JP2010031916A - 締結ボルトを使用した複数部材の締結構造 - Google Patents

締結ボルトを使用した複数部材の締結構造 Download PDF

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Abstract

【課題】複数の部材同士を締結ボルトによって一体的に締結する構造に関し、締結ボルトの遅れ破壊を効果的に回避することが可能な複数部材の締結構造を提供する。
【解決手段】コンロッド本体3のキャップ当接面35に形成したOリング溝36に第1Oリング37を嵌め込むと共に、キャップ4のボルト当接面43におけるボルト挿通孔42の開放端部の内周縁に形成した面取り部44に第2Oリング45を配設する。コンロッドボルト5によってコンロッド本体3とキャップ4とを締結した状態では、各Oリング37,45のシール機能により、ボルト挿通孔32,42への酸性水溶液の浸入が阻止されコンロッドボルト5の遅れ破壊が回避できる。
【選択図】図2

Description

本発明は、内燃機関のコネクティングロッドのロッド本体とキャップとを締結ボルトによって締結する構造に代表されるような、複数の部材同士を締結ボルトによって締結する構造に係る。特に、高強度ボルトを使用した締結構造の改良に関する。
従来より、自動車用エンジン等に適用されるコネクティングロッド(以下、コンロッドと呼ぶ場合もある)は、小端部と大端部とを備えている。小端部は、ピストンピンを介してピストンに連結されている。一方、大端部は、コンロッド本体にキャップが一体的に組み付けられた構成となっており、これらコンロッド本体とキャップとの間でクランクシャフトのクランクピンを相対回転自在に支持している。具体的には、コンロッド本体に形成されたボルト孔とキャップに形成されたボルト孔とが位置合わせされた状態で、これらコンロッド本体とキャップとが重ね合わされ、各ボルト孔に亘ってコンロッドボルトが挿通されて、コンロッド本体とキャップとが一体的に組み付けられている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
ところで、上記コネクティングロッドが配設される空間であるエンジンのクランクケース内にあっては、エンジン運転時に水蒸気が存在しているが、エンジンの冷間時には、この水蒸気が凝縮して凝縮水となる。また、クランクケース内には、ブローバイガスや未燃ガスも存在しているため、これらガスが上記凝縮水に溶け込むことにより、この凝縮水は酸性水溶液となる。
そして、このような酸性水溶液が、上記コンロッド本体およびキャップにそれぞれ形成されているボルト孔に流れ込んで、コンロッドボルトの軸部に接触した場合には、このコンロッドボルトに水素脆性による遅れ破壊現象(外部から浸入した水素がボルト内部に拡散してボルトが脆化する現象)が発生してしまう可能性がある。つまり、上記水溶液中に含まれる水素成分が原因でコンロッドボルトの強度が低下してしまう可能性がある。
下記の特許文献2には、コネクティングロッドに形成された座面(コンロッドボルトの頭部が当接する座面)に、オイル貯留空間を形成しておくことが開示されている。これにより、この貯留空間にエンジンオイルを貯留しておくことで、コンロッドボルトをオイルによって被覆して、酸化や腐食の因子がコンロッドボルトに接触しないようにしている。
特開2006−125595号公報 特開2005−221071号公報
しかしながら、特許文献2の構成にあっては、オイル貯留空間にエンジンオイルのみを流れ込ませることができる保証はない。つまり、コンロッドボルトがオイルによって確実に被覆される保証はなく、上記オイル貯留空間に、上記酸性水溶液が入り込んでしまう可能性が残る。このようにオイル貯留空間に酸性水溶液が入り込んだ場合、ボルト孔内へ酸性水溶液が流入しやすい状況となる。つまり、上記オイル貯留空間を形成したことがコンロッドボルトの遅れ破壊現象を助長させてしまうことになる。
このように、これまで、コンロッドボルトの遅れ破壊現象を確実に阻止できる構成について有効な対策は提案されていなかった。
特に、上記遅れ破壊は、強度が13T以上の高強度ボルトに発生し、この遅れ破壊を回避するためには強度の低いボルトを使用せねばならなかった。しかし、これでは、コンロッド本体とキャップとの締結力を十分に確保するために大型のコンロッドボルトが必要になり、その結果、コネクティングロッドの大型化を招いてしまい、これがエンジンの小型化を阻害する要因の一つとなっていた。
尚、上述したボルトの遅れ破壊に関する課題は、エンジンのコネクティングロッドに限られるものではなく、締結ボルトによって複数の部材同士を締結する様々な構造においても同様に生じる可能性がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の部材同士を締結ボルトによって一体的に締結する構造に関し、締結ボルトの遅れ破壊を効果的に回避することが可能な複数部材の締結構造を提供することにある。
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、複数の被締結部材それぞれに形成されたボルト挿通孔へ液体(特に、遅れ破壊の原因となる酸性水溶液)が流れ込むことを阻止するためのシール手段を、複数の被締結部材それぞれの当接面同士の間や、締結ボルトと被締結部材との間に適用する。これにより、ボルト挿通孔の内部への液体浸入を防止して、締結ボルトとして強度が13T以上の高強度ボルトを使用した場合であっても、この締結ボルトの遅れ破壊を回避できるようにしている。
−解決手段−
具体的に、本発明は、ボルト挿通孔がそれぞれ形成された複数の被締結部材が、各ボルト挿通孔同士が位置合わせされた状態で互いに重ね合わされ、且つ各ボルト挿通孔に亘って締結ボルトが挿通されることにより一体的に締結されて成る複数部材の締結構造を前提とする。この複数部材の締結構造に対し、先ず、上記締結ボルトを、強度が13T以上の高強度ボルトとする。そして、上記複数の被締結部材同士が互いに重ね合わされる合わせ面、および、複数の被締結部材のうち締結ボルトの頭部が当接する被締結部材における締結ボルトとの当接面のうちの少なくとも一方に、上記ボルト挿通孔への液体浸入を阻止するためのシール手段を設けている。
この特定事項により、水素脆性などの遅れ破壊が懸念される高強度ボルト(強度が13T(1300N/mm2)以上の締結ボルト)によって複数の被締結部材を締結する構造に対し、複数の被締結部材同士が互いに重ね合わされる合わせ面や、被締結部材における締結ボルトとの当接面にシール手段を適用して、ボルト挿通孔内部への液体(酸性水溶液)の浸入を阻止することができる。このため、遅れ破壊の発生原因となる液体が締結ボルトの軸部に接触することは効果的に阻止され、締結ボルトの遅れ破壊を回避することが可能になる。
上記シール手段の構成として具体的には、Oリングを使用するものや液体ガスケットを使用するものが挙げられる。
先ず、複数の被締結部材同士が互いに重ね合わされる合わせ面に適用されるシール手段としてOリングを使用する場合の構成としては、上記複数の被締結部材同士が互いに重ね合わされるそれぞれの合わせ面のうちの一方の面に形成され且つボルト挿通孔の外周を囲むように形成されたOリング溝と、このOリング溝に嵌め込まれたOリングとによりシール手段を構成している。これにより、複数の被締結部材同士が互いに重ね合わされる合わせ面同士の間(隙間)からボルト挿通孔への液体浸入が阻止され、この液体浸入に起因する締結ボルトの遅れ破壊が回避できる。
また、締結ボルトの頭部が当接する被締結部材と締結ボルトとの間に適用されるシール手段としてOリングを使用する場合の構成としては、上記締結ボルトの頭部が当接する被締結部材のボルト当接面におけるボルト挿通孔の開放端部の内周縁に形成された面取り部と、この面取り部に配設され、且つ上記被締結部材のボルト当接面にボルトの頭部を当接させることで、これら被締結部材とボルトの頭部との間に介在されるOリングとによりシール手段を構成している。これにより、締結ボルトの頭部が当接する被締結部材のボルト当接面と締結ボルトの頭部との間(隙間)からボルト挿通孔への液体浸入が阻止され、この液体浸入に起因する締結ボルトの遅れ破壊が回避できる。
一方、複数の被締結部材同士が互いに重ね合わされる合わせ面に適用されるシール手段として液体ガスケットを使用する場合の構成としては、上記複数の被締結部材同士が互いに重ね合わされる合わせ面同士の間においてボルト挿通孔の外周を囲むように配設された液体ガスケットによりシール手段を構成している。この場合にも、複数の被締結部材同士が互いに重ね合わされる合わせ面同士の間(隙間)からボルト挿通孔への液体浸入が阻止され、この液体浸入に起因する締結ボルトの遅れ破壊が回避できる。また、被締結部材に液体ガスケットを塗布しておき、被締結部材同士を重ね合わせるのみでシール機能を発揮させることができ、シール手段を設けるための作業が簡素化できる。
この場合、上記複数の被締結部材同士が互いに重ね合わされる合わせ面のうちの少なくとも一方の面における上記液体ガスケットの配設領域の外周側に、液体ガスケット流出防止用の凹陥部を形成しておくことが好ましい。これにより、余剰の液体ガスケットを凹陥部に流れ込ませることで、被締結部材の外面から液体ガスケットが流れ出すことを防止できる。
また、締結ボルトの頭部が当接する被締結部材と締結ボルトとの間に適用されるシール手段として液体ガスケットを使用する場合の構成としては、上記締結ボルトの頭部が当接する被締結部材に形成されているボルト挿通孔の内周面と、この内周面に対向する締結ボルトの外周面との間に介在された液体ガスケットによりシール手段を構成している。この場合にも、締結ボルトの頭部が当接する被締結部材のボルト当接面と締結ボルトの頭部との間(隙間)からボルト挿通孔への液体浸入が阻止され、この液体浸入に起因する締結ボルトの遅れ破壊が回避できる。また、ボルト挿通孔の内周面または締結ボルトの外周面に液体ガスケットを塗布しておき、ボルト挿通孔に締結ボルトを挿通させるのみでシール機能を発揮させることができ、シール手段を設けるための作業が簡素化できる。
この場合、上記締結ボルトの頭部が当接する被締結部材のボルト当接面におけるボルト挿通孔の開放端部の内周縁に、液体ガスケット流出防止用の面取り部を形成しておくことが好ましい。これにより、締結ボルトによって各被締結部材同士を一体的に締結した状態では、被締結部材に形成されている面取り部と締結ボルトの頭部との間に空間が形成され、余剰の液体ガスケットを、この空間に流れ込ませることで、被締結部材と締結ボルトの頭部との間から液体ガスケットが流れ出すことを防止できる。
上述した各解決手段の適用形態として具体的には、締結される複数の被締結部材を、自動車用エンジンに適用されるコネクティングロッドを構成するコンロッド本体およびキャップとし、これらに形成されているボルト挿通孔に締結ボルトとしてのコンロッドボルトを挿通して、コンロッド本体とキャップとを一体的に締結させる構成が挙げられる。
特に、上記コネクティングロッドは、エンジンのクランクケース内に存在する酸性水溶液が原因となってコンロッドボルトに遅れ破壊が生じる懸念の高いものであったが、このコネクティングロッドに上述したようなシール手段を設けることで、ボルト挿通孔内部への酸性水溶液の浸入を効果的に阻止することが可能になる。このため、コンロッドボルトの遅れ破壊を回避することができ、コネクティングロッドの信頼性の向上を図ることができる。
本発明では、複数の被締結部材それぞれに形成されたボルト挿通孔へ液体が流れ込むことを阻止するためのシール手段を設けている。これにより、ボルト挿通孔の内部への液体浸入を防止して、締結ボルトとして強度が13T以上の高強度ボルトを使用した場合であっても、この締結ボルトの遅れ破壊を回避できる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、本発明に係る締結構造を、自動車用エンジンのコネクティングロッドを構成するコンロッド本体とキャップとをコンロッドボルトによって締結する構造に適用した場合について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係るコネクティングロッド1を示す側面図である(ピストン2およびシリンダボアCBをそれぞれ仮想線で示している)。また、図2はコネクティングロッド1の大端部12を構成するコンロッド本体3とキャップ4との締結部分を拡大して示す断面図である。
−コネクティングロッド1の構成−
図1に示すように、コネクティングロッド1は、略棒状に形成されたコンロッド本体3と、このコンロッド本体3にコンロッドボルト(締結ボルト)5,5によって組み付けられたキャップ4とを備えた構成となっている。つまり、これらコンロッド本体3およびキャップ4が被締結部材となっている。
上記コンロッド本体3の一端部(図1では上端部)は、ピストンピン6によって上記ピストン2が連結される小端部11として形成されている。
一方、コンロッド本体3の他端部(図1では下端部)は、上記コンロッドボルト5,5によってキャップ4が取り付けられることにより大端部12を構成している。この大端部12にあっては、上記コンロッド本体3とキャップ4との対向面31,41がそれぞれ半円弧状(半円筒形状)に形成され(以下、これら各面を円弧面31,41と呼ぶ)、このコンロッド本体3とキャップ4とが一体的に組み付けられることで、これら円弧面31,41で略円柱形状の空間が形成されている。この空間の内径寸法はクランクピン7の外径寸法に略一致しており、この空間内にクランクピン7が相対回転自在に支持されている。尚、この大端部12の内周面(上記円弧面31,41)とクランクピン7の外周面との間には、この両者間の摺動抵抗を低減するための軸受けメタル(図示省略)が介在されている。
図2に示すように、上記大端部12を構成しているコンロッド本体3の下端部分およびキャップ4にはそれぞれボルト挿通孔32,42が形成されている。
具体的に、コンロッド本体3の下端部分(キャップ4が取り付けられる側)には、幅寸法(図1および図2における左右方向の寸法)がキャップ4側に向かって次第に大きくなるように形成された肩部33が形成されており、これら肩部33には、コンロッド本体3の延長方向に沿う方向(図1に示す状態では上下方向)に延びるボルト挿通孔32がそれぞれ貫通形成されている。このコンロッド本体3に形成されているボルト挿通孔32は、その軸心方向の上側半分(小端部11側の半分)に雌ネジ34が形成されており、その他の内周面には雌ネジが形成されない円筒形状の面となっている。
一方、キャップ4には、上記コンロッド本体3に形成されているボルト挿通孔32の形成位置に対応する位置(このキャップ4がコンロッド本体3に組み付けられた際に対応する位置)に、同様のボルト挿通孔42が貫通形成されている。このキャップ4に形成されているボルト挿通孔42の内周面は、その全体が、雌ネジが形成されない円筒形状の面となっており、その内径寸法は上記コンロッド本体3に形成されているボルト挿通孔32の内径寸法に略一致している。
上述した如くコンロッド本体3の上記円弧面31とキャップ4の円弧面41との間にクランクピン7を位置させた状態で、コンロッド本体3に形成されたボルト挿通孔32とキャップ4に形成されたボルト挿通孔42とを位置合わせして、これらコンロッド本体3とキャップ4とが重ね合わされ、各ボルト挿通孔42,32に亘ってコンロッドボルト5が挿通される。そして、このコンロッドボルト5の先端に形成された雄ネジ部53が、コンロッド本体3のボルト挿通孔32に形成されている雌ネジ34にねじ込まれることにより、コンロッド本体3とキャップ4とが一体的に組み付けられた構成となっている。
ここで、上記コンロッドボルト5について説明する。このコンロッドボルト5は、軸部51および頭部52を備えている。軸部51は、その軸線方向の略中央部分が、上記ボルト挿通孔32,42の内径寸法よりも僅かに小径に設定されている。また、コンロッドボルト5の先端部分には、上記コンロッド本体3のボルト挿通孔32に形成されている雌ネジ34にねじ込み可能な上記雄ネジ部53が形成されている。更に、コンロッドボルト5の基端部54は、外径寸法が上記キャップ4のボルト挿通孔42の内径寸法に略一致している。
そして、このコンロッドボルト5の構成材料としては、例えば機械構造用炭素鋼やクロムモリブデン鋼や低炭素ボロン鋼などが使用されており、その強度としては13T(1300N/mm2)以上のものが使用されている。つまり、このコンロッドボルト5は高強度ボルトで構成されている。具体的に、本実施形態では、強度が13Tの高強度ボルトが適用されている。
−締結部分の構成−
次に、上記コンロッド本体3とキャップ4との締結部分の特徴とする構成について説明する。
図3は、コネクティングロッド1の大端部12を構成するコンロッド本体3とキャップ4との締結部分を分解した断面図である。つまり、コンロッドボルト5によってコンロッド本体3とキャップ4とが締結される前の状態である。
図2および図3に示すように、コンロッド本体3の下面であって上記キャップ4が当接するキャップ当接面(合わせ面)35には、Oリング溝36が形成されている。このOリング溝36は、上記ボルト挿通孔32の外周側を囲むように形成された環状の凹陥部で形成されている。そして、このOリング溝36の内部には第1Oリング37が装着されている。
一方、キャップ4の下面であって上記コンロッドボルト5の頭部52が当接するボルト当接面(座面)43において、上記ボルト挿通孔42の開放端部の内周縁には、その全周囲に亘って面取り部44が形成されている。この面取り部44は、上記ボルト当接面43とボルト挿通孔42との稜線部を切削加工することにより形成され、これらボルト当接面43およびボルト挿通孔42の内面に対して約45°の傾斜角度をもって形成された傾斜面で形成されている。この傾斜角度はこれに限定されるものではない。そして、この面取り部44には第2Oリング45が配設されている。この第2Oリング45は、その内側空間の内径寸法が、上記ボルト挿通孔42の内径寸法に等しいか若しくは僅かに小さく設定されている。また、この第2Oリング45が面取り部44に配設され、外力が作用していない(コンロッドボルト5の頭部52が当接していない)状態では、この第2Oリング45の外面(図3における下端面)が、上記ボルト当接面43と同一面上に位置するか、若しくはこのボルト当接面43よりも僅かに外側(図3における下側)に突出するようになっている。
このようにして各部にOリング37,45が配設された状態で、コンロッド本体3のキャップ当接面(下面)35にキャップ4の上面46を重ね合わせ、このように重ね合わされることで互いに連通状態となった各ボルト挿通孔32,42に亘って、キャップ4側(下側)からコンロッドボルト5を挿通する。そして、このコンロッドボルト5の先端部分に形成されている雄ネジ部53を、コンロッド本体3のボルト挿通孔32に形成されている雌ネジ34にねじ込むことにより、コンロッド本体3とキャップ4とが一体的に組み付けられる(図2参照)。この際、コンロッドボルト5の頭部52はキャップ4のボルト当接面(下面)43に当接する。
これにより、第1Oリング37は、コンロッド本体3とキャップ4との間(各面35,46の間)をシールし、この両者3,4間の隙間からボルト挿通孔32,42への液体(クランクケース内に存在する酸性水溶液)の浸入を阻止する機能を発揮する。
一方、第2Oリング45はキャップ4に形成されている面取り部44とコンロッドボルト5の頭部52との間をシールし、キャップ4とコンロッドボルト5の頭部52と間の隙間からボルト挿通孔32,42への液体の浸入を阻止する機能を発揮する。
つまり、上記Oリング溝36、面取り部44、各Oリング37,45によってシール手段が構成されている。
以上のように、コンロッド本体3とキャップ4との間からボルト挿通孔32,42への液体の浸入は第1Oリング37によって防止され、キャップ4とコンロッドボルト5の頭部52との間からボルト挿通孔32,42への液体の浸入は第2Oリング45によって防止される。このため、クランクケース内に存在する酸性水溶液が、ボルト挿通孔32,42へ浸入してコンロッドボルト5の軸部51に接触してコンロッドボルト5に遅れ破壊を発生させるといったことが効果的に阻止されることになる。その結果、コンロッドボルト5の強度低下を防止することができ、コネクティングロッド1の信頼性を継続的に十分に確保することができる。また、コンロッドボルト5は、強度が13T以上である高強度ボルトで構成されているため、比較的小型のコンロッドボルト5であっても、コンロッド本体3とキャップ4との締結力を十分に確保することができる。その結果、コネクティングロッド1の小型化が可能になり、コネクティングロッド1の小型化に伴ってエンジン全体の小型化を図ることも可能になる。即ち、本実施形態によれば強度が13T以上である高強度ボルトを使用することによるコンロッド本体3とキャップ4との締結力の十分な確保と、高強度ボルトにおいて従来より懸念されていたコンロッドボルト5の遅れ破壊の発生の防止とを両立することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、Oリング37,45を使用してシール手段を構成していた。本実施形態は、それに代えて、液体ガスケットを使用してシール手段を構成するものである。本実施形態に係るコネクティングロッド1におけるシール手段以外の構成は、上記第1実施形態のものと同一であるので、ここではシール手段の構成についてのみ説明する。
図4はコネクティングロッド1の大端部12を構成するコンロッド本体3とキャップ4との締結部分を拡大して示す断面図である。また、図5は、コネクティングロッド1の大端部12を構成するコンロッド本体3とキャップ4との締結部分の分解図である。つまり、コンロッドボルト5によってコンロッド本体3とキャップ4とが締結される前の状態である。
図4および図5に示すように、コンロッド本体3の下面であるキャップ当接面35には、断面が略半円形状の凹陥部38が形成されている。この凹陥部38は、上記ボルト挿通孔32の外周側を囲むように形成された環状の凹陥部で形成されている。
一方、キャップ4の下面であって上記コンロッドボルト5の頭部52が当接するボルト当接面(座面)43において、上記ボルト挿通孔42の開放端部の内周縁には、その全周囲に亘って面取り部47が形成されている。この面取り部47は、上記ボルト当接面43とボルト挿通孔42との稜線部を切削加工することにより形成され、これらボルト当接面43およびボルト挿通孔42の内面に対して45°の傾斜角度をもって形成された傾斜面で形成されている。この傾斜角度はこれに限定されるものではない。
このようにしてコンロッド本体3のキャップ当接面35に凹陥部38が、キャップ4におけるボルト挿通孔42の開放端部の内周縁に面取り部47がそれぞれ形成された状態で、上記キャップ当接面35およびボルト挿通孔42の内面にはそれぞれ液体ガスケット39,49が塗布されている。この液体ガスケット39,49としては、FIPG(Formed In Place Gasket)と呼ばれる液状シール材が採用されている。
具体的に、図5に示すように、コンロッド本体3のキャップ当接面35に塗布される液体ガスケット39の塗布領域は、上記凹陥部38の形成位置よりも内周側(ボルト挿通孔32側)であって、環状に塗布されている。この環状の塗布領域の内周端位置はボルト挿通孔32の開口縁に略一致する位置となっている。一方、この塗布領域の外周端位置は凹陥部38の形成位置よりも僅かに内周側(ボルト挿通孔32側)となっている。つまり、この領域に塗布されている液体ガスケット39の外側端は凹陥部38には達していない。
また、ボルト挿通孔42の内面に塗布される液体ガスケット49の塗布領域は、下端位置が上記面取り部47の上端位置に一致している。つまり、この面取り部47とボルト挿通孔42の内面との稜線位置に一致している。また、この液体ガスケット49の塗布領域の上端位置は、ボルト挿通孔42にコンロッドボルト5が挿通された状態(図4に示す状態)においてコンロッドボルト5の基端部54の上端位置に対応する位置よりも下側位置に設定されている。つまり、この液体ガスケット49の塗布領域の高さ寸法は、コンロッドボルト5の基端部54の高さ寸法よりも短く設定されている。
このようにして各領域に液体ガスケット39,49を塗布した状態で、コンロッド本体3のキャップ当接面(下面)35にキャップ4の上面46を重ね合わせ、このように重ね合わされることで互いに連通状態となった各ボルト挿通孔32,42に亘って、キャップ4側(下側)からコンロッドボルト5を挿通する。そして、このコンロッドボルト5の先端部分に形成されている雄ネジ部53を、コンロッド本体3のボルト挿通孔32に形成されている雌ネジ34にねじ込むことにより、コンロッド本体3とキャップ4とが一体的に組み付けられる。この際、コンロッドボルト5の頭部52はキャップ4のボルト当接面(下面)43に当接する。
これにより、コンロッド本体3のキャップ当接面35に塗布されていた液体ガスケット39は、このキャップ当接面35とキャップ4の上面46との間で発生する挟持力によって、この両面の間を外周側に広がり、比較的広い範囲に伸展していくことになる。また、この伸展していく液体ガスケット39が上記凹陥部38に達した場合には、この凹陥部38の内部に液体ガスケット39が流れ込み、この凹陥部38の形成位置よりも外周側には液体ガスケット39が流れ出さないようになっている。つまり、余剰の液体ガスケット39がこの凹陥部38によって回収され、コンロッド本体3とキャップ4との間から外部へ流れ出す(漏れ出す)ことを回避している。即ち、この凹陥部38が液体ガスケット39の漏れ防止機能を備えている。
このようにして、コンロッド本体3とキャップ4との間(各面35,46の間)に液体ガスケット39を存在させることで、この両者3,4間からボルト挿通孔32,42への液体(クランクケース内に存在する酸性水溶液)の浸入を阻止する機能が発揮される。
一方、ボルト挿通孔42の内面に塗布されていた液体ガスケット49は、このボルト挿通孔42の内面とコンロッドボルト5の基端部54との間で発生する挟持力によって、この両面の間を軸心方向上側に広がり、比較的広い範囲に伸展していくことになる。また、余剰の液体ガスケット49は、上記面取り部47とコンロッドボルト5との間で形成される空間S1や、小径に形成されているコンロッドボルト5の中央部の外周面とボルト挿通孔42の内面との間に形成されている空間S2に流れ込み、これら空間で回収され、キャップ4とコンロッドボルト5との間から外部へ流れ出す(漏れ出す)ことを回避している。
このようにして、キャップ4とコンロッドボルト5との間にも液体ガスケット49を存在させることで、この両者4,5間からボルト挿通孔32,42への液体(クランクケース内に存在する酸性水溶液)の浸入を阻止する機能が発揮される。
以上のように、本実施形態においても、クランクケース内に存在する酸性水溶液が、ボルト挿通孔32,42へ浸入してコンロッドボルト5の軸部51に接触し、コンロッドボルト5に遅れ破壊を発生させるといったことが効果的に阻止される。その結果、コンロッドボルト5の強度低下を防止することができ、コネクティングロッド1の信頼性を十分に確保することができる。また、コンロッドボルト5は、強度が13T以上である高強度ボルトで構成されているため、比較的小型のコンロッドボルト5であっても、コンロッド本体3とキャップ4との締結力を十分に確保することができる。その結果、コネクティングロッド1の小型化が可能になり、コネクティングロッド1の小型化に伴ってエンジン全体の小型化を図ることも可能になる。
(参考例1)
次に、参考例1について説明する。この参考例1も、コネクティングロッド1におけるシール手段以外の構成は、上記第1実施形態のものと同一であるので、ここでもシール手段の構成についてのみ説明する。
図6は本参考例1に係るコンロッドボルト5を示す側面図である。また、図7は、このコンロッドボルト5によってコンロッド本体3とキャップ4とを締結した状態を示す大端部12の断面図である。
図6に示すように、本例におけるコンロッドボルト5の外周面には撥水性の樹脂コーティング8が施されている。この樹脂コーティング8の領域としては、上記雄ネジ部53の下端部分から基端部54に亘る領域となっている。この樹脂コーティング8の材料としては、例えばフッ素など種々の撥水性樹脂が適用可能である。また、この樹脂コーティング8のコーティング厚さとしては例えば0.5mmに設定されている。この値はこれに限定されるものではない。
このようにして樹脂コーティング8により被覆されたコンロッドボルト5を利用して、上述した各実施形態の場合と同様の作業により、コンロッド本体3とキャップ4とを一体的に組み付ける(図7参照)。この場合、コンロッド本体3のボルト挿通孔32に形成されている雌ネジ34にコンロッドボルト5の雄ネジ部53をねじ込む際、この雌ネジ34と雄ネジ部53との間、具体的には雌ネジ34の下端部分と雄ネジ部53の下端部分との間に、樹脂コーティング8を構成していた樹脂材料が充填される状態となり、ボルト挿通孔32とコンロッドボルト5との間がシールされることになる。また、樹脂コーティング8はコンロッドボルト5の基端部54にも設けられているため、ボルト挿通孔42とコンロッドボルト5の基端部54との間に樹脂材料が介在される状態となって、ボルト挿通孔42とコンロッドボルト5との間がシールされることになる。
このようにして、コンロッド本体3のボルト挿通孔32とコンロッドボルト5との間、キャップ4のボルト挿通孔42とコンロッドボルト5との間がそれぞれ撥水性樹脂材料によってシールされるため、ボルト挿通孔32,42への液体(クランクケース内に存在する酸性水溶液)の浸入を阻止する機能が発揮されることになる。このように、本参考例1においても、上述した実施形態の場合と同様の効果を発揮することができる。
(参考例2)
次に、参考例2について説明する。この参考例2は、上記参考例1における樹脂コーティング8に代えて、同領域に炭酸カルシウムをコーティングしたものである。例えば炭酸カルシウムを含有したコーティング材料(樹脂材料など)を、コンロッドボルト5に塗布した構成となっている。
このように炭酸カルシウムをコーティングしたコンロッドボルト5によってコンロッド本体3とキャップ4とを締結した場合、仮に、ボルト挿通孔32,42へ酸性水溶液が浸入したとしても、炭酸カルシウムと酸性水溶液との間で中和反応が行われ、酸性水溶液が原因でコンロッドボルト5に遅れ破壊を発生するといった状況が回避できる。つまり、コンロッド本体3とキャップ4との間、コンロッド本体3とコンロッドボルト5との間、キャップ4とコンロッドボルト5との間にシール手段を備えさせることなしに、コンロッドボルト5の遅れ破壊を回避することができる。
また、本参考例2と同様の効果を得るための構成としては、炭酸カルシウムのコーティングに限らず、酸性水溶液との間で中和反応が可能なアルカリ性を有する材料のコーティングであればよい。
(参考例3)
次に、参考例3について説明する。この参考例3は、上記参考例1における樹脂コーティング8に代えて、同領域に膨潤ゴムをコーティングしたものである。
この構成によっても、上記参考例1の場合と同様に、コンロッド本体3のボルト挿通孔32とコンロッドボルト5との間、キャップ4のボルト挿通孔42とコンロッドボルト5との間がそれぞれ膨潤ゴムによってシールされることになり、ボルト挿通孔32,42への液体(クランクケース内に存在する酸性水溶液)の浸入を阻止する機能が発揮されることになる。このように、本参考例3においても、上述した実施形態の場合と同様の効果を発揮することができる。
尚、上記膨潤ゴムに、予めオイルを含浸させておけば、このオイルによって撥水性を得ることができるので、更に効果的な遅れ破壊防止機能を発揮させることができる。
−他の実施形態−
以上説明した各実施形態および各参考例は、自動車用エンジンのコネクティングロッド1を構成するコンロッド本体3とキャップ4とをコンロッドボルト5によって締結する構造に適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、その他の被締結部材同士の締結構造に対しても適用可能である。また、3個以上の被締結部材同士を互いに締結させる構成に対しても適用可能である。
また、上記各実施形態および各参考例では、被締結部材であるコンロッド本体3に雌ネジ34を形成しておき、この雌ネジ34にコンロッドボルト5の雄ネジ部53をねじ込む構成としていた。本発明はこれに限らず、ナットを利用し、コンロッドボルト5の雄ネジ部53をコンロッド本体3から突出させ、この突出部分をナットにねじ込むことでコンロッド本体3とキャップ4とを締結する構造に対しても適用可能である。
また、上記各実施形態では、Oリング37,45および液体ガスケット39,49をそれぞれ2箇所に設ける構成としたが、これらのうち1箇所のみに設ける構成も本発明の技術的思想の範疇である。
実施形態に係るコネクティングロッドを示す側面図である。 第1実施形態におけるコンロッド本体とキャップとの締結部分を拡大して示す断面図である。 第1実施形態におけるコンロッド本体、キャップ、コンロッドボルトの分解図である。 第2実施形態におけるコンロッド本体とキャップとの締結部分を拡大して示す断面図である。 第2実施形態におけるコンロッド本体、キャップ、コンロッドボルトの分解図である。 参考例に係るコンロッドボルトを示す側面図である。 参考例におけるコンロッド本体とキャップとの締結部分を拡大して示す断面図である。
符号の説明
1 コネクティングロッド
3 コンロッド本体(被締結部材)
32 ボルト挿通孔
35 キャップ当接面(合わせ面)
36 Oリング溝
37 第1Oリング
38 凹陥部
39 液体ガスケット
4 キャップ(被締結部材)
42 ボルト挿通孔
43 ボルト当接面
44 面取り部
45 第2Oリング
46 上面(合わせ面)
47 面取り部
49 液体ガスケット
5 コンロッドボルト(締結ボルト、高強度ボルト)
52 頭部

Claims (8)

  1. ボルト挿通孔がそれぞれ形成された複数の被締結部材が、各ボルト挿通孔同士が位置合わせされた状態で互いに重ね合わされ、且つ各ボルト挿通孔に亘って締結ボルトが挿通されることにより一体的に締結されて成る複数部材の締結構造において、
    上記締結ボルトは、強度が13T以上の高強度ボルトであって、
    上記複数の被締結部材同士が互いに重ね合わされる合わせ面、および、複数の被締結部材のうち締結ボルトの頭部が当接する被締結部材における締結ボルトとの当接面のうちの少なくとも一方には、上記ボルト挿通孔への液体浸入を阻止するためのシール手段が設けられていることを特徴とする締結ボルトを使用した複数部材の締結構造。
  2. 上記請求項1記載の締結ボルトを使用した複数部材の締結構造において、
    上記シール手段は、上記複数の被締結部材同士が互いに重ね合わされるそれぞれの合わせ面のうちの一方の面に形成され且つボルト挿通孔の外周を囲むように形成されたOリング溝と、このOリング溝に嵌め込まれたOリングとにより構成されていることを特徴とする締結ボルトを使用した複数部材の締結構造。
  3. 上記請求項1または2記載の締結ボルトを使用した複数部材の締結構造において、
    上記シール手段は、上記締結ボルトの頭部が当接する被締結部材のボルト当接面におけるボルト挿通孔の開放端部の内周縁に形成された面取り部と、この面取り部に配設され、且つ上記被締結部材のボルト当接面にボルトの頭部を当接させることで、これら被締結部材とボルトの頭部との間に介在されるOリングとにより構成されていることを特徴とする締結ボルトを使用した複数部材の締結構造。
  4. 上記請求項1、2または3記載の締結ボルトを使用した複数部材の締結構造において、
    上記シール手段は、上記複数の被締結部材同士が互いに重ね合わされる合わせ面同士の間においてボルト挿通孔の外周を囲むように配設された液体ガスケットであることを特徴とする締結ボルトを使用した複数部材の締結構造。
  5. 上記請求項4記載の締結ボルトを使用した複数部材の締結構造において、
    上記複数の被締結部材同士が互いに重ね合わされる合わせ面のうちの少なくとも一方の面における上記液体ガスケットの配設領域の外周側には、液体ガスケット流出防止用の凹陥部が形成されていることを特徴とする締結ボルトを使用した複数部材の締結構造。
  6. 上記請求項1〜5のうち何れか一つに記載の締結ボルトを使用した複数部材の締結構造において、
    上記シール手段は、上記締結ボルトの頭部が当接する被締結部材に形成されているボルト挿通孔の内周面と、この内周面に対向する締結ボルトの外周面との間に介在された液体ガスケットであることを特徴とする締結ボルトを使用した複数部材の締結構造。
  7. 上記請求項6記載の締結ボルトを使用した複数部材の締結構造において、
    上記締結ボルトの頭部が当接する被締結部材のボルト当接面におけるボルト挿通孔の開放端部の内周縁には、液体ガスケット流出防止用の面取り部が形成されていることを特徴とする締結ボルトを使用した複数部材の締結構造。
  8. 上記請求項1〜7のうち何れか一つに記載の締結ボルトを使用した複数部材の締結構造において、
    締結される複数の被締結部材は、自動車用エンジンに適用されるコネクティングロッドを構成するコンロッド本体およびキャップであって、これらに形成されているボルト挿通孔に締結ボルトとしてのコンロッドボルトが挿通されて、コンロッド本体とキャップとが一体的に締結されていることを特徴とする締結ボルトを使用した複数部材の締結構造。
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