JPH11303848A - コンロッドボルトの腐食防止方法および腐食防止構造 - Google Patents

コンロッドボルトの腐食防止方法および腐食防止構造

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JPH11303848A
JPH11303848A JP10927698A JP10927698A JPH11303848A JP H11303848 A JPH11303848 A JP H11303848A JP 10927698 A JP10927698 A JP 10927698A JP 10927698 A JP10927698 A JP 10927698A JP H11303848 A JPH11303848 A JP H11303848A
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connecting rod
cap
rod body
rod bolt
bolt
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JP10927698A
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Atsuhiko Murayama
敦彦 村山
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Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 コンロッドボルトとコンロッド本体あるいは
キャップとの間の間隙部における腐食因子によるコンロ
ッドボルトの腐食を防止する。 【解決手段】 コンロッドボルト2とコンロッド本体2
6との間に炭酸カルシウムを含有する金属清浄剤4を配
置しているため、頸部18とコンロッド本体26との間
に生じた離間部46から一度に大量の腐食因子が間隙部
42に侵入して来た場合にも、腐食因子は、間隙部42
内に配置されている十分な濃度(最初は100%)の金
属清浄剤4により迅速に中和されるので腐食を抑えて、
コンロッドボルト2の応力腐食割れを防止することがで
きる。また金属清浄剤4がエンジンオイル中に排出され
たとしてもエンジンオイルに占める割合は極めて小さ
く、また金属清浄剤4は、元来エンジンオイルに存在す
る成分であることから、エンジンオイルの性能に悪影響
を及ぼすことはない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンロッド本体と
キャップとを貫通してコンロッド本体とキャップとを一
体に結合することでコンロッド本体とキャップとの間に
内燃機関のクランクシャフトを把持するコンロッドボル
トの腐食防止方法および腐食防止構造に関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関の燃焼室内の爆発エネルギーを
ピストンからクランクシャフトに伝達する部材として、
例えば、図15に示すごとくのコンロッド(コネクティ
ングロッドの略称)500がある。このコンロッド50
0は、ピストンピンにてピストンに接続されるスモール
エンド502と、クランクシャフトと接続されるビッグ
エンド504とを備えている。
【0003】ビッグエンド504側では、コンロッド本
体506とキャップ508との間に、コンロッドベアリ
ングを介してクランクシャフトを把持することにより、
クランクシャフト側に接続される。ここでコンロッド本
体506とキャップ508との結合は、コンロッドボル
ト510をコンロッド本体506とキャップ508とを
貫通させて、ナット512にて締結することにより行っ
ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、コンロッド本
体506の貫通孔506aあるいはキャップ508の貫
通孔508aの公差上限品とコンロッドボルト頸部の公
差下限品との組み合わせにおいては、図16に示すごと
く、コンロッドボルト頸部510aとコンロッド本体5
06あるいはキャップ508との間に離間部514が生
じて、本来、密閉されているはずのコンロッドボルト5
10の外周面と貫通孔506aの内周面との間隙部51
6が外部に開放されてしまう場合がある。なお、このよ
うな離間部514は組立時には存在しなくても、内燃機
関の駆動中にコンロッド500に爆発により作用する応
力により生じることもある。
【0005】この離間部514が生じると、内燃機関の
駆動時に何らかの原因で腐食因子、例えば、塩素イオ
ン、硝酸イオンあるいは硫酸イオン等が離間部514を
通過して間隙部516へ侵入してしまうことがある。
【0006】これらの腐食因子は錆や隙間腐食などの各
種の腐食を生じさせるが、特にコンロッドボルト頸部5
10aのような大きい応力が作用している部分には応力
腐食を生じさせて応力腐食割れに至るおそれがある。
【0007】単にボルトの腐食を防止するためであれ
ば、通常のボルトの表面に防食剤を塗布する方法が知ら
れている(特開昭59−144810号公報)が、この
ような防食剤はエンジンオイルに配合することは考慮さ
れておらず、エンジンオイルに混入した場合に、エンジ
ンオイルの潤滑性等の性能に影響を与えるおそれがあ
り、内燃機関のコンロッドボルトに用いることはできな
い。
【0008】この他、コンロッドボルト以外のボルトに
おいて、Oリングや液体パッキンにてボルトと被締着体
との間を密閉して腐食を防止しようとするもの(特開平
2−142912号公報,実開昭61−40505号公
報)も提案されている。しかし、コンロッドボルトなど
のように内燃機関の駆動に伴って激しく運動する用途で
は、十分なシール性が得られず、腐食の防止は十分では
なかった。
【0009】また、コンロッドボルト以外のボルトにお
いて、ボルトと被締着体との間に溜まる水を排出する通
路を設けて、水による腐食を防止するもの(特開平6−
59068号)も提案されているが、コンロッドボルト
では水は関係なく、また、一方向が開口している通路の
ため、コンロッドボルトに適用した場合には逆に腐食因
子の滞留を招きやすいという問題も存在した。
【0010】一方、エンジンオイル中には通常、エンジ
ンオイル中の劣化物の沈積を予防・抑制する金属清浄剤
が添加されている。この金属清浄剤は通常、エンジンオ
イル中に1重量%前後含まれているが、腐食因子を中和
させる中和剤としての作用を有し、腐食因子の腐食作用
を抑制する性質を持っている。
【0011】しかし、前述した腐食因子が一度に大量に
離間部514から間隙部516へ侵入した場合には、エ
ンジンオイル内の金属清浄剤は、離間部514を介して
流動や拡散により間隙部516に入り、内部の腐食因子
を中和することになるが、このような離間部514を介
しての流動や拡散では中和に長期間かかり、その間に特
にコンロッドボルト頸部510aの応力腐食割れを生じ
させてしまうおそれがある。
【0012】エンジンオイル中の金属清浄剤の含有濃度
を大きくして、拡散や流動により運ばれる金属清浄剤の
量を大きくして、コンロッドボルト頸部510aの応力
腐食割れを生じる前に腐食因子を中和することも考えら
れる。しかし、エンジンオイル内の金属清浄剤を濃くす
ると内燃機関の摩擦係数が上昇してエンジンオイルの潤
滑油としての効果を減少させることとなり、金属清浄剤
の濃度を高めるという手法はとることができない。
【0013】本発明は、コンロッドボルトとコンロッド
本体あるいはキャップとの間の間隙部における腐食因子
によるコンロッドボルトの腐食を防止することを目的と
するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】請求項1のコンロッドボ
ルトの腐食防止方法は、コンロッド本体とキャップとを
貫通してコンロッド本体とキャップとを一体に結合する
ことでコンロッド本体とキャップとの間に内燃機関のク
ランクシャフトを把持するコンロッドボルトの腐食防止
方法であって、コンロッド本体とキャップとを一体に結
合する際に、コンロッドボルトの表面とコンロッドボル
トが貫通するコンロッド本体またはキャップの貫通孔の
内面との間に腐食因子を中和する中和剤を配置すること
を特徴とする。
【0015】本請求項1では、コンロッド本体とキャッ
プとを一体に結合する際に、コンロッドボルトの表面と
コンロッドボルトが貫通するコンロッド本体またはキャ
ップの貫通孔の内面との間に腐食因子を中和する中和剤
を配置している。このため、コンロッドをクランクシャ
フトに組み付けた時には、コンロッドボルトとコンロッ
ド本体あるいはキャップとの間の間隙部には十分な濃度
の中和剤を存在させることができる。
【0016】したがって、一度に大量の腐食因子が前記
間隙部に侵入して来たとしても、これら腐食因子を迅速
に中和することができ、コンロッドボルトの腐食を防止
することができる。なお、前記間隙部は極めて小さい容
積であり、この間隙部に存在する中和剤がエンジンオイ
ル中に排出されたとしても、エンジンオイルに占める割
合は極めて小さいことと、元来エンジンオイルに存在す
る成分であることから、エンジンオイルの性状に悪影響
を及ぼすことはない。
【0017】請求項2のコンロッドボルトの腐食防止方
法は、請求項1の構成において、コンロッド本体とキャ
ップとを一体に結合する際に、コンロッドボルトの表面
に腐食因子を中和する中和剤を塗布した後に、該コンロ
ッドボルトを用いてコンロッド本体とキャップとを貫通
してコンロッド本体とキャップとを一体に結合すること
により、コンロッドボルトの表面とコンロッドボルトが
貫通するコンロッド本体またはキャップの貫通孔の内面
との間に腐食因子を中和する中和剤を配置することを特
徴とする。
【0018】このように、コンロッドボルトの表面に腐
食因子を中和する中和剤を塗布した後に、該コンロッド
ボルトを用いてコンロッド本体とキャップとを貫通して
コンロッド本体とキャップとを一体に結合することによ
って、コンロッドボルトの表面とコンロッドボルトが貫
通するコンロッド本体またはキャップの貫通孔の内面と
の間に腐食因子を中和する中和剤を配置することができ
る。このような配置方法であれば、中和剤の配置が容易
となるので、コンロッドの組み付け作業にほとんど影響
することがなく、作業効率を悪化させることがない。
【0019】請求項3のコンロッドボルトの腐食防止方
法は、請求項1の構成において、コンロッド本体とキャ
ップとを一体に結合する際に、コンロッド本体またはキ
ャップの貫通孔の内面に腐食因子を中和する中和剤を塗
布した後に、コンロッド本体とキャップとをコンロッド
ボルトにて貫通してコンロッド本体とキャップとを一体
に結合することにより、コンロッドボルトの表面とコン
ロッドボルトが貫通するコンロッド本体またはキャップ
の貫通孔の内面との間に腐食因子を中和する中和剤を配
置することを特徴とする。
【0020】このように、コンロッド本体またはキャッ
プの貫通孔の内面に腐食因子を中和する中和剤を塗布し
た後に、コンロッド本体とキャップとを貫通してコンロ
ッド本体とキャップとを一体に結合することによって、
コンロッドボルトの表面とコンロッドボルトが貫通する
コンロッド本体またはキャップの貫通孔の内面との間に
腐食因子を中和する中和剤を配置することとしてもよ
い。このような配置方法にても、中和剤の配置が容易と
なるので、コンロッドの組み付け作業にほとんど影響す
ることがなく、作業効率を悪化させることがない。
【0021】請求項4に示したごとく、前記中和剤とし
ては、アルカリ土類金属化合物を含むものを用いること
ができる。ここでアルカリ土類金属としては、マグネシ
ウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウムが挙げら
れ、これらの化合物あるいはこれらの化合物を2つ以上
組み合わせて用いる。これらアルカリ土類金属化合物と
しては、酸化物、水酸化物、アルコキシド、炭酸塩、カ
ルボン酸塩、硫化物、水硫化物、硝酸塩、ほう酸塩、酸
性エステル塩等が挙げられ、更に具体的には、炭酸カル
シウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸マグ
ネシウム、ほう酸マグネシウム等である。
【0022】特に、請求項5に示したごとく、前記中和
剤として、炭酸カルシウムを含むものを用いた場合は、
高い応力腐食防止効果が得られる。なお、これらの中和
剤は例えば鉱油や合成油等に溶解あるいは分散させて用
いられる。
【0023】請求項6に示したごとく、前記中和剤とし
て、金属清浄剤を用いてもよい。金属清浄剤は、エンジ
ンオイル中の劣化物の沈積を予防・抑制し、酸化防止の
作用も有するものであり、元来、エンジンオイル中に含
まれているので、エンジンオイル中に漏出してもエンジ
ンオイルの性能に問題を生じるおそれはない。
【0024】ここで金属清浄剤としては、マグネシウ
ム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、リチ
ウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、亜鉛等
の金属のスルホネート、フェネート、ホスフォネート、
サリシレート等の塩が挙げられる。具体的には、例え
ば、アルキルベンゼンスルホン酸カルシウム等が挙げら
れる。
【0025】請求項7に示したごとく、前記金属清浄剤
には、更に炭酸カルシウムを含んでいてもよい。金属清
浄剤に炭酸カルシウムが添加されることにより、更に、
腐食因子を中和する効果を高めることができる。特に、
金属清浄剤中に炭酸カルシウムの全てが溶解している程
度の炭酸カルシウムの含有量ならば、この金属清浄剤が
エンジンオイル中に漏出してもエンジンオイルの性能に
問題を生じるおそれはない。
【0026】請求項8のコンロッドボルトの腐食防止方
法は、コンロッド本体とキャップとを貫通してコンロッ
ド本体とキャップとを一体に結合することでコンロッド
本体とキャップとの間に内燃機関のクランクシャフトを
把持するコンロッドボルトの腐食防止方法であって、コ
ンロッド本体とキャップとを一体に結合する際に、コン
ロッドボルトの頭部または頸部とコンロッドボルトが貫
通するコンロッド本体またはキャップとの間をシール材
にてシールしたことを特徴とする。
【0027】コンロッドボルトの頭部または頸部とコン
ロッドボルトが貫通するコンロッド本体またはキャップ
との間がシール材にてシールされることにより、コンロ
ッドボルトとコンロッド本体あるいはキャップとの間の
間隙部は、「発明が解決しようとする課題」の欄で述べ
たごとく、クランクシャフトに取り付ける際に離間部が
形成されたものであっても、この離間部をシール材が完
全に覆い、密封がなされる。更に、内燃機関の駆動中に
離間部が形成されてもシール材の弾性変形により、コン
ロッドボルトとコンロッド本体あるいはキャップとの間
のシールを維持することができる。このことにより外部
から前記間隙部に腐食因子が侵入することがない。
【0028】請求項9のコンロッドボルトの腐食防止方
法は、請求項8の構成において、コンロッド本体とキャ
ップとを一体に結合する際に、コンロッドボルトの頭部
または頸部にシール材を塗布した後に、該コンロッドボ
ルトを用いてコンロッド本体とキャップとを貫通してコ
ンロッド本体とキャップとを一体に結合することによ
り、コンロッドボルトの頭部または頸部とコンロッドボ
ルトが貫通するコンロッド本体またはキャップとの間を
シール材にてシールしたことを特徴とする。
【0029】このようにコンロッドボルトの頭部または
頸部にシール材を塗布した後に、該コンロッドボルトを
用いてコンロッド本体とキャップとを貫通してコンロッ
ド本体とキャップとを一体に結合することによって、コ
ンロッドボルトの頭部または頸部とコンロッドボルトが
貫通するコンロッド本体またはキャップとの間をシール
材にてシールすることができる。このようなシール方法
であれば、容易にシール作業ができるのでコンロッドの
組み付け作業にほとんど影響することがなく、作業効率
を悪化させることがない。
【0030】請求項10のコンロッドボルトの腐食防止
方法は、請求項8の構成において、コンロッド本体とキ
ャップとを一体に結合する際に、コンロッド本体または
キャップの貫通孔の開口部全周にシール材を塗布した後
に、コンロッド本体とキャップとをコンロッドボルトに
て前記開口部から貫通してコンロッド本体とキャップと
を一体に結合することにより、コンロッドボルトの頭部
または頸部とコンロッドボルトが貫通するコンロッド本
体またはキャップとの間をシール材にてシールしたこと
を特徴とする。
【0031】このようにコンロッド本体またはキャップ
の貫通孔の開口部全周にシール材を塗布した後に、コン
ロッド本体とキャップとをコンロッドボルトにて前記開
口部から貫通してコンロッド本体とキャップとを一体に
結合することによって、コンロッドボルトの頭部または
頸部とコンロッドボルトが貫通するコンロッド本体また
はキャップとの間をシール材にてシールすることができ
る。このようなシール方法であれば、容易にシール作業
ができるのでコンロッドの組み付け作業にほとんど影響
することがなく、作業効率を悪化させることがない。
【0032】請求項11のコンロッドボルトの腐食防止
構造は、コンロッド本体とキャップとを貫通してコンロ
ッド本体とキャップとを一体に結合することでコンロッ
ド本体とキャップとの間に内燃機関のクランクシャフト
を把持するコンロッドボルトの腐食防止構造であって、
コンロッドボルトが貫通するコンロッド本体またはキャ
ップの貫通孔の一方の開口部から他方の開口部まで、該
貫通孔の内周面に連続して形成されて各開口部にて外部
に開放する溝を形成してなることを特徴とする。
【0033】このように、コンロッド本体またはキャッ
プの貫通孔に、一方の開口部から他方の開口部まで連続
する溝が形成され、しかもこの溝は、各開口部にて外部
に開放されていることにより、この貫通孔にコンロッド
ボルトをはめ込んでも、前記溝は、コンロッドボルトと
コンロッド本体あるいはキャップとの間の間隙部に対す
るエンジンオイルの通路となる。したがって、内燃機関
の駆動時には、コンロッドの運動により、この2方向に
開放された溝を介して外部からのエンジンオイルの循環
が迅速に行われるようになる。
【0034】このため、前記間隙部に腐食因子が入った
としても直ちに外部に排出され、エンジンオイル中に分
散して、エンジンオイル内の金属清浄剤などの中和成分
により中和される。また、前記間隙部に腐食因子が止ま
ったとしても、エンジンオイルの循環が十分迅速になさ
れるので、エンジンオイル内の金属清浄剤などの中和成
分の濃度が薄くても、腐食因子を迅速に中和することが
でき、コンロッドボルトの腐食を防止することができ
る。
【0035】
【発明の実施の形態】[実施の形態1]図1および図2
は、上述した発明が適用されたコンロッドボルトの腐食
防止方法の手順を表す工程説明図である。
【0036】[工程1] 予め、図1に示すごとく、合
金鋼製のコンロッドボルト2を金属清浄剤4の浸漬槽6
に浸けて、コンロッドボルト2の全面に金属清浄剤4を
塗布する。
【0037】なお、コンロッドボルト2は、図3に示す
ごとく、頭部8と軸部10とからなり、軸部10は、頭
部8とは反対側の端部に雄ネジ部12を形成している。
また、軸部10の中間部分には圧入部14,16が形成
されて、頭部8と上部圧入部14との間はR状にくびれ
て頸部18を形成している。また、上部圧入部14と下
部圧入部16との間および下部圧入部16と雄ネジ部1
2との間には、圧入部14,16および雄ネジ部12よ
りも直径の小さい小径部20,22が形成されている。
【0038】また、金属清浄剤4は、ここでは、アルキ
ルベンゼンスルホン酸カルシウム中に炭酸カルシウムが
約0.12%溶解あるいはコロイド状に分散しているペ
ースト状の金属清浄剤を用いている。
【0039】[工程2] 工程1にて表面全面が金属清
浄剤4で覆われたコンロッドボルト2を、図2に示すご
とく、コンロッド本体26とキャップ28とでクランク
シャフト30を挟んだ状態で、コンロッド本体26の貫
通孔32と、キャップ28の貫通孔34に圧入する。そ
して、キャップ28の下方に突出する雄ネジ部12にて
ナット36により締結する。なお、コンロッド本体26
とクランクシャフト30との間、およびキャップ28と
クランクシャフト30との間にはコンロッドベアリング
38,40がそれぞれ配置されている。以上が工程2で
ある。
【0040】このことにより、コンロッド24がクラン
クシャフト30に回転可能に取り付けられる。このよう
にして取り付けられたコンロッド24におけるコンロッ
ドボルト2の状態を図4に示す。コンロッドボルト2の
圧入時に圧入部14,16の表面の金属清浄剤4はコン
ロッド本体26の貫通孔32の入り口部分で掻き寄せら
れて、頸部18あるいは小径部20,22の外周面と、
コンロッド本体26の貫通孔32あるいはキャップ28
の貫通孔34の内周面との間の間隙部42,44に溜ま
る。
【0041】したがって、内燃機関の駆動時にはこのよ
うにコンロッドボルト2とコンロッド本体26あるいは
キャップ28との間隙部42,44に金属清浄剤4を保
持したまま、コンロッド24がピストンとクランクシャ
フト30とを連結する部材として機能する。
【0042】以上説明した本実施の形態1によれば、以
下の効果が得られる。 (イ).クランクシャフト30を間に配置してコンロッ
ド本体26とキャップ28とを一体に結合する際に、コ
ンロッドボルト2の表面とコンロッドボルト2が貫通す
るコンロッド本体26およびキャップ28の貫通孔3
2,34の内面との間に腐食因子を中和する作用を有す
る金属清浄剤4を配置している。このため、コンロッド
24をクランクシャフト30に組み付けた時には、コン
ロッドボルト2とコンロッド本体26およびキャップ2
8との間の間隙部42,44には十分な濃度(ここでは
100%)の金属清浄剤4を存在させることができる。
【0043】図5に示すごとく、コンロッド本体26の
貫通孔32あるいはキャップ28の貫通孔34の公差上
限品とコンロッドボルト2の頸部18の公差下限品との
組み合わせにおいて、頸部18とコンロッド本体26と
の間に離間部46が生じることがある。あるいは内燃機
関の駆動中に離間部46が生じることがある。このよう
な離間部46が生じると、本来、密閉されているはずの
コンロッドボルト2の外周面と貫通孔32の内周面との
間隙部42が外部に開放されてしまい、この離間部46
から一度に大量の腐食因子が間隙部42,44に侵入し
て来るおそれがある。
【0044】しかし、これら腐食因子は、間隙部42,
44内に配置されている十分な濃度(最初は100%)
の金属清浄剤4により迅速に中和されるので腐食を抑え
て、コンロッドボルト2の応力腐食割れを防止すること
ができる。
【0045】(ロ).間隙部42,44は極めて小さい
容積であり、この間隙部42,44に存在する金属清浄
剤4がエンジンオイル中に排出されたとしてもエンジン
オイルに占める割合は極めて小さく、また金属清浄剤4
は、炭酸カルシウムも含めて、元来エンジンオイルに存
在する成分であることから、エンジンオイルの性能に悪
影響を及ぼすことはない。
【0046】(ハ).コンロッドボルト2の表面に腐食
因子を中和する中和剤としての金属清浄剤4を塗布した
後に、このコンロッドボルト2を用いてコンロッド本体
26とキャップ28とを貫通してコンロッド本体26と
キャップ28とを一体に結合することによって、コンロ
ッドボルト2の表面とコンロッドボルト2が貫通するコ
ンロッド本体26およびキャップ28の貫通孔32,3
4の内面との間に金属清浄剤4を配置することができ
る。このような配置方法であれば、金属清浄剤4の配置
が容易となるので、コンロッド24の組み付け作業にほ
とんど影響することがなく、作業効率を悪化させること
がない。
【0047】(ニ).中和剤として、炭酸カルシウムを
含んだ金属清浄剤4を用いているので、特に腐食因子を
中和する効果が高い。 (ホ).コンロッドボルト2の表面に塗布する金属清浄
剤4は、アルキルベンゼンスルホン酸カルシウムがベー
スである。このアルキルベンゼンスルホン酸カルシウム
は油性成分であることから、コンロッドボルト2を貫通
孔32,34へ圧入する際における焼き付きを防止でき
る。
【0048】[実施の形態2]前記実施の形態1では、
その工程1でコンロッドボルトを金属清浄剤中に浸漬し
たが、本実施の形態2では、図6に示すごとく、コンロ
ッドボルト102は頸部118の全周にシール材150
を塗布する。
【0049】そして、工程2では、実施の形態1の図2
に示した方法と同様に、コンロッド本体とキャップとで
クランクシャフトを挟んだ状態で、コンロッド本体の貫
通孔と、キャップの貫通孔に圧入する。そして、キャッ
プの下方に突出する雄ネジ部112にてナットにより締
結する。
【0050】このことにより、コンロッドがクランクシ
ャフトに回転可能に取り付けられる。このようにして取
り付けられたコンロッドにおけるコンロッドボルト10
2の状態を図7に示す。コンロッドボルト102の圧入
時に頸部118の表面のシール材150は一部が間隙部
142を満たし、他の一部は、コンロッド本体126の
貫通孔132の入り口部分で押し出されて、コンロッド
ボルト102の頭部108の全周において、コンロッド
ボルト102の頭部108とコンロッド本体126の貫
通孔132の周辺との間をシールする。
【0051】なお、シール材150は、シリコン樹脂系
やフッ素樹脂系のペースト状シール材が用いられ、コン
ロッドボルト102に塗布した後は化学反応により耐熱
性の弾性シール材に変化するものである。
【0052】したがって、内燃機関の駆動時にはこのよ
うにコンロッドボルト102とコンロッド本体126と
の間隙部142がシール材150にて密閉された状態
で、コンロッドが機能する。
【0053】以上説明した本実施の形態2によれば、以
下の効果が得られる。 (イ).コンロッドボルト102の頭部108または頸
部118とコンロッドボルト102が貫通するコンロッ
ド本体126との間にシール材150が存在することに
より、図8に示すごとく、コンロッドボルト102とコ
ンロッド本体126との間の間隙部142に、クランク
シャフトに取り付ける際に離間部146が形成されたも
のであっても、この離間部146をシール材150が完
全に覆うことで、密閉が可能となる。更に、図9に示す
ごとく、内燃機関の駆動中に離間部146が形成されて
もシール材150の弾性変形により頸部118とコンロ
ッド本体126との間のシールを維持することができ
る。このことにより外部から間隙部142への腐食因子
の侵入が防止できる。
【0054】(ロ).コンロッドボルト102の頭部1
08および頸部118にシール材150を塗布した後
に、コンロッドボルト102を用いてコンロッド本体1
26とキャップとを貫通してコンロッド本体126とキ
ャップとを一体に結合することによって、コンロッドボ
ルト102の頭部108および頸部118とコンロッド
ボルト102が貫通するコンロッド本体126との間を
シール材150にてシールすることができる。このよう
なシールであれば、容易にシール作業ができるのでコン
ロッドの組み付け作業にほとんど影響することがなく、
作業効率を悪化させることがない。
【0055】[実施の形態3]前記実施の形態1ではコ
ンロッドボルトとコンロッド本体との間隙部に侵入した
腐食要因を中和するものであり、前記実施の形態2では
コンロッドボルトとコンロッド本体との間隙部に腐食要
因が侵入しないようにする例であったが、本実施の形態
3では、コンロッドボルトとコンロッド本体との間隙部
に侵入した腐食要因を迅速に排出、あるいはエンジンオ
イル中の中和成分により迅速に中和させる例を示す。
【0056】図10に実施の形態3のコンロッド224
の正面図を示す。このコンロッド224はコンロッド本
体226の貫通孔232の形状が実施の形態1,2とは
異なる。
【0057】図11にコンロッド本体226の座面部分
の拡大平面図を示す。ここで、コンロッドボルト202
の頭部208の下面が接触する座面252には貫通孔2
32の軸方向に直交する方向に溝254が形成されてい
る。また、図11におけるA−A断面図である図12に
示すごとく、溝254が貫通孔232に接する位置か
ら、この溝254に連続して貫通孔232の内周面に貫
通孔232の軸方向に沿って溝256が形成されてい
る。そして、貫通孔232がコンロッド本体226の下
面(キャップ228との合わせ面)257で開口する部
分では、この溝256に連続してコンロッド本体226
の厚さ方向に溝258が形成されている。
【0058】したがって、このコンロッド本体226と
キャップ228とをコンロッドボルト202で締結する
と、座面252部分では、図13に示すごとく座面25
2に形成された溝254の一部がコンロッドボルト20
2の頭部208からはみ出す。また、図10および図1
4に示すごとくコンロッド本体226の下面257の溝
258はキャップ228に覆われるが、溝258の外側
端部はコンロッド224の表裏面側に開口する。
【0059】このため、内燃機関が駆動するとエンジン
オイルが座面252の溝254から入って、溝256、
間隙部242,244を通って、下面257の溝258
の一端からコンロッド224の外に排出される。あるい
はこの逆に、下面257の溝258の一端から入って、
溝256、間隙部242,244を通って、エンジンオ
イルが座面252の溝254からコンロッド224の外
に排出される。
【0060】以上説明した本実施の形態3によれば、以
下の効果が得られる。 (イ).コンロッド本体226の貫通孔232に、座面
252(一方の開口部に相当する)から下面257(他
方の開口部に相当する)まで連続する溝254,25
6,258が形成されることにより、貫通孔232にコ
ンロッドボルト202をはめ込んでも、前記溝254,
256,258は、コンロッドボルト202とコンロッ
ド本体226との間の間隙部242,244に対するエ
ンジンオイルの通路となる。したがって、内燃機関の駆
動時には、コンロッド224の運動により、この2方向
に開放された溝254,256,258を介して外部か
らのエンジンオイルの循環が迅速に行われるようにな
る。
【0061】このため、前記間隙部242,244に腐
食因子が入ったとしても直ちに外部に排出され、エンジ
ンオイル中に分散して、エンジンオイル内の金属清浄剤
などの中和成分により中和される。また、前記間隙部2
42,244に腐食因子が止まったとしても、エンジン
オイルの循環が十分迅速になされるので、エンジンオイ
ル内の金属清浄剤などの中和成分の濃度が薄くても、腐
食因子を迅速に中和することができ、コンロッドボルト
202の腐食を防止することができる。
【0062】(ロ).コンロッド本体226に溝25
4,256,258を形成したことから、副次的に、コ
ンロッド224自体の軽量化がなされ、このことから内
燃機関のフリクションを低減でき、内燃機関を出力アッ
プすることができる。
【0063】[その他の実施の形態]・前記実施の形態
1,2においては、コンロッドボルトはキャップ側から
圧入し、コンロッド本体側にてナットで締結するように
してもよい。
【0064】・前記実施の形態3においては、応力が集
中しやすいコンロッドボルトの頸部はコンロッド本体側
に配置されるので、コンロッドボルトとコンロッド本体
との間の間隙部に対するエンジンオイルの通路としての
溝はコンロッド本体側の貫通孔に設けたが、コンロッド
ボルトをキャップ側から圧入し、コンロッド本体側にて
ナットで締結する場合は、溝はキャップ側の貫通孔に設
ける。
【0065】・前記実施の形態1においては、金属清浄
剤は炭酸カルシウムを含むものであったが、炭酸カルシ
ウムを含まない金属清浄剤であってもよい。金属清浄剤
自体に存在する腐食成分の中和機能が作用するからであ
る。また、炭酸カルシウム以外に、マグネシウム、カル
シウム、バリウム、ストロンチウムといったアルカリ土
類金属の炭酸塩でもよい。また、アルカリ土類金属の他
の化合物でもよい。金属清浄剤もアルキルベンゼンスル
ホン酸カルシウム以外の金属清浄剤でもよい。
【0066】・前記実施の形態1においては、金属清浄
剤をコンロッドボルト全体に塗布したが、頸部の周囲の
みでもよい。 ・前記実施の形態2においては、シール材を頸部のみに
塗布したが、雄ネジ部を除いて、コンロッドボルトの下
面等の部分にも塗布してもよい。
【0067】・前記実施の形態1では、金属清浄剤をコ
ンロッドボルトに塗布してからコンロッド本体およびキ
ャップに圧入していたが、逆に、コンロッド本体の貫通
孔の内面に金属清浄剤を塗布しておいてから、金属清浄
剤を塗布していないあるいは塗布しているコンロッドボ
ルトを挿入してコンロッドを組み立ててもよい。なお、
コンロッド本体の貫通孔の内面のみに金属清浄剤を塗布
している場合は、間隙部に金属清浄剤が残るように、圧
入は行わないか、または圧入部に上下の間隙部を連絡す
る溝を設ける。同様に、前記実施の形態2においても、
シール材はコンロッド本体の貫通孔側、あるいはコンロ
ッド本体の貫通孔側とコンロッドボルトとの両方に塗布
してもよい。
【0068】前記実施の形態2においては、予めコンロ
ッドボルトの頸部にシール材を塗布してからコンロッド
ボルトをコンロッド本体の貫通孔に圧入していたが、シ
ール材を塗布していないコンロッドボルトを先にコンロ
ッド本体の貫通孔に圧入し、その後、コンロッドボルト
の頭部とコンロッド本体との接触部分の全周にシール材
を塗布してもよい。
【0069】・前記実施の形態3では、溝はコンロッド
本体の貫通孔に設けていたが、これに加えてキャップの
貫通孔にも溝を設けてもよい。 ・前記実施の形態1で用いた金属清浄剤の代わりに、炭
酸カルシウムなどのアルカリ土類金属の化合物を鉱油や
合成油等に溶解あるいは分散させて用いてもよい。元
来、炭酸カルシウムも金属清浄剤への添加物であり、エ
ンジンオイルに漏出してもエンジンオイルに対する悪影
響はない。
【0070】以上、本発明の実施の形態について説明し
たが、本発明の実施の形態には、特許請求の範囲に記載
した技術的事項以外に次のような各種の技術的事項の実
施形態を有するものであることを付記しておく。
【0071】(1).コンロッド本体とキャップとを貫
通してコンロッド本体とキャップとを一体に結合するこ
とでコンロッド本体とキャップとの間に内燃機関のクラ
ンクシャフトを把持するコンロッドボルトの腐食防止構
造であって、コンロッドボルトの表面とコンロッドボル
トが貫通するコンロッド本体またはキャップの貫通孔の
内面との間に腐食因子を中和する中和剤を配置してなる
ことを特徴とするコンロッドボルトの腐食防止構造。
【0072】(2).前記中和剤は、アルカリ土類金属
化合物を含むことを特徴とする上記(1)記載のコンロ
ッドボルトの腐食防止構造。 (3).前記中和剤は、炭酸カルシウムを含むことを特
徴とする上記(1)記載のコンロッドボルトの腐食防止
構造。
【0073】(4).前記中和剤は、金属清浄剤である
ことを特徴とする上記(1)記載のコンロッドボルトの
腐食防止構造。 (5).前記金属清浄剤は、炭酸カルシウムを含む金属
清浄剤であることを特徴とする上記(4)記載のコンロ
ッドボルトの腐食防止構造。
【0074】(6).コンロッド本体とキャップとを貫
通してコンロッド本体とキャップとを一体に結合するこ
とでコンロッド本体とキャップとの間に内燃機関のクラ
ンクシャフトを把持するコンロッドボルトの腐食防止構
造であって、コンロッドボルトの頭部または頸部とコン
ロッドボルトが貫通するコンロッド本体またはキャップ
との間をシール材にてシールしてなることを特徴とする
コンロッドボルトの腐食防止構造。
【0075】
【発明の効果】請求項1のコンロッドボルトの腐食防止
方法では、コンロッド本体とキャップとを一体に結合す
る際に、コンロッドボルトの表面とコンロッドボルトが
貫通するコンロッド本体またはキャップの貫通孔の内面
との間に腐食因子を中和する中和剤を配置している。こ
のため、コンロッドをクランクシャフトに組み付けた時
には、コンロッドボルトとコンロッド本体あるいはキャ
ップとの間の間隙部には十分な濃度の中和剤を存在させ
ることができる。
【0076】したがって、一度に大量の腐食因子が前記
間隙部に侵入して来たとしても、これら腐食因子を迅速
に中和することができ、コンロッドボルトの腐食を防止
することができる。なお、前記間隙部は極めて小さい容
積であり、この間隙部に存在する中和剤がエンジンオイ
ル中に排出されたとしても、エンジンオイルに占める割
合は極めて小さいことと、元来エンジンオイルに存在す
る成分であることから、エンジンオイルの性状に悪影響
を及ぼすことはない。
【0077】請求項2のコンロッドボルトの腐食防止方
法は、コンロッドボルトの表面に腐食因子を中和する中
和剤を塗布した後に、該コンロッドボルトを用いてコン
ロッド本体とキャップとを貫通してコンロッド本体とキ
ャップとを一体に結合することによって、コンロッドボ
ルトの表面とコンロッドボルトが貫通するコンロッド本
体またはキャップの貫通孔の内面との間に腐食因子を中
和する中和剤を配置している。このため、中和剤の配置
が容易となるので、コンロッドの組み付け作業にほとん
ど影響することがなく、作業効率を悪化させることがな
い。
【0078】請求項3のコンロッドボルトの腐食防止方
法は、コンロッド本体またはキャップの貫通孔の内面に
腐食因子を中和する中和剤を塗布した後に、コンロッド
本体とキャップとを貫通してコンロッド本体とキャップ
とを一体に結合することによって、コンロッドボルトの
表面とコンロッドボルトが貫通するコンロッド本体また
はキャップの貫通孔の内面との間に腐食因子を中和する
中和剤を配置することとしている。このため、中和剤の
配置が容易となるので、コンロッドの組み付け作業にほ
とんど影響することがなく、作業効率を悪化させること
がない。
【0079】請求項4に示したごとく、前記中和剤とし
ては、アルカリ土類金属化合物を含むものを用いると、
特にエンジンオイルに悪影響を与えることなく腐食を防
止することができる。
【0080】請求項5は、前記中和剤として、炭酸カル
シウムを含むものを用いているので、高い応力腐食防止
効果が得られる。請求項6は、前記中和剤として、金属
清浄剤を用いている。特に、金属清浄剤は、エンジンオ
イル中の劣化物の沈積を予防・抑制し、酸化防止の作用
も有するものであり、元来、エンジンオイル中に含まれ
ているので、エンジンオイル中に漏出してもエンジンオ
イルの性能に問題を生じるおそれはない。
【0081】請求項7は、前記金属清浄剤として、更に
炭酸カルシウムを含んでいるものを用いている。金属清
浄剤に炭酸カルシウムが添加されることにより、更に、
腐食因子を中和する効果を高めることができる。特に、
金属清浄剤中に炭酸カルシウムの全てが溶解している程
度の炭酸カルシウムの含有量ならば、この金属清浄剤が
エンジンオイル中に漏出してもエンジンオイルの性能に
問題を生じるおそれはない。
【0082】請求項8のコンロッドボルトの腐食防止方
法は、コンロッドボルトの頭部または頸部とコンロッド
ボルトが貫通するコンロッド本体またはキャップとの間
がシール材にてシールされることにより、コンロッドボ
ルトとコンロッド本体あるいはキャップとの間の間隙部
は、「発明が解決しようとする課題」の欄で述べたごと
く、クランクシャフトに取り付ける際に離間部が形成さ
れたものであっても、この離間部をシール材が完全に覆
い、密封がなされる。更に、内燃機関の駆動中に離間部
が形成されてもシール材の弾性変形により、コンロッド
ボルトとコンロッド本体あるいはキャップとの間のシー
ルを維持することができる。このことにより外部から前
記間隙部に腐食因子が侵入することがない。
【0083】請求項9のコンロッドボルトの腐食防止方
法は、コンロッドボルトの頭部または頸部にシール材を
塗布した後に、該コンロッドボルトを用いてコンロッド
本体とキャップとを貫通してコンロッド本体とキャップ
とを一体に結合することによって、コンロッドボルトの
頭部または頸部とコンロッドボルトが貫通するコンロッ
ド本体またはキャップとの間をシール材にてシールする
ことができる。このようなシール方法であるので、容易
にシール作業ができ、コンロッドの組み付け作業にほと
んど影響することがなく、作業効率を悪化させることが
ない。
【0084】請求項10のコンロッドボルトの腐食防止
方法は、コンロッド本体またはキャップの貫通孔の開口
部全周にシール材を塗布した後に、コンロッド本体とキ
ャップとをコンロッドボルトにて前記開口部から貫通し
てコンロッド本体とキャップとを一体に結合することに
よって、コンロッドボルトの頭部または頸部とコンロッ
ドボルトが貫通するコンロッド本体またはキャップとの
間をシール材にてシールすることができる。このような
シール方法であるので、容易にシール作業ができ、コン
ロッドの組み付け作業にほとんど影響することがなく、
作業効率を悪化させることがない。
【0085】請求項11のコンロッドボルトの腐食防止
構造は、コンロッド本体またはキャップの貫通孔に、一
方の開口部から他方の開口部まで連続する溝が形成さ
れ、しかもこの溝は、各開口部にて外部に開放されてい
ることにより、この貫通孔にコンロッドボルトをはめ込
んでも、前記溝は、コンロッドボルトとコンロッド本体
あるいはキャップとの間の間隙部に対するエンジンオイ
ルの通路となる。したがって、内燃機関の駆動時には、
コンロッドの運動により、この2方向に開放された溝を
介して外部からのエンジンオイルの循環が迅速に行われ
るようになる。
【0086】このため、前記間隙部に腐食因子が入った
としても直ちに外部に排出され、エンジンオイル中に分
散して、エンジンオイル内の金属清浄剤などの中和成分
により中和される。また、前記間隙部に腐食因子が止ま
ったとしても、エンジンオイルの循環が十分迅速になさ
れるので、エンジンオイル内の金属清浄剤などの中和成
分の濃度が薄くても、腐食因子を迅速に中和することが
でき、コンロッドボルトの腐食を防止することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1としてのコンロッドボルトの腐
食防止方法の手順を表す工程説明図。
【図2】 実施の形態1としてのコンロッドボルトの腐
食防止方法の手順を表す工程説明図。
【図3】 実施の形態1のコンロッドボルトの正面図。
【図4】 実施の形態1のコンロッドボルトの取り付け
状態説明図。
【図5】 実施の形態1のコンロッドボルトの取り付け
状態説明図。
【図6】 実施の形態2としてのコンロッドボルトの腐
食防止方法の手順を表す工程説明図。
【図7】 実施の形態2のコンロッドボルトの取り付け
状態説明図。
【図8】 実施の形態2のコンロッドボルトの取り付け
状態説明図。
【図9】 実施の形態2のコンロッドボルトの取り付け
状態説明図。
【図10】 実施の形態3としてのコンロッドの一部破
断正面図。
【図11】 実施の形態3としてのコンロッド本体の部
分平面図。
【図12】 実施の形態3としてのコンロッド本体の断
面図。
【図13】 実施の形態3としてのコンロッドの部分平
面図。
【図14】 実施の形態3としてのコンロッドの断面
図。
【図15】 従来のコンロッドの一部破断正面図。
【図16】 従来のコンロッドボルトの取り付け状態説
明図。
【符号の説明】
2…コンロッドボルト、4…金属清浄剤、6…浸漬槽、
8… 頭部、10…軸部、12…雄ネジ部、14…上部
圧入部、16…下部圧入部、18…頸部、20,22…
小径部、24…コンロッド、26…コンロッド本体、2
8…キャップ、30…クランクシャフト、32,34…
貫通孔、36…ナット、38,40…コンロッドベアリ
ング、42,44…間隙部、46…離間部、102…コ
ンロッドボルト、105…シール材、108…頭部、1
12…雄ネジ部、118…頸部、126…コンロッド本
体、132…貫通孔、142…間隙部、146…離間
部、150…シール材、202…コンロッドボルト、2
08…頭部、224…コンロッド、226…コンロッド
本体、228…キャップ、232…貫通孔、242,2
44…間隙部、252…座面、254,256,258
…溝、257… コンロッド本体の下面。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コンロッド本体とキャップとを貫通して
    コンロッド本体とキャップとを一体に結合することでコ
    ンロッド本体とキャップとの間に内燃機関のクランクシ
    ャフトを把持するコンロッドボルトの腐食防止方法であ
    って、 コンロッド本体とキャップとを一体に結合する際に、コ
    ンロッドボルトの表面とコンロッドボルトが貫通するコ
    ンロッド本体またはキャップの貫通孔の内面との間に腐
    食因子を中和する中和剤を配置することを特徴とするコ
    ンロッドボルトの腐食防止方法。
  2. 【請求項2】 コンロッド本体とキャップとを一体に結
    合する際に、コンロッドボルトの表面に腐食因子を中和
    する中和剤を塗布した後に、該コンロッドボルトを用い
    てコンロッド本体とキャップとを貫通してコンロッド本
    体とキャップとを一体に結合することにより、コンロッ
    ドボルトの表面とコンロッドボルトが貫通するコンロッ
    ド本体またはキャップの貫通孔の内面との間に腐食因子
    を中和する中和剤を配置することを特徴とする請求項1
    記載のコンロッドボルトの腐食防止方法。
  3. 【請求項3】 コンロッド本体とキャップとを一体に結
    合する際に、コンロッド本体またはキャップの貫通孔の
    内面に腐食因子を中和する中和剤を塗布した後に、コン
    ロッド本体とキャップとをコンロッドボルトにて貫通し
    てコンロッド本体とキャップとを一体に結合することに
    より、コンロッドボルトの表面とコンロッドボルトが貫
    通するコンロッド本体またはキャップの貫通孔の内面と
    の間に腐食因子を中和する中和剤を配置することを特徴
    とする請求項1記載のコンロッドボルトの腐食防止方
    法。
  4. 【請求項4】 前記中和剤は、アルカリ土類金属化合物
    を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の
    コンロッドボルトの腐食防止方法。
  5. 【請求項5】 前記中和剤は、炭酸カルシウムを含むこ
    とを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のコンロッ
    ドボルトの腐食防止方法。
  6. 【請求項6】 前記中和剤は、金属清浄剤であることを
    特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のコンロッドボ
    ルトの腐食防止方法。
  7. 【請求項7】 前記金属清浄剤は、炭酸カルシウムを含
    む金属清浄剤であることを特徴とする請求項6記載のコ
    ンロッドボルトの腐食防止方法。
  8. 【請求項8】 コンロッド本体とキャップとを貫通して
    コンロッド本体とキャップとを一体に結合することでコ
    ンロッド本体とキャップとの間に内燃機関のクランクシ
    ャフトを把持するコンロッドボルトの腐食防止方法であ
    って、 コンロッド本体とキャップとを一体に結合する際に、コ
    ンロッドボルトの頭部または頸部とコンロッドボルトが
    貫通するコンロッド本体またはキャップとの間をシール
    材にてシールしたことを特徴とするコンロッドボルトの
    腐食防止方法。
  9. 【請求項9】 コンロッド本体とキャップとを一体に結
    合する際に、コンロッドボルトの頭部または頸部にシー
    ル材を塗布した後に、該コンロッドボルトを用いてコン
    ロッド本体とキャップとを貫通してコンロッド本体とキ
    ャップとを一体に結合することにより、コンロッドボル
    トの頭部または頸部とコンロッドボルトが貫通するコン
    ロッド本体またはキャップとの間をシール材にてシール
    したことを特徴とする請求項8記載のコンロッドボルト
    の腐食防止方法。
  10. 【請求項10】 コンロッド本体とキャップとを一体に
    結合する際に、コンロッド本体またはキャップの貫通孔
    の開口部全周にシール材を塗布した後に、コンロッド本
    体とキャップとをコンロッドボルトにて前記開口部から
    貫通してコンロッド本体とキャップとを一体に結合する
    ことにより、コンロッドボルトの頭部または頸部とコン
    ロッドボルトが貫通するコンロッド本体またはキャップ
    との間をシール材にてシールしたことを特徴とする請求
    項8記載のコンロッドボルトの腐食防止方法。
  11. 【請求項11】 コンロッド本体とキャップとを貫通し
    てコンロッド本体とキャップとを一体に結合することで
    コンロッド本体とキャップとの間に内燃機関のクランク
    シャフトを把持するコンロッドボルトの腐食防止構造で
    あって、 コンロッドボルトが貫通するコンロッド本体またはキャ
    ップの貫通孔の一方の開口部から他方の開口部まで、該
    貫通孔の内周面に連続して形成されて各開口部にて外部
    に開放する溝を形成してなることを特徴とするコンロッ
    ドボルトの腐食防止構造。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010031916A (ja) * 2008-07-25 2010-02-12 Toyota Motor Corp 締結ボルトを使用した複数部材の締結構造
WO2014031972A1 (en) * 2012-08-24 2014-02-27 Mahle International Gmbh Bolted joint inner thread coating and methods of manufacturing
JP2019152253A (ja) * 2018-03-01 2019-09-12 株式会社豊田自動織機 コネクティングロッド

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