以下に、添付図面を参照して本発明の第1実施の形態を詳細に説明する。尚、図1は本実施の形態に係る自動原稿給送装置の普通紙原稿モードにおける分離給送部周辺の縦断面図であり、図2は本実施の形態に係る自動原稿給送装置の重送し易い原稿モードにおける分離給送部周辺の縦断面図であり、図3は本実施の形態に係る自動原稿給送装置の滑り易い原稿モードにおける分離給送部周辺の縦断面図であり、図4(a)は本実施の形態に係る自動原稿給送装置の分離給送部の回動機構周辺の縦断面図であり、図4(b)は図4(a)のA−A断面図であり、図5は本実施の形態に係る自動原稿給送装置の分離給送部周辺の縦断面図であり、給紙カバーを開くときの状態を示した図である。図6は本実施の形態に係る自動原稿給送装置の制御の構成を示すブロック図であり、図7は本実施の形態に係る自動原稿給送装置の概略的構成を示す縦断面図であり、図8は本実施の形態に係る画像形成装置の概略的構成を示す斜視図である。
本実施の形態に係る画像形成装置1は、複写機であり、図8に示すように、原稿を画像読取位置20(図7参照)に給送する自動原稿給送装置3と、画像読取位置20において原稿の画像を読取る画像読取部4と、画像読取部4により読取られた原稿の画像を記録媒体(用紙)に形成する画像形成部5と、画像形成部5に供給する記録媒体を収容する給紙カセット7と、画像形成部5により画像形成された記録媒体が排出される排紙部11とを備えている。尚、画像形成部5には、感光体ドラム等を有し用紙にトナー画像を転写する転写部と、用紙に転写されたトナー画像を定着する定着部とが設けられている。画像形成装置1には、後述する制御部39に給紙信号等の操作信号を送信する操作パネル(操作部)36が設けられている。
自動原稿給送装置3は、画像形成装置1の上部に搭載されており、ヒンジにより画像形成装置本体に対して開閉可能に設けられている。
自動原稿給送装置3には、図7に示すように、原稿T(一枚の用紙又は複数枚の用紙が束になったもの)が差し込んでセットされる原稿トレイ(原稿セット部)13が設けられている。原稿トレイ13の原稿搬送方向下流側には、原稿トレイ13にセットされた原稿Tを送り出す呼び出しローラ15と、呼び出しローラ15により送り出された原稿Tから最上位原稿のみを分離して給送する分離給送部17とが設けられている。分離給送部17の下流側には、分離給送部17により給送された原稿を画像読取位置20に案内する第1搬送路Aと、画像読取位置20を通過した原稿Tを下流側に案内する第2搬送路Bとが設けられている。第2搬送路Bの下流側には、第2搬送路Bによって案内された原稿の搬送先を切り換える切換爪21と、切換爪21によって案内された原稿をスタックする排出部23と、切換爪21によって案内された原稿をスイッチバックする反転ローラ対24а、24bとが設けられている。切換爪21の先端付近から第1搬送路Aまでには、スイッチバックした原稿を第1搬送路Aに合流させる第3搬送路Cが設けられている。尚、第1搬送路Aの上流側にはプルアウトローラ対25が設けられており、第2搬送路Bの下流側には排紙ローラ31が設けられている。画像読取位置20の上流側には、分離給送部17から搬送されてくる原稿を画像読取位置20に向けて搬送する読取り入口ローラ対27が設けられている。画像読取位置20の下流側には、画像読取位置20を通過した原稿を下流側に搬送する読取り出口ローラ対29が設けられている。
分離給送部17は、原稿トレイ13から送り出された原稿Tから最上位の原稿を給送する給紙ベルト38と、給紙ベルト38に当接して設けられ下位の原稿を原稿トレイ13側に戻すリバースローラ40とを有する。給紙ベルト38はリバースローラ40の上側に位置している。
給紙ベルト38は、図1に示すように、無端の帯状部材であり、駆動ローラ(一方のローラ)65と従動ローラ67(他方のローラ)とに巻き掛けられており、矢印J方向に駆動されるようになっている。
駆動ローラ65及び従動ローラ67は長手方向を原稿幅方向に沿って設けられており、これらは原稿搬送方向に所定間隔を開けて配置されている。そして、駆動ローラ65は従動ローラ67に対して原稿搬送方向上流側に位置している。
駆動ローラ65の駆動軸69は、自動原稿給送装置3本体に対し開閉可能な給紙カバー75に、回転自在に保持されており、モータにより図1において時計回りに回転駆動されるようになっている。
従動ローラ67は、コイルスプリングにより駆動ローラ65から遠ざかる向き(原稿搬送方向下流側)に付勢されており、給紙ベルト38に所定の張力がかかるようになっている。
リバースローラ40は、下側搬送ガイド73(図7参照)に回転自在に支持されており、トルクリミッタを介してモータにより給紙ベルト38の駆動方向Jと反対方向(図1において時計回り)に回転駆動されるようになっている。尚、図5に示すように、給紙カバー75を開くと、給紙ベルト38とリバースローラ40とが離れるようになっており、ジャム処理等が可能となっている。
分離給送部17においては、給紙ベルト38が給紙方向(矢印J方向)に循環移動して、リバースローラ40が給紙方向と反対方向(図1において時計回り)に回転することにより、分離ニップ(給紙ベルト38とリバースローラ40とのニップ)に送られた原稿Tから最上位原稿のみを分離して給送するようになっている。尚、リバースローラ40に掛かるトルクが所定値を越えると、トルクリミッタにより、リバースローラ40への駆動が伝達されなくなり、リバースローラ40は原稿に連れ回りする(図1において反時計回りに回転する)ようになっている。
駆動ローラ65の駆動軸(一方のローラの軸)69及び従動ローラ67の従動軸71は、図1に示すように、ブラケット(保持部材)51に回転自在に保持されている。ブラケット51は、原稿搬送方向上流側の端部を駆動ローラ65の駆動軸69に支持されており、この駆動軸69を支点に回動可能となっている。ブラケット51の原稿搬送方向下流側の端部上面には、回転部材53の外周面部53аが当接している。
この状態において、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角はαとなっている。この巻き付け角αは、普通紙の原稿を分離するのに最適な摩擦力となる巻き付け角であり、普通紙の原稿の滑り及び重送の何れも生じ難くなっている。
また、ブラケット51は、原稿搬送方向上流側程上がるように、傾斜しており、原稿が分離ニップ(給紙ベルト38とリバースローラ40とのニップ)に進入する角度が適切な角度(原稿のジャムが発生し難い角度)になるようにしている。
回転部材53は、給紙カバー75に回転自在に支持された駆動軸55の一端に固定されている。回転部材53の外周面は駆動軸55の軸線(回転中心)からの距離を異にする3つの(複数の)外周面部53а、53b及び53cに分かれている。外周面部53а、53b及び53cの縦断面は、各々、中心角120度で半径P、Q及びRの扇形の弧になっている。尚、P、Q及びRは、支点から各外周面部53а、53b及び53cまでの距離であり、R>P>Qとなっている。そして、外周面部53аと外周面部53bとの間、外周面部53bと外周面部53cとの間及び外周面部53cと外周面部53аとの間は、段差となっている。尚、回転部材53は、後述する回転部材駆動モータ85により回転駆動されるようになっている。
例えば、図1に示す状態から回転部材53が時計回り(矢印M方向)に回転すると、回転部材53におけるブラケット51と当接する部位が、外周面部53аから外周面部53cに変わり、これと同時にブラケット51が駆動ローラ65の駆動軸69を支点に回動して、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角がαからβに変わる(図2参照)。更に、図2に示す状態から回転部材53が時計回りに回転すると、回転部材53におけるブラケット51と当接する部位が、外周面部53cから外周面部53bに変わり、このときブラケット51が駆動ローラ65の駆動軸69を支点に回動して、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角がβからγに変わる(図3参照)。更に、図3に示す状態から回転部材53が時計回りに回転すると、回転部材53におけるブラケット51と当接する部位が、外周面部53bから外周面部53аに変わり、このときブラケット51が駆動ローラ65の駆動軸69を支点に回動して、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角がγからαに変わる(図1参照)。
このように、回転部材53の回転に伴い、ブラケット51に当接する外周面部が順次変わり、その度に、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角が変わるようになっている。
図4(b)に示すように、回転部材53の駆動軸55の他端にはスパーギヤ83が固定されており、このスパーギヤ83は、図4(а)に示すように、回転部材駆動モータ85の駆動軸に固定されたピニオンギヤ87に歯合している。尚、回転部材駆動モータ85は制御部39により制御されるようになっている。
即ち、給紙ベルト38は、回動部材53と、回動部材53の駆動軸55と、スパーギヤ83と、ピニオンギヤ87と、回転部材駆動モータ85とで構成される回動機構(変位機構)により、回動されるようになっている。
また、駆動軸55の他端には、検知板79が固定されており、位置センサ(光学センサ)81により回転部材53の回転位置を検知するようになっている。尚、検知板79は、円板の一部を切り欠いた形状になっており、その切り欠き部89а、89b及び89cは、回転部材の外周面部53а、53b及び53cに対応した位置に設けられている。即ち、位置センサ81に対向する位置に各切り欠き部が位置したときに、位置センサ81が検知状態から非検知状態になるので、回転部材53の回転位置を検知できる。
図1に示すように、ブラケット51の原稿搬送方向下流側の端部上面には、給紙カバー75に支持されたコイルスプリング77が取り付けられており、ブラケット51の原稿搬送方向下流側の端部が給紙カバー75側に常時付勢されている。これにより、ブラケット51の上面と回転部材53の外周面とが常時圧接するようになっている。
図7に示すように、原稿トレイ13と分離給送部17との間には、原稿トレイ13に原稿Tがセットされているか否かを検知する原稿セットセンサ41が設けられている。尚、原稿セットセンサ41は制御部39に接続されている。原稿セットセンサ41の近傍には、原稿トレイ13にセットされる原稿Tの先端を受ける原稿ストッパが設けられており、この原稿ストッパは、原稿T先端に当接する当接位置と、この当接位置から退避する退避位置とに回動可能となっている。尚、原稿ストッパは制御部39により制御されるようになっている。
呼び出しローラ15は、一端を給紙カバー75に支持された回動可能なアーム33の他端に、軸支されている。即ち、呼び出しローラ15は、原稿トレイ13にセットされた原稿Tの上方の待機位置(図1における実線の位置)Hとこの原稿Tの上面に当接する当接位置(図1における2点鎖線の位置)Kとの間を移動可能となっている。アーム33は、ソレノイドにより駆動されるようになっており且つコイルスプリングにより常時待機位置Hに向けて付勢されており、ソレノイドに通電すると待機位置Hから当接位置Kに向けて回動し、ソレノイド35への通電をカットすると当接位置Kから待機位置Hに向けて回動するようになっている。尚、ソレノイドは、制御部39により制御されるようになっている。
制御部39には、図6に示すように、位置センサ81からの検知信号に応じて回転部材53の回転位置を記憶する位置記憶部93と、操作部37からの信号及び位置記憶部93からの位置情報に基づいて回転部材53の回転方向を決定する回転方向決定部95とが設けられており、決定された回転方向が回転部材駆動モータ85に送信されるようになっている。
操作パネル36においては、普通紙の原稿モード(デフォルトモード)、オイル原稿(オイルが含浸された原稿)等の滑りやすい原稿モード及び複写式伝票等の重送し易い原稿モードの中から一つのモードを、タッチパネル(液晶パネル)42にて選択可能になっている。即ち、操作パネル36においては、原稿の種類(摩擦係数)に応じて、使用者が、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角を変更可能となっている。
本実施の形態に係る自動原稿給送装置3の動作を、図7を参照して説明する。先ず、オイル原稿等の滑り易い原稿を原稿トレイ13にセットする場合を説明する。操作パネル36におけるタッチパネル42の「オイル原稿等の滑り易い原稿」と表示された部分に手を触れる(図7参照)。尚、位置記憶部93は、デフォルト状態(初期状態)において、回転部材53の外周面部53аがブラケット51に当接していること(回転部材53が普通紙の原稿モード位置に位置していること)を記憶している。操作パネル36から制御部39へ、オイル原稿等の滑り易い原稿モード選択信号が送信されて、回転方向決定部95が、回転部材53の回転方向を、図1において時計回り(矢印M方向)に決定する。回転方向決定部95が決定した情報が回転部材駆動モータ85に送られて、回転部材53を時計回りに回転させる。このとき、位置センサ81は非検知状態(位置センサ81が検知板79の切り欠き部53аに対向して検知板79を検知していない状態)から検知状態(検知板を検知している状態)となる。回転部材53の外周面部53аがブラケット51と当接状態を保ったまま回転すると、外周面部53cの周方向一端がブラケット51に当接してブラケット51の従動ローラ71側を押し下げていく。これと同時に、ブラケット51が駆動軸69を支点にリバースローラ40に近づく向き(図1の矢印N方向)に回動する。これにより、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角がαからβ(>α)に変わる(図2参照)。そして、外周面部53аがブラケット51から離れて、外周面部53cがブラケット51と当接状態を保ったまま、回転部材53が回転する。回転部材53が所定量(約120度)回転したときに、位置センサ81が、検知板79の切り欠き部89cに対向して、検知状態から非検知状態になる。このとき、制御部39から回動部材駆動モータ85に停止信号が送られて、回転部材53の回転が停止される。そして、回転部材53はこの位置で位置を保持される。
次に、原稿トレイ13にオイル原稿等の滑り易い原稿Tをセットする。原稿Tのセットは、原稿Tの長手方向における一端(先端)を当接位置にある原稿ストッパに突き当てて行う。制御部39は、原稿Tがセットされて(原稿セットセンサ41からの検知信号を受けて)、操作パネル36からの給紙信号を受けると、原稿ストッパを退避位置に移動させて呼び出しローラ15の回転駆動を開始した後、ソレノイドに通電して呼び出しローラ15の当接動作を開始する。呼び出しローラ15が原稿Tに当接すると、原稿Tが分離給送部17に向けて送り出される。
分離ニップに原稿Tが進入すると、最上位の原稿は給紙ベルト38との摩擦により給紙ベルト38の移動方向に移動していく一方、下位の原稿は時計回りに(給紙ベルト38と反対方向に)回転するリバースローラ40との摩擦により原稿トレイ13側に戻されていく。このようにして、最上位原稿が下位原稿と分離される。
一般に、オイル原稿等は、摩擦係数が小さく、給紙ベルト38との間に作用する摩擦力が小さいので、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角が小さい(摩擦力が小さい)と、原稿が給紙ベルト38に対して滑り、原稿の不送りが発生してしまう。
本モード(オイル原稿等の滑り易い原稿モード)においては、オイル原稿等に対して、予め、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角を大きくしているので、最上位原稿と給紙ベルト38との間の摩擦力を高めて、原稿の不送りを防止することができる。
分離給送部17にて分離・給送された最上位の原稿は、プルアウトローラ対25及び読取り入口ローラ対27により、画像読取位置20に向けて搬送される。
第1画像面のみの読取り(片面モード)の場合は、原稿は画像読取位置20にて画像情報を読取られた後、第2搬送路Bを通過し、原稿排出位置にある切換爪21(図1において実線で示した位置にある切換爪21)に案内されて排出部23に排出される。
原稿の両面読取り(両面モード)の場合、原稿は第1画像面を読取るべく、第1搬送路Aを通って、画像読取位置19にて画像情報が読取られる。画像読取り後は、第2搬送路Bを通り、原稿反転位置にある切換爪21(図1において二点鎖線の位置にある切換爪21)により反転ローラ対24а、24bのニップに案内されて、正回転(時計方向に回転)する反転ローラ24аにより下流側に搬送される。
第2画像面の読取り後そのまま原稿を排出する場合は、原稿は反転ローラ24аの逆回転(反時計方向の回転)によってスイッチバックされ、原稿排出位置にある切換爪21に案内されて第3搬送路Cへと送られる。原稿は、排紙ローラ31の回転によって、第3搬送路Cを通り、第1搬送路Aを経て、第2画像面を画像読取位置19にて読取られ、第2搬送路Bを経て原稿排出位置にある切換爪21に案内されて排出部23へ排出される。
第2画像面の読取り後、再度反転してページ順序を合わせる場合は、原稿は、第2画像面が読取られた後、第2搬送路Bを経て、原稿反転位置にある切換爪21により反転ローラ対24а、24bのニップに案内される。そして、反転ローラ対24а、24bにより再びスイッチバックされて、第3搬送路Cから第1搬送路Aに向けて搬送される。第1搬送路A及び第2搬送路Bを通過した原稿は、原稿排出位置にある切換爪21に案内されて排出部23へ送られて、原稿のページ順序が合わせられる。
尚、画像形成装置1においては、給紙カセット7から画像形成部5に記録媒体が搬送される。画像形成部5において、画像読取部4により読取られた原稿の画像が記録媒体に形成される。画像形成された記録媒体は、排紙部11に排出される。
オイル原稿等の滑り易い原稿を原稿トレイ13にセットした場合に引き続き、普通紙の原稿を原稿トレイ13にセットする場合について、上記動作と異なる点を主に説明する。
先ず、操作パネル36におけるタッチパネル42の「普通紙の原稿」と表示された部分に手を触れる(図7参照)。尚、位置記憶部93は、回転部材53の外周面部53cがブラケット51に当接していること(回転部材53がオイル原稿等の滑り易い原稿モード位置に位置していること)を記憶している。操作パネル36から制御部39へ、普通紙の原稿モード選択信号が送信されて、回転方向決定部95が、回転部材53の回転方向を、図2において反時計回り方向(矢印V方向)に決定する。尚、位置記憶部93は、回転部材53の外周面部53cがブラケット51に当接していること(回転部材53がオイル原稿等の滑り易い原稿モード位置に位置していること)を記憶している。回転方向決定部95が決定した情報が回転部材駆動モータ85に送られて、回転部材53を反時計回り方向(図3の矢印V方向に)に回転させる。このとき、位置センサ81は非検知状態(位置センサ81が検知板79の切り欠き部53cに対向して検知板79を検知していない状態)から検知状態(検知板を検知している状態)となる。回転部材53の外周面部53cがブラケット51と当接状態を保ったまま回転すると、外周面部53cに代わり外周面部53аがブラケット51に当接するようになり、ブラケット51が駆動軸69を支点にリバースローラ40から遠ざかる向き(図2の矢印W方向)に回動する。これにより、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角がβからα(図1参照)に変わる。回転部材53が所定量(約120度)回転したときに、位置センサ81が、検知板79の切り欠き部89аに対向して、検知状態から非検知状態になる。このとき、制御部39から回動部材駆動モータ85に停止信号が送られて、回転部材53の回転が停止される。そして、回転部材53はこの位置で位置を保持される。回転部材53がこの位置、即ち、ブラケット51が回転部材53の外周面部53аに当接する位置に位置するときは、普通紙の原稿を分離するのに、最適な巻き付け角αとなるので、分離給送部17における普通紙の原稿の滑り及び重送の何れをも防止することができる。
普通紙の原稿を原稿トレイ13にセットした場合に引き続き、複写式伝票等の重送し易い原稿を原稿トレイ13にセットする場合を、上記動作と異なる点を主に説明する。先ず、操作パネル36におけるタッチパネル42の「複写式伝票等の重送し易い原稿」と表示された部分に手を触れる(図7参照)。尚、位置記憶部93は、回転部材53の外周面部53аがブラケット51に当接していること(回転部材53が普通の原稿モード位置に位置していること)を記憶している。操作パネル36から制御部39へ、複写式伝票等の重送し易い稿モード選択信号が送信されて、回転方向決定部95が、回転部材53の回転方向を、図1において反時計回り(矢印M方向と反対方向)に決定する。
尚、位置記憶部93は、回転部材53の外周面部53аがブラケット51に当接していること(回転部材53が普通の原稿モード位置に位置していること)を記憶している。回転方向決定部95が決定した情報が回転部材駆動モータ85に送られて、回転部材53を反時計回り方向(図1の矢印M方向と反対方向)に回転させる。このとき、位置センサ81は非検知状態(位置センサ81が検知板79の切り欠き部89аに対向して検知板79を検知していない状態)から検知状態(検知板を検知している状態)となる。回転部材53の外周面部53cがブラケット51と当接状態を保ったまま回転すると、外周面部53аに代わり外周面部53bがブラケット51に当接するようになり、ブラケット51が駆動軸69を支点にリバースローラ40から遠ざかる向き(図1の矢印N方向と反対方向)に回動する。これにより、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角がαからγ(<α)に変わる。回転部材53が所定量(約120度)回転したときに、位置センサ81が、検知板79の切り欠き部89bに対向して、検知状態から非検知状態になる。このとき、制御部39から回動部材駆動モータ85に停止信号が送られて、回転部材53の回転が停止される。そして、回転部材53はこの位置で位置を保持される。
一般に、複写式伝票等の原稿は、摩擦係数が大きく、下位原稿とリバースローラ40との間に作用する摩擦力よりも原稿同士の摩擦力が大きくなる。従って、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角が大きい(摩擦力が大きい)と最上位原稿が下位原稿と分離できずに原稿の重送が発生してしまう。
本モード(複写式伝票等の重送し易い原稿モード)においては、複写式伝票等の原稿に対して、予め、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角を小さくしているので、原稿同士の摩擦力を小さくして、重送を防止することができる。
本実施の形態の作用効果を説明する。本実施の形態によれば、操作パネル36から操作信号を送って回動機構を稼働させることにより、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角を変更することができる。即ち、カバー部材を開け装置内部を露出させて、手で部材を脱着することなく(手で部材の位置を変えることなく)、給紙ベルト38とリバースローラ40との摩擦力を容易に変更することができる。従って、原稿の種類(摩擦係数)に応じた適切な摩擦力を容易に発生させて、原稿の不送り及び重送を容易に防止することができる。
給紙ベルト38が原稿搬送方向上流側に位置する駆動ローラ65の軸を支点に回動するので、給紙ベルト38が回動しても、原稿が給紙ベルト38とリバースローラ40とのニップに進入する角度を適正な角度に維持することができ、原稿のジャムを防止できる。
回転部材53の外周面は支点からの距離を異にする複数の外周面部53а、53b及び53cに分かれているので、回転部材53を所定量回転させるだけで、給紙ベルト38を回動させて、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角を変更することができる。
画像形成装置1は、上述の効果と同様な効果を奏する自動原稿給送装置3を備えており、原稿の不送り又は重送を防止できるので、印刷効率の向上を図ることができる。
次に、他の実施の形態を説明するが、以下の説明において、上述した第1実施の形態と同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付することにより、その部分の詳細な説明を省略し、以下の説明では上述の第1実施の形態と異なる点を主に説明する。
第2実施の形態を、図9を参照して説明する。尚、図9は本実施の形態に係る自動原稿給送装置の制御の構成を示すブロック図である。
本実施の形態では、分離ニップの原稿搬送方向下流側直近に、図9に示すように、原稿の滑りを検知する滑りセンサ(滑り検知手段)97及び原稿の重送を検知する重送センサ(重送検知手段)99を設けている。また、分離ニップの位置に、分離ニップに原稿が到達したことを検知する分離ニップ到達センサ98が設けられている。
滑りセンサ97及び分離ニップ到達センサ98は、光学センサであり、発光部と受光部とを有し、発光部から発した光の反射光の光量の変化によって原稿を検知するようになっている。
重送センサ99は、超音波センサであり、超音波送信部と超音波受信部とを有し、超音波送信部から原稿に送信して原稿にて反射した反射波を超音波受信部で受信するようになっている。
制御部39には、タイマー101と、原稿が滑っているか否かを判断する滑り判断部103とが設けられており、分離ニップに原稿が到達してから(分離ニップ到達センサ98が原稿を検知してから)所定時間(例えば2秒)以上、滑りセンサ97により原稿が検知されない場合に、滑り判断部103が、原稿が滑っていると判断する。このとき、制御部39が、回転部材駆動モータ85を駆動し回転部材53を回転させて、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角をαからβ(大きくする)。その後、滑り判断部103が、原稿が滑っていないと判断した場合には、制御部39が、回転部材駆動モータ85を駆動し回転部材53を逆回転させて、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角をβからαにする。
また、制御部39には、原稿が一枚の場合における超音波の反射波の波形データが予め入力されており、この波形データと重送センサ99から送信されてくる超音波の反射波の波形とを比較する波形比較部105が設けられている。更に、制御部39には、波形比較部105の比較結果に従って重送か否かを判断する重送判断部107が設けられている。そして、重送判断部107が、重送であると判断した場合には、制御部39が、回転部材駆動モータ85を駆動し回転部材53を回転して、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角をαからγにする(小さくする)。その後、重送判断部107が、重送でないと判断した場合には、制御部39が、回転部材駆動モータ85を駆動し回転部材53を逆回転して、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角をγからαにする。
以上にように、本実施の形態では、第1実施の形態と異なり、原稿の滑り又は重送を検知してから、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角を変更するようにしている。即ち、制御部39は、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角がαとなる位置を基準位置として、原稿の滑りを防止する位置又は原稿の重送を防止する位置に回転部材53を回転するようにしている。
本実施の形態によれば、制御部39が滑りセンサ97や重送センサ99からの検知信号に応じて、回動機構を稼働するので、原稿の種類に関わりなく、原稿の不送りや重送等の原稿の搬送状態に応じて、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角を、自動的に変更することができる。
制御部39は、原稿の滑りを検知したときに、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角を大きくするので、原稿の滑りを自動的に防止できる。
制御部39は、原稿の重送を検知したときに、リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角を小さくするので、原稿の重送を自動的に防止できる。
原稿がOHP用紙等のコート紙である場合、原稿の滑りが発生し易い反面、原稿同士が張り付いて原稿の重送が発生し易いが、本実施の形態によれば、制御部39が原稿の滑り又は原稿の重送を判断してリバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角を変更するので、原稿にコート紙を用いた場合であっても、原稿の滑り又は重送を防止できる。
尚、本発明は上述の実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、画像形成部5は、記録媒体にトナー画像を転写する方式であるが、これに代えて、インク吐出ヘッドから記録媒体にインクを吐出するインクジェット方式でもよい。
第1実施の形態では操作パネル36を操作して回動部材53を回動させており、第2実施の形態では制御部39により回動部材53を自動的に回動させているが、これらに代えて、操作パネル36を操作して回動部材53を回動可能にすると共に制御部39により回動部材53を自動的に回動可能にしても良い。
第1実施の形態では、制御部39に回転方向決定部95を設けて回転部材53を時計回り又は反時計回りに回転するようにしているが、これに代えて、制御部39に回転量決定部を設けて回転部材53を時計回り及び反時計回りの何れか一方向のみに回転するようにしても良い。
上述の実施形態においては、回転部材53の外周面を3つの外周面部に分けているが、これに限らず、例えば、5つの外周面部に分けても良い。リバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角を、原稿の種類(摩擦係数)に応じて、細かく調整することができる。
第2実施の形態では、重送センサ99として超音波センサを用いているが、これに代えて、光学センサの発光部と受光部とを原稿搬送路を挟む位置に対向配置し、原稿を透過する透過光の強弱を比較して、重送を検知するようにしても良い。
上述の実施形態では、給紙ベルト38の当接方向の位置を変えてリバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角を変更するようにしているが、これに代えて、リバースローラ40の当接方向の位置を変えて巻き付け角を変更するようにしても良い。
上述の実施形態では、給紙ベルト38の当接方向の位置を変えてリバースローラ40に対する給紙ベルト38の巻き付け角を変更するようにしているが、これに代えて、給紙ベルト38及びリバースローラ40の当接方向の位置を変えて巻き付け角を変更するようにしても良い。
上述の実施形態では、回動機構により給紙ベルト38を回動するようにしているが、これに代えて、例えば、互いに歯合するラックとピニオンを用いたスライド機構により、給紙ベルト38をスライドして移動するようにしても良い。
上述の実施形態では、回転部材53の外周面部同士の間を段差にしているが、これに代えて、回転部材53の外周面部同士の間を曲面にしても良い。即ち、回転部材53を偏心カムにしても良い。