JP2010036350A - ガスバリア積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリエチレンテレフタレートフィルムと無機酸化物層との密着を強化し、高温高湿環境下で試験を行ってもデラミネーションの発生がないガスバリア積層体を提供すること。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレートフィルム1の少なくとも一方の面に無機酸化物層3を積層するガスバリア積層体であって、該ポリエチレンテレフタレートフィルムの少なくとも該無機酸化物層3を設ける面に、プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)処理2が施されており、該処理表面を剛体振り子型物性試験器により測定(測定条件:パイプエッジ:直径2mm、フレーム重さ14g)した場合、測定温度が50℃における対数減衰率が0.04以上0.06以下の範囲内であることを特徴とするガスバリア積層体。
【選択図】図1

Description

本発明は、産業資材用途として用いる耐久性に優れたガスバリア積層体に関するものである。特に太陽電池のモジュールセルや配線を保護する必要があり、耐久性に優れた裏面保護シート用のバリア積層体に関するものである。また用途はこれに限定したものではなく応用展開が可能である。
ガスバリア積層体は食品や精密電子部品及び医薬品の包材として用いられ、内容物の変質を抑制しそれらの機能や性質を保持するために、包装材料を通過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体や光線による影響を防止する必要があり、これらを遮断するガスバリア性等を備えることが求められてきた。近年、このガスバリア積層体は太陽電池モジュールの部材である裏面保護シートを代表とした産業資材用途として用いられるようになってきた。
従来、上記裏面保護シートには温度・湿度などの影響が少ないアルミニウム等の金属箔がガスバリア層として一般的に用いられてきたが、金属箔は経年劣化により太陽電池のセル及び配線等と絶縁不良を起こすなど欠点を有し問題があった。
そこで、これらの欠点を克服した包装材料として、例えば、フッ素樹脂フィルム上に、真空蒸着法により酸化珪素の蒸着膜を形成したフィルムが開発されている(特許文献1)。この蒸着フィルムは透明性及び酸素、水蒸気等のガス遮断性を有しているため、金属箔等では得ることができない絶縁特性、透明性を有する包装材料として好適とされている。
しかしながら、従来のように前処理を施さない基材に、無機酸化物層を積層したフィルムでは、基材と無機酸化物層の接着性が弱いために、長時間の高温高湿環境下ではデラミネーションを引き起こすという欠点がある。
この問題を解決するために、従来からプラズマを用いることによって、インライン前処理によりプラスチック基材上に積層された無機酸化物層の接着性を改善する試みがなされている。
しかしながら、従来はインラインでプラズマ処理を行おうとすると、プラズマ発生のための電圧を印加する電極が基材のあるドラム側でなく、反対側に設置されている。この装置の場合、基材はアノード側に設置されることになるため、高い自己バイアスは得られず、結果として高い処理効果を発揮できなかった。
高い自己バイアスを得るために、直流放電方式を用いることも出来るが、この方法で高いバイアスの電圧を得ようとすると、プラズマのモードがグローからアークへと変化するため、大面積に均一な処理を行うことは出来ない。
特開平10−308521号公報
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、ポリエチレンテレフタレートフィルムと無機酸化物層との密着を強化し、高温高湿環境下で試験を行ってもデラミネーションの発生がないガスバリア積層体を提供することを目的とする。
本発明は特定の表面特性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを使用することにより上記の目的が達成できることを見出した。
請求項1記載の発明は、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)の少なくとも一方の面に無機酸化物層を積層するガスバリア積層体であって、該ポリエチレンテレフタレートフィルムの少なくとも該無機酸化物層を設ける面に、プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)処理が施されており、該処理表面を剛体振り子型物性試験器により測定(測定条件:パイプエッジ:直径2mm、フレーム重さ14g)した場合、測定温度が50℃における対数減衰率が0.04以上0.06以下の範囲内であることを特徴とするガスバリア積層体である。
これによると、高温高湿環境下で剥離しない分子構造となる。
請求項2記載の発明は、前記処理表面を剛体振り子型物性試験器により測定(測定条件:パイプエッジ:直径2mm、フレーム重さ14g)した場合、測定温度が80℃における対数減衰率が0.08以上0.11以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア積層体である。
これによると、高温高湿環境下で剥離しない分子構造となる。
請求項3記載の発明は、前記処理表面を剛体振り子型物性試験器により測定(測定条件:パイプエッジ:直径2mm、フレーム重さ14g)した場合、測定温度が120℃における対数減衰率が0.07以上0.15以下の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア積層体である。
これによると、高温高湿環境下で剥離しない分子構造となる。
請求項4記載の発明は、前記処理表面を剛体振り子型物性試験器により測定(測定条件:パイプエッジ:直径2mm、フレーム重さ14g)した場合、測定温度が150℃における対数減衰率が0.09以上0.12以下の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア積層体である。
これによると、高温高湿環境下で剥離しない分子構造となる。
請求項5の発明は、前記RIE処理が、直接電圧が印加される陰極側(冷却ドラム側)に基材を設置したプレーナ型のプラズマ処理、または、ホロアノード・プラズマ処理器を用いた特殊プラズマによる処理であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア積層体である。
これによると、PETフィルムの表面は、基材がアノード側に設置されたプラズマ処理あるいはコロナ処理等のアーク放電と比べて均一な処理が可能で、接着に寄与する表面から約10nmの処理深さで処理層を形成することができる。
請求項6記載の発明は、前記RIE処理が、アルゴン、窒素、酸素、水素のうちの1種類のガス、または、これらの混合ガスを用いて1回以上行われる処理であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア積層体である。
これによると、処理液を用いた化学処理に比べて環境を汚染しない処理が可能となる。
請求項7記載の発明は、前記無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、あるいは、それらの混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア積層体である。
これによると、金属箔または金属薄膜を用いたバリア積層体と比較し該ガスバリア積層体は廃棄、焼却の際に環境に無害な部材になる。
請求項8記載の発明は、前記RIE処理と前記無機酸化物層の積層が、同一製膜機(インライン製膜機)にて行われることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア積層体である。
これによると、RIE処理を行った後に大気中に暴露した場合より、生成した官能基、ラジカルと前記無機酸化物との反応がしやすくなり、両者の接着が強固になる。
本発明によれば、このようなガスバリア積層体を用いれば、高温高湿環境下においても無機酸化層と良好な接着性を示す。
以下に、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明のガスバリア積層体を説明する断面図である。プラズマを利用したリアクティブエッチング(RIE)による前処理を施し、処理層3が形成されたPETフィルム1表面上に、無機酸化物層2が形成されている構造である。
本発明のガスバリア積層体は、PETフィルム表面にプラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施している。このRIEによる処理を行うことで、発生したラジカルやイオンを利用してPETフィルム表面の粘弾性を制御することができる。その結果、PETフィルムと無機酸化物層との密着性を強化し、ガスバリア性向上やクラック発生防止につながるだけでなく、高温高湿環境においても、デラミネーションが起こることがない。
本発明のガスバリア積層体は、本発明者の次の知見に基づくものである。剛体振り子型物性試験器による測定(以下剛体振り子測定という)は、被測定物質上に振り子を乗せ、その振り子を振動させながら被測定物質に温度を連続的に変化させて測定すると動的粘弾性が測定できる装置である。この装置ではデータの1つとして対数減衰率が測定される。PET分子はRIE処理をすると還元作用によって炭化し、表面分子は硬化する傾向になる。未処理の状態でのPET分子は粘性が大きいため、振り子にブレーキがかかり振動は減衰し、対数減衰率を大きくする。RIE処理を施すとPET表面は炭化して緻密になり剛直性が出て温度が高くなっても粘性が低くなり、振動にブレーキがかからず対数減衰率が小さくなる。したがって、対数減衰率を評価することによって、表面処理による橋かけの生成による粘性の変化が測定できる。
PETフィルムは、プラズマ処理などの表面処理が施されていない未処理状態において、剛体振り子型物性試験器で測定温度50℃、80℃、120℃、150℃の時の対数減衰率はそれぞれ0.03、0.05、0.06、0.05を示す。これらの値を示す未処理状態のPETフィルムは、高温高湿環境下に放置すると無機酸化物蒸着膜とデラミネーションを起こしやすく密着性が低い。
これに対して、本発明のガスバリア積層体は、プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による表面処理を施すことにより、フィルム表面が改質され、剛体振り子型物性試験器で測定温度50℃、80℃、120℃、150℃の時の対数減衰率はそれぞれ0.04以上0.06以下、0.08以上0.11以下、0.07以上0.15以下、0.09以上0.12以下を示す。これらは、無機酸化物層と極めて良好な密着性を示し、高温高湿環境下に放置すると無機酸化物蒸着膜とデラミネーションを起こしにくい。
なお、測定温度50℃の時の対数減衰率が0.04未満では、表面硬度が高くなり、逆に0.06を超えると、表面硬度が低くなり、好ましくない。
また、対数減衰率の調整は、プラズマ処理をすることにより行なうことができる。
図2はPET表面を剛体振り子型物性試験器により測定した測定温度に対する対数減衰率の関係を示した一例である。被測定物質に熱を加えると4までは物質の構造が運動しないため対数減衰率は変化しない。ところが、5では物質の構造が運動する構造になったため粘性が増加して、対数減衰率が大きくなる。6は物質構造が全て運動状態になり、粘性は温度との関係式にしたがって減少するため、対数減衰率は低下する。7はその変化点としてピークが現れる。さらに、8は測定温度が上昇するとその系での最低粘性まで低下するため対数減衰率は平衡になる。
また、このPETフィルムには公知の添加剤、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤を使用することができる。
PETフィルムの厚さは特に制限を受けるものではないが、無機酸化物層を形成するときの加工性を考慮すると、実用的には3〜200μmの範囲が好ましく、特に6〜50μmとすることが好ましい。3μm未満である場合は、巻取り装置で加工する場合、シワの発生やフィルムの破断が生じ、200μmを超える場合は、フィルムの柔軟性が低下するため、巻き取り装置では加工が困難になる。また産業資材、包装材料としての適性を考慮して無機酸化物層以外に異なる性質のフィルムを積層することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリフッ化ビニルフィルムやポリフッ化ジビニルなどのフッ素系樹脂フィルムなどが考えられるが、これら以外の樹脂フィルムを積層することもできる。
本発明におけるRIEによる処理を巻き取り式のインライン装置で行う方法としては、基材の設置されている冷却ドラムに電圧を印加してプレーナ型にする方法(図3)、もしくはホロアノード・プラズマ処理器を用いて処理を行う方法(図4)がある。
プレーナ型で処理を行えば、PETフィルム12からなる基材は、処理ロール11に設けられた電極9である陰極(カソード)側に設置することができ、高い自己バイアスを得ることによってRIEによる処理が行える(図3)。もし、通常インライン処理で行うように、ドラムもしくはガイドロールの対面側に印加電極を設置した場合には、PETフィルム12からなる基材は陽極(アノード)側に設置されることになる。この時、基材は高い自己バイアスを得られず、ラジカルが基材表面に作用し化学反応するだけの、いわゆるプラズマエッチングしか行われないため、無機酸化物蒸着層と基材との密着性は低いままである。
また、上記ホロアノード・プラズマ処理器とは、電極9は中空状の陽極であり、その陽極の面積(Sa)が、対極となる基板面積(Sc)に比べ、Sa>Scとなるような処理器である(図4)。陽極の面積を大きくすることで、対極となる陰極(基材)上に大きな自己バイアスを発生することが出来る。この大きな自己バイアスにより、安定で強力な表面処理が可能となる。さらに好ましくは、上記ホロアノード電極中に磁石を組み込み、磁気アシスト・ホロアノードとすることで、より強力且つ安定したプラズマ表面処理を高速で行うことである。磁気電極から発生される磁界により、プラズマ閉じ込め効果を更に高め、大きな自己バイアスで高いイオン電流密度を得ることが出来る。なお、図3または4において、10はプラズマ、13はガス導入口、14はマッチングボックス、15は遮蔽板である。
RIEによる前処理を行うためのガス種としては、アルゴン、酸素、窒素、水素を使用することが出来る。これらのガスは単独で用いても、2種類以上のガスを混合して用いてもよい。また、2基以上の処理器を用いて、連続して処理を行ってもよい。この時2基以上の処理器は同じものを使用する必要はなく、プレーナ型で処理を行った後に連続してホロアノード・プラズマ処理器を用いて処理を行っても構わない。
次に無機酸化物層2について、詳しく説明する。
本発明における無機酸化物層は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、あるいは、それらの混合物などの無機酸化物からなる層であり、透明性を有しかつ酸素、水蒸気等のガスバリア性を有する層であればよい。高温高湿環境での耐性を考慮するとこれらの中では、特に酸化アルミニウム及び酸化珪素またはこれらの混合物を用いることがより好ましい。ただし、本発明の無機酸化物層は、上述した無機酸化物に限定されず、上記条件に適合する材料であれば用いることが可能である。
無機酸化物層の厚さは、用いられる無機化合物の種類・構成により最適条件が異なるが、一般的には5〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また、膜厚が300nmを越える場合は薄膜の残留応力によりフレキシビリティを保持させることができず、成膜後外的要因により、薄膜に亀裂を生じるおそれがあるので問題がある。より好ましくは、10〜150nmの範囲内にあることが好ましい。
無機酸化物層をPETフィルムに積層する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることができる。ただし、生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましいが、蒸発材料の選択性の幅広さを考慮すると電子線加熱方式または抵抗加熱方式を用いることがより好ましい。また蒸着薄膜層と基材の密着性及び蒸着薄膜層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着することも可能である。また、蒸着膜の透明性を上げるために蒸着の際、酸素等の各種ガスなど吹き込む反応蒸着を用いても一向に構わない。なお、前記RIE処理と前記無機酸化物層の積層が、同一製膜機(インライン製膜機)にて行うようにすれば、RIE処理を行った後に大気中に暴露した場合より、生成した官能基、ラジカルと前記無機酸化物との反応がしやすくなり、両者の接着が強固になり、好ましい。
以下に本発明のガスバリア積層体の実施例を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[剛体振り子型物性試験器によるPET表面処理面の対数減衰率の測定]
測定装置は、(株)エー・アンド・デイ製RPT−3000Wを用いた。フレーム形状(振り子)はパイプ直径2mm、フレーム重さ14gのRBP−020を用いた。測定温度範囲は30℃から200℃とし、昇温速度は10℃/min、測定幅は20mmで専用のアルミニウム板に試料を固定した。これらの条件でPET表面処理層に対して3箇所の対数減衰率を測定し、その平均値を各実施例の対数減衰率のデータとした。
<実施例1>
厚さ12μmのPETフィルムの片面に、処理方法としてホロアノード・プラズマ処理器を用いてリアクテブイオンエッチング(RIE)による前処理を施した。この時、電極には周波数13.56MHzの高周波電源を用い、処理ガスに水素ガスを用いた。剛体振り子物性試験器での測定温度50℃における対数減衰率は0.04、測定温度80℃における対数減衰率は0.08、測定温度120℃における対数減衰率は0.10、測定温度150℃における対数減衰率は0.09であった。この上に、抵抗加熱方式を用いて、酸化珪素を約40nmの厚みで成膜して、ガスバリア積層体を作製した。
<実施例2>
処理ガスに酸素ガスを用いて処理して得られたPETフィルムの剛体振り子物性試験器での測定温度50℃における対数減衰率は0.06、測定温度80℃における対数減衰率は0.08、測定温度120℃における対数減衰率は0.09、測定温度150℃における対数減衰率は0.09であった以外は実施例1と同様の方法でガスバリア積層体を作製した。
<実施例3>
処理ガスにアルゴン/酸素混合ガスを用いて処理して得られたPETフィルムの剛体振り子物性試験器での測定温度50℃における対数減衰率は0.06、測定温度80℃における対数減衰率は0.11、測定温度120℃における対数減衰率は0.15、測定温度150℃における対数減衰率は0.11であった以外は実施例1と同様の方法でガスバリア積層体を作製した。
<実施例4>
処理ガスに窒素ガスを用いて処理して得られたPETフィルムの剛体振り子物性試験器での測定温度50℃における対数減衰率は0.05、測定温度80℃における対数減衰率は0.11、測定温度120℃における対数減衰率は0.14、測定温度150℃における対数減衰率は0.12であった以外は実施例1と同様の方法でガスバリア積層体を作製した。
<実施例5>
処理方法として冷却ドラム側から電圧を印加する方式のプレーナ型で、プラズマを利用したRIEによる前処理を行い、処理ガスにアルゴンガスを用いて処理して得られたPETフィルムの剛体振り子物性試験器での測定温度50℃における対数減衰率は0.05、測定温度80℃における対数減衰率は0.10、測定温度120℃における対数減衰率は0.12、測定温度150℃における対数減衰率は0.10であった以外は実施例1と同様の方法でガスバリア積層体を作製した。
<比較例1>
処理ガスに酸素/窒素混合ガスを用いて得られたPETフィルムの剛体振り子物性試験器での測定温度50℃における対数減衰率は0.07、測定温度80℃における対数減衰率は0.16、測定温度120℃における対数減衰率は0.17、測定温度150℃における対数減衰率は0.13であった以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア積層体を作製した。
<比較例2>
PETフィルムにコロナ処理装置を用いて、コロナ処理して得られたPETフィルムの剛体振り子物性試験器での測定温度50℃における対数減衰率は0.08、測定温度80℃における対数減衰率は0.12、測定温度120℃における対数減衰率は0.20、測定温度150℃における対数減衰率は0.15であった以外は実施例1と同様の方法でガスバリア積層体を作製した。
実施例1〜5、比較例1〜2の無機酸化物層上に、下記に示すA液とB液を配合比(wt%)で6/4に混合した溶液を塗布した。
A液:テトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO 換算)の加水分解溶液。
B液:ポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比で90:10)。
この溶液をグラビアコート法により塗布乾燥し、厚さ0.5μmの複合被膜層を形成し、ガスバリア積層フィルムとした。
さらにニ液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて、ドライラミネーションにより、ガスバリア積層フィルム/延伸ナイロンフィルム(15μm)/未延伸ポリプロピレンフィルム(70μm)の積層サンプルを作製した。なお、ガスバリア積層フィルム/延伸ナイロンフィルム(15μm)の接着面は、前記複合被膜層の形成した面である。
<評価>
上記積層サンプルのバリア積層フィルムと延伸ナイロンフィルムとの間のラミネート強度を、オリエンテック社テンシロン万能試験機RTC−1250を用いて測定した(JIS Z1707準拠)。剥離角度は180度とした。ただし、測定前に試料をプレッシャークッカーテスト(105℃100%)の高温高湿環境下に60時間放置した後に剥離強度を測定した。結果を表1に示す。評価基準として剥離強度が1N/15mm以上を示した場合を適として○とし,1N/15mm未満を示した場合を不適として×とした。
Figure 2010036350
したがって、測定温度50℃の対数減衰率が0.04以上0.06以下、測定温度80℃の対数減衰率が0.08以上0.11以下、測定温度120℃の対数減衰率が0.07以上0.15以下、測定温度150℃の対数減衰率が0.09以上0.12以下に調整した以外の比較例1、2の剥離強度が低いことが示された。
以上のように本発明のガスバリア積層体は、PETフィルムと無機酸化物層との密着性が高く高温高湿環境下でもPETフィルムと無機酸化物層との密着性が劣化しないガスバリア積層体を提供することができる。
本発明のガスバリア積層体の断面図である。 剛体振り子型物性試験器により測定した測定温度に対する対数減衰率の関係を示す図である。 プレーナ型プラズマ処理を行った場合の概略図である。 ホロアノード・プラズマ処理器の概略図である。
符号の説明
1 PETフィルム
2 無機酸化物層
3 RIEによる前処理層
4 物質の構造が運動しないため対数減衰率が変化しない領域
5 物質の構造が運動する温度になったため対数減衰率が大きくなる領域
6 物質の構造が全て運動状態になり対数減衰率が低下する領域
7 物質の構造の運動状態の変化点
8 物資の構造が最低粘性まで低下し対数減衰率が平衡になる領域
9 電極
10 プラズマ
11 処理ロール
12 PETフィルム
13 ガス導入口
14 マッチングボックス
15 遮蔽板

Claims (8)

  1. ポリエチレンテレフタレートフィルムの少なくとも一方の面に無機酸化物層を積層するガスバリア積層体であって、該ポリエチレンテレフタレートフィルムの少なくとも該無機酸化物層を設ける面に、プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)処理が施されており、該処理表面を剛体振り子型物性試験器により測定(測定条件:パイプエッジ:直径2mm、フレーム重さ14g)した場合、測定温度が50℃における対数減衰率が0.04以上0.06以下の範囲内であることを特徴とするガスバリア積層体。
  2. 前記処理表面を剛体振り子型物性試験器により測定(測定条件:パイプエッジ:直径2mm、フレーム重さ14g)した場合、測定温度が80℃における対数減衰率が0.08以上0.11以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア積層体。
  3. 前記処理表面を剛体振り子型物性試験器により測定(測定条件:パイプエッジ:直径2mm、フレーム重さ14g)した場合、測定温度が120℃における対数減衰率が0.07以上0.15以下の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア積層体。
  4. 前記処理表面を剛体振り子型物性試験器により測定(測定条件:パイプエッジ:直径2mm、フレーム重さ14g)した場合、測定温度が150℃における対数減衰率が0.09以上0.12以下の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア積層体。
  5. 前記RIE処理が、直接電圧が印加される陰極側(冷却ドラム側)に基材を設置したプレーナ型のプラズマ処理、または、ホロアノード・プラズマ処理器を用いた特殊プラズマによる処理であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア積層体。
  6. 前記RIE処理が、アルゴン、窒素、酸素、水素のうちの1種類のガス、または、これらの混合ガスを用いて1回以上行われる処理であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア積層体。
  7. 前記無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、あるいは、それらの混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア積層体。
  8. 前記RIE処理と前記無機酸化物層の積層が、同一製膜機(インライン製膜機)にて行われることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア積層体。
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