺接部8caの先端において全周の対称位置の2箇所に設けられる。
主リップ8cの接触シールS1における締め代は、それより内側に存在するラビリンスシールLsによってグリースの漏出圧力が低減されるので、その圧力を直接受ける場合、つまり主リップを内側に配置した形に比べ、小さく設定できる。前記締め代は、くびれ部8aの肉厚、主リップ8c、摺接部8ca等の肉厚を変えることにより調整できる。
この発明の場合は、以下のような理由で接触シールS1の締め代を一層小さくすることができる。理由の一は、軌道面2a側から内輪外径面2Dを経て外方に押し出されるグリースの一部が、図2矢印aで示すように、副リップ8dの外径面上に移動することである。副リップ8dの外径面は軸と平行な面であるので、グリースが押し戻されることが防止される。従来の、副リップの外径面が内向きに傾斜しているシール構造では、グリースが内側に押し戻される傾向が強く、これによりグリースの圧力が増すが、この発明の場合は押し戻す力が比較的弱いので、グリースの圧力に与える影響が少なくなり、図2矢印bで示すラビリンスシールLs側へのグリース移動が少なくなる。その結果、グリース溜まりGd内部の圧力の上昇が抑制される。
理由の二は、グリース溜まりGdが分岐部8bを介して逆L形に連続した主リップ8cと、副リップ8dと、これらに対向したシール溝10の内側溝壁10aとによって囲まれた比較的大きい容積をもって形成されることである。これにより、グリース溜まりGdの内部圧力が一層低減される。
以上の作用効果を確認するために、実施の形態1の発明品(両シール品)と、次の現行品について比較実験を行った。
(1)現行品
主リップと副リップの形状は、シール部材を構成する合成ゴムの先端部分を二股状に形成している。この二股に分かれた一方の主リップを内側に配置すると共に、副リップを外側に配置した形式(特公昭46−39361号公報、第1図参照)に基づき製作されたもの(両シール品)。
(2)実験内容
発明品と前記現行品につき、アキシアル荷重4kgf下でのトルク値を実測した。その実測値を図4に示す。この図4において、「X」が現行品、「A」が発明品のトルク値である。ラジアル荷重20kgf下でのグリース漏れ性能試験を行った。その試験結果を図5に示す。この図5において、「X」が現行品、「A」が発明品のグリース漏れ量である。
図4に示したトルク値については、発明品Aが現行品Xに対し、平均的に約40gf・cm(20%)低下しており、低トルク化が図られていることが分かった。図5に示したグリース漏れ量については、3時間後の安定時までの累積漏れ量が、発明品Aは現行品Xに対し、約1/4程度に低減しており、シール性能が改善されていることが分かった。この実施形態に係る軸受では、以下に示す保持器5を用いることで、内輪2のシール溝10にグリースが付着し難く、グリース漏れを確実に防止し得る。
保持器5について説明する。
保持器5は、図1、図6に示すように、内部に玉4を保持するポケット11を、環状体12の円周方向の複数箇所に有する冠形状である。各ポケット11の内面は、玉4の外面に沿った凹球面状の曲面形状とされる。保持器5のポケット開放側を軸方向内方に向け、ポケット背面側が左端側に開放する。図6に示すように、環状体12の隣合うポケット11,11間の部分は連結部13となる。各ポケット11の開放側には、円周方向に対面する一対の爪状の先端部(爪)14,14が図51矢符A1にて表記する軸方向に突出する。
図51は、図6と対応する部分につき、ポケット内面を単調な球面とした従来例の図である。
これに対して、この発明の保持器5のポケット11の内面には、図6(A)に示すように、保持器内径側のポケット開口縁から保持器外径側へ延びる複数の凹み部16が設けられている。グリース掻き取り抑制手段としての凹み部16を設けることにより、玉4に付着しているグリースが保持器5の内径面5dで掻き取られる量を減少させ、内輪2の外径部2D(図2)へのグリース付着を防止する。
この例では、凹み部16を、ポケット11の開口縁における保持器円周方向の中心OW11の両側に位置する2箇所としている。各凹み部16の内面形状は、保持器円周方向に沿う断面形状が、ポケット11の内面となる凹球面の曲率半径Raよりも小さな曲率半径Rbの円弧状である。前記断面形状とは、凹み部16を保持器中心軸に垂直な平面で断面した断面形状と同義である。詳しくは図6(B)に示すように、各凹み部16の内面形状は、保持器5の半径方向の直線Lを中心とする各仮想円筒Vの表面に略沿う円筒面状の形状である。この凹み部16は、保持器半径方向につき、保持器内径側のポケット開口縁から玉配列ピッチ円PCDの付近まで延びていて、保持器内径縁から玉配列ピッチ円PCDに近づくに従って徐々に小さく、つまり徐々に浅くかつ幅狭となる形状である。玉配列ピッチ円PCDをポケットPCDとも呼ぶ。
2個の凹み部16の位置は、例えば、ポケット11の開口縁における保持器円周方向の中心OW11に対する周方向の配向角度を40°±15°とした対称な2箇所である。凹み部16の深さは、ポケット内面の凹球面の中心O11から凹み部16の最深位置までの距離Rcが、玉4の半径の1.05倍以上となる深さが好ましい(丁度1.05倍であって良い)。凹み部16を3箇所以上としても良い。
この実施形態に係る玉軸受の保持器5を部分的に変更した変更形態として、図7に示すように、連結部13の内径面のポケット背面側を削除しても良い。ポケット11では、そのポケット背面側が円弧状の殻部11aで囲まれた形状となる。
図6〜図8に示す実施形態では、前記凹み部16により、玉4に付着したグリースを保持器5の内径面5dで掻き取る量を減らせるが、僅かに付着する場合には、その堆積量が増加するとグリース漏れに繋がる。この場合、連結部13の内径面にもグリースが付着し、この部分のグリースが軸方向にしか移動できない。連結部13の軸方向の範囲が、外径部2Dの存在領域と重なる場合、すなわち連結部13の内径面が軌道面2aよりも軸受端面側に位置する場合には、連結部13の内径面からグリースが軸受外に漏れてしまう。そこで、図7のように、連結部13の内径面のポケット背面側を削除することで、連結部13の内径面からグリースが軸受外に漏れるのを防ぐ。
図7の変更形態では、連結部13のポケット背面側において、内径面から外径面にわたって削除した例を示しているが、保持器5の強度を考えた場合は、その削除量は少ないことが望ましい。内輪2の外径部2Dへのグリース付着の抑制には、内輪2の外径面と保持器5の内径面5dとの距離を長くすることも有効であることから、連結部13の内径側のみを一部削除し、外径側に従来のような壁面を残しても良い。隣合うポケット11,11間の連結部13の円周方向中央位置における断面において、連結部13の削除されずに残された内径面のポケット背面側の端点の軸方向位置を、軌道面2aの肩部よりも軌道面2a中央側に位置させることが、グリース漏れ防止の上で重要である。
このことを、図7の保持器5に仮想線で示す内輪2の断面図を重ねて、軸方向Yの位置関係の模式図として図8に示す。同図において、連結部13の軸方向位置Ybが、内輪2の軌道面2aの肩部の軸方向位置Yaよりも軌道面2aの中央側(Yb<Ya)であれば良い。
同図におけるYbの位置は、連結部13の内径面が存在してよいポケット背面側の位置であり、その外径側にポケット11の中央部のポケット背面側の軸方向位置と同じ位置まで延びる外壁面が存在しても良い。同様に、Ybの位置から外径側に向けて連結部13の軸方向厚さが、ポケット背面側へと徐々に、または段階的に厚くなる形状としても良い。
図9および図10は、グリース付着状態の確認を行なった試験結果を示す。この試験では、図7の保持器5を組み込んだ玉軸受と、図51に示す一般的な冠形状の保持器を組み込んだ玉軸受とを、同一条件で運転して比較した。図9は、図7の保持器5を用いた玉軸受のグリース付着状態を示し、図10は一般的な冠形状の保持器を用いた玉軸受のグリース付着状態を示す。
図9および図10の試験結果から、一般的な冠形状の保持器を組み込んだ玉軸受(図10)では、保持器内径面と内輪の外径部との間にグリースが多量存在し、軸方向外方側つまり紙面手前方向の内輪シール溝に向かってグリースが漏れている。外輪にシール部材が装着されていれば、シール溝とシール先端との間にグリースが流動し、軸受内部の温度上昇と共に軸受外部へ漏洩する。
玉軸受(図9)では、保持器5の内径部に極微量のグリース付着が認められるものの、内輪外径部には認められない。
試験結果から、保持器5では、各ポケット11の内面に、保持器内径側のポケット開口縁から保持器外径側へ延びるグリース掻き取り抑制手段としての凹み部16を設けたことにより、玉4に付着しているグリースを保持器5の内径面5dで掻き取る量が減少する。これにより、内輪2の外径部2Dへのグリース付着を防止し得る。外径部2Dへのグリース付着がなければ、シール溝10(図1)へのグリースの流動を防止でき、グリース漏れを防止できる。
例えば、従来例の鉄板波形保持器において、ポケットのある円周方向部分の内径の保持器中心からの半径を、ポケット間の円周方向部分の内径の保持器中心からの半径よりも大きくしたグリースの漏れ防止構造を、冠形状の保持器に適用した場合は、ポケットの中央底部の形状を一部削除する必要がある。このため、保持器の強度低下が大きく、実用化困難である。具体的には、保持器の自転による遠心力が作用すると、ポケットの中央底部での歪みが大きく、この部分が破断に至ったり、隣合うポケット間の連結部の外径側への変位量が増加し、外輪との接触を招く。
これに対して、玉軸受1における保持器5の凹み部16は、ポケット11の底に位置しないので、保持器5の強度低下を小さくでき、実用に耐え得る。
以上説明した玉軸受1によれば、冠形状の保持器5に凹み部16を設け、玉4に付着しているグリースを保持器5の内径面5dで掻き取る量を減少させ得る。これにより、内輪2の外径部2Dへのグリース付着を防止し得る。よって、内輪2のシール溝10へのグリース付着防止を図り得る。シール溝10の形状を設計変更する必要がなく、スリンガ等を設けるスペースを確保する必要もない。したがって、部品点数を上記特許文献に記載のもの等より少なくし製造コストの低減を図れる。
さらにシール部材6において、副リップ8dによって形成されるラビリンスシールLsと、主リップ8cによって形成される接触シールS1によってグリースがシールされ、外部への漏出が防止される。副リップ8dの外径面は、内輪外径面2Dと同程度の高さで軸方向に拡がっているので、軌道面2a側から押し出されるグリースが円滑にその外径面側に移動する。それ故、ラビリンスシールLsを通過するグリース量を減少させ得る。副リップ8dにより軸受の内部圧力が緩和され、主リップ8cに作用する内部圧力が低減される。よって、主リップ8cによって形成される接触シールS1の締め代を小さくして低トルク化を図れる。
グリース掻き取り抑制手段は、各ポケット11の内面に、保持器内径側のポケット開口縁から保持器外径側へ延びる凹み部16を設けたものである。この凹み部16により、玉4に付着しているグリースを保持器内径面5dで掻き取る量が減少する。凹み部16により、保持器5のポケット開口縁付近に堆積し得るグリースを、ポケット11の内面に円滑に浸入させて潤滑に寄与させ得る。
シール部材6は、分岐部8bを介して逆L形に主リップ8cと副リップ8dおよびこれらに対向したシール溝10の内側側壁10aにより囲まれ、ラビリンスシールLsにおいて軸受内部に連通すると共に、接触シールS1において閉鎖されたグリース溜まりGdを形成したものである。このグリース溜まりGdが軸受の内部圧力を一層緩和する作用を行うので、主リップ8cの締め代を小さくして低トルク化を図れ、同時に高シール化を図れる。
図1左側の内輪外径面を成すカウンターボア部は、同図右側の外径部2Dよりも小径に形成されているので、外輪3および玉4に対し、内輪2をこの左側の内輪外径面から容易に組み込むことができる。さらに、ポケット背面側における保持器5,5Cの内径面5dと、内輪外径面との距離を長くし得る。この場合、保持器5のグリース掻き取り抑制手段としての凹み部16により、玉4に付着しているグリースを保持器5の内径面5dで掻き取る量が減少する相乗効果により、左側の内輪外径面へのグリース付着防止を図ることが可能となる。ただし、グリース掻き取り抑制手段は凹み部16だけに限定されるものではない。
次に、この発明の他の実施形態について説明する。
以下の説明においては、各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
図11の例は、図6の実施形態に係る保持器において、凹み部16の断面形状(保持器円周方向に沿う断面形状)を円弧状とする代わりに、多角形状としたものである。同図(B)に示すように、保持器5の半径方向の直線LAを中心とする各多角形柱VAの表面に略沿う多角形状の形状である。この凹み部16は、保持器半径方向につき、保持器内径側の開口縁から玉配列ピッチ円PCDの付近まで延び、保持器内径縁から玉配列ピッチ円PCDに近づくに従って徐々に小さく、徐々に浅くかつ幅狭となる形状である。その他の構成は、図6の例と同様である。
前記多角形状の凹み部16を保持器5に設けたため、玉4に付着しているグリースが保持器5の内径面で掻き取られる量を減少させる。これと共に、グリースを保持器内径縁から玉配列ピッチ円PCDに円滑に導き、潤滑に効率良く寄与させることができる。多角形状の凹み部16を、玉配列ピッチ円PCDに近づくに従い徐々に浅くかつ幅狭としたため、グリース油膜が玉配列ピッチ円PCD付近において保持され、潤滑に効率良く寄与し、軸受寿命の延長を図れる。
図12の例は、ポケット11の内面に設けられる凹み部16が、ポケット11の開口縁における保持器円周方向の中心OW11の両側に位置して2箇所に設けられ、各凹み部16が、保持器外径縁5g付近まで延びている。これら凹み部16の内面の保持器円周方向に沿う断面形状は、ポケット11の内面となる凹球面の曲率半径Raよりも小さな曲率半径RBbの円弧状であり、同図(B)に示すように、一つの仮想リングVBの表面に略沿った形状である。仮想リングVBは、凹み部16を加工する砥石の外周面であっても良い。仮想リングVBは、ポケット11内に収まるリング外径であって、任意周方向位置の断面形状が円形となるドーナツ状であり、図13のように、リング中心OVBが保持器中心軸Oに対して傾きを持つ。
保持器内径縁から保持器外径縁5g付近まで延びる、断面円弧状の凹み部16を保持器5に設けたため、玉4に付着しているグリースが保持器5の内径面5dで掻き取られる量を減少させる。これと共に、内輪2の軌道面2aから保持器内径縁に至るグリースの一部を、凹み部16を経由して保持器外径縁5gに移動させ、外輪3の軌道面3aに円滑に導くことが可能となる。したがって、軸受寿命の延長を図れる。
この発明において、凹み部16の保持器円周方向に沿う断面形状は、図6〜図8の各例の形状に限らず、部分楕円状や、矩形溝状、台形溝状や、その他任意の断面形状としても良い。凹み部16の上記断面形状は、凹み部中心に対して非対称の形状であっても良い。
ポケット11における内面形状は、球面状に限らず、玉配列ピッチ円PCDよりも内径側の部分が、保持器内径側開口縁に近づくに従って小径となる形状であれば良く、例えば玉配列ピッチ円PCDよりも外径側の部分が円筒面状、内径側の部分が円すい面状であっても良い。
図14の保持器5は、図7の実施形態において、ポケット11の殻部11aの厚さt1を比較的厚くした例を示す。殻部11aの厚さt1の増加は、保持器5の内径面5dの面積増加を招くため、グリース漏れを助長する傾向になる。とりわけ、内径面5dにおいて、堆積するグリースが多量になる位置は、図8における内輪2の軌道面2aの肩部と一致する軸方向位置の近傍(符号Pで示す)となるので、この軸方向位置の近傍での保持器5の内径面5dの面積低減が重要である。そこで、この実施形態では、ポケット11の殻部11aの外面にも凹み部26を設け、ポケット11の内径面の面積を低減している。これにより、保持器5の内径面5dへのグリース堆積量の減少と、保持器単体の強度向上とを両立させ得る。
保持器5の内径面5dの面積を低減するには、図15に部分拡大斜視図で示すように、ポケット11の内面に設ける前記凹み部16を上記各保持器5の凹み部16よりも大きくしても良い。
図16に部分拡大斜視図で示すように、保持器5を構成する環状体12を、内径側の軸方向厚さが薄く、外径側に向かって徐々に厚くなる形状とすることで、保持器5の内径面5dの面積を低減しても良い。同様に、環状体12の軸方向厚さを、内径側から外径側へと段階的に増加させても良い。
図17の保持器5は、図14の実施形態において、ポケット11の開放側に突出する一対の先端部14の一部を削除して、軽量化を図ったものである。玉軸受1を高速回転で使用する場合、保持器5に作用する遠心力の影響が大きくなる。この遠心力による保持器5の応力を低減するには、保持器5の軽量化が有効である。そこで、この実施形態では、先端部14の外径側を一部削除した形状としている。高速回転時に、保持器5の先端部14では、ポケット11の中央部に対して外径側に傾くように変形するため、先端部14の内径側で玉4を案内する。したがって、この先端部14の外径側を一部削除しても、軸受機能上の悪影響は生じない。
前記各実施形態において、ポケット11の内面の凹み部の好ましい位置は、図8に符号Pで示す位置である。つまり、凹み部16の軸受軸方向位置が、保持器5を玉軸受1に組み込んだ際の内輪軌道面2aの肩部と概ね一致する場所である。なぜなら、保持器5の内径面5dに堆積するグリースが多量となるのは、玉4と内輪軌道面2aの接触により、軌道面肩部と一致する軸方向位置の近傍となるからである。したがって、凹み部16の軸方向位置を、保持器5を玉軸受1に組み込んだ際の内輪軌道面2aの肩部と一致する場所に規定することにより、保持器5の内径面5dに堆積し得るグリースが効果的に凹み部16に導かれていく。それ故、玉4に付着しているグリースを、内径面5dで掻き取る量が減少する。
図18の保持器5は、図6〜図8の実施形態に係る保持器において、ポケット11内面の2つの凹み部16を、1つの凹み部16に置き換えたものである。この凹み部16の場合も、保持器内径側の開口縁から保持器外径側に延びるものとし、この凹み部16の内面の保持器円周方向に沿う断面形状(すなわち保持器中心軸に垂直な平面で断面した断面形状)を、ポケット11の内面となる凹球面の曲率半径Raよりも小さな曲率半径RCbの円弧状としている。
この凹み部16は、ポケット11の開口縁における保持器円周方向の中心OW11から両側に広がって1箇所に設けられ、凹み部16の幅W16は、ポケット11の保持器円周方向の幅W11の略全体にわたる幅としている。凹み部16の幅W16は、ポケット11の幅W11の半分よりも大きいことが好ましく、2/3以上、または3/4以上であることがより好ましい。
凹み部16の内面形状は、同図(B)に示すように、保持器5の半径方向の直線LCを中心とする仮想円筒VCの表面に略沿う円筒面状の形状である。上記仮想円筒VCは、凹み部16を加工する砥石の表面であっても良い。この凹み部16は、保持器半径方向につき、保持器内径側の開口縁から玉配列ピッチ円PCDまで延びていて、保持器内径縁から玉配列ピッチ円PCDに至るに従って、徐々に小さく、つまり徐々に浅くかつ幅が狭くなる形状である。凹み部16は、この実施形態では、丁度、玉配列ピッチ円PCDまで延びているが、玉配列ピッチ円PCDよりも保持器外径側まで若干延びていても、また玉配列ピッチ円PCDに若干達しないものであっても良い。
凹み部16の深さは、ポケット内面の凹球面の中心O11から凹み部16の最深位置までの距離RCcが、玉4の半径の1.05倍以上となる深さ(丁度1.05倍であって良い)であることが好ましい。ポケット11の内面となる凹球面の曲率半径Raは、玉4の半径よりも僅かに大きくし、玉4の半径の1.05未満としている。
図19に示す単列アンギュラ玉軸受においては、内輪2のポケット背面側つまり左側にシール溝10が形成され、シール部材6は左端にのみ設けられる。左側のシール溝10に対応して外輪内径面の左側端にシール部材固定溝9が形成されている。図19右側の内輪外径面を成すカウンターボア部は、同図左側の外径部2Dより小径に形成される。
この図19の構成によれば、軌道面2a等から同図左側に押し出されるグリースについて、グリース掻き取り抑制手段により、玉4付着のグリースを保持器5の内径面5dで掻き取る量が減少する。これにより、内輪2の外径部2Dへのグリース付着を防止でき、シール溝10へのグリース流動を防止し得る。外径部2Dにグリースが多少付着した場合であっても、このグリースが、副リップ8dの外径面に円滑に移動し得る。それ故、ラビリンスシールLs(図2)を通過するグリース量を減少させ得る。副リップ8dにより軸受の内部圧力が緩和され、主リップ8cに作用する内部圧力が低減される。よって、この主リップ8cによって形成される接触シールS1(図2)の締め代を小さくして低トルク化を図れる。左側のシール部材6により、軸受外部からの異物の浸入を最小限にとどめる。
図20の単列アンギュラ玉軸受のように、内外輪両側にシール部材6,6が設けられていても良い。軌道面2a等から同図右側に押し出されるグリースは、右側のシール部材6によりグリース漏れを防止し得る。軌道面2a等から同図左側に押し出されるグリースについて、保持器5のグリース掻き取り抑制手段により、玉4に付着しているグリースを内径面5dで掻き取る量が減少する。それ故、内輪2の左側のシール溝10へのグリース流動を防止し得る。
図21は密閉型の複列アンギュラ玉軸受であり、この複列アンギュラ玉軸受は、内輪2と外輪3と複数の玉4と保持器5,5とシール部材6,6とを有する。この複列アンギュラ玉軸受の接触角α1,α2は、図21の一点鎖線で示すように断面略「ハ」字形状となっている。軌道面2a,3a間に複列の玉4を介在させ、各列の保持器5が各列における複数の玉4を保持している。各列の保持器5のポケット開放側を軸方向内方に向け、ポケット背面側がシール部材6にやや離隔して対向する。換言すれば、2個の保持器5,5のポケット面が向かい合うように配置される。軸受空間にはグリースが封入される。
この複列アンギュラ玉軸受では、前記シール部材6と前記保持器5とを用いることで、低トルク、耐グリース漏洩、耐ダスト、および省スペースを同時にかつ低コストで達成している。
この複列アンギュラ玉軸受によれば、冠形状の各保持器5に凹み部16を設け、2個の保持器5,5のポケット面が向かうように配置されるため、保持器背面側からのグリース漏洩を抑制する。これにより、内輪2の外径部2Dへのグリース付着を防止し得る。よって、内輪2のシール溝10へのグリース付着防止を図り、シール溝10の形状を設計変更する必要がなく、スリンガ等を設けるスペースも必要ない。したがって、部品点数を上記特許文献に記載のもの等より少なくし製造コストの低減を図れる。
さらにシール部材6において、副リップ8dによって形成されるラビリンスシールLsと、主リップ8cによって形成される接触シールS1によってグリースがシールされ、外部への漏出が防止される。副リップ8dの外径面は、内輪外径面2Dと同程度の高さで軸方向に拡がっているので、軌道面2a側から押し出されるグリースが円滑にその外径面側に移動する。それ故、ラビリンスシールLsを通過するグリース量を減少させることができる。前記副リップ8dにより軸受の内部圧力が緩和され、主リップ8cに作用する内部圧力が低減される。
複列アンギュラ玉軸受において、前述の保持器形状により、グリースが内輪外径部2Dに付着するのを抑制し、保持器背面側つまり反ポケット側からのグリース漏洩を抑制し得る。さらに、上記シール部材6を用いることにより、ラビリンス構造による低トルクかつ高シール性を実現できる。
図22の転がり軸受は単列密封型の深溝玉軸受であり、複数の玉4を保持する保持器5Cを設け、内外輪2,3間に形成される環状空間の両端をそれぞれ前述の図1ないし図3に示すシール部材6で密封したものである。
保持器5Cについて図23、図24と共に説明する。
この保持器5Cは冠形状であり、各ポケット11に、内輪2の外径部2D(図22)にグリースが付着することを抑制するグリース掻き取り抑制手段としての一対の爪14,14を設けている。各ポケット11の一対の爪14,14の間では、保持器内径側の爪部14a,14aの先端間の間隔よりも、保持器外径側の爪部14b,14bの先端間の間隔が狭く設定されている。この例では、一対の爪14,14の先端間の間隔が、保持器内径側から保持器外径側に向けて段階的に狭くされている。保持器内径側の爪部14aの突出長L1は、一般的な冠形状の保持器における爪の突出長と同じにされている。保持器外径側の爪部14bの突出長L2は、保持器内径側の爪部14aの突出長L1よりも長くされている。具体的には、爪14の保持器円周方向に沿う断面(玉配列のピッチ円PCDに沿う断面)を示す図27のように、ポケット中心O11から保持器内径側の爪部14a先端および保持器外径側の爪部14bの先端を臨む保持器円周方向に対する角度θa ,θb を、次のように設定するのが好ましい。すなわち、保持器外径側の爪部14bの先端を臨む角度θb が、保持器内径側の爪部14aの先端を臨む角度θa の1.5倍以上(θb ≧1.5θa )に設定するのが好ましい。
保持器外径側の爪部14bの保持器径方向の幅は、図28のように設定するのが望ましい。すなわち、ポケット11における保持器円周方向の中心を通る保持器半径方向の直線Nに投影した爪14の全幅(ポケット幅)をIt としたとき、前記直線Nに投影した保持器外径側の爪部14bの幅Ie が、前記全幅It の2/3以下(Ie ≦2/3It )に設定するのが好ましい。
一般的に冠形状の保持器を用いた玉軸受の組立は、内外輪内に玉を入れた後、保持器を組み込むことで行なわれる。冠形状の保持器が樹脂製である場合、ポケットにおける一対の爪の先端間の間隔が玉の径の90%よりも狭いと、玉に保持器を組み込む際、爪に無理な力が加わり、爪の付け根で白化や破損が生じる可能性が高くなる。この実施形態では、保持器外径側の爪部14bの先端間の間隔が、玉4の径の90%よりも狭くなる。このため、玉軸受1に玉4を入れた後に、保持器の完成品を組み込むことは難しい。
そこで、この実施形態では、図25や図26に示す工程で保持器5Cを製造する。図25の製造方法は、同図(A)のように、爪14における保持器外径側の爪部14bの保持器内径側の爪部14aよりも突出する爪先端部分からなる爪部品14baを、保持器本体5Aと別体に形成する。そして、玉軸受1の内外輪2,3(図22)および玉4に保持器本体5Aを組み込んだ後に、同図(B)のように、爪部品14baを保持器本体5Aに、接着、あるいはホットプレス等による溶着、あるいは嵌合する。これにより、組み込み時に、爪14の付け根で白化や破損が生じるのを避け得る。爪部品14baは、爪部14aよりも突出する爪先端部分だけでなく、保持器外径側の爪部14bの大部分あるいは全体であってもよい。
図26の製造方法は、同図(A)のように、爪14における保持器外径側の爪部14bの、保持器内径側の爪部14aよりも突出する爪先端部分14baを、完成時よりもポケット中心O11から離反する開放姿勢とした保持器半製品5Bを製作する。そして、玉軸受1の内外輪2,3(図22)および玉4に前記保持器半製品5Bを組み込んだ後に、図26(B)のように、前記爪先端部分14baを玉4の表面に沿う閉鎖姿勢に、熱を加えながら折り曲げて熱変形させたり、二次加工する。これにより、組み込み時に、爪14の付け根で白化や破損が生じるのを回避できる。
この保持器5Cを備えた玉軸受でのグリース挙動を、図29により説明する。同図(A)のように、外輪3からのグリースは、保持器外径側の爪部14bの外径部分で掻き取られ、グリースが内輪2に付着しない。内輪2からのグリースも、同図(B)のように、保持器外径側の爪部14bの内径部分で掻き取られ、玉4に付着するグリース量が少なくなり、グリースの帽子の形成が抑制される。掻き取られたグリースは、内輪外径面2Dから遠い位置にあるため、掻き取られたグリースが内輪外径面2Dに付着することはない。
図30および図31は、この実施形態の保持器5Cについて、その爪14における保持器外径側の爪部14bの角度θb (図27)および幅Ie (図28)を変化させてグリース漏洩試験を行なった結果を示すグラフである。この場合の試験条件を表1に示す。

Figure 2010048328
図30において、縦軸はグリース漏洩の割合を表し、横軸は保持器内径側の爪部14a(従来の爪に相当)の角度θa に対する保持器外径側の爪部14bの角度θb の割合を表している。この試験では、保持器外径側の爪部14bの図28における幅Ie を、爪14の全幅(ポケット幅)It の1/2(Ie =1/2It )としている。
図30に示す試験結果から、保持器外径側の爪部14bの突出長L2が短いと、玉4に付着するグリースを十分に掻き取ることができないことがわかる。
図31において、縦軸はグリース漏洩の割合を表し、横軸は爪14の全幅(ポケット幅)It に対する保持器外径側の爪部14bの幅Ie の割合を表している。この試験では、保持器外径側の爪部14bの図27における角度θb を、保持器内径側の爪部14aの角度θa の1.67倍(θb =1.67θa )としている。
図31に示す試験結果から、保持器外径側の爪部14bの幅Ie が大きいほど、その爪部14bの内径部分が内輪2(図22)の外径面2Dに近づくために、図29(B)のように内輪2側から掻き取ったグリースが内輪2の外径面に直接付着する。
以上の試験結果から、グリース漏洩の抑制に効果のある爪14の形状として、前記したように、図27における保持器外径側の爪部14bの角度θb を、保持器内径側の爪部14aの角度θa の1.5倍以上とするのが好ましい。また、図28における保持器外径側の爪部14bの幅Ie を、爪14の全幅(ポケット幅)It の2/3以下とするのが好ましい。
図32および図33は、グリース付着状態の確認を行った試験結果を示す。この試験では、保持器5Cを組み込んでグリースを封入した玉軸受と、一般的な冠形状の保持器を組み込んでグリースを封入した玉軸受とを、同一条件で運転して比較した。運転条件として、内輪に対して紙面垂直方向にアキシアル荷重を負荷し、外輪を図29矢印方向に回転させた。図32は実施形態の保持器5Cを用いた玉軸受のグリース付着状態を示し、図33は一般的な冠形状の保持器を用いた玉軸受のグリース付着状態を示す。
試験結果から、一般的な冠形状の保持器を組み込んだ玉軸受(図33)では、内輪の外径部にグリースが付着し、玉の表面にもグリースが付着することで、グリースの帽子が形成されていることがわかる。保持器5Cを組み込んだ玉軸受(図32)では、保持器外径側の爪部14bでグリースが掻き取られることで、内輪2の外径部2Dにグリースが付着せず、玉4の表面にグリースの帽子が形成されていない。
試験結果からわかるように、保持器5Cを備えた玉軸受では、各ポケット11の一対の爪14の保持器内径側の爪部14aの先端間の間隔よりも、保持器外径側の爪部14bの先端間の間隔を狭くしたことにより、玉4に付着したグリースを、外輪3側から内輪2の外径部2Dに近付けず、内輪2側からのグリースも、内輪2の外径部2Dから離れた保持器外径側の爪部14bで掻き取ることができ、結果として玉軸受1からのグリース漏れを防止できる。
さらに、玉軸受1は、図22に示すように、シール部材6において、副リップ8dによって形成されるラビリンスシールLsと、主リップ8cによって形成される接触シールS1(図2)によってグリースがシールされ、外部へのグリース漏出が防止される。外部からの異物の浸入も接触シールS1およびラビリンスシールLsによって防止される。
上記実施形態では、保持器5Cの爪14の形状として、保持器内径側の爪部14aと保持器外径側の爪部14bの突出長が段階的に変化する例を示したが、保持器内径側の爪先端の突出長L1よりも保持器外径側の爪先端の突出長L2が長ければ、爪14の形状は、内外輪2,3や接触シール6に非接触である限り、どのような形状でもよい。
図34の例では、各ポケット11の一対の爪14,14の先端間の間隔を、保持器内径側から保持器外径側に向けて無段階に狭くしている。
図35の例では、各ポケット11の一対の爪14,14の保持器内径側の先端間を開放し、保持器外径側の先端間を連結している。この例では、図23に示す保持器5Cの一対の爪14,14において、対向する保持器外径側の爪部14b,14b同士をさらに延ばして互いに連結した形状とする。
図36は、図35の爪形状とした保持器5Cの製造方法を示す。この製造方法では、図36(A)のように、一対の爪14,14間で連結される保持器外径側の爪部14bと、この爪部14bの両端から保持器円周方向に沿って延びる連結部14cと、この連結部14cから保持器ポケット背面側に向けて突出する嵌合突部14dとを有する爪部品14Aを、保持器本体5Aと別体に形成する。爪部品14Aは、複数のポケット11に跨がって連続する円環状で、複数のポケット11に対応する複数の爪部14bを有する。保持器本体5Aは、その環状体12の連結部13に、爪部品14Aの嵌合突部14dが嵌合する嵌合孔13aが形成されている。そして、内外輪2,3(図22)および玉4に前記保持器本体5Aを組み込んだ後に、図36(B)のように、爪部品14Aの嵌合突部14dを保持器本体5Aの嵌合孔13aに嵌合する。このように、1つの爪部品14Aが、複数のポケット11に対応する複数の爪部14bを有する形状であると、ポケット数よりも少ない部品点数で保持器外径側の爪部14bをまかなうことができ、組立が容易となり、製造コストも低減できる。
図37および図38の保持器5Cでは、図24に示す実施形態において、さらに、ポケット11の内面に保持器内径側のポケット開口縁から保持器外径側へ延びる複数の凹み部16であって図6(A),(B)と同様の凹み部16が設けられている。この凹み部16を設けることにより、玉4に付着しているグリースが保持器5Cの内径面で掻き取られる量を減少させ、内輪2の外径部2D(図22)へのグリース付着を防止する。
図39の例は、図38の実施形態において、凹み部16の断面形状(保持器円周方向に沿う断面形状)を円弧状とする代わりに、多角形状としたものである。この実施形態におけるその他の構成は、図37の例と同様である。
図40の例は、ポケット11の内面に設けられる凹み部16が、ポケット11の開口縁における保持器円周方向の中心OW11の両側に位置して2箇所に設けられていることでは図38の実施形態と同様であるが、各凹み部16が、保持器外径縁付近まで延びている。
図42の保持器5Cは、図38〜図40に示す実施形態において、連結部13の内径面のポケット背面側を削除したものである。これにより、ポケット11では、そのポケット背面側が円弧状の殻部11aで囲まれた形状となる。
図38〜図40に示す実施形態では、前記凹み部16により、玉4に付着したグリースを保持器5Cの内径面で掻き取る量を減らすことができるものの、わずかに付着する場合には、その堆積量が増加するとグリース漏れに繋がってしまう。つまり、この場合、連結部13の内径面にもグリースが付着し、この部分のグリースが軸方向にしか移動できない。この連結部13の軸方向の範囲が、内輪2の外径部2Dの存在領域と重なる場合、すなわち連結部13の内径面が内輪2の軌道面2aよりも軸受端面側に位置する場合には、連結部13の内径面からグリースが軸受外に漏れてしまう。そこで、図42のように、連結部13の内径面のポケット背面側を削除すると、連結部13の内径面からグリースが軸受外に漏れるのを防ぐことができる。
図42の実施形態では、前記連結部13のポケット背面側において、内径面から外径面にわたって削除した例を示しているが、保持器5の強度を考えた場合は、その削除量は少ないことが望ましい。内輪2の外径部2Dへのグリース付着の抑制には、内輪2の外径面と保持器5の内径面との距離を長くすることも有効であることから、連結部13の内径側のみを一部削除し、外径側に従来のような壁面を残すようにしてもよい。すなわち、隣合うポケット11,11間の連結部13の円周方向中央位置における断面において、連結部13の削除されずに残された内径面のポケット背面側の端点の軸方向位置を、内輪2の軌道面2aの肩部よりも軌道面2a中央側に位置させることが、グリース漏れ防止の上で重要である。このことを、図42の保持器5Cに仮想線で示す内輪2の断面図を重ねて、軸方向Yの位置関係の模式図として図45に示す。同図において、連結部13の軸方向位置Ybが、内輪2の軌道面2aの肩部の軸方向位置Yaよりも軌道面2aの中央側(Yb<Ya)であればよい。
同図におけるYbの位置は、連結部13の内径面が存在してよいポケット背面側の位置であり、その外径側にポケット11の中央部のポケット背面側の軸方向位置と同じ位置まで延びる外壁面が存在してもよい。同様に、Ybの位置から外径側に向けて連結部13の軸方向厚さが、ポケット背面側へと徐々に、または段階的に厚くなる形状でもよい。
この実施形態では、そのポケット11の殻部11aの外面にも凹み部26を設け、ポケット11の内径面の面積を低減し、保持器5Cの内径面へのグリース堆積量の減少と、保持器単体の強度向上とを両立させ得る。
保持器5Cの内径面の面積を低減するには、図43に部分拡大斜視図で示すように、ポケット11の内面における前記凹み部16を大きくしてもよい。
図44に部分拡大斜視図で示すように、環状体12を、内径側の軸方向厚さが薄く、外径側に向かって徐々に厚くなる形状とすることで、保持器5Cの内径面の面積を低減してもよい。環状体12の軸方向厚さを、内径側から外径側へと段階的に増加させてもよい。
図37〜図44の玉軸受の保持器5Cでは、各ポケット11の内面に、保持器内径側のポケット開口縁から保持器外径側へ延びる凹み部16を設けたことにより、玉4に付着しているグリースを保持器5Cの内径面で掻き取る量が減少する。この作用効果と、上記した爪形状の作用効果とが相まって、内輪2の外径部2Dへのグリース付着を効果的に防止できる。さらに、上記シール部材6を用いることにより、ラビリンス構造による低トルクかつ高シール性を実現できる。
ポケットのある円周方向部分の内径の保持器中心からの半径を、ポケット間の円周方向部分の内径の保持器中心からの半径よりも大きくした従来例の保持器のグリース漏れ防止構造を、冠形状の保持器に適用した場合は、ポケットの中央底部の形状を一部削除する必要がある。このため、保持器の強度低下が大きく、実用に供することは困難である。具体的には、保持器の自転による遠心力が作用すると、ポケットの中央底部での歪みが大きく、この部分が破断に至ったり、隣合うポケット間の連結部の外径側への変位量が増加し、外輪との接触を招く。
これに対して、保持器5Cにおける凹み部16は、ポケット11の底に位置しないので、保持器5Cの強度低下を小さくでき、実用に耐えうる。
前記各実施形態において、ポケット11の内面の凹み部16の好ましい位置は、図45に符号Pで示す位置である。つまり、凹み部16の軸受軸方向位置が、保持器5Cを玉軸受1に組み込んだ際の内輪軌道面2aの肩部と概ね一致する場所である。なぜなら、保持器5Cの内径面に堆積するグリースが多量となるのは、玉4と内輪軌道面2aの接触により、軌道面肩部と一致する軸方向位置の近傍となるからである。
図46の玉軸受の保持器5Cは、図38〜図40の実施形態において、ポケット11の内面に設ける2つの凹み部16を、図18と同様に1つの凹み部16に置き換えたものである。この凹み部16の場合も、保持器内径側の開口縁から保持器外径側に延びるものとし、この凹み部16の内面の保持器円周方向に沿う断面形状(すなわち保持器中心軸に垂直な平面で断面した断面形状)を、ポケット11の内面となる凹球面の曲率半径Raよりも小さな曲率半径RCbの円弧状としている。
図37〜図46に示す各実施形態では、図22〜図36に示す実施形態における爪形状によるグリース漏洩対策と、ポケット11の内面に形成した凹み部16による保持器ポケット背面側のグリース漏洩対策とが組み合わされているので、単列玉軸受において、よりグリース漏洩が生じない軸受とすることができる。さらに、上記シール部材6を用いることにより、ラビリンス構造による低トルクかつ高シール性を実現することができる。
図47、図48はさらに他の実施形態を示す。上記各実施形態に係る保持器において、各連結部13の側面に、円柱状の小突起15を設けても良い。図47(A)は、図6(A)の保持器に複数の小突起15を設け、図47(B)は、図12(A)の保持器に複数の小突起15を設けたものである。図48(A)は、図38(A)の保持器に複数の小突起15を設け、図48(B)は、図46(B)の保持器に複数の小突起15を設けたものである。
各連結部13におけるポケット開放側の側面には、軸方向に所定小距離突出する円柱状の小突起15がそれぞれ設けられていても良い。これらの小突起15は、玉軸受1に保持器5を組み込む際に、玉4を所定の位置に案内するためのものである。各小突起15があるため、円周方向適当間隔おきに配置された複数の玉4の一部が、連結部13のポケット開放側側面の段差部13aに嵌り込むことを防止し得る。したがって、軸受の組立の工数低減を図れる。その他図11、図14〜図17、図23、図28、図34、図35、図39、図40、図42〜図44の保持器の各連結部13の側面に、円柱状の小突起15を設けても良い。
この発明のさらに他の実施形態について図49と共に説明する。
図49(a)に示す実施形態に係るシール構造は、基本的に、図1ないし図3の実施形態のシール構造と同様である。相違するのは、分岐部8bの径方向の位置が、内輪外径面2Dの延長線L1を含む位置にあり、副リップ8dのほとんどが延長線L1より上位(シール部材6の外径側)に存在することである。副リップ8dの最大径部分の半径R3は内輪外径面2Dの半径R2より大である。このため、グリース溜まりGdの容積が増えるが、内輪外径面2D側から副リップ8dの外径面の方向に移動するグリースに対して副リップ8dの先端面が障害になる問題が生じる。これを避ける対策として、副リップ8dの先端部に、内輪外径面2Dを基準にした傾斜角度θが90°以上となるようなテーパ面8daを形成している。
副リップ8dの内径面は内輪外径面2Dに対して一定の角度α(例えば 5 °以上 10 °以下)をもって傾斜しており、その傾斜面8dbとシール溝10の内側溝壁10aとの間でラビリンスシールLsが形成される。
主リップ8cの先端部内面にもテーパ面8ccが形成され、そのテーパ面8ccとシール溝10の溝底10bとのなす角度βが90°以上に形成される。このように広い角度βがあると、比較例として示した図49(b)に示すような90°未満のような狭い角度β´の場合に比べ、グリースが主リップ8cの接触シールS1を通過し難くなる。上記以外の構成および作用、効果は、図1ないし図3の実施形態のシール構造と同様である。
以上述べた図49(a)に示す形態のシール構造において、前述の図1ないし図3に示す形態の場合と同様の実験を行った。図4において、このトルク値の実測値を「B」で示す。また、図5において、グリース漏れ量の実測値を「B」で示す。この結果から分かるように、図1ないし図3に示す形態の場合とほぼ同程度の低トルク化と高シール化が図れた。さらに、この実施形態に係る転がり軸受において、前述のいずれか一つの保持器を適用することにより、玉軸受において、よりグリース漏洩が生じない軸受にできる。
この発明の参考提案例を図50と共に説明する。図50(a),図50(b)に示す参考提案例は、それぞれ図1ないし図3、図49のシール構造に想到する前段階において発案されたものである。
図50(a)に示すシール構造の場合は、シール部材6のリップは主リップ8cのみであり、主リップ8cは一定の幅をもち、その先端部に幅方向の端面8cdが形成されている。端面8cdの外側コーナ部をシール溝10の外側溝壁10cに接触させて接触シールS1を形成している。前述の実施形態と比べ副リップが設けられていない点が特異なところである。
主リップ8cの締め代を前述の実施形態の場合と同程度に設定した場合のトルク値Cは、図4に示すように、発明品のトルク値Aと同程度であることが確認できた。シール性については、図5に示すように、「C」は現行品Xの約1/2となり、シール性においてA、Bの場合より劣ることが分かった。これは実施形態における副リップ8dやグリース溜まりGdを設けていないことによるものと考えられるが、逆に言えば実施形態における副リップ8dやグリース溜まりGdは漏れ性能の向上に貢献していることを意味する。
図50(b)に示した参考提案例は、芯金7の内径部分を内側にくの字形に屈曲させるとともに、その屈曲に沿って合成ゴム8もシール溝10の内側溝壁10aに接近するように屈曲して設け、この内側溝壁10aに対向した面に2段の副リップ8d1、8d2を設け、さらにシール溝10の溝底10bに沿って3段目の副リップ8d3を設けている。これらの副リップ8d1〜8d3により、ラビリンスシールLsa、Lsb、Lscが形成される。前記副リップ8d1〜8d3と反対側の面、即ち外側面にくびれ部8aが形成され、そのくびれ部8aの先端に主リップ8cの外側面が連続し、3段目の副リップ8d3の先端に主リップ8cの内側面が連続する。その内側面と外側面が交わる先端部がシール溝10の外側溝壁10cに接触し、接触シールS1が形成される。
この参考提案例は、前述の実施形態と比べ、副リップ8d1〜8d3が3箇所(ラビリンスシールLsa〜Lscが3箇所)に存在すること、副リップ8d1〜8d3相互間と副リップ8d3と主リップ8c相互間にそれぞれ対向したシール溝10の溝壁との間で形成されるグリース溜まりの容積が小さいこと、副リップ8d1の軸方向への突き出し量が少なく、副リップ8d1の基部が内側に傾斜した合成ゴム8の内面に連続していること等で顕著な相違がある。
この参考提案例において、主リップ8cの締め代を前述の実施形態の場合と同程度に設定して測定したトルク値Dは、図4に示すように、発明品のトルク値Aと同程度であることが確認できた。シール性Dは、図5に示したように前記のCと大差がなく、シール性においてA、Bの場合より劣ることが分かった。これは、3段の副リップ8d1〜8d3の効果が見られず、グリース溜まりの容積が小さいこと、副リップ8d1の軸方向への突き出し量が少なく外径面が傾斜し、合成ゴム8の傾斜面8kに接近していること等が影響しているものと考えられる。
この発明の一実施形態に係るアンギュラ玉軸受の部分拡大断面図である。 同アンギュラ玉軸受の要部を拡大して表す断面図である。 シール構造の摺接部を表し、図3(a)は摺接部の小溝部を示す拡大断面図、図3(b)は摺接部の接触シールを示す拡大断面図である。 各実施形態のトルク値の実測結果を表す図表である。 各実施形態のシール漏れ量の実測結果を表す図表である。 (A)は同保持器の一例の部分拡大斜視図、(B)は同斜視図に仮想円筒を加えた状態を示す斜視図である。 この発明の実施形態を部分的に変更した変更形態にかかる軸受の保持器の斜視図である。 同保持器のポケットと内輪軌道面の間での軸方向位置の関係の説明図である。 (A)は図7に示す構造の保持器を組み込んだ玉軸受のグリース漏れ試験の結果の説明図、(B)は(A)の部分拡大図である。 (A)は一般的な冠形状の保持器を組み込んだ玉軸受のグリース漏れ試験の結果の説明図、(B)は(A)の部分拡大図である。 (A)は同保持器の他の一例の部分拡大斜視図、(B)は同斜視図に仮想多角柱を加えた状態を示す斜視図である。 (A)は同保持器のさらに他の一例の部分拡大斜視図、(B)は同斜視図に仮想リングを加えた状態を示す斜視図である。 同保持器のポケットと仮想リングの関係を断面で示す説明図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかる保持器の斜視図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかる保持器の部分拡大斜視図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかる保持器の部分拡大斜視図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかる保持器の部分拡大斜視図である。 (A)はこの発明のさらに他の実施形態にかかる保持器の部分拡大斜視図、(B)は同斜視図に仮想円筒を加えた状態を示す斜視図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかるアンギュラ玉軸受の部分拡大断面図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかるアンギュラ玉軸受の部分拡大断面図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかる複列アンギュラ玉軸受の部分拡大断面図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかる転がり軸受の部分拡大断面図である。 同軸受の保持器の斜視図である。 同保持器の部分拡大斜視図である。 同保持器の製造方法の説明図である。 同保持器の他の製造方法の説明図である。 同保持器の爪先端のポケット中心からの角度の説明図である。 同保持器の爪の幅の説明図である。 同保持器によるグリース挙動の説明図である。 同保持器の保持器外径側の爪部先端のポケット中心からの角度とグリース漏洩率との関係の試験結果を示すグラフである。 同保持器の保持器外径側の爪部の幅とグリース漏洩率との関係の試験結果を示すグラフである。 同保持器を組み込んだ玉軸受のグリース漏れ試験の結果の説明図である。 一般的な冠形状の保持器を組み込んだ玉軸受のグリース漏れ試験の結果の説明図である。 この発明の玉軸受における保持器の爪の他の形状例を示す側面図である。 保持器の爪のさらに他の形状例を示す側面図である。 図35の保持器の製造方法の説明図である。 この発明の他の実施形態の保持器の斜視図である。 (A)は同保持器の一例の部分拡大斜視図、(B)は同斜視図に仮想円筒を加えた状態を示す斜視図である。 (A)は同保持器の他の一例の部分拡大斜視図、(B)は同斜視図に仮想多角柱を加えた状態を示す斜視図である。 (A)は同保持器のさらに他の一例の部分拡大斜視図、(B)は同斜視図に仮想リングを加えた状態を示す斜視図である。 同保持器のポケットと仮想リングの関係を断面で示す説明図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかる保持器の斜視図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかる保持器の部分拡大斜視図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかる保持器の部分拡大斜視図である。 保持器のポケットと内輪軌道面の間での軸方向位置の関係の説明図である。 (A)はこの発明のさらに他の実施形態にかかる保持器の部分拡大斜視図、(B)は同斜視図に仮想円筒を加えた状態を示す斜視図である。 (A)この発明のさらに他の実施形態にかかる保持器の部分拡大斜視図、(B)この発明のさらに他の実施形態にかかる保持器の部分拡大斜視図である。 (A)この発明のさらに他の実施形態にかかる保持器の部分拡大斜視図、(B)この発明のさらに他の実施形態にかかる保持器の部分拡大斜視図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかるシール部材等を表す図であり、図49(a)は要部拡大断面図、図49(b)は比較例の一部拡大断面図である。 この発明の参考提案例を表す図であり、図50(a)は、参考提案例1の一部拡大断面図、図50(b)は、参考提案例2の一部拡大断面図である。 従来技術にかかる保持器の概略斜視図である。
符号の説明
1…玉軸受
2…内輪
2D…内輪外径面
3…外輪
4…玉
5,5C…保持器
6…シール部材
8b…分岐部
8c…主リップ
8d…副リップ
10…シール溝
11…ポケット
12…環状体
14…爪
16…凹み部
Ls…ラビリンスシール
S1…接触シール

Claims (14)

  1. 内外輪間に介在する複数の玉が保持器に保持され、これら内輪および外輪間の軸受空間を塞ぐシール部材を外輪に設けたアンギュラ玉軸受において、
    前記内輪の外径面にシール溝を周方向に形成し、前記シール溝に対向した外輪内径面に前記シール部材の外周縁を固定し、そのシール部材の内周部に主リップと副リップとを設け、前記主リップを前記シール溝に接触させて接触シールを形成するとともに、副リップを前記シール溝又はその近辺に接近させてラビリンスシールを形成してなり、
    前記シール部材の内輪外径面の高さ近辺の位置に分岐部を設け、その分岐部から内径方向に突き出した部分により前記の主リップを形成し、その主リップの先端部を前記シール溝の外側溝壁に接触させて前記の接触シールを形成し、前記分岐部から軸方向内向きに突き出した部分により前記の副リップを形成し、その副リップの先端部とシール溝の内側溝壁との間で前記のラビリンスシールを形成し、
    前記保持器は、環状体の一側面部に一部が開放されて内部に玉を保持するポケットを、前記環状体の円周方向複数箇所に有する冠形状であり、
    前記玉に付着するグリースを保持器内径面で掻き取ることを抑制するグリース掻き取り抑制手段を、前記保持器に設けたことを特徴とするアンギュラ玉軸受。
  2. 内周に複列の軌道面を有する外輪と、前記軌道面に対向する複列の軌道面を外周に有する内輪と、これら内輪と外輪の軌道面間に介在した複列の玉と、各列の玉を保持する2個の保持器と、前記外輪に設けられこれら内輪および外輪間の軸受空間を塞ぐ両側のシール部材とを備えた複列アンギュラ玉軸受において、
    前記内輪の外径面にシール溝を周方向に形成し、前記シール溝に対向した外輪内径面に前記シール部材の外周縁を固定し、そのシール部材の内周部に主リップと副リップとを設け、前記主リップを前記シール溝に接触させて接触シールを形成するとともに、副リップを前記シール溝又はその近辺に接近させてラビリンスシールを形成してなり、
    前記シール部材の内輪外径面の高さ近辺の位置に分岐部を設け、その分岐部から内径方向に突き出した部分により前記の主リップを形成し、その主リップの先端部を前記シール溝の外側溝壁に接触させて前記の接触シールを形成し、前記分岐部から軸方向内向きに突き出した部分により前記の副リップを形成し、その副リップの先端部とシール溝の内側溝壁との間で前記のラビリンスシールを形成し、
    前記各保持器は、環状体の一側面部に一部が開放されて内部に玉を保持するポケットを、前記環状体の円周方向複数箇所に有する冠形状であり、且つ2個の保持器のポケット面が向かい合うように配置され、
    前記玉に付着するグリースを保持器内径面で掻き取ることを抑制するグリース掻き取り抑制手段を、前記各保持器に設けたことを特徴とする複列アンギュラ玉軸受。
  3. 請求項2において、前記グリース掻き取り抑制手段は、前記各ポケットの内面に、保持器内径側のポケット開口縁から保持器外径側へ延びる凹み部を設けたものである複列アンギュラ玉軸受。
  4. 請求項2または請求項3において、前記シール部材は、前記分岐部を介して逆L形に主リップと副リップおよびこれらに対向した前記シール溝の内側側壁により囲まれ、前記ラビリンスシールにおいて軸受内部に連通するとともに、前記接触シールにおいて閉鎖されたグリース溜まりを形成した複列アンギュラ玉軸受。
  5. 請求項2ないし請求項4のいずれか1項において、前記シール部材は、前記副リップの最大径部分の半径を内輪外径面の半径より大とし、この副リップの先端部に、前記内輪外径面を基準にした傾斜角度が90度以上となるテーパ面を形成した複列アンギュラ玉軸受。
  6. 請求項2ないし請求項5のいずれか1項において、前記副リップの内径面を、前記内輪外径面に対して一定の角度をもって傾斜させ、この傾斜させた副リップの内径面と、シール溝の内側側壁との間でラビリンスシールを形成した複列アンギュラ玉軸受。
  7. 請求項2ないし請求項6のいずれか1項において、前記保持器の各ポケットの背面における保持器内径縁から保持器外径側へ延びる凹み部を設けた複列アンギュラ玉軸受。
  8. 内外輪間に介在する複数の玉が保持器に保持され、これら内輪および外輪間の軸受空間を塞ぐシール部材を外輪に設けた転がり軸受において、
    前記内輪の外径面にシール溝を周方向に形成し、前記シール溝に対向した外輪内径面に前記シール部材の外周縁を固定し、そのシール部材の内周部に主リップと副リップとを設け、前記主リップを前記シール溝に接触させて接触シールを形成するとともに、副リップを前記シール溝又はその近辺に接近させてラビリンスシールを形成してなり、
    前記シール部材の内輪外径面の高さ近辺の位置に分岐部を設け、その分岐部から内径方向に突き出した部分により前記の主リップを形成し、その主リップの先端部を前記シール溝の外側溝壁に接触させて前記の接触シールを形成し、前記分岐部から軸方向内向きに突き出した部分により前記の副リップを形成し、その副リップの先端部とシール溝の内側溝壁との間で前記のラビリンスシールを形成し、
    前記保持器は、環状体の一側面部に一部が開放されて内部に玉を保持するポケットを、前記環状体の円周方向複数箇所に有する冠形状であり、
    前記玉に付着するグリースを保持器内径面で掻き取ることを抑制するグリース掻き取り抑制手段を、前記保持器に設けたことを特徴とする転がり軸受。
  9. 請求項8において、前記グリース掻き取り抑制手段は、前記各ポケットの内面に、保持器内径側のポケット開口縁から保持器外径側へ延びる凹み部を設けたものであり、
    前記各ポケットの開放側に、円周方向に対面する一対の爪が軸方向に突出して設けられ、前記各ポケットの一対の爪の保持器内径側の先端間の間隔よりも、保持器外径側の先端間の間隔を狭くした転がり軸受。
  10. 請求項8または請求項9において、前記保持器における各ポケットの開放側に、円周方向に対面する一対の爪が軸方向に突出して設けられ、
    前記各ポケットの一対の爪の保持器内径側の先端間を開放し、保持器外径側の先端間を連結した転がり軸受。
  11. 請求項9において、前記各ポケットの一対の爪の先端間の間隔を、保持器内径側から保持器外径側に向けて段階的に狭くした転がり軸受。
  12. 請求項9において、前記各ポケットの一対の爪の先端間の間隔を、保持器内径側から保持器外径側に向けて無段階に狭くした転がり軸受。
  13. 請求項10または請求項11において、ポケットにおける保持器円周方向の中心を通る保持器半径方向の直線に投影した前記爪の全幅をIt としたとき、前記直線に投影した前記爪における保持外径側の爪部の幅Ie が2/3It 以下となるように、保持器外径側の前記爪部の幅を設定した転がり軸受。
  14. 請求項9、請求項11ないし請求項13のいずれか1項において、前記爪の保持器円周方向に沿う断面でのポケット中心相当位置から保持器内径側の爪先端および保持器外径側の爪先端の保持器円周方向に対する角度を、保持器外径側の爪先端の角度が保持器内径側の爪先端の角度の1.5倍以上となるように設定した転がり軸受。
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