JP2008240826A - 玉軸受および保持器 - Google Patents

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Abstract

【課題】 内輪側から封入されたグリースがグリース貯留溝に十分に行き渡り易くなるグリース潤滑の玉軸受およびこれに用いられる保持器を提供する。
【解決手段】 内輪2と外輪3の対向する軌道溝2a,3aの間に、保持器5に保持された玉4が介在する。前記保持器5は外輪3の内径面に案内されるものであり、前記玉4を保持するポケット5a,5bが保持器幅方向の中間部分に円周方向に並んで複数設けられる。このグリース潤滑の玉軸受1において、前記外輪3の内径面における軌道溝3aの両側に、前記軌道溝3aにつながるグリース貯留溝6,6を設ける。前記保持器5の前記円周方向に並ぶ複数のポケット5a,5bのうち、1個または複数個おきに並ぶ各ポケット5bを、他のポケット5aよりも横幅が広い形状の幅広ポケットとする。
【選択図】 図1

Description

この発明は、例えば、高速回転する工作機械の主軸や繊維機械のワインダー等に使用される玉軸受、特にグリース潤滑に適したアンギュラ玉軸受、およびこれに用いられる保持器に関する。
特許文献1には、外輪の軌道溝の両側に、この軌道溝につながるグリース貯留溝を設けることにより、グリース潤滑の潤滑性が向上し、種々の姿勢や配置においても、グリース潤滑における転走部への安定した潤滑油供給が行え、耐久性が向上する工作機械の主軸用アンギュラ玉軸受が提案されている。また、このアンギュラ玉軸受においては、高速回転時の保持器の挙動を安定化し、保持器の挙動による温度上昇を低減するため、保持器を案内する外輪の案内面を軌道溝の両側に設けている。
このアンギュラ玉軸受は、工作機械の主軸の支持のために用いた場合、主軸支持軸受の安定したグリース潤滑が行え、耐久性に優れたものとなり、また、主軸が立型である場合も、軌道溝の両側のいずれかのグリース貯留溝から転走部へ潤滑油供給が行えて安定した潤滑が行える、等から工作機械の加工性の向上に大きく寄与する。
特開2002−122149号公報
しかし、特許文献1のアンギュラ玉軸受は、保持器が外輪の内径面に案内されるタイプのものであるため、保持器と外輪との間の隙間が狭くて、この隙間から外輪内径面のグリース貯留溝にグリースを封入することができない。そのため、グリースの封入は、内輪と保持器の間に行うことになる。
上記のように外輪にグリース貯留溝を設けても、このグリース貯留溝内にグリースが十分に行き渡らない場合には、潤滑の機能を発揮できず、軸受の短寿命化につながることにもなる。
そのため、十分に時間をかけてグリースの封入作業を行い、あるいは、グリース封入後に、慣らし運転として軸受を回転させることにより、グリース貯留溝内にグリースを行き渡らせるような対策がとられている。しかし、これらはいずれも作業時間を要するものであり、軸受組立作業の効率性を低下させる要因ともなり、その改善が望まれる。
この発明の目的は、内輪側から封入されたグリースがグリース貯留溝に十分に行き渡り易くなるグリース潤滑の玉軸受およびこれに用いられる保持器を提供することである。
この発明の玉軸受は、内輪と外輪の対向する軌道溝の間に、保持器に保持された玉が介在し、前記保持器が外輪の内径面に案内されるものであり、前記玉を保持するポケットが保持器幅方向の中間部分に円周方向に並んで複数設けられたグリース潤滑の玉軸受において、前記外輪の内径面における軌道溝の両側に、前記軌道溝につながるグリース貯留溝を設け、前記保持器の前記円周方向に並ぶ複数のポケットのうち、1個または複数個おきに並ぶ各ポケットを、他のポケットよりも横幅が広い形状の幅広ポケットとしたことを特徴とするものである。
この構成によれば、内輪の高速回転によって遠心力でグリースが外輪側へ移動し、外輪の軌道溝を介してグリース貯留溝にグリースが貯留される。このグリース貯留溝は軌道溝につながっているため、グリース貯留溝に貯留されたグリースから、基油が再び軌道溝に供給され、潤滑油として繰り返し使用される。このとき、グリース貯留溝は、軌道溝の両側に形成されているため、片側のみにグリース貯留溝を形成したものに比べて潤滑特性が向上する。特に、両側にグリース貯留溝があるため、立軸で使用する場合など、どのような軸受の組合せや姿勢においても、軌道溝に対して重力方向の上側にいずれかのグリース貯留溝が位置することになり、転走部への安定した潤滑油供給が可能となり、耐久性が向上する。
特に、この発明では、保持器の円周方向に並ぶ複数のポケットのうちの一部のポケットを、他のポケットよりも横幅が広い形状の幅広ポケットとしているため、玉の両側の保持器とのすきまが広がり、内輪側から封入されたグリースがこの幅広ポケットによるすきまからグリース貯留溝に行き渡り易くなる。そのため、上記潤滑特性の発揮がより効果的になされ、軸受の長寿命化に寄与する。
この場合に、ポケットは横幅のみを広げるため、玉の円周方向の間隔の保持機能が維持される。また、幅広ポケットは1個または複数個おきに設けているから、幅広ポケットを設けながら、保持器の軸方向位置の安定性が維持される。
この発明において、前記幅広ポケットの保持器径方向に見た形状を、長軸が保持器幅方向となる楕円としても良い。楕円形状であると、横幅を広げながら、ポケット形状が滑らかに続く形状であるため、保持器に局部的に大きな応力が発生せず、保持器の強度低下が防止される。
前記幅広ポケットの保持器径方向に見た形状は、円形で幅方向両側に切欠状部を有する形状としても良い。この場合、幅広ポケットによっても玉を軸方向に保持する作用が得られる。
幅広ポケットの保持器径方向に見た形状は、長辺が保持器幅方向となる長方形状としても良い。長方形状であると、ポケットの内面と玉との間に大きな隙間が得られ、グリースをより流れ易くできる。
この発明は、各種の玉軸受に適用できるが、例えばアンギュラ玉軸受としても良い。
アンギュラ玉軸受は、工作機械の主軸のような高速回転する軸の軸受の支持等に用いられ、また工作機械ではグリース攪拌熱による主軸の熱膨張で加工精度が低下する課題があるが、そのため、この発明におけるポケット形状および外輪にグリース貯留溝を設けたことによる上記各効果が、より効果的に発揮される。
この発明の保持器は、グリース潤滑の玉軸受における内輪と外輪との間に配置され、玉を保持するポケットが保持器幅方向の中間部分に円周方向に並んで複数設けられ、外輪の内径面に案内される保持器において、前記円周方向に並ぶ複数のポケットのうち、1個または複数個おきに並ぶ各ポケットを、他のポケットよりも横幅が広い形状の幅広ポケットとしたことを特徴とする。
この構成の保持器によると、外輪の内径面における軌道溝の両側に、軌道溝につながるグリース貯留溝を設けた玉軸受に用いることにより、幅広ポケットによるすきまを通じてグリースをリース貯留溝に十分に行き渡らせることができ、グリース潤滑の玉軸受における潤滑特性が向上する。
この発明の玉軸受は、内輪と外輪の対向する軌道溝の間に、保持器に保持された玉が介在し、前記保持器が外輪の内径面に案内されるものであり、前記玉を保持するポケットが保持器幅方向の中間部分に円周方向に並んで複数設けられたグリース潤滑の玉軸受において、前記外輪の内径面における軌道溝の両側に、前記軌道溝につながるグリース貯留溝を設け、前記保持器の前記円周方向に並ぶ複数のポケットのうち、1個または複数個おきに並ぶ各ポケットを、他のポケットよりも横幅が広い形状の幅広ポケットとしたものであるため、内輪側から封入されたグリースがグリース貯留溝に行き渡り易くなり、グリース貯留溝の形成による潤滑寿命の向上効果を十分に発揮させて長寿命化が実現できる。
この発明の保持器は、グリース潤滑の玉軸受における内輪と外輪との間に配置され、玉を保持するポケットが保持器幅方向の中間部分に円周方向に並んで複数設けられ、外輪の内径面に案内される保持器において、前記円周方向に並ぶ複数のポケットのうち、1個または複数個おきに並ぶ各ポケットを、他のポケットよりも横幅が広い形状の幅広ポケットとしたものであるため、この保持器を、外輪の内径面における軌道溝の両側に、軌道溝につながるグリース貯留溝を設けた玉軸受に用いることにより、内輪側から封入されたグリースがグリース貯留溝に行き渡り易くなり、グリース貯留溝の形成による潤滑寿命の向上効果を十分に発揮させて長寿命化が実現できる。
この発明の玉軸受および保持器の実施形態について図1ないし図4と共に説明する。図1に示す玉軸受1はアンギュラア玉軸受であって、内輪2と外輪3の対向する軌道溝2a,3aの間に複数の玉4を介在させ、グリース潤滑で使用されるものである。玉4は、保持器5によって、周方向に所定の間隔で転動自在に保持されている。上記軌道溝2a,3aは、内輪2の外径面および外輪3の内径面に、玉4との接触角が所定の角度となるよう形成されている。
外輪3の内径面における軌道溝3aの両側に、この軌道溝3aにつながるグリース貯留溝6,6が形成されている。これらグリース貯留溝6,6は、軌道溝3aと玉4との接触面が確保されるように、つまり接触楕円が軌道溝3a内に確保されるように設けられる。グリース貯留溝6,6は、外輪3の内径面の全周に連続し、全周にわたって軌道溝3aとつながるように形成される。
保持器5は、外輪3の内径面に案内されるものとされ、保持器5を案内する外輪3の内径面における案内面7となる部分は、軌道溝3aの両側に設けられている。これら案内面7,7は、両側のグリース貯留溝6に沿う部分に形成されている。なお、案内面7は、必ずしも両側に設けなくても、例えば図3に示すように軌道溝3aの片方だけに設けても良い。これにより、片方のグリース貯留溝6の幅を広げることができる。
内輪2の外径面には、軌道溝2aの片側に、つまり接触角の生じる方向と反対側部分に、外径が外側へ次第に小径となるカウンタボア8が設けられている。外輪3の内径面は円筒状とされ、カウンタボアは形成されていない。軸受組立時において、このアンギュラ玉軸受1は、玉4が組付けられた外輪3を加熱することによって膨張させ、カウンタボア8側から内輪2を挿入することにより組付けることができる。そのため、特に外輪3にカウンタボアを設けなくても組立上の問題は生じない。
保持器5は、複数の玉4を保持するポケットが保持器幅方向中間部分に円周方向に並んで複数設けられたもので、図2(A),(B),(C)に各種の例をそれぞれ示すように、玉4を周方向隙間Sを介在させて保持する通常の円形ポケット5aと、この円周方向に並ぶ円形ポケット5aの1個おきに、この円形ポケット5aよりも横幅が広い形状の複数の幅広ポケット5b(5c,5d)とを備える。図1は図2における幅広ポケット5b(5c,5d)部分での断面を示しており、図1では幅広ポケット5b(5c,5d)との相対関係を示すために円形ポケット5aを2点鎖線で表している。
図2(A)の幅広ポケット5bは、保持器5の径方向に見た形状を、長軸が保持器幅方向となる楕円としたものである。同図(B)の幅広ポケット5cは、保持器5の径方向に見た形状を、円形で幅方向両側に切欠状部(ぬすみ部)5caを有する形状としたものである。同図(C)の幅広ポケット5dは、保持器5の径方向に見た形状を、長辺が保持器幅方向となる長方形状としたものである。
これら幅広ポケット5b(5c,5d)の形成間隔は、円形ポケット5aの1個おきに限らず、2個おき、あるいは3個以上おきであっても良いが、全てのポケットをこの幅広ポケット5b(5c,5d)とすると、保持器5の軸方向(幅方向)の安定性が損なわれる。また、形成間隔を大きくし過ぎると、後記するグリースgの十分な封入効果が得られず、このような観点から、1個おきまたは2個おきが望ましい。
上記のような保持器5を組付けたアンギュラ玉軸受1に対するグリースの封入は、図1に示すように、内輪2の外径面におけるカウンタボア8と保持器5との間よりなされる。封入されたグリースgは、保持器5と玉4との隙間を経て外輪3の内径面側に流動するが、幅広ポケット5b(5c,5d)が存在する部分では、玉4との間に隙間が大きく確保されているから、図示の矢印g1,g2のように外輪3の内径面側へ流動し易く、その結果、グリース貯留溝6,6内にグリースgが速やかに、かつ十分に行き渡る。したがって、従来のように時間をかけたグリースの封入作業が不要とされ、アンギュラ玉軸受1の組立作業の効率化が図られる。
上記のようにグリースgの封入がなされたアンギュラ玉軸受1によれば、外輪3の内径面に、外輪3の軌道溝3aと玉4との接触面が確保されるように、軌道溝3aにつながるグリース貯留溝6,6が軌道溝3aの両側に形成されているので、潤滑性が向上する。しかも、幅広ポケット5b(5c,5d)の存在によりこのグリース貯留溝6にはグリースgが十分に行き渡るよう封入されているから、この潤滑性が十分に発揮される。このように、グリース貯留溝6,6が軌道溝3aの両側に形成されていると、立型の軸に一対のアンギュラ玉軸受1を背面向きとし、または正面向きとして使用した場合にも、上下のアンギュラ玉軸受1において、軌道溝3aに対して重力方向の上側にいずれかのグリース貯留溝6,6が位置することになり、転走部への安定した潤滑油供給が可能となり、アンギュラ玉軸受1の耐久性が向上する。また、外輪3の内径面における軌道溝3aの両側に保持器案内面7,7を有するため、保持器5の挙動が安定し、保持器5の挙動による温度上昇が抑えられる。
保持器5の幅広ポケット5bの形状は、上記のように各種の形状とできるが、図2(A)のように楕円形状とした場合は、横幅を広げながら、ポケット形状が滑らかに続く形状となるため、保持器5に局部的に大きな応力が発生せず、保持器の強度低下が防止される。同図(B)のように、幅広ポケット5bの形状を、円形で幅方向両側に切欠状部5caを有する形状とした場合は、幅広ポケット5bによっても玉4を軸方向に保持する作用が得られる。同図(C)のように、幅広ポケット5bを、長方形状とした場合は、ポケット内面と玉4との間に大きな隙間が得られ、グリースをより流れ易くできる。
図3は、上述のように、案内面7を外輪3の軌道溝3aの片方だけに設けたもので、これにより、片方のグリース貯留溝6の幅を広げることができ、グリースの貯留量を多くすることができる。その他の構成は上記と同様であるのでその説明を省略する。
また、図4は、アンギュラ玉軸受1の両端部にシール9,9を設けたものである。このシール9は非接触シールであり、外輪3の内径面に設けられたシール取付溝に外周部を嵌合させてある。このように、アンギュラ玉軸受1の両端部にシール9,9を設けた場合、グリースの軸受外部への飛散を抑えることができ、さらに耐久性を向上させることができる。なお、複数のアンギュラ玉軸受1を隣接した組合せで使用する場合、合わせ面側のシール9は省略しても、両側に設けた場合と同等の効果が得られる。この実施形態におけるその他の構成も上記と同様であるので、ここでもその説明を省略する。
なお、上記実施形態では、玉軸受がアンギュラ玉軸受である場合の例について述べたが、深溝玉軸受であっても良い。また、単列に限らず複列の玉軸受にも適用することができる。さらに、幅広ポケットの形状としては、図2(A),(B),(C)に例示したもの以外に、例えば長円形状や、コーナーがカットされた長方形状、その他の形状であっても良い。
この発明の玉軸受の一実施形態を示す断面図である。 この発明の保持器をその径方向から見た要部の展開図であり、(A),(B),(C)は、その種々の態様を示す。 この発明の玉軸受の別の実施形態を示す断面図である。 この発明の玉軸受のさらに別の実施形態を示す断面図である。
符号の説明
1…アンギュラ玉軸受(玉軸受)
2…内輪
2a…軌道溝
3…外輪
3a…軌道溝
4…玉
5…保持器
5a…ポケット
5b,5c,5d…幅広ポケット
5ca…切欠状部
6…グリース貯留溝
7…案内面
g…グリース

Claims (5)

  1. 内輪と外輪の対向する軌道溝の間に、保持器に保持された玉が介在し、前記保持器が外輪の内径面に案内されるものであり、前記玉を保持するポケットが保持器幅方向の中間部分に円周方向に並んで複数設けられたグリース潤滑の玉軸受において、
    前記外輪の内径面における軌道溝の両側に、前記軌道溝につながるグリース貯留溝を設け、前記保持器の前記円周方向に並ぶ複数のポケットのうち、1個または複数個おきに並ぶ各ポケットを、他のポケットよりも横幅が広い形状の幅広ポケットとしたことを特徴とする玉軸受。
  2. 請求項1において、前記幅広ポケットの保持器径方向に見た形状を、長軸が保持器幅方向となる楕円とした玉軸受。
  3. 請求項1において、前記幅広ポケットの保持器径方向に見た形状を、円形で幅方向両側に切欠状部を有する形状とした玉軸受。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、アンギュラ玉軸受である玉軸受。
  5. グリース潤滑の玉軸受における内輪と外輪との間に配置され、玉を保持するポケットが保持器幅方向の中間部分に円周方向に並んで複数設けられ、外輪の内径面に案内される保持器において、
    前記円周方向に並ぶ複数のポケットのうち、1個または複数個おきに並ぶ各ポケットを、他のポケットよりも横幅が広い形状の幅広ポケットとしたことを特徴とする保持器。
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