以下、本発明の実施形態例を説明し、併せて上述した従来の欠点を図面に即してより具体的に明らかにする。
図1は給紙装置を備えた画像形成装置の一例を示す概略図である。ここに示した画像形成装置は、その本体7内に配置された4つの感光体8Y,8M,8C,8BKを有し、その各感光体にそれぞれイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像及びブラックトナー像が形成される。また、この画像形成装置には、第1乃至第3の給紙装置9,9A,9Bが設けられ、そのいずれかの給紙装置から給送された用紙が、感光体8Y乃至8BKに対向配置された転写ベルト10によって搬送され、このときその用紙上に、各感光体8Y乃至8BKから各色のトナー像を重ねて転写される。トナー像を転写された用紙は定着装置11を通り、このとき熱と圧力の作用でそのトナー像が用紙上に定着される。定着装置11を通過した用紙は、排紙トレイ12上に排紙される。
上述のように、本例の画像形成装置は、用紙に画像を形成する作像手段と、その作像手段に用紙を給送する給紙装置9,9A,9Bを有している。
第1の給紙装置9は、ユーザが給紙トレイ1上に手操作にてセットした用紙Pを給送する手差し給紙装置として構成され、第2及び第3の給紙装置9A,9Bは、その各給紙トレイ1A,1Bに積載された用紙Pを給送する。いずれの給紙装置9,9A,9Bも、積載された用紙Pを送り出すピックアップローラ2,2A,2Bと、そのピックアップローラ2,2A,2Bよりも用紙搬送方向下流側に配置されたフィードローラ3,3A,3Bと、そのフィードローラ3,3A,3Bと対をなして該ローラ3,3A,3Bにそれぞれ当接するリバースローラ4,4A,4Bとを有し、その共通の要素として、フィードローラ3とリバースローラ4よりも、用紙搬送方向下流側に配置されたレジストローラ対13と、レジストセンサ22として構成された用紙検知手段とを有している。
各給紙トレイ1,1A,1Bから送り出された用紙Pは、レジストローラ対13に突き当たって一旦、停止した後、所定のタイミングでレジストローラ対13が回転を開始することにより、各感光体8Y乃至8BK上のトナー像がその用紙上に正しく転写されるタイミングで、感光体と転写ベルト10の間に給送される。
各給紙装置9,9A,9Bのピックアップローラ2,2A,2B、フィードローラ3,3A,3B、リバースローラ4,4A,4B及びこれらに関連する構成は実質的に同一であるため、第1の給紙装置9におけるこれらのローラ2,3,4と、これに関連する構成だけを説明する。
図2に示すように、フィードローラ3は、一方向クラッチ15を介してフィード軸14に支持されるか、又はそのフィード軸14に固定されている。またピックアップローラ2は、フィード軸14に対して矢印E方向に揺動可能に支持されていると共に、タイミングベルト16を介してフィードローラ3に駆動連結され、該フィードローラ3と同期して回転駆動される。またリバースローラ4は、トルクリミッタ6を介してリバース軸5に連結されている。
図示していない駆動モータによって回転駆動される駆動ギア17は、リバース軸5に固定されたリバースギア18に噛み合っている。このリバースギア18は、フィード軸14に回転自在に支持されたフィードギア20に、中間ギア19を介して駆動連結され、フィード軸14には、例えば電磁クラッチより成るフィードクラッチ21が設けられている。
駆動モータの回転は、駆動ギア17及びリバースギア18を介してリバース軸5に伝えられ、さらにリバースギア18の回転は中間ギア19を介してフィードギア20に伝達される。フィードクラッチ21がオンされているときは、フィードギア20の回転は、該クラッチ21を介してフィード軸14に伝えられ、フィードローラ3とピックアップローラ2が、それぞれ矢印B,Fで示す給紙方向に回転駆動されるが、フィードクラッチ21がオフされているときは、フィードギア20の回転がフィード軸14に伝えられることはない。このように、フィードローラ3は、駆動モータからの動力を該フィードローラ3に伝達又は遮断するフィードクラッチ21を介して駆動モータに連結され、リバースローラ4は、駆動モータにより回転駆動されるリバース軸に、トルクリミッタ6を介して連結されている。駆動モータとして、オン、オフ制御を高精度に行うことのできるステッピングモータを用いることが好ましい。
図4に示したタイミングチャートにおいて、給紙スタート信号により、先ず駆動モータが作動を開始し、その回転が駆動ギア17及びリバースギア18を介してリバース軸5に伝達され、この軸5が図2に矢印Gで示した方向に回転駆動される。この時点で、ピックアップローラ2は、図3に示すように、給紙トレイ1上の用紙Pから離間しており、しかもフィードクラッチ21はオフされ、駆動モータからフィードローラ3への動力の伝達が遮断されている。従ってフィードローラ3は、フィード軸14と共に自由に回転できる状態にある。このため、駆動モータによって矢印G方向に回転駆動されるリバース軸5の回転がトルクリミッタ6を介してリバースローラ4に伝えられ、該リバースローラ4は図2及び図3に矢印Iで示した反給紙方向に回転する。このとき、フィードローラ3は、リバースローラ4に矢印Jで示す反給紙方向に連れ回りする。
駆動モータの回転開始から所定の時間T1が経過すると、フィードクラッチ21がオンされると共に、ピックアップローラ2が図5に示すように下降して用紙Pに圧接する。これにより、駆動モータの回転がフィードローラ3とピックアップローラ2に伝えられ、これらのローラ2,3が、図5に矢印B,Fで示した給紙方向に回転する。一方向クラッチ15は、フィード軸14のこの方向の回転をフィードローラ3に伝達する。これにより、給紙トレイ1上の用紙Pが矢印A方向に送り出され、該用紙は、フィードローラ3とリバースローラ4にくわえ込まれて搬送される。
上述のように駆動モータにより給紙方向(矢印B方向)に回転駆動されたフィードローラ3と、リバースローラ4との間に給送すべき1枚だけの用紙P1が送り込まれたときは、リバースローラ4は、トルクリミッタ6の作用により、その用紙P1の動きに連動して矢印Cで示した給紙方向に連れ回りする。また、駆動モータにより回転駆動されたフィードローラ3と、リバースローラ4との間に、給送すべき用紙P1と、それ以外の他の用紙(図5に破線で示す)P2が共に送り込まれたときは、駆動モータにより回転駆動されたリバース軸5の回転がトルクリミッタ6を介してリバースローラ4に伝えられ、該リバースローラ4が図5に矢印Iで示した反給紙方向に回転して、該リバースローラ4に当接する他の用紙P2を矢印D方向に戻す。
給紙トレイ1から送り出された用紙がフィードローラ3とリバースローラ4にくわえ込まれた後に、ピックアップローラ2を給紙トレイ1上の用紙から離間させてもよいし、或いはその用紙に当接させたままとしておくこともできる。
上述のようにして、給送されるべき用紙P1が、図4に示すように時間T2を搬送されると、その先端が図6に示したレジストセンサ22により検知され、次いでその用紙先端が停止したレジストローラ対13に突き当たり、その用紙P1には図6に示す如きたるみが形成され、用紙P1の先端が補正される。レジストセンサ22が用紙先端を検知してから、所定時間T3後に駆動モータが停止し、フィードローラ3への駆動が遮断され、用紙はたるみを形成したまま待機する。このとき、フィードクラッチ21はオン状態を維持する。
次いで、用紙P1に対して、各感光体8Y乃至8BK(図1)からトナー像を正しく転写できるタイミングで、レジストローラ対13が回転を開始すると共に、駆動モータが作動を再開してフィードローラ3が給紙方向に回転駆動される。
上述のように、停止したレジストローラ対13に用紙の先端を突き当て、用紙にたるみを形成してから用紙を一旦、停止させ、所定のタイミングでレジストローラ対13を回転させて、その用紙を給送するが、その際、フィードクラッチ21をオンしたまま、駆動モータを停止させて、用紙P1の搬送を一旦、停止させるので、用紙の待機中にたるみがなくなる不具合を阻止できる。仮に、フィードクラッチ21をオフした状態で、駆動モータを停止させたとすると、リバースローラ4が、停止した用紙P1から受ける外力によって反給紙方向(図6の鎖線矢印I方向)に回転し、その回転がフィードローラ3に伝えられて、当該フィードローラ3が反給紙方向(図6の鎖線矢印J方向)に回転して、用紙P1のたるみがなくなってしまうおそれがある。また、駆動モータを作動させながらフィードクラッチ21をオフして、用紙にたるみを形成しようとすると、駆動モータの回転により、リバースローラ4が反給紙方向に回転して用紙にたるみがなくなるおそれがある。
これに対し、本例の給紙装置では、フィードクラッチ21をオンしたまま、駆動モータの駆動を停止させるので、フィードローラ3はリバースローラ4に連れ回りしようとするが、駆動モータとフィードローラ3が直結状態にあるので、駆動モータのホールドトルクによってフィードローラ3が反給紙方向に回転することはなく、用紙のたるみがなくなるおそれはない。
駆動モータが再度、作動を開始することにより用紙P1はさらに搬送されるが、図7に示すように、その給送すべき用紙P1の後端が、駆動モータにより回転駆動されたフィードローラ3と、リバースローラ4との間のニップを通過した後、すなわち図4に示したT4時間を経過したときに、フィードクラッチ21をオフする。このとき、図7に示した例では、用紙P1は両ローラ3,4のニップから距離Xだけ離れている。この状態でフィードクラッチ21をオフすることにより、駆動モータからフィードローラ3への動力の伝達が遮断され、フィードローラ3は自由に回転できる状態となる。一方、このときも駆動モータは作動を継続しており、従って駆動モータにより回転駆動されたリバース軸5の回転がトルクリミッタ6を介してリバースローラ4に伝えられ、リバースローラ4が図7に矢印Iで示した反給紙方向に回転駆動され、フィードローラ3がフィード軸14と共に、矢印Jで示した反給紙方向に連れ回りする。これによって、図7に破線で示すように、リバースローラ4とフィードローラ3の間に他の用紙P2が挟まれているときは、その用紙は、矢印D方向に戻され、両ローラ3,4のニップから離される。用紙を連続して給送するときは、駆動モータが作動したまま、かかる動作が、用紙の給送毎に行われる。1枚の用紙だけを給送する給紙動作、又は複数枚の用紙を順次連続して給送する一連の給紙動作が行われるとき、最後に給送されるべき用紙を給送し終えたときは、図4に示すように、フィードクラッチ21をオフしてから、時間T5だけ駆動モータを作動させて、他の用紙P2を戻す動作を行い、他の用紙P2が両ローラ3,4のニップを離れた後に、駆動モータの作動を停止させる。1枚の用紙だけを給送する給紙動作の場合には、その1枚の用紙が最初に給送される用紙であると共に、最後に給送される用紙でもある。このように、本例の給紙装置は、給送すべき最後の用紙P1の後端が、駆動モータにより回転駆動されたフィードローラ3と、リバースローラ4とのニップを通過した後に、駆動モータの作動を継続したまま、フィードクラッチ21をオフし、駆動モータからフィードローラ3への動力の伝達を遮断して、該フィードローラ3を自由に回転できる状態にし、駆動モータにより回転駆動されたリバース軸5の回転をトルクリミッタ6を介してリバースローラ4に伝え、該リバースローラ4を反給紙方向に回転駆動して該リバースローラ4とフィードローラ3の間に挟まれた他の用紙P2を戻し、次いで駆動モータを停止させるように構成されている。
上述のように、給送すべきでない用紙P2を、その都度、フィードローラ3とリバースローラ4のニップから送り戻すことができるので、給紙動作を終了したとき、最後に給送された用紙の次の用紙がフィードローラ3とリバースローラ4の間にくわえ込まれた状態で停止していることはない。このため、給紙トレイを画像形成装置本体から抜き取り、再びこれを装着する作業を行ったときも、用紙のジャムが発生するおそれをなくすことができる。
また、従来の給紙装置においては、給送すべき用紙がフィードローラとリバースローラよりも下流側に位置するローラ対(以下、グリップローラ対という)にくわえ込まれた後であって、当該用紙がフィードローラとリバースローラの間にくわえ込まれている状態で、フィードクラッチをオフし、そのあとは下流側のグリップローラ対によって用紙を引っ張りながら搬送するように構成されていた。この構成によると、フィードクラッチがオフされる前は、フィードローラが用紙を搬送しているが、フィードクラッチがオフされると、フィードローラが用紙に対して搬送力を及ぼすことはない。このため、フィードクラッチのオフ時点から、グリップローラ対にかかる負荷が急激に変化し、これを駆動する駆動モータに回転むらが生じる。従って、この駆動モータによって、例えば感光体をも駆動しているようなときは、その感光体に衝撃が加えられ、これによって画像むらが発生するおそれがある。また、フィードローラ及びリバースローラと、レジストローラ対の間にグリップローラ対が配置されていない装置においては、フィードローラ及びリバースローラの側が用紙を引っ張ることになるため、レジストローラ対の用紙搬送速度が変化して、用紙の途中から画像が変形するおそれもある。
これに対し、本例の給紙装置においては、用紙の後端がフィードローラ3とリバースローラ4の間を抜けた後に、フィードクラッチ21がオフされるので、上述した従来の欠点は発生せず、常に高品質な画像を形成することが可能である。
ところで、図7に示した他の用紙P2を矢印D方向に戻すとき、その用紙P2の先端Wがフィードローラ3とリバースローラ4のニップから確実に離れるまで駆動モータの作動を続ける必要がある。フィードクラッチ21をオフしてから、駆動モータを停止させるまでの時間T5(図4)を充分に長くとり、用紙P2の先端Wがローラ3,4のニップから確実に離れるようにするのである。ところが、この用紙P2の長さが短かったり、その厚さが薄いと、用紙P2の重量が小さくなるため、上述の時間T5が長いと、その用紙P2が矢印D方向に移動する距離が大きくなりすぎて、当該用紙P2が、図8に一点鎖線で示し、且つ符号P2´を付して示したように、ピックアップローラ2よりも用紙搬送方向上流側へ移動してしまうおそれがある。すなわち、図8に実線で示したように、用紙P2が、フィードローラ3とリバースローラ4のニップを抜けた後、その用紙の先端Wが、反給紙方向に回転しているリバースローラ4の周面に当ると、この用紙P2はリバースローラ4によってさらに矢印D方向に向けた搬送力を受けるが、このとき、その用紙P2が軽量であると、当該用紙P2が矢印D方向に大きく移動し、その用紙が符号P2´で示した位置まで移動することがある。このようになると、次の給紙動作時に、この用紙P2´を給送すべく、ピックアップローラ2が回転したとき、その用紙P2´を送り出すことができない。
そこで、フィードクラッチ21をオフしてから、駆動モータを停止させるまでの時間T5を短くし、上述した不具合が発生しないように構成したとすると、用紙P2の長さが長く、或いはその厚さが厚い場合には、当該用紙P2の重量が大きくなり、しかもこの用紙P2が給紙トレイ1上の用紙から受ける摩擦力が大きくなるので、この用紙P2がフィードローラ3とリバースローラ4との間のニップに挟まれた状態で停止してしまうおそれがある。
そこで、本例の給紙装置9においては、フィードクラッチ21をオフしてから、駆動モータを停止させるまでの時間T5を、用紙P2の長さに応じて設定するように構成されている。すなわち、給紙装置9には、その給紙トレイ1上の用紙の搬送方向長さを検知する用紙長さ検知手段が設けられ、これにより検知された用紙長さ情報によって上述の時間T5を最適な長さに設定するのである。より具体的に示すと、図9に示すように、給紙トレイ1の上方に反射型フォトセンサ30(図1には示さず)より成る用紙長さ検知手段が設けられ、給紙トレイ1上に載置された用紙の長さが長いか又は短いかが検知される。この例では、フォトセンサ30により、給紙トレイ1上に載置された用紙の長さが基準値以上であるか、又はその基準値よりも短いかが検知される。すなわち、給紙トレイ1上に、実線で示した長さL1の短い用紙PSが載置されているときは、この用紙PSの長さが基準値より短いことが検知され、鎖線で示した長さL2の長い用紙PLが載置されているときは、その用紙PLの長さが基準値以上であることがフォトセンサ30により検知される。そして、図7における矢印D方向に戻される用紙P2の長さが、基準値以上であるときは、その長さが基準値より短い場合よりも、フィードクラッチ21をオフしてから駆動モータを停止させるまでの時間T5を長く設定する。すなわち、図7に示した用紙P2が、図9に符号PLで示した長さの長い用紙であったときは、その用紙P2を戻す時間T5を長く設定し、逆に図7に示した用紙P2が、図9に符号PSで示した長さの短い用紙であったときは、その用紙P2を戻す時間T5を短くするのである。このようにすれば、用紙P2の長さが短いときに、その用紙がピックアップローラ2を抜けてしまい、図8に一点鎖線で示し、且つ符号P2´を付して示した位置まで送られることはない。しかも用紙P2の長さが長いときも、その用紙がフィードローラ3とリバースローラ4のニップに挟まった状態で停止してしまうことはなく、いずれの場合も、用紙P2を適正な位置に停止させることができる。
また、フィードクラッチ21をオフしてから、駆動モータを停止させるまでの時間T5を、用紙の厚さに応じて設定しても、上述したところと同様の効果が得られる。すなわち、この場合には、給紙装置に用紙厚さ検知手段を設け、これにより検知された用紙厚さ情報によって前述の時間T5を設定する。より具体的に示すと、図10に例示するように、給紙トレイ1よりも用紙搬送方向下流側であって、フィードローラ3とリバースローラ4のニップよりも上流側の用紙搬送経路を挟んで、発光素子31と受光素子32(共に図1には示さず)を設け、これらの間に用紙Pが通過するとき、発光素子31から出射して、受光素子32に入射する光の光量によって、用紙Pの厚さを検知するのである。そして、この場合も、例えば用紙の厚さが基準値以上であるときは、その厚さが基準値より薄い場合よりも、フィードクラッチ21をオフしてから駆動モータを停止させるまでの時間T5を長く設定する。これにより、図7に示した用紙P2の厚さが厚いときも、その用紙P2を確実にフィードローラ3とリバースローラ4のニップよりも、用紙搬送方向上流側の適正位置まで移動させることができ、しかもその用紙P2の厚さが薄いときも、その用紙P2がピックアップローラ2を抜けて、図8に一点鎖線で示した位置まで移動してしまうことを防止できる。
図10に示した用紙厚さ検知手段以外の各種の検知手段を採用することもでき、例えば一対の検知ローラの間に用紙を通過させ、このときの検知ローラの動きを検出することにより、用紙の厚さを検知する用紙厚さ検知手段を採用することもできる。
ところで、本例の給紙装置においては、前述のように、給紙開始時に、ピックアップローラ2によって用紙を送り出すに先立ち、図4に示した時間T1だけ、駆動モータによりリバース軸5を回転駆動すると共に、フィードクラッチ21をオフし、駆動モータからフィードローラ3への動力の伝達を遮断して、該フィードローラ3を、自由に回転できる状態にするように構成されているので、特に第1の給紙装置9のように手差し給紙装置の場合に、用紙の不適切なセットに基づくジャムの発生を防止できる。すなわち、図11に示すように、ユーザが用紙Pを給紙トレイ上にセットするとき、その用紙Pを強く押して、複数枚の用紙をフィードローラ3とリバースローラ4の間に押し込んでしまうと、従来の給紙装置の場合、その用紙が送り出されたとき、ジャムを起こすおそれがあった。かかる不具合の発生を防止するため、多数枚の用紙が図11に示したように両ローラ3,4間に押し込まれたとき、これをセンサにより検知し、ブザーやランプなどによってユーザに報せ、用紙のセットし直しを促す方法などが提案されているが、かかる構成によると、給紙装置のコストが上昇する。
これに対し、本例の給紙装置によれば、用紙を送り出す前に、リバース軸5を回転駆動し、かつフィードローラ3を自由に回転できる状態にするので、リバースローラ4は反給紙方向(図11の矢印I方向)に回転し、フィードローラ3が矢印J方向に連れ回りして、両ローラ3,4間に押し込まれた用紙を矢印D方向に戻すことができる。このようにして、用紙を自動的に適正な状態にセットし直すことができ、用紙のジャム発生を未然に防止することができる。
ところで、図1に示した画像形成装置においては、給紙装置9から送り出された用紙Pは、感光体8Y,8M,8C,8BKや転写ベルト10などから成る作像手段に送られ、その作像手段によって用紙上にトナー像が形成され、そのトナー像は、用紙が定着装置11を通るとき、その用紙上に定着され、次いで当該用紙は排紙トレイ12上に排出される。このように用紙が搬送されているとき、当該用紙がその搬送経路中にて紙詰まりを起こすことがある。このような紙詰まりが発生した場合、給紙装置9の給紙動作や、感光体8Y,8M,8C,8BKの回転や、転写ベルト10の回転などが止められて用紙の搬送が停止される。しかも、図示していない表示部に、紙詰まりが発生したことを示すジャム表示がなされ、ユーザはこの表示に従って、例えば画像形成装置本体7の前ドアを開き、詰まった用紙を取り除く。かかるジャム処理終了後、ユーザは再び前ドアを閉じ、画像形成動作を再開する。
上述の如き紙詰まりが連続通紙時に発生すると、用紙の搬送路中に複数の用紙が停止する。仮に、図1に示した定着装置11において紙詰まりが発生した場合を考えると、用紙の搬送経路中には、例えば図12乃至図14に示す状態で後続する用紙が停止する。図12の場合には、1枚の用紙P3がレジストローラ対13にくわえ込まれ、さらにこれに続く用紙P4がフィードローラ3とリバースローラ4とに挟持されて停止している。また、図13の場合には、1枚の用紙P5がフィードローラ3とリバースローラ4にくわえ込まれて停止し、図14の場合には、1枚の用紙P6が、レジストローラ対13にくわえ込まれると共に、フィードローラとリバースローラ4とに挟持されて停止している。
ここで、図12乃至図14に示したレジストセンサ22のほかに、フィードローラ3とリバースローラ4のニップよりも用紙搬送方向下流側であって、そのニップの近傍に、図12乃至図14に一点鎖線で示したセンサ23を設け、これらのセンサ22,23によって、上述のように停止した各用紙P3,P4,P5,P6を検知し、その検知結果に基づいてこれらの用紙の停止位置を表示部に表示することができる。この例の場合には、表示部に、定着装置11において詰まった用紙と、これに続く用紙P3,P4,P5,P6の位置が表示されるのである。ユーザは、その表示を見てこれらの用紙を全て除去する。
ところが、図12に示した用紙P4の先端が、センサ23により検知できる位置にまで達しておらず、その用紙P4の先端が例えば図9に符号Wで示した位置に達したところで、当該用紙P4が停止したとすると、この用紙P4をセンサ23によって検知することはできない。従って、この用紙P4の位置を表示部に表示することはできず、通常はユーザがこの用紙P4を除去することはない。かかる状態で画像形成動作が再開されると、それまでフィードローラ3とリバースローラ4に挟持されていた用紙P4は所定のタイミングで給送されることはないので、当該用紙P4が紙詰まりを起こすおそれがある。
また、紙詰まりの発生時に、図12乃至図14に示したように停止した用紙P3,P4,P5,P6のうち、レジストローラ対13にくわえ込まれた用紙P3,P6には、既にトナー像が転写されている可能性があるので、これらの用紙を再使用することはできない。これに対し、図12及び図13に示した用紙P4,P5は、未だレジストローラ対13にくわえ込まれておらず、従ってこれらの用紙にトナー像が転写されていることはないので、当該用紙P4,P5は再び使用することが可能である。
その際、再度使用できる用紙P4,P5もユーザが手で除去するように構成したとすると、その除去作業時に、当該用紙P4,P5が破られたり、これらにしわができたりして、用紙P4,P5が傷んでしまう可能性がある。このように損傷を受けた用紙は再使用することができず、これを廃棄せざるを得ない。これによって、用紙が無駄に消費されることになる。
上述した各欠点を除去するため、本例の画像形成装置においては、用紙の紙詰まりが発生したとき、図12及び図14に示した再使用可能な用紙P4,P5については、画像形成動作を再開する前に、当該用紙P4,P5を給紙トレイ1の側に自動的に戻すように構成されている。その具体的構成例を図1、図2及び図12乃至図14を参照して以下に説明する。
ここでも、図1に示した定着装置11において、用紙が紙詰まりを起こし、この用紙が停止すると共に、これに続く用紙が図12、図13、又は図14に示した状態で停止したものとする。かかる紙詰まりが発生したとき、表示部に紙詰まりが発生したことを示すジャム表示を行う前に、図2に示したフィードクラッチ21をオフした状態で、給紙装置9の前述の駆動モータを所定時間だけ作動させて、該モータを回転させる(図15のS1)。これにより、駆動モータからフィードローラ3への動力の伝達は遮断され、該フィードローラ3は自由に回転できる状態になると共に、リバース軸5は、駆動ギア17とリバースギア18を介して駆動モータにより矢印G方向に回転駆動され、その回転がトルクリミッタ6を介してリバースローラ4に伝えられ、このリバースローラ4は図2に矢印Iで示した反給紙方向に回転駆動される。すると、図12及び図13に示したようにフィードローラ3とリバースローラ4にくわえ込まれて停止していた用紙P4,P5は、リバースローラ4の回転により、これらの図に矢印Dで示した方向に搬送され、給紙トレイ1の側に戻される。このとき、フィードローラ3は図2に矢印Jで示した反給紙方向に連れ回りする。
上述した動作が行われるとき、レジストローラ対13は回転しない。このため、図12及び図14に示したように、レジストローラ対13に挟持された用紙P3,P6は、給紙トレイ1の側に戻されずに停止したままである。図14に示した例の場合には、リバースローラ4が反給紙方向に回転するとき、そのローラ4は用紙P6に対してスリップする。
上述した動作を終了した後、レジストローラ対13にくわえ込まれた用紙が存在するか否かがレジストセンサ22により検知される(図15のS2)。図12及び図14に示した例の場合には、用紙P3,P6がレジストセンサ22によって検知され、その検知結果に基づいて、レジストセンサ13に挟持された用紙が存在することを示すジャム表示が表示部になされる(図15のS3)。同時に、定着装置11に用紙が詰まっていることも表示部に表示される。これに対し、図13に示した例のように、レジストローラ対13にくわえ込まれた用紙が存在しないときは、このレジストローラ対13の部位に用紙が存在する表示がなされることはない(図15のS4)。この場合も、定着装置11に詰まった用紙が存在することが表示部に表示されることは当然である。
ユーザは、上述した表示を見て、搬送経路中に存在する用紙、すなわち定着装置11にて詰まった用紙と、レジストローラ対13に挟持された用紙P3,P6を除去する。このようにしてジャム処理を終えたならば、再びピックアップローラ2を回転させて用紙Pを送り出し、画像形成動作を再開することができる。このとき、給紙トレイ1に戻された用紙P4,P5が給送される。
上述のように、紙詰まりが発生したとき、駆動モータを所定時間だけ作動させて、フィードローラ3とリバースローラ4に挟持されてはいるが、レジストローラ対13にはくわえ込まれていない用紙P4,P5を自動的に給紙トレイ1に戻すので、この用紙P4,P5をユーザが手操作により除去する必要はない。このため、この用紙P4,P5が破られたり、これにしわができたりするおそれはなく、当該用紙P4,P5を支障なく再使用することができる。しかも、フィードローラ3とリバースローラ4とに挟まれたままの用紙が残されるおそれもなく、画像形成動作の再開時に従来のように用紙がジャムする不具合を防止することができる。また、従来の給紙装置には必要とされたセンサ23が不要となり、給紙装置のコストを低減することができる。
また、図12乃至図14に示すように、給紙トレイ1の上方に用紙の有無を検知するセンサ24を設けると共に、図16に示す如く、給紙トレイ上に用紙があるか否かをチェックするステップ(S0)を追加し、給紙トレイ1上に用紙がないことが検出された場合には、フィードローラ3とリバースローラ4とに挟持され、かつレジストローラ対13には挟持されていない用紙P4,P5は存在しないとして、駆動モータを所定時間だけ回転させる動作を省くように構成することもできる。この場合には、センサ24によって、給紙トレイ1上の用紙が検知されたときにだけ、駆動モータを所定時間作動させる。図16に示したフローチャートの他の動作は図15の場合と変りはない。
以上のように、本例の給紙装置9は、用紙がその搬送経路中にて紙詰まりを起こし、用紙の搬送が停止されたとき、ピックアップローラ2による用紙Pの送り出しを再開する前に、駆動モータを所定時間だけ作動させてリバース軸5を回転駆動すると共に、フィードクラッチ21をオフし、駆動モータからフィードローラ3への動力の伝達を遮断して、該フィードローラ3を自由に回転できる状態にし、駆動モータにより回転駆動されたリバース軸5の回転をトルクリミッタ6を介してリバースローラ4に伝え、該リバースローラ4を反給紙方向に回転駆動するように構成されている。かかる構成により、前述の従来の欠点を支障なく除去することができる。
また、上述のように紙詰まりの発生時に駆動モータを作動させる所定時間を次のように設定することが好ましい。すなわち、図12乃至図14に示したレジストローラ対13は、フィードローラ3とリバースローラ4よりも用紙搬送方向下流側に配置された用紙搬送ローラ対の一例を構成するものであるが、ピックアップローラ2による用紙の送り出しを再開する前に駆動モータを作動させる所定時間を、用紙がレジストローラ対13より成る用紙搬送ローラ対のニップからフィードローラ3とリバースローラ4とのニップまでの距離を搬送される時間以上の時間に設定するのである。このようにすれば、図12及び図14に示した用紙P4,P5のように、フィードローラ3とリバースローラ4とに挟持され、かつレジストローラ対13には挟持されていない用紙を、必ず、給紙トレイ1の側に戻すことができる。
また、給紙トレイ1上の用紙Pを給送し始めた時点から、紙詰まりが発生して、用紙P4,P5が停止した時点までの時間から、用紙P4,P5の停止位置を検出することができるので、ピックアップローラ2による用紙の送り出しを再開する前に駆動モータを作動させる所定時間を、用紙P4,P5を給紙トレイ1に戻すことのできる時間以上の時間に設定して、各用紙P4,P5を確実に給紙トレイ1の側に戻すように構成することもできる。
上述のように、各種方式によって、用紙P4,P5を給紙トレイ1に戻すことができるが、この場合も、用紙P4,P5の用紙搬送方向長さが短く、或いはその用紙の厚さが薄い場合には、その重量が小さいがため、上述の所定時間が長くなりすぎると、用紙P4,P5が、図8に一点鎖線で示し、且つ符号P2´を付して示したように、ピックアップローラ2を抜けてしまい、次の給紙動作時に、その戻された用紙P4,P5を給送できなくなるおそれがある。また逆に、用紙P4,P5の長さが長く、或いはその厚さが厚い場合には、用紙P4,P5を戻すときに、その用紙P4,P5がローラ3,4に対しスリップし、或いは給紙トレイ1上の用紙から大きな摩擦力を受けるので、上述の所定時間を長くしないと、その用紙P4,P5がフィードローラ3とリバースローラ4のニップに挟まれた状態で用紙P4,P5が停止してしまうおそれがある。
そこで、この場合も、ピックアップローラ2による用紙の送り出しを再開する前に駆動モータを作動させる所定時間を、用紙の長さに応じて設定することが好ましい。その際、前述の用紙長さ検知手段により用紙の長さを検知し、その用紙の長さが所定値以上であるときは、当該長さが所定値より短い場合よりも、ピックアップローラ2による用紙の送り出しを再開する前に駆動モータを作動させる所定時間を長く設定することができる。或いは、ピックアップローラ2による用紙の送り出しを再開する前に駆動モータを作動させる所定時間を、用紙の厚さに応じて設定することもできる。この場合も、前述の用紙厚さ検知手段により用紙の厚さを検知し、その用紙の厚さが所定値以上であるときは、当該厚さが所定値より薄い場合よりも、ピックアップローラ2による用紙の送り出しを再開する前に駆動モータを作動させる所定時間を長く設定することができる。
上述した各構成を採用することによって、用紙P4,P5の長さや厚さがいかなるときも、その用紙P4,P5をフィードローラ3とリバースローラ4のニップよりも上流側あって、しかもピックアップローラ2よりも下流側の適正な位置に戻し、次の給紙動作時に確実にその用紙P4,P5を給送することができる。
ところで、駆動モータとしてステッピングモータを用いることが望ましいことは先に説明したが、ステッピングモータは停止時間などの精度が高いので、図12乃至図16に示した構成を採用したときも、ステッピングモータより成る駆動モータを使用することが特に望ましい。
また、図1に示した画像形成装置には、複数の給紙装置9,9A,9Bが設けられているが、その複数の給紙装置の駆動モータとして、共通の1つのモータを用いると、その全体のコストを低減できる。その際、使用していない給紙装置にも、その駆動モータの回転が伝えられ、このとき給紙装置のフィードクラッチはオフのままであるため、当該給紙装置のリバースローラが反給紙方向に回転する。このとき、フィードローラは負荷なく反給紙方向に回転できるため、トルクリミッタにトルクを発生することなくリバースローラが反給紙方向に回転するため、駆動トルクもかからず、その分、所要動力が少なくなる。またトルクリミッタにはトルクを発生させないため、その寿命低下を防止できる。